(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106427
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】生タイヤ成形方法及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/20 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B29D30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010665
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 康平
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AM32
4F215VA02
4F215VC14
4F215VD03
4F215VD07
4F215VD10
4F215VK02
4F215VK20
4F215VK26
4F215VL06
4F215VL12
4F215VL13
4F215VL27
4F215VP10
4F215VP11
4F215VP12
4F501TA02
4F501TB14
4F501TC03
4F501TC07
4F501TC10
4F501TD03
4F501TD20
4F501TD26
4F501TD36
4F501TE06
4F501TE11
4F501TE22
4F501TL10
4F501TL11
4F501TV11
4F501TV17
4F501TV20
(57)【要約】
【課題】高品質なタイヤ2の安定製造に貢献できる、生タイヤ成形方法の提供。
【解決手段】この成形方法は、筒状カバー40を膨らませて筒状カバー40をリング部材36に内側から押し当てるとともに、ローラー48を用いてリング部材36の赤道REから端に向かってリング部材36を外側から筒状カバー40に押し当てて、リング部材36と筒状カバー40とを接合する工程を含む。この接合工程は、リング部材36の一部を筒状カバー40に接合する第一接合工程と、リング部材36の残部を筒状カバー40に接合する第二接合工程とを含む。第一接合工程における一対のクランプリング42間の距離はプロファイルデッキのデッキ幅よりも長い。第二接合工程における一対のクランプリング42間の距離は、第一接合工程における一対のクランプリング42間の距離よりも長い。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した成形面を有し、トレッドを含むリング部材が前記成形面上で形成される、プロファイルデッキと、
互いに近接又は離間する方向に移動でき、カーカスを含む筒状カバーを支持する、一対のクランプリングと、
前記リング部材の外側に配置され、前記リング部材にその外側から内側に向けて力を付与する、ローラーと
を備える、生タイヤ成形機を用いて、前記筒状カバー及び前記リング部材を形成し、前記筒状カバーと前記リング部材とを組み合わせて、生タイヤを得る、生タイヤの成形方法であって、
前記筒状カバーの両端をそれぞれ、前記一対のクランプリングのそれぞれで担持した状態で、前記リング部材の内側に前記筒状カバーを配置させる工程と、
前記筒状カバーを膨らませて前記筒状カバーを前記リング部材に内側から押し当てるとともに、前記ローラーを用いて前記リング部材の赤道から端に向かって前記リング部材を外側から前記筒状カバーに押し当てて、前記リング部材と前記筒状カバーとを接合する工程と
を含み、
前記接合工程が、前記リング部材の一部を前記筒状カバーに接合する第一接合工程と、前記リング部材の残部を前記筒状カバーに接合する第二接合工程とを含み、
前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離が前記プロファイルデッキのデッキ幅よりも長く、前記第二接合工程における前記一対のクランプリング間の距離が、前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離よりも長い、
生タイヤ成形方法。
【請求項2】
前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離の、前記プロファイルデッキのデッキ幅に対する比率が、110%以上130%以下であり、
前記第二接合工程における前記一対のクランプリング間の距離の、前記プロファイルデッキのデッキ幅に対する比率が、120%以上140%以下である、
請求項1に記載の生タイヤ成形方法。
【請求項3】
前記第一接合工程において、前記リング部材が前記筒状カバーに接合される長さが、前記プロファイルデッキの子午線断面における前記成形面の輪郭線長さの40%以上50%以下である、
請求項1又は2に記載の生タイヤ成形方法。
【請求項4】
生タイヤを準備する工程と、
前記生タイヤをモールド内で加圧及び加熱する工程と
を含み、
前記生タイヤが、請求項1又は2に記載の生タイヤ成形方法で得られる、
タイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤ成形方法及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、未加硫状態のタイヤ(すなわち生タイヤ)をモールド内で加圧及び加熱して得られる。この生タイヤの成形方法のひとつとして、トレッドを含むリング部材と、カーカスを含む筒状カバーとを別々に準備した後、筒状カバーをインフレートしてリング部材に内側から組み合わせて生タイヤを成形する方法(以下、2ステージ成形法とも称される。)が知られている(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
図12は、従来の生タイヤの成形方法を説明する図である。
図12は、リング部材RMと筒状カバーCCとを組み合わせる工程を示す。
この工程では、筒状カバーCCの両端をそれぞれ、一対のクランプリングCRのそれぞれで担持した状態で、リング部材RMの内側に筒状カバーCCが配置される。一対のクランプリングCRの間の距離を一定に保持した状態で、筒状カバーCCの内側に位置するブラダーSBを膨らませて、筒状カバーCCがリング部材RMに押し当てられる。一対のローラーSRがそれぞれ、リング部材RMを筒状カバーCCに押し付けながら、リング部材RMの赤道から端に向かって移動する。これにより、リング部材RMと筒状カバーCCとが組み合わされる。
【0004】
二輪自動車用タイヤのトレッド面には、湾曲の程度が大きいプロファイルが採用される。そのため、二輪自動車用タイヤの製造では、リング部材は、湾曲した成形面を有するプロファイルデッキで形成されるケースが多い。
タイヤの要素として、トレッドの内側に配置されるバンドがある。バンドは螺旋状に巻かれたバンドコードを含む。バンドは、遠心力の作用による形状変化を抑制する。
バンドは径方向の動きを拘束する。二輪自動車用タイヤにバンドを採用する場合、バンドを含むリング部材はプロファイルデッキを用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
未加硫状態のトレッドTは軟質である。
図12(a)に示されるように、リング部材RMは、トレッドTの端の部分が内向きに折れ曲がる傾向にある。そのため、リング部材RMと筒状カバーCCとを組み合わせる際、リング部材RMの端部が筒状カバーCCと最初に接触しやすい。端部の接触状態によっては、
図12(b)に矢印で示されるように、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材RMと筒状カバーCCとの間に挟まれることがある。この場合、リング部材RMの端部にエアーを巻き込んだ部分が形成される。加硫工程においてこのエアーを十分に排出できなければ、ベア等の外観不良が生じる恐れがある。高品質なタイヤを安定に製造するために、リング部材RMと筒状カバーCCとを組み合わせる際の、リング部材RMの端部の巻き込みを防止できる技術の確立が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、高品質なタイヤの安定製造に貢献できる、生タイヤの成形方法及びタイヤの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生タイヤ成形方法は、湾曲した成形面を有し、トレッドを含むリング部材が前記成形面上で形成される、プロファイルデッキと、互いに近接又は離間する方向に移動でき、カーカスを含む筒状カバーを支持する、一対のクランプリングと、前記リング部材の外側に配置され、前記リング部材にその外側から内側に向けて力を付与する、ローラーとを備える、生タイヤ成形機を用いて、前記筒状カバー及び前記リング部材を形成し、前記筒状カバーと前記リング部材とを組み合わせて、生タイヤを得る、生タイヤの成形方法である。この成形方法は、前記筒状カバーの両端をそれぞれ、前記一対のクランプリングのそれぞれで担持した状態で、前記リング部材の内側に前記筒状カバーを配置させる工程と、前記筒状カバーを膨らませて前記筒状カバーを前記リング部材に内側から押し当てるとともに、前記ローラーを用いて前記リング部材の赤道から端に向かって前記リング部材を外側から前記筒状カバーに押し当てて、前記リング部材と前記筒状カバーとを接合する工程とを含む。前記接合工程は、前記リング部材の一部を前記筒状カバーに接合する第一接合工程と、前記リング部材の残部を前記筒状カバーに接合する第二接合工程とを含む。前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離は前記プロファイルデッキのデッキ幅よりも長い。前記第二接合工程における前記一対のクランプリング間の距離は、前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離よりも長い。
【0009】
本発明に係るタイヤ製造方法は、生タイヤを準備する工程と、前記生タイヤをモールド内で加圧及び加熱する工程とを含む。前記生タイヤは、前述の生タイヤ成形方法で得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高品質なタイヤの安定製造に貢献できる、生タイヤ成形方法及びタイヤ製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法により得られるタイヤを示す断面図である。
【
図2】バンドの形成に用いられるバンドストリップの一部を示す斜視図である。
【
図3】リング部材の形成に用いるプロファイルデッキの一部を示す断面図である。
【
図8】リング部材と筒状カバーとの組み合わせを説明する図である。
【
図9】リング部材と筒状カバーとの組み合わせを説明する図である。
【
図10】リング部材と筒状カバーとの組み合わせを説明する図である。
【
図11】リング部材と筒状カバーとの組み合わせを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0013】
本発明において、ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる。ゴム組成物は未架橋状態の基材ゴムを含む。架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られる、ゴム組成物の架橋物である。架橋ゴムは基材ゴムの架橋物を含む。架橋ゴムは加硫ゴムとも呼ばれ、ゴム組成物は未加硫ゴムとも呼ばれる。
【0014】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される、トレッド、サイドウォール等の各要素の仕様に応じて、適宜決められる。本発明においては、特に言及がない限り、タイヤにおいて一般的に使用されるゴム組成物が用いられる。
【0015】
本発明において生タイヤとは未架橋状態のタイヤである。生タイヤはローカバーとも呼ばれる。生タイヤの構成要素は、ゴム組成物からなるか、ゴム組成物を含む。
タイヤは、モールド内で生タイヤを加熱及び加圧することで得られる。タイヤは生タイヤの架橋成形物である。タイヤの構成要素は、架橋ゴムからなるか、架橋ゴムを含む。
【0016】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る生タイヤ成形方法は、湾曲した成形面を有し、トレッドを含むリング部材が前記成形面上で形成される、プロファイルデッキと、互いに近接又は離間する方向に移動でき、カーカスを含む筒状カバーを支持する、一対のクランプリングと、前記リング部材の外側に配置され、前記リング部材にその外側から内側に向けて力を付与する、ローラーとを備える、生タイヤ成形機を用いて、前記筒状カバー及び前記リング部材を形成し、前記筒状カバーと前記リング部材とを組み合わせて、生タイヤを得る、生タイヤの成形方法であって、前記筒状カバーの両端をそれぞれ、前記一対のクランプリングのそれぞれで担持した状態で、前記リング部材の内側に前記筒状カバーを配置させる工程と、前記筒状カバーを膨らませて前記筒状カバーを前記リング部材に内側から押し当てるとともに、前記ローラーを用いて前記リング部材の赤道から端に向かって前記リング部材を外側から前記筒状カバーに押し当てて、前記リング部材と前記筒状カバーとを接合する工程とを含み、前記接合工程が、前記リング部材の一部を前記筒状カバーに接合する第一接合工程と、前記リング部材の残部を前記筒状カバーに接合する第二接合工程とを含み、前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離が前記プロファイルデッキのデッキ幅よりも長く、前記第二接合工程における前記一対のクランプリング間の距離が、前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離よりも長い。
【0017】
このように生タイヤ成形方法を整えることにより、第一接合工程において、筒状カバーに弛みを生じさせることなく、リング部材の一部を筒状カバーに接合できる。第二接合工程において、一対のクランプリングの間の距離を拡げることで、軸方向外向きに移動する筒状カバーが、リング部材の端部を含む部分を、外向きに押し出す。これにより、リング部材の折れ曲がりの程度が弱められる。そのため、リング部材と筒状カバーとを組み合わせる際、リング部材の端部が、筒状カバーと最初に接触することが抑制される。仮に、リング部材の端部が、筒状カバーと最初に接触したとしても、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材と筒状カバーとの間に挟まれることが抑制される。この成形方法は、リング部材の端部にエアーを巻き込みにくい。
この成形方法は、ベア等の外観不良の発生を抑制できる。この成形方法は、高品質なタイヤの安定製造に貢献できる。
【0018】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の生タイヤ成形方法において、前記第一接合工程における前記一対のクランプリング間の距離の、前記プロファイルデッキのデッキ幅に対する比率が、110%以上130%以下であり、前記第二接合工程における前記一対のクランプリング間の距離の、前記プロファイルデッキのデッキ幅に対する比率が、120%以上140%以下である。
このように生タイヤ成形方法を整えることにより、この生タイヤ成形方法が、ベア等の外観不良の発生を抑制し、高品質なタイヤ2の安定製造に貢献できる。
【0019】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載の生タイヤ成形方法において、前記第一接合工程において、前記リング部材が前記筒状カバーに接合される長さが、前記プロファイルデッキの子午線断面における前記成形面の輪郭線長さの40%以上50%以下である。
このように生タイヤ成形方法を整えることにより、一対のクランプリング間の距離を拡げるためにクランプリングを軸方向外向きに移動させることが、リング部材の端部を含む部分を、外向きに押し出すことに効果的に貢献できる。リング部材の折れ曲がりの程度が弱められるので、リング部材と筒状カバーとを組み合わせる際、リング部材の端部が、筒状カバーと最初に接触することが抑制される。仮に、リング部材の端部が、筒状カバーと最初に接触したとしても、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材と筒状カバーとの間に挟まれることが抑制される。この成形方法は、リング部材の端部にエアーを巻き込みにくい。この成形方法は、ベア等の外観不良の発生を抑制できる。
【0020】
[構成4]
本発明の一態様に係るタイヤ製造方法は、生タイヤを準備する工程と、前記生タイヤをモールド内で加圧及び加熱する工程とを含み、前記生タイヤが、[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の生タイヤ成形方法で得られる。
【0021】
このようにタイヤ製造方法を整えることにより、ベア等の外観不良の発生が抑制された、高品質なタイヤが安定に製造される。
【0022】
[タイヤ]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ製造方法により得られるタイヤ2の一例を示す。このタイヤ2は二輪自動車用タイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、上下方向がタイヤ2の径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向である。紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面である。
【0023】
タイヤ2は、多数の要素を組み合わせて構成される。このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、インナーライナー12及びバンド14を備える。
【0024】
トレッド4はカーカス10の径方向外側に位置する。トレッド4は路面と接地する。トレッド4は路面と接地するトレッド面16を備える。
図1において符号PCで示される位置はトレッド面16と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。トレッド4は架橋ゴムからなる。
【0025】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス10の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0026】
それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8は、コア18とエイペックス20とを備える。図示されないが、コア18は金属製のワイヤを含む。エイペックス20はコア18から径方向外向きにのびる。エイペックス20は架橋ゴムからなる。
図1において符号BBで示される位置は、コア18とエイペックス20との境界の軸方向中心の位置である。この位置BBはコア18の基準位置とも呼ばれる。
【0027】
カーカス10は、一対のビード8の第一ビード8と第二ビード8との間を架け渡す。カーカス10はタイヤ2の骨格をなす。カーカス10はカーカスプライ22を備える。カーカスプライ22は、それぞれのビード8で折り返される。
図示されないが、カーカスプライ22は並列された多数のカーカスコードを含む。それぞれのカーカスコードは赤道面と交差する。カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。カーカスコードは有機繊維からなる。有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0028】
インナーライナー12はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー12は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー12はタイヤ2の内圧を保持する。
【0029】
バンド14はトレッド4の径方向内側に位置する。このタイヤ2のバンド14はカーカス10に積層される。バンド14はその全体がトレッド4で覆われる。
【0030】
バンド14は、
図2に示されたバンドストリップ24を用いて形成される。バンドストリップ24は並列した複数本のバンドコード26を含み、これらバンドコード26はトッピングゴム28で覆われる。バンドストリップ24は帯状である。
【0031】
バンドストリップ24は並列した複数本のバンドコード26を含む。
図2に示されたバンドストリップ24は3本のバンドコード26を含む。バンドストリップ24に含まれるバンドコード26の本数は3本に限られない。バンドストリップ24に含まれるバンドコード26の本数は2本以上15本以下の範囲で、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0032】
バンドコード26は有機繊維からなる。有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0033】
後述するが、バンド14はバンドストリップ24を螺旋状に巻いて形成される。バンドストリップ24に含まれるバンドコード26は、バンドストリップ24の長さ方向にのびる。バンド14は、螺旋状に巻かれたバンドコード26を含む。バンドコード26は実質的に周方向にのびる。バンドコード26が赤道面に対してなす角度は、5°以下、好ましくは2°以下である。このバンド14はジョイントレス構造を有する。
【0034】
[タイヤ製造方法]
タイヤ2の製造では、生タイヤが準備される。生タイヤがモールド内で加圧及び加熱される。これによりタイヤ2が得られる。
タイヤ2を得るためのタイヤ製造方法は、生タイヤを準備する工程と、生タイヤをモールド内で加圧及び加熱する工程とを含む。
生タイヤをモールド内で加圧及び加熱する工程は加硫工程とも呼ばれる。本発明において加硫工程は従来の加硫工程と同様にして行われるので、その説明は省略される。
【0035】
生タイヤを準備する工程では、トレッド4やサイドウォール6等の要素が未架橋状態で準備される。生タイヤ成形機においてこれらの要素が組み合わされる。これにより、生タイヤが得られる。生タイヤは未架橋状態のタイヤである。説明の便宜のために、生タイヤにおける要素には、対応するタイヤ2の要素と同じ名称及び符号が用いられる。
【0036】
[生タイヤ成形方法]
図1に示されたタイヤ2のための生タイヤの成形方法に基づいて、本発明の一実施形態に係る生タイヤ成形方法が以下に説明される。
本発明の生タイヤ成形方法は、タイヤ製造方法における、生タイヤを準備する工程に適用される。タイヤ製造方法で用いられる生タイヤは、本発明の生タイヤ成形方法で得られる。
【0037】
生タイヤ成形方法では、生タイヤ成形機として、2ステージ成形法で使用される、周知の生タイヤ成形機が用いられる。そのため、生タイヤ成形機の詳細な説明は省略される。
【0038】
生タイヤ成形方法(以下、成形方法)では、トレッド4を含むリング部材と、カーカス10を含む筒状カバーとが準備される。この成形方法は、リング部材及び筒状カバーを準備する工程を含む。
リング部材と筒状カバーとはそれぞれ別の装置で形成される。生タイヤ成形機は、リング部材を形成する装置(以下、リング部材形成装置)と、筒状カバーを形成する装置(以下、筒状カバー形成装置)とを備える。
筒状カバーとリング部材とを組み合わせることで、生タイヤが得られる。この成形方法は、筒状カバーとリング部材とを組み合わせる工程を含む。生タイヤ成形機は、筒状カバーとリング部材とを組み合わせる、組み合わせ装置をさらに備える。
この成形方法は、リング部材形成装置、筒状カバー形成装置及び組み合わせ装置を備える生タイヤ成形機を用いて、筒状カバー及びリング部材を形成し、筒状カバーとリング部材とを組み合わせて、生タイヤを得る、生タイヤの成形方法である。
【0039】
図3は、リング部材の形成に用いるプロファイルデッキ30の一部を示す。リング部材形成装置はプロファイルデッキ30を備える。リング部材形成装置では、プロファイルデッキ30を回転させながら、リング部材が形成される。この成形方法の準備工程は、リング部材の形成工程を含む。
【0040】
図3は、プロファイルデッキ30の回転軸を含む平面に沿った、プロファイルデッキ30の断面を示す。プロファイルデッキ30の回転軸はタイヤ2の回転軸に対応する。
図3において左右方向は、タイヤ2の軸方向に対応する。上下方向はタイヤ2の径方向に対応する。
【0041】
プロファイルデッキ30の外周面32は径方向外向きに凸な形状を有する。この外周面32上でリング部材が形成される。外周面32は成形面である。プロファイルデッキ30は湾曲した成形面32を有し、この成形面32上でリング部材が形成される。
【0042】
図3において一点鎖線DLはプロファイルデッキ30の赤道面である。この赤道面はタイヤ2の赤道面に対応する。符号PDは、成形面32と赤道面との交点である。交点PDはプロファイルデッキ30の赤道である。交点PDはプロファイルデッキ30の径方向外端でもある。符号MEで示される位置は成形面32の端である。成形面32の端MEは赤道PDの径方向内側に位置する。
【0043】
図3において符号Hwで示される長さはプロファイルデッキ30のデッキ幅である。デッキ幅Hwは成形面32の第一端MEから第二端MEまでの軸方向距離で表される。符号Hdで示される長さはプロファイルデッキ30のデッキ高さである。デッキ高さHdはプロファイルデッキ30の赤道PDから成形面32の端MEまでの径方向距離である。
デッキ高さHdのデッキ幅Hwに対する比(Hd/Hw)は成形面32の湾曲の程度を表す。この比(Hd/Hw)が大きいほど、プロファイルデッキ30の成形面32は先端の尖った円柱形に近づいていく。そして比(Hd/Hw)が大きいほど、タイヤ2の運動性が向上する。
【0044】
成形面32のプロファイルは、軸方向に並ぶ複数の円弧で表される。複数の円弧は、赤道面に中心を有する円弧を含む。本発明においては、プロファイルを構成する円弧のうち、赤道面に中心を有する円弧はセンター円弧とも呼ばれる。
図3において矢印Rcは、センター円弧の半径である。センター円弧の半径Rcはタイヤ2の仕様に応じて適宜決められるが、45mm以上150mm以下の範囲で設定される。
成形面32のプロファイルのうちセンター円弧で表される部分は、センター部32cとも呼ばれる。
図3において符号CSで示される位置はセンター部32cの端である。符号LCで示される長さはセンター円弧の長さである。この長さLCは、成形面32におけるセンター部32cの長さでもある。
【0045】
成形面32のうち、センター部32cと成形面32の端MEとの間の部分はサイド部32sとも呼ばれる。サイド部32sはセンター部32cの軸方向外側に位置する。
成形面32は、センター部32cと一対のサイド部32sとを備える。センター部32cは赤道PDを含み、サイド部32sは成形面32の端MEを含む。センター部32cの端CSは、センター部32cとサイド部32sとの境界である。
【0046】
このプロファイルデッキ30では、サイド部32sのプロファイルは少なくとも一つの円弧で表される。
図3に示される成形面32では、サイド部32sのプロファイルは一つの円弧で表される。この円弧はサイド円弧とも呼ばれる。サイド円弧はセンター部32cの端CSと成形面32の端MEとの間を架け渡す。サイド円弧は境界CSにおいてセンター円弧と接する。
図3において矢印Rsはサイド円弧の半径である。
【0047】
サイド部32sのプロファイルが軸方向に並ぶ2以上の円弧で表されてもよい。図示されないが、例えば、サイド部32sのプロファイルが軸方向に並ぶ2つの円弧で表される場合、センター部32c側に位置し、センター部32cのセンター円弧に連なる円弧が第一サイド円弧であり、この第一サイド円弧で表される部分が、第一サイド部とも呼ばれる。成形面32の端MEを含み、第一サイド部の第一サイド円弧に連なる円弧が第二サイド円弧であり、この第二サイド円弧で表される部分が第二サイド部とも呼ばれる。
【0048】
前述したように、このタイヤ2は二輪自動車用タイヤである。そのため、成形面32のプロファイルがセンター部32cを表すセンター円弧と、サイド部32sを表すサイド円弧とで構成される場合、サイド円弧の半径Rsの、センター円弧の半径Rcに対する比(Rs/Rc)は、0.5以上4.2以下である。なお、サイド部32sが2以上の円弧で表される場合は、第一サイド円弧の半径Rs1の、センター円弧の半径Rcに対する比(Rs1/Rc)が0.5以上4.2以下である。
【0049】
図3において符号LPで示される長さは、プロファイルデッキ30の子午線断面における成形面32の輪郭線長さである。プロファイルデッキ30の成形面32に沿って計測される、成形面32の第一端MEから第二端MEまでの軸方向距離である。
【0050】
この成形方法では、プロファイルデッキ30を用いてリング部材が形成される。
図1のタイヤ2のためのリング部材は、トレッド4及びバンド14を含む。
リング部材の形成工程では、トレッド4の形成のためにシート状に成形されたトレッド4が準備される。バンド14の形成のために、
図2に示されたバンドストリップ24が準備される。
リング部材の形成工程では、プロファイルデッキ30の成形面32上にバンドストリップ24が巻かれる。
図4に示されるように、バンドストリップ24は、成形面32の一方の端MEから他方の端MEに向かって螺旋状に巻かれる。これによりバンド14が形成される。そしてバンド14の外側に、トレッド4が形成される。
【0051】
図5に示されるように、トレッド4の形成にはローラー34が用いられる。リング部材形成装置はローラー34を備える。ローラー34はプロファイルデッキ30の径方向外側に配置される。詳述しないが、ローラー34は、成形面32に向けて力を付与しながら、成形面32に沿って軸方向に移動できる。
【0052】
図5に示されるように、バンド24の径方向外側にシート状のトレッド4が配置される。プロファイルデッキ30の赤道面において、トレッド4がバンド24に積層される。そして一対のローラー34が、トレッド4の径方向外側においてプロファイルデッキ30の赤道面を挟むように配置される。それぞれのローラー34が、トレッド4の外側から内側に向けてトレッド4に力を付与しながら赤道PDから端MEに向かって移動する。トレッド4がバンド14に押し当てられ、トレッド4とバンド14とが接合される。これにより、
図6に示されるリング部材36が形成される。
図6において符号REは、リング部材36の外面と赤道面との交点である。交点REはリング部材36の赤道である。
【0053】
前述したように、この成形方法では、リング部材形成装置とは別の装置、筒状カバー形成装置で筒状カバーが形成される。この成形方法の準備工程は、筒状カバーを形成する工程を含む。
筒状カバー形成装置は、
図7に示されるように、例えば、成形ドラム38を有する。成形ドラム38は、中央ドラム部38cと、一対の側ドラム部38sとを備える。側ドラム部38sは中央ドラム部38cの軸方向外側に位置する。中央ドラム部38cの外径は側ドラム部38sの外径よりも大きい。これにより、中央ドラム部38cと側ドラム部38sとの間に段差部38bが設けられる。図示されないが、成形ドラム38の軸芯は、例えば、電動機に接続される。成形ドラム38はその軸心回りに回転可能である。成形ドラム38の軸芯はタイヤ2の回転軸に対応する。
【0054】
図1のタイヤ2のための筒状カバーは、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10及びインナーライナー12を含む。
筒状カバーの形成工程では、シート状に加工されたサイドウォール6、カーカス10(すなわち、カーカスプライ22)及びインナーライナー12が準備される。そして、コア18の外周面にエイペックス20を設けた、リング状のビード8が準備される。
【0055】
インナーライナー12及びカーカスプライ22が成形ドラム38に巻かれる。これにより、
図7(a)に示されるように、カーカスプライ22が外側に位置する筒状部材が得られる。一対のビード8がそれぞれ軸方向外側から筒状部材に嵌め合わされる。
図7(b)に示されるように、それぞれのビード8は段差部38bにセットされる。
図7(c)に示されるように、カーカスプライ22の外側部分が、図示されない折り返し手段(例えば、ブラダー)によって折り返される。これにより、カーカス10が構成される。
図7(d)に示されるように、一対のサイドウォール6がそれぞれ、カーカス10の外側に巻かれる。これにより、筒状カバー40が得られる。
図7において一点鎖線ALは筒状カバー40の軸方向中心線である。軸方向中心線ALはタイヤ2の赤道面に対応する。
【0056】
次にリング部材36と筒状カバー40とが組み合わされる。リング部材36と筒状カバー40との組み合わせに用いる組み合わせ装置は、
図8に示されるように、筒状カバー40を支持する一対のクランプリング42を備える。一対のクランプリング42はそれぞれ、筒状カバー40の両端をそれぞれ担持できる。
一対のクランプリング42は主軸44に支持される。主軸44は回転自在である。一対のクランプリング42は主軸44と一体となって回転できる。一対のクランプリング42は主軸44に沿って移動できる。一対のクランプリング42は互いに近接することができ、離間することもできる。
一対のクランプリング42は、互いに近接又は離間する方向に移動でき、筒状カバー40を支持する。
【0057】
組み合わせ装置は、筒状カバー40をトライダル状に変形させるためにブラダー46を備える。筒状カバー40をトライダル状に変形させることができるのであれば、ブラダー46は設けられなくてもよい。
ブラダー46は一対のクランプリング42に支持される。一対のクランプリング42はそれぞれ、外側クランプ42sと内側クランプ42uとを備える。ブラダー46の両端がそれぞれ、外側クランプ42sと内側クランプ42uとの間に挟まれ固定される。ブラダー46は、その内部に空気が充填されることで膨張し、内部から空気を排出することで収縮する。
ブラダー46は、一対のクランプリング42の第一クランプリング42と第二クランプリング42との間を架け渡し、膨張と収縮とが可能である。
【0058】
組み合わせ工程では、筒状カバー40が組み合わせ装置にセットされる。筒状カバー40の両端がそれぞれ、一対のクランプリング42のそれぞれで担持される。
図8に示されるように、筒状カバー40の両端をそれぞれ、一対のクランプリング42のそれぞれで担持した状態で、図示されない支持手段によって支持されたリング部材36の内側に、筒状カバー40が配置される。このとき、リング部材36の赤道REの位置と、筒状カバー40の軸方向中心線ALの位置とが一致するように、リング部材36に対して筒状カバー40が配置される。この成形方法の組み合わせ工程は、筒状カバー40の両端をそれぞれ、一対のクランプリング42のそれぞれで担持した状態で、リング部材36の内側に筒状カバー40を配置させる工程を含む。
【0059】
図8において符号DCで示される長さは、一対のビード8の第一ビード8におけるコア18の基準位置BBから第二ビード8におけるコア18の基準位置BBまでの軸方向距離である。本発明において、軸方向距離DCが、一対のクランプリング42間の距離、すなわち一対のクランプリング42の第一クランプリング42から第二クランプリング42までの軸方向距離として用いられる。前述したように、一対のクランプリング42は、互いに近接又は離間する方向に移動できる。そのため、一対のクランプリング42間の距離DC(以下、クランプリング間距離DC)は組み合わせ工程の状況に応じて調整できる。
リング部材36の内側に筒状カバー40を配置させる際の、クランプリング間距離DCは、前述のプロファイルデッキ30のデッキ幅Hwよりも長い。これにより、筒状カバー40に弛みが生じることなく、リング部材36の内側に筒状カバー40が配置される。
【0060】
リング部材36の内側に筒状カバー40を配置させると、ブラダー46の内部に空気が充填される。
図9に示されるように、ブラダー46が膨らむとともに筒状カバー40が膨らみ、筒状カバー40がトロイダル状に変形する。これにより、筒状カバー40がリング部材36に内側から押し当てられる。組み合わせ装置にブラダー46が設けられていない場合は、筒状カバー40の内部に空気が直接充填される。
詳述しないが、ブラダー46の内圧は、2ステージ成形法で一般的に設定されるブラダーの内圧に設定される。
【0061】
組み合わせ装置は、ローラー48を備える。ローラー48はリング部材36の径方向外側に配置される。詳述しないが、ローラー48は、リング部材36にその外側から内側に向けて力を付与できる。このローラー48はさらに、リング部材36に沿って軸方向に移動できる。このローラー48は、リング部材36に向けて力を付与しながら、リング部材36に沿って軸方向に移動できる。
【0062】
組み合わせ装置は、
図9に示されるように、一対のローラー48を備える。一対のローラー48は、リング部材36の径方向外側においてリング部材36の赤道REを挟むように配置される。それぞれのローラー48は、リング部材36の外側から内側に向けてリング部材36に力を付与しながら赤道REから端に向かって移動する。これにより、リング部材36が筒状カバー40に押し当てられる。
【0063】
この組み合わせ工程では、筒状カバー40を膨らませて筒状カバー40がリング部材36に内側から押し当てられるとともに、ローラー48を用いてリング部材36の赤道REから端に向かってリング部材36が外側から筒状カバー40に押し当てられ、リング部材36と筒状カバー40とが接合される。
この成形方法の組み合わせ工程は、筒状カバー40を膨らませて筒状カバー40をリング部材36に内側から押し当てるとともに、ローラー48を用いてリング部材36の赤道REから端に向かってリング部材36を外側から筒状カバー40に押し当てて、リング部材36と筒状カバー40とを接合する工程を含む。
【0064】
前述したように、タイヤ2においてバンド14はその全体がトレッド4で覆われる。トレッド4はバンド14の幅よりも広い幅を有する。しかも未架橋状態のトレッド4は軟質である。リング部材36は、
図6に示されるように、トレッド4のうち、バンド14の端から突出している部分が内向きに折れ曲がる傾向にある。そのため、リング部材36と筒状カバー40とを組み合わせる際、リング部材36の端部は、筒状カバー40と最初に接触しやすい。端部の接触状態によっては、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材36と筒状カバー40との間に挟まれることがある。この場合、リング部材36の端部にエアーを巻き込んだ部分が形成される。加硫工程においてこのエアーを十分に排出できなければ、ベア等の外観不良が生じる恐れがある。
タイヤ2の運動性能の向上が考慮され、比(Hd/Hw)が約0.26以上に設定されたプロファイルデッキ30を使用した場合、リング部材36の端部にエアーが巻き込まれやすく、外観不良が生じやすい。
【0065】
クランプリング間距離DCを狭めて、リング部材36を筒状カバー40に接合すると、リング部材36の端部が筒状カバー40に最初に接触することが抑制される。しかしこの場合、リング部材36の軸方向外側部分において、筒状カバー40がリング部材36から離れて配置される。そのため、リング部材36の軸方向外側部分を筒状カバー40に接合する際、ローラー48によってリング部材36が圧し伸ばされ、トレッド4に皺が生じる恐れがある。
クランプリング間距離DCを拡げて、リング部材36を筒状カバー40に接合すると、筒状カバー40がリング部材36を押し広げるので、リング部材36の折れ曲がりの程度を弱めることができる。しかしこの場合、赤道面の部分において筒状カバー40が径方向内向きに引っ張られるように力が作用する。そのため、この赤道面の部分においてリング部材36と筒状カバー40との接合が不十分となりやすく、リング部材36から筒状カバー40が剥がれる恐れがある。リング部材36と筒状カバー40とが接合している場合には、生タイヤの赤道面の部分が変形する恐れがある。
【0066】
この成形方法の接合工程では、まず、ローラー48をリング部材36の赤道REから軸方向外向きに移動させることで、リング部材36の一部が筒状カバー40に接合される。接合工程は、リング部材36の一部を筒状カバー40に接合する第一接合工程を含む。
第一接合工程におけるクランプリング間距離DCは、クランプリング間距離DCpに設定される。クランプリング間距離DCpは、前述のプロファイルデッキ30のデッキ幅Hwよりも長い。
【0067】
リング部材36の一部が筒状カバー40に接合されると、
図10に示されるように、クランプリング42を軸方向外側に移動させ、クランプリング間距離DCが拡げられる。そして、ローラー48を軸方向外向きにさらに移動させることで、リング部材36の残部が筒状カバー40に接合される。この接合工程は、リング部材36の残部を筒状カバー40に接合する第二接合工程をさらに含む。そして、この第二接合工程におけるクランプリング間距離DCが、に設定される。クランプリング間距離DCfは、第一接合工程におけるクランプリング間距離DCpよりも長い。
【0068】
この成形方法の接合工程は、リング部材36の一部を筒状カバー40に接合する第一接合工程と、リング部材36の残部を筒状カバー40に接合する第二接合工程とを含む。そして、第一接合工程におけるクランプリング間距離DCpはプロファイルデッキ30のデッキ幅Hwよりも長く、第二接合工程におけるクランプリング間距離DCfは第一接合工程におけるクランプリング間距離DCpよりも長い。
【0069】
この成形方法では、リング部材36の一部を筒状カバー40に接合する際のクランプリング間距離DCpはプロファイルデッキ30のデッキ幅Hwよりも長い。この第一接合工程は、筒状カバー40に弛みを生じさせることなく、リング部材36の一部を筒状カバー40に接合できる。リング部材36と筒状カバー40との間にエアーが巻き込むことが抑制される。
【0070】
この成形方法では、第一接合工程の後、クランプリング42を軸方向外向きに移動させて、クランプリング間距離DCは拡げられる。筒状カバー40のビード8の部分が軸方向外向きに移動する。このとき移動する筒状カバー40が、リング部材36の端部を含む部分を、外向きに押し出す。これにより、リング部材36の折れ曲がりの程度が弱められる。そのため、リング部材36と筒状カバー40とを組み合わせる際、リング部材36の端部が、筒状カバー40と最初に接触することが抑制される。仮に、リング部材36の端部が、筒状カバー40と最初に接触したとしても、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材36と筒状カバー40との間に挟まれることが抑制される。この成形方法は、リング部材36の端部にエアーを巻き込みにくい。しかも第一接合工程が、赤道面の部分においてリング部材36と筒状カバー40とを十分に接合させる。
この成形方法は、ベア等の外観不良の発生を抑制できる。タイヤ2の運動性能の向上が考慮され、前述の比(Hd/Hw)が約0.26以上に設定されたプロファイルデッキ30を使用した場合においても、リング部材36の端部にエアーが巻き込まれにくく、外観不良が生じにくい。
この成形方法及びこの成形方法で得られる生タイヤは、高品質なタイヤの安定製造に貢献できる。
【0071】
この成形方法では、第一接合工程におけるクランプリング間距離DCpの、プロファイルデッキ30のデッキ幅Hwに対する比率(DCp/Hw)は110%以上130%以下であるのが好ましい。
比率(DCp/Hw)が110%以上に設定されることにより、筒状カバー40に弛みを生じさせることなく、リング部材36の一部を筒状カバー40に十分に接合できる。リング部材36と筒状カバー40との間にエアーが巻き込むことが抑制される。この観点から、比率(DCp/Hw)は115%以上であるのがより好ましい。
比率(DCp/Hw)が130%以下に設定されることにより、赤道面の部分において筒状カバー40が径方向内向きに引っ張られるように力が作用することが抑制される。この成形方法では、赤道面においてリング部材36と筒状カバー40とが十分に接合するので、リング部材36から筒状カバー40が剥がれにくい。この観点から、比率(DCp/Hw)は125%以下であるのがより好ましい。
【0072】
この成形方法では、第二接合工程におけるクランプリング間距離DCfの、プロファイルデッキのデッキ幅Hwに対する比率(DCf/Hw)は120%以上140%以下であるのが好ましい。
比率(DCf/Hw)が120%以上に設定されることにより、リング部材36の端部が、筒状カバー40と最初に接触することが抑制される。仮に、リング部材36の端部が、筒状カバー40と最初に接触したとしても、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材36と筒状カバー40との間に挟まれることが抑制される。この成形方法は、リング部材36の端部にエアーを巻き込みにくい。この観点から、比率(DCf/Hw)は125%以上であるのがより好ましい。
比率(DCf/Hw)が140%以下に設定されることにより、赤道面の部分において筒状カバー40が径方向内向きに引っ張られるように力が作用することが抑制される。この成形方法では、リング部材36から筒状カバー40が剥離することが抑制される。リング部材36と筒状カバー40とが接合している場合には、生タイヤが赤道面の部分において変形することが抑制される。この観点から、比率(DCf/Hw)は135%以下であるのがより好ましい。
【0073】
ベア等の外観不良の発生を抑制でき、高品質なタイヤ2の安定製造に貢献できる観点から、比率(DCp/Hw)が110%以上130%以下であり、比率(DCf/Hw)が120%以上140%以下であるのがより好ましい。
【0074】
前述したように、第一接合工程では、リング部材36の一部が筒状カバー40に接合される。
図9において二点鎖線FLで示される位置は、リング部材36の一部を筒状カバー40に接合した際のローラー48の中心線の位置を示す。言い換えれば、第一接合工程では、
図9に示される、一対のローラー48の第一ローラー48の中心線FL1から第二ローラー48の中心線FL2までのゾーンにおけるリング部材36が筒状カバー40に接合される。
【0075】
図9において符号PF1で示される位置は、第一ローラー48の中心線FL1とリング部材36の内面との交点である。符号PF2で示される位置は、第二ローラー48の中心線FL2とリング部材36の内面との交点である。符号AFで示される長さは、リング部材36の内面に沿って計測される、交点PF1から交点PF2までの距離である。本発明において距離AFは、第一接合工程において、リング部材36が筒状カバー40に接合される長さである。
【0076】
この成形方法では、第一接合工程において、リング部材36が筒状カバー40に接合される長さAFは、プロファイルデッキ30の子午線断面における成形面32の輪郭線長さLPの40%以上50%以下であるのが好ましい。これにより、第二接合工程においてクランプリング間距離DCを拡げるためにクランプリング42を軸方向外向きに移動させることが、リング部材36の端部を含む部分を、外向きに押し出すことに効果的に貢献できる。リング部材36の折れ曲がりの程度が弱められるので、リング部材36と筒状カバー40とを組み合わせる際、リング部材36の端部が、筒状カバー40と最初に接触することが抑制される。仮に、リング部材36の端部が、筒状カバー40と最初に接触したとしても、端部の先がさらに折れ曲がりリング部材36と筒状カバー40との間に挟まれることが抑制される。この成形方法は、リング部材36の端部にエアーを巻き込みにくい。この成形方法は、ベア等の外観不良の発生を抑制できる。この観点から、長さAFは輪郭線長さLPの43%以上47%以下であるのが好ましい。特に好ましくは、長さAFは輪郭線長さLPの45%である。
【0077】
以上説明したように、本発明によれば、高品質なタイヤの安定製造に貢献できる、生タイヤ成形方法及びタイヤ製造方法が得られる。本発明は、二輪自動車用タイヤの製造において顕著な効果を奏する。
【実施例0078】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
図3-11を用いて説明した生タイヤ成形方法によって、
図1に示された構成を有する二輪自動車用タイヤの生タイヤを製造した。この生タイヤのためのプロファイルデッキの比(Hd/Hw)は0.29であった。
第一接合工程におけるクランプリング間距離DCpの、プロファイルデッキのデッキ幅Hwに対する比率(DCp/Hw)は110%であった。第二接合工程におけるクランプリング間距離DCfの、プロファイルデッキのデッキ幅Hwに対する比率(DCf/Hw)は140%であった。
【0080】
[比較例1]
従来の成形方法によって二輪自動車用タイヤの生タイヤを製造した。この生タイヤのためのプロファイルデッキは、実施例1のプロファイルデッキと同じである。
クランプリング間距離DCを変えることなく、接合工程は行われた。クランプリング間距離DCの、プロファイルデッキのデッキ幅Hwに対する比率(DC/Hw)は120%であった。
【0081】
[実施例2]
実施例1とは異なるサイズの生タイヤを製造した。この実施例2で使用したプロファイルデッキの比(Hd/Hw)は0.30であった。プロファイルデッキが異なる以外は実施例1と同様にして生タイヤを製造した。この実施例2のタイヤは、実施例1のタイヤとサイズは異なるが、実施例1のタイヤの構成と同じ構成を有する。
【0082】
[外観]
試作生タイヤの外観を観察し、エアの巻き込みや皺の発生の有無を確認した。その結果が、エアの巻き込みや皺の発生を確認した場合が「NG」で、エアの巻き込みや皺の発生を確認しなかった場合が「G」で、下記の表1に示されている。
【0083】
【0084】
表1に示されているように、実施例では、エアーの巻き込みや皺の発生は確認されなかった。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。本発明の成形方法は、高品質なタイヤの安定製造に貢献できる。
なお、比較例1の外観がNGであったため、従来の成形方法による、実施例2と同じプロファイルデッキを用いた生タイヤの試作は行わなかった。