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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106463
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/00 20060101AFI20240801BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B41J29/00 T
G03G21/16 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010724
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青野 宗豊
(72)【発明者】
【氏名】大谷 基文
【テーマコード(参考)】
2C061
2H171
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AS02
2C061BB10
2C061BB35
2C061CQ04
2C061CQ07
2C061CQ23
2H171FA01
2H171FA03
2H171GA06
2H171HA31
2H171KA02
2H171KA21
2H171KA27
(57)【要約】
【課題】指掛け用の凹部を使用せず、ユーザーが比較的簡単に操作部を回動操作できる電子機器を提供する。
【解決手段】印刷装置は、操作部15、角度調整機構60、係止機構70及び立ち上げ機構80を備える。係止機構70は、操作部15が収納部42に収納された際に操作部15と係止する係止状態になり、係止状態にある操作部15に対して特定の操作があると、係止状態から係止解除状態に切り替わる。角度調整機構60は、操作部15に設けられた受け部材63と、受け部材63が操作部15の立ち上げ機構80により立ち上がった所定の角度より大きい角度への回動と共に移動する過程で受け部材63の受け面に所定の力で当接することで操作部15を任意の角度に保持する当接部材64とを備える。受け部材63は、操作部15が所定の角度に立ち上がる過程における当接部材64による受け部材63に対する当接力が、所定の力より小さくなる部分を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体の上面又は側面に設けられ、前記電子機器の動作を制御するための入力が行われる操作部と、
前記筐体に設けられ、前記操作部が収納される収納部と、
前記筐体に対する前記操作部の角度を調整可能に構成される角度調整機構と、
前記操作部が前記収納部に収納された位置で前記操作部を係止する係止機構と、
前記係止機構の係止状態が解除された際に、所定の角度に前記操作部を立ち上げる立ち上げ機構と、
を備え、
前記係止機構は、前記操作部が前記収納部に収納された際に前記操作部と係止する係止状態になり、前記係止状態にある前記操作部に対して特定の操作があると、前記係止状態から係止解除状態に切り替わる構成であり、
前記角度調整機構は、前記操作部に設けられた受け部材と、前記受け部材が前記操作部の前記立ち上げ機構により立ち上がった前記所定の角度より大きい角度への回動と共に移動する過程で前記受け部材の受け面に所定の力で当接することで前記操作部を任意の角度に保持する当接部材とを備え、
前記受け部材は、前記係止機構による係止状態が解除された際に前記操作部が前記所定の角度に立ち上がる過程における前記当接部材による前記受け部材に対する当接力が、前記所定の力より小さくなる部分を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記係止機構がプッシュラッチ機構であって、前記特定の操作として外部からの押力が加えられる度に前記係止状態と前記係止解除状態とが切り替わることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記受け部材は受け板部を有し、
前記当接部材は、前記受け板部を挟む一対のパッドであり、
前記受け板部を挟む方向に一対の前記パッドを付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記受け部材において前記当接部材による前記受け部材に対する当接力が前記当接部材が前記所定の力より小さくなる部分は、前記受け板部に設けられた孔又は切り欠きであることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記操作部は、前記筐体の上面で外周より内側に設けられていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記操作部は、前記角度調整機構による角度調整をする際の回動中心となる回動軸を有し、前記回動軸とは反対側となる端面に、指掛け用の凹部を有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記操作部は、電子機器の状態及び操作内容を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記操作部は、操作入力用のタッチパネルと、操作ボタンとを備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作パネル等の操作部を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、操作パネル等の操作部を備える電子機器の一例として印刷装置が開示されている。この印刷装置は、操作パネル等の操作部を回動可能に備える。そのため、ユーザーは見やすい角度に操作部を角度調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-198751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の印刷装置において、操作パネル等の操作部が回動可能に設けられた筐体には、操作部の周囲に指掛け用の凹部が設けられている。ユーザーは指掛け用の凹部の部分に露出する操作パネルの側壁に指を掛けて操作パネルを回動させる。しかし、指掛け用の凹部の位置に指を掛ける必要があり、操作パネルを角度調整する際の操作の自由度が制限されるという課題がある。また、操作部が電子機器の上面に設けられる場合は、操作部の周囲に設けられた指掛け用の凹部に、クリップ等の小型の文房具が落ちやすい場合がある。また、操作パネルの周囲に指掛け用の凹部がその機能上必要になるので、電子機器の意匠性を高める際の自由度が制限される場合がある。そのため、指掛け用の凹部が無くても、ユーザーが比較的簡単に回動操作を行うことができる操作パネル等の操作部を備える電子機器が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電子機器は、筐体の上面又は側面に設けられ、前記電子機器の動作を制御するための入力が行われる操作部と、前記筐体に設けられ、前記操作部が収納される収納部と、前記筐体に対する前記操作部の角度を調整可能に構成される角度調整機構と、前記操作部が前記収納部に収納された位置で前記操作部を係止する係止機構と、前記係止機構の係止状態が解除された際に、所定の角度に前記操作部を立ち上げる立ち上げ機構と、を備え、前記係止機構は、前記操作部が前記収納部に収納された際に前記操作部と係止する係止状態になり、前記係止状態にある前記操作部に対して特定の操作があると、前記係止状態から係止解除状態に切り替わる構成であり、前記角度調整機構は、前記操作部に設けられた受け部材と、前記受け部材が前記操作部の前記立ち上げ機構により立ち上がった前記所定の角度より大きい角度への回動と共に移動する過程で前記受け部材の受け面に所定の力で当接することで前記操作部を任意の角度に保持する当接部材とを備え、前記受け部材は、前記係止機構による係止状態が解除された際に前記操作部が前記所定の角度に立ち上がる過程における前記当接部材による前記受け部材に対する当接力が、前記所定の力より小さくなる部分を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態における印刷装置を正面から見た斜視図である。
図2】印刷装置の上部を示す斜視図である。
図3】印刷装置における操作パネルが配置された部分を示す斜視図である。
図4】カバー部材を取り外した状態における操作パネルを示す斜視図である。
図5】収納部に収納された操作パネルを示す斜視図である。
図6】操作パネルを示す斜視図である。
図7】収納姿勢にある操作パネル及びその周辺の構成を示す模式側断面図である。
図8】操作パネルが収納姿勢にあるときの角度調整機構を示す模式断面図である。
図9】立ち上がり姿勢にある操作パネル及びその周辺の構成を示す模式側断面図である。
図10】操作パネルが立ち上がり姿勢にあるときの角度調整機構を示す模式断面図である。
図11】所望の角度に調整された操作パネルを示す模式側断面図である。
図12】操作パネルが所望の角度に調整されたときの角度調整機構を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、電子機器の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の電子機器は、用紙等の媒体に印刷する印刷装置である。
図1において、印刷装置11が水平面上に置かれているものとして鉛直方向Zと平行な仮想軸としてZ軸を規定する。Z軸に対して直交する仮想面に沿う2つの方向と平行な2つの仮想軸をそれぞれX軸及びY軸とする。X軸と平行な方向をX方向、Y軸と平行な方向をY方向という。媒体23が搬送される搬送方向は、媒体23の搬送経路上の位置に応じて変化する。X方向は、媒体23の搬送方向と交差する幅方向に等しいので、幅方向Xともいう。さらに、Y方向は、キャリッジ31に搭載される印刷ヘッド32が媒体23に印刷するときの印刷位置における媒体23の搬送方向に等しいので、搬送方向Yともいう。なお、Z方向は、重力方向である下方向+Zと、その反対の方向である上方向-Zとを含む。
【0008】
<印刷装置11の構成>
本実施形態の印刷装置11は、用紙などの媒体23に対してインク等の液体を吐出することにより媒体23に文字や画像等を印刷するインクジェット式のプリンターである。印刷装置11は、芯体24に媒体23が巻き重ねられたロール25を回転可能に保持するとともに、ロール25から繰り出された媒体23に印刷する。
【0009】
図1に示すように、印刷装置11は、筐体12と、筐体12を支持する脚部13とを備える。筐体12は、略直方体形状を有する。筐体12は、前壁12A、後壁12B、第1側壁12C、第2側壁12D、上壁12E及び、脚部13によって支持されるベースフレーム14とを有する。なお、脚部13は、キャスター13Aを備える。
【0010】
図1に示すように、印刷装置11は、印刷装置11の動作を制御するための入力が行われる操作部15を備える。操作部15は、例えば、操作パネル50である。操作部15は、筐体12の上面12Uに設けられている。詳しくは、操作部15は、筐体12の上壁12Eの一端部に配置されている。
【0011】
図1に示すように、筐体12は、前部に2つの円筒状のロール25を収容可能な収容部16を有する。収容部16は、筐体12の前壁12Aにおける下部に開口17を有し、この開口17を介して正面側からロール25の着脱が可能である。印刷装置11は、収容部16内にロール保持部26を備える。ロール保持部26は、長尺の媒体23が芯体24に巻き重ねられたロール25を保持する。図1に示す例では、2つのロール保持部26が、収容部16内に鉛直方向Zに並んだ状態で配置される。そのため、収容部16には、2つのロール25が、鉛直方向Zに並んだ状態で収容される。
【0012】
図1に示すように、印刷装置11は、ロール25から媒体23を搬送する搬送機構20を備える。搬送機構20は、ロール25から媒体23を供給する給送部21と、ロール25から供給される媒体23を搬送する搬送部22とを備える。
【0013】
2つのロール保持部26は、幅方向Xに延びる軸線を回転中心としてロール25を回転可能に保持する。給送部21は、駆動源である給送モーター27の駆動力により、ロール保持部26と共にロール25を回転させることで、ロール25から媒体23を供給する。搬送部22は、ロール25から供給された媒体23を搬送可能な不図示のローラー対を備える。搬送部22は、ローラー対により媒体23を搬送経路に沿って搬送する。媒体23の搬送経路の途中に、媒体23に印刷する印刷エリアがある。印刷エリアには、媒体23を支持する支持台28が配置されている。支持台28は、例えば、プラテンであるが、搬送ベルトであってもよい。
【0014】
図1に示すように、印刷装置11は、筐体12内において収容部16よりも上方の位置に印刷部30を備える。印刷部30は、搬送機構20が媒体23を搬送する搬送経路の途中で媒体23に印刷を行う。詳しくは、印刷部30は、印刷エリアにおいて、搬送方向Yに搬送される媒体23に印刷を行う印刷ヘッド32と、印刷ヘッド32を搭載するキャリッジ31とを備える。キャリッジ31は、搬送方向Yと交差する幅方向Xに移動(走査)可能に構成される。
【0015】
詳しくは、キャリッジ31は、ガイドレール36に沿って幅方向Xに移動可能に案内される。キャリッジ31は、ガイドレール36の両端部の近傍に位置する一対のプーリー33に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト34の一部に固定されている。キャリッジモーター35が駆動されて一方のプーリー33が回転駆動することで、タイミングベルト34が回転する。キャリッジモーター35の正逆駆動によりタイミングベルト34が正逆回転することで、キャリッジ31は、ガイドレール36に沿って幅方向Xに往復移動する。キャリッジ31が移動する途中で印刷ヘッド32がインクを吐出することで、媒体23に文字又は画像等が印刷される。印刷ヘッド32は、媒体23のうち支持台28に支持された部分に印刷する。印刷部30が印刷した印刷済みの媒体23は、不図示の切断機構のカッターにより幅方向Xに切断される。印刷済みの媒体23は、搬送部22を構成する不図示の排出ローラー対により、筐体12の前壁12Aに開口する排出口18から排出される。
【0016】
印刷装置11は、2本のロール25のうち一方のロール25の媒体23が無くなると、他方のロール25からの媒体23が自動で給送される自動給送機構(図示略)を備えてもよい。この場合、印刷装置11は、一方のロール25が媒体23の後端まで供給されてエンドになれば、次に他方のロール25の予めセットされた始端の搬送が開始される。このように、印刷装置11は、無人でロール2本分の印刷が可能であってもよい。
【0017】
印刷装置11は、印刷装置11の制御を司る制御部100を備える。制御部100は、操作部15、搬送機構20、印刷部30及び切断機構等を制御する。
<印刷装置11の上部の構成>
次に、図2を参照して印刷装置11の上部の構成について説明する。
【0018】
図2に示すように、筐体12の上面12Uは、ほぼ平坦面に形成されている。筐体12は、中央部に配置される本体部12Hと、本体部12Hの左側に配置される左端部12Lと、本体部12Hの右側に配置される右端部12Rとを有する。
【0019】
筐体12のうち印刷が内部で行われる本体部12Hは、その上壁12Eに、幅方向Xに長い長尺状の窓部19を備える。窓部19は、例えば、ユーザーが排出口18から排出される前に媒体23における印刷結果を見るために設けられている。また、筐体12は、操作パネル50の配置エリアを囲む第1カバー部材41を有する。
【0020】
図2に示すように、操作部15は、筐体12の上面12Uで外周より内側に設けられている。印刷装置11の上面12Uには、なるべく凹凸の少ないフラットなデザインが採用されている。そのため、操作部15は、筐体12の上面12Uとほぼ面一の状態で収納される。操作部15は、ユーザーが手動で上面12Uに対して所望の角度に起こすことができるが、例えば、デザイン性の重視、クリップ等の小型の文房具が落ちることを回避するなどのため、操作部15の周囲に指掛け用の凹部が設けられていない。そのため、印刷装置11には、指掛け用の凹部がなくても、上面12Uとほぼ面一の状態に筐体12内に一部埋没する状態で収納される操作部15を、ユーザーが比較的簡単に起こすことができる仕組みが組み込まれている。
【0021】
<操作パネル50の構成>
図3に示すように、操作部15は、操作パネル50である。操作パネル50は、四角板状のパネル本体51を備える。操作パネル50(操作部15)は、印刷装置11の状態及び操作内容を表示する表示部52を備える。表示部52は、パネル本体51の被操作面51A側(表面側)に組み付けられている。本実施形態の表示部52は、例えば、操作入力用のタッチパネル53である。そのため、ユーザーは、タッチパネル53に触れることで、印刷装置11に対して指示を与えるなどの入力操作を行うことが可能である。
【0022】
図3に示すように、操作パネル50は、操作ボタン54を備えてもよい。操作ボタン54は、例えば、電源ボタン、キャンセルボタン、印刷開始ボタン、選択ボタンのうちのいずれか1つを含んでもよい。電源ボタンは、筐体12における操作パネル50以外の所定位置に設けられてもよい。このように、操作パネル50は、ユーザーが操作入力可能な操作機能と、操作内容や印刷装置11の状態を表示する表示機能とを備えてもよい。
【0023】
図3に示すように、筐体12の上面12Uには、操作パネル50が収納される収納部42が設けられている。第1カバー部材41は、収納部42と対応する領域に開口41Aを有している。詳しくは、第1カバー部材41は、操作パネル50の配置エリアの部分に開口41Aを有する板状の部材である。開口41Aと対応する部分に位置する操作パネル50は、収納部42に収納される。このため、第1カバー部材41の装着状態の下で、操作パネル50は収納部42に収納される。この点で、第1カバー部材41の開口41Aは、収納部42の一部を構成する。
【0024】
第1カバー部材41が筐体12の一部として取り付けられた状態では、操作パネル50の被操作面51A(表面)が開口41Aから露出する。図3では、操作パネル50は略水平に収納された収納姿勢に配置されている。本実施形態の操作パネル50は、収納部42に収納された略水平な収納姿勢から、ユーザーが上面12Uに対して操作パネル50を所望する角度の姿勢(図9図11を参照)へ角度調整可能に構成されている。
【0025】
操作パネル50が収納姿勢にある図3においては、パネル本体51は厚み方向のほぼ全部が収納部42内に収納される。そのため、操作パネル50は、収納姿勢にあるとき、その被操作面51A(表面)が筐体12の上面12Uとほぼ面一になる。
【0026】
ところで、図3に示すように、操作パネル50が上面12Uに対してほぼ面一に収納される構成では、ユーザーが操作パネル50を収納姿勢から所望角度の姿勢へ回動させる際に、操作パネル50に指を引っ掛ける必要がある。そのため、操作パネル50の周囲に、指を引っ掛ける側壁を露出させる凹部が必要になる。しかし、この種の凹部は、クリップ等の小型の文房具が落ちる問題を生じさせる。一方、操作パネル50の側部を上面12Uに対して少し高く位置させることで、操作パネル50を持ち易くすることは可能である。しかし、操作パネル50と上面12Uとをほぼ面一に面を揃えることができなくなり、上面12Uをほぼフラットな面とするデザインの採用が困難になる。
【0027】
図3に示すように、本実施形態の操作パネル50は、パネル本体51の被操作面51Aにおいて表示部52以外の部分に、ユーザーが押す位置を示すマーク55と、発光部56とを有する。図3において、操作パネル50は、マーク55に対して搬送方向Yに表示部52を挟む反対側の端部を回動中心として回動可能に構成される。そして、ユーザーがマーク55の箇所を押すことで、操作パネル50を収納姿勢に保持する係止が外れ、ばね82(図9参照)の付勢力で上面12Uに対して所定の角度(例えば、5~30度の範囲内の所定値)だけ操作パネル50が立ち上がる構成である(図9参照)。
【0028】
そのため、図3に示す収納姿勢にある操作パネル50の周囲には指掛け用の凹部がない。よって、クリップ等の小型の文房具が凹部に落ちる心配がない。しかも、指掛け用の凹部がなくても、ユーザーがパネル本体51のマーク55の箇所を押せば操作パネル50が所定の角度に立ち上がることで、操作パネル50の露出した側壁に指を引っ掛けることが可能である。これにより、印刷装置11の上面12Uを凹凸の少ない又はほぼないフラットなデザインとしても、ユーザーは操作パネル50を比較的簡単に収納姿勢から所望の角度に角度調整することが可能である。なお、図3に示す収納姿勢にある操作パネル50が、上面12Uに対して若干突出する状態又は若干凹んだ状態にあってもよい。
【0029】
発光部56は、例えば、LEDにより構成され、点灯と点滅の一方又は両方が可能に構成される。発光部56は、ユーザーが操作パネル50を所望の姿勢角度に回動させた際にパネル本体51の上端部に位置する。このため、ユーザーが発光部56の発光又は点滅を視認し易い。なお、筐体12に対する操作部15の角度を調整可能な角度調整機構60、操作部15を収納部42に収納された収納姿勢で係止する係止機構70、操作部15のマーク55の箇所が押されると、操作部15を所定の角度まで立ち上げる立ち上げ機構80などの詳細な構成については後述する。
【0030】
<操作パネル50の構成>
次に、図4図6を参照して、操作パネル50の構成について説明する。図4は、第1カバー部材41を取り外した状態にある操作パネル50を示す。図4に示すように、第1カバー部材41を取り外した状態では、操作パネル50以外の奥方部分を露出させる開口12Kと、操作パネル50が収納される収納部42とが露出する。操作パネル50の下方には、凹状の収納部42を上部に有する保持フレーム43が配置されている。
【0031】
図4に示すように、印刷装置11は、筐体12に対する操作パネル50(操作部15)の角度を調整可能に構成される角度調整機構60を備える。操作パネル50は、角度調整機構60による角度調整をする際の回動中心となる回動軸57を有する。図4に示す例では、操作パネル50の搬送方向下流側の端部には、2本の回動軸57が幅方向Xに間隔を空けて設けられている。回動軸57の軸線は、幅方向Xと平行である。操作パネル50の搬送方向下流側の隣位置には、2本の回動軸57を覆う保持部材61が配置されている。2本の回動軸57は、保持部材61の内側に設けられた2つの保持部61Aに対して回動可能に保持されている。なお、回動軸57及び保持部材61は、角度調整機構60の一部を構成する。
【0032】
図5に示すように、操作部15は、回動軸57とは反対側となる端面51Bに、指掛け部58を有する。指掛け部58は、操作部15が所定の角度に立ち上がったときに、上面12U(第1カバー部材41の上面)から露出する(図9参照)。そのため、ユーザーは、操作部15が所定の角度に立ち上がった後、指掛け部58に指を掛けることで操作部15を所望の角度に角度調整する。
【0033】
図6に示すように、2本の回動軸57は、パネル本体51の裏面側から延出する一対の延出部57Aの先端部のそれぞれに固定されている。角度調整機構60は、操作パネル50の角度調整を可能にする回動軸57と、操作パネル50を角度調整した所望の角度に保持する角度保持機構62とを含む。
【0034】
角度保持機構62は、摩擦力を利用して、操作パネル50を所望の角度に保持する。詳しくは、角度保持機構62は、操作部15に設けられた受け部材63を有する。受け板部631は、例えば、ディスク板の一部に相当する略円弧形状を呈する。受け部材63は、受け板部631の受け面63Cと直交する方向が、回動軸57の軸線と平行となる状態で、操作パネル50の裏面側に固定されている。操作パネル50が回動軸57を中心に回動すると、受け部材63も同じ角度だけ操作パネル50と共に回動する。なお、角度保持機構62の詳細な構成については後述する。
【0035】
<操作パネル18の角度調整に関する機構>
次に、図7図12を参照して、操作パネル50の角度調整に関する機構について説明する。図7は操作パネル50が第1姿勢にあるときの側断面を示し、図9は操作パネル50が第2姿勢にあるときの側断面を示し、図11は操作パネル50が第3姿勢にあるときの側断面を示す。また、図8は操作パネル50が第1姿勢にあるときの角度保持機構62の断面を示し、図10は操作パネル50が第2姿勢にあるときの角度保持機構62の断面を示し、図12は操作パネル50が第3姿勢にあるときの角度保持機構62の断面を示す。
【0036】
図7に示すように、操作パネル50は、不使用時は、上面12Uとほぼ面一の状態で収納部42に収納している第1姿勢をとる。ここで、第1姿勢にある操作パネル50を立ち上げるためにユーザーが操作パネル50に指を掛けるための指掛け用の凹部は、上面12Uに形成されていない。ユーザーがマーク55の箇所を押すと、操作パネル50の係止が解除されてばね82の付勢力で操作パネル50が所定の角度(図9参照)に立ち上がるように構成されている。操作パネル50は立ち上がることで第2姿勢をとる。この立ち上がり動作を担う機構が、係止機構70と立ち上げ機構80である。なお、操作パネル50は、表示制御等を行う表示基板部52Aを内蔵する。
【0037】
このように、印刷装置11は、操作部15が収納部42に収納された位置(収納位置)で操作部15を係止する係止機構70を備える。係止機構70は、操作部15が収納部42に収納された際に操作部15を係止し、係止状態にある操作部15が外部から押圧されると、係止状態が解除される機構である。係止機構70は、例えば、プッシュラッチ機構71である。プッシュラッチ機構71は、外部からの押力が加えられる度に、係止状態と係止解除状態とが切り替わる。
【0038】
係止機構70は、第1姿勢にある操作パネル50の裏面51Cに対して、回動軸57と反対側の端部寄りの部分と対向する位置に配置されている。操作パネル50の裏面51Cからは、被係止部59がほぼ垂直に係止機構70と対応する位置に突出している。プッシュラッチ機構71は、被係止部59が挿入されるとこれに係止し、被係止部59に係止する状態で被係止部59が押し込まれると係止が解除される、不図示の係止部材とばね構造とを含む機構を内蔵する。
【0039】
また、印刷装置11は、係止機構70の係止状態が解除された際に、所定の角度に操作部15を立ち上げる前述の立ち上げ機構80を備える。立ち上げ機構80は、操作部15の係止状態が解除された際に操作部15を所定の角度まで立ち上げる。立ち上げ機構80は、例えば、補助ばねである。詳しくは、立ち上げ機構80は、操作部15の裏面51Cに当接可能なキャップ81と、操作部15が立ち上がる方向にキャップ81を付勢するばね82とを備える。キャップ81及びばね82は、保持フレーム43の収容部83に収容されている。キャップ81は、ばね82の弾性力により、収納位置で係止が解除された操作部15が所定の角度まで立ち上がるように操作部15を押し上げる。操作部15が第1姿勢で収納されているとき、キャップ81は、ばね82が圧縮された状態で操作部15の裏面51Cに当接している。操作部15の係止が解除されると、キャップ81がばね82の弾性力により裏面51Cから操作部15を所定の角度まで押し上げる。
【0040】
操作部15が所定の角度に立ち上がれば、ユーザーは操作パネル50に指を掛けることが可能になる。ユーザーが指を掛けて操作パネル50を所望の角度まで回動した後、操作パネル50はその所望の角度に保持される必要がある。そのため、印刷装置11は、筐体12に対する操作部15の角度を調整可能に構成される角度調整機構60を備える。角度調整機構60は、操作部15を上面12Uに対して傾けることが可能なチルト機構である。
【0041】
角度調整機構60は、ユーザーが操作部15を角度調整できるように回動させる回動機能と、操作部15を調整された角度に保持する角度保持機能とを有する。回動機能は回動軸57等が担い、角度保持機能は角度保持機構62が担う。
【0042】
角度調整機構60は、操作部15に設けられた受け部材63と、受け部材63の受け面63Cに所定の力で当接することで操作部15を任意の角度に保持する当接部材64とを備える。当接部材64は、立ち上げ機構80により操作部15が立ち上がった所定の角度より大きい角度への操作部15の回動と共に受け部材63が移動する過程で受け部材63の受け面63Cに所定の力で当接することで、操作部15を任意の角度に保持する。受け部材63及び当接部材64により、角度保持機構62が構成される。
【0043】
受け部材63は、例えば、受け板部631を有する。当接部材64は、受け板部631を挟む一対のパッド641である。角度調整機構60は、受け板部631を挟む方向に一対のパッド641を付勢する付勢部材65を備える。一対のパッド641は、一対の付勢部材65によって互いに近づく方向(+X方向と-X方向)に付勢される(図12等を参照)。パッド641は、例えば、合成樹脂材料またはゴムにより構成されてもよい。付勢部材65は、例えば、ばねである。
【0044】
受け板部631は、例えば、略円弧形状の板部により構成される。受け部材63は、その受け板部631の受け面63Cと直交する方向が、回動軸57の軸線と平行となる向きで操作パネル50の裏面51C側に固定されている。操作パネル50が角度調整のために回動軸57を中心に回動すると、受け部材63も同じ角度だけ操作パネル50と共に回動する。
【0045】
受け部材63は、操作パネル50の回動と共に回動軸57を中心に円弧軌跡を描いて移動する。受け板部631は、この円弧軌跡に沿う円弧形状を呈する。受け板部631の円弧軌跡上の所定の位置に、一対の当接部材64が受け板部631を挟んで対向する状態で配置されている。一対の当接部材64は、保持フレーム43から延出する支持部66により幅方向Xに変位可能な状態で支持されている。
【0046】
図12に示すように、一対の当接部材64が、一対の付勢部材65の付勢力により、受け板部631の受け面63Cに所定の力で当接することで、操作パネル50はユーザーが所望する角度(図11参照)に保持される。一対の当接部材64が受け板部631を挟む状態で両側の受け面63Cに当接するときにその受け面63Cに作用する静止摩擦力により、操作パネル50は所望の角度に保持される。
【0047】
ところで、立ち上げ機構80による立ち上げ過程において、受け部材63と当接部材64との間に比較的大きな摩擦力が働いていると、その摩擦力は、操作部15をばね82の付勢力によって立ち上げる際の抵抗力となる。この場合、その抵抗力に打ち勝つに十分な大きさの付勢力が立ち上げ機構80に必要となる。ばね82の付勢力を大きくすることは、ばね82の大型化及びコスト高を招くので、操作部15の立ち上げ過程では、受け部材63と当接部材64との間に不要な摩擦力は作用しない方が好ましい。また、ばね82の付勢力は、操作部15を収納部42に収納する際の抵抗力にもなる。このため、操作部15を収納部42に収納する際の操作力を小さく済ませるうえで、操作部15の立ち上げ過程における受け部材63と当接部材64との間に不要な摩擦力は作用しない方が好ましい。
【0048】
そのため、受け部材63は、係止機構70による係止状態が解除された際に操作部15が所定の角度に立ち上がる過程における当接部材64による受け部材63に対する当接力が、受け部材63が操作部15の立ち上げ機構80により立ち上がった角度より大きい角度への回動と共に移動する過程での当接力より小さくなる部分を備える。具体的には、当接部材64が当接しない部分を備える。当接部材64が当接しない部分は、孔63A又は切り欠きであってもよい。孔63A又は切り欠きは、受け板部631に設けられてもよい。図7図12に示す例では、受け板部631に、当接部材64が当接しない部分として、孔63Aが形成されている。なお、受け板部631には、その円弧軌跡上において孔63Aと隣接する部分に斜面63Bが形成されている(図7図8を参照)。一対のパッド641は、孔63Aから受け面63Cに至る過程で斜面63Bに沿って案内される。
【0049】
本実施形態の受け部材63は、操作部15が所定の角度に立ち上がる過程で当接部材64が対向する領域の全ての範囲に亘り、当接部材64が当接しない部分を備える。図7図9に示すように、受け部材63の受け板部631には、操作部15が所定の角度に立ち上がる過程で当接部材64が対向する領域の全範囲に亘って孔63Aが形成されている。そのため、図8図10に示すように、操作部15が第1姿勢にあるときも第2姿勢にあるときも、一対の当接部材64は、孔63Aを介して対向するため、受け板部631と当接しない。なお、受け板部631には、操作部15が所定の角度に立ち上がる過程で当接部材64が対向する領域の一部の範囲に亘って孔63A又は切り欠きが形成されてもよい。要するに、ばね82の付勢力により操作部15を所定の角度に立ち上げることができればよい。
【0050】
<実施形態の作用>
次に、本実施形態の印刷装置11の作用について説明する。
ユーザーは、印刷装置11の状態及び操作内容を操作パネル50の表示部52を見て確認する。また、ユーザーは、操作パネル50を用いて入力操作を行うことで、印刷装置11に指示を与える。いずれの場合も、ユーザーにとって操作パネル50の見やすい角度及び操作し易い角度がある。ユーザーは、操作パネル50を所望の角度に調整する。
【0051】
以下、操作パネル50を使用するときの作用について説明する。
不使用時には、操作部15は収納部42に収納されている。操作部15を使用する際は、まず、ユーザーは操作パネル50のマーク55のある箇所を押す。すると、操作パネル50の被係止部59が係止機構70(プッシュラッチ機構71)に押し込まれることで、その係止が解除される。被係止部59の係止が解除されると、立ち上げ機構80のばね82によって付勢されたキャップ81が、操作パネル50を、図9に示す所定の角度まで立ち上げる。
【0052】
図8に示すように、角度調整機構60を構成する一対のパッド641は、受け板部631の孔63Aと対応する位置にある。このため、操作パネル50が、収納姿勢である第1姿勢から立ち上がり姿勢である第2姿勢まで立ち上がる過程で、一対のパッド641は、孔63A内を相対移動する(図8図10を参照)。このため、立ち上げ機構80のばね82の付勢力による比較的小さな力でも、操作パネル50は、キャップ81に押し上げられて第1姿勢から第2姿勢までスムーズに立ち上がる。
【0053】
操作パネル50が図9に示す第2姿勢に立ち上がることで、操作パネル50の端面51Bが露出する。ユーザーは、指掛け部58に指を掛けて操作パネル50を、図11に示す所望の角度に調整する。ユーザーは、上面12Uに対して、例えば、第2姿勢にあるときの所定の角度から、最大角度(例えば、約90度)までの角度調整範囲内で、操作パネル50を任意の角度に角度調整できる。
【0054】
図12に示すように、操作パネル50が角度調整範囲内の第3姿勢にあるとき、一対のパッド641は受け板部631を挟持する状態で受け面63Cに所定の力で当接している。一対のパッド641と受け板部631の受け面63Cとの間に大きな摩擦力が生まれる。受け板部631とパッド641との静止摩擦係数をμ、パッド641が受け板部631を押す所定の力をF、受け面63Cに作用する抗力をNとすると、静止摩擦力f1は、f1=μ*Nで表される。パッド641は2つあるので、一対のパッド641と受け板部631との間には、2f1の静止摩擦力が作用する。なお、抗力Nの大きさは、所定の力Fに等しい。また、記号「*」は、乗算演算子である。
【0055】
操作パネル50及び受け部材63等の回動部分には、自重により操作パネル50を収納姿勢へ戻す力f2が作用する。操作パネル50がどの姿勢角にあっても、2f1>f2maxを満たすように、パッド641と受け板部631との静止摩擦係数μ等が設定されている。ここで、f2maxは、操作パネル50の調整角度に応じて変化する力f2の最大値である。但し、実際には、角度調整された操作パネル50に軽く触れるだけで動いてしまっては困るので、小さな力f3を受けても操作パネル50の角度が保持されるように、力f3のマージンが付与された設定になっている。例えば、2f1>f2max+f3を満たすように、静止摩擦係数μ等が設定されている。
【0056】
ユーザーは、印刷装置11の使用が終わると、操作パネル50を所望の角度にある第3姿勢から第1姿勢まで回動することで、操作パネル50を収納部42に収納する。この過程で、操作パネル50が第2姿勢に達した時点でその裏面51Cがキャップ81に当たり、さらに第2姿勢から第1姿勢までの過程で、キャップ81をばね82の付勢力に抗して押し下げる。そして、操作パネル50が図7に示す第1姿勢で収納部42に収納されると、被係止部59が係止機構70に係止される。この結果、操作パネル50は第1姿勢に保持される。
【0057】
以上、説明したように、操作パネル50の周囲に指掛け用の凹部は不要である。そのため、図2に示すように、操作パネル50が収納されたときの印刷装置11の上面12Uを、凹凸や隙間がほぼないフラッシュサーフェイス化されたデザインにすることができる。また、上面12Uにおける操作パネル50の周囲に指掛け用の凹部がないので、クリップ等の小型の文房具が凹部に落ちることもない。また、凹部に埃が溜まりやすかったり、凹部内に溜まった埃の掃除がしにくい等の不都合も解消される。
【0058】
よって、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)印刷装置11は、操作部15、収納部42、角度調整機構60、係止機構70、及び立ち上げ機構80を備える。操作部15は、筐体12の上面12Uに設けられ、印刷装置11の動作を制御するための入力が行われる。収納部42は、筐体12に設けられ、操作部15が収納される。角度調整機構60は、筐体12に対する操作部15の角度を調整可能に構成される。係止機構70は、操作部15が収納部42に収納された位置で操作部15を係止する。立ち上げ機構80は、係止機構70の係止状態が解除された際に、所定の角度に操作部15を立ち上げる。係止機構70は、操作部15が収納部42に収納された際に操作部15と係止する係止状態になり、係止状態にある操作部15に対して特定の操作があると、係止状態から係止解除状態に切り替わる構成である。角度調整機構60は、操作部15に設けられた受け部材63と、受け部材63が操作部15の立ち上げ機構80により立ち上がった所定の角度より大きい角度への回動と共に移動する過程で受け部材63の受け面63Cに所定の力で当接することで操作部15を任意の角度に保持する当接部材64とを備える。受け部材63は、係止機構70による係止状態が解除された際に操作部15が所定の角度に立ち上がる過程における当接部材64による受け部材63に対する当接力が、所定の力より小さくなる部分を備える。
【0059】
この構成によれば、係止機構70による係止状態が解除された際に、当接部材64による受け部材63への当接力が小さいため、立ち上げ機構80は比較的小さな力でも、操作部15を、所定の角度に立ち上げることができる。操作部15が所定の角度に立ち上がると、操作部15の端面51Bが露出する。ユーザーは、端面に指を掛けて操作部15を所望の角度に調整する。当接部材64が受け部材63に所定の力で当接するので、操作部15は所望の角度に保持される。よって、筐体12において操作部15の周囲に設けられた指掛け用の凹部を使用しなくても、ユーザーは操作部15を所望の角度に起こすことができる。そのため、筐体12から指掛け用の凹部を無くすことも可能になる。なお、操作部15の周囲に、意匠目的の凹部、文房具収容目的の凹部、その他の用途の凹部、さらには指掛け用の凹部があってもよい。これらの凹部のうち少なくとも1つがあっても、ユーザーは指掛け用の凹部を使わずに操作部15を所望の角度に起こすことはできる。
【0060】
(2)係止機構70がプッシュラッチ機構71であって、特定の操作として外部からの押力が加えられる度に係止状態と係止解除状態とが切り替わる。この構成によれば、ユーザーが押力を加える度に係止状態と係止解除状態とに切り替わるので、操作が簡単であるうえ、係止機構70を簡単な構成で済ませられる。
【0061】
(3)受け部材63は受け板部631を有する。当接部材64は、受け板部631を挟む一対のパッド641であり、一対のパッド641が受け板部631を挟む方向にパッド641を付勢する付勢部材65を備える。この構成によれば、操作部15を簡単な構成で所望の角度に保持できる。
【0062】
(4)受け部材63において当接部材64による受け部材63に対する当接力が所定の力より小さくなる部分は、受け板部631に設けられた孔63Aである。このように、当接力が所定の力より小さくなる部分は、当接部材64が受け部材63に対して当接しない孔63Aのような部分であってもよい。この構成によれば、当接部材64による受け部材63に対する当接力が所定の力よりも小さくなる部分を簡単な構成で実現できる。なお、孔63Aに替えて切り欠きとしても、同様の効果が得られる。
【0063】
(5)操作部15は、筐体12の上面12Uで外周より内側に設けられている。例えば、筐体12の上面12Uで外周の一部に接するように操作部15を配置すれば、その外周の一部と接する部分に操作部15の端面が露出するので、その露出した端面に指を掛けて操作部15を所望の角度に回動できる構成をとることはできる。しかし、この場合、筐体12の上面12Uにおける操作部15の配置位置及び回動軸57の位置や向きなどが制約される。これに対して、本構成であれば、操作部15に対する特定の操作として押す操作を行えば、操作部15を所定の角度に立ち上げることはできる。よって、操作部15が筐体12の上面12Uで外周より内側にあっても、操作部15の端面51Bを露出させることができるので、操作部15の配置位置、向き及び回動軸57の位置や向きに何ら制約を受けずに済む。つまり、操作部15を筐体12の上面12Uで外周より内側に配置しても、操作部15の配置位置、向き及び回動軸57の位置や向きを自由に設定できる。
【0064】
(6)操作部15は、角度調整機構60による角度調整をする際の回動中心となる回動軸57を有する。操作部15は、回動軸57とは反対側となる端面51Bに、指掛け部58を有する。この構成によれば、操作部15が立ち上がった後、露出した端面51Bに指掛け部58があるので、その指掛け部58に指を掛けることで、操作部15の角度調整作業がし易い。
【0065】
(7)操作部15は、印刷装置11の状態及び操作内容を表示する表示部52を備える。この構成によれば、操作部15の表示部52に表示される、印刷装置11の状態及び操作内容を見るためにユーザーが行う角度調整の操作がし易い。
【0066】
(8)操作入力用のタッチパネル53と、操作ボタン54とを備える。この構成によれば、操作入力用のタッチパネル53と操作ボタン54を用いて入力操作を行うためにユーザーが行う角度調整の操作がし易い。
【0067】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0068】
・一対のパッド641は、一方が固定のパッド641で、他方が可動のパッド641であってもよい。可動のパッド641のみを付勢する1つの付勢部材65が備えられる構成でもよい。
【0069】
・前記実施形態において、係止機構70の係止を解除する構成は、操作部15に対する押力に限定されず、操作部15に対する押力以外の特定の操作であってもよい。例えば、操作部15に被操作部が設けられ、ユーザーによる被操作部の操作が特定の操作であってもよい。被操作部は、例えば、押しボタンであってもよい。特定の操作として、ユーザーが押しボタンを操作することで、その操作力で係止機構70の係止が解除されてもよい。あるいは、特定の操作として押しボタンが操作された際の操作信号に基づき制御部100が係止機構70の係止を電気的に解除させてもよい。さらには、例えば、特定の操作としてユーザーが指で操作部15に接触(タッチ)する操作があると接触センサーが操作信号を出力したり、特定の操作としてユーザーが指を操作部15に近接させる操作があると近接センサーが操作信号を出力したりする構成でもよい。これらの場合、制御部100が操作信号に基づき係止機構70の係止を電気的に解除させてもよい。
【0070】
・付勢部材65は、ばねに限らず、ソレノイドやシリンダー等の駆動部でもよい。駆動部の動力でパッド641を所定の力で受け面63Cに当接させてもよい。
・当接部材64は、付勢部材65により付勢されなくてもよい。つまり、付勢部材65を無くしてもよい。例えば、受け部材63(例えば、受け板部631)に対して所定の力で圧接可能な位置に当接部材64を配置する構成でもよい。この場合、当接部材64は、耐摩耗性の合成樹脂材料、ゴム弾性を有する合成樹脂材料又はゴム等の部材であってもよい。要するに、当接部材64は、受け面63Cに対して所定の力で当接することで、操作部15の所定の角度からの回動過程で受け面63Cに対して所定の接圧で摺動できる構成であればよい。
【0071】
・受け部材63は、孔63A又は切り欠きに限らず、係止機構70による係止状態が解除された際に操作部15が所定の角度に立ち上がる過程で、当接部材64が当接しない程度の薄さに形成された凹みを備えていてもよい。また、受け部材63は、係止機構70による係止状態が解除された際に操作部15が所定の角度に立ち上がる過程で、当接部材64が受け板部631に当接しても、当接部材64による当接力が、ばね82の付勢力に対する抵抗力として操作部15の立ち上がりを妨げることにならない程度の厚さに形成されていればよい。
【0072】
・前記実施形態において、指掛け部58は、操作部15において回動軸57の軸線と直交する面となる左右の側面のいずれか一方又は両方に設けられてもよい。
・印刷装置11の正面から見て、操作パネル50の左端側又は右端側に回動軸57を配置してもよい。この場合、ユーザーは印刷装置11の側方から操作部15を操作する。この場合も、操作部15は、回動軸57とは反対側となる端面に、指掛け部58を有してもよい。
【0073】
・操作部15は、回動に加え平行移動できる構成でもよい。例えば、操作部15の収納姿勢からの立ち上がりは、水平姿勢を維持したまま上方に平行移動し、その上昇した水平姿勢にある操作部15をユーザーが回動させて所望の角度に角度調整する構成でもよい。
【0074】
・操作部15は、表示部52を有しない構成でもよい。操作部15は、例えば、スイッチ式の操作ボタン54を1つ又は複数備える操作パネル50でもよい。
・操作部15は、表示部52のみで操作ボタン54を備えない操作パネル50でもよい。
【0075】
・操作部15が筐体12の収納部42に収納される構成において、操作部15の周囲に指掛け用の凹部があってもよい。例えば、指掛け用の凹部を補助的に残してもよい。使用に不慣れなユーザーが指掛け用の凹部が無くて操作部15を起こすことができない事態を解消できる。この場合、補助的な凹部であるため、従来よりも凹部のサイズを小さくしておけばよい。この構成でも、印刷装置11等の電子機器のデザインが凹部によって損なわれることが抑えられたり、小型の文房具が凹部に落ちる頻度を低減できたりする。このように、指掛け用の凹部は補助的なものであるため、その凹部を使わなくても、ユーザーは操作部15を比較的簡単に起こすことはできる。なお、補助的な凹部を設ける場合、凹部を塞ぐ開閉式のカバーを設けてもよい。例えば、カバーはばねの付勢力で上方に付勢され、カバーを押し込むと操作部15の端面が露出する構成でもよい。
【0076】
・操作部15の周囲に指掛け用以外の用途又はデザイン性を高める目的の凹部があってもよい。
・操作部15が設けられる上面12Uは、水平面、つまり鉛直方向Zと直交する面に限らない。上面12Uは、水平面に対して鋭角な角度で傾く斜面でもよい。本明細書で上面12Uとは、電子機器(例えば、印刷装置11)の外周面のうち鉛直方向Zの上方から見た場合に視認できる面部である。上面12Uの少なくとも収納部42の周辺の部分は、平面に限らず、角度の異なる複数の面部の集合よりなる面でもよいし、湾曲面でもよい。湾曲面は、凸曲面でも凹曲面でもよい。
【0077】
・操作部15は、筐体12の側面に設けられてもよい。この場合、操作部15としての操作パネル50は、上端部の回動軸57を中心に回動する構成とし、ユーザーが斜め上方から見たときに見やすい角度に角度調整できるようにする。
【0078】
・印刷装置11は、インクジェット式プリンターに限定されない。例えば、レーザープリンター等の電子写真式プリンター、ドットインパクト式プリンター、感熱式プリンター等でもよい。また、印刷装置11は、捺染装置でもよい。
【0079】
・印刷装置11は、シリアルプリンターに限定されず、ラインプリンターまたはページプリンターでもよい。印刷装置11がラインプリンターである場合、印刷部30は、キャリッジ31を備えず、媒体23の最大幅よりも長い範囲を一斉に印刷可能な印刷ヘッド32を有する。印刷ヘッド32は、搬送機構20により所定速度で搬送される媒体23に対して印刷する。
【0080】
・印刷装置11は、大サイズの媒体23に印刷可能に構成される大判プリンターに限定されず、最大サイズがA4判又はA3判等の比較的小サイズの媒体23に印刷可能に構成されるオフィス又は個人向けのプリンターでもよい。
【0081】
・印刷装置11は、スキャナー(画像読取部)を備える複合機であってもよい。
・電子機器は、印刷装置に限定されず、スキャナー(画像読取装置)やプロジェクター等でもよい。さらには、テレビ等の映像機器、音響機器、デジタルカメラ、冷蔵庫、電子レンジ等の電子調理器、エアコン等の空調機であってもよい。
【0082】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)電子機器は、筐体の上面又は側面に設けられ、前記電子機器の動作を制御するための入力が行われる操作部と、前記筐体に設けられ、前記操作部が収納される収納部と、前記筐体に対する前記操作部の角度を調整可能に構成される角度調整機構と、前記操作部が前記収納部に収納された位置で前記操作部を係止する係止機構と、前記係止機構の係止状態が解除された際に、所定の角度に前記操作部を立ち上げる立ち上げ機構と、を備え、前記係止機構は、前記操作部が前記収納部に収納された際に前記操作部と係止する係止状態になり、前記係止状態にある前記操作部に対して特定の操作があると、前記係止状態から係止解除状態に切り替わる構成であり、前記角度調整機構は、前記操作部に設けられた受け部材と、前記受け部材が前記操作部の前記立ち上げ機構により立ち上がった前記所定の角度より大きい角度への回動と共に移動する過程で前記受け部材の受け面に所定の力で当接することで前記操作部を任意の角度に保持する当接部材とを備え、前記受け部材は、前記係止機構による係止状態が解除された際に前記操作部が前記所定の角度に立ち上がる過程における前記当接部材による前記受け部材に対する当接力が、前記所定の力より小さくなる部分を備える。
【0083】
この構成によれば、係止機構による係止状態が解除された際に、当接部材による受け部材への当接力が所定の力よりも小さいため、立ち上げ機構は比較的小さな力によって、操作部を所定の角度に立ち上げることができる。操作部が所定の角度に立ち上がると、操作部の端面が露出する。ユーザーは、端面に指を掛けて操作部を所望の角度に調整する。当接部材が所定の力で受け部材に当接することで、操作部は所望の角度に保持される。よって、筐体において操作部の周囲に設けられる指掛け用の凹部を使用しなくても、ユーザーは操作部を所望の角度に起こすことができる。そのため、筐体から指掛け用の凹部を無くすことも可能になる。なお、筐体において操作部の周囲に、意匠目的の凹部、文房具収容目的の凹部、その他の用途の凹部、さらには指掛け用の凹部があってもよい。これらの凹部のうち少なくとも1つの凹部の有無に関わらず、ユーザーは指掛け用の凹部を使用せずに操作部を所望の角度に起こすことはできる。
【0084】
(B)上記電子機器において、前記係止機構がプッシュラッチ機構であって、前記特定の操作として外部からの押力が加えられる度に前記係止状態と前記係止解除状態とが切り替わる構成でもよい。この構成によれば、ユーザーが押力を加える度に係止状態と係止解除状態とに切り替わるので、操作が簡単であるうえ、係止機構を簡単な構成で済ませられる。
【0085】
(C)上記(A)又は(B)に記載の上記電子機器において、前記受け部材は受け板部を有し、前記当接部材は、前記受け板部を挟む一対のパッドであり、前記受け板部を挟む方向に一対の前記パッドを付勢する付勢部材を備えてもよい。この構成によれば、操作部を簡単な構成で所望の角度に保持できる。
【0086】
(D)上記電子機器において、前記受け部材において前記当接部材による前記受け部材に対する当接力が前記所定の力より小さくなる部分は、前記受け板部に設けられた孔又は切り欠きであってもよい。この構成によれば、当接部による受け部材に対する当接力が所定の力よりも小さくなる部分を簡単な構成で実現できる。
【0087】
(E)上記(A)~(D)のいずれか一つの上記電子機器において、前記操作部は、前記筐体の上面で外周より内側に設けられてもよい。この構成によれば、操作部が筐体の上面で外周より内側に設けられていても、操作部を立ち上げることができる。例えば、操作部が筐体の上面で外周の一部に接するように配置すれば、操作部の収納状態で端面の一部が露出するので、端面に指を掛けて操作部を立ち上げる構成は可能である。しかし、この場合、筐体の上面における操作部の配置位置及び回動軸の位置や向きなどが制約される。これに対して、本構成であれば、操作部が筐体の上面で外周より内側にあっても、操作部に対する特定の操作をすれば、操作部が立ち上がり端面が露出する。操作部の端面を露出させるために操作部の配置位置、回動軸の位置や向きなどに何ら制約を受けずに済む。
【0088】
(F)上記(A)~(E)のいずれか一つに記載の上記電子機器において、前記操作部は、前記角度調整機構による角度調整をする際の回動中心となる回動軸を有し、前記回動軸とは反対側となる端面に、指掛け用の凹部を有してもよい。この構成によれば、操作部が立ち上がった後、操作部の端面が露出するので、その端面に指を掛けることができる。
【0089】
(G)上記(A)~(F)のいずれか一つに記載の上記電子機器において、前記操作部は、電子機器の状態及び操作内容を表示する表示部を備えてもよい。この構成によれば、操作部の表示部に表示される、電子機器の状態及び操作内容を見るためにユーザーが行う角度調整の操作がし易い。
【0090】
(H)上記(A)~(G)のいずれか一つに記載の上記電子機器において、前記操作部は、操作入力用のタッチパネルと、操作ボタンとを備えてもよい。この構成によれば、操作入力用のタッチパネルと操作ボタンを用いてユーザーが行う入力操作がし易い。
【符号の説明】
【0091】
11…電子機器の一例としての印刷装置、12…筐体、12A…前壁、12B…後壁、12C…第1側壁、12D…第2側壁、12E…上壁、12H…本体部、12L…左端部、12R…右端部、12U…上面、13…脚部、13A…キャスター、14…ベースフレーム、15…操作部、16…収容部、17…開口、18…排出口、19…窓部、20…搬送機構、21…給送部、22…搬送部、23…媒体、24…芯体、25…ロール、26…ロール保持部、27…給送モーター、28…支持台、30…印刷部、31…キャリッジ、32…印刷ヘッド、33…プーリー、34…タイミングベルト、35…キャリッジモーター、36…ガイドレール、40…本体、41…第1カバー部材、42…収納部、43…保持フレーム、50…操作パネル、51…パネル本体、51A…被操作面、51B…端面、51C…裏面、52…表示部、52A…表示基板部、53…タッチパネル、54…操作ボタン、55…マーク、56…発光部、57…回動軸、57A…延出部、58…指掛け部、59…被係止部、60…角度調整機構、61…保持部材、62…角度保持機構、63…受け部材、63A…孔、63B…斜面、63C…受け面、631…受け板部、64…当接部材、641…パッド、65…付勢部材、66…保持部、70…係止機構、71…プッシュラッチ機構、80…立ち上げ機構、81…キャップ、82…ばね、83…収容部、100…制御部、X…幅方向、Y…搬送方向、Z…鉛直方向。
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