(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106446
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20240801BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20240801BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010696
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA18
3D054BB21
3D054CC04
3D054CC11
3D054DD13
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能なカーテンエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】カーテンエアバッグ装置100のエアバッグクッション124は、車室側壁のサイドウィンドウ116を覆うよう膨張展開する第2メインチャンバ138b等と、第2メインチャンバ138b等の周囲の上側非膨張領域と、第2メインチャンバ138bから下方に延びて設けられる下部チャンバ140と、下部チャンバ140の下端近傍の下側非膨張領域141と、上側非膨張領域と下側非膨張領域141とにかけ渡されて、下部チャンバ140を第2メインチャンバ138bに対して車内側に屈曲するよう吊り上げるテザー142、144と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に長尺な収納形態になって車室側壁の上部に取り付けられるエアバッグクッションと、該エアバッグクッションにガスを供給するインフレータとを備えるカーテンエアバッグ装置において、
前記エアバッグクッションは、
前記車室側壁のサイドウィンドウを覆うよう膨張展開するメインチャンバと、
前記メインチャンバの周囲の上側非膨張領域と、
前記メインチャンバから下方に延びて設けられる下部チャンバと、
前記下部チャンバの下端近傍の下側非膨張部領域と、
前記上側非膨張領域と前記下側非膨張部領域とにかけ渡されて、前記下部チャンバを前記メインチャンバに対して車内側に屈曲するよう吊り上げる1または複数のテザーと、
を有することを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記上側膨張領域は、
前記メインチャンバを複数のチャンバに区画する区画部と、
前記エアバッグクッションの上縁近傍の上縁部と、
を含み、
前記1または複数のテザーの上端は、前記区画部または前記上縁部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記1または複数のテザーは、前記下部チャンバを前記メインチャンバに対して車内側に直交するよう吊り上げることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記テザーは、複数設けられていて、
前記複数のテザーは、
前記下側非膨張領域のうち前記下部チャンバの前縁近傍に接合される第1のテザーと、
前記下側非膨張領域のうち前記下部チャンバの後縁近傍に接合される第2のテザーと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記上側非膨張領域には、前記エアバッグクッションの車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルとを接合したシーム部が形成されていて、
前記1または複数のテザーの上端は、前記シーム部の所定箇所に接合されることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記シーム部には、線状に延びた部分の先端に円形または湾曲した形状のアイランドシームが形成されていて、
前記1または複数のテザーの上端は、前記アイランドシームに接合されることを特徴とする請求項5に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項7】
前記テザーは、複数設けられていて、
前記複数のテザーは、互いに平行になるよう設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項8】
前記テザーは、前記エアバッグクッションを平面に広げた状態において、前記メインチャンバの下縁に沿って前後方向に延びる仮想線を上下方向にまたぐように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項9】
前記エアバッグクッションはさらに、前記メインチャンバと前記下部チャンバとの間に車両前後方向に延びるよう設けられる区画シームを有し、
前記区画シームは、前記仮想線よりも上方に形成されていることを特徴とする請求項8に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項10】
前記エアバッグクッションはさらに、前記下部チャンバのうち前側または後側の少なくとも一方を上方の前記メインチャンバにつなぐ1または複数のダクト部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ時に乗員を保護するカーテンエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーテンエアバッグ装置は、緊急時に車室側壁のサイドウィンドウ等を覆うエアバッグクッションを備えていて、乗員を側方から受け止めて拘束する。カーテンエアバッグ装置のエアバッグクッションは、車両が側面衝突からロールオーバに移行した場合であっても、乗員の車外放出を防ぐために、サイドウィンドウを適切に覆うことが求められている。
【0003】
カーテンエアバッグ装置のエアバッグクッションは、車室側壁の上部のルーフサイドレールに車両前後方向に沿って収納されている。カーテンエアバッグ装置のエアバッグクッションは、限られたスペースに収納するため、下端側からロール状に巻いたり蛇腹状に折り畳んだりした長尺な収納形態になって収納されている。例えば特許文献1の
図5には、筒状に巻かれたエアバッグ20が窓W1の上方にてエアバッグカバー11に覆い隠されるようにして収納されている様子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1のエアバッグ20は、ロールオーバ時にもドアトリムの上部でエアバッグ20を支えることができるよう、副膨張部29の下部にドアトリムに支持される支持膨張部30を設けて、この支持膨張部30を車内側に折り返して収納している。
【0006】
車両の側面衝突において衝突速度が速い場合、ドアトリムが車内側に変位する一方で、慣性によって乗員の頭部が車外側、すなわちドアトリム側に倒れようとすることが知られている。このような状況において、乗員の頭部をドアトリムとの接触から保護するためには、特許文献1のエアバッグ20は改良の余地を残している。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能なカーテンエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の代表的な構成は、車両前後方向に長尺な収納形態になって車室側壁の上部に取り付けられるエアバッグクッションと、エアバッグクッションにガスを供給するインフレータとを備えるカーテンエアバッグ装置において、エアバッグクッションは、車室側壁のサイドウィンドウを覆うよう膨張展開するメインチャンバと、メインチャンバの周囲の上側非膨張領域と、メインチャンバから下方に延びて設けられる下部チャンバと、下部チャンバの下端近傍の下側非膨張部領域と、上側非膨張領域と下側非膨張部領域とにかけ渡されて、下部チャンバをメインチャンバに対して車内側に屈曲するよう吊り上げる1または複数のテザーと、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、下部チャンバをテザーによって車内側に屈曲するよう吊り上げることで、側面衝突時に車外側に倒れようとする頭部を下部チャンバによって下方から拘束し、頭部のドアトリムへの接触を防ぐことができる。よって、上記構成によれば、例えば衝撃によってドアトリムが車内側に変位するような衝突形態において、乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能になる。
【0010】
上記の上側膨張領域は、メインチャンバを複数のチャンバに区画する区画部と、エアバッグクッションの上縁近傍の上縁部と、を含み、1または複数のテザーの上端は、区画部または上縁部に接続されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、テザーを区画部または上縁部と下側非膨張部とにかけ渡すことで、テザーによって下部チャンバを効率よく吊り上げることが可能になる。
【0012】
上記の1または複数のテザーは、下部チャンバをメインチャンバに対して車内側に直交するよう吊り上げてもよい。
【0013】
上記構成によっても、下部チャンバによって車外側に倒れようとする頭部を下方から拘束し、頭部のドアトリムへの接触を防ぐことができる。
【0014】
上記のテザーは、複数設けられていて、複数のテザーは、下側非膨張領域のうち下部チャンバの前縁近傍に接合される第1のテザーと、下側非膨張領域のうち下部チャンバの後縁近傍に接合される第2のテザーと、を含んでもよい。
【0015】
上記構成によれば、複数のテザーによって、下部チャンバを効率よく吊り上げることが可能になる。
【0016】
上記の上側非膨張領域には、エアバッグクッションの車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルとを接合したシーム部が形成されていて、1または複数のテザーの上端は、シーム部の所定箇所に接合されてもよい。
【0017】
上記構成によっても、複数のテザーによって、下部チャンバを効率よく吊り上げることが可能になる。
【0018】
上記のシーム部には、線状に延びた部分の先端に円形または湾曲した形状のアイランドシームが形成されていて、1または複数のテザーの上端は、アイランドシームに接合されてもよい。
【0019】
上記構成によっても、複数のテザーによって、下部チャンバを効率よく吊り上げることが可能になる。
【0020】
上記のテザーは、複数設けられていて、複数のテザーは、互いに平行になるよう設けられてもよい。
【0021】
上記構成によっても、複数のテザーによって、下部チャンバを効率よく吊り上げることが可能になる。
【0022】
上記のテザーは、エアバッグクッションを平面に広げた状態において、メインチャンバの下縁に沿って前後方向に延びる仮想線を上下方向にまたぐように設けられていてもよい。
【0023】
上記構成によっても、複数のテザーによって、下部チャンバを効率よく吊り上げることが可能になる。
【0024】
上記のエアバッグクッションはさらに、メインチャンバと下部チャンバとの間に車両前後方向に延びるよう設けられる区画シームを有し、区画シームは、仮想線よりも上方に形成されていてもよい。
【0025】
上記構成の区画シームを起点にすることで、下部チャンバを車内側に好適に屈曲させることが可能になる。
【0026】
上記のエアバッグクッションはさらに、下部チャンバのうち前側または後側の少なくとも一方を上方のメインチャンバにつなぐ1または複数のダクト部を有してもよい。
【0027】
上記のダクト部によれば、下部チャンバを効率よく膨張展開させることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能なカーテンエアバッグ装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置の概要を例示する図である。
【
図2】
図1(b)のエアバッグクッションを単独で例示した図である。
【
図3】
図2(d)のエアバッグクッションが側面衝突時に乗員を拘束する時の過程を例示した図である。
【
図4】
図2のエアバッグクッションの第1および第2変形例を例示した図である。
【
図5】
図2のエアバッグクッションの第3および第4変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置100の概要を例示する図である。
図1(a)はカーテンエアバッグ装置100の作動前の様子を例示した図である。図中で例示するカーテンエアバッグ装置100は、車室の左側面用のものであるが、図示を省略する右側面用のものも同様の対称な構造を有する。
【0032】
以下、
図1(a)その他の図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Up)、D(Down)で例示する。特に、上方とは座席に正規に着座した姿勢の乗員から見て頭部の方向のことであり、下方とは当該乗員から見て下肢部の方向のことである。
【0033】
車両102は、車両前方から前側座席104および後側座席106が配置された2列シートの車両を想定している。車両102には、ルーフを支える複数のピラーが設けられている。複数のピラーには、車両の前方からAピラー108、Bピラー110、およびCピラー112が含まれている。
【0034】
ルーフサイドレール114は、車室側壁の上部を形成する部材である。ルーフサイドレール114は不図示のルーフトリムによって覆われる。車室の側壁には、ルーフサイドレール114と各ピラー、およびドアトリム146、147に囲まれて、サイドウィンドウ116、118が設けられている。
【0035】
作動前のカーテンエアバッグ装置100のエアバッグクッション124は、巻回または折り畳みによって、車両前後方向に長尺な収納形態になっている。エアバッグクッション124は、Aピラー108の付近からルーフサイドレール114に沿って取り付けられる。作動前のエアバッグクッション124は、不図示のルーフトリムに覆い隠されるため、乗員からは視認不能である。
【0036】
カーテンエアバッグ装置100は、エアバッグクッション124にガスを供給するガス発生装置として、インフレータ126を備えている。インフレータ126は、本実施形態では円筒状のシリンダ型のものを採用していて、エアバッグクッション124に一部が挿入された状態でルーフサイドレール114に固定される。エアバッグクッション124には、インフレータ126を取り付ける部位として、インフレータ取付部128が後方の上部に設けられている。
【0037】
現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ126としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
【0038】
図1(b)はカーテンエアバッグ装置100の作動後の様子を例示した図である。カーテンエアバッグ装置100は、各種センサによってオフセット衝突や側面衝突が予測されたり検知されたりした場合に作動する。インフレータ126は不図示の制御部からの信号を受けて作動し、エアバッグクッション124はインフレータ126から供給されるガスの圧力によって不図示のルーフトリムを押しのけて膨張展開して乗員を拘束する。
【0039】
エアバッグクッション124は、前側座席104および後側座席106の車外側にて、サイドウィンドウ116、118に沿って車両前後方向に広く膨張展開する。エアバッグクッション124の各所の膨張部は、ガスの流れや乗員および座席等の構造物に応じて、チャンバと呼ばれる小部屋に区画されている。
【0040】
エアバッグクッション124は、ルーフサイドレール114への固定を行う部位として、上縁に複数のタブ130を備えている。タブ130は、帯状の部位であって、ブラケットやボルトなどを使用してルーフサイドレール114に固定される。
【0041】
エアバッグクッション124の前端側には、ストラップ132が備えられている。ストラップ132は、紐状の部材であって、Aピラー108に接続されている。ストラップ132は、エアバッグクッション124の膨張展開時の揺動を抑える作用があり、これによってエアバッグクッション124は目的の範囲を迅速に覆うことが可能になる。同様のストラップとしては、前端側のストラップ132以外にも、エアバッグクッション124の後端側をCピラー112につなぐものを採用可能である。
【0042】
図2は、
図1(b)のエアバッグクッション124を単独で例示した図である。
図2(a)は、エアバッグクッション124の全体の概要を例示している。
【0043】
エアバッグクッション124は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成されている。
【0044】
エアバッグクッション124には、ガスで膨張展開する膨張部として、インフレータ取付部128から前後方向に延びる上側ダクト部136、乗員を拘束する第1メインチャンバ138aから第5メインチャンバ138eにわたる複数のメインチャンバ、および下部チャンバ140が設けられている。
【0045】
第1メインチャンバ138aから第5メインチャンバ138eは、当該エアバッグクッション124の主要な領域であって、サイドウィンドウ116、118(
図1(a)参照)を広く覆い、車室内の乗員を拘束して車外への移動を防ぐ。第1メインチャンバ138aから第4メインチャンバ138dは主に前側座席104の乗員を拘束し、第5メインチャンバ138eは主に後側座席106の乗員を拘束する。
【0046】
下部チャンバ140は、主に前側座席104の側方に位置する箇所に配置され、前側座席104の乗員の頭部がドアトリム146(
図1(a)参照)に接触することを防いでいる。本実施形態では、下部チャンバ140は、第2メインチャンバ138bおよび第3メインチャンバ138eの下方に設けられている。
【0047】
下部チャンバ140は、前後2本のテザー142、144によって吊り上げられた状態に膨張展開する構成になっている。
【0048】
図2(b)は、
図2(a)のエアバッグクッションのテザー142、144を外した状態の図である。下部チャンバ140は、当該エアバッグクッション124を平面に広げた状態において、第2メインチャンバ138bおよび第3メインチャンバ138cの下端からドアトリム146(
図1(a)参照)の上端部170よりも下方に延びるように設けられている。
【0049】
エアバッグクッション124のうち、メインチャンバ等の膨張する部分は、非膨張の上側非膨張領域になっている。上側非膨張領域には、エアバッグクッション124の上縁を形成している上縁部134や、各メインチャンバを区画しているシーム部148a等の区画部などが含まれている。また、下部チャンバ140の下端近傍には、非膨張の領域として、下部チャンバ140から前後および下方に延びた下側非膨張領域141が形成されている。
【0050】
上記の上側非膨張領域の区画部としては、メインチャンバを第1メインチャンバ138aから第4メインチャンバ138dなどの複数のチャンバに区画するために、各所にシーム部148a、148b、148cが設けられている。各シーム部は、当該エアバッグクッション124の車外側のアウタパネル124a(
図2(c)参照)と車内側のインナパネル124bとを縫製や溶着等によって接合することで設けられて、第1メインチャンバ138a等に区画された各チャンバの縁を形成し、また膨張部と非膨張領域との境界を形成している。
【0051】
例えばシーム部として、第1メインチャンバ138aと第2メインチャンバ138bとの間には、第1シーム部148aが設けられている。また、例えば第2メインチャンバ138bと第3メインチャンバ138cとの間には、第2シーム部148bが設けられている。さらに、例えば第4メインチャンバ138dは第3シーム部148cによって縁取られていて、第5メインチャンバ138eは第4シーム部148dによって縁取られている。
【0052】
各シーム部は、線状に延びつつ、先端が円形または湾曲した形状に形成されている。例えば、第1シーム部148aは、線状に延びる線状シーム150と、線状シーム150の先端に設けられる湾曲した形状のアイランドシーム152とを有している。アイランドシーム152を設けることで、膨張展開時の力を分散させることが可能になる。
【0053】
前側の第1のテザー142は、下端142bが、下側非膨張領域141のうち、下部チャンバ140の前縁近傍の前縁部分154に接合される。また、テザー142の上端142aは、第1シーム部148aのアイランドシーム152に接合される。後側の第2のテザー144は、下端144bが、下側非膨張領域141のうち、下部チャンバ140の後縁近傍の後縁部分156に接合され、上端144aが第3シーム部148cのアイランドシーム158に接合されている。
【0054】
テザー142、144は、それぞれ下部チャンバ140の前後2か所に接合されていることに加えて、互いに平行になるよう設けられている。これら構成によって、テザー142,144は、下部チャンバ140を効率よく吊り上げることが可能になっている。
【0055】
図2(c)は、
図2(a)のエアバッグクッション124のA-A断面図である。上述したように、テザー142は、下部チャンバ140の前側の前縁部分154と、第1メインチャンバ138aおよび第2メインチャンバ138bの縁を形成する第1シーム部148aの先端のアイランドシーム152にかけ渡されている。このように、テザー142を前縁部分154などの下側非膨張領域141と、第1シーム部148aなどの上側非膨張領域とにかけ渡すことで、下部チャンバ140を効率よく吊り上げることが可能になる。
【0056】
図2(d)は、
図2(a)のエアバッグクッション124のB-B断面図である。上述したテザー142、144(
図2(a)参照)によって、下部チャンバ140は、第2メインチャンバ138b等に対して車内側に屈曲するよう吊り上げられる。
【0057】
特に本実施形態では、テザー142、144(
図2(a)参照)は、上下方向に延びる第2メインチャンバ138b等に対して、下部チャンバ140が車内側に直交する角度に延びるよう吊り上げている。この構成によって、下部チャンバ140は、車外側に倒れようとする乗員の頭部を下方から拘束し、頭部のドアトリム146(
図3(b)参照)への接触を防ぐことが可能になっている。
【0058】
再び
図2(b)を参照する、テザー142、144は、エアバッグクッション124を平面に広げた状態において、第1メインチャンバ138aから第4メインチャンバ138dに渡る下縁に沿って前後方向に延びる仮想線L1を上下方向にまたぐように設けられている。この構成のテザー142、144によって、下部チャンバ140を効率よく吊り上げることが可能になっている。
【0059】
エアバッグクッション124は、第2メインチャンバ138bおよび第3メインチャンバ138cと下部チャンバ140との間に、車両前後方向に延びる区画シーム160を有している。区画シーム160は、第2メインチャンバ138bおよび第3メインチャンバ138cと下部チャンバ140とを区画する非膨張部の部分であって、仮想線L1よりも上方に形成されている。
【0060】
図2(d)に例示するように、下部チャンバ140は、区画シーム160を境界にして車内側に屈曲する構成になっている。下部チャンバ140と第2メインチャンバ138b等との間に非膨張部として区画シーム160が設けられていることで、エアバッグクッション124の全体がガスで膨張展開したときにも、下部チャンバ140を車内側に好適に屈曲させることが可能になっている。
【0061】
図2(b)に例示するように、区画シーム160の前側と後側は、それぞれ前側ダクト162および後側ダクト164になっている。前側ダクト162は下部チャンバ140のうち前側を上方の第2メインチャンバ138bにつなぎ、後側ダクト164は下部チャンバ140のうち後側を上方の第3メインチャンバ138cにつないでいる。これら前側ダクト162および後側ダクト164によって、下部チャンバ140は第2メインチャンバ138bおよび第3メインチャンバ138cからガスを受給して効率よく膨張展開することが可能になっている。
【0062】
図3は、
図2(d)のエアバッグクッション124が側面衝突時に乗員166を拘束する時の過程を例示した図である。
図3(a)は、エアバッグクッション124が乗員166を拘束する前の様子を例示した図である。
【0063】
車両102(
図1(a)参照)は、各種センサおよび所定の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を介して側面衝突等の衝突を予測または検知すると、カーテンエアバッグ装置100を作動させる。これによって、上述したエアバッグクッション124が膨張展開し、第2メインチャンバ138b等がサイドウィンドウ116を覆うと共に、下部チャンバ140が第2メインチャンバ138b等の下部から車内側に突出するように膨張展開する。
【0064】
図3(b)は、
図3(a)よりも側面衝突が進行した時の様子を例示した図である。側面衝突によって車両102(
図1(a)参照)に側方から力が加わると、ドアトリム146は車内側に変位する。この衝突の瞬間、乗員166は慣性によってその場に留まろうとする。そして、乗員166の身体は変位したドアトリム146に押されて移動する一方、頭部168は慣性によって車外側に倒れようとする。よって、乗員166の頭部168がドアトリム146の上端部170に対して上方から接触する可能性が生じる。
【0065】
当該カーテンエアバッグ装置100では、エアバッグクッション124の下部の下部チャンバ140をテザー142、144(
図2(a)参照)によって車内側に延びるよう吊り上げることで、側面衝突時に車外側に倒れようとする頭部168を下方から拘束し、頭部168のドアトリム146の上端部170への接触を防ぐことができる。
【0066】
このように、当該カーテンエアバッグ装置100によれば、特にドアトリム146の変位が生じるような速い速度の側面衝突が発生した場合において、乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能である。
【0067】
(変形例)
以下、上述した各構成要素の変形例について説明する。
図4以降では既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0068】
図4は、
図2のエアバッグクッション124の第1および第2変形例を例示した図である。
【0069】
図4(a)は、
図2(b)のエアバッグクッション124の第1変形例(エアバッグクッション200)を例示した図である。エアバッグクッション200では、
図2(b)の前側ダクト162を省略し、後側ダクト164のみを設けている。後側ダクト164のみによっても、下部チャンバ140は第3メインチャンバ138cからガスを受給して、効率よく膨張展開することができる。
【0070】
図4(b)は、
図2(b)のエアバッグクッション124の第2変形例(エアバッグクッション220)を例示した図である。エアバッグクッション220では、
図2(b)の後側ダクト164を省略し、前側ダクト162のみを設けている。前側ダクト162のみによっても、下部チャンバ140は第2メインチャンバ138bからガスを受給して、効率よく膨張展開することができる。
【0071】
図5は、
図2のエアバッグクッション124の第3および第4変形例を例示した図である。
【0072】
図5(a)は、
図2(b)のエアバッグクッション124の第3変形例(エアバッグクッション240)を例示した図である。エアバッグクッション240では、
図2(b)のテザー142、144に比べて、より長尺なテザー242、244を採用している。テザー242、244の上端242a、244aは、エアバッグクッション240の上側非膨張領域である上縁部134に接合される。これらテザー242、244によっても、下部チャンバ140を効率よく吊り上げることが可能になる。
【0073】
図5(b)は、
図2(b)のエアバッグクッション124の第4変形例(エアバッグクッション260)を例示した図である。エアバッグクッション260では、
図2(b)の第1のテザー142および第2の144に加えて、第3のテザー262を設けている。
【0074】
第3のテザー262は、下端262bが下部チャンバ140の下側非膨張領域264の中央側に接合され、上端262aが第2シーム部148bのアイランドシーム266に接合される。これら計3本のテザー142、144、262によっても、下部チャンバ140を効率よく吊り上げることが可能になる。
【0075】
さらなる変形例として、例えば1本のテザーのみを採用した構成を採用することも可能である。例えば
図5(b)の中央側のテザー262のみを採用することによっても、下部チャンバ140を吊り上げることができ、これによって乗員166(
図3(b)参照)の頭部168を下方から拘束することが可能になる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0077】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ時に乗員保護を保護するカーテンエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100…カーテンエアバッグ装置、102…車両、104…前側座席、106…後側座席、108…Aピラー、110…Bピラー、112…Cピラー、114…ルーフサイドレール、116、118…サイドウィンドウ、124…エアバッグクッション、124a…アウタパネル、124b…インナパネル、126…インフレータ、128…インフレータ取付部、130…タブ、132…ストラップ、134…上縁部、136…上側ダクト部、138a…第1メインチャンバ、138b…第2メインチャンバ、138c…第3メインチャンバ、138d…第4メインチャンバ、138e…第5メインチャンバ、140…下部チャンバ、141…下側非膨張領域、142…テザー、142a…上端、142b…下端、144…テザー、144a…上端、144b…下端、146…ドアトリム、148a…第1シーム部、148b…第2シーム部、148c…第3シーム部、148d…第4シーム部、150…線状シーム、152…アイランドシーム、154…前縁部分、156…後縁部分、158…アイランドシーム、160…区画シーム、162…前側ダクト、164…後側ダクト、166…乗員、168…頭部、172…上端部、L1…仮想線、200…エアバッグクッション、220…エアバッグクッション、240…エアバッグクッション、242…テザー、242a…上端、242b…下端、260…エアバッグクッション、262…テザー、262a…上端、262b…下端、264…下側非膨張領域、266…アイランドシーム