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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106454
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240801BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240801BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04492
H01M8/04694
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010708
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 剛
(72)【発明者】
【氏名】石川 瑞生
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE11
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC03
5H127AC11
5H127BA02
5H127BA33
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DB27
5H127DB37
5H127DC56
5H127DC57
(57)【要約】
【課題】効率よく掃気することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムであって、前記燃料電池システムは、燃料電池と、含水量推定手段と、アノード掃気設定手段と、を備え、前記含水量推定手段は、前記燃料電池のカソードの掃気を開始する前に前記カソードの含水量を推定し、前記アノード掃気設定手段は、前記含水量に基づいて、前記燃料電池のアノードの掃気の時間及び開始時期を設定することを特徴とする、燃料電池システム。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、含水量推定手段と、アノード掃気設定手段と、を備え、
前記含水量推定手段は、前記燃料電池のカソードの掃気を開始する前に前記カソードの含水量を推定し、
前記アノード掃気設定手段は、前記含水量に基づいて、前記燃料電池のアノードの掃気の時間及び開始時期を設定することを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項2】
前記含水量推定手段は、前記カソードの掃気中の前記カソードの含水量を推定し、含水量変化率を算出し、
前記アノード掃気設定手段は、前記含水量変化率に基づいて、前記アノードの掃気の時間及び開始時期を変更する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)に関して様々な技術が提案されている。特許文献1では、燃料電池の湿潤状態が高いときに、昇圧速度を高くしてアノード流路の液水を排出しやすくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-109137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、カソードの掃気完了時間によっては、生成水が再び貯まったり、燃料ガスが多く消費されたりするため、掃気の効率が悪いという問題がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、効率よく掃気することができる燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、含水量推定手段と、アノード掃気設定手段と、を備え、
前記含水量推定手段は、前記燃料電池のカソードの掃気を開始する前に前記カソードの含水量を推定し、
前記アノード掃気設定手段は、前記含水量に基づいて、前記燃料電池のアノードの掃気の時間及び開始時期を設定することを特徴とする、燃料電池システムを提供する。
【0007】
本開示においては、前記含水量推定手段は、前記カソードの掃気中の前記カソードの含水量を推定し、含水量変化率を算出し、
前記アノード掃気設定手段は、前記含水量変化率に基づいて、前記アノードの掃気の時間及び開始時期を変更してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料電池システムは、効率よく掃気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
図2】掃気時間と燃料電池のカソードのインピーダンスとの関係の一例を示すグラフである。
図3】掃気時間と燃料電池のカソードのインピーダンスとの関係の別の一例を示すグラフである。
図4】本開示の燃料電池システムが行う制御の一例を示すフローチャートである。
図5】本開示の燃料電池システムが行う制御の別の一例を示すフローチャートである。
図6】本開示の燃料電池システムが行う制御の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない燃料電池システムの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、数値範囲における上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0011】
本開示においては、燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、含水量推定手段と、アノード掃気設定手段と、を備え、
前記含水量推定手段は、前記燃料電池のカソードの掃気を開始する前に前記カソードの含水量を推定し、
前記アノード掃気設定手段は、前記含水量に基づいて、前記燃料電池のアノードの掃気の時間及び開始時期を設定することを特徴とする、燃料電池システムを提供する。
【0012】
燃料電池システムにおける燃料電池内の排水手法について、従来技術として、マニホールドの排水性を向上させるためリニアソレノイドバルブ(LSV)の開度を任意の速度で上昇させ、傾斜に応じて排気排水弁を動作させるとともに、排気処理感覚を変える技術がある。
アノード(An)の排水時間だけを判断材料として、LSV開弁速度を決定すると、アノードの排水後にカソード(Ca)の掃気を行うと、発電生成水がアノードに透過し掃気不十分となり燃費が悪化する。また、カソードの排水が完了していない場合、カソードの排水処理により、生成水がアノードに溜まる。また、カソードの排水が完了する前にアノードの排水が完了する場合、必要以上に早く排水が終わるために、燃料を多く消費して燃費が悪化する。
したがって、従来技術では最適な燃費で制御できないことが懸念される。そのため、本開示においては、カソードの排水状況(インピーダンス値)を基にアノードの掃気(排水)時間と開始時期を制御する。このインピーダンス値は燃料電池内やガスの湿度によって同じ流速でも変化率が変わるため、加湿状態によっても補正する。
本開示においては、カソードの掃気の時間に応じて、アノードの掃気の時間と開始時期を設定することで、効率よく掃気することができる。
本開示においては、カソードの掃気状況に応じて、アノードの掃気の時間及び開始時期を調整することができる。
【0013】
掃気(排水)に用いるガスは、酸化剤ガス、燃料ガス、窒素ガス等であってもよい。
カソードの掃気に用いるガスは、酸化剤ガス、窒素ガス等であってもよい。
アノードの掃気に用いるガスは、燃料ガス、窒素ガス等であってもよい。
【0014】
図1は、本開示の燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
図1に示す燃料電池システムは、FCスタックと、酸化剤ガス系と、燃料ガス系と、制御部(FC-ECU)を備える。
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給流路上にモーターM駆動のエアコンプレッサ(ACP)、圧力センサP、温度センサT、及び酸化剤ガス入口封止弁と、酸化剤オフガス排出流路上に調圧弁を有する。また、バイパス流路上にバイパス弁を設けてもよい。
燃料ガス系は、燃料ガス供給流路上にエジェクタ、燃料ガス入口封止弁(LSVまたはインジェクタ(INJ))、中圧圧力センサ(中圧水素センサ)と、燃料オフガス排出流路上にアノード気液分離器、排気排水弁と、循環流路と、を有する。
図1においては、便宜のため冷却系の記載は省略する。
【0015】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池と、含水量推定手段と、アノード掃気設定手段と、を備える。
本開示の燃料電池システムは、酸化剤ガス系、燃料ガス系、冷却系、及び、制御部を備えていてもよい。
本開示の燃料電池システムは、車両等の移動体に搭載されて用いられてもよい。また、本開示の燃料電池システムは、外部に電力を供給する発電機に搭載されて用いられてもよい。
車両は、燃料電池車両等であってもよい。車両以外の移動体としては、例えば、鉄道、船舶、航空機等が挙げられる。
また、本開示の燃料電池システムは、二次電池の電力でも走行可能な車両等の移動体に搭載されて用いられてもよい。
移動体は、本開示の燃料電池システムを備えていてもよい。移動体は、モーター、インバーター、ハイブリッド制御用システム等の駆動ユニットを有していてもよい。
ハイブリッド制御用システムは、燃料電池の出力と、二次電池の電力を併用して移動体を走行させることができるものであってもよい。
【0016】
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタック(FCスタック、スタック等と称する場合がある)であってもよい。本開示においては、単セル、及び、燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよい。
【0017】
燃料電池の単セルは、通常、膜電極ガス拡散層接合体を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0018】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
触媒層は、例えば、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有する担体等を備えていてもよい。
触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
電解質としては、フッ素系樹脂等であってもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ナフィオン溶液等を用いてもよい。
上記触媒金属は担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在していてもよい。
触媒金属を担持するための担体は、例えば、一般に市販されているカーボンなどの炭素材料等が挙げられる。
【0019】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0020】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0021】
単セルは、必要に応じて膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス及び冷却媒体等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔等のマニホールドを構成する孔を有していてもよい。
冷却媒体としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液等の冷却水を用いることができる。また、冷却媒体としては、冷却用の空気を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷却媒体供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷却媒体排出孔等が挙げられる。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷却媒体流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0022】
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷却媒体入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷却媒体出口マニホールド等が挙げられる。
【0023】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、純水素であってもよい。酸化剤ガスは、酸素を含有するガスであり、酸素、空気、及び、乾燥空気等であってもよい。
【0024】
酸化剤ガス系は、燃料電池に酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給部(エアコンプレッサ)、酸化剤ガス供給流路、酸化剤オフガス排出流路、バイパス流路等を備えていてもよい。
【0025】
エアコンプレッサは、ベアリング、ロータ、及び、ハウジングを備える。エアコンプレッサは、制御部と電気的に接続される。エアコンプレッサは、制御部からの制御信号に従ってそのロータの回転数が制御される。エアコンプレッサは、酸化剤ガス供給流路に配置されてもよい。
【0026】
酸化剤ガス供給流路は、燃料電池システムの外部と燃料電池のカソード入口とを接続する。酸化剤ガス供給流路は、エアコンプレッサから燃料電池のカソードへの酸化剤ガスの供給を可能にする。カソード入口は、酸化剤ガス供給孔、カソード入口マニホールド等であってもよい。酸化剤ガス供給流路には、エアコンプレッサの下流に酸化剤ガス入口封止弁が配置されてもよい。
酸化剤ガス入口封止弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤ガス入口封止弁が開くことにより、酸化剤ガスを燃料電池のカソードへ供給する。また、酸化剤ガス入口封止弁の開度を調整することにより、カソードに供給される酸化剤ガスの流量を調整してもよい。
酸化剤ガス供給流路には、エアコンプレッサの下流に圧力センサ、温度センサ、流量センサ等が配置されてもよい。圧力センサは、カソードの圧力値を測定する。温度センサは、カソードの温度を測定する。流量センサは、酸化剤ガスの流量を測定する。
圧力センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、圧力センサによって取得されたカソードの圧力値を検知する。
温度センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、温度センサによって取得されたカソードの温度を検知する。
流量センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、流量センサによって取得された酸化剤ガスの流量を検知する。
【0027】
酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池のカソード出口と燃料電池システムの外部とを接続する。酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池のカソードから排出される酸化剤ガスである酸化剤オフガスの燃料電池システムの外部への排出を可能にする。カソード出口は、酸化剤ガス排出孔、カソード出口マニホールド等であってもよい。酸化剤オフガス排出流路には、調圧弁が配置されてもよい。
調圧弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって調圧弁が開くことにより、反応済みの酸化剤ガスである酸化剤オフガスを酸化剤オフガス排出流路から燃料電池システムの外部へ排出する。また、調圧弁の開度を調整することにより、カソードに供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整してもよい。なお、酸化剤オフガスは、酸化剤ガスの成分と同じであってもよく、酸素、空気、及び、乾燥空気等であってもよく、水蒸気等が含まれていてもよい。
【0028】
バイパス流路は、酸化剤ガス供給流路と酸化剤オフガス排出流路を接続し、燃料電池を迂回する。バイパス流路は、酸化剤ガス供給流路のエアコンプレッサの下流の分岐部で酸化剤ガス供給流路から分岐し、燃料電池を迂回し、酸化剤オフガス排出流路の調圧弁の下流の合流部で酸化剤オフガス排出流路と合流する。
バイパス流路には、バイパス弁が配置されてもよい。バイパス弁は、開度を調節可能なバルブ等であってもよく、酸化剤ガス用三方弁であってもよい。酸化剤ガス用三方弁の場合は、バイパス流路の最上流である分岐部に配置してもよく、酸化剤ガス入口封止弁を兼ねる。
バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によってバイパス弁が開くことにより、燃料電池を迂回して酸化剤ガスの少なくとも一部を酸化剤オフガス排出流路に供給することができる。バイパス弁が酸化剤ガス用三方弁の場合は、燃料電池への酸化剤ガスの供給が不要な場合等に、酸化剤ガスの流れが酸化剤ガス供給流路からバイパス流路になるように制御部によってバイパス弁の酸化剤ガス供給流路下流側の弁を閉じ、バイパス流路側の弁を開くことにより、酸化剤ガスの全量を酸化剤オフガス排出流路に供給することができる。
【0029】
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給流路のエアコンプレッサの下流に冷却器(インタークーラ)を備えていてもよい。冷却器は、酸化剤ガス供給流路のエアコンプレッサの下流且つバイパス流路との分岐点の上流に配置されていてもよい。
冷却器は、冷却系の冷却媒体を冷却器内外で循環させることにより冷却機能を発現するものであってもよい。
【0030】
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給流路のエアコンプレッサの下流に加湿器を備えていてもよい。加湿器は、酸化剤ガス供給流路のエアコンプレッサの下流且つバイパス流路との分岐点の下流に配置されていてもよい。
加湿器は、酸化剤ガス供給流路と酸化剤オフガス排出流路に跨って配置されていてもよい。
【0031】
燃料ガス系は、燃料電池に燃料ガスを供給する。
燃料ガス系は、燃料ガス供給部、燃料ガス供給流路、燃料オフガス排出流路、循環流路、エジェクタ、中圧圧力センサ等を備えていてもよい。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、及び、圧縮水素タンク等が挙げられる。
燃料ガス供給流路は、燃料ガス供給部と燃料電池のアノード入口とを接続する。燃料ガス供給流路は、燃料電池のアノードへの水素を含む燃料ガスの供給を可能にする。アノード入口は、燃料ガス供給孔、アノード入口マニホールド等であってもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料電池のアノード出口と燃料電池システムの外部とを接続する。アノード出口は、燃料ガス排出孔、アノード出口マニホールド等であってもよい。
燃料オフガスは、アノードにおいて未反応のまま通過した燃料ガス及び、カソードで生成した生成水がアノードに到達した水分等を含んでいてもよい。燃料オフガスは、触媒層及び電解質膜等で生成した腐食物質及び、掃気時にアノードに供給されてもよい酸化剤ガス等を含む場合がある。
循環流路は、燃料オフガス排出流路の分岐部で燃料オフガス排出流路から分岐し、燃料ガス供給流路の合流部で燃料ガス供給流路と合流し、燃料オフガスを循環ガスとして燃料ガス系内で循環させる。
エジェクタは、燃料ガス供給流路の合流部に配置してもよい。
エジェクタの上流には、燃料ガス入口封止弁を配置してもよい。
燃料ガス入口封止弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって燃料ガス入口封止弁が開くことにより、燃料ガスを燃料電池のアノードへ供給する。また、燃料ガス入口封止弁の開度を調整することにより、アノードに供給される燃料ガスの流量を調整してもよい。燃料ガス入口封止弁はリニアソレノイドバルブ、及び、インジェクタ等であってもよい。
中圧圧力センサは、燃料ガス供給流路の燃料ガス入口封止弁の上流に配置してもよい。
中圧圧力センサは、アノードの圧力値を測定する。
中圧圧力センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、中圧圧力センサによって取得されたアノードの圧力値を検知する。
燃料オフガス排出流路の分岐部には、アノード気液分離器、排気排水弁が配置されていてもよい。排気排水弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によってその開閉が制御される。
【0032】
燃料電池システムは、冷却系を備えていてもよい。
冷却系は、燃料電池の温度を調節する。
冷却系は、冷却媒体流路を有していてもよい。
冷却媒体流路は、燃料電池内外を冷却媒体が循環することを可能にする。冷却媒体流路は、燃料電池に設けられる冷却媒体供給孔及び冷却媒体排出孔に連通し、冷却媒体を燃料電池内外で循環させることを可能にする。
冷却媒体流路には、冷却媒体供給部が設けられていてもよい。冷却媒体供給部は、制御部と電気的に接続される。冷却媒体供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。制御部は、冷却媒体供給部から燃料電池に供給される冷却媒体の流量を制御する。これにより燃料電池の温度が制御される。冷却媒体供給部は、例えば、冷却水ポンプ等が挙げられる。
冷却媒体流路には、冷却媒体の熱を放熱するラジエータが設けられていてもよい。
冷却媒体流路には、冷却媒体を蓄えるリザーブタンクが設けられていてもよい。
【0033】
燃料電池システムは、電流センサを備えていてもよい。
電流センサは、燃料電池の電流を測定する。
電流センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、電流センサによって取得された燃料電池の電流を検知する。
【0034】
燃料電池システムは、バッテリを備えていてもよい。
バッテリ(二次電池)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、エアコンプレッサ等に電力を供給する。二次電池は、例えば、家庭用電源等の車両の外部の電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。二次電池の充放電は、制御部によって制御されてもよい。
【0035】
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、パワーコントロールユニット(PCU)、及び、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)等の制御装置であってもよい。
制御部は、車両に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。制御部はイグニッションスイッチが切られていても外部電源により動作可能であってもよい。
【0036】
含水量推定手段(水たまり量推定ロジック)は、前記燃料電池のカソードの掃気を開始する前にカソードの含水量を推定する。含水量推定手段は、制御部に含まれていてもよい。
含水量推定手段は、インピーダンス計測手段を備えてもよい。含水量推定手段は、インピーダンス計測手段により計測したカソードのインピーダンス情報を参照し、燃料電池のカソードの含水量を推定してもよい。含水量推定手段は、カソードのインピーダンスと、カソードの含水量との関係を示すデータ群を予め記憶し、当該データ群を参照し、燃料電池のカソードの含水量を推定してもよい。
【0037】
含水量推定手段は、前記カソードの掃気中の前記カソードの含水量を推定し、含水量変化率を算出してもよい。
【0038】
アノード掃気設定手段(排水処理指令ロジック)は、前記含水量に基づいて、燃料電池のアノードの掃気の時間及び開始時期を設定する。アノード掃気設定手段は、制御部に含まれていてもよい。
アノード掃気設定手段は、排水処理及び排気排水弁開弁時間カウント手段を備えてもよい。アノード掃気設定手段は、排水処理及び排気排水弁開弁時間カウント手段により排水処理及び排気排水弁開弁の頻度を可変してもよい。
アノード掃気設定手段は、前記含水量変化率に基づいて、アノードの掃気の時間及び開始時期を変更してもよい。
【0039】
(第1実施形態)
図2は、掃気時間と燃料電池のカソードのインピーダンスとの関係の一例を示すグラフである。
本開示の第1実施形態の燃料電池システムは、含水量推定手段がインピーダンス計測手段を備え、燃料電池のアノードの排水処理のために燃費及び排水性に最適な掃気の時間に制御するためにカソードのインピーダンス情報を参照し、燃料電池のカソードの含水量を推定する。アノード掃気設定手段は、推定した含水量を基に燃費に最適なアノードの排水時間(燃料ガス系の燃料ガス入口封止弁の開弁速度に依存)や排水開始時間を算出し、制御する。
【0040】
燃料電池のアノードの掃気の時間の調整(An流量加減)は、図2に示すようにカソードの掃気が開始される時(掃気開始前)のカソードのインピーダンスを計測し、カソードの掃気開始時の含水量推定値から、カソードの掃気完了時間を逆算し、圧力レートを算出して設定してもよい。燃費は時間経過に伴い凹の特性になるのでアノードの掃気の時間は、カソードの掃気開始時から調整してもよい。
【0041】
燃料電池のアノードの掃気の開始時期の調整(An大流量掃気)は、図2に示すように掃気が開始される時(掃気開始前)のカソードのインピーダンスを計測し、カソードの掃気開始時の含水量推定値から、アノードの燃費最適掃気開始時間を演算して設定してもよい。流量を上げると1回あたりの昇圧時間が短くなるが、昇圧回数が増えるため燃費が微悪化する。圧力偏差を広げる方法もあるが上限圧制約が有り、クロスリークも増えて燃費が悪化する。したがって、アノードの掃気の開始時期は、カソードの掃気時間より十分に短い場合、生成水を除去するため、カソードの掃気の終了タイミングとアノードの掃気の終了タイミングを合わせるように調整してもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図3は、掃気時間と燃料電池のカソードのインピーダンスとの関係の別の一例を示すグラフである。
本開示の第2実施形態の燃料電池システムは、燃料電池加湿状態または送風エアの湿度によりインピーダンスの上昇速度が変化することが顕著な場合等に、第1実施形態に加え、含水量推定手段は、図3に示すようにカソードの掃気が開始される時及び掃気中のインピーダンスを測定し、インピーダンス変化率からカソードの含水量の変化率を推定し、アノード掃気設定手段は、カソードの含水量の変化率に基づいて、アノードの掃気時間、及び、開始時期を補正してもよい。
【0043】
図4は、本開示の燃料電池システムが行う制御の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、燃料電池スタック(スタック)の掃気モードを含水量推定手段が検出したら、制御部が掃気を開始する前に含水量推定手段がカソードのインピーダンスを計測する。計測したインピーダンスに基づいて、アノード掃気設定手段は、アノードの掃気時間T(所定時間T)を算出する。
そして、カソードとアノードの掃気を制御部が実行し、所定時間Tが経過したら制御部がアノードの掃気を終了し、所定のインピーダンスに到達したら制御部がカソードの掃気を終了し、シーケンスを完了する。
図4においては、カソードとアノードの掃気を同時期に実行し、カソードの掃気終了時間を予測して、アノードの掃気がカソードの掃気と同時期に終了するようにアノードの掃気時間Tを設定し、アノードの掃気流量を制御しながら掃気を行う。これにより、効率よく掃気することができる。
【0044】
図5は、本開示の燃料電池システムが行う制御の別の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、燃料電池スタックの掃気モードを含水量推定手段が検出したら、制御部が掃気を開始する前に含水量推定手段がカソードのインピーダンスを計測する。計測したインピーダンスに基づいて、アノード掃気設定手段は、アノードの掃気時期T1(所定時間T1)及び掃気予定の所定時間T2を算出する。
そして、制御部がカソードの掃気を実行し、カソードの掃気の開始後、所定時間T1が経過したら制御部がアノードの掃気を実行し、所定時間T2が経過したら制御部がアノードの掃気を終了し、所定のインピーダンスに到達したら制御部がカソードの掃気を終了し、シーケンスを完了する。
図5においては、カソードの掃気終了時間を予測して、アノードの掃気がカソードの掃気と同時期に終了するように、アノードの掃気時期T1(所定時間T1)及びアノードの掃気の所定時間T2を設定する。カソードの掃気の開始後、所定時間T1が経過したらアノードの掃気を所定時間T2で、大流量で実行する。これにより、効率よく掃気することができる。
【0045】
図6は、本開示の燃料電池システムが行う制御の別の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、燃料電池スタックの掃気モードを含水量推定手段が検出したら、制御部が掃気を開始する前に含水量推定手段がカソードのインピーダンスを計測する。計測したインピーダンスに基づいて、アノード掃気設定手段は、アノードの掃気時期T1(所定時間T1)及び掃気予定の所定時間T2を算出する。
そして、制御部がカソードの掃気を実行し、カソードの掃気の開始後、含水量推定手段が再度カソードのインピーダンスを計測する。計測したインピーダンスに基づいて、アノード掃気設定手段は、アノードの掃気時期T1(所定時間T1)及び掃気予定の所定時間T2を補正して更新する。
更新した所定時間T1が経過したら制御部がアノードの掃気を実行し、所定時間T2が経過したら制御部がアノードの掃気を終了し、所定のインピーダンスに到達したら制御部がカソードの掃気を終了し、シーケンスを完了する。
図6においては、カソードの掃気の開始後、再度カソードのインピーダンスを計測し、計測したインピーダンスに基づいて、アノードの掃気時期T1(所定時間T1)及び掃気予定の所定時間T2を補正して更新し、更新した所定時間T1が経過したらアノードの掃気を所定時間T2で、大流量で実行する。カソードの掃気中にインピーダンスを計測し、掃気時期T1(所定時間T1)及び掃気予定の所定時間T2を補正することで、燃費良く掃気することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6