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特開2024-106480ポリカーボネート樹脂およびそれからなる成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106480
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂およびそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/04 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
C08G64/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010748
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】益子 竜司
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AD01
4J029AD07
4J029AD10
4J029AE01
4J029AE03
4J029BB04A
4J029BB05A
4J029BB10A
4J029BB10B
4J029BB12A
4J029BB12B
4J029BB13A
4J029BB13B
4J029BD02
4J029BD03A
4J029BD03C
4J029BD06A
4J029BD06C
4J029BD07A
4J029BD09A
4J029BD09B
4J029BD10
4J029BE04
4J029BF13
4J029BF30
4J029BG06X
4J029BH02
4J029CA02
4J029DB07
4J029DB11
4J029DB13
4J029DB15
4J029FC32
4J029FC33
4J029HC04A
4J029HC05A
4J029JA091
4J029JC231
4J029JF031
4J029JF041
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KE11
(57)【要約】
【課題】高い表面硬度を有し、かつ耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂およびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(1)中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(1)中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される繰り返し単位(A)が2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される繰り返し単位である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
全繰り返し単位中、繰り返し単位(A)の含有量が10~100モル%の範囲である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
ガラス転移温度が100~250℃である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
JIS K5600に準拠して、測定された鉛筆硬度が3H以上である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を射出成形してなる成形品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を押出成形してなるシートまたはフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い表面硬度を有し、耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂およびそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性に優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子機器の筐体、自動車内装・外装部品、建材、家具、楽器、雑貨類などの幅広い分野で使用されている。さらに、無機ガラスと比較し、比重が低く軽量化が可能であり、生産性に優れているため、自動車等の窓用途に使用されている。
【0003】
さらに、ポリカーボネート樹脂を用いたシートやフィルムは、コーティング処理、積層体、表面修飾等の付加的な二次加工を施すことにより、自動車内装の各種表示装置、保護用部品として広く使用されている。
【0004】
しかしながら、コーティング処理を施していないポリカーボネート樹脂は、JIS K5600-5-4に記載の塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して測定したポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は2B程度に過ぎず、塗装レス材料として、表面に傷が付きやすいことが課題といえる。
【0005】
そこで、表面硬度の高い共重合ポリカーボネート樹脂(例えば、特許文献1)を用いることが知られている。また、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを構成単位とするポリカーボネートやコポリカーボネートとする方法が記載されている。(例えば、特許文献2~6)該ポリカーボネート樹脂は、表面硬度は向上するが、ポリカーボネート樹脂と比べて耐熱性が劣ることが課題である。
【0006】
さらに、特許文献7には4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを構成単位とするポリカーボネート樹脂が写真感光体用バインダー樹脂として耐摩耗性に優れるという旨が記載されている。鉛筆硬度は2H程度に向上するが、耐熱性はポリカーボネート樹脂に比べて劣ることが課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5173803号公報
【特許文献2】特開昭64-069625号公報
【特許文献3】特開平08-183852号公報
【特許文献4】特開平08-034846号公報
【特許文献5】特開2002-117580号公報
【特許文献6】特許第3768903号公報
【特許文献7】特開2012-51983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、表面硬度を有し、かつ耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂が要求されている。
そこで、本発明は、高い表面硬度を有し、かつ耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂およびそれらからなる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはこの目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂が前記課題を解決できることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は以下1~7項のとおりである。
【0010】
1.下記式(1)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(1)中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)
【0011】
2.前記式(1)で表される繰り返し単位(A)が2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される繰り返し単位である前項1に記載のポリカーボネート樹脂。
3.全繰り返し単位中、繰り返し単位(A)の含有量が10~100モル%の範囲である前項1または2に記載のポリカーボネート樹脂。
4.ガラス転移温度が100~250℃である前項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
5.JIS K5600に準拠して、測定された鉛筆硬度が3H以上である前項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
6.前項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を射出成形してなる成形品。
7.前項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を押出成形してなるシートまたはフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂およびそれらからなる成形品は、表面硬度および耐熱性に優れているため、特に自動車内装部品に好適に用いられる。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は下記式(1)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂である。
【0014】
【化2】
(式(1)中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)
【0015】
ポリカーボネート樹脂における全繰り返し単位中上記式(1)で表される繰り返し単位(A)の含有量(モル分率)は好ましくは10~100モル%であり、より好ましくは20~100モル%であり、さらに好ましくは30~100モル%である。下限未満であると鉛筆硬度が低くなる場合がある。
【0016】
かかる繰り返し単位(A)の割合は、ホモポリカーボネート樹脂やポリカーボネート共重合体であっても、異なる組成割合のポリカーボネート樹脂同士の混合(ポリカーボネートブレンド物)により達成されていてもよい。
さらに、繰り返し単位(A)以外の繰り返し単位(B)を誘導する化合物として、後述する他のジヒドロキシ化合物やジオール化合物が使用できる。
【0017】
繰り返し単位(B)の含有量(モル分率)は90モル%以下が好ましく、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
【0018】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明におけるポリカーボネート樹脂に使用される原料モノマーは下記式(2)で表される二価フェノール化合物を含む。
【0019】
【化3】
(式(2)中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してハロゲン原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)
【0020】
上記式(2)で表される二価フェノールとしては、例えば2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(HMBPと省略することがある)が好適である。
【0021】
本発明におけるポリカーボネート樹脂に使用される原料モノマーは上記式(2)で表されるモノマーを含み、さらに上記式(2)で表されるモノマー以外の下記式(3)で表されるモノマーを含んでもよい。
【0022】
【化4】
(式(3)中、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~9の芳香族基を含んでもよいアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基または炭素原子数1~6のアルコキシ基を表し、Xは単結合または下記式(4)からなる群より選択される少なくとも1種の基である。)
【0023】
【化5】
(式(4)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基および炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合にはそれらは同一でも異なっていても良く、aは1~10の整数、bは4~7の整数である。)
【0024】
上記式(4)で表される二価フェノールとしては、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-プロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブチルフェニル)プロパン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フェニルメタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-テトラメチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-テトラクロロフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-テトラブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’-ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルベンゾフェノン、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェニルジオール、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジオール、α、α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α、α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
【0025】
これらのなかでも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたはα、α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼンが好適であり、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPAと省略することがある)または2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPCと省略することがある)がさらに好適である。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の特性を損なわない程度に、さらに他のジヒドロキシ化合物やジオール化合物を共重合してもよい。
【0027】
他のジヒドロキシ化合物として、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルネン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン;1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-9-アントロン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2,3-ジオキサペンタエンビスフェノキシエタノールフルオレン等が挙げられる。
【0028】
他のジオール化合物として、イソソルビド:1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、テトラメチルシクロブタンジオール(TMCBD)、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、混合異性体、シス/トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シス/トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シクロヘクス-1,4-イルエンジメタノール、トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(tCHDM)、トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(cCHDM)、シス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-4,4’-ジオール、スピログリコール、ジシクロヘキシル-4,4’-ジオール、4,4’-ジヒドロキシビシクロヘキシルおよびポリ(エチレングリコール)等が挙げられる。
【0029】
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、前記二価フェノール化合物とカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。
【0030】
ポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を共重合することもできる。
【0031】
ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネートとすることもできる。
【0032】
分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価フェノール成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0033】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0034】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0035】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0036】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
【0037】
(その他の成分)
本発明におけるポリカーボネート樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有させて樹脂組成物としてもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配することができる。
【0038】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。ステアリルステアレートが好ましい。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートがより好ましい。
【0039】
離型剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.05~0.5重量部の範囲が好ましく、0.1~0.4重量部の範囲がより好ましく、0.12~0.3重量部の範囲がさらに好ましい。
【0040】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3-(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、[1,1ービフェニル]-4,4ージイルビス[ビス(2,4ージーtertーブチルフェノキシ)ホスフィン]、3,9ービス(2,6ージーtertーブチルー4ーメチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3-(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、3,9ービス(2,6ージーtertーブチルー4ーメチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンがより好ましい。
【0041】
熱安定剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.001~0.5重量部の範囲が好ましく、0.005~0.4重量部の範囲がより好ましく、0.01~0.3重量部の範囲がさらに好ましい。
【0042】
(粘度平均分子量)
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは6,000~300,000、より好ましくは7,000~28,000、さらに好ましくは8,000~25,000である。上述の範囲内であると、耐屈曲性、生産性、加工性に優れ好ましい。
【0043】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0044】
(ガラス転移温度:Tg)
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100~250℃の範囲であり、より好ましくは110~230℃の範囲であり、さらに好ましくは120~210℃の範囲であり、特に好ましくは130~200℃の範囲である。Tgが上記範囲内であると、耐熱性および成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0045】
(鉛筆硬度)
ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は、好ましくは3H以上であり、より好ましくは4H以上である。鉛筆硬度とは、本発明のポリカーボネート樹脂を特定の鉛筆硬度を有する鉛筆で樹脂を擦過した場合に擦過しても擦過痕が残らない硬さのことであり、JIS K-5600に従って測定できる塗膜の表面硬度試験に用いる鉛筆硬度を指標とすることが好ましい。鉛筆硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bの順で柔らかくなり、最も硬いものが9H、最も軟らかいものが6Bである。
【0046】
(成形方法および成形品)
本発明におけるポリカーボネート樹脂の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶液キャスト法等、一般のポリカーボネート樹脂の成形法を採用することができる。特に射出成形により成形品を成形する方法や押出成形によりシートまたはフィルムを成形する方法が好ましく採用される。
【0047】
本発明のポリカーボネート樹脂は、表面硬度(耐傷付き性)、透明性および耐熱性に優れているので種々の成形品として利用することができる。殊に耐傷付き性に優れるためコーティング処理を必要とせず、室内照明用ランプレンズ、表示用メーターカバー、メーター文字板、各種スイッチカバー、ディスプレイカバー、ヒートコントロールパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、センターパネル、ルームランプレンズ、ヘッドアップディスプレイ等の各種表示装置、保護部品、透光部品などの自動車内装部品に好適に利用できる。
【実施例0048】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、評価は下記の方法に従った。
【0049】
(1)組成比
試料40mgを重クロロホルム0.6mLに溶解し、日本電子社製 JNM-AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位の積分比からポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0050】
(2)粘度平均分子量
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに試料0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0051】
(3)ガラス転移温度(Tg)
試料8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC-2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0052】
(4)鉛筆硬度
得られたポリカーボネート樹脂を熱プレス成形機((神藤金属工業所(株)製 圧縮成形機:SFV-10、真空ポンプユニット:GXD-360)でプレス成形し、厚さ約3mmの円盤状の樹脂プレートを得た。プレス成形条件は、金型温度150~350℃、1次圧:1MPa(30秒)、2次圧:1.5MPa(12分)とした。この樹脂プレートを用いてJIS K5600に基づき、表面状態を目視にて評価した。
荷重:750g
測定速度:50mm/min
測定距離:7mm
鉛筆:三菱鉛筆製Hi―uni
【0053】
[実施例1]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に窒素雰囲気下でイオン交換水70.66重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液42.28重量部を入れ、二価フェノールとして2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(本州化学製、以下BPCと称する)12.56重量部、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(本州化学製、以下HMBPと称する)7.143重量部およびハイドロサルファイト(富士フイルム和光純薬製)0.039重量部を溶解した後、塩化メチレン83.42重量部を加え、攪拌下18~20℃でホスゲン10.07重量部を60分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.039重量部、p-tert-ブチルフェノール0.3623重量部を加えて攪拌した。途中、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬製)0.019重量部を加えた後、25~30℃において4時間攪拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで50~80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、フレーク状の固形物を得た。得られた固形物をろ過し、120℃で24時間乾燥し、白色フレーク状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0054】
[実施例2]
仕込みの二価フェノール量をBPC9.66重量部、HMBP10.21重量部に変更した以外は実施例1における手順で白色フレーク状のポリカーボネート樹脂を得た。前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0055】
[実施例3]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に窒素雰囲気下でイオン交換水70.66重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液42.28重量部を入れ、二価フェノールとしてHMBP20.41重量部およびハイドロサルファイト0.039重量部を溶解した後、塩化メチレン83.42重量部を加え、攪拌下18~20℃でホスゲン10.07重量部を60分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.039重量部、p-tert-ブチルフェノール0.3623重量部を加えて攪拌した。途中、トリエチルアミン0.019重量部を加えた後、25~30℃において4時間攪拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで50~80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、フレーク状の固形物を得た。得られた固形物をろ過し、120℃で24時間乾燥し、白色フレーク状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0056】
[実施例4]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に窒素雰囲気下でイオン交換水70.66重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液42.28重量部を入れ、二価フェノールとして2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(日鉄ケミカル&マテリアル製、以下BPAと称する)8.61重量部、HMBP10.21重量部およびハイドロサルファイト0.039重量部を溶解した後、塩化メチレン83.42重量部を加え、攪拌下18~20℃でホスゲン10.07重量部を60分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.039重量部、p-tert-ブチルフェノール0.3623重量部を加えて攪拌した。途中、トリエチルアミン0.019重量部を加えた後、25~30℃において4時間攪拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで50~80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、フレーク状の固形物を得た。得られた固形物をろ過し、120℃で24時間乾燥し、白色フレーク状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0057】
[比較例1]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に窒素雰囲気下で9.8%水酸化ナトリウム水溶液837mLを入れ、二価フェノールとしてBPC94.3重量部、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニル(以下OCBPと称する)52.5重量部およびハイドロサルファイト0.43重量部を溶解した後、塩化メチレン590mLを加え、攪拌下18~20℃でホスゲン85.0重量部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液49mL、p-tert-ブチルフェノール1.47重量部を加えて攪拌した。途中、トリエチルアミン0.11mLを加えた後、30~35℃において2時間攪拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで50~80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、フレーク状の固形物を得た。得られた固形物をろ過し、120℃で24時間乾燥し、白色フレーク状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0058】
[比較例2]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器に窒素雰囲気下で9.8%水酸化ナトリウム水溶液837mLを入れ、二価フェノールとしてBPC78.6重量部、OCBP65.6重量部およびハイドロサルファイト0.43重量部を溶解した後、塩化メチレン590mLを加え、攪拌下18~20℃でホスゲン85.0重量部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液49mL、p-tert-ブチルフェノール1.47重量部を加えて攪拌した。途中、トリエチルアミン0.11mLを加えた後、30~35℃において2時間攪拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで50~80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、フレーク状の固形物を得た。得られた固形物をろ過し、120℃で24時間乾燥し、白色フレーク状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0059】
[比較例3]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水10663重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液6015重量部を入れ、二価フェノールとしてBPC2921重量部、およびハイドロサルファイト5.84重量部を溶解した後、塩化メチレン12588重量部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン1500重量部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液911重量部、トリエチルアミン0.58重量部を加え、p-tert-ブチルフェノール51.26重量部を塩化メチレン277重量部に溶解した溶液を加え、攪拌させて乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン2.30重量部を加えた後、温度26~31℃において1時間撹拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら溶媒を蒸発させ、樹脂のパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥し、白色パウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0060】
[比較例4]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水14876重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液6612重量部を入れ、二価フェノールとしてBPA3140重量部、ハイドロサルファイト6.28重量部を溶解した後、塩化メチレン14050重量部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン1500重量部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液1102重量部を加え、さらにp-tert-ブチルフェノール88.84重量部を塩化メチレン251重量部に溶解した溶液を加え、攪拌させて乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン2.78重量部を加えた後、温度26~31℃において1時間撹拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら溶媒を蒸発させ、ポリカーボネート樹脂のパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥し、白色パウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のポリカーボネート樹脂は、表面硬度(耐傷付き性)、透明性および耐熱性に優れるため、コーティング処理を必要とせず、室内照明用ランプレンズ、表示用メーターカバー、メーター文字板、各種スイッチカバー、ディスプレイカバー、ヒートコントロールパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、センターパネル、ルームランプレンズ、ヘッドアップディスプレイ等の各種表示装置、保護部品、透光部品などの自動車内装部品に利用できる。