(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106434
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】バックライト及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240801BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F21S2/00 481
G02F1/13357
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010677
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 倫秀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真文
【テーマコード(参考)】
2H391
3K244
【Fターム(参考)】
2H391AA03
2H391AB04
2H391AC13
2H391AC32
2H391AD35
2H391AD38
3K244AA01
3K244BA16
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244GA01
3K244GA02
3K244GB02
3K244GB13
3K244GC02
3K244GC13
(57)【要約】
【課題】液晶表示装置からの出射光の配光分布を非対称とすることが出来るバックライトを実現する。
【解決手段】
本発明によるバックライトは次のような構成である。複数のLEDと、前記LEDに対向してプリズムシートが配置したバックライトであって、前記プリズムシートは、前記LEDと対向する第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面を有し、前記第1の面には、第1の底辺と第1のピッチL1を有する第1のプリズムが形成され、前記第2の面には、長さがL2である第2の底辺と、第1の底角θ1と、第1の底角よりも小さい第2の底角θ2を有する不等辺3角形である断面を有する第2のプリズムが形成され、L2<L1、であることを特徴とするバックライト。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDと、前記LEDに対向してプリズムシートが配置したバックライトであって、
前記プリズムシートは、前記LEDと対向する第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面を有し、
前記第1の面には、第1の底辺と第1のピッチL1を有する第1のプリズムが形成され、
前記第2の面には、長さがL2である第2の底辺と、第1の底角と、第1の底角よりも小さい第2の底角を有する不等辺3角形である断面を有する第2のプリズムが形成され、
L2<L1
であることを特徴とするバックライト。
【請求項2】
前記第1のプリズムの前記底辺の長さは、前記第1のピッチL1と同じであることを特徴とするプリズムシートを有する請求項1に記載のバックライト。
【請求項3】
前記第1のプリズムの断面は、2等辺3角形であることを特徴とする請求項1に記載のバックライト。
【請求項4】
前記プリズムシートにおいて、L2/L1は0.5以上0.7以下であることを特徴とする請求項1に記載のバックライト。
【請求項5】
前記プリズムシートにおいて、前記第1の底角は、80度以上で90度以下であることを特徴とする請求項1に記載のバックライト。
【請求項6】
前記プリズムシートにおいて、前記第2の底角は、20度以上で30度以下であることを特徴とする請求項1に記載のバックライト。
【請求項7】
前記複数のLEDと前記プリズムシートの間には、拡散シートが配置していることを特徴とする請求項1に記載のバックライト。
【請求項8】
液晶表示パネルの背面にバックライトが配置した液晶表示装置であって、
前記バックライトは、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のバックライトであることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型で、配光分布が法線に対して非対称であるバックライト及びこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、自動車のダッシュボードに配置されている種々の表示装置は、バックライトを用いた液晶表示装置によって置き換えられている。さらに、カーナビゲーションやTV等の表示装置も配置されている。
【0003】
自動車に搭載される表示装置は、通常の表示装置とは異なる特性を要求される。例えば、表示画面のフロントガラスへの映り込みを防止するために、表示装置からの、上側への配光を減らす、あるいは、表示装置をダッシュボードの中央に配置したような場合、運転席と助手席の両方からみることが出来るように、横方向には広い配光角を必要とする、等である。
【0004】
このような対策を行った液晶表示装置として、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示装置は、自動車のダッシュボードの色々な位置に配置されるので、ドライバから見やすいように、横方向には、広い視野角をとれるような表示装置が必要とされる。言い換えると、液晶表示装置を出射した光は、横方向に広い配光角を持つ必要がある。
【0007】
表示装置が横方向に広い配光角を持つと、自動車のドアガラスに表示が映り込む場合がある。ドアガラスの外側には、サイドミラーが配置されている。すなわち、ドアガラスに表示装置の表示が映り込むと、サイドミラーが見えなくなり、運転の安全性が阻害される。
【0008】
ところで、液晶は自ら発光しないので、バックライトを必要とする。以上のような、液晶表示装置の配光特性は、バックライトの配光特性と言い換えることが出来る。本発明の課題は、運転席及び助手席からは、表示を視認でき、ドアガラスには映り込まないような液晶表示装置、あるいは、バックライトを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)複数のLEDと、前記LEDに対向してプリズムシートが配置したバックライトであって、前記プリズムシートは、前記LEDと対向する第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面を有し、前記第1の面には、第1の底辺と第1のピッチL1を有する第1のプリズムが形成され、前記第2の面には、長さがL2である第2の底辺と、第1の底角と、第1の底角よりも小さい第2の底角を有する不等辺3角形である断面を有する第2のプリズムが形成され、L2<L1、であることを特徴とするバックライト。
【0011】
(2)前記プリズムシートにおいて、L2/L1は0.5以上0.7以下であることを特徴とする(1)に記載のバックライト。
【0012】
(3)前記プリズムシートにおいて、前記第1の底角は、80度以上で90度以下であることを特徴とする(1)に記載のバックライト。
【0013】
(4)前記プリズムシートにおいて、前記第2の底角は、20度以上で30度以下であることを特徴とする(1)に記載のバックライト。
【0014】
(5)液晶表示パネルの背面にバックライトが配置した液晶表示装置であって、前記バックライトは、(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のバックライトであることを特徴とする液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】本発明で意図するバックライトの輝度分布である。
【
図6B】通常の逆プリズムシートによる輝度分布の例である。
【
図7A】)断面が不等辺3角形のプリズムシートの断面図である。
【
図7B】断面が不等辺3角形のプリズムアレイによる輝度分布の例である。
【
図8A】本願発明によるプリズムシートの断面図である。
【
図8B】本発明によるプリズムシートの断面図と、対応する輝度分布の例である。
【
図9】シミュレーションに用いた、本発明によるプリズムシートの各寸法を定義した断面図である。
【
図10A】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、L2/L1を0.5、第2の角度θ2を10度にした場合の、輝度分布の例を示すフラフである。
【
図10B】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5、第2の角度θ2を20度にした場合の、輝度分布の例を示すフラフである。
【0016】
【
図10C】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、L2/L1を0.5、第2の角度θ2を30度にした場合の、輝度分布の例を示すフラフである。
【
図10D】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、L2/L1を0.5、第2の角度を40度にした場合の、輝度分布の例を示すフラフである。
【
図10E】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、L2/L1を0.5、第2の角度を50度にした場合の、輝度分布の例を示すフラフである。
【
図11A】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、第2の角度θ2を30度、L2/L1を0.5にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図11B】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、第2の角度θ2を30度、L2/L1を0.6にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図11C】異方性プリズムの第1の角度θ1を70度、第2の角度θ2を30度、L2/L1を0.7にとした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図12A】異方性プリズムの第2の角度θ2を20度、L2/L1を0.5、第1の角度θ1を70度にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図12B】異方性プリズムの第2の角度θ2を20度、L2/L1を0.5、第1の角度θ1を80度にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図12C】異方性プリズムの第2の角度θ2を20度、L2/L1を0.5、第1の角度θ1を90度にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図13A】異方性プリズムの第2の角度θ2を30度、L2/L1を0.5、第1の角度θ1を70度にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図13B】異方性プリズムの第2の角度θ2を30度、L2/L1を0.5、第1の角度θ1を80度にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図13C】異方性プリズムの第2の角度θ2を30度、L2/L1を0.5、第1の角度θ1を90度にした場合の輝度分布を示すグラフである。
【
図14A】本発明における好適なプリズムシートの仕様の例である。
【
図15】本発明における好適なプリズムシートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に実施例によって本発明を詳細に説明する。
【実施例0018】
図1は液晶表示装置の平面図である。液晶表示装置は液晶表示パネルとバックライトから構成されているが、
図1では液晶表示パネルが見えている。
図1において、液晶表示パネルは、画素電極、映像信号線、走査線、TFT(Thin Film Transistor)等が形成されたTFT基板100と、ブラックマトリクスあるいはカラーフィルタ等が形成された対向基板200とが、周辺でシール材150を介して接着し、内部に液晶が封入されている構成である。
【0019】
図1において、対向基板200とTFT基板100とが重なった部分に表示領域が形成されている。表示領域には、走査線101が横方向に延在し、縦方向に配列している。また、映像信号線102が縦向に延在し、横方向に配列している。走査線101と映像信号線102に囲まれた領域に画素103が形成されている。画素103は表示領域にマトリクス状に形成されている。
【0020】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分は端子領域になっている。端子領域には、映像信号線102や走査線101と接続するドライバIC160が配置している。端子領域には、外部から信号や電源を供給するために、フレキシブル配線基板が接続するが、
図1では省略されている。
【0021】
図2は
図1のA-A断面図であり、液晶表示装置の断面図である。
図2において、TFT基板100及び対向基板200で構成される液晶表示パネル300の背面にバックライトが配置している。バックライトは直下型で、光源として複数のLED20が使用されている。
図2では、全体を収容する筐体は省略されている。
【0022】
バックライトは、下から順に、反射シート10、光源を構成する複数のLED20、拡散板30、下拡散シート40、逆プリズムシート50、上拡散シート60で構成されている。但し、
図2に示すバックライトの構成は例であり、いずれかの光学部品は省略されることもあるし、別な光学シートが加わることもある。
【0023】
図2において、反射シート10はLED20から下側に向かう光を液晶表示パネル300の方向に反射する。LED20は点光源なので、個々の点光源がスクリーンにて視認されないように、拡散板30が用いられている。拡散板30は、他の光学部品を載置する役割を有しているので、例えば、1.5mm程度と、厚く形成されている。拡散板30の撓みを防ぐために拡散板30と反射板10の間にスペーサが配置される場合もある。なお、
図2では例として拡散板30を使用しているが、必ずしも、板である必要はなく、拡散シートで置き換えてもよい。この場合、厚さも薄くしても良い。
【0024】
図2において、拡散板30の上に拡散シート40が配置し、拡散板30で拡散しきれなかった光をさらに拡散する。拡散シート30の上には、横方向に広がろうとする光を制御するために、プリズムシート50が配置している。
図2のプリズムシート50はプリズムアレイが下面に形成されている、いわゆる逆プリズムシートである。本発明は、後で説明するように、このプリズムシート50を特別な構造とすることによって、バックライトの必要な配光特性を得るものである。
図2において、プリズムシート50の上に、上拡散シート60が配置している。バックライト側の構成部品と液晶表示パネルに形成された、映像信号線102、走査線101、ブラックマトリクス等との干渉によるモアレを軽減するためである。
【0025】
図3は、自動車の前半部分を上から視た透視図である。
図3において、ボンネットの前にライト560が配置し、ボンネットからフロントガラス510が斜め上に形成され、その上に屋根が存在している。フロントガラス510の内側にはダッシュボード550が存在し、ダッシュボード550には液晶表示装置600が配置している。
図3において、ドアにはサイドミラー530が取り付けられ、運転手700は、ドアガラス520を介してサイドミラー530を視認する。
【0026】
ところが、
図3の矢印で示すように、液晶表示装置600からの出射光がドアガラス520に映り込み、反射して、運転手700のほうに向かうと、運転手700は、表示装置の画面をみることは出来るが、サイドミラー530を見ることが出来ないことになり、危険である。本発明は、このような問題を解決することである。
【0027】
図4A及び
図4Bは、通常の逆プリズムシートを使用した場合の配光分布である。
図4Aは、逆プリズムシートの断面図である。
図4Bは、
図4の逆プリズムシートを使用した場合の、バックライトの配光分布を示すグラフである。
図4Bにおいて、横軸は、天頂角(度)θであり、縦軸は、最大値を1としてノーマライズした輝度である。
図4の輝度分布は、ほぼ、正規分布となっている。
図4において、2本の直線の矢印で示した範囲がFWHM(Full Width Half Maximum)である。
【0028】
しかし、
図4のような配光分布だと、例えば、右側の配光が、ドアガラスに向かい、ドアガラスで反射して、運転手に向かい、運転手がサイドミラーを視る妨げになる。そこで、本発明では、例えば、右側の配光分布を減らし、その結果、例えば、
図5のような配光分布とする。
【0029】
図5において、横軸は天頂角であり、縦軸は輝度である。
図5において、右側の、ドアガラス側への分布は狭く、左側の、運転手側への分布は広くなっている。したがって、表示装置からドアガラス側に向かう光は少なくなり、ドアガラスで反射して運転手に向かう反射光もすくなくなる。したがって、サイドミラーを視る妨げにはならない。
【0030】
図6A乃至
図8Bは、
図5に示すような配光分布を持つバックライトを可能にする本発明におけるプリズムシート構成を説明する断面図である。
図6Aは、通常の逆プリズムシートの断面図である。
図6Aに示すように、矢印で示す、逆プリズムシートの法線方向と角度をもって入射した光は、逆プリズムシートによって屈折し、法線方向に出射する。
【0031】
図6Bは、これに対応する配光分布の例を示すグラフである。
図6Bにおいて、横軸は天頂角(度)、縦軸は、輝度の最大値を100として、ノーマライズしたものであり、単位はa.u. (arbitrary unit)である。
図6Bに示すように、逆プリズムシートによる光の配光分布は、ほぼ、正規分布である。
【0032】
図7Aは、プリズムシートの上側表面に、異方性プリズムアレイを形成した状態を示す断面図である。
図7Aに示すように、矢印で示す、プリズムシートの法線方向に沿って入射した光は、異方性プリズムシートによって左方向に屈折する。
【0033】
図7Bは、
図7Aプリズムシートに対応する配光分布の例を示すグラフである。
図7において、配光分布のピークは、横軸である天頂角のゼロの部分ではなく、例えば25度付近に存在している。すなわち、プリズムシートの法線方向に入射した光は、異方性プリズムシートによって、25度程度屈曲されてプリズムシートから出射する。
【0034】
図8A及び
図8Bは、
図6の特性と
図7の特性を併せ持つ、本発明によるプリズムシートの断面図と、その作用を示すグラフである。
図8Aは、本発明のプリズムシートの断面図である。
図8Aにおいて、プリズムシートの下側には、
図6と同様の逆プリズムアレイが形成されている。一方、
図8Aのプリズムシートの上面には、
図7に示すような、異方性プリズムアレイが形成されている。しかし、
図8では、
図7の異方性プリズムアレイがそのまま、形成されているわけではない。
【0035】
図8Aに示すように、プリズムシートの上側の例えば、半分の領域に異方性プリズムアレイが形成され、他の半分の領域はフラットである。したがって、
図8Aのプリズムシートから出射する光のうち、半分は、
図6のプリズムアレイの作用を受けた光が出射し、半分は、
図6のプリズムアレイと
図7プリズムアレイの作用を受けた光が出射する。
【0036】
図8Bは、
図8Aのプリズムシートに対応する光の配光分布を示すグラフである。
図8Bにおいて、横軸は天頂角、縦軸は輝度であるが、縦軸は、
図6及び
図7と比較可能とするために、最大値は50としてある。
図8において、プリズムシート全体としての配光分布は、実線で示したとおりである。この配光分布は、点線Aで示す、逆プリズムアレイのみの影響を受けた配光分布と、点線Bで示す、逆プリズムアレイと異方性プリズムアレイの両方の影響を受けた配光分布を合わせた形となっている。
【0037】
なお、異方性プリズムアレイが形成されている面積は、逆プリズムアレイが形成されている面積の半分に相当するので、点線Aと点線Bのピークは同じとなっている。ところで、
図8では、異方性プリズムアレイが形成されている面積は、逆プリズムアレイが形成されている面積の半分であるが、半分というのは例であり、どの程度が適切かは、後で説明する。
【0038】
図9乃至
図13は、本発明によるプリズムシートの構成と作用を説明する図面である。
図9は、
図10A乃至
図13Cに示すパラメータを定義するための、プリズムシートの断面図である。
図9において、頂角θ3が例えば63度である逆プリズムアレイのピッチはL1である。なお、L1は逆プリズムの底辺の長さと言い換えてもよい。プリズムシートの上側の面に形成された異方性プリズムアレイ底辺の長さはL2、ピッチは、逆プリズムアレイのピッチと同じL1である。異方性プリズムの第1の底角はθ1(以後単に第1の角度という)であり、第2の底角はθ2(以後単に第2の角度という)である。
図10A乃至
図13Cでは、異方性プリズムにおける第1の角θ1、第2の角θ2、及び、L2/L1をパラメータとして、本発明によるプリズムシートの特性を評価したものである。
【0039】
図10A乃至
図10Eは、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5に固定し、第2の角度θ2を10度から50度まで変化させた場合における輝度分布を示すグラフである。
図10Aにおいて、横軸は天頂角(度)であり、縦軸は、輝度(a.u. (arbitrary unit))である。
図10Aにおいて、実線が異方性プリズムアレイから出射した光の配光分布、点線が逆プリズムのみを通過した光の配光分布である。そして一点鎖線がプリズムシート全体の配光分布である。なお、
図10Aにおける直線の点線の矢印は、FWHMであり、プリズムシート全体の出射光の分散の大きさの目安になる。以上で述べた図の説明は、
図13Cまで、同じである。
【0040】
図10Aにおいて、異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしている。ただし、プリズムシートの法線方向に生ずる最大輝度は、94%に低下している。
【0041】
図10Bは、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5に固定し、第2の角度θ2を20度とした場合の輝度分布である。
図10Bにおいて、異方性プリズムの効果は、
図10Aの場合よりも大きくなっており、したがって、実線で示す異方性プリズムによる輝度分布は、天頂角でさらにマイナス側にシフトしている。
【0042】
その結果、一点鎖線で示す、全体の輝度分布も、天頂角でマイナス側にシフトしている。FWHMも左側にシフトしており、10度から-20度である。輝度のピークは小さくなって0.86である。
【0043】
図10Cは、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5に固定し、第2の角度θ2を30度とした場合の輝度分布である。
図10Cにおいて、異方性プリズムの効果は、
図10Bの場合よりもさらに大きくなっており、したがって、実線で示す異方性プリズムによる輝度分布は、天頂角でさらにマイナス側にシフトしている。
【0044】
その結果、一点鎖線で示す、全体の輝度分布も、天頂角でマイナス側にシフトしている。FWHMも左側にシフトしており、11度から-25度である。輝度のピークは小さくなって0.72である。
【0045】
図10Dは、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5に固定し、第2の角度θ2を40度とした場合の輝度分布である。
図10Dにおいて、異方性プリズムの効果は、
図10Cの場合よりもさらに大きくなっており、したがって、実線で示す異方性プリズムによる輝度分布は、天頂角でさらにマイナス側にシフトしている。
【0046】
図10Dにおいて、実線で示す異方性プリズムによる輝度分布は、第1のピークは、天頂角が-20度付近に存在しているが、さらに、60度付近に第2のピークが存在している。これは、異方性プリズムアレイに入射した光の一部がプリズム面で屈折せずに、全反射をすることを示している。全反射する光は、制御外となり、好ましくない。
図10DにおけるFWHMは11度から-24度であり、ピークは、0.64となっている。
【0047】
図10Eは、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5に固定し、第2の角度θ2を50度とした場合の輝度分布である。
図10Eにおいて、実線で示す異方性プリズムによる輝度分布では、-80度を超えた部分に大きなピークが存在している。これは、これは、異方性プリズムアレイに入射した光のさらに多くの量がプリズム面で屈折せずに、全反射をすることを示している。全反射する光は、制御外となり、好ましくない。
図10EにおけるFWHMは12度から-15度であり、ピークは、0.61となっている。しかし、
図10D及び
図10Eの使用は、全反射光が存在しているので、
図10A乃至
図10Cと単純比較することはできない。
【0048】
以上の結果を比較すると、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、L2/L1を0.5に固定した場合は、第2の角度θ2は、20度乃至30が適切であると評価することが出来る。
【0049】
図11A乃至
図11Cは、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、第2の角度θ2を30度に固定し、L2/L1を0.5から0.7まで変化させた場合における輝度分布を示すグラフである。各グラフの横軸、縦軸等は、
図10Aで説明したとおりである。
【0050】
図11AはL2/L1が0.5の場合である。
図11Aにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で10度乃至-25度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.72である。
【0051】
図11BはL2/L1が0.6の場合である。
図11Bにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で11度乃至-28度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.70である。
【0052】
図11CはL2/L1が0.7の場合である。
図11Cにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で11度乃至-30度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.60である。
【0053】
図11A乃至
図11Cで示すように、異方性プリズムの第1の角度θ1を70度に、第2の角度θ2を30度に固定し、L2/L1を0.5から0.7まで変化させた場合、プリズムシートの特性では、際立った変化は生じない。したがって、設計仕様に合うように、L2/L1を設定すればよい。
【0054】
図12A乃至
図12Cは、異方性プリズムの第2の角度θ2を20度に、L2/L1を0.5に固定し、第1の角度θ1を70度から90度まで変化させた場合における輝度分布を示すグラフである。各グラフの横軸、縦軸等は、
図10Aで説明したとおりである。
【0055】
図12Aは第1の角度θ1が70度の場合である。
図12Aにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で10度乃至-20度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.86である。
【0056】
図12Bは第1の角度θ1が80度の場合である。
図12Bにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で10度乃至-20度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.88である。
【0057】
図12Cは第1の角度θ1が90度の場合である。
図12Cにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で10度乃至-20度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.91である。
【0058】
図12A乃至
図12Cを比較すると、FWHMは殆ど同じであるが、合成輝度のピーク値は、第1の角度θ1が80度及び90度の場合がより大きくなっている。したがって、異方性プリズムの第2の角度θ2を20度に、L2/L1を0.5に固定した場合は、他の条件が許せば、第1の角度θ1は80度乃至90度に設定するのが好ましい。
【0059】
図13A乃至
図13Cは、異方性プリズムの第2の角度θ2を30度に、L2/L1を0.5に固定し、第1の角度θ1を70度から90度まで変化させた場合における輝度分布を示すグラフである。各グラフの横軸、縦軸等は、
図10Aで説明したとおりである。
【0060】
図13Aは第1の角度θ1が70度の場合である。
図13Aにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で11度乃至-25度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.72である。
【0061】
図13Bは第1の角度θ1が80度の場合である。
図13Bにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で11度乃至-25度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.76である。
【0062】
図13Cは第1の角度θ1が90度の場合である。
図12Cにおいて、実線で示す異方性プリズムアレイを出射した光は、ピークが、天頂角がマイナス側、すなわち、図の左側にシフトしている。したがって、一点鎖線で示す合成光分布もピークが左側にずれている。また、FWHMも天頂角でマイナス側にシフトしており、天頂角で11度乃至-25度である。一点鎖線で示す合成輝度のピークは0.79である。
【0063】
図13A乃至
図13Cを比較すると、FWHMは殆ど同じであるが、合成輝度のピーク値は、第1の角度θ1が80度及び90度の場合がより大きくなっている。したがって、異方性プリズムの第2の角度θ2を30度に、L2/L1を0.5に固定した場合は、他の条件が許せば、第1の角度θ1は80度乃至90度に設定するのが好ましい。
【0064】
図14A及び
図14Bは、
図10A乃至
図13Cに示す結果から、プリズムシート、特に、異方性プリズムの形状の好ましい範囲を示すものである。
図14Aにおいて、表には、第1の角度θ1、第2の角度θ2、及び、L2/L1の好ましい範囲を記載している。すなわち、異方性プリズムの、第1の角度θ1は、80度乃至90度、第2の角度は、20度乃至30度、L2/L1は0.5乃至0.7が好ましい範囲である。
【0065】
各パラメータは
図9に記載したとおりであるが、
図14Bの断面図にも記載している。この図において、L1は、逆プリズムの底辺の長さ、L2は、異方性プリズムの底辺の長さと言うことも出来る。
【0066】
図15は、
図14に示すような異方性プリズムアレイを用いた場合の、プリズムシートの一例を示す断面図である。
図15の数値の単位はμmである。
図15において、逆プリズムアレイのピッチは50μmであり、逆プリズムの頂角は63度である。一方、上側の面に形成される異方性プリズムの底辺の長さは25μmであり、第1の角度は80度、第2の角度は30度である。異方性プリズムの高さは13μmであるが、これは、第1の角度θ1及び第2の角度θ2、及び、底辺の長さL2によって決まる値である。プリズムも含めたプリズムシート全体の厚さは179μmであり、プリズム部分を除いた基材部分の厚さは、125μmである。
【0067】
以上のように、
図9乃至
図15で説明したような、プリズムシートを有するバックライトを使用した液晶表示装置を用いれば、表示装置からの光を、必要な方向に向け、配光したくない方向には光を向けないように設定することが可能である。
10…反射シート、 20…LED、 30…拡散板、 40…拡散シート、 50…プリズムシート、 60…拡散シート、 100…TFT基板、 101…走査線、 102…映像信号線、 103…画素、 150…シール材、 160…ドライバIC、 200…対向基板、 300…液晶表示パネル、 500…自動車、 510…フロントガラス、 520…ドライバICガラス、 530…サイドミラー、 540…ハンドル、 550…ダッシュボード、 560…ライト、 600…液晶表示装置、 700…運転手