(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106431
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240801BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240801BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C02F3/12 B ZAB
C02F3/12 N
C02F1/28 D
C02F11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010674
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】渕上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】牧田 晟洋
【テーマコード(参考)】
4D028
4D059
4D624
【Fターム(参考)】
4D028BA01
4D028BC18
4D028BD16
4D028BE00
4D028BE08
4D059AA04
4D059AA05
4D059BA12
4D059BB05
4D059BE42
4D059BE47
4D059BE51
4D059CA22
4D059CC10
4D624AA04
4D624AB04
4D624BB01
4D624BC01
4D624BC04
4D624CA01
4D624DB12
4D624DB15
(57)【要約】
【課題】下水や排水等の有機排水の処理に要する動力を低減すると共に、メタン発酵の発酵効率を高めることができ,さらに汚泥発生量も低減される有機性排水の処理方法を提供すること。
【解決手段】下記工程A~Eを含むことを特徴とする有機性排水の処理方法。
工程A:原水を固液分離装置2に供給する工程
工程B:前記固液分離装置2において、原水を固形分と、上澄水と、に分離する工程
工程C:前記工程Bで得られた前記固形分を、膜分離メタン発酵装置9において、嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を、膜分離装置で膜分離して膜透過水を得る工程
工程D:前記工程Bで得られた前記上澄水を好気的に生物処理する工程
工程E:前記工程Bにおける前記原水又は前記上澄水と吸着材とを接触させて前記原水又は前記上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程A~Eを含むことを特徴とする有機性排水の処理方法。
工程A:原水を固液分離装置に供給する工程
工程B:前記固液分離装置において、原水を固形分と、上澄水と、に分離する工程
工程C:前記工程Bで得られた前記固形分を、膜分離メタン発酵装置において、嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を、膜分離装置で膜分離して膜透過水を得る工程
工程D:前記工程Bで得られた前記上澄水を好気的に生物処理する工程
工程E:前記工程Bにおける前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させて前記原水又は前記上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程
【請求項2】
前記工程Eにおける、前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させる工程が、前記工程Aにおいて原水に吸着材を添加し混合する工程である、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項3】
前記工程Eにおける、前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させる工程が、前記上澄水に吸着材を添加し混合する工程である、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項4】
前記上澄水に吸着材を添加し混合する工程の後に、固液分離装置において上澄水と、吸着材と、を分離する工程を設けた、請求項3に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項5】
前記固液分離装置において分離された吸着材を前記工程Cにおいて、前記固形分と共に消化処理する、請求項4に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項6】
前記工程Eにおける、前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させる工程が、前記上澄水を、吸着材を充填したろ過槽に通水する工程である、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項7】
前記吸着材が、生物処理汚泥を炭化・賦活化して得られた活性炭である、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項8】
前記生物処理汚泥が前記工程Cで得られた前記嫌気性消化汚泥を含む、請求項7に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項9】
原水に、前記原水中の溶解性有機物を吸着する吸着材を添加し混合する吸着材添加装置と、
前記吸着材を添加した原水を、固形分と、上澄水と、に分離する固液分離装置と、
前記固形分を嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置によって、膜透過流と、濃縮流と、に分離する膜分離メタン発酵装置と、
前記固液分離装置で得られた前記上澄水を好気的に生物処理する好気的生物処理装置と、
を有することを特徴とする有機性排水の処理装置。
【請求項10】
原水を、固形分と、上澄水と、に分離する固液分離装置と、
前記固形分を嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置によって、膜透過流と、濃縮流と、に分離する膜分離メタン発酵装置と、
前記固液分離装置で得られた前記上澄水を好気的に生物処理する好気的生物処理装置と、
前記上澄水に、前記上澄水中の溶解性有機物を吸着する吸着材を添加し混合する吸着材添加装置と、
を有することを特徴とする有機性排水の処理装置。
【請求項11】
原水を、固形分と、上澄水と、に分離する固液分離装置と、
前記固形分を嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置によって、膜透過流と、濃縮流と、に分離する膜分離メタン発酵装置と、
前記固液分離装置で得られた前記上澄水中の溶解性有機物を吸着する吸着材を充填したろ過装置と、
前記ろ過装置から排出されたろ過水を好気的に生物処理する好気的生物処理装置と、
を有することを特徴とする有機性排水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、排水等の有機物を含有する被処理水を処理する水処理方法として、活性汚泥法などの好気性処理法が広く用いられている。このような好気的な活性汚泥法では、曝気を行う際にブロア等の設備が必要となるため、それを稼動させるための動力が必要となり、エネルギーの消費が比較的大きい。
【0003】
これに対し、嫌気性処理法は、有機物を分解する際の曝気を必要としない嫌気的な消化処理法が用いられ、処理に必要なエネルギー需要を大幅に削減することができ、また、バイオガスの形でエネルギー源を生成することができる。この生成されたバイオガスは、発電を通じてその他のプロセスのエネルギー源として使用したり、熱源として使用することができる。
このため、エネルギーの消費を抑える、および設備をコンパクト化する等の観点から、嫌気性処理法と膜分離法とを組み合わせた嫌気性膜分離法(以下、嫌気性MBR法とも記す)が注目されている。
【0004】
原水を直接嫌気性MBR法によってメタン発酵する方式は活性汚泥法などの好気処理プロセスに比べてメタンガスとして多くのエネルギーを回収できることがメリットであるが、低濃度の原水をMBRで処理するため大きな膜面積が必要となりコストが嵩むことが欠点であった。
【0005】
特許文献1に記載の排水処理システムは嫌気性MBR法の一例である。
図5に基づいて、特許文献1に記載の嫌気性MBR法について説明する。
排水処理システム1は、有機性排水から液分と固形分を分離する固液分離装置2と、固液分離装置2で分離された液分を嫌気性処理し、汚泥からろ過機構3を通過した処理水を得る第一嫌気性処理槽4と、固液分離装置2で分離された固形分を嫌気性処理する第二嫌気性処理槽5と、第二嫌気性処理槽5での汚泥を第一嫌気性処理槽4に供給する汚泥供給機構6と、を備える。
【0006】
特許文献2に記載の排水処理システムは嫌気性MBR法の一例である。
図6に基づいて、特許文献2に記載の嫌気性MBR法について説明する。
排水処理システム10はステージA(前段膜ろ過システム)、ステージB(嫌気性MBRシステム)、及び、任意に設けられるステージC(膜ろ過水処理システム)からなる。
ステージAの前段膜ろ過システムは、沈殿槽12、ろ過ユニット供給ポンプ14、ろ過ユニット16、スラリーポンプ18、および熱交換器20を含む。原水は、沈殿槽12に供給され、沈殿槽12において粉末活性炭などの吸着材を添加され、排水中の粒子状およびコロイド状物質の多くが沈殿槽12の底に沈降する。沈殿槽12の上澄水は、ろ過ユニット供給ポンプ14を使用してろ過ユニット16に供給される。ろ過ユニット16内には、MF膜又はUF膜が備えられており、膜透過流24はステージCに送られ、濃縮流26は沈殿槽12に返送される。
【0007】
一方、沈殿槽12内のスラリーは熱交換器20に送られて、熱交換器20内で加熱された後、ステージBの嫌気性MBRシステムに送られる。嫌気性MBRシステムは、嫌気性バイオリアクター30、膜ろ過ユニットポンプ32、および膜ろ過ユニット34を含んでおり、嫌気性膜分離(AnMBR)のための装置として構成される。
嫌気性バイオリアクター30は、微生物(嫌気性細菌)を使用してスラリー内の有機物質を分解してバイオガスを生成する。
【0008】
嫌気性バイオリアクター30のスラリーは膜ろ過ユニット供給ポンプ32を使用して膜ろ過ユニット34に送られる。ろ過ユニット34は、フィルタ36を備えており、スラリーを膜透過流38と濃縮流40とに分離し、濃縮流40は嫌気性バイオリアクター30に返送され、膜透過流38は処理水として排出される。
ステージAの分離サブシステムからの透過物は、必要に応じて、ステージCの膜ろ過水処理システムに送られ、藻類フォトバイオリアクター44および消毒システム46をへて処理水として排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5867796号公報
【特許文献2】国際公開第2016/141369号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の排水処理システムは固液分離した液分についても嫌気性MBR法による処理を行うため、この膜分離処理に大きな動力を必要とするという課題があった。
特許文献2に記載の排水処理システムは、沈殿槽の上澄水についてもろ過ユニット16で膜分離処理をしているため、この膜分離処理に大きな動力を必要とするという課題があった。また、特許文献2には、沈殿槽において粉末活性炭を添加する態様が示されているが、この粉末活性炭は、小さなコロイドを吸着または吸収して膜の汚れを減らし、小さなコロイドがろ過ユニット16のフィルタ22を通過するのを防ぎ、ステージBにおいて処理されることを確実にするために、沈殿槽12に任意に添加される。特許文献2に記載のものにおいては粉末活性炭を使用するのは上澄水をろ過ユニットで処理することが前提となっており、上記した課題を有する。
【0011】
本発明は、下水や排水等の有機性排水の処理に要する動力を低減すると共に、メタン発酵の発酵効率を高めることができ、さらに汚泥発生量も低減される有機性排水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下に記載する通りのものである。
下記工程A~Eを含むことを特徴とする有機性排水の処理方法。
工程A:原水を固液分離装置に供給する工程
工程B:前記固液分離装置において、原水を固形分と、上澄水と、に分離する工程
工程C:前記工程Bで得られた前記固形分を、膜分離メタン発酵装置において、嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を、膜分離装置で膜分離して膜透過水を得る工程
工程D:前記工程Bで得られた前記上澄水を好気的に生物処理する工程
工程E:前記工程Bにおける前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させて前記原水又は前記上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機性排水の処理方法を用いることにより、下水や排水等の原水を低動力で処理し、かつ、メタン発酵の発酵効率を高めることができるとともに汚泥発生量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の有機性排水の処理方法の実施形態を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の有機性排水の処理方法の実施形態を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明の有機性排水の処理方法の実施形態を説明する図である。
【
図4】
図4は、膜分離メタン発酵装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、従来の有機性排水の処理方法の概要を説明する図である。
【
図6】
図6は、従来の有機性排水の処理方法の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の有機性排水の処理方法は下記の工程A~Eを基本的な構成として備えている。
工程A:原水を固液分離装置に供給する工程
工程B:前記固液分離装置において、原水を固形分と、上澄水と、に分離する工程
工程C:前記工程Bで得られた前記固形分を、膜分離メタン発酵装置において、嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を、膜分離装置で膜分離して膜透過水を得る工程
工程D:前記工程Bで得られた前記上澄水を好気的に生物処理する工程
工程E:前記工程Bにおける前記原水又は前記上澄水と吸着材とを接触させて前記原水又は前記上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程
【0016】
以下、工程A~Eのそれぞれの工程について説明する。
[工程A]
工程Aは下水や排水などの原水を固液分離装置に供給する工程である。
[工程B]
工程Bは、原水を固液分離装置によって、固形分と、上澄水と、に固液分離する工程である。
固液分離装置としては沈降分離槽、粒状ろ過槽、ストレーナ、スクリーンろ過装置など適宜のものが使用できるが、沈降分離によって固液分離する方式のものが簡便で好ましい。
【0017】
[工程C]
工程Cは、前記工程Bで得られた固形分を膜分離メタン発酵装置(嫌気性MBR槽)において嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置で膜分離して膜透過水を得る工程である。
図4に基づいて工程Cを説明する。
工程Cでは、工程Bで固液分離装置2によって固形分WIと上澄水W2とに分離し、分離された固形分W1を膜分離メタン発酵装置9において嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって生物処理を行うと共に、膜分離装置10を用いて嫌気性消化汚泥から膜透過流W3を得る。
膜分離メタン発酵装置9ではメタンガスが生成し、このメタンガスは適宜のメタン利用設備に送られる。
また、膜分離メタン発酵装置9からは嫌気性消化汚泥が抜き出されて、一部は返送汚泥W4として膜分離メタン発酵装置9に戻され、残部は余剰汚泥W5として系外に排出される。
工程Cでは、工程Bで固液分離装置2によって分離された固形分W1のみを膜分離メタン発酵装置9で処理するため、膜分離メタン発酵装置9での処理水量を低減することができる。このため、膜分離装置10の必要膜面積を小さくすることができ、かつ、汚泥濃度を高く保つことで発酵効率を高めることができる。
【0018】
図4に示した例では、分離膜を生物反応槽内に浸漬させた浸漬型膜分離メタン発酵装置を示した。
しかしながら、生物反応槽と分離膜槽とを分離して設け、生物反応槽で生物処理した嫌気性消化汚泥を分離膜槽で膜分離処理してもよい。
【0019】
[工程D]
工程Dは、工程Bで得られた上澄水W1を好気的に生物処理する工程である。
好気的に生物処理を行う方法としては、一般に普及している方式を広く使用することができる。具体的には、活性汚泥法、担体投入型活性汚泥法、膜分離活性汚泥法等の浮遊生物処理法、生物膜ろ過法、散水ろ床法、回転円板法等の固定床生物処理法を挙げることができる。
【0020】
<浮遊生物処理法>
-活性汚泥法-
活性汚泥法は、酸素を供給するための設備を有する曝気槽内で被処理水を生物処理する方法である。曝気槽の槽底部には散気管が設けられており、ここから空気を微細な気泡にして槽内に噴出させる。
曝気槽内の活性汚泥には好気性微生物が多く含まれており、この微生物の生物化学的酸化反応により汚濁物質を酸化分解し、分解物を後の沈降分離装置で沈殿させる。
【0021】
-担体投入型活性汚泥法-
担体投入型活性汚泥法は微生物の固定化を目的とした担体を曝気槽に投入して生物処理を行う方法であり、微生物を高濃度に保持することで、短時間で汚濁物質を酸化分解することができる。
【0022】
-膜分離活性汚泥法-
膜分離活性汚泥法は、曝気槽内に孔径0.1~0.4μmの精密ろ過膜や分画分子量1,000~100万程度の限外ろ過膜を設置して固液分離を行うことで固液分離を行う活性汚泥法であり、汚泥を沈降させる必要が無いため、反応タンクの活性汚泥濃度を高く設定ででき、コンパクトなシステムでありながら高度な処理水を得ることができる。
【0023】
<固定床生物処理法>
-生物膜ろ過法-
懸濁性物質の捕捉と溶解性物質の分解機能を兼ねた浄化システムで、空隙率の少ないろ床とし、粒状または中空状の担体等をろ過材として利用することが多い。
【0024】
-散水ろ床法-
散水ろ床法は生物膜法の一種であり、池の中に砕石などのろ過材を高さ1.5~2m程度に充填し、間欠的または連続的に被処理水をろ過材表面に散布し、ろ過材表面に形成された生物膜と接触反応させる固定床による処理法である。
ろ過材としてはφ35~100mmの砕石または砂利を用いる。散水方式には固定式と可動式の2形式がある。可動式にはガーダ走行式と回転式とがある。
【0025】
-回転円板法-
回転円板法は、一本の回転軸に、合成樹脂製の円板を数センチ間隔で数百枚固定し、それを汚水などの入った水槽に円板のおおよそ半分近くが浸漬するように設置して回転させる。 円板表面に生長する微生物によって水質浄化を行う典型的な付着生物膜法汚水処理装置である。
【0026】
<固液分離装置>
曝気槽での曝気処理によって得られた曝気処理水を固液分離装置で上澄水(好気処理水)と固形分(余剰汚泥)とに分離し、余剰汚泥の一部を曝気槽に返送汚泥として返送し残部を排出する。
【0027】
[工程E]
工程Eは、固液分離装置に供給される原水又は工程Bで得られた上澄水と、吸着材とを接触させて原水又は上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程である。
この工程により、溶解性有機物は吸着材に吸着される。そして、この吸着材は固形分として、工程Cにおいて膜分離メタン発酵装置において処理されるので、発酵ガスの収率を高めることができる。
【0028】
原水又は工程Bで得られた上澄水と、吸着材とを接触させる方法としては次の3つの方法がある。
(1)工程Aにおける原水に吸着材を添加して混合する方法
(2)工程Bにおいて得られた上澄水に吸着材を添加して混合する方法
(3)工程Bにおいて得られた上澄水を吸着材を充填したろ過槽に通水する方法
【0029】
[第1の実施形態]
本実施形態は、原水を固液分離する前に原水と吸着材とを接触させて原水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程を有する。
図1に基づいて本実施形態を説明する。
この排水処理方法は次の工程を備えている。
工程a:原水を原水供給管1によって混和槽22において原水1に吸着材を混合して、原水1と吸着材とからなる混和水を得る工程
工程b:工程aで得られた混和水を混和水移送管23で固液分離装置(最初沈殿池)2に移送する工程
工程c:混和水を固液分離装置(最初沈殿池)2において上澄水と固形分とに分離する工程
工程d:工程cで得られた固形分を初沈汚泥移送管8によって嫌気性MBR槽9に移送する工程
工程e:嫌気性MBR槽9内の有機分を、嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって生物処理を行って発酵ガスを発生させると共に、前記嫌気性消化汚泥を、膜分離装置10を用いて膜分離して膜透過流を得る工程
工程f:工程eで得られた、発酵ガスを発酵ガス移送管11によって排出し、膜透過水を膜透過水移送管12によって排出し、嫌気性消化汚泥の一部を嫌気性消化汚泥移送管13によって汚泥濃縮器16に移送する工程
工程g:汚泥濃縮器16で汚泥を濃縮して分離液を分離液移送管17によって排出し、濃縮汚泥を濃縮汚泥移送管18によって排出する工程
工程h:工程gで濃縮汚泥移送管18によって排出された濃縮汚泥の一部を炭化原料供給管19によって炭化炉20に移送する工程
工程i:炭化炉20で濃縮汚泥を炭化し賦活して活性炭を得る工程
工程j:工程iで得られた活性炭を工程aに送る工程
工程k:工程cで得られた上澄水を上澄水移送管3によって曝気槽4に移送する工程
工程l:工程kによって曝気槽に移送された上澄水を曝気槽4で好気処理する工程
工程m:曝気処理された曝気処理水を曝気処理水移送管5によって固液分離装置(最終沈殿池)6に移送する工程
工程n:曝気処理水を最終沈殿池6で上澄水(好気処理水)と固形分とに固液分離する工程
工程o:工程nで得られた上澄水を好気処理水移送管7によって排出する工程
工程p:工程nで得られた固形分の一部を返送汚泥移送管15によって曝気槽4に返送すると共に、残部を余剰汚泥移送管14によって汚泥濃縮器16に移送する工程
【0030】
[第2の実施形態]
本実施形態は、原水1を固液分離したのちに、固液分離によって得られた上澄水に吸着材を添加し、混合して上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程を有する。
図2に本実施形態のフロー図を示した。
本実施形態は第1の実施形態における工程a、bを採用せず、工程kを次の工程k1に置き換えたものである。
工程k1: 工程cで得られた上澄水を上澄水移送管3によって混和槽22に供給し、次いで、得られた混和水を固液分離装置2で上澄水と固形分とに分け、上澄水と曝気槽4に移送する工程
本実施形態においては、混和槽22において上澄水に添加された吸着材は混和水移送管23によって固液分離装置30に移送され、固液分離装置30において上澄水と、吸着材を含む固形分と、に分離される。吸着材を含む固形分は、固形分移送管31によって移送され、初沈汚泥移送管8の汚泥と合流し、嫌気性MBR槽9で嫌気性消化汚泥によって消化処理される。
【0031】
[第3の実施形態]
本実施形態は原水1を固液分離したのちに、固液分離によって得られた上澄水を、吸着材を充填したろ過槽に通水して、上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程を有する。
図3に本実施形態のフロー図を示した。
本実施形態は第1の実施形態における工程a、b、cに代えて、下記の工程c1と工程c2を工程dの前段に設け、さらに工程kを下記の工程k2に置き換えたものである。
工程c1:原水1を固液分離装置(最初沈殿池)2において上澄水と固形分とに分離し、得られた上澄水を上澄水移送管41によって吸着材を充填したろ過槽40に供給する工程
工程c2:工程c1によってろ過槽40に移送された上澄水中をろ過槽40において吸着処理し、上澄水中の有機物を吸着材へ吸着させる工程
工程k2:工程c2で得られたろ過水をろ過水移送管41によって曝気槽4に移送する工程
【0032】
本発明の態様は例えば以下のとおりである。
(1)下記工程A~Eを含むことを特徴とする有機性排水の処理方法。
工程A:原水を固液分離装置に供給する工程
工程B:前記固液分離装置において、原水を固形分と、上澄水と、に分離する工程
工程C:前記工程Bで得られた前記固形分を、膜分離メタン発酵装置において、嫌気性微生物を含む嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を、膜分離装置で膜分離して膜透過水を得る工程
工程D:前記工程Bで得られた前記上澄水を好気的に生物処理する工程
工程E:前記工程Bにおける前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させて前記原水又は前記上澄水中の溶解性有機物を吸着材に吸着させる工程
(2)前記工程Eにおける、前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させる工程が、前記工程Aにおいて原水に吸着材を添加し混合する工程である、上記(1)に記載の有機性排水の処理方法。
(3)前記工程Eにおける、前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させる工程が、前記上澄水に吸着材を添加し混合する工程である、上記(1)に記載の有機性排水の処理方法。
(4)前記上澄水に吸着材を添加し混合する工程の後に、固液分離装置において上澄水と、吸着材と、を分離する工程を設けた、上記(3)に記載の有機性排水の処理方法。
(5)前記固液分離装置において分離された吸着材を前記工程Cにおいて、前記固形分と共に消化処理する、上記(4)に記載の有機性排水の処理方法。
(6)前記工程Eにおける、前記原水又は前記上澄水と、吸着材と、を接触させる工程が、前記上澄水を、吸着材を充填したろ過槽に通水する工程である、上記(1)に記載の有機性排水の処理方法。
(7)前記吸着材が、生物処理汚泥を炭化・賦活化して得られた活性炭である、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の有機性排水の処理方法。
(8)前記生物処理汚泥が前記工程Cで得られた前記嫌気性消化汚泥を含む、上記(7)に記載の有機性排水の処理方法。
(9)原水に、前記原水中の溶解性有機物を吸着する吸着材を添加し混合する吸着材添加装置と、
前記吸着材を添加した原水を、固形分と、上澄水と、に分離する固液分離装置と、
前記固形分を嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置によって、膜透過流と、濃縮流と、に分離する膜分離メタン発酵装置と、
前記固液分離装置で得られた前記上澄水を好気的に生物処理する好気的生物処理装置と、
を有することを特徴とする有機性排水の処理装置。
(10)原水を、固形分と、上澄水と、に分離する固液分離装置と、
前記固形分を嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置によって、膜透過流と、濃縮流と、に分離する膜分離メタン発酵装置と、
前記固液分離装置で得られた前記上澄水を好気的に生物処理する好気的生物処理装置と、
前記上澄水に、前記上澄水中の溶解性有機物を吸着する吸着材を添加し混合する吸着材添加装置と、
を有することを特徴とする有機性排水の処理装置。
(11)原水を、固形分と、上澄水と、に分離する固液分離装置と、
前記固形分を嫌気性消化汚泥によって消化処理すると共に、前記嫌気性消化汚泥を膜分離装置によって、膜透過流と、濃縮流と、に分離する膜分離メタン発酵装置と、
前記固液分離装置で得られた前記上澄水中の溶解性有機物を吸着する吸着材を充填したろ過装置と、
前記ろ過装置から排出されたろ過水を好気的に生物処理する好気的生物処理装置と、
を有することを特徴とする有機性排水の処理装置。
【符号の説明】
【0033】
(
図1~4について)
1 原水供給管
2 固液分離装置、最初沈殿池
3 上澄水移送管
4 曝気槽
5 曝気処理水移送管
6 固液分離装置、最終沈殿池
7 好気処理水移送管
8 初沈汚泥移送管
9 膜分離メタン発酵装置、嫌気性MBR槽
10 膜分離装置
11 発酵ガス移送管
12 膜透過水移送管
13 嫌気性消化汚泥移送管
14 余剰汚泥移送管
15 返送汚泥移送管
16 汚泥濃縮器
17 分離液移送管
18 濃縮汚泥移送管
19 炭化原料供給管
20 炭化炉
21 活性炭供給ライン
22 混和槽
23 混和水移送管
30 固液分離装置
31 固形分
32 上澄水移送管
40 ろ過槽
41 ろ過水移送管
W1 固形分
W2 上澄水
W3 膜透過流
W4 返送汚泥
W5 余剰汚泥
【0034】
(
図5について)
1 排水処理システム
2 固液分離装置
3 ろ過機構
4 第一嫌気性処理槽
5 第二嫌気性処理槽
6 汚泥供給機構
7 膜分離装置
8 散気装置
9 加温機構
10 脱水装置
【0035】
(
図6について)
10 排水処理システム
12 沈殿槽
14 濾過ユニット供給ポンプ
16 濾過ユニット
18 スラリーポンプ
20 熱交換器
24 膜透過流
26 濃縮流
30 嫌気性バイオリアクター
32 膜濾過ユニットポンプ
34 膜濾過ユニット
36 フィルタ
38 膜透過流
40 濃縮流
44 藻類フォトバイオリアクター
46 消毒システム