(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106449
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】止水板用パッキン及び止水板
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240801BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010700
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智哉
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA08
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 止水性能を向上する。
【解決手段】 止水板10の下端に横幅方向へわたって設けられる止水板用パッキン23であって、下方側不動面Gに圧接されて弾性変形する弾性圧接部23aと、弾性圧接部23aよりも上側で止水板10に接続される接続部23bとを一体的に備え、弾性圧接部23aは、止水板厚さ方向の外寸wを、下方へゆくにしたがって徐々に狭めている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水板の下端に横幅方向へわたって設けられるパッキンであって、
下方側不動面に圧接されて弾性変形する弾性圧接部と、前記弾性圧接部よりも上側で前記止水板に接続される接続部とを一体的に備え、
前記弾性圧接部は、止水板厚さ方向の外寸を、下方へゆくにしたがって徐々に狭めていることを特徴とする止水板用パッキン。
【請求項2】
前記弾性圧接部は、想定される水の流れ方向の上流側へ向かって下方へ傾斜する傾斜面部を有することを特徴とする請求項1記載の止水板用パッキン。
【請求項3】
前記傾斜面部は、その上端側が縦断面凹曲面状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の止水板用パッキン。
【請求項4】
前記傾斜面部が、止水板厚さ方向の一方側と他方側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2記載の止水板用パッキン。
【請求項5】
前記弾性圧接部は、前記傾斜面部よりも上側の所定高さ範囲において止水板厚さ方向の外寸を略一定にした基部を有することを特徴とする請求項2記載の止水板用パッキン。
【請求項6】
前記弾性圧接部の下端側には、前記外寸を段状に狭めて下方へ突出する突条が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水板用パッキン。
【請求項7】
前記接続部の硬度を、前記弾性圧接部よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の止水板用パッキン。
【請求項8】
請求項1~7何れか1項記載の止水板用パッキンを具備したことを特徴とする止水板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板の下端に装着される止水板用パッキン、及びこの止水板用パッキンを具備した止水板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水が建物や地下道の開口部に侵入すると、浸水による甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態に備えて、予め建物や地下道などの開口部の近傍に止水板を格納しておき、増水が発生したときには、この止水板を前記開口部の両側の支柱に固定し、水の侵入を阻むようにした止水装置が従来知られている(特許文献1参照)。
この止水装置では、止水板下端のパッキンを下方側不動面に圧接することで、止水板と下方側不動面の間の水密性を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、下方側不動面(例えば、床面)の不陸によっては止水性能が理想状態よりは低下するおそれがある。特に、前記パッキンが下方側不動面に接した状態で前記止水板が水圧を受けた場合、そのパッキンの上部側が下流側へ倒れるようにして撓みいびつに変形するため、いっそう止水抵抗の低下が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
止水板の下端に横幅方向へわたって設けられるパッキンであって、下方側不動面に圧接されて弾性変形する弾性圧接部と、前記弾性圧接部よりも上側で前記止水板に接続される接続部とを一体的に備え、前記弾性圧接部は、止水板厚さ方向の外寸を、下方へゆくにしたがって徐々に狭めていることを特徴とする止水板用パッキン。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、止水性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る止水板用パッキンの一例を止水板に装着した止水装置を、屋外側から視た図である。
【
図2】
図1の(II)-(II)線に沿う縦断面図であって、止水板を両側の縦枠に装着する前の状態を示している。
【
図3】
図1の(II)-(II)線に沿う縦断面図であって、止水板を両側の縦枠に装着した後の状態を示している。
【
図4】本発明に係る止水板用パッキンの一例を示す斜視図である。
【
図5】同止水板用パッキンが下方側不動面に略垂直に押し付けられて変形する様子を(a)(b)に順次に示す縦断面図である。
【
図6】上流側から水圧を受けた状況において、同止水板用パッキンが下方側不動面に押し付けられて変形する様子を(a)(b)に順次に示す縦断面図である。
【
図7】上流側から水圧を受けた状況において、同止水板用パッキンが下方側不動面にさらに押し付けられて変形する様子を(c)(d)に順次に示す縦断面図である。
【
図8】同止水板用パッキンの正面図、平面図、底面図、右側面図である。なお、左側面図は右側面図と同一、背面図は正面図と同一に表れるため省略している。
【
図9】本発明に係る止水板用パッキンの他例を(a)(b)にそれぞれ示す縦断面図である。
【
図10】本発明に係る止水板用パッキンの他例を(a)(b)にそれぞれ示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明において、上流側とは、想定される水の流れ方向の上流側を意味し、図示例によれば、止水装置の設置対象となる構築物の屋外側が上流側であり、同構築物の屋内側が下流側である。なお、他例としては、上流側を屋内側とし、下流側を屋外側とすることも可能である。
また、以下の説明において。「止水板厚さ方向」とは、止水板の横幅方向に交差する方向であって上下方向ではない、止水板の厚み方向(見込み方向:
図2によれば左右方向)を意味する。
【0009】
<具体的実施形態>
図1は、本発明に係る止水板用パッキン(パッキン23)を止水板に装着した止水装置を示す。
この止水装置1は、横幅方向に間隔を置いて立設される左右の支柱X,X間に、単数又は複数(図示例によれば左右二つ)の止水板10,10’を設置して、左右の支柱X,X間を通過しようとする水の流れを止水板10,10’によって阻む(
図1参照)。
【0010】
支柱Xは、止水装置1の設置対象である構築物の開口部における左右両側の部分を構成している。前記開口部の具体例としては、自動ドアの扉体によって開閉される開口部や、地下道の出入口等が挙げられる。
各支柱Xは、硬質金属材料によって下方側不動面Gから上方へ延びる柱状に形成される。
【0011】
各支柱Xの開口部側の面には、上側被係止部x1及び下側被係止部x2(
図2参照)が設けられている。これら上側被係止部x1と下側被係止部x2には、止水板10(又は10’)の上側係止部16と下側係止部17が係止される。
【0012】
上側被係止部x1と下側被係止部x2の各々は、硬質金属材料からなる円柱ピン状に構成される。これら上側被係止部x1と下側被係止部x2は、それぞれ、支柱Xの上部側と下部側において、左右の支柱X,X間の内側(開口部中央側)へ突出する。
【0013】
左右の止水板10,10’は、支柱X,X間の開口部の左半部と右半部をそれぞれ覆うように設けられる。これら二つの止水板10,10’は、これらの間に設けられた係脱手段(図示せず)によって脱着可能に接続される。
左側の止水板10と右側の止水板10’は、左右対称に構成されため、以下、止水板10について詳述し、止水板10’の詳細説明を省略する。
【0014】
止水板10は、間隔を置いて左右に略平行に設けられる縦枠11,12と、これら縦枠11,12間を上端側で連結する上枠13と、縦枠11,12間を下端側で連結する下枠14と、これら縦枠11,12、上枠13及び下枠14の内側に水密に嵌め合わせられた本体板15とによって、正面視矩形状に構成される。
この止水板10の幅方向の一端側(
図1によれば左端側)は、上側係止部16及び下側係止部17によって支柱Xに対し脱着可能に係止される。
また、止水板10の左右端側および下端側には、弾性を有するパッキン21~25が設けられる。
【0015】
縦枠11,12、上枠13及び下枠14は、それぞれ、耐腐食性を有する硬質金属材料(例えば、アルミニウム合金や、ステンレス等)によって、長尺な四角筒状もしくは四角柱状に形成される。
これら縦枠11,12、上枠13及び下枠14は、適宜な接続手段(例えば、ネジ止めや、リベット止め、溶接、嵌合)等によって接続されて、正面視矩形枠状に構成される(
図1参照)。
【0016】
下枠14の下端面には、パッキン23を嵌め合わせるための嵌合溝14aが、止水板幅方向(見つけ方向、
図2によれば奥行き方向)にわたって連続的に設けられる。
嵌合溝14aは、下方を開口した縦断面略逆凹字状に形成され(
図2及び
図5参照)、下枠14の全長にわたって連続している。
なお、図中、符号14a1は、パッキン23の接続部23bが外れてしまうのを防ぐ抜止め突起であり、嵌合溝14aの下端縁から止水板厚さ方向へ突出するとともに嵌合溝14aの長手方向へ連続している。
【0017】
本体板15は、硬質合成樹脂材料(例えば、ポリカーボネート)や金属材料等により矩形板状に形成され、その上下左右の端部を、対向する縦枠11,12、上枠13又は下枠14に対し水密に接続している。
【0018】
上側係止部16は、止水板10の横幅方向の一端側において、縦枠11の屋内側の面から突出して、支柱Xの上側被係止部x1に対し、屋外側の斜め上側から近づいて離脱しないように係合する(
図2及び
図3参照)。
この係合状態は、図示しない係脱機構に対する手動操作により解除可能である。
【0019】
下側係止部17は、上側係止部16の下方側において、縦枠11から屋内側へ突出して、支柱Xの下側被係止部x2に対し、屋外側斜め上側から係合する。この係合状態は、止水板10を逆方向へ移動することで解除可能である。
【0020】
このように、上下の係止部16,17は、下流側斜め下方へ移動しながら上下の被係止部x1,x2に係合するため、止水板10,10’下端のパッキン23も、下流側斜め下方へ移動しながら下方側不動面Gに押圧されることになる。
【0021】
パッキン21~25は、エラストマー樹脂やゴム等の弾性樹脂材料により形成され、止水板10と左右の支柱X,Xの間、止水板10と下方側不動面Gの間等を水密に塞ぐ。
【0022】
パッキン21は、上下方向へ連続する長尺状に形成され、縦枠11の屋内側面に、接着や嵌合等の固定手段により固定されている。このパッキン21は、縦枠11と支柱Xの間に挟まれて弾性的に収縮し、これらの間の水密性を確保する。
【0023】
パッキン22は、上下方向へ連続する長尺状に形成され、縦枠12における止水板10’側の面(止水板10’の縦枠12との対向面)に、接着や嵌合等の固定手段により固定されている。このパッキン22は、左右の止水板10,10’の縦枠12,12間に挟まれて弾性的に収縮し、これらの間の水密性を確保する。
【0024】
パッキン23は、止水板10の横幅方向へ連続する長尺状に形成され、下枠14の下端面に、接着や嵌合等の固定手段により固定されている。このパッキン23は、下枠14と下方側不動面G(例えば、左右の支柱X,X間を連結する下枠や、床面等)との間に挟まれて弾性的に収縮し、これらの間の水密性を確保する。
【0025】
このパッキン23は、下方側不動面Gに圧接されて弾性変形する弾性圧接部23aと、弾性圧接部23aよりも上側で下枠14に接続される接続部23bとを一体的に具備する(
図4及び
図5参照)。
【0026】
弾性圧接部23aは、止水板厚さ方向の外寸wを、下方へゆくにしたがって徐々に狭めている。
詳細に説明すれば、この弾性圧接部23aは、下方へ向かって上流側と下流側へそれぞれ傾斜する傾斜面部23a1,23a1’と、これら傾斜面部23a1,23a1’よりも上側で止水板厚さ方向の外寸wを上下方向の厚み寸法tの範囲において略一定にした基部23a2とを有し、縦断面形状が左右対称である(
図5(a)参照)。
左右対称とすることで、上流側に対する傾斜面部23a1の傾斜方向は常に正しい向き(想定される水の流れ方向の上流側へ向かって下方へ傾斜する向き)となる。すなわち、本実施形態のパッキン23は、縦断面形状が左右対称であるため、パッキン23の固定方向(屋内外方向)違いによる止水性能の低下を防止する。言い換えれば、縦断面上の左側と右側のどちらが下流側へ向けられた場合でも、同様の止水性能を得ることができる。
また、弾性圧接部23aは、前記した縦断面左右対称の下向き先窄み形状により、下側不動面Gに対し下流側斜め下方に押圧された場合(
図3参照)でも、弾性圧接部23aが下流側へ倒れたり、この倒れにより突条23a3が上流側に持っていかれるように変形したりするのを防ぐことができる。
【0027】
このように下方へ向かって先窄みとなる縦断面形状により、弾性圧接部23aの横断面の断面積が下方へ向かって徐々に小さくなる。このため、弾性圧接部23aが不動面Gに押し付けられた際のつぶれ量(上下方向に収縮する量)が、下側にゆくほど大きくなる。
【0028】
傾斜面部23a1,23a1’の上端側は、基部23a2との関係で縦断面凹曲面状に形成されている。つまり、この凹曲面状部分23a4の上端に、基部23a2が接続されている。
凹曲面状部分23a4は、弾性圧接部23aの横断面積を、下方へ向かって急激に狭めており、これによって、弾性圧接部23aにおける基部23a2よりも下側の部分のつぶれ易さ(弾性的な収縮性)を向上している。
この凹曲面状部分23a4の曲率半径が小さすぎる(カーブがきつい)と、この凹曲面状部分23a4に折れ目が付いて弾性圧接部23aが倒れるように変形してしまう。また、凹曲面状部分23a4の曲率半径が大きすぎる(カーブが緩い)と、弾性圧接部23aにおける前記つぶれ易さ(弾性的な収縮性)を阻害してしまう。弾性圧接部23aの曲率半径は、これらを勘案して適宜に設定される。
【0029】
基部23a2は、下枠14の下端(嵌合溝14aの下縁)に圧接される部分であり、止水板厚さ方向の外寸w、及び上下方向の厚み寸法tが適宜に設定されている。
この基部23a2は、弾性圧接部23aの上部側にコシを持たせ(言い換えれば、弾性圧接部23aの上部側を局部的に変形し難くし)、このことによって、弾性圧接部23aが倒れるようにして変形してしまうのを阻む。
すなわち、弾性圧接部23aが下方側不動面Gに圧接された際に傾倒し難いコシのある弾性変形をするように、基部23a2における止水板厚さ方向の外寸wと上下方向の厚み寸法tが適宜に設定される。
そして、このような構成の基部23a2によれば、止水板10と下方側不動面Gの間の止水性能を向上させることができる
【0030】
弾性圧接部23aにおいて、傾斜面部23a1,23a1’よりも下側(下方側不動面G側)には、止水板厚さ方向の外寸wを局部的に狭めて下方へ突出する突条23a3が設けられる。
【0031】
突条23a3は、弾性圧接部23aの止水板厚さ方向の外寸wを、傾斜面部23a1よりも下側(下方側不動面G側)で、略段状に狭めて、その狭まった部分を下方へ突出させている。すなわち、傾斜面部23a1と、突条23a3との境目には、外寸wを急激に狭める段部23a13が形成される。
なお、弾性圧接部23aにおいて、突条23a3のゴム硬度は、突条23a3よりも上側の部分と略同じである。
【0032】
また、接続部23bは、弾性圧接部23a(例えば、エラストマー樹脂やゴム)よりもゴム硬度が大きい弾性材料や、弾性圧接部23aと同じ弾性材料で硬度違いのものから形成され、下枠14下端の嵌合溝14aに嵌り合って弾性的に収縮する。
詳細に説明すれば、図示例の接続部23bは、止水板厚さ方向の両側各々に、斜め下方向きに突出する突片部23b1を、上下方向に間隔をおいて複数有する。
これら突片部23b1は、嵌合溝14aにおける抜止め突起14a1よりも上側に挿入され、その突端側を、嵌合溝14aの内側面に圧接し弾性変形する(
図5参照)。
この接続部23bは、弾性圧接部23aの上端面に対し、接着や溶着等の接合手段、または押し出し成型により一体的に接合されている。
【0033】
また、パッキン24は、縦枠11の下端部に設けられた直方体ブロック状の弾性部材(例えば、ゴムやエラストマー樹脂等)であり、縦枠11と下方側不動面Gの間に挟まれて弾性変形し、これらの間の水密性を確保する。
このパッキン24は、パッキン21の下端側に接するとともに、パッキン23の横幅方向の一端側(
図1によれば左端側)にも接しており、パッキン21とパッキン23の間に止水板厚さ方向へ貫通する隙間が生じないようにしている。
【0034】
また、パッキン25は、縦枠12の下端部に設けられた直方体ブロック状の弾性部材(例えば、ゴムやエラストマー樹脂等)であり、縦枠12と下方側不動面Gの間に挟まれて弾性変形し、これらの間の水密性を確保する。
このパッキン25は、パッキン22の下端側に接するとともに、パッキン23の横幅方向の他端側(
図1によれば右端側)にも接しており、パッキン22とパッキン23の間に止水板厚さ方向へ貫通する隙間が生じないようにしている。
【0035】
次に上記構成の止水装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
左右の止水板10,10’は、それぞれ、上側係止部16と下側係止部17により左右の支柱X,Xに係止され、下端側のパッキン23を下方側不動面Gに圧接する。
【0036】
この際、パッキン23は、先ず、下端側の弾性圧接部23aを下方側不動面Gに当接して弾性変形し、次に、傾斜面部23a1の下端側を下方側不動面Gに当接させて弾性変形する(
図3及び
図5(a)(b)参照)。
仮に下方側不動面Gに不陸等による若干の凹凸がある場合でも、その凹凸に沿って突条23a3が柔軟に変形するため、パッキン23と下方側不動面Gの間に隙間が生じるのを効果的に防ぐことができる。
【0037】
また、パッキン23が下方側不動面Gに圧接される際に、不陸が大きいこと等によって、弾性圧接部23aの弾性変形が不十分な状態で上流側(屋外側)から水圧を受けた場合には、先ず、突条23a3が傾くように弾性変形し(
図6(b)参照)、この後、屋内側の段部23a13を下方側不動面Gに当接して更に弾性変形する(
図7(c)(d)参照)。
このように、パッキン23は、特に、突条23a3と段部23a13の部分で、下方側不動面Gに強く圧接され、これら局部的な曲部的な圧接により、高い止水性能を発揮する。
【0038】
上記のようにして、弾性圧接部23aが弾性変形する際、比較的ゴム硬度の大きい接続部23bの弾性変形は、弾性圧接部23aの弾性変形よりも小さい。
このため、接続部23bの弾性変形が大きすぎて、接続部23bが嵌合溝14aから外れてしまうようなことを防ぐことができる。
【0039】
<下側のパッキンの他例>
次に、上記パッキン23の変形例について説明する。
以下に示すパッキンについて、同様に機能する部位は同一の符号を付けて重複する詳細説明を省略する。
【0040】
上記実施形態によれば、特に好ましい一例として、パッキン23を構成する弾性圧接部23aと接続部23bを硬度の異なる弾性材料としたが、他例としては、
図9(a)に示すパッキン31のように、弾性圧接部23aと接続部23bを同弾性材料から一体に形成してこれらの硬度が同一になるようにすることも可能である。
【0041】
また、上記実施形態によれば、特に好ましい一例として、パッキン23の下端側に突条23a3を設けたが、他例としては、
図9(b)に示すパッキン32のように、弾性圧接部23aの下端側を縦断面略V字状に形成して、突条23a3を省くことも可能である。
【0042】
また、上記実施形態によれば、パッキン23の縦断面形状の左右対称にしたが、他例しては、
図10(a)に示すパッキン33のように、下流側(図示例によれば屋内側)のみに傾斜面部23a1を有する態様とすることも可能である。
【0043】
さらに、他例としては、
図10(b)に示すパッキン34のように、下流側に傾斜面部23a1を有するとともに、上流側には止水板横幅方向へ連続する凹部23a4を設けた態様とすることも可能である。
このパッキン34によれば、下方側不動面Gに不陸による凹凸がある場合や、上流側から水圧を受けた場合に、弾性圧接部23aの下端側を上流側へ効果的に撓ませて、止水効果を向上することができる。
【0044】
なお、
図10(a)(b)に示すパッキン33,34は、縦断面上において弾性圧接部23aが左右非対称であるため、傾斜面部23a1が上流側へ向いた状態で設置されることのないように、以下の手段を設けるのが好ましい。
この手段は、例えば、パッキン33,34の下流側面及び/又は上流側面に、流れ方向側を示す表示(例えば、「下流側」や「上流側」等の文字)を設ける。
この構成によれば、傾斜面部23a1が上流側へ向いた状態で、パッキン33,34が止水板10,10’に装着されるのを防ぐことができる。
さらに好ましい態様としては、傾斜面部23a1の向きに対応するようにして、止水板10,10’の下流側面及び/又は上流側面にも、前記表示を設けてもよい。
【0045】
また、前記手段の他例としては、接続部23bを縦断面上において左右非対称に形成するとともに、この接続部23bが嵌り合う嵌合溝14aも縦断面上において左右非対称に形成して、傾斜面部23a1が下流側へ向いた状態でのみ、パッキン33,34が止水板10,10’に装着されるようにしてもよい。
【0046】
<その他の変形例>
上記実施形態の止水装置1によれば、左右の支柱X,X間に二つの止水板10,10’を連結して設けたが、他例としては、左右の支柱X,X間に単数の止水板を設けた態様や、左右の支柱X,X間に三以上の止水板を連結して設けることも可能である。この場合も、各止水板の下端に上記構成の止水板用パッキンを設ければよい。
【0047】
上記実施形態の止水装置1(
図1参照)によれば、止水板10を、縦枠11,12、上枠13、下枠14及び本体板15等の複数の部材から構成したが、この止水板10の他例としては、単一の板状部材から形成した態様や、図示例以外の複数の部材から板状に形成した態様等とすることが可能である。
【0048】
上記実施形態の止水装置1によれば、パッキン24,25の各々を直方体ブロック状に形成したが、他例としては、これらパッキン24,25の各々を、パッキン23と同様の縦断面形状に形成することも可能である。
【0049】
上記実施形態の止水装置1によれば、縦枠11と下枠14と縦枠12の下端に、それぞれ、パッキン24とパッキン23とパッキン25を設けこれらの間を接するようにしたが、他例としては、パッキン23を縦枠11の下端から縦枠12の下端にわたって連続するように設けて、パッキン24,25を省くことも可能である。
【0050】
上記実施形態によれば、パッキン23の接続部23bが下枠14の嵌合溝14aに嵌合する構成としたが、他例としては、接続部23bを、嵌合以外の接続手段(例えば、ねじ止めや、リベット止め、接着等)により、下枠14に接続することも可能である。
【0051】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
止水板の下端に横幅方向へわたって設けられるパッキンであって、下方側不動面に圧接されて弾性変形する弾性圧接部と、前記弾性圧接部よりも上側で前記止水板に接続される接続部とを一体的に備え、前記弾性圧接部は、止水板厚さ方向の外寸を、下方へゆくにしたがって徐々に狭めていることを特徴とする止水板用パッキン(
図1~
図10参照)。
(2)
前記弾性圧接部は、想定される水の流れ方向の上流側へ向かって下方へ傾斜する傾斜面部を有することを特徴とする(1)に記載の止水板用パッキン(
図4~
図10参照)。
(3)
前記傾斜面部は、その上端側が縦断面凹曲面状に形成されていることを特徴とする(2)に記載の止水板用パッキン(
図4~
図6及び
図9(a)参照)。
(4)
前記傾斜面部が、止水板厚さ方向の一方側と他方側にそれぞれ設けられていることを特徴とする(2)または(3)に記載の止水板用パッキン(
図4~
図6及び
図9(a)参照)。
(5)
前記弾性圧接部は、前記傾斜面部よりも上側の所定高さ範囲において止水板厚さ方向の外寸を略一定にした基部を有することを特徴とする(2)~(4)いずれかに記載の止水板用パッキン(
図4~
図6、
図9及び
図10参照)。
(6)
前記弾性圧接部の下端側には、前記外寸を段状に狭めて下方へ突出する突条が設けられていることを特徴とする(1)~(5)いずれかに記載の止水板用パッキン(
図4~
図6、
図9(a)及び
図10(b)参照)。
(7)
前記接続部の硬度を、前記弾性圧接部よりも大きくしたことを特徴とする(1)~(6)いずれかに記載の止水板用パッキン(
図4~
図6、
図9(b)及び
図10参照)。
(8)
(1)~(7)いずれかに記載の止水板用パッキンを具備したことを特徴とする止水板(
図1~
図3参照)。
【符号の説明】
【0053】
1:止水装置
10,10’:止水板
21~25,31~34:パッキン
23a:弾性圧接部
23a1:傾斜面部
23a2:基部
23a3:突条
23a13:段部
23b:接続部
G:下方側不動面
w:止水板厚さ方向の外寸
X:支柱