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特開2024-106509放送データのタイミングずれ補正装置及び放送データのタイミングずれ補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106509
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】放送データのタイミングずれ補正装置及び放送データのタイミングずれ補正方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/24 20110101AFI20240801BHJP
   H04N 21/242 20110101ALI20240801BHJP
   H04H 60/04 20080101ALI20240801BHJP
【FI】
H04N21/24
H04N21/242
H04H60/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010792
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】菅原 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】木浦 健一
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA29
5C164SB10P
5C164SB21S
5C164SB41P
5C164TA09S
5C164YA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】各RTPパケット間のタイミングずれを視聴者が許容できる一定の範囲にまで補正する放送データのタイミングずれ補正装置及び放送データのタイミングずれ補正方法を提供する。
【解決手段】放送データのタイミングずれ補正装置10は、映像データを格納する映像データ格納部14と、音声データを格納する音声データ格納部13と、映像データ格納部から読み出した映像データと音声データ格納部から読み出した音声データとの遅れを判定する第1の判定部18と、第1の判定部による判定の結果、音声データが映像データに対して所定の閾値以上の遅れであるとき、第1の判定部によって映像データ格納部に格納されている次の映像データと音声データとの遅れを判定し、音声データが映像データに対して進んでいるとき、音声データ格納部に格納されている次の音声データと映像データとの遅れを判定する制御部19と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データを格納する映像データ格納部と、
音声データを格納する音声データ格納部と、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記音声データ格納部から読み出し
た音声データとの遅れを判定する第1の判定部と、
前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが映像データに対して所定の閾値
未満の遅れであるとき、読み出した映像データと音声データとを出力し、前記第1の判定
部による判定の結果、前記音声データが前記映像データよりも所定の閾値以上の遅れであ
るとき、前記第1の判定部によって前記映像データ格納部に格納されている次の映像デー
タと前記音声データとの遅れを判定し、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声デ
ータが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第1の判定部によって前記音声データ
格納部に格納されている次の音声データと前記映像データとの遅れを判定する制御部と、
を有する放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項2】
前記所定の閾値が映像データにおける1フレーム時間である、
請求項1に記載の放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項3】
前記映像データ及び前記音声データはRTPパケットとして記憶されており、RTPパ
ケットのヘッダ情報から取得したタイミング情報に基づいて映像データと音声データとの
遅れを判定する、
請求項1又は請求項2に記載の放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項4】
映像データを格納する映像データ格納部と、
補助データを格納する補助データ格納部と、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記補助データ格納部から読み出し
た補助データとの遅れを判定する第2の判定部と、
前記第2の判定部による判定の結果、前記補助データが映像データに対して所定の閾値
未満の遅れであるとき、読み出した映像データと補助データとを出力し、前記第2の判定
部による判定の結果、前記補助データが前記映像データよりも所定の閾値以上の遅れであ
るとき、前記第2の判定部によって前記映像データ格納部に格納されている次の映像デー
タと前記補助データとの遅れを判定し、前記第2の判定部による判定の結果、前記補助デ
ータが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第2の判定部によって前記補助データ
格納部に格納されている次の補助データと前記映像データとの遅れを判定する制御部と、
を有する放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項5】
前記所定の閾値が映像データにおける1フレーム時間である、
請求項4に記載の放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項6】
前記映像データ及び前記補助データはRTPパケットとして記憶されており、RTPパ
ケットのヘッダ情報から取得したタイミング情報に基づいて映像データと補助データとの
遅れを判定する、
請求項4又は請求項5に記載の放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項7】
映像データを格納する映像データ格納部と、
音声データを格納する音声データ格納部と、
補助データを格納する補助データ格納部と、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記音声データ格納部から読み出し
た音声データとの遅れを判定する第1の判定部と、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記補助データ格納部から読み出した
補助データとの遅れを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが前記映像データよりも所定の閾
値以上の遅れであるとき、前記第1の判定部によって前記映像データ格納部に格納されて
いる次の映像データと前記音声データとの遅れを判定し、前記第1の判定部による判定の
結果、前記音声データが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第1の判定部によっ
て前記音声データ格納部に格納されている次の音声データを前記映像データとの遅れを判
定する制御部であって、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが映像デー
タに対して所定の閾値未満の遅れであるとき、前記映像データと前記音声データを読出し

前記第2の判定部による判定の結果、前記補助データが映像データに対して所定の閾値未
満の遅れであるとき、読み出した映像データ、音声データ及び補助データと出力し、前記
第2の判定部による判定の結果、前記補助データが前記映像データよりも所定の閾値以上
の遅れであるとき、前記第1の判定部によって前記映像データ格納部に格納されている次
の映像データと次の音声データとの遅れを判定し、前記第2の判定部による判定の結果、
前記補助データが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第2の判定部によって前記
補助データ格納部に格納されている次の補助データと前記映像データとの遅れを判定する
制御部と、
を有する放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項8】
前記所定の閾値が映像データにおける1フレーム時間である、
請求項7に記載の放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項9】
前記映像データ、前記音声データ及び前記補助データはRTPパケットとして記憶され
ており、RTPパケットのヘッダ情報から取得したタイミング情報に基づいて映像データ
、音声データ及び補助データとの遅れを判定する、
請求項7又は請求項8に記載の放送データのタイミングずれ補正装置。
【請求項10】
映像データを映像データ格納部に格納し、
音声データを音声データ格納部に格納し、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記音声データ格納部から読み出し
た音声データとの遅れを判定する第1の判定部で判定し、
前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが映像データに対して所定の閾値
未満の遅れであるとき、読み出した映像データと音声データとを出力し、前記第1の判定
部による判定の結果、前記音声データが前記映像データよりも所定の閾値以上の遅れであ
るとき、前記第1の判定部によって前記映像データ格納部に格納されている次の映像デー
タと前記音声データとの遅れを判定し、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声デ
ータが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第1の判定部によって前記音声データ
格納部に格納されている次の音声データと前記映像データとの遅れを判定する、
放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項11】
前記所定の閾値が映像データにおける1フレーム時間である、
請求項10に記載の放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項12】
前記映像データ及び前記音声データはRTPパケットとして記憶されており、RTPパ
ケットのヘッダ情報から取得したタイミング情報に基づいて映像データと音声データとの
遅れを判定する、
請求項10又は請求項11に記載の放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項13】
映像データを映像データ格納部に格納し、
補助データを補助データ格納部に格納し、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記補助データ格納部から読み出し
た補助データとの遅れを判定する第2の判定部で判定し、
前記第2の判定部による判定の結果、前記補助データが映像データに対して所定の閾値
未満の遅れであるとき、読み出した映像データと補助データとを出力し、前記第2の判定
部による判定の結果、前記補助データが前記映像データよりも所定の閾値以上の遅れであ
るとき、前記第2の判定部によって前記映像データ格納部に格納されている次の映像デー
タと前記補助データとの遅れを判定し、前記第2の判定部による判定の結果、前記補助デ
ータが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第2の判定部によって前記補助データ
格納部に格納されている次の補助データと前記映像データとの遅れを判定する、
放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項14】
前記所定の閾値が映像データにおける1フレーム時間である、
請求項13に記載の放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項15】
前記映像データ及び前記補助データはRTPパケットとして記憶されており、RTPパ
ケットのヘッダ情報から取得したタイミング情報に基づいて映像データと補助データとの
遅れを判定する、
請求項13又は請求項14に記載の放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項16】
映像データを映像データ格納部に格納し、
音声データを音声データ格納部に格納し、
補助データを補助データ格納部に格納し、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記音声データ格納部から読み出し
た音声データとの遅れを判定する第1の判定部で判定し、
前記映像データ格納部から読み出した映像データと前記補助データ格納部から読み出し
た補助データとの遅れを判定する第2の判定部で判定し、
前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが前記映像データよりも所定の閾
値以上の遅れであるとき、前記第1の判定部によって前記映像データ格納部に格納されて
いる次の映像データと前記音声データとの遅れを判定し、前記第1の判定部による判定の
結果、前記音声データが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第1の判定部によっ
て前記音声データ格納部に格納されている次の音声データを前記映像データとの遅れを判
定し、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが映像データに対して所定の
閾値未満の遅れであるとき、前記映像データと前記音声データを読出し、
前記第2の判定部による判定の結果、前記補助データが映像データに対して所定の閾値
未満の遅れであるとき、読み出した映像データ、音声データ及び補助データを出力し、前
記第2の判定部による判定の結果、前記補助データが前記映像データよりも所定の閾値以
上の遅れであるとき、前記第1の判定部によって前記映像データ格納部に格納されている
次の映像データと次の音声データとの遅れを判定し、前記第2の判定部による判定の結果
、前記補助データが前記映像データよりも進んでいるとき、前記第2の判定部によって前
記補助データ格納部に格納されている次の補助データと前記映像データとの遅れを判定す
る、
放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項17】
前記所定の閾値が映像データにおける1フレーム時間である、
請求項16に記載の放送データのタイミングずれ補正方法。
【請求項18】
前記映像データ、前記音声データ及び前記補助データはRTPパケットとして記憶され
ており、RTPパケットのヘッダ情報から取得したタイミング情報に基づいて映像データ
、音声データ及び補助データとの遅れを判定する、
請求項16又は請求項17に記載の放送データのタイミングずれ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放送データのタイミングずれ補正装置及び放送データのタイミン
グずれ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放送システムにおけるマスタ送出システムでは、スタジオ、回線センタ、サーバシステ
ム等から入力される素材を、運行システムに従い自動的に切り替え、効果処理部で文字や
ロゴの映像への重畳や、音声の加工/合成、字幕などの補助データの重畳を行っている。
その後、符号化、多重化部で、映像や音声の符号化や、データ放送や番組表などの付加情
報を多重化し、送信システムに出力する。
【0003】
近年、マスタ送出システムに入力される素材の伝送に関して、SDI(Serial
Digital Interface)をRTP(Real-time Transpo
rt Protocol)パケット化してIP(Internet Protocol)
ネットワークで伝送する伝送方式が実現されているが、SMPTE ST2110規格
では、映像、音声、補助データ(Ancillary。以下ANCと称する。)を、異な
るRTPパケットで伝送する。
【0004】
従って、ある送信装置からマスタ送出システムへ素材を伝送した際に、マスタ送出シス
テムが受信した映像、音声、ANCのRTPパケットの間には、伝送路で生じたタイミン
グのずれが発生する可能性がある。映像と音声の間のタイミングのずれ(リップシンク)
があると視聴者にとって違和感が生じるため、文献BT.1359-1に示されているよ
うに視聴者が許容できる一定の範囲に抑える必要がある。また、ANCには映像に対応し
た字幕や、局間制御信号などのタイミング情報が含まれているため、映像とANCのタイ
ミングのずれも放送に影響を及ぼす。
【0005】
特に、近年クラウド上にシステムを実現する方式も検討されており、放送局とクラウド
間などの伝送路も考えられるため、各放送データのタイミングずれは大きくなると予想さ
れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-162078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、上述したように映像、音声、ANCのRTPパケット受信時に伝送路上で発生
した遅延により、映像、音声、ANCのタイミング関係のずれが発生する。このタイミン
グ関係のずれが発生した映像、音声、ANCを加工し、加工後の映像、音声、ANCのR
TPパケットを送信すると、タイミング関係のずれが発生したまま各データを送信するこ
ととなる。
【0008】
また、RTPパケット受信時のタイミングずれの他に、マスタ送出システム内の映像処
理部、音声処理部、ANC処理部での処理レイテンシが同一でないために、装置内での処
理によるずれが発生する可能性もある。
【0009】
ここで、このような各放送データのタイミング関係のずれについて、特許文献1やSM
PTE ST2110-10にはRTPパケットのタイムスタンプを利用して、各パケッ
ト間の時間合わせをすることでこのタイミングずれが補正される旨が記載されている。
【0010】
しかし、これらの記載には具体的にこのタイミングずれを補正する方法まで言及がなく
、どのようにすれば文献BT.1359-1に示されているように視聴者が許容できる一
定の範囲にまでこのタイミングずれを補正することができるのか不明である。
【0011】
そこで本発明が解決しようとする課題は、各RTPパケット間のタイミングずれを視聴
者が許容できる一定の範囲にまで補正する放送データのタイミングずれ補正装置及び放送
データのタイミングずれ補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、実施形態の放送データのタイミングずれ補正装置は、映像
データを格納する映像データ格納部と、音声データを格納する音声データ格納部と、前記
映像データ格納部から読み出した映像データと前記音声データ格納部から読み出した音声
データとの遅れを判定する第1の判定部と、前記第1の判定部による判定の結果、前記音
声データが映像データに対して所定の閾値未満の遅れであるとき、読み出した映像データ
と音声データとを出力し、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが前記映
像データよりも所定の閾値以上の遅れであるとき、前記第1の判定部によって前記映像デ
ータ格納部に格納されている次の映像データと前記音声データとの遅れを判定し、前記第
1の判定部による判定の結果、前記音声データが前記映像データよりも進んでいるとき、
前記第1の判定部によって前記音声データ格納部に格納されている次の音声データと前記
映像データとの遅れを判定する制御部とを有する。
【0013】
また、上記課題を解決するために、実施形態の放送データのタイミングずれ補正方法は
、映像データを映像データ格納部に格納し、音声データを音声データ格納部に格納し、前
記映像データ格納部から読み出した映像データと前記音声データ格納部から読み出した音
声データとの遅れを判定する第一の判定部で判定し、前記第1の判定部による判定の結果
、前記音声データが映像データに対して所定の閾値未満の遅れであるとき、読み出した映
像データと音声データとを出力し、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データ
が前記映像データよりも所定の閾値以上の遅れであるとき、前記第1の判定部によって前
記映像データ格納部に格納されている次の映像データと前記音声データとの遅れを判定し
、前記第1の判定部による判定の結果、前記音声データが前記映像データよりも進んでい
るとき、前記第1の判定部によって前記音声データ格納部に格納されている次の音声デー
タと前記映像データとの遅れを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置の概略ブロック図
図2】データ格納部におけるデータ構造の例
図3】映像データと音声データ間のタイミングずれ補正のフロー図
図4】第2の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置の概略ブロック図
図5】映像データとANCデータ間のタイミングずれ補正のフロー図
図6】第3の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置の概略ブロック図
図7】映像データ、音声データ及びANCデータ間のタイミングずれ補正のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置を以下に示す。
【0017】
本実施形態における放送データのタイミングずれ補正装置10は、例えば、図1に示す
ように、音声RTPパケット受信部11及び映像RTPパケット受信部12を備えている
。そして、RTPパケットとして記憶されている映像データ及び音声データを受信する音
声RTPパケット受信部11及び映像RTPパケット受信部12は、それぞれIPネット
ワークから受信した1サンプル分の音声RTPパケット及び1フレーム分の映像RTPパ
ケットから各タイムスタンプ及び音声データ、映像データを抽出する。
【0018】
そして、放送データのずれ補正装置10は音声データ格納部13及び映像データ格納部
14を備えており、抽出されたタイムスタンプ及び各データはそれぞれこれらのデータ格
納部に格納される。
【0019】
これらのデータ格納部は、各データのRTPパケットのヘッダ情報から取得したタイミ
ングのずれを吸収するためのバッファ(例えば、リングバッファ)である。このバッファ
であるデータ格納部に格納するデータの構造は、図2に示すように、タイムスタンプと実
データとがセットとして格納部の各アドレスに格納されている。一般的に、映像データは
1フレームまたは1フィールド毎、音声データは1サンプル毎にタイムスタンプと実デー
タを格納する。
【0020】
また、本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置10はデータ読出し部1
5を備えており、PTPマスタから時刻同期部16を経て送られるタイミング情報を基に
、タイミング生成部17によって生成されたフレームタイミングを待って、各データ格納
部に格納されたデータを読出すことができる。
【0021】
さらに、本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置10は第1の判定部1
8を備えており、読出された各データのタイムスタンプを時刻に変換し、各データの遅れ
時間を検出/算出し、予め決められた所定の閾値未満であるかどうかを判定する。この閾
値は、視聴者が許容できる一定の範囲であって、例えば、ITU-R BT.1359-
1に記載があるように、各データのタイムスタンプの時刻の差が-180~+90(ms
)のずれのことをいう。ここで、各データのタイミングずれが無い状態とは各データのタ
イムスタンプの時刻の差が±0(ms)のことをいう。
【0022】
加えて、本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置10は制御部19を備
えており、第1の判定部18の判定結果によって閾値以上であった場合に、各データのタ
イミングが閾値未満となるように補正をする機能をもつ。
【0023】
制御部19は、音声データが映像データよりも進んでいる場合、読み出された1サンプ
ル分の音声データは廃棄され、再度音声データ格納部13から音声データを読出し、閾値
未満の音声データを読出すまで繰り返す。
【0024】
また、音声データが映像データに対して閾値以上に遅れている場合、読出された映像デ
ータは廃棄され、読出された音声データは音声データ格納部13に戻されて、再度映像デ
ータ格納部14から映像データを読出し、閾値未満となるまで繰り返す。
【0025】
本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置10は、音声処理部20及び映
像処理部21並びに音声RTPパケット送信部22及び映像RTPパケット送信部23を
備えている。第1の判定部18によって閾値の範囲内であった各データはそれぞれ音声処
理部20及び映像処理部21に出力される。
【0026】
また、閾値未満である各データは音声処理部20及び映像処理部21にて加工、データ
の重畳等の処理がなされ、音声RTPパケット送信部22及び映像RTPパケット送信部
23によって出力される。
【0027】
次に本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正方法を以下に示す。また、本実
施形態に係る補正方法の動作の一例を図3のフローチャートに示す。
【0028】
図3のフローチャートは、制御部19が行う、受信した映像、音声のデータ間のタイミ
ングが、伝送路の影響でずれていた場合に、視聴者が許容できる一定の範囲にまでこのず
れを補正することができるような補正フローチャートである。
【0029】
具体的には、制御部19が、映像、音声データとセットになっているタイムスタンプを
比較しながら、ずれの補正が行われる。
【0030】
システム全体は、ある時刻源に同期しているとし、放送データのタイミングずれ補正装
置10もPTPマスタを通じて、時刻同期部16がシステムに同期化しているとする。タ
イミング生成部17は、時刻同期部16が持つ時刻から一定周期のタイミング、例えばフ
レームタイミングを生成し、処理の開始タイミングとして使用する。
【0031】
本実施形態における補正フローチャートでは、処理の開始となるフレームタイミングを
待って(S101)、フレームタイミングになったときに映像データ格納部14に1フレ
ーム以上の映像データが存在するかどうかを確認する(S102)。1フレーム以上の映
像データが存在しない場合は、フレームタイミング待ちへ戻ることになるが(S102の
No)、1フレーム以上の映像データが存在する場合は映像データ格納部14から1フレ
ーム分のデータを読み出す(S103)。
【0032】
次に、音声データ格納部13に1フレーム以上の音声データが存在するかどうかを確認
し(S104)、1フレーム以上の音声データが存在しない場合(S104のNo)、読
出された1フレーム分の映像データは映像データ格納部14へ戻される(S114)。1
サンプル以上の音声データが存在する場合(S104のYes)、音声データ格納部13
から1サンプル分の音声データを読み出す(S105)。音声データは1602又は16
01サンプルで1フレーム分のデータとなる。
【0033】
次に、読み出された映像データのフレームのタイムスタンプを時刻に変換したもの(T
video)と読み出された音声データのサンプルのタイムスタンプを時刻に変換したも
の(Taudio)とを比較することで、映像データに対する音声データの遅れ(Tdi
ff1)を算出する(S106)。つまり、Tdiff1 = Taudio-Tvid
eoであって、Tdiff1≧0の場合は音声データが映像データに対して遅れているこ
とを意味する。また、|Tdiff1|<1フレーム時間の場合、映像データと音声デー
タのずれは1フレーム未満であることを意味する。
【0034】
ここで、Tdiff1≧0かつ|Tdiff1|<1フレーム時間の場合、すなわち音
声データが映像データに対して遅れており、かつその遅れが1フレーム時間未満である場
合(S107)、音声データ格納部13からS105で読み出した1サンプル分の音声デ
ータを含めた1フレーム分の音声データを読み出す。読み出した映像データは映像処理部
21に出力し、読み出した音声データは音声処理部20に出力することで本実施形態にお
ける映像データの1フレーム分の補正は完了する。
【0035】
その後、S101に戻って、次の映像フレームの補正を行うこととなる。
【0036】
次に、音声データが映像データに対して1フレーム時間以上遅れている場合(S110
)、読み出した1フレーム分の映像データは廃棄され、読み出された1サンプル分の音声
データは音声データ格納部13に戻されて(S111)、映像データ格納部14に次の1
フレーム以上の映像データが存在するか否かの確認ステップ(S102)に戻ることなる
。これは音声データが映像データに対して1フレーム時間未満の遅れとなるまで繰り返さ
れることとなる。
【0037】
なお、本実施形態においては、映像データに対する音声データの遅れが1フレーム時間
未満であることを許容するようなフローとしたが、この閾値の変更は可能である。
【0038】
これは、ITU-R BT.1359-1に記載があるように、映像データに対して音
声データが進んでいることは、映像データに対して音声データが遅れていることよりも許
容幅が狭く、一般的に映像データに対して音声データの方が進んでいる方が視聴者の違和
感が大きいと言われているためである。
【0039】
また、音声データが映像データよりも進んでいる場合(S112)、読み出された1サ
ンプル分の音声データは廃棄され、再度音声データ格納部13から次の1フレーム分以上
の音声データが存在するかどうかの確認ステップ(S104)に戻ることとなり、新たな
音声データを読み出して、映像データに対して進んでいない音声データを読み出すまで繰
り返されることとなる(S113)。これは音声データの映像データに対する進み度合い
が1フレーム時間未満でも1フレーム時間以上でも適用されるステップとなる。
【0040】
以上より、本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0041】
受信した映像、音声のデータ間のタイミングが、伝送路の影響でずれていた場合に、そ
のずれを制御部19の補正フローにて検出し、視聴者が許容できる一定の範囲にそのずれ
を補正して放送データを出力することが出来る。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置を以下に示す。
【0043】
本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置について、図4を参照して説明
するが、本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置30は、構成の一部が第
1の実施形態と異なるものであるため、第1の実施形態の放送データのタイミングずれ補
正装置10と同等の構成については、第1の実施形態と同じ符号を付与しており、説明を
省略する。
【0044】
本実施形態における放送データのタイミングずれ補正装置30は、図4に示すように、
第1の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置10における音声データがA
NCデータに置き換わっているものである。ここで、ANCデータとは補助データの一例
であり、例えば、字幕データのことをいう。
【0045】
放送データのタイミングずれ補正装置10が備えていた第1の判定部18は、本実施形
態においては第2の判定部33に置き換わっている。第2の判定部33は、第1の判定部
18で判定対象としていた音声データをANCデータへ置き換えて判定する。
【0046】
次に本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正方法を以下に示す。本実施形態
に係る補正方法の動作の一例を図5のフローチャートに示す。
【0047】
具体的には、第1の実施形態と同様に制御部19が、映像データ、ANCデータとセッ
トになっているタイムスタンプを比較しながら、ずれの補正が行われる。
【0048】
なお、システム全体の構成や図5における第1の実施形態の補正フローチャートと同等の
構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
第1の実施形態の補正フローチャートにおけるS104において、1サンプル分の音声
データの有無を確認していたが、本実施形態においては補助データ格納部であるANCデ
ータ格納部32に1フレーム分のANCデータがあるかどうかを確認する(S204)。
【0050】
次に、第1の実施形態における第1の判定部18は本実施形態においては第2の判定部
33となる。第2の判定部33では、読み出された映像データのフレームのタイムスタン
プを時刻に変換したもの(Tvideo)とANCデータのフレームのタイムスタンプを
時刻に変換したもの(Tanc)を比較することで、映像データに対するANCデータの
遅れ(Tdiff2)を算出する(S206)。つまり、Tdiff2=Tanc-Tv
ideoであって、Tdiff2≧0の場合はANCデータが映像データに対して遅れて
いることを意味する。また、|Tdiff2|<1フレーム時間の場合、映像データとA
NCデータのずれは1フレーム時間未満であることを意味する。
【0051】
ここで、Tdiff2≧0かつ|Tdiff2|<1フレーム時間である、すなわちA
NCデータが映像データに対して遅れており、かつその遅れが1フレーム時間未満である
場合(S207)、読み出した映像データは映像処理部21に出力し、読み出したANC
データはANC処理部34に出力することで本実施形態における映像データの1フレーム
分の補正は完了する。その後、S201に戻って、次の映像フレームの補正を行うことと
なる。
【0052】
次に、ANCデータが映像データに対して1フレーム時間以上遅れている場合(S21
0)、読み出した1フレーム分の映像データは廃棄され、読み出された1フレーム分のA
NCデータはANCデータ格納部32に戻されて(S211)、映像データ格納部14に
次の1フレーム以上の映像データが存在するか否かの確認ステップ(S202)に戻るこ
となる。これはANCデータが映像データに対して1フレーム時間未満の遅れとなるまで
繰り返されることとなる。
【0053】
また、ANCデータが映像データよりも進んでいる場合(S212)、読み出された1
フレーム分のANCデータは廃棄され、再度ANCデータ格納部32から次の1フレーム
分以上のANCデータが存在するか否かの確認ステップ(S204)に戻ることとなり、
新たなANCデータを読み出して、映像データに対して進んでいないANCデータを読み
出すまで繰り返されることとなる(S213)。これはANCデータの映像データに対す
る進み度合いが1フレーム時間未満でも1フレーム時間以上でも適用されるステップとな
る。
【0054】
なお、本実施形態においても、映像データに対するANCデータの遅れが1フレーム時
間未満であることを許容するようなフローとしたが、この閾値の変更は可能である。
【0055】
以上より、本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0056】
受信した映像データ、ANCデータ間のタイミングが、伝送路の影響でずれていた場合
に、そのずれを補正フローにて検出し、視聴者が許容できる一定の範囲にそのずれを補正
して放送データを出力することが出来る。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置を以下に示す。
【0058】
本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置について、図6を参照して説明
するが、本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置40は、第1の実施形態
に係る放送データのタイミングずれ補正装置10に第2の実施形態に係る放送データのタ
イミングずれ補正装置30の構成を加え、一部の機能が変更されているものであるため、
第1の実施形態の放送データのタイミングずれ補正装置10及び第2の実施形態に係る放
送データのタイミングずれ補正装置30と同等の構成については、第1の実施形態及び第
2の実施形態と同じ符号を付与しており、説明を省略する。
【0059】
また、本実施形態に係る制御部19は映像データと音声データ及び映像データとANC
データ両者のずれ関係を補正することで、映像データ、音声データ及びANCデータの3
データ全てのずれ関係を視聴者が許容できる一定の範囲に補正することができる。
【0060】
次に本実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正方法を以下に示す。本実施形態
に係る補正方法の動作の一例を図7のフローチャートに示す。なお、システム全体の構成
図7における第1の実施形態及び第2の実施形態の補正フローチャートと同等の構成に
ついては、説明を省略する。
【0061】
本実施形態における補正フローでは、第1の実施形態における補正フローが完了した後
に、さらに第2の実施形態における補正フローを一部変更した補正フローを追加すること
で完了する補正フローである。
【0062】
変更される第2の実施形態における補正フローの一部は下記である。
【0063】
第2の実施形態において、ANCデータ格納部32に1フレーム以上のANCデータが
存在しなかった場合は、既に読み出された映像データを映像データ格納部に戻していたが
(S214)、本実施形態においては映像データ及び音声データをそれぞれ映像データ格
納部14及び音声データ格納部13に戻され(S325)、再度第1の実施形態における
補正フローが再開される。
【0064】
また、第2の実施形態において、ANCデータが映像データに対して1フレーム以上遅
れている場合(S210)、読み出した1フレーム分の映像データは廃棄され、読み出さ
れた1フレーム分のANCデータはANCデータ格納部32に戻されて、映像データ格納
部14に1フレーム以上の映像データが存在するか否かの確認ステップ(S202)に戻
ることとなっているが、本実施形態においては、読み出した1フレーム分の映像データ及
び音声データは廃棄され、読み出された1フレーム分のANCデータはANCデータ格納
部32に戻されて(S321)、再度第1の実施形態における補正フローが再開される。
【0065】
なお、本実施形態においても、映像データに対する音声データ及びANCデータの遅れ
が1フレーム時間未満であることを許容するようなフローとしたが、この閾値の変更は可
能である。
【0066】
以上より、本実施形態によれば、映像データに対する音声データ及びANCデータのず
れが、視聴者が許容できる一定の範囲に補正されるだけでなく、音声データに対するAN
Cデータのずれも視聴者が許容できる一定の範囲に補正される。
【0067】
なお、上記の説明では受信した映像、音声、ANCのデータ間のタイミングが、伝送路
の影響でずれていた場合にずれを補正することについてのみ説明したが、ずれを補正した
後に加工処理を行い、その加工の際にさらにずれが発生することもある。上記の実施形態
は、加工の際に発生したずれを補正する際にも適用できることは勿論である。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の
省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や
要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる
【符号の説明】
【0069】
10…第1の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置、11…音声RTPパ
ケット受信部、12…映像RTPパケット受信部、13…音声データ格納部、14…映像
データ格納部、15…データ読出し部、16…時刻同期部、17…タイミング生成部、1
8…第1の判定部、19…制御部、20…音声処理部、21…映像処理部、22…音声R
TPパケット送信部、23…映像RTPパケット送信部、30…第2の実施形態に係る放
送データのタイミングずれ補正装置、31…ANCRTPパケット受信部、32…ANC
データ格納部、33…第2の判定部、34…ANC処理部、35…ANC RTPパケッ
ト送信部、40…第3の実施形態に係る放送データのタイミングずれ補正装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7