(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106476
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】床先行二重床の床懐空気抜き構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/024 20060101AFI20240801BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E04F15/024 606A
E04F15/024 606D
E04F15/18 601G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010743
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】室 裕希
(72)【発明者】
【氏名】會田 祐
(72)【発明者】
【氏名】冨永 大祐
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】田中 成樹
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA09
2E220AA19
2E220AB06
2E220AB14
2E220AC03
2E220CA14
2E220EA11
2E220FA11
2E220GB01Z
2E220GB17Y
2E220GB22Z
2E220GB45Y
2E220GB46Y
(57)【要約】
【課題】床先行二重床と壁構造の組み合わせにおいて重量床衝撃音の低減効果を従来よりも高めることができる床先行二重床の床懐空気抜き構造を提供する。
【解決手段】床先行二重床100が、床構造50と壁構造60を備える。床構造50は、床スラブ1、その上に配置された支持脚3、及び床板4を有する。床板4は、支持脚3に支持され、端面が躯体壁2に近接し水平に延びる。壁構造60は、間柱6、壁板7、及び巾木8を有する。間柱6は、躯体壁2に近接し、躯体壁2に沿って幅方向に間隔を隔てて位置し、床板4の端部に支持され鉛直に延びる。壁板7は、間柱6の室内側に固定され、鉛直に延びる。巾木8は、壁板7の室内側下端に固定され、水平に延び、下端が床板4の上面に近接して位置する。床先行二重床100は、床構造50の床懐と壁構造60の壁懐とを連通する第1通気経路R1と、壁懐と室内空間とを連通する第2通気経路R2と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブと、該床スラブの上に配置された複数の支持脚と、該支持脚に支持され端面が躯体壁に近接して位置し水平に延びる床板と、を有する床構造と、
前記躯体壁に近接して位置し前記床板に支持されて鉛直に延びる複数の間柱と、該間柱の室内側に固定され鉛直に延びる壁板と、該壁板の室内側下端に固定され水平に延び下端が前記床板の上面に近接して位置する巾木と、を有する壁構造と、を備え、
前記床構造の床懐と前記壁構造の壁懐とを連通する第1通気経路と、
前記壁懐と室内空間とを連通する第2通気経路と、を有する、床先行二重床の床懐空気抜き構造。
【請求項2】
前記床板は、前記支持脚の上に形成された基材と、該基材の上に形成された下地材と、該下地材の上に形成された床仕上げ材と、を有し、
前記壁板は、下端が前記下地材より第1隙間を隔てて上方に位置するふかし壁であり、
前記巾木は、その下端が前記床仕上げ材の上面より第2隙間を隔てて上方に位置し、該第2隙間は、前記室内側から視認困難な大きさに設定され、
前記第1隙間は、前記第2隙間より大きく設定されている、請求項1に記載の床先行二重床の床懐空気抜き構造。
【請求項3】
前記間柱の下端を支持し前記躯体壁に沿って水平に延びるランナーと、
前記ランナーの下面と前記床板の上面との間に挟持され前記躯体壁に沿って第3間隔を隔てて位置する複数の支持部材と、を有し、
前記支持部材の厚さと前記第3間隔は、ランナー下の流路面積が前記第2隙間の流路面積より大きく設定されている、請求項2に記載の床先行二重床の床懐空気抜き構造。
【請求項4】
前記間柱の下端を支持し前記躯体壁に沿って水平に延びるランナーを有し、
前記ランナーの下面は、前記床板の上面に固定され、かつ前記上面より上部に前記壁懐と前記室内側を連通し前記躯体壁に沿って間隔を隔てて位置する複数の開口を有し、
前記第1隙間は、前記開口を塞がない大きさに設定され、
前記開口の流路面積は、前記第2隙間の流路面積より大きく設定されている、請求項2に記載の床先行二重床の床懐空気抜き構造。
【請求項5】
前記床板の端面は、前記躯体壁から第4隙間を隔てて位置しており、
前記第4隙間は、前記第2隙間よりも大きく設定されている、請求項2に記載の床先行二重床の床懐空気抜き構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床先行二重床と壁構造の組み合わせにおける床懐空気抜き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅の界床構造として、JIS A 1418による重量床衝撃音遮断性能及び軽量床衝撃音遮断性能を満たす遮音床が要望されている。
「重量床衝撃音」は、子どもが飛び跳ねたり、椅子を動かしたときなどに、「ドスン」「ガタン」と大きく下の階に伝わる鈍くて低い音を意味する。また、「軽量床衝撃音」は、スプーンなどを床に落として「コツン」といったり、スリッパで歩いて「パタパタ」するように、比較的軽めで高音域の音を意味する。
【0003】
このうち、軽量床衝撃音は床材表面の素材(例えばカーペット)により比較的容易に低減することができる。一方、重量床衝撃音は床材表面の素材のみでは低減が困難である。
そこで、重量床衝撃音を低減するために、例えば特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1の「建物」は、床スラブの上に支持脚と床板を備えた床構造と、内側に空間を有した壁構造(間仕切壁)を備える。さらに、床構造の床下空間と壁構造の内側の壁内空間とを空気を流通可能に連通させる第1の通気部と、壁内空間と天井構造の天井裏空間とを空気を流通可能に連通させる第2の通気部とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集合住宅において多用される二重床仕上げは、直床仕上げと比較して重量床衝撃音の遮断性能が悪化する傾向がある。これは主に床懐の空気層が密閉されることにより共振現象が発生するためと考えられている。
そのため、この性能悪化要因を解決した遮音性能の高い二重床の開発が求められている。なお床懐とは、構造床(例えば床スラブ)と二重床に挟まれた床下空間を意味する。
【0007】
集合住宅の各居室の施工は、「壁勝ち納まり」と「床勝ち納まり」に区分される。
壁勝ち納まりは、壁勝ち工法又は壁先行工法とも呼ばれ、居室の区画壁を床パネルより優先的に敷設する工法である。また、床勝ち納まりは、床勝ち工法又は床先行工法とも呼ばれ、居室の区画壁より床パネルを優先的に敷設する工法である。
壁勝ち納まりの場合、天井や床部材の加工の手間が増える。そのため、施工方法の観点から、床勝ち納まりの方が施工性及び経済性において優れている。
【0008】
特許文献1の床懐空気抜き構造は、壁や天井に開口を設ける必要があるので美観と強度を損ねる。
また、壁先行工法の場合、巾木をフローリング面から数ミリ浮かすことにより、二重床と壁との隙間から室内空間への通気経路が確保され、空気ばねによる共振の影響が緩和されることが知られている。なお「巾木」とは、床と壁の境目に取り付けて、納まりを綺麗に見せるための部材を意味する。
一方、従来の床先行工法の二重床(以下、「床先行二重床」)では、二重床の端部において床勝ちの界壁ふかし壁を設けると室内空間への通気経路はなく、容積が小さい壁懐への通気経路しか確保されていない。そのため、床先行二重床では、空気抜きの重量床衝撃音低減効果を十分に生かしきれていない場合があった。
なお「界壁」とは、住戸間の戸境壁のほか、住戸外壁も含む住戸の境界を隔てる壁(例えば躯体壁)を意味し、「ふかし壁」とは、壁板の表面に壁仕上げ材が設けられて形成された壁を意味する。また、「壁懐」とは、界壁と壁構造(例えばふかし壁)に挟まれた壁内空間を意味する。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、床先行二重床と壁構造(例えばふかし壁)の組み合わせにおいて重量床衝撃音の低減効果を従来よりも高めることができる床先行二重床の床懐空気抜き構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、床スラブと、該床スラブの上に配置された複数の支持脚と、該支持脚に支持され端面が躯体壁に近接して位置し水平に延びる床板と、を有する床構造と、
前記躯体壁に近接して位置し前記床板に支持されて鉛直に延びる複数の間柱と、該間柱の室内側に固定され鉛直に延びる壁板と、該壁板の室内側下端に固定され水平に延び下端が前記床板の上面に近接して位置する巾木と、を有する壁構造と、を備え、
前記床構造の床懐と前記壁構造の壁懐とを連通する第1通気経路と、
前記壁懐と室内空間とを連通する第2通気経路と、を有する、床先行二重床の床懐空気抜き構造が提供される。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の構成によれば、床構造の床板に床衝撃音が加わった場合に床懐で生じた圧力波が、壁懐、第1通気経路、及び第2通気経路を介して室内空間に抜けて減衰する。
これにより、床先行二重床と壁構造の組み合わせにおいて重量床衝撃音の低減効果を従来よりも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の二重床端部における床懐からの通気経路を示す図である。
【
図2】本発明による床先行二重床の床懐空気抜き構造の第1実施形態図である。
【
図3】本発明による床先行二重床の床懐空気抜き構造の第2実施形態図である。
【
図5】重量床衝撃音レベル測定試験の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、従来の二重床端部における床懐からの通気経路を示す図である。この図において、(A)は壁勝ち納まり、(B)は床勝ち納まりを示している。
【0015】
図1において、1は床スラブ、2は躯体壁、3は支持脚、4は床板(二重床)、5はランナー、6は間柱、7は壁板、8は巾木である。
図1(A)の壁勝ち納まりでは、巾木8を床板4(フローリング面)から2mm程度浮かすことにより、床板4と壁板7との隙間から室内空間への通気経路が確保され、空気ばねによる共振の影響が緩和されることが知られている。
【0016】
一方、
図1(B)の床勝ち納まりでは、断面がコの字形の金属部材であるランナー5に壁板7の下端が固定されるので、室内空間への通気経路はなく、容積が小さい壁懐の空間(躯体壁2と壁板7の隙間)への通気経路しか確保されていない。そのため、床先行二重床(床勝ち納まりの二重床)では、
図1(A)の壁勝ち納まりと比較して、床懐空気層の圧力を下げ共振現象を緩和する効果は小さかった。
なお、木質材のランナー15と間柱6を用いる場合も同様である。
【0017】
(第1実施形態)
図2は、本発明による床先行二重床の床懐空気抜き構造の第1実施形態図である。この図において、(A)は
図1と同様の側面図、(B)は(A)のB-B矢視図である。
【0018】
図2において、本発明の床先行二重床100は、床構造50と壁構造60を備える。
【0019】
床構造50は、床スラブ1、複数の支持脚3、及び床板4を有する。
床スラブ1は、例えばコンクリート製の躯体床や、木造床である。
複数の支持脚3は、床スラブ1の上に配置されている。
床板4は、複数の支持脚3に支持され、端面が躯体壁2に近接して位置し、水平に延びる。
【0020】
床板4は、この例では、支持脚3の上に形成された基材9と、基材9の上に形成された下地材10と、下地材10の上に形成された床仕上げ材11と、を有する。
基材9は、例えばパーティクルボード、構造用合板、等である。
下地材10は、例えば、パーティクルボード、構造用合板、石膏ボード、等である。なお、下地材10は、無くてもよく、或いは多層に構成してもよい。
床仕上げ材11は、例えば、フローリング床材、カーペット、等である。
【0021】
壁構造60は、複数の間柱6、壁板7、及び巾木8を有する。
複数の間柱6は、躯体壁2に近接して位置し、躯体壁2に沿って幅方向に間隔を隔てて位置し、床板4の端部に支持され鉛直に延びる。間柱6は、例えば金属製の長尺材である。
壁板7は、間柱6の室内側に固定され、鉛直に延びる。壁板7は、この例では下端が下地材10の上面より第1隙間Δ1を隔てて上方に位置するふかし壁である。第1隙間Δ1は、後述する第2隙間Δ2より大きく設定されている。
巾木8は、壁板7の室内側下端に固定され、水平に延び、下端が床板4の上面に近接して位置する。
【0022】
この例で、床仕上げ材11の端面が巾木8の真下に位置し、巾木8の下端が床仕上げ材11の上面より第2隙間Δ2を隔てて上方に位置する。第2隙間Δ2は、室内側から視認困難な大きさに設定されている。第2隙間Δ2は、例えば1~3mm(好ましくは2mm)である。
【0023】
図2において、本発明の床先行二重床100は、さらにランナー15と複数の支持部材17を有する。
ランナー15は、断面がコの字形の金属部材であり、凹部の開口を上に向けて間柱6の下端を把持するようになっている。この例で、ランナー15は、間柱6の下端を支持し躯体壁2に沿って水平に延びる。
なお、木質材のランナー15と間柱6を用いてもよい。
【0024】
なお、間柱6の上端を支持し躯体壁2に沿って水平に延びる別のランナー15を設けることが好ましい。この別のランナー15は、居室の天井、又は上階の床スラブに固定する。
【0025】
図2(B)において、複数の支持部材17は、ランナー15の下面と床板4の上面との間に挟持され、躯体壁2に沿って水平方向に第3間隔Δ3を隔てて位置する。
ランナー15は、支持部材17を間に挟んで基材9と下地材10にスクリュー釘等の固定手段により固定されている。
また、この例で、支持部材17の厚さbと第3間隔Δ3は、ランナー下の流路面積が第2隙間Δ2の流路面積より大きく設定されている。支持部材17は、例えば合板であるのがよい。
【0026】
図2(A)において、床板4(この例では、基材9と下地材10)の端面は、躯体壁2から第4隙間Δ4を隔てて位置する。また第4隙間Δ4は、第2隙間Δ2よりも大きく設定されている。
【0027】
上述した構成により、本発明の床先行二重床100は、第1通気経路R1と第2通気経路R2を備える。
第1通気経路R1は、第4隙間Δ4で構成され、床構造50の床懐と壁構造60の壁懐とを連通する。
第2通気経路R2は、ランナー下の流路面積、第1隙間Δ1、及び第2隙間Δ2で構成され、壁懐と室内空間とを連通する。
【0028】
上述した構成によれば、第2隙間Δ2が、室内側から視認困難な大きさ(例えば1~3mm)に設定され、床仕上げ材11の端面が巾木8の真下に位置し、巾木8の下端が床仕上げ材11の上面より第2隙間Δ2を隔てて上方に位置する。これにより、壁板7に開口を設ける場合と比較して、室内、特に壁板7の美観と強度を高めることができる。
【0029】
また、壁板7の下端と下地材10の上面との隙間(第1隙間Δ1)、支持部材17の厚さbによるランナー下の流路面積、及び第4隙間Δ4が第2隙間Δ2の流路面積よりも大きく設定されている。これにより、床懐で生じた圧力波を、壁懐、第1通気経路R1、及び第2通気経路R2を介して室内空間に伝搬させて短時間に減衰することができる。
【0030】
(第2実施形態)
図3は、本発明による床先行二重床の床懐空気抜き構造の第2実施形態図である。この図において、(A)は
図1と同様の側面図、(B)は(A)のB-B矢視図である。
【0031】
この例において、ランナー15の下面は、床板4(この例では下地材10)の上面に直接固定されている。また、ランナー15は、床板4の上面より上部に複数の開口15aを有する。複数の開口15aは、壁懐とランナー15の室内側を連通し、躯体壁2に沿って幅方向(
図3(B)の左右)に間隔を隔てて位置する。
開口15aは、この例ではランナー15の室内側(
図3(A)で右側)のみに設けられているが、壁側と室内側の両方に設けてもよい。
また、開口15aは、この例では丸孔であるが、楕円孔、矩形孔、スリット、等であってもよい。
なお、第1実施形態と異なり、第2実施形態では断面がコの字形の金属部材であるランナー15のみを用いるのがよい。
【0032】
また、壁板7の下端、すなわち第1隙間Δ1は、開口15aを完全には塞がない大きさに設定され、かつ開口15aの塞がれていない流路面積は、第2隙間Δ2の流路面積より大きく設定されている。
【0033】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0034】
上述した構成により、本発明の床先行二重床100は、第1通気経路R1と第2通気経路R2を備える。
第1通気経路R1は、第4隙間Δ4で構成され、床構造50の床懐と壁構造60の壁懐とを連通する。
第2通気経路R2は、複数の開口15a、第1隙間Δ1、及び第2隙間Δ2で構成され、壁懐と室内空間とを連通する。
【0035】
上述した構成によれば、第2隙間Δ2が、室内側から視認困難な大きさ(例えば2~5mm)に設定され、床仕上げ材11の端面が巾木8の真下に位置し、巾木8の下端が床仕上げ材11の上面より第2隙間Δ2を隔てて上方に位置する。これにより、壁板7に開口を設ける場合と比較して、室内、特に壁板7の美観と強度を高めることができる。
【0036】
また、壁板7の下端と下地材10の上面との隙間(第1隙間Δ1)、開口15aの塞がれていない流路面積、及び第4隙間Δ4が第2隙間Δ2の流路面積よりも大きく設定されている。これにより、床懐で生じた圧力波を、壁懐、第1通気経路R1、及び第2通気経路R2を介して室内空間に伝搬させて短時間に減衰することができる。
【実施例0037】
図4は、試験に供した建屋の部分平面図である。
この図において、符号a-b-c-d-e-f-g-hで示す範囲が本発明による床先行二重床の範囲である。また、住戸全体に対する部分的な再現試験体であることから、本来二重床が連続すべき符号f-g-hで示す範囲の床懐はボードで閉鎖した。
また、符号b-c-d-e-fの外側部分は躯体壁2であり、符号a0-a-b、符号a1-b1-c1-d1、及び符号e1-f1の範囲は間仕切壁である。
また、図中の□印と■印は支持脚3の位置である。
【0038】
重量床衝撃音レベル測定試験は、
図4に斜線で示す範囲で実施した。
またこの試験において、符号a-bの両矢印で示す範囲は、玄関土間に隣接する想定であることから、
図1(A)に示した空気抜きを有する壁勝ち納まりの間仕切壁とし、符号e-f1の両矢印で示す範囲を、本発明の第1実施形態の床先行二重床の床懐空気抜き構造とした。
【0039】
また、第1実施形態(
図2)の床先行二重床の床懐空気抜き構造において、第1隙間Δ1を12mm、厚さbを9mm、第2隙間Δ2を2mm、第4隙間Δ4を15mmに設定した。
【0040】
図5は、重量床衝撃音レベル測定試験の試験結果である。
この図において、横軸はオクターブバンド中心周波数(Hz)であり、縦軸は床衝撃音レベル(dB)である。
また、図中の細線の折れ線は、床衝撃音レベル等級が35~75までの等級曲線を示している。
【0041】
この試験では、第2隙間Δ2が2mmの場合(空気抜き:有)と、第2隙間をテープで閉鎖した場合(空気抜き:無)とを実施した。
図中の□印が「空気抜き:有」の試験結果であり、×印が「空気抜き:無」の試験結果である。
この試験結果から、本発明の第1実施形態の床先行二重床の床懐空気抜き構造を、
図4に斜線で示す範囲の一辺に設けることにより、重量床衝撃音遮断性能の決定周波数となる63Hz帯域で1dBの改善効果が得られることが確認された。
【0042】
上述した本発明の実施形態及び実施例によれば、床構造50の床板4(二重床)に床衝撃音が加わった場合に床懐で生じた圧力波が、壁懐、第1通気経路R1、及び第2通気経路R2を介して室内空間に抜けて減衰する。これにより、床先行二重床と壁構造の組み合わせにおいて重量床衝撃音の低減効果を従来よりも高めることができる。
【0043】
なお、本発明の範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。