IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

特開2024-106484電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置
<>
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図1
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図2
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図3
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図4
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図5
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図6
  • 特開-電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106484
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240801BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240801BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01F37/00 G
H01F37/00 M
H01F37/00 J
H01F27/32 103
H01F37/00 F
H01F27/02 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010754
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】武弘 昂大
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉田 祥
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070DA02
5E070DA11
(57)【要約】
【課題】ナットまたはボルトヘッドをはめ込み易いソケット孔を有する電気機器アセンブリを提供する。
【解決手段】電気機器に一体化された樹脂部材にソケット孔を有する電気機器アセンブリである。前記ソケット孔は、開口と、前記開口から前記ソケット孔の奥に向かうに従って前記ソケット孔の中心軸に近づくように傾斜しているガイド面と、前記中心軸に沿った方向から見た形状が多角形状である収納部と、を備える。前記ガイド面は、前記中心軸に沿った方向に見て、前記中心軸と前記収納部の各隅部とを通る仮想線分で区切られた複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントの少なくとも一つは第一セグメントである。前記第一セグメントは、第一端部と第二端部と中央部とを有し、前記中央部は、前記第一端部および前記第二端部よりも前記開口に近くなるように突出している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器と、
前記電気機器に一体化された樹脂部材と、を備え、
前記樹脂部材は、多角形状のナットまたは多角形状のボルトヘッドをはめ込むためのソケット孔を有するソケットを備え、
前記ソケット孔は、
開口と、
前記開口から前記ソケット孔の奥に向かうに従って前記ソケット孔の中心軸に近づくように傾斜しているガイド面と、
前記ガイド面につながり、前記中心軸に直交する断面における形状が、前記開口よりも小さい多角形状である収納部と、を備え、
前記ガイド面は、前記中心軸に沿った方向に見て、前記中心軸と前記収納部の各隅部とを通る仮想線分で区切られた複数のセグメントを有し、
前記複数のセグメントの少なくとも一つは第一セグメントであり、
前記第一セグメントは、前記中心軸に沿った方向に見て別のセグメントとの境界となる第一端部および第二端部と、前記第一端部と前記第二端部との間に位置する中央部とを有し、
前記中央部は、前記第一端部および前記第二端部よりも前記開口に近くなるように突出している、
電気機器アセンブリ。
【請求項2】
前記中央部と前記第一端部とをつなぐ部分、および前記中央部と前記第二端部とをつなぐ部分が傾斜面である、請求項1に記載の電気機器アセンブリ。
【請求項3】
前記中央部は、前記第一端部と前記第二端部との間の中点を含む、請求項2に記載の電気機器アセンブリ。
【請求項4】
前記複数のセグメントは、前記中心軸に沿った方向に見て対称の位置に配置される二つのセグメントを有し、
前記二つのセグメントはそれぞれ前記第一セグメントである、請求項1または請求項2に記載の電気機器アセンブリ。
【請求項5】
各隅部は、前記中心軸から離れる方向に凸となる円弧形状を有する、請求項1または請求項2に記載の電気機器アセンブリ。
【請求項6】
前記電気機器は、リアクトルを構成するコイルとコアの組物であり、
前記樹脂部材は、前記コイルと前記コアとを一体化している樹脂モールド部材である、
請求項1または請求項2に記載の電気機器アセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載の電気機器アセンブリを備える、
コンバータ。
【請求項8】
請求項7に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機器アセンブリ、コンバータ、および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器と、電気機器に一体化された樹脂部材とを備える電気機器アセンブリが知られている。このような電気機器アセンブリは例えば、ハイブリッド自動車などに備わるコンバータの構成部品であるリアクトルである。
【0003】
特許文献1は、コイルとコアとモールド樹脂部とを備えるリアクトルを開示する。モールド樹脂部は、コイルとコアとを一体化する樹脂部材である。モールド樹脂部は、コイルの端部と外部機器の端子とを電気的に接続するバスバが固定される端子台を備える。端子台にはインサート成形によってナットが埋め込まれている。端子台上でバスバと外部機器の端子とが重ねられ、ネジによって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-21779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インサート成形において、ナットの位置がずれないようにする手間が煩雑である。そこで、樹脂部材にソケット孔を有するソケットを形成し、そのソケット孔にナットをはめ込むことが考えられる。しかし、ソケット孔の位置、またはソケット孔の開口の向きによっては、ソケット孔にナットをはめ込み難い場合がある。
【0006】
本開示は、ナットまたはボルトヘッドをはめ込み易いソケット孔を有する電気機器アセンブリを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電気機器アセンブリは、
電気機器と、
前記電気機器に一体化された樹脂部材と、を備え、
前記樹脂部材は、多角形状のナットまたは多角形状のボルトヘッドをはめ込むためのソケット孔を有するソケットを備え、
前記ソケット孔は、
開口と、
前記開口から前記ソケット孔の奥に向かうに従って前記ソケット孔の中心軸に近づくように傾斜しているガイド面と、
前記ガイド面につながり、前記中心軸に直交する断面における形状が、前記開口よりも小さい多角形状である収納部と、を備え、
前記ガイド面は、前記中心軸に沿った方向に見て、前記中心軸と前記収納部の各隅部とを通る仮想線分で区切られた複数のセグメントを有し、
前記複数のセグメントの少なくとも一つは第一セグメントであり、
前記第一セグメントは、前記中心軸に沿った方向に見て別のセグメントとの境界となる第一端部および第二端部と、前記第一端部と前記第二端部との間に位置する中央部とを有し、
前記中央部は、前記第一端部および前記第二端部よりも前記開口に近くなるように突出している。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電気機器アセンブリは、ナットまたはボルトヘッドをはめ込み易いソケット孔を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に記載される電気機器アセンブリの一例であるリアクトルの概略上面図である。
図2図2は、実施形態1に記載されるリアクトルに備わるコイルとコアの組物の概略上面図である。
図3図3は、実施形態1に記載される電気機器アセンブリのソケットとナットとの関係を示す概略斜視図である。
図4図4は、図3に示されるソケットの概略正面図である。
図5図5は、図4のV-V断面図である。
図6図6は、実施形態2に記載されるハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
図7図7は、実施形態2に記載されるコンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
<1>実施形態に係る電気機器アセンブリは、
電気機器と、
前記電気機器に一体化された樹脂部材と、を備え、
前記樹脂部材は、多角形状のナットまたは多角形状のボルトヘッドをはめ込むためのソケット孔を有するソケットを備え、
前記ソケット孔は、
開口と、
前記開口から前記ソケット孔の奥に向かうに従って前記ソケット孔の中心軸に近づくように傾斜しているガイド面と、
前記ガイド面につながり、前記中心軸に直交する断面における形状が、前記開口よりも小さい多角形状である収納部と、を備え、
前記ガイド面は、前記中心軸に沿った方向に見て、前記中心軸と前記収納部の各隅部とを通る仮想線分で区切られた複数のセグメントを有し、
前記複数のセグメントの少なくとも一つは第一セグメントであり、
前記第一セグメントは、前記中心軸に沿った方向に見て別のセグメントとの境界となる第一端部および第二端部と、前記第一端部と前記第二端部との間に位置する中央部とを有し、
前記中央部は、前記第一端部および前記第二端部よりも前記開口に近くなるように突出している。
【0012】
実施形態に係る電気機器アセンブリのソケット孔はガイド面を備える。ガイド面は、ソケット孔の開口に向かうに従って広がっている。そのため、ナットまたはボルトヘッドが開口にはめ込まれたとき、ガイド面によってナットまたはボルトヘッドがガイド面の奥にある収納部に円滑に案内される。ここで、ナットまたはボルトヘッドをまとめてファスナヘッド(fastener head)と呼ぶ。
【0013】
ガイド面は、中心軸に沿った方向に見て、中心軸回りに並ぶ複数のセグメントを有する。その複数のセグメントのうちの少なくとも一つが、第一セグメントである。第一セグメントは、別のセグメントとの境界となる第一端部および第二端部と、第一端部と第二端部との間に位置する中央部とを有し、中央部が第一端部および第二端部よりも開口に向かって突出している。言い換えれば、第一セグメントの第一端部と第二端部は、中央部よりもソケット孔の奥に向かって凹んでいる。第一端部と第二端部はそれぞれ、収納部における互いに異なる二つの隅部に対応している。そのため、ファスナヘッドがソケット孔に挿入され、第一セグメントに接触すると、ファスナヘッドの外周の角部が隅部に案内されるようにファスナヘッドが回転する。つまり、第一セグメントによって、ファスナヘッドの外周の角部と、収納部の隅部とが自動的に位置合わせされる。
【0014】
上述したように、実施形態に係る電気機器アセンブリでは、ガイド面によってファスナヘッドがソケット孔の収納部に案内され易い。従って、ソケット孔の位置、またはソケット孔の開口の向きによらず、ソケット孔にファスナヘッドをはめ込み易い。
【0015】
<2>上記<1>に記載される電気機器アセンブリにおいて、
前記中央部と前記第一端部とをつなぐ部分、および前記中央部と前記第二端部とをつなぐ部分が傾斜面であっても良い。
【0016】
中央部と第一端部とをつなぐ部分、および中央部と第二端部とをつなぐ部分が傾斜面であれば、傾斜面上をファスナヘッドの角部が滑り易く、ファスナヘッドが回転し易い。従って、ファスナヘッドの角部が収納部の隅部に案内され易い。
【0017】
<3>上記<2>に記載される電気機器アセンブリにおいて、
前記中央部は、前記第一端部と前記第二端部との間の中点を含んでいても良い。
【0018】
中央部が第一端部と第二端部との間の中点に配置されていることで、中央部から第一端部に向かう傾斜面の傾きと、中央部から第二端部に向かう傾斜面の傾きと、がほぼ同じになる。従って、ファスナヘッドの角部が、第一端部寄りの傾斜面と第二端部寄りの傾斜面のいずれに接触しても、ファスナヘッドが回転し易い。仮に、第一端部寄りの傾斜面と第二端部寄りの傾斜面とで傾きが異なる場合、傾きが大きい傾斜面にファスナヘッドの角部が接触すればファスナヘッドは回転し易いが、傾きが小さい傾斜面にファスナヘッドの角部が接触すればファスナヘッドは回転し難い。
【0019】
<4>上記<1>から<3>のいずれかに記載される電気機器アセンブリにおいて、
前記複数のセグメントは、前記中心軸に沿った方向に見て対称の位置に配置される二つのセグメントを有し、
前記二つのセグメントはそれぞれ前記第一セグメントであっても良い。
【0020】
二つの第一セグメントが、中心軸に沿った方向に見て対称の位置に配置されていることで、ガイド面に接触したファスナヘッドが時計回り、または反時計回りに回転する際、ファスナヘッドががたつき難い。従って、ファスナヘッドを収納部にはめ込み易い。ファスナヘッドが時計回り、または反時計回りに回転することで、ファスナヘッドの互いに向き合う二つの角部は、二つの第一セグメントの互いに向き合う二つの隅部に案内される。
【0021】
<5>上記<1>から<4>のいずれかに記載される電気機器アセンブリにおいて、
各隅部は、前記中心軸から離れる方向に凸となる円弧形状を有していても良い。
【0022】
収納部の隅部が円弧形状となっていることで、収納部にはめ込まれたファスナヘッドの角部が隅部に接触しなくなる。従って、ファスナヘッドに回転トルクが作用したとき、収納部の隅部に応力が集中し、ソケット孔が損傷することを抑制できる。
【0023】
<6>上記<1>から<5>のいずれかに記載される電気機器アセンブリにおいて、
前記電気機器は、リアクトルを構成するコイルとコアの組物であり、
前記樹脂部材は、前記コイルと前記コアとを一体化している樹脂モールド部材であっても良い。
【0024】
リアクトルの樹脂モールド部材に形成されるソケットは例えば、端子台として機能する。ソケットにナットをはめ込むリアクトルは、インサート成形によってナットを樹脂モールド部材に埋め込んだリアクトルよりも生産性に優れる。
【0025】
<7>実施形態に係るコンバータは、
上記<6>に記載される電気機器アセンブリを備える。
【0026】
上記コンバータは、生産性に優れる実施形態のリアクトルを備える。従って、上記コンバータは、生産性に優れる。
【0027】
<8>実施形態に係る電力変換装置は、
上記<7>に記載されるコンバータを備える。
【0028】
上記電力変換装置は、生産性に優れる実施形態のコンバータを備える。従って、上記電力変換装置は、生産性に優れる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の電気機器アセンブリの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0030】
<実施形態1>
実施形態1では、図1から図5に基づいて電気機器アセンブリ100の構成を説明する。図1に示される電気機器アセンブリ100はリアクトル1である。本例のリアクトル1は、組物10と樹脂モールド部材6とを備える。組物10は、電気機器アセンブリ100における電気機器101である。樹脂モールド部材6は、電気機器101に一体化された樹脂部材102である。樹脂モールド部材6にはソケット4,4Bが形成されている。この電気機器アセンブリ100の特徴の一つは、ソケット4,4Bのソケット孔4Hの形状にある。以下、電気機器アセンブリ100に備わる各構成を詳細に説明する。
【0031】
≪リアクトル≫
リアクトル1の一部を構成する組物10は、図2に示されるように、コイル2とコア3とを含む。樹脂モールド部材6は、図1に示されるように、コイル2とコア3とを一体化している。ここで、本明細書において、図1および図2における紙面手前をリアクトル1の上方、紙面奥をリアクトル1の下方とする。
【0032】
[コイル]
本例のコイル2は、巻線をらせん状に巻回してなる巻回部20を備える。巻線には公知の巻線が利用可能である。本例の巻線は、導体線と絶縁被覆とを有する被覆平角線である。導体線は銅製の平角線で構成されている。絶縁被覆はエナメルからなる。巻回部20は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルで構成されている。本例に用いるコイル2では、一つの巻回部20を備える。本例とは異なり、コイル2は、複数の巻回部20を備えていても良い。複数の巻回部20を備えるコイル2は、例えば、互いに並列される二つの巻回部20を備えるコイル2である。
【0033】
巻回部20の形状は例えば、矩形筒状である。矩形には正方形が含まれる。本例の巻回部20の端面形状は矩形枠状である。巻回部20の形状が矩形筒状であることで、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部20と設置対象との接触面積が大きくなり易い。本例では、巻回部20の一部が樹脂モールド部材6から露出している。
【0034】
コイル2の巻線端部21,22はそれぞれ、樹脂モールド部材6の外部に引き出されている。巻線端部21および巻線端部22では絶縁被覆が剥がされて導体線が露出している。露出した導体線は、図示しないバスバを介して外部機器と電気的に接続される。外部機器の図示は省略する。外部機器は例えば、コイル2に電力供給を行なう電源である。
【0035】
[コア]
コア3は、その内部に閉磁路が形成される磁性体である。コア3は、圧粉成形体または複合材料の成形体である。圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形したものである。軟磁性粉末の材質は、例えば純鉄または鉄合金である。複合材料の成形体は、軟磁性粉末と未固化の樹脂との混合物を金型に充填し、樹脂を固化させたものである。複合材料の成形体では、軟磁性粉末が樹脂中に分散されている。コア3は、圧粉成形体からなるコア片と、複合材料の成形体からなるコア片とを組み合わせて構成したり、圧粉成形体からなるコア片の外周を複合材料で覆うことで構成したりしても良い。
【0036】
コア3は、内側コア部31と外側コア部32とを備える。内側コア部31は、コイル2の巻回部20の内部に配置され、巻回部20の軸方向に沿った部分を有する。本例では、コア3のうち、巻回部20の軸方向に沿った部分の両端部が巻回部20の端面から突出している。その突出する部分も内側コア部31の一部である。
【0037】
内側コア部31の形状は、巻回部20の内部形状に沿った形状であれば特に限定されない。本例の内側コア部31は、略直方体状である。内側コア部31は、連結された複数のコア片によって構成されていても良いし、一つのコア片で構成されていても良い。
【0038】
外側コア部32は、コア3のうち、巻回部20の外部に配置される部分である。外側コア部32の形状は、内側コア部31の端部をつなぐ形状であれば特に限定されない。本例の外側コア部32は、第一エンドコア片と第二エンドコア片と第一サイドコア片と第二サイドコア片とを備える。第一エンドコア片は、巻回部20における第一端面に向き合う。第二エンドコア片は、巻回部20における第二端面に向き合う。第二端面は第一端面の反対側の端面である。第一サイドコア片は、巻回部20における第一側面に向き合う。第二サイドコア片は、巻回部20における第二側面に向き合う。第二側面は第一側面の反対側の側面である。これらのコア片からなる本例の外側コア部32は矩形環状である。
【0039】
本例のコア3は、二つの分割コア3A,3Bによって構成される。分割コア3Aは、略『T』字形状である。分割コア3Bは、略『E』字形状である。巻回部20の内部における分割コア3Aと分割コア3Bとが向き合う部分には、非磁性材料からなるギャップ板31gが配置されている。ギャップ板31gの代わりにエアギャップが形成されていても良い。
【0040】
分割コアの形状は特に限定されない。例えばコア3は、内側コア部31となる略『I』字形状の分割コアと、外側コア部32となる略『O』字形状の分割コアとで構成されていても良い。コア3は、三つ以上の分割コアから構成されていても良い。例えばコア3は、内側コア部31となる略『I』字形状の分割コアと、外側コア部32となる二つの略『U』字形状の分割コアとで構成されていても良い。
【0041】
[樹脂モールド部材]
樹脂モールド部材6は、コイル2とコア3とを一体化する機能を有する。樹脂モールド部材6は、コイル2およびコア3を外部環境から保護する機能も有する。
【0042】
本例の樹脂モールド部材6は、上方から見て略矩形状の下段部60と、下段部60よりも小さい略矩形状の上段部61と、を備える。下段部60は、コア3全体と、コイル2の一部とを覆っている。上段部61は、下段部60の上方に配置され、コイル2の上部を覆っている。本例では、上段部61からコイル2の上面が露出している。そのため、コイル2で発生した熱が外部に放出され易くなる。
【0043】
樹脂モールド部材6は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂によって構成される。その他、樹脂モールド部材6は、例えば不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂といった熱硬化性樹脂で構成されていても良い。これらの樹脂にセラミックスフィラーが含有されることで、樹脂モールド部材6の放熱性が向上される。セラミックスフィラーは、例えば、アルミナまたはシリカなどの非磁性粉末である。
【0044】
本例の樹脂モールド部材6は、二つのソケット4,4Bを備える。ソケット4,4Bは、樹脂モールド部材6を構成する樹脂材料によって樹脂モールド部材6に一体に形成されている。ソケット4,4Bには、ナット9がはめ込まれている。ナット9がはめ込まれたソケット4,4Bは、端子台として機能する。端子台は、コイル2の巻線端部21,22に接続されたバスバと、外部機器の端子と、を重ね合わせてネジによって固定するための台座である。
【0045】
ソケット4のソケット孔4Hは上下と交差する横向きに延びている。本例のソケット孔4Hの中心軸4Sは、上下と直交している。従って、ソケット孔4Hにナット9をはめ込み損ねると、ナット9がソケット孔4Hから脱落し、リアクトル1の生産性が悪化する恐れがある。本例のリアクトル1のソケット孔4Hは、この問題点を解決する形状を備える。以下、ソケット4の構成を説明する。ソケット4Bの説明は省略するが、ソケット4Bは、ソケット4と同じ構成を備える。
【0046】
図3は、ソケット4とナット9の概略斜視図である。ナット9は多角形状を備える。本例のナット9は、六つの角部9cを有する六角ナットである。すなわち、多角形状は六角形である。多角形状は六角形に限定されるわけではない。例えばナット9は、五角ナットでも良いし、八角ナットでも良い。
【0047】
ナット9の内周面には雌ネジが形成されている。雌ネジには、バスバと外部機器の端子とをソケット4に固定するネジが取り付けられる。
【0048】
本例のナット9はフランジ部90を有する。ナット9がソケット孔4Hにはめ込まれたとき、フランジ部90はソケット孔4Hのガイド面41に接触し、あて止めされる。フランジ部90は、作業者がナット9をソケット孔4Hにはめ込む際に触れる部分であり、ナット9の取り付け作業を容易にする。また、フランジ部90は、ネジの締め付け力を受ける受圧面としても機能する。
【0049】
本例のソケット4は、下段部60の側面から突出する円筒状である。ソケット4は角筒状でも良い。ソケット4の端面4Eにはソケット孔4Hが形成されている。本例とは異なり、ソケット4が下段部60の側面から突出することなく、ソケット4の端面4Eが下段部60の側面と面一になっていても良い。その場合、下段部60の側面にソケット孔4Hが形成されている。
【0050】
ソケット孔4Hは、図3から図5に示されるように、開口40とガイド面41と収納部42と最奥部43とを備える。開口40は、リアクトル1の外側に向かって開放している。この開口40からナット9が挿入される。本例の開口40は円形状である。
【0051】
ガイド面41は、開口40からソケット孔4Hの奥に向かうに従ってソケット孔4Hの中心軸4S(図4および図5参照)に近づくように傾斜している。つまり、ガイド面41は、ソケット孔4Hの奥に向かうに従ってソケット孔4Hの内部空間を狭くするソケット孔4Hの内壁面である。ナット9が開口40からソケット孔4Hの内部に挿入されたとき、ガイド面41は、ガイド面41の奥にある収納部42にナット9を円滑に案内する。
【0052】
収納部42は、ガイド面41につながり、中心軸4Sに直交する断面における形状が、開口40よりも小さい多角形状である。ここでいう多角形状とは、収納部42に配置されたナット9を回転不能に保持できる形状であって、幾何学的に厳密な多角形ではなくても良い。本例の多角形状は、正六角形の角が、中心軸4Sから離れる方向に膨らんだ円弧形状となっている。すなわち、収納部42の隅部42cは、中心軸4Sに沿った方向に見て、中心軸4Sから離れる方向に凸となる円弧形状を有している。収納部42の隅部42cが円弧形状となっていることで、収納部42にはめ込まれたナット9の角部9cが隅部42cに接触しなくなる。従って、ナット9に回転トルクが作用したとき、収納部42の隅部42cまたはナット9の角部9cに応力が集中し、ソケット孔4Hまたはナット9の角部9cが損傷することを抑制できる。ナット9に回転トルクが作用したとき、ナット9から収納部42に作用する応力は、隅部42c以外の六つの内周面に分散される。本例とは異なり、隅部42cは円弧形状ではなく、ナット9の角部9cに対応する形状であっても良い。
【0053】
最奥部43は、収納部42よりもさらにソケット孔4Hの奥にある。中心軸4Sに直交する断面における最奥部43の形状は円形である。最奥部43は、バスバと外部機器の端子とを固定するためのネジがナット9にネジ結合されたとき、ネジの端部を収納する部分である。
【0054】
本例のソケット孔4Hにおけるガイド面41は、図4に示されるように、中心軸4Sに沿った方向に見て、中心軸4Sと収納部42の各隅部42cとを通る仮想線分4Lで区切られた複数のセグメント5を有する。仮想線分4Lは二点鎖線で示されている。本例の仮想線分4Lは、隅部42cを構成する円弧の中点を通っている。セグメント5の数は、隅部42cの数に一致する。すなわち、本例のセグメント5の数は六つである。
【0055】
複数のセグメント5のうちの少なくとも一つは第一セグメント51である。本例では、図4の紙面左に配置されるセグメント5と紙面右に配置されるセグメント5が第一セグメント51である。第一セグメント51は、中心軸4Sに沿った方向に見て別のセグメント5,5との境界となる第一端部511および第二端部512を有する。また、第一セグメント51は、第一端部511と第二端部512との間に位置する中央部510を有する。ここで、中心軸4Sから見て左上に配置されるセグメント5と右上に配置されるセグメント5との間に明確な境界は存在しない。また、中心軸4Sから見て左下に配置されるセグメント5と右下に配置されるセグメント5との間にも明確な境界は存在しない。
【0056】
第一端部511および第二端部512は、端面4Eから中心軸4Sに向かうに従って広くなった概略三角形状の緩やかな凹曲面である。中央部510は、端面4Eから中心軸4Sに向かうに従って広くなった概略三角形状の緩やかな凸曲面である。図5に示されるように、第一端部511、第二端部512、および中央部510はいずれも、中心軸4Sに近づくに従ってソケット孔4Hの奥に向かって傾斜している。ただし、端面4Eから中心軸4Sに向かう中央部510の傾斜は、第一端部511の傾斜および第二端部512の傾斜よりも小さい。このような傾斜の相違によって、中央部510は、第一端部511および第二端部512よりも開口40に近くなるように突出している。言い換えれば、第一セグメント51の第一端部511と第二端部512は、中央部510よりもソケット孔4Hの奥に向かって凹んでいる。第一端部511と第二端部512はそれぞれ、収納部42における互いに異なる二つの隅部42cに対応している。そのため、ナット9(図3)がソケット孔4Hに挿入され、第一セグメント51に接触すると、ナット9の角部9cが隅部42cに案内されるようにナット9が回転する。つまり、第一セグメント51によって、ナット9の角部9cと、収納部42の隅部42cと、が自動的に位置合わせされる。
【0057】
本例では、二つの第一セグメント51,51が、中心軸4Sに沿った方向に見て対称の位置に配置されている。この場合、ナット9がガイド面41に接触して回転する際、ナット9ががたつき難い。なぜなら、ナット9における対角位置にある二つの角部9cのそれぞれが、二つの第一セグメント51,51のそれぞれに支持されるからである。ただし、二つの第一セグメント51,51が対称の位置に配置されていなくても、ナット9のがたつきはある程度抑制される。
【0058】
本例とは異なり、第一セグメント51の数は、一つでも良いし、三つ以上でも良い。第一セグメント51の数が一つであっても、ソケット孔4Hの内部においてナット9を回転させる第一セグメント51の機能は得られる。第一セグメント51の数が三つである場合、例えば三つの第一セグメント51は、一つ置きに配置されても良い。
【0059】
本例における中央部510と第一端部511とをつなぐ部分、および中央部510と第二端部512とをつなぐ部分は、傾斜面である。本例では、中央部510が、第一端部511と第二端部512との間の中点に配置されている。従って、中央部510から第一端部511に向かう傾斜面の傾きと、中央部510から第二端部412に向かう傾斜面の距離と傾きと、がほぼ同じである。従って、ナット9の角部9cが、第一端部511寄りの傾斜面と第二端部512寄りの傾斜面のいずれに接触しても、ナット9が回転し易い。
【0060】
本例とは異なり、中央部510は、第一端部511と第二端部512との間の中点からずれていてもかまわない。また、中央部510と第一端部511とをつなぐ部分、および中央部510と第二端部512とをつなぐ部分が湾曲面であっても良い。
【0061】
<実施形態2>
≪コンバータ・電力変換装置≫
実施形態1に記載されるリアクトル1は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態に係るリアクトル1は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0062】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、図6に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。図6では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0063】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0064】
コンバータ1110は、図7に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1に記載されるリアクトル1を備える。生産性に優れるリアクトル1を備える電力変換装置1100およびコンバータ1110は、生産性に優れる。
【0065】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトル1115に、実施形態1のリアクトル1と同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1のリアクトル1を利用することもできる。
【0066】
<その他の実施形態>
電気機器アセンブリ100はリアクトル1に限定されない。例えば、電気機器アセンブリ100は高圧系ジャンクションボックスまたは高圧系リレーボックスなどの製品であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 リアクトル
10 組物
2 コイル
20 巻回部
21,22 巻線端部
3 コア
3A,3B 分割コア
31 内側コア部
31g ギャップ板
32 外側コア部
4,4B ソケット
4E 端面
4H ソケット孔
4L 仮想線分
4S 中心軸
40 開口
41 ガイド面
42 収納部
42c 隅部
43 最奥部
5 セグメント
51 第一セグメント
510 中央部
511 第一端部
512 第二端部
6 樹脂モールド部材
60 下段部
61 上段部
9 ナット
9c 角部
90 フランジ部
100 電気機器アセンブリ
101 電気機器
102 樹脂部材
1100 電力変換装置
1110 コンバータ
1111 スイッチング素子
1112 駆動回路
1115 リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ
1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ
1220 モータ
1230 サブバッテリ
1240 補機類
1250 車輪
1300 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7