(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010645
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】低温/BEOLに適合した高スケーラブルなグラフェン合成ツール
(51)【国際特許分類】
C01B 32/184 20170101AFI20240117BHJP
【FI】
C01B32/184
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005860
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】17/863,232
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523020947
【氏名又は名称】デスティネーション 2ディー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DESTINATION 2D Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】バナルジー,カウスタフ
(72)【発明者】
【氏名】イエンガー,ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ルーペシンゲ,ナリン
(72)【発明者】
【氏名】スンダル,サティシュ
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD28
4G146AD30
4G146BA02
4G146BC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板上に拡散グラフェンを成長させる、グラフェン拡散装置及び方法を提供する。
【解決手段】高スケーラブルな拡散対装置は、搬送チャンバを含む。処理チャンバは、搬送チャンバからウェハ基板を受け取るように構成される。処理チャンバは、ウェハ上に拡散材料を成長させるためのチャンバを含む。加熱可能な下部ディスクは第1の加熱機構を含む。加熱可能な下部ディスクは固定されており、特定の温度まで加熱可能である。ウェハは加熱可能な下部ディスク上に配置される。加熱可能な上部ディスクは第2の加熱機構を含む。加熱可能な上部ディスクは、下部ディスクに平行に上下に移動して、加熱可能な下部ディスク上のウェハに機械圧力を付加するように構成される。加熱可能な上部ディスクが機械圧力を付加するとき、チャンバ圧力を特定の低い値に維持する。第1の加熱機構と第2の加熱機構とは、使用範囲の任意の値に個別に調整することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン拡散装置であって、
基板上に拡散グラフェンを成長させるように構成されるとともに、第1の加熱機構を含む加熱可能な下部ディスクと第2の加熱機構を含む加熱可能な上部ディスクとを含む、処理チャンバを含み、
前記加熱可能な下部ディスクは、固定されており、特定の温度まで加熱可能であり、前記基板は前記加熱可能な下部ディスク上に配置され、
前記加熱可能な上部ディスクは、前記加熱可能な下部ディスクに向かって移動して、前記加熱可能な下部ディスク上に位置する前記基板に機械圧力を付加するように構成され、前記加熱可能な上部ディスクが前記機械圧力を付加するとき、チャンバ圧力は特定の低い値に維持され、
前記第1の加熱機構と前記第2の加熱機構とは個別に調整され、
前記加熱可能な上部ディスク及び前記加熱可能な下部ディスクの圧力付加面は前記基板と平行である、装置。
【請求項2】
前記処理チャンバの圧力値を10-3torr~10-7torrに制御するように構成された1つ以上のポンプをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基板は、300mmの直径、200mmの直径、又は150mmの直径のシリコンウェハを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱可能な下部ディスクは、300mmのディスクを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記加熱可能な上部ディスクが前記ウェハに前記機械圧力を付加するとき、前記加熱可能な下部ディスクが、前記熱下部ディスクにわたって±3℃の均一性で500℃まで加熱される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記加熱可能な上部ディスクは、前記ウェハに50psi~125psiの機械圧力を付加する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記チャンバ圧力を、成長処理の汚染を防ぐために10-6~10-7torrに維持しながら、前記加熱可能な上部ディスクが前記機械圧力を付加する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記処理チャンバにおいて、高品質の原子薄膜を直接合成する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)マイクロエレクトロニクス製造プロセスに組み込まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
表面がグラファイトから構成されたライナーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ライナーは、窒化アルミニウム、石英、又はSiC被覆グラファイトを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
基板上に堆積させた拡散対を横切って基板表面に堆積材料を移動させる方法であって、
処理チャンバ内において第1の加熱可能なプレート上に基板を配置するステップと、
前記処理チャンバを真空にするために真空ポンプを作動させ、それにより、前記処理チャンバ内において圧力を下げるステップと、
前記第1の加熱可能なプレート内において第1の加熱器を作動させるステップと、
第2の加熱可能なプレート内において第2の加熱器を作動させるステップと、
前記第1の加熱可能なプレート及び前記第2の加熱可能なプレートの少なくとも1つを互いに向かって移動させて、前記第1の加熱可能なプレート及び前記第2の加熱可能なプレートの圧力付加面の前記基板との平行を確保しながら、前記基板を前記第1の加熱可能なプレートと前記第2の加熱可能なプレートとの間に挟み、前記第1の加熱可能なプレート及び前記第2の加熱可能なプレートによって機械的に加圧するステップとを含む、方法。
【請求項13】
処理チャンバ内において第1の加熱可能なプレート上に基板を配置する前記ステップの前に、前記基板上に拡散対層を堆積させるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応器システムは、拡散対を横切った前記基板への前記材料の前記移動を促すように圧力を付加するため、可とう性加圧膜を使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
拡散対を横切った前記基板への前記1つ以上の拡散材料の前記移動を促すように温度を付加するため、加熱した気体を使用することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記拡散対を横切った前記基板への前記1つ以上の拡散材料の前記移動を促すように温度を付加するため、放射加熱を使用することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
拡散対を横切った前記基板への前記1つ以上の拡散材料の前記移動を促すように、前記基板を配置したキャリア又は上部可動ディスクの誘導加熱を使用することと、
前記基板への均一の圧力を確保し、且つ前記基板の破損を防ぐため、直接圧力を付加するための1つ以上の機構においておおよそのコンプライアンスを使用することと、
前記基板を破損することなく圧力の均一な付加を確保するため、前記圧力付加面にコンプライアンスを有する高熱伝導性材料を使用すること、
付加した圧力の尺度として、前記基板に圧力を付加するために使用するアクチュエータに供給される電流を使用することと、
前記基板に付加した圧力を測定するため、圧力変換器を使用することと、
前記基板に付加した圧力を測定するため、歪ゲージとして構成されるとともにペデスタルに包埋された複数のフレクシャ及びリーフスプリングを使用することと、
前記基板のバッチ処理のために複数の基板を処理可能な複数の反応器構成を使用することとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
この出願は、2022年7月12に出願した「低温/BEOLに適合した高スケーラブルなグラフェン合成ツール」という発明の名称の米国特許出願第17/863,232号の優先権を主張する。この出願は、言及することによってその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
「拡散対」を形成する「材料スタック」における原子の固相拡散は、マイクロエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス、バイオエレクトロニクス、量子コンピューティング、及び他にも多数に及ぶ広範囲の用途に必要とされている、比較的低温で高品質の薄膜の合成を行うため、活用可能である。しかしながら、特に、大きな「ウェハスケール」(例えば、200mm、300mm等)の基板上において、適当な成長時間内で、そうした固相拡散支援薄膜成長を可能にすることは、半導体ウェハ又は拡散対を形成する任意の他の基板の全表面積にわたって広範囲の温度及び圧力を均一に付加することができる新しい装置の設計及び製造を必要とする。そうした装置の主な構成要素は反応器であり、これは、そうした大面積の基板を受け入れることができるだけでなく、化学的パージ環境、ゼロに近い温度の不均一性を有する大面積の基板の加熱、並びに、比較的大きく均一な機械圧力(例えば、最大1000psi等)を拡散対に付加するための簡単な機構も可能にする。一部の例において、大気圧を利用することができることが留意される。
【0003】
原子レベルの薄さの二次元(2D)材料、特にグラフェン又は多層グラフェン(MLG)(実質的に、六角形格子に配列した炭素原子の単一又は複数の原子層)の新興分野において、そうした大面積の拡散対が差し迫って必要とされており、そうした材料は、主要な電子機器(又はCMOS)産業では実現不可能で費用効果が低いと考えられている転写ステップを必要とせず、所望の基板(例えば誘電体又は金属)上に直接合成する必要がある。そうしたグラフェン/MLG層は、いくつかのバックエンドオブライン又はBEOL(チップ製造においてトランジスタ及びダイオードなどの能動デバイスを形成後の処理ステップを指す)の用途において、特にオンチップ配線において好適な材料である。しかしながら、BEOLの配線は、下にある能動デバイスへのいずれの損傷(例えば、トランジスタ、ダイオード等、不純物の拡散増加を介して)も防ぐため、500℃未満の厳密なサーマルバジェットのもとで合成される必要がある。
【0004】
BEOL適合温度におけるグラフェン/MLG合成の近年の進歩により、SiO2/Si基板上に配置した犠牲金属膜(例えばニッケルなど)上に堆積させた炭素源(例えば、粉末、スラリー、又は非晶質炭素膜の形態)の層が拡散対を形成するという、グラフェン/MLG成長のための拡散対の使用が最先端となっている。比較的低温(<450℃)における適切な機械圧力(65~80psi)の炭素源への付加が、比較的小さい(1~2インチ)基板上ではあるが、高品質なグラフェン/MLG成長を可能にするのに十分であるということが示されている。したがって、この技術を主要なCMOS技術に組み込むため、スケールアップした(200/300mm)拡散対装置を設計及び製造する必要がある。また、この技術/装置は、様々な形状及び構成の広範囲の基板、並びに本質的に低サーマルバジェット(<500℃)を必要とする他の用途に拡張可能である。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、高スケーラブルな拡散対装置は、ウェハを処理チャンバ(例えば、反応器)に搬入するように構成された搬送チャンバを含む。処理チャンバは、搬送チャンバからウェハ基板を受け取るように構成される。処理チャンバは、任意の標的基板(例えば、シリコンウェハなど)上に拡散材料を成長させるためのチャンバを含む。加熱可能な下部プレート又はディスクは第1の加熱機構を含む。加熱可能な下部ディスクは固定されており、特定の温度まで加熱可能である。ウェハは加熱可能な下部ディスク上に配置される。加熱可能な上部ディスクは第2の加熱機構を含む。加熱可能な上部ディスクは、X軸及びX’軸に沿って上下に移動して、加熱可能な下部ディスク上のウェハに機械圧力を付加するように構成される。チャンバ圧力を特定の低い値に維持しながら、加熱可能な上部ディスクが拡散対に機械圧力を付加する。第1の加熱機構と第2の加熱機構とは、使用範囲の任意の値(例えば、室温から500℃)に個別に調整することができる。
【0006】
他の態様において、基板上に堆積させた拡散対を横切って基板表面に堆積材料を移動(例えば、拡散)させる方法は、拡散対を横切った基板への1つ以上の拡散材料の移動を促すように特定の圧力を付加すること、及び拡散対を横切った基板への1つ以上の拡散材料の移動を促すように温度を付加することによって、拡散対を横切った基板への1つ以上の拡散材料の移動を促すため、反応器システムを使用するステップを含む。
【0007】
本願は、添付の図面と併せて以下の発明を実施するための形態を参照することで最もよく理解することができ、同様の部分は同様の符号によって表され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一部の実施形態における、グラフェン合成ツールのグラフェン処理及び搬送チャンバの平面図の例を示す。
【
図2】
図2は、一部の実施形態における、処理チャンバの内部要素の模式図の例を示す。
【
図3】
図3は、一部の実施形態における、グラフェン合成ツール処理の例を示す。
【
図4】
図4は、一部の実施形態における、拡散対を形成する基板(例えば、Siウェハ)上に堆積させた拡散対金属を横切って基板表面に堆積材料を移動(例えば、拡散)させる処理の例を示す。
【
図5】
図5は、一部の実施形態における、基板上に堆積させた拡散対金属を横切って基板表面に堆積材料を移動させる他の処理の例を示す。
【
図6】
図6は、一部の実施形態における、均一の圧力及び温度で基板を加圧及び加熱するように上部及び下部加熱器を使用する処理の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の図面は代表的な一群であり、本発明の具体化に関して網羅的なものではない。
【0010】
低温/BEOLに適合した高スケーラブルなグラフェン合成ツールのためのシステム、方法、及び物品を開示する。当業者が種々の実施形態を実施し且つ使用することができるように、以下の発明を実施するための形態を提示する。特定のデバイス、技術、及び用途を例としてのみ記載する。本明細書に記載する実施例に対する種々の変形は当業者には直ちに明らかになり、本明細書に規定する一般的な原理は、種々の実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の実施例及び用途に適用され得る。
【0011】
この明細書にわたる「一実施形態」、「実施形態」、「一例」、又は同様の文言への言及は、実施形態に関して記載する特定の特徴、構造、又は特性が本発明における少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。したがって、この明細書にわたって「一実施形態において」、「実施形態において」という表現、及び同様の文言が現れると、すべて同じ実施形態を指し得るが、必ずしもそうではない。
【0012】
さらに、記載する本発明の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わせることができる。以下の記載において、本発明の実施形態を十分に理解するため、多数の特定の詳細、例えば、プログラミング、ソフトウェアモジュール、ユーザ選択、ネットワーク取引、データベースクエリ、データベース構造、ハードウェアモジュール、ハードウェア回路、ハードウェアチップ等の例が記載される。しかしながら、当業者は、特定の詳細の1つ以上がなくとも、又は他の方法、構成要素、及び材料等と共に、本発明を実施し得ることを認め得る。他の場合において、本発明の態様を不明瞭にしないように、周知の構造、材料、又は動作を詳細に示していない又は記載していない。
【0013】
本明細書に含む概略のフローチャート図は、一般に論理フローチャート図として示される。したがって、記載する順序及び表示するステップは、提示する方法の一実施形態を示す。例示した方法の1つ以上のステップ又はその一部と機能、論理、又は効果が同等である他のステップ及び方法が想到され得る。さらに、使用する形式及び記号は、方法の論理的なステップを説明するために記載されるものであり、方法の範囲を限定するものではないと理解される。フローチャート図には、種々の矢印の種類や線の種類を使用し得るが、これらは対応する方法の範囲を限定するものではないと理解される。実際に、一部の矢印又は他のコネクタは、方法の論理的な流れを示すためだけに使用され得る。例えば、矢印は、記載する方法の列挙されたステップ間における不特定の持続時間の待機又は監視期間を示し得る。さらに、特定の方法が生じる順序は、提示した対応するステップの順序に厳密に従うことも、従わないこともある。
【0014】
(定義)
バックエンドオブライン(BEOL)は、層内又は層間絶縁体によって隔てられたウェハ(例えば、メタライズ層)上の個々のデバイス(主にトランジスタ)間又はその上に、配線及び他の素子を形成するという、IC製造の第2の部分である。
【0015】
相補型金属酸化膜半導体(CMOS)は、論理機能を実行するために相補且つ電気的に対称の対のp型及びn型MOSFETを使用する、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)製造プロセスの一種である。
【0016】
粒界(GB)は、多結晶材料における2つの粒子及び/又は結晶子の間の界面である。
【0017】
グラフェンは、2次元ハニカム格子に配列した単一層の原子からなる炭素の同素体である。
【0018】
グラフェンナノリボン(GNR)は、幅が100nm未満のグラフェンのストリップである。
【0019】
グラファイトは炭素元素の層状結晶形態であり、その原子が層内で配列及び共有結合して六角形構造を形成する。
【0020】
圧電気は、機械的な応力を付加するとその応力に応じて特定の固体材料に蓄積される電荷である。
【0021】
測温抵抗体(RTD)は、温度による導体の電気抵抗の変化を監視することによって温度を測定するために使用されるセンサである。RTD素子は、耐熱性のセラミック又はガラスのコアに巻き付けた1本の細いワイヤからなり得るが、他の構造も使用される。
【0022】
二酸化ケイ素は、化学式がSiO2であるシリコンの酸化物であり、絶縁体である。
【0023】
ウェハとは、集積回路等の製造に使用される半導体(例えば、結晶シリコン、ゲルマニウム)の薄片である。
【0024】
(低温/BEOLに適合した高スケーラブルなグラフェン合成ツールの例)
以下の例の実施形態は例としてグラフェン源を記載するということが留意される。しかしながら、他の炭素源(任意の炭素含有化合物を含む)を他の例の実施形態に利用することができる。
【0025】
図1は、一部の実施形態における、炭素源合成ツール100のグラフェン処理及び搬送チャンバの平面図の例を示す。他の例の実施形態において、炭素源以外の他の拡散材料(特定の拡散金属及び用途に適した周期表の他の元素)を利用することができることが留意される。炭素源合成ツール100は、低温/BEOLに適合したスケーラブルなグラフェン(及び/又は他の炭素源)合成ツールとすることができる。炭素源合成ツール100は搬送チャンバ102を含む。搬送チャンバ102はウェハを搬入するために使用される。ウェハは種々のサイズとすることができる(例えば、300mm、200mm、150mm等)。作業者/ユーザは、搬送チャンバ102にウェハを配置することができる。その後、搬送チャンバ102を閉じて密閉する。搬送チャンバ102の圧力を、処理チャンバ104の圧力と等しくする。圧力が等しくなったら、ウェハをその後処理チャンバ104に送る。堆積及び他の製造の方法の実施後、ウェハを搬送チャンバ102に戻すことができることが留意される。
【0026】
処理チャンバ104及び搬送チャンバ102はスリット弁108を介して接続されている。2つのチャンバ内の圧力が等しくなると、スリット弁108は自動的に開く。
【0027】
処理チャンバ104は、ウェハ上にグラフェン(及び/又は他の炭素材料)を成長させるための主チャンバ(又は反応器)である。300mmよりわずかに大きいサイズを有する基板は処理チャンバ104に位置する(例えば、加熱下部基板208参照)。処理チャンバ104は加熱器システムを備える。加熱上部プレート又はディスクも処理チャンバ104に位置する(例えば、加熱上部基板206参照)。加熱上部ディスクはそれ自体の加熱機構も有している(例えば、加熱電源202参照)。このようにして、ウェハを配置した下方ディスク及び加熱上部ディスクの両方を個別に加熱することができる。例えば、下方ディスクを加熱することができ、上部ディスクをほぼ室温に保持することができる(又は逆もまた同様)。ライナー表面(ディスクを覆う)をグラファイトから作製することができるが、他の材料、例えば窒化アルミニウム、石英、炭化ケイ素被覆グラファイト等を使用することができる。いくつかのそうした材料が適当であり、一般に、良好な伝熱性及び圧力分布を可能にする材料を考慮することができる。ライナーの平坦度及び表面仕上げは、適切な熱及び圧力分布を確保するための主要素となり得る。
【0028】
機械式/ターボ式ポンプ108は、処理チャンバ104及び/又は搬送チャンバ102の圧力を制御するために使用することができる。機械式ポンプは、処理チャンバ104の圧力を下げるために使用することができる(例えば、10-3torr)。ターボ式ポンプは、さらに圧力を下げるために使用されるより強力なポンプとすることができる(例えば、10-7torr)。拡散対の操作時にチャンバから任意の不純物をパージするため、低い圧力が望ましい。
【0029】
電気制御部110は、炭素源合成ツール100を動作させるために使用することができる。電気制御部110は、コンピュータプロセッサ及びソフトウェアシステムを含むことができる。ユーザは、コマンドを入力し、炭素源合成ツール100における種々の動作の状態を見ること等ができる。
【0030】
図2は、一部の実施形態における、処理チャンバ104の内部要素の模式図の例を示す。記載されるウェハ搬送チャンバ214は、処理チャンバ104から搬送チャンバ102にウェハを往復して搬送することを示す。加熱下部ディスク208は固定することができ、特定の温度(例えば、500℃等)まで加熱することができる。熱電源220は、熱下部ディスク208の熱を維持することができる。これは、熱下部ディスク208にわたって±3℃の均一性(及び/又はゼロに近い不均一性)で行うことができる。加熱上部ディスク206は、x及びx’軸に沿って上下に移動することができる。熱上部ディスク206は、個別の熱供給部(例えば、熱電源202)を有する。加熱上部ディスク206を、液圧シリンダ204、及びモータ等で動作させることができる。加熱上部ディスク206は、機械圧力を与えるように移動させることができる。一例として、この圧力は50~125psiとすることができる。ウェハは加熱下部ディスク208の上部に挿入される。チャンバ圧力を低い値に維持しながら、加熱上部ディスク206が拡散対に機械圧力を付加する。この圧力は、成長処理の汚染を防ぐため、例えば10
-6~10
-7torrとすることができる。チャンバ圧力を機械式/ターボ式ポンプ216によって調節することができる。
【0031】
処理チャンバ104の動作の例をここで記載する。処理チャンバ104は、多数の層(例えば、単層若しくは数層のグラフェン構造、又は多層グラフェン構造)を堆積/成長させるために使用することができる。グラフェンを成長させるため、グラフェン源をニッケルの薄膜(例えば、100nm厚)上に堆積させる。グラフェン源(及び/又は他の炭素源)は、なかでも、グラファイト粉末、グラファイトを含む溶媒としての液体/スラリー形態、ニッケル上に堆積した非晶質炭素層とすることができる。ニッケルの薄膜を堆積させ、その後にニッケルの上部に炭素源を堆積させるため、様々な堆積方法及びツールを利用することができる。機械圧力を付加することで、グラファイト源を炭素原子に分割し、これがその後ニッケルを介して拡散し、その後標的の基板(例えばSiウェハ上の誘電層など)の上部でニッケル膜の裏側において再結合する。所望の数のグラフェン層形成を終えると、ニッケル膜及び炭素源をその後除去する。
【0032】
図3は、一部の実施形態における、グラフェン合成ツール処理300の例を示す。グラフェン合成ツール処理300において、炭素源合成ツール100を動作させるために使用することができる。グラフェン合成ツール処理300は、比較的低い温度(例えば、300~450℃等)でグラフェンを成長させることができる。処理チャンバ104が約450℃より低いとき、CMOS/BEOLのサーマルバジェットに適合し得るということが留意される。BEOLは、フロントエンドオブラインのトランジスタを製造した後に行う処理ステップである。製造プロセスにおいてトランジスタをウェハ上に作製すると、ショート及び信頼性の問題を招き得るトランジスタ及び種々の接続部の損傷を防ぐため、その後の処理ステップは約450℃のサーマルバジェット内とする必要がある。
【0033】
グラフェン合成ツール処理300において、処理パラメータを調整することによって層の数を制御可能にしながら、グラフェンを合成する。グラフェン合成ツール処理300において、任意の基板(例えば、誘電/Si基板、金属基板等)の上部に直接成長させることができる。グラフェン合成ツール処理300において、金属基板の薄層/数層の被覆部にグラフェンを合成することができる。
【0034】
より具体的には、ステップ302では、グラフェン合成ツール処理300において、CMOS/BEOLのサーマルバジェットに適合した、低温(例えば、<450℃)グラフェン膜をなすことができる。ステップ304では、グラフェン合成ツール処理300において、種々の基板上に直接(例えば、転写なし)グラフェン合成を行うことができる。ステップ306では、グラフェン合成ツール処理300において、単層から多層まで厚さを制御することができる。
【0035】
(例の実施形態)
例の実施形態はウェハ(例えば、Si/SiO2)から開始され、その後、触媒金属薄膜、例えばニッケルなどの薄膜を堆積させる。触媒膜の形態は、特定の用途の要求を満たすように堆積時又は堆積後に(例えば、アニール等を介して)調整することができる。その後、Niの上部に均一に分布させた炭素源を堆積させる。炭素源に65~85psiの圧力を付加する。300mmのウェハよりわずかに大きい直径を有するディスクを使用することができる。基板(ウェハ)は300℃~450℃に加熱することができる。圧力を付加すると、炭素物体の一部がNi膜を介して拡散する。炭素源/Ni/SiO2/Siは、拡散対として作用することができる。炭素原子は、Niの裏側(例えば、SiO2に面する側)において再結合して、単層、数層、又は多層のグラフェンを形成することができる。
【0036】
その後、種々の処理ステップを実施することができる(例えば、残留グラファイトの除去、触媒(Ni)層の除去等)。
【0037】
基板は、SiO2の代わりに、銅若しくは他の金属(例えばコバルト、ルテニウム、モリブデン、タングステン、若しくは合金金属等)、又は低誘電率(low-k)材料、例えば多孔性二酸化ケイ素若しくは水素シルセスキオキサン(HSQ)等、又はさらに金属及び誘電体等で形成された任意のパターン基板とすることができる。この実施形態において、変形には、NiとCuとの間に非晶質炭素の犠牲層を含むことができる。このようにして、NiとCuとが合金を形成しないようにすることができる。他の例において、他の金属は、なかでも、Co、Ni、Ru(基板及び/又は触媒の両方として)、モリブデン等、又は金属化合物を含むことができる。
【0038】
基板及び触媒の厚さは設定することができる(例えば、100nm等)。必要とするグラフェンの層の数(すなわち、その厚さ)は、時間、温度、圧力、及び触媒膜の粒径を含む他の処理パラメータの他に、Niの厚さの関数とすることができる。
【0039】
基板ウェハは、300mm又は200mm又はより小さい/大きい(450mm)ものとすることができる。室温(約25℃)から500℃までのいずれか、又は、処理の適合性を満たす限りそれ以上である温度を維持するように、温度制御器を使用することができる。グラファイト粉末を、均一になるように又は予めパターン形成するように分散させることができる。均一に分布させたグラファイトを押さえ付けるため、チャック(ディスク)を使用することができる。また、他の炭素含有化合物も基板として使用することができる。
【0040】
拡散対を形成する基板に、機械的な力によって、例えばチャックなどの機器の使用によって、又は、任意の非接触手段を介して、例えば気体圧力(1バールから数千バール)の使用による基板環境の圧力の増加を介して、圧力を付加することができる。単一の基板又はバッチとしての複数の基板を一度に処理することができる。さらに、気体は、通常の空気、又は、特定の気体、例えばAr、N2若しくは多くのそうした気体の混合物等とすることができる。
【0041】
熱の付加は、基板上に温度を生じさせることが可能な任意の供給源から行うことができる。一部の実施形態において、上部ディスク及び/又は下部ディスクの両方を加熱可能とすることができる。一部の実施形態において、上部基板ディスク及び/又は下部基板ディスクは加熱可能ではないこともあり、他の熱源、例えば圧力チャンバ壁等が存在し得る。
【0042】
(基板上に堆積させた拡散対を横切って基板表面に堆積材料を移動させるシステム及び方法の例)
システム及び方法の例は、基板上に堆積させた拡散対を横切って基板表面に堆積材料を移動させるために提供し得る。この手法は、材料の堆積に多くの利点をもたらす。
【0043】
図4は、一部の実施形態における、基板上に堆積させた拡散対を横切って基板表面に堆積材料を移動させる処理400の例を示す。処理400において、以下のステップを実施することによって、拡散対を横切った基板への1つ以上の拡散材料の移動を促すため、反応器システムを使用することができる。ステップ402では、処理400において、拡散対を横切った基板への1つ以上の拡散材料の移動を促すように特定の圧力を付加することができる。ステップ404では、処理400において、拡散対を横切った基板への1つ以上の拡散材料の移動を促すように温度を付加することができる。
【0044】
図5は、一部の実施形態における、基板上に堆積させた拡散対を横切って基板表面に堆積材料を移動させる他の処理500の例を示す。処理500において、従来の方法を使用して直接堆積させることができないことがある材料を堆積させることができる。例えば、グラフェンはシリコン上に直接合成されるとは知られていない。処理500において、これが実現可能である。拡散対の構造及び/又は処理条件を適切に変えることで、堆積させた材料の粒子及び他の材料構造を適応させ得る、ということが留意される。
【0045】
ステップ502では、処理500において、最も多く使用されるものを含む種々の手段によって拡散対を基板上に堆積させ、その後、拡散対の上部において基板上に、何らかの形態の堆積させる材料を堆積させる。これを、本明細書において加工基板又は層基板と呼び得る。
【0046】
ステップ504では、処理500において、この文書において範囲を特定する高圧及び高温の環境に加工基板を所定の時間配置する。
【0047】
ステップ506では、処理500において、なかでも抵抗加熱、放射加熱、及び気体加熱等によってなされる熱の付加を行うことができる。
【0048】
ステップ508では、処理500において、圧力も付加することができる。これは、なかでも機械的手段、気体圧力、可とう性膜、及び液体圧力等によって実施することができる。
【0049】
(例の使用事例:圧力を機械的に付加して直接加熱する反応器)
図6は、一部の実施形態における、均一の圧力及び温度で基板を加圧するように上部及び下部加熱器を使用する処理600の例を示す。炭素源合成ツール100は、本例の実施形態を実施するように改変及び/又は使用することができる。基板を、装置産業において標準的なハンドラーの手段によってペデスタル(例えば、ディスク)上に配置する。ペデスタルは、直接接触することによって基板を加熱することができる。接触材料は、適切なライナー材料の使用によって変わり得ることが留意される。その後、上部可動加熱器(ディスクに包埋)を下方に移動させ、基板を同時に加熱しながら圧力下に置く。処理が終了すると、基板を反応器(例えば、上述の
図2の処理チャンバ等)から戻す。
【0050】
ステップ602では、上部及び下部加熱器の付加面は基板に平行であり、基板を損傷しないように十分にコンプライアンスを有するものである。ステップ604において、上部加熱器機構に対して十分なゆとり、遊び、及びコンプライアンスを設けること、並びに必要であれば付加面にコンプライアンス層を設けることによって、これをなしている。
【0051】
ステップ606では、また、基板を真空下に置くとともに、なかでもN2、Ar、及びHe等の他の気体に曝露して処理を最適化する手段を、反応器に設け得る。したがって、反応器は、基板を確実に種々の環境下に置くことができるように、真空ポンプ、並びに気体ライン及び気体パネルを備え得る。
【0052】
ステップ608では、反応器は、基板を反応器へ及び反応器から搬送することができる機器に接続し得る。例えば、ウェハ処理の場合、反応器は、高真空下で動作するウェハハンドリングロボットを備えた搬送チャンバの面に取り付けられ得る。一部の例において、反応器をシステムの残りの部分から分離するため、スリット弁を設けることができる。より高いスループット又は生産率を可能にするため、複数の反応器を搬送チャンバに取り付け得る。また、搬送チャンバに取り付けられた、原料を含む拡散対を堆積させる反応器、例えばスパッタリングチャンバ及びCVDチャンバなどが存在し得、それによって、基板上に層を作製し、同じシステムにおいて最終材料を堆積させることができる。
【0053】
ステップ610では、処理600において、圧力及び温度の分布によってその結果として拡散対を横切って堆積材料を最適且つ確実に移動させるため、その場所でセンサを設ける(例えば、反応器内等)。例えば、ペデスタルの段差部における圧力センサの使用によって、表面同士の間に圧力を付加するモータに供給される電流を監視することによって、及びライナー材料に包埋される歪ゲージとして構成されたフレクシャの使用によって等で、圧力を較正及び監視することができる。同様に、ペデスタルに設置した熱電対及びRTDを使用して、並びにIRセンサ、リン系センサを使用して等で、温度を監視することができる。
【0054】
ステップ612では、処理600において、適当なシーケンス及び持続時間で処理パラメータを適切且つ確実に適用ため、ソフトウェア制御部を設ける。
【0055】
基板に他の形態の熱及び圧力を付加する反応器の他の構成をここで記載する。上述の構成は多くの中の1つにすきないということが留意される。他の構成は、なかでも、
- 高圧(例えば、空気圧又は液圧のいずれか)を受ける加熱膜、
- 高温及び高圧で加熱したN2、Ar、他のそうした気体を含むクラムシェル構成、
- 上述したものと同じ特徴を有する大バッチ式反応器、
- これまでに詳述した、基板を加熱する及び圧力を付加する手法の組合せを使用し得るクラムシェル、(例えば、高温及び高圧の気体が供給され得る、基板を加熱するために下部加熱器を使用しながら高圧が供給され得る、並びに、下部加熱器が高温の気体を加熱して、圧力機能を得て且つ温度を維持する、等)、
- サセプタに配置して誘導加熱され、高圧気体を使用して加圧を得る、基板を含む石英体、並びに、
- 最終温度を制御するために石英体にランプのアレイを含み得ること、を含むことができる。
【0056】
一例として、上述で概要を示した反応器は、ニッケル層を横切ったシリコンウェハへのグラフェンの堆積の使用のように、拡散対を介した材料の堆積を促す。拡散対を使用する堆積方法は、広範囲の堆積材料及び拡散材料に適用することができる。
【0057】
以下の項は、最適な処理結果のための、システムの動作の特定の範囲、並びに所望の材料構造、及び構成等のパラメータ範囲を提供する。
【0058】
上述したように、拡散対を横切って1つの材料を移動させることができるこの方法の使用により、他の従来の堆積方法(例えば、グラフェンはSi又はSiO2上に直接成長させることが困難である)ではこれまでにできなかったことがある、基板上への材料の堆積が可能になる。本明細書に記載するシステムは、Siウェハ等にさらには堆積されるNi層上に堆積させた炭素源に圧力及び温度を付加することによってSi/SiO2上へのグラフェンの成長を促す。
【0059】
反応器は、バッチ式反応器及び/又は単一基板(ウェハ)用反応器として実施することができることが留意される。単一基板構成では、バッチ式反応器よりも微細な、基板ごとの処理制御をなすことができることが留意される。また、2つの加熱器の間にウェハのスタックを使用することで、単一のウェハアーキテクチャでバッチ式処理を行う方法を実現することができる。
【0060】
(結論)
本実施形態は特定の例の実施形態に関して記載されているが、種々の実施形態の広範な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に種々の変形や変更を行い得る。したがって、明細書及び図面は、制限する意図ではなく例示する意図で捉えられる。
【外国語明細書】