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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106456
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/50 20160101AFI20240801BHJP
   B60J 10/27 20160101ALI20240801BHJP
   B60J 10/76 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
B60J10/50
B60J10/27
B60J10/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010711
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 康広
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA06
3D201CA19
3D201DA31
3D201DA34
3D201EA03A
(57)【要約】
【課題】 簡単な構造で車内騒音を低減するガラスランを提供する。
【課題を解決するための手段】
底壁20と、車外側側壁30と、車内側側壁40を基本骨格とし、基本骨格がドアフレーム3に形成されたドアフレーム溝部5に取付けられ、ドアガラス4の昇降をガイドするガラスラン10であって、車外側側壁40から底壁20側に延設され、ドアガラス4の車外側に摺接する車外側シールリップ31、車内側側壁40から底壁20側に延設され、ドアガラス4の車内側に摺接する車内側シールリップ41の少なくとも一方を備え、車外側シールリップ31、又は、車内側シールリップ40のドアガラス4に摺接するドアガラス側先端部42は、ドアガラス4の先端部からドアガラス4の厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車外側側壁の車内側面から前記底壁側に延設され、前記ドアガラスの車外側に摺接する車外側シールリップ、
前記車内側側壁の車外側面から前記底壁側に延設され、前記ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップの少なくとも一方を備え、
前記車外側シールリップ、又は、前記車内側シールリップの前記ドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、前記ドアガラスの先端部から、前記ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接することを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、
前記車内側側壁の車外側面から前記底壁側に延設され、前記ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップを備え、
前記車内側シールリップは、少なくとも第1車内側シールリップと、前記第1車内側シールリップより前記底壁側に形成された第2車内側シールリップを有し、
前記第2車内側シールリップの前記ドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、前記ドアガラスの先端部から、前記ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接し、
前記ドアガラスに対する押圧力は、前記第2車内側シールリップの方が前記第1車内側シールリップより大きいことを特徴とするガラスラン。
【請求項3】
前記第2車内側シールリップと前記底壁との間には、前記車内側側壁の車外側面から前記第2車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出するサブリップが形成され、
前記ドアガラスが前記第2車内側シールリップに摺接する時には、前記サブリップは、前記第2車内側シールリップの車内側面に当接する請求項2に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両のドアに形成されたドアフレームに取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、ドア本体の上部にドアフレームを設け、ドアフレームの内周縁に形成されたドアフレーム溝部にチャンネル状をなすガラスランを嵌入係止し、ガラスランの車内外のガラスシール部によりドアガラスの昇降を案内するとともに、車室内外をシールするようになっている。
【0003】
上記のガラスランは、底壁と、その車外側に位置する車外側側壁と、車内側に位置する車内側側壁を基本骨格(本体部)に構成されている。そして、一般的に、車外側と車内側の側壁部の先端又はその近傍からそれぞれ本体部の内側に向けて延びる車外側シールリップと車内側シールリップを備えている。そして、ガラスランは、本体部がドアフレームの内周に沿って設けられたドアフレーム溝部に取付けられ、車外側シールリップと車内側シールリップによって、昇降するドアガラスの内外面の周縁部が挟まれるようにしてシールされる。又、ガラスランは、ドアガラスの周縁部を支持して、ドアガラスの昇降が円滑に行われると共に、ドアガラスの昇降時などにおいて、ドアガラスのがたつきを抑制する役割をも担っている。
【0004】
自動車等車両の静粛性向上は、乗員の快適性が高められるので、商品力向上のアピール度が高い。又、今後急速に普及が進むことが予想される電気自動車においては、従来搭載されているエンジンが無くなるので、そのエンジン音が無くなることによって残存する主な騒音は、ロードノイズと風切音が顕在化する。
【0005】
風切音は、走行時の風が車両に当たって車室外で発生する音が車体を透過して車室内に届く音である。ガラスランにおいても、ドアガラスが振動して発生する、特に1kHz以上の高周波数域において騒音の低減が可能であり、この低減効果の増大化検討が行われている。ガラスランによる騒音低減技術として、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1は、ガラスラン透過ルート(特許文献1の図8の矢印B)に関するものである。
【0006】
図7に示すように、ガラスラン100は、底壁200、車外側側壁300と車内側側壁400を基本骨格としてチャンネル状(断面コ字形状)に形成されている。車内側シールリップは、第1車内側シールリップ470と、第1車内側シールリップ470より底壁200側に形成された第2車内側シールリップ480を有し、第1車内側シールリップ470と第2車内側シールリップ480は、共に底壁200側に向けて形成され、ドアガラス600との摺接時に、互いに当接しない。又、第1車内側シールリップ470と第2車内側シールリップ480との間には、第1車内側シールリップ470の車内側面に向かって斜めに突出するサブリップ500が形成され、サブリップ500は、ドアガラス600が第1車内側シールリップ470に摺接する時には、第1車内側シールリップ470の車内側面に当接している。
なお、このガラスラン100において、ドアガラス600の車内側面に対する押圧力は、図7の矢印の大小関係で示すように、第1車内側シールリップ470の方が第2車内側シールリップ480より高く設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-24388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両の電動化の普及等に伴い、更なる静粛性向上が求められており、ドアに取付けられたドアガラスやその周辺においてもその要求は高い。そして、ドアガラスの板厚増加やアコースティックガラスの設定等の対策が行われているが、重量増とコストアップが障害になっている。
【0009】
本発明は、ドアガラスの振動エネルギーを効率的にガラスランに流して散逸させて制振効果を高め、騒音を更に低減して、更なる静粛性向上に応えるべく、ガラスランのシールリップとドアガラスとの当接位置と、当接位置におけるドアガラスに対する押圧力に着目し、従来の構造を改良することにより、簡単な構造で車内騒音を低減するガラスランを提供することを目的とする。なお、一般的に使用されているシールリップとドアガラスとの当接位置は、ドアガラスの先端部から10mm程度である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車外側に摺接する車外側シールリップ、車内側側壁の車外側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップの少なくとも一方を備え、車外側シールリップ、又は、車内側シールリップのドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、ドアガラスの先端部から、ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接することを特徴とするガラスランである。
【0011】
請求項1の本発明では、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車外側に摺接する車外側シールリップ、車内側側壁の車外側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップの少なくとも一方を備え、車外側シールリップ、又は、車内側シールリップのドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、ドアガラスの先端部から、ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接するので、走行時における車体の振動によってドアガラスが振動して発生する振動エネルギーを、ドアガラスの先端部側に当接するガラスランの車外側シールリップ、又は、車内側シールリップが効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【0012】
なお、ドアガラスの厚さの2分の1未満の場合は、ドアガラスの先端部の形状との関係で、ドアガラスに対する当接の確実性が担保されず、振動の振動の減衰効果が担保されないので好ましくない。又、8mmを越えると従来に近づき、効果の程度が減少する。
【0013】
請求項2の発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車内側側壁の車外側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップを備え、車内側シールリップは、少なくとも第1車内側シールリップと、第1車内側シールリップより底壁側に形成された第2車内側シールリップを有し、第2車内側シールリップのドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、ドアガラスの先端部から、ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接し、ドアガラスに対する押圧力は、第2車内側シールリップの方が第1車内側シールリップより大きいことを特徴とするガラスランである。
【0014】
請求項2の発明では、車内側側壁の車外側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップを備え、車内側シールリップは、少なくとも第1車内側シールリップと、第1車内側シールリップより底壁側に形成された第2車内側シールリップを有し、第2車内側シールリップのドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、ドアガラスの先端部から、ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接し、ドアガラスに対する押圧力は、第2車内側シールリップの方が第1車内側シールリップより大きいので、第2車内側シールリップがドアガラスの先端部側を強く押圧することにより、走行時における車体の振動によってドアガラスが振動して発生する振動エネルギーを効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【0015】
請求項3の本発明は、請求項2の発明において、第2車内側シールリップと底壁との間には、車内側側壁の車外側面から第2車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出するサブリップが形成され、ドアガラスが第2車内側シールリップに摺接する時には、サブリップは、第2車内側シールリップの車内側面に当接するガラスランである。
【0016】
請求項3の本発明では、第2車内側シールリップと底壁との間には、車内側側壁の車外側面から第2車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出するサブリップが形成され、ドアガラスが第2車内側シールリップに摺接する時には、サブリップは、第2車内側シールリップの車内側面に当接するので、ドアガラスの先端部側をさらに強く押圧することができる。その結果、走行時における車体の振動によってドアガラスが振動して発生する振動エネルギーを効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車外側側壁の車内側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車外側に摺接する車外側シールリップ、車内側側壁の車外側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップの少なくとも一方を備え、車外側シールリップ、又は、車内側シールリップのドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、ドアガラスの先端部から、ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接するので、走行時における車体の振動によってドアガラスが振動して発生する振動エネルギーを、ドアガラスの先端部側に当接するガラスランの車外側シールリップ、又は、車内側シールリップが効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【0018】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降をガイドするガラスランであって、車内側側壁の車外側面から底壁側に延設され、ドアガラスの車内側に摺接する車内側シールリップを備え、車内側シールリップは、少なくとも第1車内側シールリップと、第1車内側シールリップより底壁側に形成された第2車内側シールリップを有し、第2車内側シールリップのドアガラスに摺接するドアガラス側先端部は、ドアガラスの先端部から、ドアガラスの厚さの2分の1以上、8mm以下の位置に当接し、ドアガラスに対する押圧力は、第2車内側シールリップの方が第1車内側シールリップより大きいので、ドアガラスの先端部側を強く保持することにより、走行時における車体の振動によってドアガラスが振動して発生する振動エネルギーを効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】自動車用ドアの正面図である。
図2図1のドアフレームに用いるガラスランを示す正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態のガラスランであり、図1のA-A線に対応する断面図である。
図4】騒音測定を説明する図であり、図4(a)は、ドアガラスの断面方向から見た図であり、図4(b)は、ドアガラスを正面から見た図である。
図5】本発明の第1の実施形態の効果の程度を示すグラフである。
図6】本発明の第2の実施形態のガラスランであり、図1のA-A線に対応する断面の車内側を示す図である。
図7】従来のガラスランの取付構造を示す断面図であり、図1のA-A線に対応する断面図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態について図1から図5に基づいて説明する。図1は自動車の左側のフロントドア1を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア1を構成するドア本体2の上部には、ドアフレーム3が装着されている。このドアフレーム3とドア本体2の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体2の内部にはガラスラン10が取付られ、ドアガラス4の昇降動作を案内するようになっている。なお、本発明は、左側のフロントドア1のみならず、右側のフロントドア、左右のリヤドアにも適用可能である。又、ドアガラスの昇降するスライドドアにも適用可能である。
【0021】
図2はガラスラン10のみを簡略化して車外側からみた正面図である。このガラスラン10はドアフレーム3の横枠部に対応する第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13とにより構成されている。第1の押出成形部11の前端部は第2の押出成形部12の上端部に対し第1の型成形部14により接続されている。又、第1の押出成形部11の後端部は第3の押出成形部13の上端部に対し第2の型成形部15により接続されている。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施形態のガラスラン10であり、ガラスラン10をドアフレーム3のドアフレーム溝部5に取付け、ドアガラス4が介在した時の断面図である。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30と車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。底壁20と車外側側壁30、車内側側壁40の連結部は、車外側及び車内側の溝部21、21により自由状態で展開可能に連結されている。
【0023】
底壁20は、略板状に形成され、底壁20の内面(ドアガラス4側)には、複数本の底壁凹部22が長手方向に連続して平行に形成されている。
【0024】
車外側側壁30の車外側面には、底壁20との連結部近傍と車外側側壁30の先端部方向に、ドアフレーム溝部5に係止される第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34が形成されている。第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34は、ガラスラン10を車両に装着した時に、車外側に膨らむドアフレーム溝部5の内壁に当接する。
【0025】
車外側側壁30の車内側面の先端部分には、底壁20側に延設され、ドアガラス4の車外側面に摺接する車外側シールリップ31が形成されている。
【0026】
車外側シールリップ31の付け根部分には、車外側に向けて車外側カバーリップ35が形成されている。車外側カバーリップ35は、ガラスラン10を車両に装着した時に、屈曲するドアフレーム溝部5の車外側先端部分を覆い、車外側側壁30をドアフレーム溝部5に固定すると共に、ドアフレーム溝部5とのシール性を向上させ、雨水や埃、騒音の侵入を防止する。
【0027】
車内側側壁40の車外側面の先端部分には、底壁20側に延設され、ドアガラス4の車内側面に摺接する車内側シールリップ41が形成されている。
【0028】
車内側側壁40の車内側面には、底壁20との連結部近傍と車内側側壁40の先端部方向に第1車内側保持リップ43と第2車内側保持リップ44が形成されている。第1車内側保持リップ43と第2車内側保持リップ44は、ガラスラン10を車両に装着した時に、車内側に膨らむドアフレーム溝部5の内壁に当接する。
【0029】
車内側側壁40の先端部分には、車内側に向けて車内側カバーリップ46が形成されている。車内側カバーリップ46は、ガラスラン10を車両に装着した時に、屈曲するドアフレーム溝部5の車内側の先端部分を覆い、車内側側壁40をドアフレーム溝部5に固定すると共に、ドアフレーム溝部5とのシール性を向上させ、騒音の侵入を防止する。
【0030】
本第1の実施形態のガラスラン10におけるドアガラス4に対する車外側シールリップ31と車内側シールリップ41の当接位置は、車内側シールリップ41の方が、ドアガラス4の先端部側になっている。そして、車内側シールリップ41は、ドアガラス4にドアガラス側先端部42で当接している。
【0031】
本実施形態において、ガラスラン10は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用し、押出成形によって作製した。
【0032】
なお、本発明の実施形態において、ガラスラン10を構成する材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【0033】
図4は、騒音効果を説明する図である。騒音測定は、ハンマリング試験により行った。ハンマリング試験は、対象物を計測用のインパルスハンマ(インパクトハンマともいう)で打撃して加振し、加振の結果生じる振動を加速度センサで検出し、FFTアナライザで計測する試験である。
【0034】
図4(a)は、フレーム治具72にガラスラン10を取付け、ガラスラン10にドアガラス4を挿入した測定部材70を、ドアガラス4の断面方向から見た図である。使用したドアガラス4の厚さは、4mmであり、先端部分の半径は、ドアガラス4の厚さの2分の1の2mmである。
【0035】
測定は、図4(b)に示すように、 図4(a)の測定部材70のドアガラス4を天井から吊るすと共に、フレーム治具72を図示しない壁に立てかけて固定し、幅Wが600mm、高さHが400mmのドアガラス4において、5×5の計25箇所に加速度センサ71を貼り付けた。ドアガラス4の中心部Xをインパルスハンマで打撃して加振し、加振の結果生じる振動を加速度センサ71で検出した。なお、加振する中心部Xは測定できないため、中心部分のみ10mm上方にずらして加速度センサ71を貼り付けた。又、効果は、25箇所の測定点の振動平均を取ることにより確認した。
【0036】
図5は、本発明の実施形態の効果の程度を示すグラフであり、具体的には、周波数4kHzにおける車内側シールリップ41のドアガラス側先端部42が当接するドアガラス4の先端からの距離h(図3)に関する振動の減衰効果の程度を示すグラフである。図5では、右側に行くほど効果が高いことを示す。又、図5における左端は、ドアガラス4の先端部から10mm(従来)の場合である。
【0037】
図5から明らかなように、ドアガラス4の先端からの距離hが短くなるにしたがい、効果が大きくなっている。又、ドアガラス4の厚さに2分の1である2mmにおいて最大の効果を奏している。なお、図5は、周波数4kHzにおける結果を示すものであるが、2.5kHzから5kHzの周波数領域においても図5と同様な傾向、すなわち、ドアガラス4の先端からの距離hが短くなるにしたがい、効果が大きくなることが観測された。
【0038】
なお、振動の減衰効果は、ドアガラス4の先端部からの距離hに対して直線的に改善するものではなく、ドアガラス4の先端部からの距離hが長くなると共に減衰効果の程度は徐々に低下するが、8mmまでは振動の顕著な減衰効果が確認された。
【0039】
なお、本実施形態では、4mmのドアガラス4を使用したが、最も薄いドアガラスの厚さは3.1mmであり、先端部分の最小半径は、ドアガラスの厚さの厚さの2分の1である1.6mmであるため、3.1mmの厚さのドアガラスを使用する場合は、ドアガラス側先端部42は、ドアガラス4の先端部から1.6mmの位置からとすることにより、上記の効果を奏する。
【0040】
本発明は、車内側シールリップ41のドアガラス4に摺接するドアガラス側先端部42は、ドアガラス4の先端部から、ドアガラス4の厚さの2分の1以上、8mm以下で従来に比較して顕著な効果を奏するが、ドアガラス4の厚さの2分の1以上、6mm以下がより効果が高く、ドアガラス4の厚さの2分の1以上、4mm以下がさらに効果が高い。
【0041】
図6は、本発明の第2の実施形態のガラスラン10であり、図1のA-A線に対応する断面の車内側を示す図である。本第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様に、ドアガラス4に対する車外側シールリップ31と車内側シールリップ41の当接位置は、車内側シールリップ41の方が、ドアガラス4の先端部側になっており、又、車内側シールリップ41に特徴を有するので、車内側のみを示す。
【0042】
車内側側壁40の車内側には、底壁20との連結部近傍と車内側側壁40の先端部方向に第1車内側保持リップ43と当接リブ45が形成されている。第1車内側保持リップ43と当接リブ45は、湾曲部を有するドアフレーム溝部5の湾曲部分に当接する。又、車内側側壁40の先端部分には、車内側カバーリップ46が形成されている。
【0043】
車内側シールリップ41は、車内側側壁40の車外側面から延設される第1車内側シールリップ47と、第1車内側シールリップ47より底壁20側に形成された第2車内側シールリップ48を有している。第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48は、共に底壁20側に延設されている。
【0044】
第2車内側シールリップ48は、ドアガラス4の車内側面への押圧力を高くするために、第1車内側シールリップ47より厚く形成されている。
【0045】
第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48の先端部分には、車内側側壁40側に突出する肉厚の膨出部61、62が形成されており、ドアガラス4に摺接する時に、第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48の先端部分が折り曲がり、ドアガラス4の車内側面への押圧力が低下することを防止している。
【0046】
又、第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48の車内側側壁40の付根部には、車内側側壁40からドアガラス4側にせり出す基部63、64が形成されている。基部63、64を形成することにより、第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48そのものの長さをさらに短くすることができ、透過音の共振点を高周波数側にシフトさせることができるので、透過音による第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48の振動を防止することができ、車室内側で振動に伴う放射音の発生を防止することができる。又、同時に第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48の付根部の剛性を高めることができる。
【0047】
基部63、64の上部(車外側)の底壁20側には、凹部65、66が形成されている。第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48がドアガラス4に摺接する時に、凹部65、66を起点として第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48が底壁20側に倒れやすくなり、ドアガラス4への追従性が向上し、透過音の遮蔽効果の増大を維持しつつ、第1車内側シールリップ47と第2車内側シールリップ48とドアガラス4とのスムーズな摺接を可能にすることができる。なお、凹部65、66は形成しなくてもよい。
【0048】
又、第2車内側シールリップ48と底壁20との間には、第2車内側シールリップ48の車内側面方向であり、第2車内側シールリップ48の付根部方向に、斜めに突出してサブリップ50が形成されている。サブリップ50は、ドアガラス4が第2車内側シールリップ48に摺接する時に第2車内側シールリップ48の車内側面に当接する。
【0049】
第2車内側シールリップ48のドアガラス側先端部42がドアガラス4と摺接する時に、サブリップ50が第2車内側シールリップ48の裏面を押すことにより、第2車内側シールリップ48のドアガラス4に対する圧接力が増加するので、走行時における車体の振動によってドアガラス4が振動して発生する振動エネルギーを効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【0050】
ドアガラス4に対する押圧力は、図6において矢印の大小関係で示すように、第2車内側シールリップ48の方が第1車内側シールリップ47より大きい。本第2の実施形態では、ドアガラス4に対する反力は、第2車内側シールリップ48の反力が、第1車内側シールリップ47の反力より高いほど大きな効果が得られる。
【0051】
本第2の実施形態においても、上記の第1の実施形態の場合と同様に、2.5kHzから5kHzの周波数領域において、第2車内側シールリップ48のドアガラス4と当接するドアガラス側先端部42が、ドアガラス4の先端部に近づくに従い、振動の減衰効果が大きくなることが観測された。
【0052】
したがって、ドアガラス4の先端部側を強く保持することにより、走行時における車体の振動によってドアガラス4が振動して発生する振動エネルギーをガラスラン10が効率よく吸収し、振動を減衰させることができ、騒音の発生を低減することができる。
【0053】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、上記の第1の実施形態、第2の実施形態では、車内側シールリップとドアガラスとの関係について説明したが、車外側シールリップについても適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 フロントドア
2 ドア本体
3 ドアフレーム
4 ドアガラス
5 ドアフレーム溝部
10 ガラスラン
20 底壁
30 車外側側壁
38 車外側シールリップ
40 車内側側壁
41 車内側シールリップ
42 ドアガラス側先端部
47 第1車内側シールリップ
48 第2車内側シールリップ
50 サブリップ
70 測定部材
71 加速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7