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  • 特開-燃料電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106497
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04119 20160101AFI20240801BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240801BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20240801BHJP
   B60L 50/72 20190101ALI20240801BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/00 Z
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04 J
B60L58/30
B60L50/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010778
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江戸 太一
(72)【発明者】
【氏名】柏木 幸一
(72)【発明者】
【氏名】管 宇
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD12
5H125FF09
5H127AB04
5H127AC08
5H127AC10
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA11
5H127DA16
5H127DC29
5H127DC39
5H127DC60
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックに供給する酸化ガスを加湿する加湿器は、乾燥すると加湿性能が低下し、その後に湿潤化処理しても回復しない。
【解決手段】加湿器を、酸化ガスの供給をシャットする弁と燃料電池スタックの間の供給経路と、燃料電池スタックと酸化したガスの排出をシャットする弁の間の排出経路の双方に接続する。供給シャットと排出シャット弁の双方は、車両の運転停止時に閉弁されて加湿器内の酸化ガスを大気から封止する。運転停止中は加湿器が封止空間内に置かれ、乾燥から守られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料電池であって、
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに接続されているとともに前記燃料電池スタックに酸化ガスを供給する供給経路と、
前記供給経路に配置されている供給シャット弁と、
前記燃料電池スタックに接続されているとともに前記燃料電池スタックで酸化したガスを排出する排出経路と、
前記排出経路に配置されている排出シャット弁と、
加湿器を備えており、
前記加湿器が、前記供給シャット弁から前記燃料電池スタックの間の前記供給経路と、前記燃料電池スタックと前記排出シャット弁の間の前記排出経路の双方に接続されており、
前記供給シャットと前記排出シャット弁の双方は、前記車両の運転停止時に閉弁されて前記加湿器内の酸化ガスを大気から封止することを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、燃料ガスと酸化ガスが反応して発電する燃料電池を開示する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池では、燃料ガス(例えば水素ガス)と酸化ガス(例えば空気)が燃料電池スタックで反応して発電する。特許文献1に記載されているように、酸化ガスが乾燥している場合に比して酸化ガスが湿っている(水蒸気を含んでいる)場合の方が、燃料電池反応が効率的に進行することがある。特許文献1の技術では、酸化ガスを燃料電池スタックに供給する経路に加湿器を配置している。
【0003】
燃料ガスが酸化ガスによって酸化されると水蒸気が発生する。特許文献1の技術では、酸化したガスの排出経路を加湿器に導き、燃料電池反応で発生した水蒸気を加湿に利用する。
【0004】
燃料電池スタックには、酸化ガスの供給経路と酸化したガスの排出経路が接続されている。供給経路には供給シャット弁が設けられ、排出経路には排出シャット弁が設けられている。燃料電池スタックの運転中は、供給シャット弁と排出シャット弁の双方が開かれ、酸化ガスが燃料電池スタックに供給され、酸化したガスが燃料電池スタックから排出される。
【0005】
特許文献1の技術では、燃料電池スタックの運転を停止する際には、供給シャット弁と排出シャット弁の双方を閉じ、供給シャット弁から燃料電池スタックを経由して排出シャット弁に至るまでの範囲を大気から封止する。大気から封止することによって、運転停止中の燃料電池スタックが大気に晒されて劣化することを防止する。また大気から封止された空間のその後の圧力変化を観察することによって供給シャット弁と排出シャット弁の正常異常を判別する。
【0006】
特許文献1の技術では、図3に模式的に示すように、燃料電池スタック4に酸化ガスを供給する経路14aに加湿器10を配置している。また燃料電池スタック4で酸化したガスを排出する経路14dを加湿器10に導き、燃料電池反応で発生した水蒸気を加湿に利用する。酸化ガスの供給経路14aには供給シャット弁6が設けられ、酸化したガスの排出経路14dには排出シャット弁8が設けられている。燃料電池スタック4の運転中は、供給シャット弁6と排出シャット弁8の双方が開弁され、酸化ガスが燃料電池スタック4に供給され、酸化したガスが燃料電池スタック4から排出される。燃料電池スタック4の運転を停止する際は、供給シャット弁6と排出シャット弁8の双方を閉弁し、供給シャット弁6から燃料電池スタック4を経由して排出シャット弁8に至るまでの範囲を大気から封止する。大気から封止することによって、運転停止中の燃料電池スタック4は大気から封止され、運転停止中の燃料電池スタック4が大気に晒されて劣化することを防止する。また大気から封止された空間内の圧力変化を観察することによって供給シャット弁6と排出シャット弁8の正常異常を判別する。なお図3において、2aは燃料ガスの供給経路であり、2bは反応後のガスの排出経路であり、12は大気を圧縮するコンプレッサーである。
【0007】
特許文献1の技術では、供給シャット弁6と排出シャット弁8によって大気から封止される範囲の外側に加湿器10を配置している。
【0008】
特許文献2の技術では、供給シャット弁6と燃料電池スタック4の間に加湿器10を配置している。ただし、酸化したガスの排出経路は加湿器10に導かれておらず、燃料電池反応で発生した水蒸気を加湿に利用するものでない。加湿用純水をタンクに蓄えておく方式であり、本明細書で開示する燃料電池とは方式が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-87652号公報
【特許文献2】特開2004-296340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の技術では、加湿器10が封止空間の外側に配置されていることから、燃料電池スタック4の運転停止中に加湿器10の内部が乾燥しやすい。燃料電池スタック4の運転停止直後には、燃料電池スタック4と加湿器10が高温となっており、その熱の影響によって加湿器10の内部が急速に乾燥し、加湿器10が高温・絶乾状態になりやすい。
【0011】
加湿器は、一度高温・絶乾状態となると、その後は加湿性能が低下し、その後に湿潤化処理しても加湿性能が回復しない。図2は、その変化を模式的に示しており、横軸は状態の変化を示し、縦軸は加湿性能を示している。期間aは湿潤状態であり、加湿性能が高い状態に維持される。期間bは高温・乾燥状態であり、加湿性能は急速に低下する。期間cは再び湿潤状態に戻した状態にあり、グラフC1に示すように一時的には加湿性能が回復するが、その後はグラフC2に示すように加湿性能が低下する。一度高温・絶乾状態となると、その後に湿潤状態に戻しても乾燥前の加湿性能には回復しない。
【0012】
燃料電池反応で発生した水蒸気を加湿に利用するタイプの燃料電池では、運転停止中に加湿器が乾燥しやすく、加湿性能が低下しやすい。本明細書では、燃料電池反応で発生した水蒸気を利用して加湿するタイプの加湿器の加湿性能が低下しづらい燃料電池を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で開示する燃料電池は、車両に搭載される燃料電池であって、燃料電池スタックと、燃料電池スタックに接続されているとともに燃料電池スタックに酸化ガスを供給する供給経路と、供給経路に配置されている供給シャット弁と、燃料電池スタックに接続されているとともに燃料電池スタックで酸化したガスを排出する排出経路と、排出経路に配置されている排出シャット弁と、加湿器を備えている。その加湿器が、供給シャット弁と燃料電池スタックの間の供給経路と、燃料電池スタックと排出シャット弁の間の排出経路の双方に接続されている。そして、供給シャットと排出シャット弁の双方は、車両の運転停止時に閉弁されて加湿器内の酸化ガスを大気から封止することを特徴とする。
【0014】
この燃料電池によると、車両の運転停止中、加湿器は封止空間内に置かれるために乾燥しづらく、加湿器の加湿性能の低下が防止される。
【0015】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】各実施例の燃料電池の配置図を示す。
図2】加湿器の加湿性能の変化パターンを示す。
図3】従来の燃料電池の配置図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1の(A)~(D)は、実施例1~4の燃料電池の配置図を示し、共通の構成要素には同一の参照番号を付与することによって重複説明を省略する。実施例1~4の燃料電池は、いずれも車両に搭載される燃料電池である。図1において、4は燃料電池スタック、2aは燃料ガスの供給経路、2bは反応後の燃料ガスの排出経路を示す。図示はしないが、供給経路2aには燃料ガス側の供給シャット弁を配置し、排出経路2bには燃料ガス側の排出シャット弁を配置してもよい。
【0018】
図1において、12はコンプレッサーを示し、14a,14bは酸化ガスの供給経路を示し、6は酸化ガスの供給シャット弁を示している。図1では、酸化ガスの供給シャット弁6より上流側(コンプレッサー12側)の供給経路を14aとし、供給シャット弁6より下流側(燃料電池スタック4側)の供給経路を14bとしている。14c,14dは酸化したガスの排出経路を示し、8は酸化したガスの排出シャット弁を示している。酸化したガスの排出シャット弁8より上流側(燃料電池スタック4側)の排出経路を14cとし、排出シャット弁8より下流側(コンプレッサー12側)の排出経路を14dとしている。
【0019】
図1(A)の実施例では、加湿器10が、供給シャット弁6から燃料電池スタック4の間の供給経路14bの途中と、燃料電池スタック4と排出シャット弁8の間の排出経路14cの途中の双方に接続されている。加湿器10には、水蒸気を受入れる口と、水蒸気を放出する口が設けられており、前者は燃料電池スタック4と排出シャット弁8の間の排出経路14cに接続されており、後者は供給シャット弁6から燃料電池スタック4の間の供給経路14bに接続されている。
【0020】
車両の運転が停止されると、燃料電池スタック4の運転も停止される。燃料電池スタック4の運転を停止する際には、供給シャット弁6と排出シャット弁8の双方を閉弁する。燃料電池スタック4の運転停止中は、供給シャット弁6から燃料電池スタック4を経由して排出シャット弁8に至る範囲は大気から封止されている。加湿器10は、その封止範囲内に配置されていることから、燃料電池スタック4の運転停止中の加湿器10は大気から封止されており、乾燥しづらい。本実施例では、加湿器10に膜式加湿器を利用する。膜式加湿器は一度高温・絶乾状態となると、加湿性能が低下し、その後に湿潤化処理しても加湿性能が回復しない。本実施例では、乾燥しやすい運転停止中は加湿器10が封止空間内に置かれ、乾燥しづらい。膜式加湿器の問題点に対処している。
【0021】
燃料電池スタック4内では、電解質膜によって、燃料ガス側と酸化ガス側が分離されている。運転停止直後は、水素が電解質膜を透過して酸化ガス側に流れ、両者が反応して水蒸気が生成する。水蒸気が生成するために、加湿器10の乾燥が防止される。水蒸気は、電解質膜をほとんど透過しない。供給シャット弁6から燃料電池スタック4を経由して排出シャット弁8に至る範囲内に封止されている水蒸気は、燃料ガス側の経路等から蒸発することがない。必要なら、運転停止中は、燃料ガス側の供給シャット弁と排出シャット弁を閉じてもよい。
【0022】
図1(B)の実施例でも、加湿器10は、供給シャット弁6から燃料電池スタック4の間の供給経路14bの途中と、燃料電池スタック4と排出シャット弁8の間の排出経路14cの途中の双方に接続されている。この実施例では、加湿器10をバイパスして酸化ガスを燃料電池スタック4に供給するバイパス供給経路16が付加されており、そこにも供給シャット弁18が用意されている。この実施例では、燃料電池スタック4の運転を停止する際には、供給シャット弁6と排出シャット弁8の双方を閉弁し、バイパス供給経路16の供給シャット弁18も閉弁する。加湿器10は、供給シャット弁6、18と排出シャット弁8によって大気から封止されている範囲内に配置されていることから、燃料電池スタック4の運転停止中において加湿器10が乾燥しづらい。本実施例では、加湿器10を経由する酸化ガス供給経路と、加湿器10を迂回するバイパス供給経路を備えており、いずれかを選択して開弁することができるので、加湿された酸化ガスの供給タイミングと加湿されない酸化ガスの供給タイミングを調整することができる。
【0023】
図1(C)のように、供給経路14aとバイパス供給経路16に分岐する位置より上流の位置に供給シャット弁6を配置してもよい。この実施例でも、運転停止中の加湿器10は、供給シャット弁6、18と排出シャット弁8によって大気から封止されている範囲内に配置されていることから乾燥しづらい。
【0024】
図1(D)のように、供給経路14aとバイパス供給経路16の分岐位置に三方弁20を配置してもよい。三方弁20は、酸化ガスが加湿器10を経て燃料電池スタック4に供給される状態と、酸化ガスが加湿器10を経ないで燃料電池スタック4に供給される状態と、酸化ガスが燃料電池スタック4に供給されない状態のいずれかを選択する。この実施例でも、運転停止中の加湿器10は、三方弁30と排出シャット弁8によって大気から封止されている範囲内に配置されていることから乾燥しづらい。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
4:燃料電池スタック 6:供給シャット弁 8:排出シャット弁 10:加湿器
14a,14b:供給経路 14c、14d:排出経路
図1
図2
図3