(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106466
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】吸音材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/86 20060101AFI20240801BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20240801BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E04B1/86 B
E04B1/82 M
E04B1/86 S
E04B1/86 T
E04F13/08 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010731
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
【Fターム(参考)】
2E001DB00
2E001DB03
2E001DF04
2E001GA03
2E001GA12
2E001GA24
2E001GA28
2E001HA14
2E001HD01
2E001JA06
2E001JC02
2E001JC03
2E001JD04
2E001KA05
2E110AA14
2E110AA33
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB23
2E110AB44
2E110AB46
2E110BA03
2E110BA12
2E110CB03
2E110EA09
2E110GA15W
2E110GA15X
2E110GA32W
2E110GA32X
2E110GA33W
2E110GA33X
2E110GA43Z
2E110GB01W
2E110GB01X
2E110GB16X
2E110GB18Z
2E110GB42Z
2E110GB55W
2E110GB55X
2E110GB62W
2E110GB62X
2E110GB63Z
(57)【要約】
【課題】調湿作用に優れた吸音材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】吸音材1は、粒状体10を備えている。粒状体10は、吸音性を有している。粒状体10は、珪藻土を含有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音性を有する粒状体を備え、
前記粒状体は、珪藻土を含有することを特徴とする吸音材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸音材において、
前記粒状体に占める前記珪藻土の重量割合は、10%以上である吸音材。
【請求項3】
請求項2に記載の吸音材において、
前記粒状体に占める前記珪藻土の重量割合は、25%以上である吸音材。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸音材において、
前記粒状体は、前記珪藻土を主材料とする吸音材。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸音材において、
前記粒状体は、有機材料を含有する吸音材。
【請求項6】
請求項5に記載の吸音材において、
前記有機材料は、紙類である吸音材。
【請求項7】
請求項5に記載の吸音材において、
前記粒状体は、実質的に、前記珪藻土及び前記有機材料のみからなる吸音材。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸音材において、
前記粒状体を挟んで互いに対向する第1及び第2の面状部材を備える吸音材。
【請求項9】
請求項8に記載の吸音材において、
前記第1の面状部材と前記第2の面状部材との間の空間は、複数の区画に仕切られている吸音材。
【請求項10】
吸音性を有する粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、
前記粒状体形成工程においては、珪藻土を含有する前記粒状体を形成することを特徴とする吸音材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、押出造粒により前記粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記粒状体に占める前記珪藻土の重量割合が10%以上となるように、当該粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記粒状体に占める前記珪藻土の重量割合が25%以上となるように、当該粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れかに記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記珪藻土を主材料とする前記粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【請求項15】
請求項10乃至13の何れかに記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、有機材料を含有する前記粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の吸音材の製造方法において、
前記有機材料は、紙類である吸音材の製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、実質的に前記珪藻土及び前記有機材料のみからなる前記粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸音材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された吸音材は、複数の粒状体を備えている。各粒状体は、グラスウール等の無機質繊維を材料としている。この吸音材は、粒状体が音のエネルギーを吸収することにより、防音に効果を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸音材は、建材等として用いられることが多いため、充分な調湿作用を有することが好ましい。しかしながら、従来の吸音材は、調湿作用が不充分であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、調湿作用に優れた吸音材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による吸音材は、吸音性を有する粒状体を備え、上記粒状体は、珪藻土を含有することを特徴とする。
【0007】
この吸音材においては、珪藻土を含有する粒状体が設けられている。珪藻土は、高い調湿性能を有する材料である。このため、粒状体に珪藻土を含有させることにより、吸音材の調湿作用を高めることができる。
【0008】
また、本発明による吸音材の製造方法は、吸音性を有する粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、上記粒状体形成工程においては、珪藻土を含有する上記粒状体を形成することを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、珪藻土を含有する粒状体が形成される。珪藻土は、高い調湿性能を有する材料である。このため、粒状体に珪藻土を含有させることにより、吸音材の調湿作用を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調湿作用に優れた吸音材、及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による吸音材の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による吸音材の一実施形態を示す模式図である。吸音材1は、複数の粒状体10を備えている。複数の粒状体10は、相互に接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。粒状体10は、吸音性を有している。すなわち、粒状体10は、音のエネルギーを吸収する性質を有している。吸音材1は、例えば、建物、道路もしくは鉄道、又はそれらの工事現場における防音対策に使用される。建物の防音対策に使用される場合、吸音材1は、例えば、壁(例えば戸境壁)の中や床の下に配設される。
【0014】
粒状体10は、粒状に成形された造粒物である。かかる粒状の形状としては、例えば、球、円柱、又は楕円体が挙げられる。粒状体10の粒径は、例えば、5mm以上30mm以下である。ここで、粒状体10の粒径は、当該粒状体10を内包し得る最小の球の直径として定義される。
【0015】
粒状体10は、珪藻土を含有している。粒状体10に占める珪藻土の重量割合は、10%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。粒状体10は、珪藻土を主材料とすることが好ましい。ここで、主材料とは、粒状体10を構成する材料のうち、当該粒状体10に占める重量割合が最大のものをいう。
【0016】
粒状体10は、有機材料を含有している。有機材料としては、例えば、紙類、植物類、プラスチック類、又は有機汚泥類が挙げられる。紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙(紙粉)の他にも、フラッフパルプ、塩ビ壁紙由来の紙(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生する紙)、石膏ボード由来の紙(石膏ボードの製造時又は分級時に発生する紙)、又は衛生用品由来の紙(紙を含む衛生用品の製造時又は分級時に発生する紙)を用いることができる。紙を含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生用紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル等)が挙げられる。
【0017】
植物類としては、例えば、木粉、大鋸屑、又は植物性残渣(茶殻、オカラ等)を用いることができる。プラスチック類としては、例えば、通常のプラスチックの他にも、塩ビ壁紙由来のプラスチック(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生するプラスチック)、又は衛生用品由来のプラスチック(プラスチックを含む衛生用品の製造時又は分級時に発生するプラスチック)を用いることができる。プラスチックを含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生マスクが挙げられる。有機汚泥類としては、例えば、製紙スラッジ、又はパルプスラッジを用いることができる。
【0018】
粒状体10は、実質的に、珪藻土及び有機材料のみからなることが好ましい。「実質的に」とは、粒状体10の吸音性を阻害しない限り、防腐剤、殺菌剤等の他の材料が粒状体10に添加されていてもよいという趣旨である。その場合であっても、粒状体10に占める他の材料の重量割合は1%以下(すなわち、珪藻土及び有機材料の重量割合の合計が99%以上)であることが好ましい。例えば、粒状体10に占める珪藻土、及び有機材料の重量割合は、それぞれ、10%以上90%以下(好ましくは50%以上80%以下)、及び10%以上90%以下(好ましくは20%以上50%以下)である。粒状体10が複数の有機材料を含有する場合、それらの重量割合の合計をもって「有機材料の重量割合」とする。粒状体10は、有機材料を主材料としてもよい。あるいは、例えば珪藻土及び有機材料の重量割合が何れも50%である場合のように、粒状体10は、珪藻土及び有機材料の双方を主材料としてもよい。
【0019】
続いて、本発明による吸音材の製造方法の一実施形態として、吸音材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、粒状体形成工程を含んでいる。
【0020】
粒状体形成工程は、粒状体10を形成する工程である。この工程においては、造粒装置を用いて粉体状の造粒材料(粒状体10を構成する材料)を造粒することにより、複数の粒状体10を形成する。造粒材料は、珪藻土及び有機材料を含んでいる。造粒は、湿式造粒であることが好ましい。湿式造粒としては、例えば押出造粒が挙げられる。押出造粒により粒状体10を形成する場合、造粒装置として押出造粒機が用いられる。
【0021】
押出造粒機は、造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有する。押出造粒機においては、ダイスの表面側に供給された造粒材料がローラー等により貫通孔に押し込まれる。当該造粒材料は、貫通孔を通過してダイスの裏面側に押し出された後、カッター等により適宜の長さに切断される。これにより、柱状の粒状体10が形成される。造粒に先立って、造粒材料には、粉砕、混錬、加水等の前処理が必要に応じて行われる。造粒後、篩分け(分粒)、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、複数の粒状体10からなる吸音材1が得られる。
【0022】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、珪藻土を含有する粒状体10が形成される。珪藻土は、高い調湿性能を有する材料である。このため、粒状体10に珪藻土を含有させることにより、吸音材1の調湿作用を高めることができる。したがって、調湿作用に優れた吸音材1、及びその製造方法が実現されている。
【0023】
珪藻土の含有量を多くした方が、吸音材1の調湿作用を高めるのに有利である。かかる観点から、粒状体10に占める珪藻土の重量割合は、10%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。他方、珪藻土の含有量が多すぎると、粒状体10の造粒に支障を来しかねない。かかる観点から、上記重量割合は、90%以下であることが好ましい。
【0024】
粒状体10が珪藻土を主材料とする場合、吸音材1の調湿作用を特に高めることができる。
【0025】
粒状体10が有機材料を含有する場合、粒状体10を部分的に焼却処分することが可能となる。このことは、使用済みの吸音材1の処分の便宜に資する。
【0026】
ところで、紙類は、繊維質な材料である。このため、粒状体10が有機材料として紙類を含有する場合、造粒材料を安定的に造粒しやすくなる。
【0027】
粒状体10が実質的に珪藻土及び有機材料のみからなる場合、吸音材1の焼却処分への適合性及び調湿作用を共に高めるのに有利である。
【0028】
粒状体10が押出造粒により形成される場合、粒状体10は、粉体状の材料が押し固められた造粒物となる。かかる造粒物の表面や内部には、多数の空隙が不規則に存在する。これにより、粒状体10に入射した音のエネルギーが減衰されやすくなるため、粒状体10の吸音性を高めることができる。このように粒状体10の表面や内部の空隙を増やす観点から、造粒材料が有機材料としてプラスチックを含む場合、当該プラスチックが溶融しない状態で造粒を行うことが好ましい。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、吸音材1が粒状体10のみからなる場合を例示した。しかし、吸音材1は、例えば
図2に示すように、粒状体10を挟んで互いに対向する面状部材22(第1の面状部材)及び面状部材24(第2の面状部材)を備えていてもよい。同図において面状部材22と面状部材24との間の空間は、複数の区画に仕切られている。各区画には、粒状体10が充填されている。
【0030】
面状部材22及び面状部材24は、硬質であってもよいし、軟質であってもよい。ここで、「硬質である」とは、床に垂直に立てたときに自律的に形状を維持できる程度の剛性を有するということである。一方、「軟質である」とは、上記剛性を有しないということである。面状部材22及び面状部材24が硬質である場合、吸音材1は、吸音ボードないし吸音パネルとして機能する。面状部材22及び面状部材24が軟質である場合、吸音材1は、吸音シートとして機能する。硬質の面状部材22,24としては、例えば、木板、金属板、又は石膏ボードを用いることができる。また、軟質の面状部材22,24としては、例えば、プラスチックシート、ゴムシート、布、又は不織布を用いることができる。面状部材22は、音を透過させる性質を有しており、音源側の面を構成する。面状部材24は、遮音性を有しており、音源と反対側の面を構成する。
【0031】
このように面状部材22及び面状部材24を設けることにより、吸音材1が粒状体10のみからなる場合に比して、吸音材1の施工(例えば建物の壁中に吸音材1を配置すること)が容易になる。また、面状部材22と面状部材24との間の空間を複数の区画に仕切ることにより、当該空間内での粒状体10の偏在を抑制することができる。
【0032】
上記実施形態においては、粒状体10が有機材料を含有する場合を例示した。しかし、粒状体10は、有機材料を含有しなくてもよい。例えば、粒状体10は、珪藻土のみからなってもよいし、珪藻土、及び珪藻土以外の無機材料のみからなってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 吸音材
10 粒状体
22 面状部材(第1の面状部材)
24 面状部材(第2の面状部材)