(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106510
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】多段遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 17/12 20060101AFI20240801BHJP
F04D 29/051 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F04D17/12
F04D29/051
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010796
(22)【出願日】2023-01-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築/革新的な液化、水素化、脱水素技術の開発/水素液化機向け大型高効率機器の開発」の委託研究成果について、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 英明
(72)【発明者】
【氏名】山田 典功
(72)【発明者】
【氏名】武内 遼太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐也
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB46
3H130AB47
3H130AB69
3H130AC30
3H130BA53C
3H130BA53D
3H130BA74C
3H130BA74D
3H130DA02X
3H130DC01X
3H130DC11X
3H130EA01C
3H130EA01D
3H130EB01C
3H130EB01D
(57)【要約】
【課題】多段ロータを備えた多段遠心圧縮機であって、多段ロータのインペラとロータ軸との間に圧縮された流体が通る内部通路が設けられ、内部通路に露出するシールで隣り合うインペラの間が封止されたものにおいて、シールに作用する負荷を低減する。
【解決手段】多段遠心圧縮機は、圧縮される流体が流れる圧縮通路と、インペラスタックと軸体との半径方向の間で軸線方向に延びる第1内部通路及び第2内部通路を備える。第1内部通路は、圧縮通路の第1戻し位置と接続された第1戻し通路、及び、圧縮通路の第1戻し位置よりも下流の第1抜出位置と接続された第1抜出通路によって圧縮通路と連通されている。第2内部通路は、圧縮通路の第1抜出位置よりも下流の第2戻し位置と接続された第2戻し通路、及び、第2戻し位置より下流の第2抜出位置と接続された第2抜出通路によって圧縮通路と連通されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に積層された複数のインペラ、前記複数のインペラの間に挿入されたバランスピストン、及び、前記軸線方向に隣り合うインペラの間を封止するシールとを含むインペラスタックと、前記インペラスタックを貫通する軸体とを有する多段ロータと、
吸入口から初段インペラ及び最終段インペラを含む前記複数のインペラを順に通って吐出口まで、圧縮される流体が流れる圧縮通路と、
前記インペラスタックと前記軸体との半径方向の間で前記軸線方向に延びる互いに独立した第1内部通路及び第2内部通路と、を備え、
前記第1内部通路は、前記圧縮通路の第1戻し位置と接続された第1戻し通路、及び、前記圧縮通路の前記第1戻し位置よりも下流の第1抜出位置と接続された第1抜出通路によって前記圧縮通路と連通されており、前記第1抜出位置を通過する前記流体の一部が前記第1抜出通路、前記第1内部通路、及び前記第1戻し通路を経て前記第1戻し位置へ流れ、
前記第2内部通路は、前記圧縮通路の前記第1抜出位置よりも下流の第2戻し位置と接続された第2戻し通路、及び、前記第2戻し位置より下流の第2抜出位置と接続された第2抜出通路によって前記圧縮通路と連通されており、前記第2抜出位置を通過する前記流体の一部が前記第2抜出通路、前記第2内部通路、及び前記第2戻し通路を経て前記第2戻し位置へ流れる、
多段遠心圧縮機。
【請求項2】
前記バランスピストンと前記軸体の前記半径方向の間が封止されることによって、前記インペラスタックと前記軸体との前記半径方向の間が前記第1内部通路と前記第2内部通路とに分けられている、
請求項1に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項3】
前記第1抜出位置は前記バランスピストンと隣り合う第1中間段インペラの下流に配置されており、前記第1抜出通路は前記バランスピストンを貫通している又は前記バランスピストンと前記第1中間段インペラの間を通っている、
請求項2に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項4】
前記第2抜出位置が前記バランスピストンと隣り合う前記最終段インペラの出口と前記吐出口の間に配置されており、前記第2抜出通路は前記バランスピストンを貫通している又は前記バランスピストンと前記最終段インペラの間を通っている、
請求項2に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項5】
前記第2戻し位置が前記バランスピストンと隣り合う第2中間段インペラの下流に配置されており、前記第2戻し通路は前記バランスピストンを貫通している又は前記バランスピストンと前記第2中間段インペラの間を通っている、
請求項2に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項6】
前記第1戻し位置が前記圧縮通路の前記吸入口と前記初段インペラの入口の間に配置されており、前記第1戻し通路が前記軸体を貫通している、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項7】
前記第1戻し位置が前記圧縮通路の前記吸入口と前記初段インペラの入口の間に配置されており、
前記軸体は前記軸線方向と直交する平面状の座面を有し、前記インペラスタックは平面状の当接面を有し、前記軸体の前記座面と前記インペラスタックの前記当接面とが前記軸線方向に接触しており、前記第1戻し通路が前記座面と前記当接面のうち少なくとも一方に配置された溝を通っている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多段遠心圧縮機。
【請求項8】
前記第1内部通路及び前記第2内部通路の少なくとも一方に、通過する前記流体を減圧させる減圧材が配置されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多段遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多段ロータを備えた多段遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
多段遠心圧縮機は、軸線方向に積層された複数のインペラを有するロータを備え、圧縮される流体が回転するインペラを半径方向に通り抜ける際に発生する遠心力によって流体を圧縮するものである。特許文献1では、この種の多段遠心圧縮機が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の多段遠心圧縮機は、積層された複数のインペラを有するロータと、ロータを収容するハウジングとを備える。ハウジングと複数のインペラとによって、ハウジングの吸入口から、初段インペラから最終段インペラまで複数のインペラを通って、吐出口までの圧縮通路が形成されている。複数のインペラは、インペラを軸線方向に貫通して延びるタイロッドによりまとめて保持されている。インペラとタイロッドの間には半径方向の隙間が設けられており、この間隙によって、圧縮通路を通るガスの一部を下流側の位置から上流側の位置へ還流する還流通路が形成されている。圧縮されたガスが還流通路を流れることによって、ガスの圧縮によって生じた熱がタイロッドに伝達され、タイロッドが加熱されてインペラとタイロッドの温度勾配が小さくなる。また、圧縮されたガスが還流通路を流れることによって、圧縮されたガスによってロータにかかるスラスト荷重が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多段遠心圧縮機では、初段インペラに流入する前の流体と、最終段インペラを通過した流体との圧力差が大きい。特許文献1では、圧縮通路の最終段インペラを通過した流体の一部が還流通路を通って圧縮通路の初段インペラの入口へ戻されるため、還流通路の圧力は最終段インペラを通過した高温高圧の流体と対応したものとなる。隣り合うインペラの軸線方向の間は通気を防止するためにシールで封止されているが、圧縮通路の上流へ向かうほどシールによって隔てられた圧縮通路と還流通路との圧力差が大きくなる。このような圧力差に耐えうるシールは高価であり、また、設計上の制約となる。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多段ロータを備えた多段遠心圧縮機であって、多段ロータの複数のインペラとロータ軸との間に圧縮された流体が通る内部通路が設けられ、隣り合うインペラの間がシールで封止されたものにおいて、シールに作用する負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る多段遠心圧縮機は、
軸線方向に積層された複数のインペラ、前記複数のインペラの間に挿入されたバランスピストン、及び、前記軸線方向に隣り合うインペラの間を封止するシールとを含むインペラスタックと、前記インペラスタックを貫通する軸体とを有する多段ロータと、
吸入口から初段インペラ及び最終段インペラを含む前記複数のインペラを順に通って吐出口まで、圧縮される流体が流れる圧縮通路と、
前記インペラスタックと前記軸体との半径方向の間で前記軸線方向に延びる互いに独立した第1内部通路及び第2内部通路と、を備え、
前記第1内部通路は、前記圧縮通路の第1戻し位置と接続された第1戻し通路、及び、前記圧縮通路の前記第1戻し位置よりも下流の第1抜出位置と接続された第1抜出通路によって前記圧縮通路と連通されており、前記第1抜出位置を通過する前記流体の一部が前記第1抜出通路、前記第1内部通路、及び前記第1戻し通路を経て前記第1戻し位置へ流れ、
前記第2内部通路は、前記圧縮通路の前記第1抜出位置よりも下流の第2戻し位置と接続された第2戻し通路、及び、前記第2戻し位置より下流の第2抜出位置と接続された第2抜出通路によって前記圧縮通路と連通されており、前記第2抜出位置を通過する前記流体の一部が前記第2抜出通路、前記第2内部通路、及び前記第2戻し通路を経て前記第2戻し位置へ流れるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、多段ロータを備えた多段遠心圧縮機であって、多段ロータの複数のインペラとロータ軸との間に圧縮された流体が通る内部通路が設けられ、隣り合うインペラの間がシールで封止されたものにおいて、シールに作用する負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一態様に係る多段遠心圧縮機の概略断面図である。
【
図3】
図3は、内部流路を説明する多段遠心圧縮機の一部断面図である。
【
図4】
図4は、第1戻し通路の変形例を示す多段遠心圧縮機の一部断面図である。
【
図5】
図5は、第1戻し通路の変形例を示す多段遠心圧縮機の一部断面図である。
【
図6】
図6は、第1抜出通路及び第2戻し通路の変形例を示す多段遠心圧縮機の一部断面図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る多段遠心圧縮機の概略断面図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本開示の一態様に係る多段遠心圧縮機10の概略断面図であり、同図では多段遠心圧縮機10のロータ軸線Aより上半分が示されている。
図1に示す多段遠心圧縮機10は、ケーシング12と、ケーシング12に収容された多段ロータ2と、多段ロータ2を回転駆動する駆動装置とを備える。
【0011】
図2は、多段ロータ2の概略断面図である。
図1及び2に示すように、多段ロータ2は、ロータ軸線Aを中心とする回転体である。多段ロータ2は、ロータ軸線Aを中心として軸線方向Xと平行に延びる軸体3と、軸体3の軸線方向Xの略中央部において軸線方向Xに沿って並んだ複数のインペラ4とを備える。軸線方向Xに積み重ねられた複数のインペラ4はインペラスタック40とも称され、多段ロータ2はスタックドロータとも称される。
【0012】
軸体3は、段差面36を有する段付き軸である。軸体3は、軸線方向Xの中央部に配置された第1セクション31と、第1セクション31に隣接して配置された第2セクション32と、第1セクション31及び第2セクション32を軸線方向Xの両側から挟み込む一対の第3セクション33と、軸線方向Xの両端部に配置された一対のエンドセクション34とを有する。軸体3は一部材からなる剛体であって、軸体3に繋ぎ目はない。
【0013】
軸体3の第1セクション31はインペラ4の内径より小さい第1軸径を有し、第2セクション32は第1軸径及びインペラ4の内径より大きい第2軸径を有する。このような軸径の差によって、第2セクション32と第1セクション31との境界には軸線方向Xを向いた段差面36が存在する。軸体3のエンドセクション34の軸径は第1軸径よりも小さい。軸体3の第3セクション33の軸径は、エンドセクション34の軸径よりも大きく、インペラ4の内径よりも小さい。第3セクション33の軸径は、インペラ4の内径よりも小さければ第1軸径よりも大きくてもよい。このように、軸体3では、インペラ4をエンドセクション34から第3セクション33を通って第1セクション31へ移動させることが可能である。
【0014】
軸体3の第1セクション31はインペラスタック40に挿通されている。各インペラ4は、既知の構造を有し、例えば、軸体3が挿通されるボスと、ボスを中心とする円盤と、円盤上に設けられた複数の羽根と、羽根の先端に取り付けられたシュラウドとを有する。インペラ4には、円盤と羽根とシュラウドとによって、圧縮する流体が通過する流路が形成されている。このインペラ4はクローズド型であるが、シュラウドが省略されたオープン型であってもよい。インペラ4のボスの軸線方向Xの両端面は周方向の歯が形成された歯付きフランジとなっている。軸線方向Xに隣り合うインペラ4は、歯付きフランジ同士が噛合する機械的カップリングによって動力を伝達可能に結合されている。機械的カップリングは、カービックカップリング又はハースカップリングであってよい。隣り合うインペラ4の噛合部を通じた流体の流通を阻止するために、隣り合うインペラ4の噛合部はシール47で封止されている。
【0015】
インペラスタック40は、インペラ4とインペラ4の間に挟まれた少なくとも1つのバランスピストン57を含む。バランスピストン57は、回転中の多段ロータ2の軸スラストを自律調整させる。本実施形態に係るインペラスタック40は、軸線方向Xの中途部に配置されたバランスピストン57を有し、バランスピストン57を介して反負荷側に配置されたインペラ4と負荷側に配置されたインペラ4で向きが異なる、いわゆる、Back-to-Back型配置を有する。バランスピストン57は、インペラ4と同様に軸体3に外嵌されている。バランスピストン57の軸線方向Xの両端面は周方向の歯が形成された歯付きフランジとなっており、軸線方向Xに隣り合うインペラ4とバランスピストン57は歯付きフランジ同士が噛合する機械的カップリングによって動力を伝達可能に結合されている。
【0016】
インペラスタック40のうち、最も第2セクション32の近くに配置されたインペラ4を「先頭インペラ4L」と便宜的に称する。本実施形態において先頭インペラ4Lは複数のインペラ4のうち最初に流体を圧縮する初段インペラ4Aであるが、先頭インペラ4Lは初段インペラ4Aに限定されない。先頭インペラ4Lは軸体3の段差面36と当接している。先頭インペラ4Lの段差面36と対峙している面は歯が形成されずに平面となっており、先頭インペラ4Lと段差面36とが平面で接触している。先頭インペラ4Lと段差面36は摩擦によって結合されており、軸体3から先頭インペラ4Lへ動力を伝達可能である。軸体3から先頭インペラ4Lへの動力伝達に冗長性を持たせ、且つ、軸体3と先頭インペラ4Lの芯出しのために、先頭インペラ4Lはしまり嵌め、スプライン嵌合、又は噛合によって軸体3に対する相対的な回転と半径方向への移動が制限されていてもよい。
【0017】
インペラスタック40のうち、最も第2セクション32から離れて配置されたインペラ4を「後尾インペラ4T」と便宜的に称する。本実施形態において後尾インペラ4Tは複数のインペラ4のうち最後に流体を圧縮する最終段インペラ4Eではなく、第4段インペラである。後尾インペラ4Tは、軸体3に嵌められたバランスピストン56と接触している。バランスピストン56は、軸体3のうち第3セクション33に嵌められていてもよいし第1セクション31に嵌められていてもよい。後尾インペラ4Tとバランスピストン56とは、噛合による機械的カップリングによって結合されている。
【0018】
軸体3の第3セクション33にロックナット6が螺嵌されている。ロックナット6はバランスピストン56と接触している。軸体3の段差面36とロックナット6との軸線方向Xの間に、インペラスタック40及びバランスピストン56が配置されている。軸体3の軸力によって、インペラスタック40及びバランスピストン56は段差面36とロックナット6との間で軸方向に加圧された状態で挟み込まれている。これにより、段差面36と先頭インペラ4L、隣接するインペラ4同士、及び、後尾インペラ4Tとバランスピストン56は、軸線方向Xに緊密接触状態に保持されている。また、ロックナット6によって、軸体3のロータ軸線Aとインペラスタック40の軸心とが一致するように、軸体3とインペラスタック40の芯出しがなされている。
【0019】
軸体3の第3セクション33の周囲には、ケーシング12と軸体3の間を封止するドライガスシール54,55が配置されている。ドライガスシール54,55は、多段ロータ2で圧縮されて高圧となった作動流体の外部への漏洩を阻止する。ドライガスシール54,55には、外部からシールガスが供給される。軸体3のエンドセクション34は、ジャーナル軸受51,52を介してケーシング12に回動可能に支持されている。また、軸体3のエンドセクション34は、スラスト軸受53を介してケーシング12に支持されている。
【0020】
図1ではケーシング12の一部分が示されている。ケーシング12には、或る段のインペラ4とその次の段のインペラ4との間を繋ぐ接続通路21が形成されている。接続通路21は、インペラ4の流路と接続されている。或る段のインペラ4で圧縮された流体は接続通路21へ排出され、当該接続通路21を通って次の段のインペラ4の流路へ流入する。ケーシング12には、圧縮する流体を初段インペラ4Aへ導入する吸入口22と、最終段インペラ4Eで圧縮された流体を外部へ送出する吐出口23とが設けられている。更に、ケーシング12には、中間段インペラまで圧縮された流体を一旦機外へ取り出すための中間吐出口27と、機内へ戻すための中間吸込口28とが設けられている。このように、多段遠心圧縮機10には、吸入口22から吸い込まれた流体が、複数段のインペラ4を経て段階的に圧縮され、中間吐出口27から一旦機外へ取り出されたのち中間吸込口28から機内へ戻され、複数のインペラ4を経て更に段階的に圧縮されたのち吐出口23から外部へ吐出される一連の圧縮通路Wが、ケーシング12とインペラ4とによって形成されている。但し、多段遠心圧縮機10の圧縮通路Wの態様やインペラ4の段数は例示に過ぎない。また、本実施形態に係る軸体3は、軸受51,52,53によって支持されるエンドセクション34と、インペラスタック40を支持する第1セクション31とが、連続する一部材によって構成されたものであるが、軸体3は一対のスタブ軸の間がタイロッド又はタイボルトで結合された所謂タイロッド式の軸であってもよい。
【0021】
インペラ4の内周面と軸体3の外周面との間には僅かな間隙が設けられており、この間隙が流体が通る内部通路7a,7bに利用される。インペラ4の内周面には、内部通路7a,7bを通過する流体から内部通路7a,7bへの伝熱を抑制するために遮熱コーティングが施されていてもよい。
図3は、内部通路7a,7bを説明する多段ロータ2の断面図である。
図3に示すように、インペラスタック40と軸体3との間に、流体が軸線方向Xに流れる内部通路7a,7bが設けられている。
【0022】
バランスピストン57と軸体3との間には、両者の半径方向の間隙を封止するシール70が設けられている。シール70は、バランスピストン57と軸体3の半径方向の間に配置された環状の弾性シール、或いは、バランスピストン57と軸体3の対峙面に形成されたラビリンスシールであってよい。また、バランスピストン57が軸体3にしまり嵌めされることによって、バランスピストン57の内周面と軸体3の外周面との半径方向の間隙が封止されていてもよい。このようにバランスピストン57と軸体3との半径方向の間隙が封止されることによって、間隙が軸線方向Xに分断されて、軸線方向Xに並ぶ互いに独立した内部通路7a,7bが形成されている。本実施形態に係る内部通路7a,7bは、バランスピストン57を介して反負荷側に配置された第1内部通路7aと、負荷側に配置された第2内部通路7bとに分かれている。
【0023】
圧縮通路Wには、圧縮される流体の流れの上流から下流へ向かって順に第1戻し位置R1、第1抜出位置E1、第2戻し位置R2、第2抜出位置E2が規定されている。第1内部通路7aは、圧縮通路Wの第1戻し位置R1と接続された第1戻し通路73と、圧縮通路Wの第1抜出位置E1と接続された第1抜出通路71とによって、圧縮通路Wと連通されている。第1抜出位置E1は第1戻し位置R1よりも下流にあることから、第1抜出位置E1の流体の圧力は第1戻し位置R1の流体の圧力よりも高い。この圧力差によって、第1抜出位置E1を流れる流体の一部が、第1抜出通路71を通じて第1内部通路7aへ流入し、第1内部通路7aを軸線方向Xに流れて第1戻し通路73を通じて第1戻し位置R1へ戻される。第1内部通路7aの圧力は、第1抜出位置E1の流体の圧力とほぼ等しい。
【0024】
第2内部通路7bは、第2戻し位置R2と接続された第2戻し通路74、及び、第2抜出位置E2と接続された第2抜出通路72とによって、圧縮通路Wと連通されている。第2抜出位置E2は第2戻し位置R2よりも下流にあることから、第2抜出位置E2の流体の圧力は第2戻し位置R2の流体の圧力よりも高い。この圧力差によって、第2抜出位置E2を流れる流体の一部が、第2抜出通路72を通じて第2内部通路7bへ流入し、第2内部通路7bを軸線方向Xに流れて第2戻し通路74を通じて第2戻し位置R2へ戻される。第2内部通路7bの圧力は第2抜出位置E2の流体の圧力とほぼ等しい。
【0025】
上記のように第1内部通路7aと第2内部通路7bに圧縮通路Wから抜き出された流体が流れることによって、軸体3とインペラスタック40の半径方向の間隙の圧力が安定し、当該間隙への不純物の堆積が阻止され、インペラスタック40と軸体3の温度差が緩和する。
【0026】
本実施形態において、第1戻し位置R1は圧縮通路Wにおいて接続通路21と初段インペラ4Aの入口との間に配置されている。第1戻し位置R1は、主流への影響を抑えるために、初段インペラ4Aの入口から上流側へ離れていることが望ましい。このような観点から、第1戻し通路73は軸体3の内部を通されている。具体的には、先頭インペラ4Lが当接している軸体3の第2セクション32の内部に第1内部通路7aと圧縮通路Wの第1戻し位置R1とを接続する通路が形成されており、この通路が第1戻し通路73として利用されている。このように第1戻し通路73が軸体3の内部を通されることによって、第1戻し通路73の出口である第1戻し位置R1の位置の自由度が高まり、先頭インペラ4Lである初段インペラ4Aの入口から上流側へ離れた位置に第1戻し位置R1を配置できる。
【0027】
第1戻し通路73の構成は上記に限定されない。例えば、
図4に示すように、第1戻し通路73は、インペラスタック40と軸体3との接触面を通っていてもよい。この場合、例えば、インペラスタック40と軸体3の接触面においてインペラスタック40と軸体3のうち少なくとも一方に溝が設けられ、この溝が第1戻し通路73に利用される。より詳細には、軸体3は軸線方向Xと直交する平面状の座面を有し、インペラスタック40は平面状の当接面を有し、軸体3の座面(即ち、段差面36)とインペラスタック40の当接面とが軸線方向Xに接触しており、第1戻し通路73が座面と当接面のうち少なくとも一方に配置された溝を通っている。
図4に示す例では、インペラスタック40のうち先頭インペラ4Lが、軸体3と軸線方向Xに当接する面と半径方向に接触する面を有している。そして、これらの先頭インペラ4Lと軸体3との接触面において、先頭インペラ4Lと軸体3の少なくとも一方に第1戻し通路73となる溝が形成されている。但し、インペラスタック40は、軸体3の段差面36と先頭インペラ4Lとの軸線方向Xの間に介挿された円筒体を更に有していてもよく、この場合、インペラスタック40のうち円筒体が、軸体3と軸線方向Xに接触する面と半径方向に接触する面を有する。これらの円筒体と軸体3との接触面において、円筒体と軸体3の少なくとも一方に第1戻し通路73となる溝が形成される。
【0028】
或いは、
図5に示すように、第1戻し通路73は、初段インペラ4Aを通っていてもよい。この場合、初段インペラ4Aを内外に貫く通路が形成され、この通路が第1戻し通路73に利用される。また、初段インペラ4Aの入口よりも下流に配置されていてもよく、この場合、初段インペラ4Aと隣り合うインペラ4との噛合面の隙間が第1戻し通路73に利用されてもよい。
【0029】
本実施形態において、第1抜出位置E1は圧縮通路Wにおいてバランスピストン57と隣り合う第1中間段インペラ4Cの出口又はその近傍に配置されている。第1抜出通路71は、第1中間段インペラ4Cの背面側を通り、バランスピストン57を貫通して、第1内部通路7aへ至る。但し、
図6に示すように、第1抜出通路71は、バランスピストン57を貫通する代わりに、バランスピストン57と第1中間段インペラ4Cの噛合面の隙間を通っていてもよい。
【0030】
本実施形態において、第2抜出位置E2は圧縮通路Wにおいて最終段エンペラと吐出口23との間に配置されている。第2抜出通路72は、最終段エンペラの背面側を通り、バランスピストン57を貫通して第2内部通路7bへ至る。第2抜出通路72は、バランスピストン57を貫通する代わりに、バランスピストン57と最終段インペラ4Eの噛合面の隙間を通っていてもよい。
【0031】
本実施形態において、第2戻し位置R2は圧縮通路Wにおいて第1中間段インペラ4Cの出口と第2中間段インペラ4Dの入口との間に配置されている。第2中間段インペラ4Dは、第1中間段インペラ4Cの次段のインペラ4であって、後尾インペラ4Tである。第2戻し通路74は、第2中間段インペラ4Dとバランスピストン56との噛合面の隙間を通っている。但し、第2戻し通路74は、軸体3を通ったあと、バランスピストン56を半径方向に貫通していてもよい。
【0032】
上記構成において、第1内部通路7aの圧力は、第1抜出位置E1の流体の圧力、即ち、第1中間段インペラ4Cの出口の流体の圧力とほぼ等しい。よって、圧縮通路Wの吸入口22から第1抜出位置E1までの間から第1内部通路7aへの流体の漏れを塞いでいるシール47に掛かる圧力差は、圧縮通路Wの吸入口22と吐出口23の圧力差よりも十分に小さい。
【0033】
また、第2内部通路7bの圧力は、第2抜出位置E2の流体の圧力、即ち、最終段インペラ4Eの出口の流体の圧力とほぼ等しい。よって、圧縮通路Wの第1抜出位置E1から吐出口23までの間から第2内部通路7bへの流体の漏れを塞いでいるシール47に掛かる圧力差は、圧縮通路Wの吸入口22と吐出口23の圧力差よりも十分に小さい。本実施形態のように第2戻し位置R2から第2抜出位置E2までのインペラ4の段数が多い場合には、第2内部通路7bの下流部分に配置されたシール47に掛かる圧力差を更に小さくするために、第2内部通路7bの軸線方向Xの途中に減圧材48が配置されてもよい。減圧材48は、例えば、軸体3とインペラスタック40の半径方向の間に配置されたリング状の通気可能なシールである。
【0034】
上記のように本開示に係る多段遠心圧縮機10では、隣り合うインペラ4の間を封止しているシール47には圧縮通路Wと内部通路7a,7bの圧力差が掛かるが、この圧力差は、吸入口22と吐出口23の圧力差、即ち、初段インペラ4Aの入口と最終段インペラ4Eの出口の圧力差よりも十分に小さい。このようにシール47に掛かる圧縮通路Wと内部通路7a,7bとの圧力差が抑えられ、シール47に掛かる負荷を軽減できるので、シール47に係るコストを抑えることができ、シール47の設計上の制約が少なくなってシール47の選択の自由度が高まる。
【0035】
<変形例>
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
図7は、変形例1に係る多段遠心圧縮機10の概略断面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0036】
上記実施形態に係る多段遠心圧縮機10の多段ロータ2は、Back to Back型配置のインペラスタック40を有するが、これに代えてストレート型配置のインペラスタック40を有していてもよい。ストレート型配置のインペラスタック40は、複数のインペラ4の全てが同じ向きに並んだものである。
【0037】
図7に示す変形例1に係る多段遠心圧縮機10の多段ロータ2は、同じ向きに並んだ複数のインペラ4からなるストレート型配置のインペラスタック40を備える。インペラスタック40は、インペラ4とインペラ4に挟まれたバランスピストン57とを含む。
図7において、圧縮通路Wが鎖線で示されており、内部通路7a,7bが二点鎖線で示されている。圧縮通路Wでは、反負荷側から負荷側へ軸線方向Xの一方向へ流体が流れる。軸体3とインペラスタック40の半径方向の間隙は、軸体3とバランスピストン57の間を封止するシール70によって第1内部通路7aと第2内部通路7bとに分かれている。第1内部通路7a及び第2内部通路7bにおいて、負荷側から反負荷側へ軸線方向Xの一方向へ流体が流れる。
【0038】
圧縮通路Wには、圧縮される流体の流れの上流から下流へ向かって順に第1戻し位置R1、第1抜出位置E1、第2戻し位置R2、第2抜出位置E2が規定されている。第1内部通路7aは、圧縮通路Wの第1戻し位置R1と接続された第1戻し通路73と、圧縮通路Wの第1抜出位置E1と接続された第1抜出通路71とによって、圧縮通路Wと連通されている。第1抜出位置E1は第1戻し位置R1よりも下流にあることから、第1抜出位置E1の流体の圧力は第1戻し位置R1の流体の圧力よりも高い。この圧力差によって、第1抜出位置E1を流れる流体の一部が、第1抜出通路71を通じて第1内部通路7aへ流入し、第1内部通路7aを軸線方向Xに流れて第1戻し通路73を通じて第1戻し位置R1へ戻される。第1内部通路7aの圧力は、第1抜出位置E1の流体の圧力とほぼ等しい。
【0039】
第2内部通路7bは、第2戻し位置R2と接続された第2戻し通路74、及び、第2抜出位置E2と接続された第2抜出通路72とによって、圧縮通路Wと連通されている。第2抜出位置E2は第2戻し位置R2よりも下流にあることから、第2抜出位置E2の流体の圧力は第2戻し位置R2の流体の圧力よりも高い。この圧力差によって、第2抜出位置E2を流れる流体の一部が、第2抜出通路72を通じて第2内部通路7bへ流入し、第2内部通路7bを軸線方向Xに流れて第2戻し通路74を通じて第2戻し位置R2へ戻される。第2内部通路7bの圧力は第2抜出位置E2の流体の圧力とほぼ等しい。
【0040】
本変形例では、第1戻し位置R1は圧縮通路Wにおいて接続通路21と初段インペラ4Aの入口との間に配置されており、第1抜出位置E1は圧縮通路Wにおいてバランスピストン57と隣り合う第1中間段インペラ4Cの出口又はその近傍に配置されている。
【0041】
第2抜出位置E2は圧縮通路Wにおいて最終段エンペラと吐出口23との間に配置されており、第2戻し位置R2は圧縮通路Wにおいて第1中間段インペラ4Cの出口と第2中間段インペラ4Dの入口との間に配置されている。第2中間段インペラ4Dは、第1中間段インペラ4Cの次の段のインペラ4であって、バランスピストン57と隣り合うインペラ4である。第2戻し通路74は、第2中間段インペラ4Dを通り、バランスピストン57を貫通して第2内部通路7bへ至る。第2戻し通路74は、バランスピストン57を貫通する代わりに、バランスピストン57と最終段インペラ4Eの噛合面の隙間を通っていてもよい。最終段エンペラは、後尾インペラ4Tであって、第2抜出通路72は、後尾インペラ4Tとバランスピストン56との噛合面の隙間を通っている。但し、第2抜出通路72は、バランスピストン56を半径方向に貫通していてもよい。
【0042】
上記構成において、第1内部通路7aの圧力は、第1抜出位置E1の流体の圧力、即ち、第1中間段インペラ4Cの出口の流体の圧力とほぼ等しい。よって、圧縮通路Wの吸入口22から第1抜出位置E1までの間から第1内部通路7aへの流体の漏れを塞いでいるシール47に掛かる圧力差は、圧縮通路Wの吸入口22と吐出口23の圧力差よりも十分に小さい。また、第2内部通路7bの圧力は、第2抜出位置E2の流体の圧力、即ち、最終段インペラ4Eの出口の流体の圧力とほぼ等しい。よって、圧縮通路Wの第1抜出位置E1から吐出口23までの間から第2内部通路7bへの流体の漏れを塞いでいるシール47に掛かる圧力差は、圧縮通路Wの吸入口22と吐出口23の圧力差よりも十分に小さい。このように、ストレート型配置のインペラスタック40を有する多段ロータ2を備える多段遠心圧縮機10においても、互いに独立した複数の内部通路7a,7bを有することによって、隣り合うインペラ4の間を封止しているシール47に掛かる圧縮通路Wと内部通路7a,7bとの圧力差を抑えることができる。
【0043】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係る多段遠心圧縮機10は、
軸線方向Xに積層された複数のインペラ4、複数のインペラ4の間に挿入されたバランスピストン57、及び、軸線方向Xに隣り合うインペラ4の間を封止するシール47とを含むインペラスタック40と、インペラスタック40を貫通する軸体3とを有する多段ロータ2と、
吸入口22から初段インペラ4A及び最終段インペラ4Eを含む複数のインペラ4を順に通って吐出口23まで、圧縮される流体が流れる圧縮通路Wと、
インペラスタック40と軸体3との半径方向の間で軸線方向Xに延びる互いに独立した第1内部通路7a及び第2内部通路7bと、を備え、
第1内部通路7aは、圧縮通路Wの第1戻し位置R1と接続された第1戻し通路73、及び、圧縮通路Wの第1戻し位置R1よりも下流の第1抜出位置E1と接続された第1抜出通路71によって圧縮通路Wと連通されており、第1抜出位置E1を通過する流体の一部が第1抜出通路71、第1内部通路7a、及び第1戻し通路73を経て第1戻し位置R1へ流れ、
第2内部通路7bは、圧縮通路Wの第1抜出位置E1よりも下流の第2戻し位置R2と接続された第2戻し通路74、及び、第2戻し位置R2より下流の第2抜出位置E2と接続された第2抜出通路72によって圧縮通路Wと連通されており、第2抜出位置E2を通過する流体の一部が第2抜出通路72、第2内部通路7b、及び第2戻し通路74を経て第2戻し位置R2へ流れるものである。
【0044】
上記構成の多段遠心圧縮機10では、隣り合うインペラ4の間を封止しているシール47に圧縮通路Wと内部通路7a,7bの圧力差が掛かるが、この圧力差は、吸入口22と吐出口23の圧力差、即ち、初段インペラ4Aの入口と最終段インペラ4Eの出口の圧力差よりも十分に小さい。このようにシール47に掛かる圧縮通路Wと内部通路7a,7bとの圧力差が抑えられ、シール47に掛かる負荷を軽減できるので、シール47に係るコストを抑えることができ、シール47の設計上の制約が少なくなってシール47の選択の自由度が高まる。
【0045】
第2の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第1の項目に係る多段遠心圧縮機10において、バランスピストン57と軸体3の半径方向の間が封止されることによって、インペラスタック40と軸体3との半径方向の間が第1内部通路7aと第2内部通路7bとに分けられているものである。
【0046】
これにより、第1内部通路7a及び第2内部通路7bの上流端又は下流端がバランスピストン57の近傍に配置され、インペラ4と比較して加工の容易なバランスピストン57に抜出通路又は戻し通路を設けることができる。
【0047】
第3の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第2の項目に係る多段遠心圧縮機10において、第1抜出位置E1はバランスピストン57と隣り合う第1中間段インペラ4Cの下流に配置されており、第1抜出通路71はバランスピストン57を貫通している又はバランスピストン57と第1中間段インペラ4Cの間を通っているものである。
【0048】
このような構成によりバランスピストン57を通って圧縮通路Wから流体が抜き出されるので、インペラ4のボスを通って圧縮通路Wから流体が抜き出される場合と比較して、流体の抜出圧力がより安定しており各段インペラ4の均圧が比較的容易となる。
【0049】
第4の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第2又は3の項目に係る多段遠心圧縮機10において、第2抜出位置E2がバランスピストン57と隣り合う最終段インペラ4Eの出口と吐出口23の間に配置されており、第2抜出通路72はバランスピストン57を貫通している又はバランスピストン57と最終段インペラ4Eの間を通っているものである。
【0050】
第5の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第2又は3の項目に係る多段遠心圧縮機10において、第2戻し位置R2がバランスピストン57と隣り合う第2中間段インペラ4Dの下流に配置されており、第2戻し通路74はバランスピストン57を貫通している又はバランスピストン57と第2中間段インペラ4Dの間を通っているものである。
【0051】
第4及び5の項目に係る多段遠心圧縮機10では、バランスピストン57に第2抜出通路72を設けることで、バランスピストン57内の圧力が抑制されて、ロータ2全体の特性に影響する不安定化力を低減できる可能性がある。
【0052】
第6の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第1乃至5のいずれかの項目に係る多段遠心圧縮機10において、第1戻し位置R1が圧縮通路Wの吸入口22と初段インペラ4Aの入口の間に配置されており、第1戻し通路73が軸体3を貫通しているものである。
【0053】
このように第1戻し通路73が軸体3を利用して形成されているので、第1戻し通路73を形成するための機械加工が容易であり、且つ、軸体3のインペラスタック40を支持している部分の剛性が第1抜出通路71によって影響を受けない。また、第1戻し通路73が軸体3を通っていることで、第1戻し位置R1を初段インペラ4Aの入口よりも更に上流に配置することが可能となり、第1戻し位置R1に戻された流体による圧縮通路Wの本流の流れへの影響を抑えることができる。
【0054】
第7の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第1乃至5のいずれかの項目に係る多段遠心圧縮機10において、第1戻し位置R1が圧縮通路Wの吸入口22と初段インペラ4Aの入口の間に配置されており、軸体3は軸線方向Xと直交する平面状の座面を有し、インペラスタック40は平面状の当接面を有し、軸体3の座面とインペラスタック40の当接面とが軸線方向Xに接触しており、第1戻し通路73が座面と当接面のうち少なくとも一方に配置された溝を通っているものである。
【0055】
このように第1戻し通路73が軸体3を利用して形成されているので、第1戻し通路73を形成するための機械加工が容易であり、且つ、軸体3のインペラスタック40を支持している部分の剛性が第1抜出通路71によって影響を受けない。
【0056】
第8の項目に係る多段遠心圧縮機10は、第1乃至7のいずれかの項目に係る多段遠心圧縮機10において、第1内部通路7a及び第2内部通路7bの少なくとも一方に、通過する流体を減圧させる減圧材48が配置されているものである。
【0057】
減圧材48が配置された内部通路7a,7bでは、減圧材48より下流側の圧力が低下してシール47に作用する圧力差をより低減できる。
【0058】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 :多段ロータ
3 :軸体
4 :インペラ
4A :初段インペラ
4C :第1中間段インペラ
4D :第2中間段インペラ
4E :最終段インペラ
7a :第1内部通路
7b :第2内部通路
10 :多段遠心圧縮機
22 :吸入口
23 :吐出口
40 :インペラスタック
47 :シール
48 :減圧材
57 :バランスピストン
70 :シール
71 :第1抜出通路
72 :第2抜出通路
73 :第1戻し通路
74 :第2戻し通路
E1 :第1抜出位置
E2 :第2抜出位置
R1 :第1戻し位置
R2 :第2戻し位置
W :圧縮通路
X :軸線方向