(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106477
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】プリント回路板、およびそれを有する空気調和装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240801BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K1/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010744
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】福島 輝久
(72)【発明者】
【氏名】廣田 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 成重
(72)【発明者】
【氏名】岡本 修平
(72)【発明者】
【氏名】青木 祐浩
【テーマコード(参考)】
5E338
5H770
【Fターム(参考)】
5E338BB02
5E338BB13
5E338BB17
5E338BB75
5E338EE21
5H770AA07
5H770AA21
5H770BA05
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770PA22
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA22
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA33
5H770QA36
(57)【要約】
【課題】
基板上の重量部品の振動に起因する、実装部品のリード折れを防止する。
【解決手段】
プリント回路板100は、電気エネルギー又は誘導エネルギーを蓄積する重量部品である第1部品10と、複数のリード200を有するパワーデバイスである第2部品20と、第1部品10と第2部品20とが実装される基板30とを備えている。基板30では、第1部品10と第2部品20との間にスリット30aが設けられており、第2部品20のリードが半田付けされる。プリント回路板100では、重量のある第1部品10からの振動が第2部品20へ伝搬することがスリット30aによって抑制されるので、振動に起因するリード200の折れが防止される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー又は誘導エネルギーを蓄積する重量部品である第1部品(10)と、
複数のリード(200)を有するパワーデバイスである第2部品(20)と、
前記第1部品(10)と前記第2部品(20)とが実装され、前記第1部品(10)と前記第2部品(20)との間にスリット(30a,30b,30c)が設けられており、前記第2部品(20)の前記リード(200)が半田付けされる基板(30)と、
を備える、
プリント回路板(100)。
【請求項2】
前記複数のリード(200)は、前記第1部品(10)に最も近い第1リード(201)を含み、
前記スリット(30a,30b,30c)は、前記第1部品(10)と前記第1リード(201)との間に設けられている、
請求項1に記載のプリント回路板(100)。
【請求項3】
前記基板(30)に垂直な方向の振動が加えられたとき、前記第1部品(10)による前記第1リード(201)への応力は、他の部品への応力に比べて大きい、
請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項4】
複数の前記第1部品(10)が前記基板(30)に実装され、
複数の前記第1部品(10)は、前記基板(30)に垂直な方向の振動が加えられたときの前記リード(200)への応力が最も大きい第1重量部品を含み、
前記スリット(30a,30b,30c)は、前記第1重量部品と前記第2部品(20)との間に設けられている、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項5】
前記第1部品(10)は、電解コンデンサ、リアクトルおよびコイルのいずれかである、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項6】
前記第2部品(20)は、インテリジェント・パワー・モジュール、アクティブ・フィルタ・モジュール、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、MOSFET、ダイオード、サイリスタおよびトライアックのいずれかである、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項7】
前記第1部品(20)は、前記基板(30)の中央部に実装されている、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項8】
前記スリット(30a,30b,30c)は、前記基板(30)を貫通している、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項9】
前記スリット(30a,30b,30c)の幅は、1.0~4.0mmの範囲内である、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項10】
前記基板(30)は、連結部材(40)と前記第2部品(20)とを介して対象物(70)に固定されている、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)を有する、
空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プリント回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に実装された部品に衝撃や振動が加わったときの、基板への影響をやわらげる目的で部品の周囲にスリットが設けられる場合がある。例えば、特許文献1(実開平4-107875号公報)に記載のプリント基板では、重量部品であるトランスの取り付け部の周りを囲むように不連続なスリットが設けられ、クラックの拡大が防止されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板に振動が繰り返し作用すると、重量部品の振動が当該重量部品から離れている部品にまで伝搬してその部品のリードが折れることがある。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、重量部品による振動が、実装部品のリード折れを招来することに対して何ら対応がなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点のプリント回路板は、第1部品と、第2部品と、基板とを備えている。第1部品は、電気エネルギー又は誘導エネルギーを蓄積する重量部品である。第2部品は、複数のリードを有するパワーデバイスである。基板は、第1部品と第2部品とが実装され、第1部品と第2部品との間にスリットが設けられており、第2部品のリードが半田付けされる。
【0006】
このプリント回路板では、重量のある第1部品からの振動が第2部品へ伝搬することがスリットによって抑制されるので、振動に起因するリード折れが防止される。
【0007】
第2観点のプリント回路板は、第1観点のプリント回路板であって、複数のリードが、第1部品に最も近い第1リードを含む。スリットは、第1部品と第1リードとの間に設けられている。
【0008】
このプリント回路板では、重量のある第1部品からの振動が第2部品へ伝搬することが、スリットによって抑制されるので、第1部品に最も近い第1リードの折れが防止される。
【0009】
第3観点のプリント回路板は、第2観点のプリント回路板であって、基板に垂直な方向の振動が加えられたとき、第1部品による第1リードへの応力は、他の部品への応力に比べて大きい。
【0010】
第4観点のプリント回路板は、第1観点から第3観点のいずれか1つのプリント回路板であって、複数の第1部品が基板に実装されている。複数の第1部品は、第1重量部品を含む。第1重量部品は、基板に垂直な方向の振動が加えられたときのリードへの応力が最も大きい重量部品である。スリットは、第1重量部品と第2部品との間に設けられている。
【0011】
第5観点のプリント回路板は、第1観点から第4観点のいずれか1つのプリント回路板であって、第1部品が、電解コンデンサ、リアクトルおよびコイルのいずれかである。
【0012】
第6観点のプリント回路板は、第1観点から第5観点のいずれか1つのプリント回路板であって、第2部品が、インテリジェント・パワー・モジュール、アクティブ・フィルタ・モジュール、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、MOSFET、ダイオード、サイリスタおよびトライアックのいずれかである。
【0013】
第7観点のプリント回路板は、第1観点から第6観点のいずれか1つのプリント回路板であって、第1部品が基板の中央部に実装されている。
【0014】
このプリント回路板では、第1部品が基板の中央部にあることで、振動によって基板がひずみ易いので、基板にスリットを入れる効果が高い。
【0015】
第8観点のプリント回路板は、第1観点から第7観点のいずれか1つのプリント回路板であって、スリットが基板を貫通している。
【0016】
第9観点のプリント回路板は、第1観点から第8観点のいずれか1つのプリント回路板であって、スリットの幅が1.0~4.0mmの範囲内である。
【0017】
このプリント回路板では、スリットの加工性、振動伝搬の防止の両方を満足することができる。
【0018】
第10観点のプリント回路板は、第1観点から第9観点のいずれか1つのプリント回路板であって、基板が連結部材と第2部品とを介して対象物に固定されている。
【0019】
このプリント回路板では、第2部品のリードも連結部材として機能しているので、実装されている他の部品に比べて振動による繰り返し疲労を受けやすい。それゆえ、第1部品と第2部品との間にスリットを設けることによって振動伝搬を遮断し、リードを繰り返し疲労から保護する。
【0020】
第11観点の空気調和装置は、第1観点から第10観点のいずれか1つのプリント回路板を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示に係るプリント回路板を有する空気調和装置の斜視図である。
【
図2】本開示に係るプリント回路板に構成されている電力変換回路の回路図である。
【
図3】電装品箱の内部をプリント回路板の第1面が正面となる方向から視たときの当該電装品箱の内部斜視図である。
【
図4】
図3に記載のプリント回路板を第1面が正面となる方向から視たときの当該プリント回路板の外観図である。
【
図5】
図3に記載のプリント回路板を第2面が正面となる方向から視たときの当該プリント回路板の外観図である。
【
図6】
図3のプリント回路板を収納した電装品箱の断面の模式図である。
【
図7】
図5のスリットの形状を変形したプリント回路板を第2面が正面となる方向から視たときの当該プリント回路板の外観図である。
【
図8】
図7のスリットの個数を変更したプリント回路板を第2面が正面となる方向から視たときの当該プリント回路板の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)プリント回路板100の構成
図1は、本開示に係るプリント回路板100を有する空気調和装置1の斜視図である。
図1において、空気調和装置1は、室内機4と室外機5とを備えている。室内機4と室外機5とは、冷媒連絡管6によって接続されている。
【0023】
室内機4と室外機5と冷媒連絡管6とは冷媒回路を構成している。冷媒回路では、例えば、冷房運転、暖房運転及び除湿運転の際に、蒸気圧縮式冷凍サイクルが繰り返される。
【0024】
室内機4は、屋内の壁に取り付けられるが、それに限られるものではなく、天井または床に設置されるものであってもよい。
【0025】
室外機5は、屋外に設置され、室内機4に熱エネルギーを供給する熱源ユニットとして機能する。
【0026】
室内機4および室外機5には、電装品箱が搭載されており、電装品箱にはプリント回路板が収容されている。ここでは、室外機5のプリント回路板100を例として説明する。
【0027】
図2は、本開示に係るプリント回路板100に構成されている電力変換回路110の回路図である。
【0028】
図2において、電力変換回路110は、交流電力を直流電力に整流し、その直流電力を所定の周波数の交流電力へ変換して、モータMに供給する。モータMは、例えば、空気調和装置1の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動する。
【0029】
(1-1)整流用ダイオード・モジュール20a
整流用ダイオード・モジュール20aは、4つのダイオードD1a,D1b,D2a,D2bによってブリッジ回路を構成している。具体的には、ダイオードD1aとD1b、D2aとD2bは、それぞれ互いに直列に接続されている。
【0030】
ダイオードD1aおよびダイオードD1bの接続点は、交流電源ACの一つの極に接続されている。ダイオードD2aおよびダイオードD2bの接続点は、交流電源ACの他の極に接続されている。
【0031】
整流用ダイオード・モジュール20aは、交流電源ACから出力される交流電力を整流して直流電力を生成し、これを第1~第3電解コンデンサ10a~10cへ供給する。
【0032】
(1-2)第1~第3電解コンデンサ10a~10c
第1~第3電解コンデンサ10a~10cは、整流用ダイオード・モジュール20aによって整流された電圧を平滑する。
【0033】
第2電解コンデンサ10bと第3電解コンデンサ10cとは直列に接続され、平滑および倍電圧の出力を行い、整流用ダイオード・モジュール20aのダイオードブリッジ整流回路とともに倍電圧整流回路を構成している。
【0034】
第1~第3電解コンデンサ10a~10cによる平滑後の電圧は、インテリジェント・パワー・モジュール20bへ供給される。
【0035】
(1-3)リアクトル10d
リアクトル10dは、
図2に示すように、交流電源線に設けられ、その一端が交流電源ACの入力側(コイル10e)に接続され、他端が整流用ダイオード・モジュール20aのダイオードブリッジ整流回路に接続されている。リアクトル10dの機能は、力率改善および高調波抑制である。
【0036】
(1-4)コイル10e
コイル10eは、交流電源ACとリアクトル10dとの間に接続されている。コイル10eは、コモンモードノイズを除去するコモンモードチョークコイルである。
【0037】
(1-5)インテリジェント・パワー・モジュール20b
インテリジェント・パワー・モジュール20bは、スイッチング回路25および制御回路26が内蔵され、1つのパッケージになっている。以後、インテリジェント・パワー・モジュール20bを「IPM20b」という。
【0038】
(1-5-1)スイッチング回路25
スイッチング回路25は、モータMのU相、V相およびW相の駆動コイルLu,Lv,Lwそれぞれに対応する3つの上下アームが互いに並列に、第1電解コンデンサ10aの出力側に接続されている。
【0039】
図2において、スイッチング回路25は、複数のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、以下、単にトランジスタという。)Q3a,Q3b,Q4a,Q4b,Q5a,Q5bおよび複数の還流用のダイオードD3a,D3b,D4a,D4b,D5a,D5bを含む。
【0040】
トランジスタQ3aとQ3b、Q4aとQ4b、Q5aとQ5bは、それぞれ互いに直列に接続されることによって各上下アームを構成しており、それによって形成された接続点NU,NV,NWそれぞれから対応する相の駆動コイルLu,Lv,Lwに向かって出力線が延びている。
【0041】
各ダイオードD3a~D5bは、各トランジスタQ3a~Q5bに、トランジスタのコレクタ端子とダイオードのカソード端子が接続され、トランジスタのエミッタ端子とダイオードのアノード端子が接続されるよう、並列接続されている。
【0042】
スイッチング回路25は、直流電圧が印加され、かつ制御回路26により指示されたタイミングで各トランジスタQ3a~Q5bがオンおよびオフを行うことによって、モータMを駆動する駆動電圧を生成する。この駆動電圧は、各トランジスタQ3aとQ3b、Q4aとQ4b、Q5aとQ5bの各接続点NU,NV,NWからモータMの駆動コイルLu,Lv,Lwに出力される。
【0043】
(1-5-2)制御回路26
制御回路26は、インバータマイコン35からの指令電圧に基づき、スイッチング回路25の各トランジスタQ3a~Q5bのオンおよびオフの状態を変化させる。
【0044】
具体的には、制御回路26は、任意のデューティ比を有するパルス状の駆動電圧がスイッチング回路25からモータMに出力されるように、ゲート制御電圧Gu,Gx,Gv,Gy,Gw,Gzを生成する。デューティ比は、インバータマイコン35によって決定される。
【0045】
生成されたゲート制御電圧Gu,Gx,Gv,Gy,Gw,Gzは、それぞれのトランジスタQ3a~Q5bのゲート端子に印加される。
【0046】
(1-6)インバータマイコン35
インバータマイコン35は、電圧検出部32、電流検出部33、および制御回路26と接続されている。また、インバータマイコン35は、電圧検出部32の検出値を監視し、電圧検出部32の検出値が所定の閾値を超えたとき、トランジスタQ3a~Q5bをオフにする保護制御も行っている。
【0047】
(2)プリント回路板100上の部品配置
図3は、電装品箱70の内部をプリント回路板100の第1面301が正面となる方向から視たときの当該電装品箱70の内部斜視図である。
【0048】
また、
図4は
図3に記載のプリント回路板100を第1面301が正面となる方向から視たときの当該プリント回路板100の外観図である。
【0049】
図3および
図4において、基板30は、プリント配線板である。基板30は、オモテ面に部品の実装面としての第1面301を有している。また、基板30は、ウラ面に部品の実装面としての第2面302を有している。
【0050】
(2-1)第1面301に実装される第1部品10
図4において、基板30の第1面301には、第1部品10として、第1~第3電解コンデンサ10a~10c、およびコイル10eが実装されている。
【0051】
ここでは、基板30のほぼ中央に位置する第1電解コンデンサ10aから左回りに第2電解コンデンサ10b、第3電解コンデンサ10cが並んでいる。
【0052】
第1~第3電解コンデンサ10a~10cは、端子間に電圧がかかることによって電気エネルギーを蓄える。コイル10eは、電流が流れることによって誘導エネルギーを蓄える。
【0053】
第1~第3電解コンデンサ10a~10cおよびコイル10eの単体の重量は、基板30の第1面301に実装される他の部品に比べて大きく、一般に、重量部品として知られている。
【0054】
それゆえ、第1部品10は、電気エネルギー、又は誘導エネルギーを蓄積する重量部品と定義される。また、電解コンデンサ、コイルの他に、リアクトルおよび変圧器も第1部品10に該当する。
図2の回路図で記載したリアクトル10dは基板30上にはないので
図4には記載していないが、誘導エネルギーを蓄積する重量部品である。
【0055】
(2-2)第2面302に実装される第2部品20
図5は、
図3に記載のプリント回路板100を第2面302が正面となる方向から視たときの当該プリント回路板100の外観図である。
【0056】
図5において、2点鎖線で描かれた3つの円は、第1面301に実装されている第1~第3電解コンデンサ10a~10cの位置を示している。また。2点鎖線で描かれた四角枠は、第1面301に実装されているコイル10eの位置を示している。
【0057】
基板30の第2面302には、第2部品20として、整流用ダイオード・モジュール20aおよびIPM20bが実装されている。
【0058】
整流用ダイオード・モジュール20aおよびIPM20bは、複数のリードを有している。例えば、IPM20bは、
図5に示すようにパッケージ部150と、パッケージ部150から突出する複数のリード200を有している。
【0059】
整流用ダイオード・モジュール20aおよびIPM20bは、電力供給に用いられる半導体素子であり、一般に、パワーデバイスとして知られている。
【0060】
それゆえ、第2部品20は、複数のリードを有するパワーデバイスと定義される。また、整流用ダイオード・モジュール、IPMの他に、アクティブ・フィルタ・モジュール、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、サイリスタおよびトライアックも第2部品20に該当する。
【0061】
図4および
図5に示すように、基板30では、スリット30aが第1~第3電解コンデンサ10a~10cとIPM20bとの間に設けられている。スリット30aの機能については、後の「(4)スリットの機能」の節で説明する。
【0062】
(3)プリント回路板100の電装品箱70への固定
図6は、
図3のプリント回路板100を収納した電装品箱70の断面の模式図である。
図6において、第1部品10は第1電解コンデンサ10aに該当し、第2部品20はIPM20bに該当する。
【0063】
図6に示すように、プリント回路板100は、第2面302を電装品箱70の壁60に向け、第2面302を壁60の壁面から所定距離だけ離して固定されている。所定距離は、第2面302に実装された部品および第1面301から第2面302を貫通して突出する金属部材が壁60と干渉しないように設定されている。
【0064】
(3-1)連結部材40
プリント回路板100と電装品箱70の壁60との距離を当該所定距離に維持するために、プリント回路板100の隅に連結部材40が取り付けられている。連結部材40は、樹脂製である。連結部材40は、棒状であり、頭部401、胴部402、位置決め部403、抜け防止部404、および溝部405を有している。
【0065】
連結部材40は、電装品箱70の壁60の外側から内側に向かって、頭部401が壁60の外面に当たるまで打ち込まれている。位置決め部403は、胴部402の外周から径方向に突出している。
【0066】
抜け防止部404は略円錐上であり、胴部402の端部に位置している。溝部405は、抜け防止部404の先端から位置決め部403に向かって形成されている。位置決め部403と抜け防止部404との間隔は、基板30の板厚より僅かに大きい程度である。
【0067】
プリント回路板100の4隅には、連結部材40の抜け防止部404を挿入させるための保持孔310が予め設けられている。
【0068】
保持孔310が抜け防止部404の先端と重なるように置かれ、プリント回路板100が位置決め部403に向けて押し込まれる。このとき、抜け防止部404の先端が溝部405の幅を狭める方向にたわみ、保持孔310の周囲が位置決め部403と抜け防止部404との間に収まる。その結果、プリント回路板100が電装品箱70に固定される。
【0069】
(3-2)ヒートシンク50
但し、プリント回路板100の4隅がすべて連結部材40を介して電装品箱70に固定されているのではない。
【0070】
IPM20bのような第2部品20は、他の実装部品に比べて発熱量が大きいので、
図6に示すように、第2面302と対向しない面に、放熱用のヒートシンク50がビス90によって取り付けられている。
【0071】
また、第2部品20は、他の実装部品よりも第2面302の隅に近い位置にあるので、ヒートシンク50付の第2部品20は、電装品箱70に対する基板30の位置決め用かつ連結用の部材として利用される。
【0072】
第2部品20に取り付けられたヒートシンク50は、電装品箱70を貫通した状態で電装品箱70に固定される。但し、ヒートシンク50は、直に電装品箱70に固定されるのではなく、ヒートシンク50と電装品箱70との間に絶縁体56を挟んでいる。
【0073】
絶縁体56は、樹脂製である。電装品箱70の壁60には、絶縁体56を挿入させる孔70aが設けられている。絶縁体56は、孔70aの縁を孔70aの内側から覆うように環状に成形されている。
【0074】
環状の絶縁体56は、ヒートシンク50を挿入させる孔56aが設けられている。ヒートシンク50は、孔56aを貫通して電装品箱70の外側に露出する。ヒートシンク50と絶縁体56とは、ビス90によって締結されている。
【0075】
上記のように、第2部品20およびヒートシンク50が、プリント回路板100を電装品箱70に固定する連結用の部材として機能する。
【0076】
(4)スリットの機能
上述の通り、第2部品20としてのIPM20bでは、リード200が基板30に半田付けされ、パッケージ部150がヒートシンク50を介して電装品箱70に固定されている。それゆえ、IPM20bは、基板30および電装品箱70の両方に対して変位し難い。
【0077】
例えば、基板30に垂直な方向(板厚方向)に振動が加えられ、重量部品である第1部品10が振動したとき、その振動は基板30上の他の実装部品に伝搬する。
【0078】
IPM20bは、基板30および電装品箱70の両方に対して変位がし難いので、他の実装部品に比べて大きい応力が繰り返し作用する。特に、リード200は、パッケージ部150よりも強度が弱いので折れる可能性がある。
【0079】
そこで、本実施形態では、
図4~
図6に示すように、基板30の第1部品10と第2部品20との間にスリット30aを設けている。スリット30aは、重量のある第1部品10からの振動が第2部品20へ伝搬することを抑制するので、振動に起因するリード200の折れが防止される。
【0080】
具体的には、
図5に示すように、IPM20aの複数のリード200のうち、第1部品10である第1~第3電解コンデンサ10a~10cに最も近いリードを第1リード201としたとき、第1リード201と第1~第3電解コンデンサ10a~10cとの間にスリット30aが設けられている。
【0081】
スリット30aの幅は、加工性、振動伝搬の防止の両方を考慮すれば、1.0mm~4.0mmの範囲内が望ましい。
【0082】
また、スリット30aは、基板30を貫通していることが好ましく、この場合、第1部品10からの振動伝搬が貫通したスリット30aによって遮断され、第2部品20まで伝搬することが抑制される。
【0083】
(4-1)スリットの長さについて
スリットは、必ずしも全ての第1部品(第1~第3電解コンデンサ10a~10c、およびコイル10e)と第2部品20との間を網羅するような長さにする必要はない。
【0084】
図7は、
図5のスリットの長さを変更したプリント回路板100の第2面302の外観図である。
【0085】
図7において、基板30の中央部に位置する第1電解コンデンサ10aと、第1電解コンデンサ10aに最も近いリードである第1リード201との間にスリット30bが設けられている。それゆえ、スリット30bは、
図5に記載のスリット30aに比べて長さが短く、第1電解コンデンサ10aからの振動伝搬のみを抑制する長さに設定されている。
【0086】
出願人の実験によれば、スリット30bによって、
図5に記載のスリット30aと同等の効果が得られる、という結果が得られている。第1部品10のうち基板30の中央部にある第1部品(第1電解コンデンサ10a)の振動振幅が最も大きいので、第1電解コンデンサ10aからの振動伝搬を抑制したことが最大の効果を発揮したと考えられる。スリットの長さは、15~30mmが望ましい。
【0087】
(4-2)スリットの個数と位置
図8は、
図7のスリットの個数を変更したプリント回路板100の第2面302の外観図である。
【0088】
図8において、IPM20bから最も離れた第1部品10であるコイル10eと、IPM20bの第1リード201との間で、且つコイル10eの近傍にスリット30cが追加されている。
【0089】
出願人の実験によれば、振動振幅が最大となる基板30の中央部に位置する第1電解コンデンサ10aよりも、IPM20bから最も離れたコイル10eからの振動伝搬が大きくなる場合があることが、わかっている。
【0090】
これは、コイル10eと第1~第3電解コンデンサ10a~10cとの重量バランスが影響しているものと推定される。かかる場合、スリット30cを振動源であるコイル10eに近接するように設けることによって、コイル10eからの振動伝搬を効果的に抑制することができる。
【0091】
(5)特徴
(5-1)
プリント回路板100は、電気エネルギー又は誘導エネルギーを蓄積する重量部品である第1部品10と、複数のリード200を有するパワーデバイスである第2部品20と、第1部品10と第2部品20とが実装される基板30とを備えている。基板30では、第1部品10と第2部品20との間にスリット(30a,30b,30c)が設けられており、第2部品20のリード200が半田付けされている。プリント回路板100では、重量のある第1部品10からの振動が第2部品20へ伝搬することがスリット(30a,30b,30c)によって抑制されるので、振動に起因するリード200の折れを防止することができる。
【0092】
(5-2)
第2部品20の複数のリード200のうち第1部品10に最も近い第1リード201と第1部品10との間に、スリット(30a,30b,30c)が設けられている。
【0093】
(5-3)
基板30に垂直な方向の振動が加えられたとき、第1部品10による第1リード201への応力は、他の部品への応力に比べて大きい。
【0094】
(5-4)
複数の第1部品10のうち基板30に垂直な方向の振動が加えられたときのリード200への応力が最も大きい第1部品10と第2部品20との間に、スリット(30a,30b,30c)が設けられている。
【0095】
(5-5)
第1部品10が、電解コンデンサ、リアクトルおよびコイルのいずれかである。
【0096】
(5-6)
第2部品20が、インテリジェント・パワー・モジュール、アクティブ・フィルタ・モジュール、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、サイリスタおよびトライアックのいずれかである。
【0097】
(5-7)
プリント回路板100では、第1部品10が基板30の中央にあることで、振動によって基板30がひずみ易いので、基板30にスリット(30a,30b)を入れる効果が高い。
【0098】
(5-8)
スリット30a,30b,30cは、基板30を貫通している。
【0099】
(5-9)
スリット30a,30b,30cの幅は、1.0~4.0mmの範囲内であれば、加工性、振動伝搬の防止の両方を満足することができる。
【0100】
(5-10)
基板30は、連結部材40と第2部品20とを介して対象物に固定されている。第2部品20のリード200も連結部材として機能しているので、実装されている他の部品に比べて第2部品20は振動による繰り返し疲労を受けやすい。それゆえ、第1部品10と第2部品20との間にスリット(30a,30b,30c)を設けることによって振動伝搬を遮断し、リード200を繰り返し疲労から保護することができる。
【0101】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示に係るスリットは、室外機に搭載されたプリント回路板に限らず、空気調和装置の室内機に搭載されたプリント回路板、空気調和装置以外の冷凍装置に搭載されたプリント回路板、および電気機器に搭載されたプリント回路板にも適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 空気調和装置
10 第1部品
10a 第1電解コンデンサ(第1部品)
10b 第2電解コンデンサ(第1部品)
10c 第3電解コンデンサ(第1部品)
10d リアクトル(第1部品)
10e コイル10e(第1部品)
20 第2部品
20a 整流用ダイオード・モジュール(第2部品)
20b インテリジェント・パワー・モジュール(IPM;第2部品)
30 基板
30a スリット
30b スリット
30c スリット
40 連結部材
70 電装品箱(対象物)
100 プリント回路板
200 リード
201 第1リード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー又は誘導エネルギーを蓄積する重量部品である第1部品(10)と、
複数のリード(200)を有するパワーデバイスである第2部品(20)と、
前記第1部品(10)と前記第2部品(20)とが実装され、前記第1部品(10)と前記第2部品(20)との間にスリット(30a,30b,30c)が設けられており、前記第2部品(20)の前記リード(200)が半田付けされる基板(30)と、
を備え、
前記第1部品(10)が前記基板(30)の表裏の一方の第1面(301)に実装され、前記第2部品(20)が前記基板(30)の表裏の他方の第2面(302)に実装され、
前記基板(30)は、前記第2面(302)側が対象物(70)に固定されている、
プリント回路板(100)。
【請求項2】
前記複数のリード(200)は、前記第1部品(10)に最も近い第1リード(201)を含み、
前記スリット(30a,30b,30c)は、前記第1部品(10)と前記第1リード(201)との間に設けられている、
請求項1に記載のプリント回路板(100)。
【請求項3】
前記基板(30)に垂直な方向の振動が加えられたとき、前記第1部品(10)による前記第1リード(201)への応力は、他の部品への応力に比べて大きい、
請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項4】
複数の前記第1部品(10)が前記基板(30)に実装され、
複数の前記第1部品(10)は、前記基板(30)に垂直な方向の振動が加えられたときの前記リード(200)への応力が最も大きい第1重量部品を含み、
前記スリット(30a,30b,30c)は、前記第1重量部品と前記第2部品(20)との間に設けられている、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項5】
前記第1部品(10)は、電解コンデンサ、リアクトルおよびコイルのいずれかである、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項6】
前記第2部品(20)は、インテリジェント・パワー・モジュール、アクティブ・フィルタ・モジュール、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、MOSFET、ダイオード、サイリスタおよびトライアックのいずれかである、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項7】
前記第1部品(10)は、前記基板(30)の中央部に実装されている、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項8】
前記スリット(30a,30b,30c)は、前記基板(30)を貫通している、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項9】
前記スリット(30a,30b,30c)の幅は、1.0~4.0mmの範囲内である、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項10】
前記基板(30)は、連結部材(40)と前記第2部品(20)とを介して前記対象物(70)に固定されている、
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のプリント回路板(100)を有する、
空気調和装置(1)。