(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106507
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】流路診断方法、プロジェクター、および冷却装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/16 20060101AFI20240801BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240801BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240801BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G03B21/16
G03B21/00 E
H04N5/74 Z
H04N9/31 440
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010790
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】古川 航大
(72)【発明者】
【氏名】前田 和典
(72)【発明者】
【氏名】下間 翔平
(72)【発明者】
【氏名】流川 理
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
5C060
【Fターム(参考)】
2K203FA03
2K203FA23
2K203LA03
2K203LA22
2K203LA37
2K203LA38
2K203LA46
2K203MA12
5C058BA30
5C058EA26
5C058EA52
5C060BC05
5C060DA03
5C060JA28
5C060JA30
5C060JB06
(57)【要約】
【課題】冷媒の流路が閉塞状態に陥ったこと等が原因で、冷却対象が冷却されない状態に陥ることを回避する。
【解決手段】流路診断方法は、冷却対象を冷却するための冷媒が循環する流路に、冷媒を送出するポンプの回転数を取得することと、環境温度を取得することと、環境温度が第1温度未満の場合に、回転数の閾値として第1閾値を設定することと、環境温度が第1温度以上の場合に、閾値として第1閾値より高い第2閾値を設定することと、回転数が閾値未満の場合に、流路が正常であると判定することと、回転数が閾値以上の場合に、流路が異常であると判定することと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象を冷却するための冷媒が循環する流路に、前記冷媒を送出するポンプの回転数を取得することと、
環境温度を取得することと、
前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、
前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、
前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、
前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、
を含む、流路診断方法。
【請求項2】
前記環境温度が前記第1温度より高い第2温度以上の場合に、前記閾値として前記第2閾値より高い第3閾値を設定すること、
をさらに含み、
前記第2閾値を設定することは、前記環境温度が前記第1温度以上且つ前記第2温度未満の場合に、前記閾値として前記第2閾値を設定することである、請求項1に記載の流路診断方法。
【請求項3】
前記回転数の取得回数が所定回数以上となるまで、前記回転数を取得することと、前記環境温度を取得することとを繰り返すことと、
前記回転数の取得回数が前記所定回数以上の場合に、前記回転数及び前記環境温度のそれぞれの平均値を算出することと、
をさらに含む、請求項1に記載の流路診断方法。
【請求項4】
前記流路の判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知すること、
をさらに含む、請求項1に記載の流路診断方法。
【請求項5】
前記流路の判定結果を含む制御情報を生成すること、
をさらに含む、請求項1に記載の流路診断方法。
【請求項6】
前記冷却対象は、光学装置である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【請求項7】
前記冷却対象に冷却器が配置され、
前記流路は前記冷却器に接続され、
前記冷媒は前記流路を介して前記冷却器に送られる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【請求項8】
前記冷却対象に熱電変換デバイスが配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【請求項9】
光学装置と、
前記光学装置に配置される冷却器と、
前記冷却器に接続される流路と、
前記流路に冷媒を送出するポンプと、
環境温度を検出するセンサーと、
前記ポンプの回転数を取得することと、
前記センサーの出力信号に基づいて前記環境温度を取得することと、
前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、
前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、
前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、
前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、
を実行する制御回路と、
を備える、プロジェクター。
【請求項10】
冷却器と、
前記冷却器に接続される流路と、
前記流路に冷媒を送出するポンプと、
環境温度を検出するセンサーと、
前記ポンプの回転数を取得することと、
前記センサーの出力信号に基づいて前記環境温度を取得することと、
前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、
前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、
前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、
前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、
を実行する制御回路と、
を備える、冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路診断方法、プロジェクター、および冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像情報に応じた画像を形成し、形成した画像を投射するプロジェクターが知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のプロジェクターは、入射する光を変調する液晶パネルと、液晶パネルを冷却する冷却装置と、を備える。冷却装置は、光学素子保持部と、液体圧送部と、供給タンクと、熱交換ユニットと、複数の管状部材と、冷却ファンと、を備える。これらのうち、光学素子保持部は、内部に冷却液体が流通する流路を有し、液晶パネルを保持する。熱交換ユニットは、複数の管状部材を介して光学素子保持部と接続されている。熱交換ユニットには、光学素子保持部から冷却液体が流通する。熱交換ユニットは、受熱部、熱電変換素子としてのペルチェ素子、及び、ヒートシンク等を備える。受熱部は、液晶パネルの熱を光学素子保持部及び冷却液体を介して受熱し、ペルチェ素子は、受熱部が受熱した熱をヒートシンクに伝導させる。そして、冷却ファンは、ヒートシンクに冷却空気を送風して、ヒートシンクの熱を放熱させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された冷却装置は、冷却液体の流路の状態を診断する機能を有していない。そのため、例えば、流路が閉塞状態に陥った場合には、冷却対象である液晶パネルが冷却されない状態でプロジェクターが使用される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様の流路診断方法は、冷却対象を冷却するための冷媒が循環する流路に、前記冷媒を送出するポンプの回転数を取得することと、環境温度を取得することと、前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、を含む。
【0006】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、光学装置と、前記光学装置に配置される冷却器と、前記冷却器に接続される流路と、前記流路に冷媒を送出するポンプと、環境温度を検出するセンサーと、前記ポンプの回転数を取得することと、前記センサーの出力信号に基づいて前記環境温度を取得することと、前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、を実行する制御回路と、を備える。
【0007】
本発明の一つの態様の冷却装置は、冷却器と、前記冷却器に接続される流路と、前記流路に冷媒を送出するポンプと、環境温度を検出するセンサーと、前記ポンプの回転数を取得することと、前記センサーの出力信号に基づいて前記環境温度を取得することと、前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、を実行する制御回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態におけるプロジェクターの構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態における冷却装置の構成を示す模式図である。
【
図3】制御回路が実行する流路診断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている場合がある。
【0010】
図1は、本実施形態におけるプロジェクター1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、内部に設けられた光源装置31から出射された光を変調して画像情報に応じた画像光を形成し、形成した画像光をスクリーン等の被投射面に拡大投射する。
【0011】
図1に示すように、プロジェクター1は、外装筐体2と、外装筐体2に収容される画像投射装置3と、を備える。この他、
図1では図示を省略するが、プロジェクター1は、プロジェクター1の動作を制御する制御装置、プロジェクター1を構成する電子部品に電力を供給する電源装置、及び、プロジェクター1を構成する冷却対象を冷却する冷却装置100を備える。冷却装置100の詳細については後述する。
【0012】
画像投射装置3は、制御装置から入力される画像情報に応じた画像光を形成し、形成された画像光を投射する。画像投射装置3は、光源装置31と、均一化光学系32と、色分離光学系33と、リレー光学系34と、画像形成装置35と、光学部品用筐体36と、投射光学装置37と、を備える。
【0013】
光源装置31は、均一化光学系32に照明光を出射する。光源装置31の構成としては、例えば、励起光である青色光を出射する固体光源と、固体光源から出射された青色光のうちの少なくとも一部を、緑色光及び赤色光を含む蛍光に変換する波長変換素子と、を有する構成を例示できる。なお、光源装置31の他の構成としては、超高圧水銀ランプ等の光源ランプを有する構成、或いは、青色光、緑色光及び赤色光を個別に出射する発光素子を有する構成を例示できる。
【0014】
均一化光学系32は、光源装置31から出射された光を均一化する。均一化された光は、色分離光学系33及びリレー光学系34を経て、後述する透過型液晶パネル353の変調領域を照明する。均一化光学系32は、2つのレンズアレイ321、322、偏光変換素子323及び重畳レンズ324を備える。
【0015】
色分離光学系33は、均一化光学系32から入射される光を、赤色光、緑色光及び青色光の各色光に分離する。色分離光学系33は、2つのダイクロイックミラー331、332と、ダイクロイックミラー331によって分離された青色光を反射させる反射ミラー333と、を備える。
【0016】
リレー光学系34は、他の色光の光路よりも長い赤色光の光路に設けられ、赤色光の損失を抑制する。リレー光学系34は、入射側レンズ341、リレーレンズ343、反射ミラー342、344を備える。本実施形態では、リレー光学系34に赤色光を導くこととした。しかしながら、これに限らず、例えば他の色光より光路が長い色光を青色光とし、青色光をリレー光学系34に導く構成としてもよい。
【0017】
画像形成装置35は、入射される赤色光、緑色光及び青色光の各色光を変調し、変調された各色光を合成して、画像光を形成する。画像形成装置35は、入射される色光に応じて設けられる3つのフィールドレンズ351と、3つの入射側偏光板352と、3つの透過型液晶パネル353と、3つの出射側偏光板354と、1つの色合成光学系355と、を有する。以下の説明では、透過型液晶パネル353を、液晶パネル353と略す場合がある。
【0018】
液晶パネル353は、光源装置31から出射された光を、制御装置から入力する画像信号に基づいて変調する。液晶パネル353は、光学装置の一例である。具体的に、液晶パネル353は、入射側偏光板352から入射する色光を、制御装置から入力する画像信号に応じて変調し、変調された色光を出射する。3つの液晶パネル353は、赤色光用の液晶パネル353R、緑色光用の液晶パネル353G、及び、青色光用の液晶パネル353Bを含む。
【0019】
色合成光学系355は、液晶パネル353B、353G、353Rによって変調された3つの色光を合成して、画像光を形成する。色合成光学系355によって形成された画像光は、投射光学装置37に入射する。本実施形態では、色合成光学系355は、略直方体状のクロスダイクロイックプリズムによって構成されているが、複数のダイクロイックミラーによって構成されていてもよい。
【0020】
光学部品用筐体36は、上記した均一化光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34及び画像形成装置35を内部に収容する。なお、画像投射装置3には、設計上の光軸Axが設定されており、光学部品用筐体36は、光軸Axにおける所定位置に均一化光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34及び画像形成装置35を保持する。光源装置31及び投射光学装置37は、光軸Axにおける所定位置に配置される。
【0021】
投射光学装置37は、画像形成装置35から入射する画像光をスクリーン等の被投射面に投射する。投射光学装置37は、例えば、図示しない複数のレンズと、複数のレンズを収容する鏡筒371と、を備える組レンズとすることができる。
【0022】
上記のように構成されたプロジェクター1は、3つの液晶パネル353B、353G及び353Rを冷却する冷却装置100をさらに備える。液晶パネル353B、353G及び353Rは、冷却対象の一例である。以下では、
図2を参照しながら、冷却装置100の構成について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態における冷却装置100の構成を示す模式図である。
図2に示すように、冷却装置100は、3つの第1温度センサー41と、第2温度センサー42と、3つの熱電変換デバイス50と、タンク93と、ラジエーター94と、ポンプ95と、8つの流路96と、制御回路97と、3つの冷却器98と、2つのカプラー99と、を備える。
【0024】
3つの第1温度センサー41のそれぞれは、制御回路97と電気的に接続される。3つの第1温度センサー41は、液晶パネル353Bに配置される第1温度センサー41Bと、液晶パネル353Gに配置される第1温度センサー41Gと、液晶パネル353Rに配置される第1温度センサー41Rと、を含む。一例として、3つの第1温度センサー41のそれぞれは、サーミスターである。
【0025】
第1温度センサー41Bは、液晶パネル353Bの温度を検出する。第1温度センサー41Bは、液晶パネル353Bの温度を示す電気信号を制御回路97に出力する。
第1温度センサー41Gは、液晶パネル353Gの温度を検出する。第1温度センサー41Gは、液晶パネル353Gの温度を示す電気信号を制御回路97に出力する。
第1温度センサー41Rは、液晶パネル353Rの温度を検出する。第1温度センサー41Rは、液晶パネル353Rの温度を示す電気信号を制御回路97に出力する。
【0026】
3つの熱電変換デバイス50のそれぞれは、制御回路97と電気的に接続される。3つの熱電変換デバイス50は、液晶パネル353Bに配置される熱電変換デバイス50Bと、液晶パネル353Gに配置される熱電変換デバイス50Gと、液晶パネル353Rに配置される熱電変換デバイス50Rと、を含む。一例として、3つの熱電変換デバイス50のそれぞれは、ペルチェ素子である。
【0027】
熱電変換デバイス50Bは、制御回路97から供給される電力に応じて、液晶パネル353Bの熱を吸収する。熱電変換デバイス50Bは、液晶パネル353Bから吸収した熱を、後述の冷却器98Bに放出する。
熱電変換デバイス50Gは、制御回路97から供給される電力に応じて、液晶パネル353Gの熱を吸収する。熱電変換デバイス50Gは、液晶パネル353Gから吸収した熱を、後述の冷却器98Gに放出する。
熱電変換デバイス50Rは、制御回路97から供給される電力に応じて、液晶パネル353Rの熱を吸収する。熱電変換デバイス50Rは、液晶パネル353Rから吸収した熱を、後述の冷却器98Rに放出する。
【0028】
8つの流路96は、冷却対象を冷却するための冷媒Fが循環する流路である。一例として、8つの流路96のそれぞれは、ヒートパイプ等の管状部材である。8つの流路96は、第1流路96Aと、第2流路96Bと、第3流路96Cと、第4流路96Dと、第5流路96Eと、第6流路96Fと、第7流路96Gと、第8流路96Hと、を含む。
【0029】
3つの冷却器98は、液晶パネル353Bに配置される冷却器98Bと、液晶パネル353Gに配置される冷却器98Gと、液晶パネル353Rに配置される冷却器98Rと、を含む。一例として、3つの冷却器98のそれぞれは、冷媒Fが内部を流通するコールドプレートである。
【0030】
タンク93は、冷媒Fを貯留する。ラジエーター94は、第1流路96Aを介してタンク93と接続される。ラジエーター94は、第1流路96Aを介してタンク93から流入する冷媒Fを冷却する。
【0031】
ポンプ95は、制御回路97と電気的に接続される。ポンプ95は、第2流路96Bを介してラジエーター94と接続される。ポンプ95は、第3流路96C及び第4流路96Dを介して冷却器98Bと接続される。第3流路96Cは、2つのカプラー99のうち第1カプラー99Aを介して第4流路96Dと接続される。
【0032】
ポンプ95は、制御回路97からポンプ95に出力される制御信号に応じて回転することにより、ラジエーター94から流入する冷媒Fを、冷却器98Bに接続される第3流路96C及び第4流路96Dに送出する。ポンプ95は、ポンプ95の回転数を示す電気信号を制御回路97に出力する。以下では、ポンプ95の回転数を示す電気信号を回転数信号と呼称する場合がある。
【0033】
ポンプ95から送出される冷媒Fは、冷却器98Bの内部を流通する。熱電変換デバイス50Bから冷却器98Bに放出された熱は、冷却器98Bの内部を流通する冷媒Fに伝達される。その結果、液晶パネル353Bが冷却される。
【0034】
冷却器98Bは、第5流路96Eを介して冷却器98Gと接続される。第5流路96Eを介して冷却器98Bから冷却器98Gに流入する冷媒Fは、冷却器98Gの内部を流通する。熱電変換デバイス50Gから冷却器98Gに放出された熱は、冷却器98Gの内部を流通する冷媒Fに伝達される。その結果、液晶パネル353Gが冷却される。
【0035】
冷却器98Gは、第6流路96Fを介して冷却器98Rと接続される。第6流路96Fを介して冷却器98Gから冷却器98Rに流入する冷媒Fは、冷却器98Rの内部を流通する。熱電変換デバイス50Rから冷却器98Rに放出された熱は、冷却器98Rの内部を流通する冷媒Fに伝達される。その結果、液晶パネル353Rが冷却される。
【0036】
冷却器98Rは、第7流路96G及び第8流路96Hを介してタンク93と接続される。第7流路96Gは、2つのカプラー99のうち第2カプラー99Bを介して第8流路96Hと接続される。このように、タンク93に貯留される冷媒Fは、流路96を介して、ラジエーター94、ポンプ95、冷却器98B、冷却器98G、及び冷却器98Rの順で循環し、再びタンク93に戻る。冷媒Fが循環する冷却器98の順は一例であり、冷媒Fが異なる順で冷却器98を循環するように構成してもよい。
【0037】
第2温度センサー42は、制御回路97と電気的に接続される。第2温度センサー42は、環境温度を検出するセンサーである。例えば、第2温度センサー42は、環境温度として、プロジェクター1の外気温を検出する。第2温度センサー42が外気温を検出する場合、第2温度センサー42は、プロジェクター1の吸気口の周辺、或いはプロジェクター1の冷却ファンの周辺に配置されてもよい。第2温度センサー42は、環境温度を示す電気信号を制御回路97に出力する。以下の説明では、第2温度センサー42の出力信号を環境温度信号と呼称する場合がある。一例として、第2温度センサー42は、サーミスターである。
【0038】
制御回路97は、3つの第1温度センサー41の出力信号に基づいて、3つの熱電変換デバイス50と、ポンプ95とを制御することにより、3つの液晶パネル353B、353G及び353Rを冷却する。
【0039】
例えば、制御回路97は、不図示のメモリーに予め記憶されたプログラムに従って、3つの熱電変換デバイス50と、ポンプ95とを制御するプロセッサーである。一例を挙げると、プロセッサーは、単数または複数のCPU(Central Processing Unit)によって構成される。プロセッサーの機能の一部または全部は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路によって構成されてもよい。プロセッサーは、各種の処理を並列的または逐次的に実行する。
制御回路97は、プロセッサーに限らず、アナログ回路またはデジタル回路によって構成されてもよい。或いは、制御回路97は、アナログ回路とデジタル回路とを組み合わせた回路によって構成されてもよい。
【0040】
例えば、制御回路97は、3つの第1温度センサー41の出力信号に基づいて、液晶パネル353B、353G及び353Rの少なくとも1つの温度が所定の適温範囲の上限値を超えていると判定した場合に、冷却処理を実行する。冷却処理としては、ポンプ95の出力上昇に伴う冷媒Fの流量増加と、熱電変換デバイス50の出力上昇に伴う熱電変換デバイス50の吸熱量の増加とのうち、少なくとも一方が含まれる。
【0041】
ところで、例えば、2つのカプラー99のうち少なくとも1つが未装着状態にある場合、冷媒Fが循環する流路96が閉塞した状態に陥る。その場合、冷媒Fが3つの冷却器98に流通しなくなるため、冷却対象である液晶パネル353B、353G及び353Rを十分に冷却することが困難となる。なお、「カプラー99が未装着状態にある」とは、プラグ及びソケットによって構成されるカプラー99において、プラグがソケットに嵌め込まれていない状態を意味する。
【0042】
そこで、本実施形態では、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥ったことが原因で、冷却対象が冷却されない状態に陥ることを回避するために、制御回路97は、第2温度センサー42から出力される環境温度信号と、ポンプ95から出力される回転数信号とに基づいて、冷媒Fが循環する流路96の状態を診断する流路診断処理を実行する。
【0043】
以下、制御回路97が実行する流路診断処理について、
図3を参照しながら詳細に説明する。
図3は、制御回路97が実行する流路診断処理を示すフローチャートである。制御回路97が、
図3に示される流路診断処理を実行することにより、本実施形態における流路診断方法が実現される。
【0044】
例えば、制御回路97は、プロジェクター1に接続されたパーソナルコンピューター等の外部機器から診断開始コマンドを受信した場合に、流路診断処理を実行する。または、制御回路97は、プロジェクター1の本体、或いはプロジェクター1のリモートコントローラーに設けられた操作キーが操作されることにより、診断開始の指示を受け付けたことを検知した場合に、流路診断処理を実行してもよい。
【0045】
制御回路97は、流路診断処理を開始すると、まず、ポンプ95に制御信号を出力することにより、ポンプ95を回転させる(ステップS1)。なお、制御回路97は、ポンプ95が回転し始めてから経過した時間を、ポンプ95の回転時間として計測する。
【0046】
そして、制御回路97は、ポンプ95の回転時間が所定時間以上か否かを判定する(ステップS2)。一例として、所定時間は2分である。すなわち、ステップS2において、制御回路97は、ポンプ95の回転時間が2分以上か否かを判定する。
【0047】
制御回路97は、ポンプ95の回転時間が2分未満の場合(ステップS2:NO)、ステップS2の処理を一定の時間間隔で繰り返す。一方、制御回路97は、ポンプ95の回転時間が2分以上の場合(ステップS2:YES)、後述のステップS3に移行する。このように、制御回路97は、ポンプ95が回転し始めてから所定時間が経過するまで待機する。この理由は、ポンプ95が回転し始めてから定常回転状態になるまで時間が必要であるからである。
【0048】
制御回路97は、ポンプ95が回転し始めてから2分が経過すると、ポンプ95から出力される回転数信号に基づいて、ポンプ95の回転数を取得する(ステップS3)。制御回路97がステップS3の処理を実行することは、冷却対象を冷却するための冷媒Fが循環する流路96に、冷媒Fを送出するポンプ95の回転数を取得すること、の一例である。
【0049】
そして、制御回路97は、第2温度センサー42から出力される環境温度信号に基づいて、環境温度を取得する(ステップS4)。制御回路97がステップS4の処理を実行することは、環境温度を取得すること、の一例である。
【0050】
そして、制御回路97は、回転数の取得回数が所定回数以上か否かを判定する(ステップS5)。一例として、所定回数は90回である。すなわち、ステップS5において、制御回路97は、回転数の取得回数が90回以上か否かを判定する。
【0051】
制御回路97は、回転数の取得回数が90回未満の場合(ステップS5:NO)、ステップS3の処理に戻る。一方、制御回路97は、回転数の取得回数が90回以上の場合(ステップS5:YES)、回転数及び環境温度のそれぞれの平均値を算出する(ステップS6)。
【0052】
上記のように、制御回路97は、回転数の取得回数が所定回数以上となるまで、ステップS3及びS4の処理を一定の時間間隔で繰り返す。例えば、制御回路97は、回転数の取得回数が所定回数以上となるまで、ステップS3及びS4の処理を2秒間隔で繰り返す。このように制御回路97が、ステップS3及びS4の処理を繰り返すことは、回転数の取得回数が所定回数以上となるまで、回転数を取得することと、環境温度を取得することとを繰り返すこと、の一例である。
【0053】
制御回路97がステップS6の処理を実行することは、回転数の取得回数が所定回数以上の場合に、回転数及び環境温度のそれぞれの平均値を算出すること、の一例である。以下の説明では、回転数の平均値を平均回転数と呼称し、環境温度の平均値を平均環境温度と呼称する場合がある。
【0054】
制御回路97は、上記のように平均回転数及び平均環境温度を取得すると、平均環境温度が第1温度未満か否かを判定する(ステップS7)。一例として、第1温度は10℃である。すなわち、ステップS7において、制御回路97は、平均環境温度が10℃未満か否かを判定する。
【0055】
制御回路97は、平均環境温度が10℃未満の場合(ステップS7:YES)、回転数の閾値として第1閾値を設定する(ステップS8)。制御回路97がステップS8の処理を実行することは、環境温度が第1温度未満の場合に、回転数の閾値として第1閾値を設定すること、の一例である。制御回路97は、ステップS8の処理を実行した後、後述のステップS12に移行する。
【0056】
一方、制御回路97は、平均環境温度が10℃以上の場合(ステップS7:NO)、平均環境温度が第1温度以上且つ第2温度未満か否かを判定する(ステップS9)。第2温度は、第1温度より高い。一例として、第2温度は25℃である。すなわち、ステップS9において、制御回路97は、平均環境温度が10℃以上且つ25℃未満か否かを判定する。
【0057】
制御回路97は、平均環境温度が10℃以上且つ25℃未満の場合(ステップS9:YES)、回転数の閾値として第1閾値より高い第2閾値を設定する(ステップS10)。制御回路97がステップS10の処理を実行することは、環境温度が第1温度以上の場合に、閾値として第1閾値より高い第2閾値を設定すること、の一例である。ここで、第2閾値を設定することは、環境温度が第1温度以上且つ第2温度未満の場合に、閾値として第2閾値を設定すること、である。制御回路97は、ステップS10の処理を実行した後、後述のステップS12に移行する。
【0058】
一方、制御回路97は、平均環境温度が25℃以上の場合(ステップS9:NO)、回転数の閾値として第2閾値より高い第3閾値を設定する(ステップS11)。制御回路97がステップS11の処理を実行することは、環境温度が第1温度より高い第2温度以上の場合に、閾値として第2閾値より高い第3閾値を設定すること、の一例である。制御回路97は、ステップS11の処理を実行した後、後述のステップS12に移行する。
【0059】
図4は、回転数の閾値に関する説明図である。
図4において、横軸は環境温度を示し、縦軸はポンプ95の回転数を示す。
図4において、Th1は第1閾値を示し、Th2は第2閾値を示し、Th3は第3閾値を示す。
図4において、曲線C11は、2つのカプラー99のうち少なくとも1つが未装着状態にある場合、すなわち冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥った場合に、環境温度と回転数との対応関係を測定することで得られた曲線である。曲線C21は、2つのカプラー99の両方が装着状態にある場合、すなわち流路96が閉塞状態に陥っていない場合に、環境温度と回転数との対応関係を測定することで得られた曲線である。
【0060】
曲線C11と曲線C21とは、縦軸の方向に離れている。そのため、回転数の閾値を、曲線C11と曲線C21との間の領域に含まれる値に設定すれば、回転数の実測値と閾値と比較することによって、流路96が閉塞状態に陥っているか否かを判定することができる。例えば、回転数の実測値が閾値未満の場合、流路96は閉塞状態に陥っていない、すなわち流路96は正常であると判定でき、回転数の実測値が閾値以上の場合、流路96は閉塞状態に陥っている、すなわち流路96は異常であると判定できる。
【0061】
しかしながら、
図4に示されるように、曲線C11及び曲線C21のそれぞれにおいて、環境温度の低下に伴って、回転数も低下する。そのため、仮に、回転数の実測値を1つの閾値とだけ比較すると、環境温度によっては流路96の状態を正確に判定できない可能性がある。そこで、本実施形態では、回転数の閾値として3つの閾値、すなわち第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3を予め用意しておき、環境温度の実測値に応じて、回転数の閾値を、第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3のいずれかに設定する。
【0062】
さらに、本実施形態では、第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3は、プロジェクター1の個体バラツキの影響を受けない値に設定される。
図4において、曲線C12は、流路96が閉塞状態に陥った複数のプロジェクター1について、環境温度と回転数との対応関係を測定することで得られた複数の曲線のうち、回転数が最も低い曲線、もしくは複数の曲線から算出した値を示す曲線である。
図4において、曲線C22は、流路96が閉塞状態に陥っていない複数のプロジェクター1について、環境温度と回転数との対応関係を測定することで得られた複数の曲線のうち、回転数が最も高い曲線、もしくは複数の曲線から算出した値を示す曲線である。プロジェクター1の個体バラツキの影響を受けないように、第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3は、曲線C12と曲線C22との間の領域に含まれる値に設定される。
【0063】
第1閾値Th1は、曲線C12と曲線C22との間の領域であって、且つ環境温度が10℃未満の領域に含まれる値に設定される。第2閾値Th2は、曲線C12と曲線C22との間の領域であって、且つ環境温度が10℃以上且つ25℃未満の領域に含まれる値に設定される。第2閾値Th2は、第1閾値Th1より高い値に設定される。第3閾値Th3は、曲線C12と曲線C22との間の領域であって、且つ環境温度が25℃以上の領域に含まれる値に設定される。第3閾値Th3は、第2閾値Th2より高い値に設定される。
【0064】
本実施形態では、上記のような第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3が予め用意されており、制御回路97は、環境温度の実測値に応じて、回転数の閾値を、第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3のいずれかに設定する。つまり、既に説明したように、制御回路97は、平均環境温度が10℃未満の場合に、回転数の閾値として第1閾値Th1を設定する。制御回路97は、平均環境温度が10℃以上且つ25℃未満の場合に、回転数の閾値として第2閾値Th2を設定する。制御回路97は、平均環境温度が25℃以上の場合に、回転数の閾値として第3閾値Th3を設定する。
【0065】
以下、
図3に戻って説明を続ける。
制御回路97は、ステップS8、S10及びS11のいずれか1つの処理を実行した後、平均回転数が閾値未満か否かを判定する(ステップS12)。制御回路97は、平均回転数が閾値未満の場合(ステップS12:YES)、流路96が正常であると判定する(ステップS13)。制御回路97がステップS13の処理を実行することは、回転数が閾値未満の場合に、流路96が正常であると判定すること、の一例である。
【0066】
一方、制御回路97は、平均回転数が閾値以上の場合(ステップS12:NO)、流路96が異常であると判定する(ステップS14)。制御回路97がステップS14の処理を実行することは、回転数が閾値以上の場合に、流路96が異常であると判定すること、の一例である。
【0067】
平均環境温度が10℃未満の場合には、第1閾値Th1が回転数の閾値として設定される。
図4から理解されるように、平均回転数が第1閾値Th1未満であれば、流路96は閉塞状態に陥っていないと推定されるため、流路96は正常であると判定できる。一方、平均回転数が第1閾値Th1以上であれば、流路96は閉塞状態に陥っていると推定されるため、流路96は異常であると判定できる。
【0068】
平均環境温度が10℃以上25℃未満の場合には、第2閾値Th2が回転数の閾値として設定される。
図4から理解されるように、平均回転数が第2閾値Th2未満であれば、流路96は閉塞状態に陥っていないと推定されるため、流路96は正常であると判定できる。一方、平均回転数が第2閾値Th2以上であれば、流路96は閉塞状態に陥っていると推定されるため、流路96は異常であると判定できる。
【0069】
平均環境温度が25℃以上の場合には、第3閾値Th3が回転数の閾値として設定される。
図4から理解されるように、平均回転数が第3閾値Th3未満であれば、流路96は閉塞状態に陥っていないと推定されるため、流路96は正常であると判定できる。一方、平均回転数が第3閾値Th3以上であれば、流路96は閉塞状態に陥っていると推定されるため、流路96は異常であると判定できる。
【0070】
以上が流路診断処理に関する説明である。
制御回路97は、流路診断処理において、流路96の判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知してもよい。例えば、光を用いる場合、制御回路97は、プロジェクター1に設けられたLEDランプを、流路96の判定結果に応じた色で発光させる。例えば、音を用いる場合、制御回路97は、プロジェクター1に設けられたスピーカーを制御することにより、流路96の判定結果に応じた音をスピーカーから出力する。例えば、画像を用いる場合、制御回路97は、液晶パネル353を制御することにより、流路96の判定結果を示す画像をスクリーン等の被投射面に投射する。
制御回路97は、流路診断処理において、流路96の判定結果を含む制御情報を生成し、生成した制御情報を制御装置に送信しても良い。制御装置は、受信した制御情報に含まれる判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知してもよい。
【0071】
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の流路診断方法は、冷却対象を冷却するための冷媒Fが循環する流路96に、冷媒Fを送出するポンプ95の回転数を取得することと、環境温度を取得することと、環境温度が第1温度未満の場合に、回転数の閾値として第1閾値を設定することと、環境温度が第1温度以上の場合に、閾値として第1閾値より高い第2閾値を設定することと、回転数が閾値未満の場合に、流路96が正常であると判定することと、回転数が閾値以上の場合に、流路96が異常であると判定することと、を含む。
本実施形態の流路診断方法によれば、例えば、2つのカプラー99のうち少なくとも1つが未装着状態にあることが原因で、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥った場合に、流路96が異常であると判定することができる。従って、本実施形態の流路診断方法によれば、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥ったことが原因で、冷却対象が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0072】
本実施形態の流路診断方法は、環境温度が第1温度より高い第2温度以上の場合に、閾値として第2閾値より高い第3閾値を設定すること、をさらに含み、第2閾値を設定することは、環境温度が第1温度以上且つ第2温度未満の場合に、閾値として第2閾値を設定することである。
本実施形態の流路診断方法によれば、取得された環境温度に応じて、回転数の閾値が、第1閾値、第2閾値、及び第3閾値を含む3つの閾値候補から選択された1つに設定されるため、流路96の状態判定精度をより高めることができる。
【0073】
本実施形態の流路診断方法は、回転数の取得回数が所定回数以上となるまで、回転数を取得することと、環境温度を取得することとを繰り返すことと、回転数の取得回数が所定回数以上の場合に、回転数及び環境温度のそれぞれの平均値を算出することと、をさらに含む。
本実施形態の流路診断方法によれば、複数回取得された回転数及び環境温度のそれぞれの平均値を算出することにより、取得された回転数及び環境温度のバラツキが低減されるため、流路96の状態判定精度をより高めることができる。
【0074】
本実施形態の流路診断方法は、流路96の判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知すること、をさらに含む。
本実施形態の流路診断方法によれば、流路96の判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知することにより、流路96の判定結果、すなわち流路96の診断結果をユーザーに知らせることができる。
【0075】
本実施形態の流路診断方法は、流路96の判定結果を含む制御情報を生成すること、をさらに含む。
本実施形態の流路診断方法によれば、流路96の判定結果を含む制御情報を生成することにより、この制御情報を、制御装置等の様々な装置に提供することができる。
【0076】
本実施形態の流路診断方法において、冷却対象は、光学装置である。
本実施形態の流路診断方法によれば、冷却対象が光学装置であるため、流路96が閉塞状態に陥ったことが原因で、光学装置が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0077】
本実施形態の流路診断方法において、冷却対象に冷却器が配置され、流路は冷却器に接続され、冷媒は流路を介して冷却器に送られる。
本実施形態の流路診断方法によれば、冷却対象に冷却器が配置され、流路は冷却器に接続され、冷媒は流路を介して冷却器に送られるため、冷却対象をより効果的に冷却することができる。
【0078】
本実施形態の流路診断方法において、前記冷却対象に熱電変換デバイスが配置される。
本実施形態の流路診断方法によれば、冷却対象に熱電変換デバイスが配置されるため、冷却対象をより効果的に冷却することができる。また、通常、液冷方式では液体冷媒の比熱が高いため急速な温度調整が難しいが、ペルチェ素子等の熱電変換デバイスを用いて、急速に冷却が行えるため、電力を抑えることができる。
【0079】
本実施形態のプロジェクター1は、光学装置の一例である液晶パネル353と、液晶パネル353に配置される冷却器98と、冷却器98に接続される流路96と、流路96に冷媒Fを送出するポンプ95と、環境温度を検出するセンサーの一例である第2温度センサー42と、ポンプ95の回転数を取得することと、第2温度センサー42の出力信号に基づいて環境温度を取得することと、環境温度が第1温度未満の場合に、回転数の閾値として第1閾値を設定することと、環境温度が第1温度以上の場合に、閾値として第1閾値より高い第2閾値を設定することと、回転数が閾値未満の場合に、流路96が正常であると判定することと、回転数が閾値以上の場合に、流路96が異常であると判定することと、を実行する制御回路97と、を備える。
本実施形態のプロジェクター1によれば、例えば、2つのカプラー99のうち少なくとも1つが未装着状態にあることが原因で、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥った場合に、制御回路97は、流路96が異常であると判定することができる。従って、本実施形態のプロジェクター1によれば、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥ったことが原因で、液晶パネル353が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0080】
本実施形態の冷却装置100は、冷却器98と、冷却器98に接続される流路96と、流路96に冷媒Fを送出するポンプ95と、環境温度を検出するセンサーの一例である第2温度センサー42と、ポンプ95の回転数を取得することと、第2温度センサー42の出力信号に基づいて環境温度を取得することと、環境温度が第1温度未満の場合に、回転数の閾値として第1閾値を設定することと、環境温度が第1温度以上の場合に、閾値として第1閾値より高い第2閾値を設定することと、回転数が閾値未満の場合に、流路96が正常であると判定することと、回転数が閾値以上の場合に、流路96が異常であると判定することと、を実行する制御回路97と、を備える。
本実施形態の冷却装置100によれば、例えば、2つのカプラー99のうち少なくとも1つが未装着状態にあることが原因で、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥った場合に、制御回路97は、流路96が異常であると判定することができる。従って、本実施形態の冷却装置100によれば、冷媒Fの流路96が閉塞状態に陥ったことが原因で、冷却対象が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0081】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0082】
上記実施形態では、第1閾値、第2閾値、及び第3閾値を含む3つの閾値候補から選択された1つを、回転数の閾値として設定する形態を例示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1閾値及び第2閾値を含む2つの閾値候補から選択された1つを、回転数の閾値として設定してもよい。或いは、4つ以上の閾値候補から選択された1つを、回転数の閾値として設定してもよい。
【0083】
上記実施形態では、冷却対象である光学装置が透過型液晶パネル353である形態を例示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、冷却対象である光学装置は、反射型液晶パネル等の他の光学装置でもよい。上記実施形態では、プロジェクター1の液晶パネル353を冷却する冷却装置100を例示したが、本開示の冷却装置は、様々な冷却対象を冷却する装置として広く適用することができる。
【0084】
〔本開示のまとめ〕
以下、本開示のまとめを付記する。
【0085】
(付記1)冷却対象を冷却するための冷媒が循環する流路に、前記冷媒を送出するポンプの回転数を取得することと、環境温度を取得することと、前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、を含む、流路診断方法。
【0086】
付記1に記載の流路診断方法によれば、例えば冷媒の流路が閉塞状態に陥った場合に、流路が異常であると判定することができる。従って、付記1に記載の流路診断方法によれば、冷媒の流路が閉塞状態に陥ったこと等が原因で、冷却対象が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0087】
(付記2)前記環境温度が前記第1温度より高い第2温度以上の場合に、前記閾値として前記第2閾値より高い第3閾値を設定すること、をさらに含み、前記第2閾値を設定することは、前記環境温度が前記第1温度以上且つ前記第2温度未満の場合に、前記閾値として前記第2閾値を設定することである、付記1に記載の流路診断方法。
【0088】
付記2に記載の流路診断方法によれば、取得された環境温度に応じて、回転数の閾値が、第1閾値、第2閾値、及び第3閾値を含む3つの閾値候補から選択された1つに設定されるため、流路の状態判定精度をより高めることができる。
【0089】
(付記3)前記回転数の取得回数が所定回数以上となるまで、前記回転数を取得することと、前記環境温度を取得することとを繰り返すことと、前記回転数の取得回数が前記所定回数以上の場合に、前記回転数及び前記環境温度のそれぞれの平均値を算出することと、をさらに含む、付記1または2に記載の流路診断方法。
【0090】
付記3に記載の流路診断方法によれば、複数回取得された回転数及び環境温度のそれぞれの平均値を算出することにより、取得された回転数及び環境温度のバラツキが低減されるため、流路の状態判定精度をより高めることができる。
【0091】
(付記4)前記流路の判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知すること、をさらに含む、付記1から3のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【0092】
付記4に記載の流路診断方法によれば、流路の判定結果を、光、音、及び画像の少なくとも1つを用いて報知することにより、流路の判定結果、すなわち流路の診断結果をユーザーに知らせることができる。
【0093】
(付記5)前記流路の判定結果を含む制御情報を生成すること、をさらに含む、付記1から4のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【0094】
付記5に記載の流路診断方法によれば、流路の判定結果を含む制御情報を生成することにより、この制御情報を様々な装置に提供することができる。
【0095】
(付記6)前記冷却対象は、光学装置である、付記1から5のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【0096】
付記6に記載の流路診断方法によれば、冷却対象が光学装置であるため、流路が閉塞状態に陥ったことが原因で、光学装置が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0097】
(付記7)前記冷却対象に冷却器が配置され、前記流路は前記冷却器に接続され、前記冷媒は前記流路を介して前記冷却器に送られる、付記1から6のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【0098】
付記7に記載の流路診断方法によれば、冷却対象に冷却器が配置され、流路は冷却器に接続され、冷媒は流路を介して冷却器に送られるため、冷却対象をより効果的に冷却することができる。
【0099】
(付記8)前記冷却対象に熱電変換デバイスが配置される、付記1から7のいずれか一項に記載の流路診断方法。
【0100】
付記8に記載の流路診断方法によれば、冷却対象に熱電変換デバイスが配置されるため、冷却対象をより効果的に冷却することができる。また、通常、液冷方式では液体冷媒の比熱が高いため急速な温度調整が難しいが、ペルチェ素子等の熱電変換デバイスを用いて、急速に冷却が行えるため、電力を抑えることができる。
【0101】
(付記9)光学装置と、前記光学装置に配置される冷却器と、前記冷却器に接続される流路と、前記流路に冷媒を送出するポンプと、環境温度を検出するセンサーと、前記ポンプの回転数を取得することと、前記センサーの出力信号に基づいて前記環境温度を取得することと、前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、を実行する制御回路と、を備える、プロジェクター。
【0102】
付記9に記載のプロジェクターによれば、例えば冷媒の流路が閉塞状態に陥った場合に、制御回路は、流路が異常であると判定することができる。従って、付記8に記載のプロジェクターによれば、冷媒の流路が閉塞状態に陥ったこと等が原因で、光学装置が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【0103】
(付記10)冷却器と、前記冷却器に接続される流路と、前記流路に冷媒を送出するポンプと、環境温度を検出するセンサーと、前記ポンプの回転数を取得することと、前記センサーの出力信号に基づいて前記環境温度を取得することと、前記環境温度が第1温度未満の場合に、前記回転数の閾値として第1閾値を設定することと、前記環境温度が前記第1温度以上の場合に、前記閾値として前記第1閾値より高い第2閾値を設定することと、前記回転数が前記閾値未満の場合に、前記流路が正常であると判定することと、前記回転数が前記閾値以上の場合に、前記流路が異常であると判定することと、を実行する制御回路と、を備える、冷却装置。
【0104】
付記10に記載の冷却装置によれば、例えば冷媒の流路が閉塞状態に陥った場合に、制御回路は、流路が異常であると判定することができる。従って、付記9に記載の冷却装置によれば、冷媒の流路が閉塞状態に陥ったこと等が原因で、冷却対象が冷却されない状態に陥ることを回避することができる。
【符号の説明】
【0105】
1…プロジェクター、353…透過型液晶パネル(光学装置)、41…第1温度センサー、42…第2温度センサー、50…熱電変換デバイス、93…タンク、94…ラジエーター、95…ポンプ、96…流路、97…制御回路、98…冷却器、99…カプラー、100…冷却装置、F…冷媒