(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106518
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240801BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F02M37/00 311A
B60K15/035 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010807
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】三原 健太
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA22
3D038CB01
(57)【要約】
【課題】満タン規制位置を上昇させながらも燃料タンク外への燃料漏れを規制できる、燃料タンク用弁装置を提供する。
【解決手段】この燃料タンク用弁装置10は、周壁部52、仕切壁23、弁室V、通気室R、開口27を有するハウジング15と、開口27を閉塞するフロート弁80とを有しており、ハウジング15は、フロート弁80を支持するフロート弁支持部51を有しており、周壁部52の、フロート弁支持部51より上方には、軸方向に開口し且つ燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる満タン規制開口70が形成されており、該満タン規制開口70は、液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で連続給油を停止する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部及び仕切壁を有しており、前記仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が、前記周壁部内に各々設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容されて前記開口を開閉し、給油ノズルからの前記燃料タンク内への給油時に上昇して前記開口を閉塞するフロート弁とを有しており、
前記ハウジングは、前記フロート弁を支持するフロート弁支持部を有しており、
前記周壁部の、前記フロート弁支持部より上方には、軸方向に開口し且つ前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる満タン規制開口が形成されており、該満タン規制開口は、液没していない状態で前記給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で前記連続給油を停止するものであることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記周壁部は、内壁部及び該内壁部の外側に配置される外壁部からなり、前記ハウジングを径方向断面から見たときに二重壁構造となっており、
前記内壁部及び前記外壁部の間に、前記満タン規制開口が設けられている請求項1記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記満タン規制開口は、前記ハウジングを軸方向から見たときに、円弧状をなしている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記仕切壁を有するハウジング本体と、該ハウジング本体の下方に装着されるロアーキャップとを有しており、
前記ロアーキャップに前記満タン規制開口が設けられている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項5】
前記満タン規制開口は、前記外壁部の下端部と前記内壁部との間に設けられている請求項2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項6】
前記満タン規制開口は、前記内壁部の下端部と前記外壁部との間に設けられている請求項2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項7】
前記外壁部の下端部と前記内壁部との間であって、前記満タン規制開口よりも上方には、段状部を介して、前記満タン規制開口及び前記弁室に連通する流路の流路幅を狭める、中間壁部が設けられている請求項5記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項8】
前記周壁部は、前記内壁部と前記外壁部とを連結すると共に、前記満タン規制開口を複数に区画する連結リブを有している請求項2記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料タンクへの過給油を防止したり、燃料タンク外への燃料流出を防止したりする、燃料タンク用弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、燃料タンク内の液面が、予め設定された満タン液面よりも上昇しないように、燃料タンク内への過給油を防止する弁装置(満タン規制バルブ)や、自動車が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置(カットバルブ)が取付けられている。
【0003】
下記特許文献1には、周壁及び仕切壁を有し、仕切壁を介して下方に弁室、上方に通気室が設けられ、仕切壁に開口部が形成されたハウジングと、フロート弁とを有し、周壁に形成された第1流通孔と、周壁の、第1流通孔よりも上方に形成された第2流通孔と、周壁の、第2流通孔よりも上方に形成された第3流通孔とを有しており、第1流通孔は、追加給油前の満タン規制を行う高さに配置され、液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で給油ノズルからの連続給油を停止するように構成され、第2流通孔は追加給油を可能に構成された、満タン規制バルブが記載されている。
【0004】
また、満タン規制を図る第1流通孔は、ハウジングの周壁に対して、径方向に開口した形状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2022/080302A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料タンク内への燃料の供給量は、満タン規制用の孔の高さによって決まるところ、上記満タン規制バルブでは、満タン規制用の第1流通孔がハウジングの周壁に形成されているので、満タン規制用の孔がハウジング底部に形成されているバルブと比べて、第1流通孔を高い位置に設けることができる。
【0007】
そのため、燃料タンク内へ供給される燃料の満タン位置(開口がフロート弁で閉塞されるときの燃料高さ)を高めることは可能となっている。なお、この満タン位置が規定される位置を、満タン規制面や、ロックポイント、SOH(Shut Off Height)等という。
【0008】
しかし、上記第1流通孔は、ハウジングの周壁に対して、径方向に開口しているので、車両の走行時や、車両の傾き時、車両の横転時等において、燃料タンク内で燃料が揺動したときに、燃料が、第1流通孔から弁室内に流入しやすくなり、更に弁室内に流入した燃料が、フロート弁が上昇して開口部を閉じる前に、開口部を通って通気室内に流入しやすいので、燃料タンク外への更なる燃料漏れ対策が求められていた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、満タン規制位置を上昇させながらも、燃料タンク外への燃料漏れを規制できる、燃料タンク用弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料タンク用弁装置は、周壁部及び仕切壁を有しており、前記仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が、前記周壁部内に各々設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成された、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容されて前記開口を開閉し、給油ノズルからの前記燃料タンク内への給油時に上昇して前記開口を閉塞するフロート弁とを有しており、前記ハウジングは、前記フロート弁を支持するフロート弁支持部を有しており、前記周壁部の、前記フロート弁支持部より上方には、軸方向に開口し且つ前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる満タン規制開口が形成されており、該満タン規制開口は、液没していない状態で前記給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で前記連続給油を停止するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周壁部の、フロート弁支持部より上方に、軸方向に開口した満タン規制開口が形成されているので、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0012】
また、満タン規制開口が軸方向に開口しているので、燃料が揺動しても、揺動した燃料が周壁部に衝突して、勢いが弱められるため、満タン規制開口から弁室内に燃料が直接流入しにくくなる。そのため、仕切壁の開口を通じて、燃料を通気室内に流入させにくくして、燃料タンク外に漏れにくくすることができる。
【0013】
このように、本発明の燃料タンク用弁装置においては、満タン規制位置を上昇させながらも、燃料タンク外への更なる燃料漏れ対策を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図3】同燃料タンク用弁装置を構成するロアーキャップの、
図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図8】フロート弁が下降して、開口が開いた状態の断面図である。
【
図9】
図8の状態からフロート弁が上昇して、開口を閉じた場合の断面図である。
【
図10】
図9の状態からシール弁体に対して中間弁体が下降した場合の断面図である。
【
図11】フロート弁の昇降動作時における、燃料タンク内の圧力と時間との関係を示すグラフである。
【
図12】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態を示す斜視図である。
【
図14】他の実施形態におけるロアーキャップの、
図12とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図18】フロート弁が下降して、開口が開いた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(燃料タンク用弁装置の一実施形態)
以下、
図1~11を参照して、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態について説明する。
【0016】
図1、
図6、及び
図7に示すように、この実施形態における燃料タンク用弁装置10(以下、単に「弁装置10」ともいう)は、周壁部21,41,52及び仕切壁23を有しており、仕切壁23を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室V、上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが、周壁部21,41,52内に各々設けられ、仕切壁23に弁室Vと通気室Rとを連通する開口27が形成された、ハウジング15と、弁室V内に昇降可能に収容されて開口27を開閉し、給油ノズルからの燃料タンク内への給油時に上昇して開口27を閉塞するフロート弁80と、該フロート弁80を付勢する付勢ばね17とを有している。
【0017】
この実施形態のハウジング15は、仕切壁23を有するハウジング本体20と、ハウジング本体20の上方に装着されるアッパーカバー40と、ハウジング本体20の下方に装着されるロアーキャップ50とを有している。
【0018】
また、ハウジング15は、フロート弁80を支持するフロート弁支持部51を有している。更に、ハウジング本体20が周壁部21を有しており、アッパーカバー40が周壁部41を有しており、ロアーキャップ50が周壁部52を有している。
【0019】
そして、
図3~5及び
図7に示すように、ロアーキャップ50の周壁部52の、フロート弁支持部51より上方には、軸方向に開口し且つ燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる満タン規制開口70が形成されており、この満タン規制開口70は、液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で連続給油を停止するものとなっている。
【0020】
すなわち、この実施形態では、ロアーキャップ50側の周壁部52が、本発明における「周壁部」をなしている。
【0021】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。また、本発明における「軸方向」とは、弁室V内を上下方向に昇降動作するフロート弁80の昇降動作に沿った方向や、フロート弁80の軸心に沿った方向(弁軸方向とも言える)を意味する(以下の説明でも同様)。
【0022】
まず、ハウジング本体20について、
図1,6,7等を参照して説明する。
【0023】
このハウジング本体20は、略円筒状をなした周壁部21を有しており、その上方に、仕切壁23が配置されている。また、周壁部21の上方からは、略円環状をなしたフランジ部25が張り出している。このフランジ部25には、複数の挿通孔25aが形成されている。
【0024】
上記仕切壁23の径方向中央部には、略円形孔状をなした開口27が形成されている。この開口27の裏側(下側)周縁からは、略円形突起状をなした弁座27aが突設されている(
図6,7参照)。この弁座27aに、フロート弁80が接離することで(
図8,9参照)、開口27が開閉される。
【0025】
なお、開口27の内周には、略十字状をなしたリブ27bが設けられている。このリブ27bによって、開口27の表側内周縁からの、シール弁体85(
図6,7参照)の飛び出しが防止されるようになっている。
【0026】
また、周壁部21の外周の、フランジ部25寄りの箇所であって、前記挿通孔25aに整合した位置からは、複数の第1係合突部29が突設されている。更に、周壁部21の外周であって、軸方向の下端部37寄りの位置には、複数の第2係合突部31が突設されている。
【0027】
また、仕切壁23とフランジ部25との間には、環状溝状をなしたリング装着溝33が形成されており、該リング装着溝33には、シールリング18が介装されるようになっている(
図6,7参照)。
【0028】
また、周壁部21の、仕切壁23寄りの箇所には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる流通孔35が形成されている(
図1,7参照)。この流通孔35は、車両が横転したり反転したりした場合や、燃料タンク内への給油時を除いて、液没しない状態が維持されるようになっており、弁室V内に燃料タンク内の空気を流入させる部分となっている。
【0029】
更に
図1に示すように、周壁部21の軸方向の下端部37の外周には、環状突起37aが突設されている。
【0030】
次に、ハウジング本体20の上方に装着されるアッパーカバー40について、
図1,2,6,7等を参照して説明する。
【0031】
このアッパーカバー40は、略円筒状をなした周壁部41を有すると共に、天井部が閉塞しており、更に周壁部41の下端外周縁から径方向外方に向けて張り出したフランジ部43を有する、下方が開口し上方が閉塞した略ハット状をなしている。
【0032】
また、
図1に示すように、フランジ部43の内周縁部からは、下方に向けて複数の係合片45が垂下している。各係合片45には、係合孔45aが形成されている。
【0033】
そして、アッパーカバー40の各係合片45を、ハウジング本体20の対応する挿通孔25aから挿出させ、係合孔45aに対応する第1係合突部29をそれぞれ係合させる。その結果、
図6,7に示すように、シールリング18を介して、ハウジング本体20の上方にアッパーカバー40が装着されることとなり、仕切壁23を介して、その上方に燃料タンクの外部に連通する通気室Rが形成されるようになっている。
【0034】
また、周壁部41の周方向の所定箇所には、略円形孔状をなした燃料蒸気排出口41a(以下、単に「排出口41a」ともいう)が、周壁部41を貫通して形成されている(
図6参照)。そして、周壁部41の、排出口41aの表側周縁から、燃料蒸気配管47(以下、単に「配管47」ともいう)が所定長さで延出している。この配管47は、排出口41aに連通している。
【0035】
次に、ハウジング本体20の下方に装着されるロアーキャップ50について、
図1~7を参照して説明する。
【0036】
このロアーキャップ50は、板状をなすと共に、キャップ底部に位置してフロート弁80を支持するフロート弁支持部51と、該フロート弁支持部51の外周縁部から立設した周壁部52とを有する、有底キャップ状をなしている。なお、フロート弁支持部51は、周壁部52の軸方向下端部に位置している、とも言える。
【0037】
そして、フロート弁支持部51の上方に、満タン規制開口70が形成されている。すなわち、この実施形態では、ロアーキャップ50に満タン規制開口70が設けられた構造となっている。
【0038】
なお、フロート弁支持部51の内面(弁室V側に向く面)側の径方向中央部からは、付勢ばね17の下端部を支持する、略十字突起状をなしたばね支持突起53が突設されている。
【0039】
また、
図7に示すように周壁部52は、内壁部54及び該内壁部54の外側に配置される外壁部55とからなり、ハウジング15を径方向断面から見たときに二重壁構造となっており、内壁部54及び外壁部55の間に、満タン規制開口70が設けられている。
【0040】
この実施形態の場合、
図7に示すようなハウジング15の縦断面、すなわち、ハウジング15を径方向における断面から見たときに、周壁部52は、内壁部54及び外壁部55とからなる二重筒構造をなしている。
【0041】
また、内壁部54は、一対の円弧状壁部56,56と、一対の拡開壁部57,57とから構成されている。
【0042】
具体的には、フロート弁支持部51の外周縁部であって、径方向に対向する箇所から、円弧状をなして軸方向に延びる、一対の円弧状壁部56,56が立設している。また、フロート弁支持部51の外周縁部であって、前記一対の円弧状壁部56,56に対して直交する位置には、軸方向から見たときに略扇形状をなすように、円弧状壁部56よりも径方向外方に拡開した、一対の拡開壁部57,57が設けられている。
【0043】
各拡開壁部57は、所定の円弧状壁部56の周方向端部、及び、該周方向端部に隣接する円弧状壁部56の周方向端部から、互いに広がりながら径方向外方に延出した一対の外方延出部58,58と、該一対の外方延出部58,58どうしを連結する、略円弧状をなした円弧状部59とからなり、上述のように略扇形状をなしている。
【0044】
また、円弧状壁部56とフロート弁支持部51との間の部分や、一対の外方延出部58,58と円弧状部59とフロート弁支持部51との間の部分には、切欠きやスリット等からなる連通口60aを介して、撓み変形可能な弾性片60が形成されており、フロート弁80が下降してフロート弁支持部51上に載置される際の、打音抑制が図られている。
【0045】
更に
図1や
図4に示すように、周壁部52の内周からは、径方向内方に突出し且つ軸方向に延びて、フロート弁80の昇降動作をガイドする、ガイドリブ61が複数設けられている。この実施形態の場合、内壁部54の円弧状壁部56の内面や、拡開壁部57を構成する一対の外方延出部58,58の内側面に隣接した位置に、ガイドリブ61が設けられている。
【0046】
一方、外壁部55は、軸方向上方に配置され、略円環状をなした上端部62と、該上端部62の下方に連設されると共に、上端部62よりも縮径した下端部63とを有している。
【0047】
上端部62には、周方向に均等な間隔を空けて、周方向に長く延びる、長孔状をなした係合孔62aが形成されている。そして、各係合孔62aに、ハウジング本体20の、対応する第2係合突部31をそれぞれ係合させることで、ハウジング本体20の下方にロアーキャップ50が装着される。その結果、仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成されるようになっている(
図6,7参照)。
【0048】
また、
図3に示すように、下端部63の軸方向下端側であって、一対の拡開壁部57,57に対応する、径方向に対向する箇所には、径方向内方に所定深さで凹み且つ周方向に所定長さで延びる、凹部64,64が形成されている。各凹部64の周方向両端部には、拡開壁部57との連結用の、一対の連結部64a,64aが設けられている。
【0049】
更に、下端部63の内周からは、略環状フランジ状をなした段状部65が径方向内方に向けて突出している(
図3,5参照)。この段状部65の内周縁部からは、環状をなした中間壁部66が軸方向上方に向けて所定高さで突出しており(
図7参照)、該中間壁部66と、段状部65と、外壁部55の下端部63との間に、上方が開口した環状をなした環状溝部67が形成されている。
【0050】
上記中間壁部66は、
図4に示すようにロアーキャップ50を軸方向から見たときに、外壁部55と内壁部54との間に配置されるものとなっている。また、中間壁部66は、外壁部55の径方向内側に配置されているとも言え、内壁部54の径方向外側に配置されているとも言える。
【0051】
なお、環状溝部67には、ハウジング本体20の下方にロアーキャップ50が装着された状態で、ハウジング本体20の周壁部21の下端部37が挿入されて、その環状突起37aが、環状溝部67の径方向外側に位置する内周面に当接するようになっている(
図6,7参照)。
【0052】
また、
図4に示すように、中間壁部66の内周であって、各円弧状壁部56の周方向両端部に対向する箇所からは、一対の連結部66a,66aが径方向内方に向けて突出している。
【0053】
そして、上記一対の連結部66a,66aが、円弧状壁部56の周方向両端部の上端部分に連結されると共に(
図1,4参照)、下端部63の前記一対の連結部63a,63aが、拡開壁部57の円弧状部59の周方向両端に連結されることで(
図3参照)、外壁部55と内壁部54とが互いに連結されて、二重壁構造が構成されるようになっている。
【0054】
また、
図7に示すように、外壁部55の下端部63と、内壁部54の上端部とは、軸方向において所定長さ重なっている(ラップしている)。ここでは、外壁部55の下端部63の、内壁部54の円弧状壁部56に対向する部分と、内壁部54の円弧状壁部56の上端部分とが、軸方向に所定長さ重なっている。
【0055】
なお、
図7に示すように、内壁部54の円弧状壁部56の上端56aは、中間壁部66の上端66bよりも軸方向に低く、且つ、外壁部55の下端部63の下端63bよりも軸方向に高い位置となっている。
【0056】
そして、
図7に示すように、満タン規制開口70は、外壁部55の下端部63と内壁部54との間に設けられている。
【0057】
この満タン規制開口70の高さ位置を説明すると、
図7に示すように、外壁部55の下端部63の下端63bと、当該下端63bに対応する、内壁部54の円弧状壁部56の所定高さの箇所との間に、満タン規制面や、ロックポイント、SOH(Shut Off Height)を設定するための、満タン規制開口70が配置されるようになっている。
【0058】
また、満タン規制開口70は、以下の部分に囲まれて画成されている。すなわち、
図5に示すようにロアーキャップ50を軸方向下方から見たときに(底面側から見たときに)、外壁部55の下端部63の、内壁部54の円弧状壁部56に対向する部分と、凹部64一対の連結部64a,64aと、拡開壁部57の一対の外方延出部58,58と、内壁部54の円弧状壁部56とで囲まれた部分の内側に、満タン規制開口70が画成されている。
【0059】
なお、満タン規制開口70は、ハウジング15の軸方向に開口したもの、すなわち、ハウジング15の軸方向(上下方向)が開口する形状となっている。この実施形態における満タン規制開口70は、
図7に示すように、ロアーキャップ50の周壁部52の軸方向の下方に向けて開口した形状となっている(軸方向下方が開口している)。
【0060】
また、満タン規制開口70は、
図7に示す流路FPに連通している。そのため、満タン規制開口70は、流路FPを介して(流路FPを通じて)、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通可能とするものとなっている。
【0061】
更に、満タン規制開口70の形状については、ハウジング15を軸方向から見たときに、円弧状をなしている。
【0062】
すなわち、満タン規制開口70は、
図5に示すようにロアーキャップ50を軸方向下方から見たときに、周壁部52の径方向に一定隙間で且つ周壁部52の周方向に沿って所定長さで延びる、略円弧状をなした開口となっている。この実施形態では、周壁部52の径方向に対向する箇所に、一対の満タン規制開口70,70が設けられている。
【0063】
また、前記中間壁部66は、以下の構成とも言える。すなわち、外壁部55の下端部63と内壁部54との間であって、満タン規制開口70よりも上方には、段状部65を介して、満タン規制開口70及び弁室Vに連通する流路の流路幅を狭める、中間壁部66が設けられている、とも言える。
【0064】
これについて
図7を参照して説明すると、段状部65の内周縁部から上方に突出した中間壁部66と、該中間壁部66に対向配置された、内壁部54の円弧状壁部56との間に、満タン規制開口70と弁室Vとを連通する流路FPが配置されている。この流路FPは、満タン規制開口70より上方に位置していると共に、その流路面積が、満タン規制開口70の開口面積よりも狭くなっている。
【0065】
また、上記流路FPは、
図4に示すようにロアーキャップ50を軸方向上方から見たときに、外壁部55の内側に配置された中間壁部66の、内壁部54の円弧状壁部56に対向する部分と、中間壁部66の一対の連結部66a,66aと、内壁部54の円弧状壁部56とで囲まれた部分の内側に画成されている。
【0066】
なお、上記の満タン規制開口70は、満タン規制を行う高さに配置され、液没していない状態で、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させて、給油ノズルからの連続給油を可能とするような開口面積で形成されている。
【0067】
次に、弁室V内に昇降可能に収容されるフロート弁80について、
図6や
図7等を参照して説明する。
【0068】
この実施形態のフロート弁80は、燃料浸漬時に浮力を発生させるフロート本体81と、該フロート本体81の上方に装着され、フロート本体81に対して相対的に昇降動作し、仕切壁23の開口27に接離するシール部材83とを有している。
【0069】
また、シール部材83の上方には、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料からなるシール弁体85が装着されている。シール弁体85の中央には、上方及び下方が開口した通気孔85aが貫通して形成されている。このシール弁体85が開口27の弁座27aに接離して、開口27を開閉することで、フロート弁80が満タン規制弁として機能する。
【0070】
更に、フロート本体81とシール部材83との間には、中間弁体87が傾動可能に支持されている。この中間弁体87は、常時はシール弁体85の下端部に当接して、通気孔85aを閉塞し(
図6,7参照)、フロート本体81がシール部材83に対して下降したときに、通気孔85aを開くようになっている(
図10参照)。
【0071】
また、フロート弁80は、弁室V内において、ロアーキャップ50との間で、付勢ばね17を介在させた状態で昇降可能に収容配置され、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢ばね17の付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降するようになっている。
【0072】
以上説明した弁装置10においては、給油時に燃料タンク内の燃料液面が上昇して、満タン規制開口70が液没したときに、フロート弁80が上昇して開口27を閉じて連続給油が停止するように構成されている(
図9参照)。具体的には、満タン規制開口70の液没状態では、給油ノズルからの連続給油速度に対して、流通孔35からの空気流入速度が間に合わず、弁室V内の燃料液面が上昇して、フロート弁80により開口27が閉塞されて、給油ノズルからの連続給油を停止するように構成されている。
【0073】
なお、満タン規制開口70における、上記の「液没していない状態」とは、液体の燃料によって、閉塞されずに開口し、燃料タンク内と弁室内とが連通した状態を意味し、「液没状態」とは、液体の燃料によって閉塞されて、燃料タンク内と弁室内との連通が遮断された状態を意味する。
【0074】
以下、
図8~10を参照して、燃料液面(L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7)、満タン規制開口70、フロート弁80の動作、開口27の開閉状態の関係を説明する。また、
図11には、この際の燃料タンク内の圧力(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフが記載されており、同グラフも併せて参照する。
【0075】
燃料液面L1,L2,L3は、弁室V外での燃料液面の液位を示しており、燃料液面L4,L5,L6,L7は、弁室V内での燃料液面の液位を示している。
【0076】
図11におけるP1,P2,P3は、それぞれ
図8の燃料液面L1,L2,L3での燃料タンク内の圧力を意味する。また、
図11におけるP4は、
図8の燃料液面L4,L5での燃料タンク内の圧力を意味する。更に
図11におけるP5は、
図9の燃料液面L5,L6での燃料タンク内の圧力を意味する。
【0077】
また、
図11におけるP6は、
図10の燃料液面L6での燃料タンク内の圧力を意味する。更に
図11におけるP7は、
図10の燃料液面L7での燃料タンク内の圧力を意味する。また、
図11におけるP8は、
図8の燃料液面L7での燃料タンク内の圧力を意味する。
【0078】
図8には、フロート弁80に燃料が浸漬されていない状態が示されている。この状態では、フロート弁80が自重で下降して、開口27が開き、同開口27を通じて弁室Vと通気室Rとが連通している。また、フロート弁支持部51の連通口60aが液没せずに開口し、且つ、満タン規制開口第70も開口している。更に、シール弁体85の下端部が、中間弁体87に当接して、シール弁体85の通気孔85aが閉塞されている。
【0079】
そして、燃料タンク内に燃料が給油されていくと、燃料タンク内の燃料液面L1、L2へと順次上昇し(
図8参照)、燃料タンク内の圧力もP1、P2へと変動する(
図11参照)。また、燃料タンク内の空気は、連通口60a、満タン規制開口70を通じて、弁室V内に流入した後、開口27を通過して通気室R内に流入し、更に排出口41aから配管47内に流入して、燃料タンク外のキャニスターへと排出される。
【0080】
このようにして、燃料タンク内の空気が、燃料タンク外へ排出されることで、燃料タンク内に燃料を連続給油可能となっている。
【0081】
その後、燃料液面が連通口60aに達すると、この連通口60aを通じて、弁室V内に燃料が流入していき、燃料にフロート本体81が浸漬されることで、フロート弁80が徐
々に上昇する。
【0082】
そして、燃料液面L3が満タン規制開口70に達して、満タン規制開口70が液没し、燃料タンク内の圧力がP3となると、満タン規制開口70を通じての燃料タンク内と弁室Vとの間の空気流通が遮断される。
【0083】
その結果、弁室V内において燃料液面が上昇し(燃料液面L4参照)、且つ、燃料タンク内の圧力がP4へと上昇する。更に、弁室V内の燃料液面が上昇すると(燃料液面L5参照)、フロート弁80が更に上昇して、そのシール弁体85が弁座27aに当接し、開口27が閉塞される(
図9参照)。その結果、開口27を通じての、弁室Vと通気室Rとの空気流通が遮断されて、燃料タンク内の圧力が、P5へと上昇する(燃料タンク内の圧力が最大限となる)。
【0084】
すると、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク側面から斜め外方に延出した給油管を上昇して、給油ノズルの満タン検知センサに燃料が接触して、満タンが検知されるので、燃料タンク内への給油が停止されて満タン規制がなされる。
【0085】
その後、時間経過や、流通孔35から流入した空気により弁室V内の燃料液面が押されることによって、弁室V内の燃料液面が下降していき(燃料液面L6参照)、フロート本体81に対する燃料の浸漬量が低下する。
【0086】
この際、シール弁体85は弁座27aに貼り付いた状態に維持されているため、
図10に示すように、シール弁体85が装着されたシール部材83に対して、フロート本体81が自重によって下降していく。すると、中間弁体87がシール弁体85から離反して、シール弁体85の通気孔85aが開口する。その結果、開口27は、通気孔85aを通じて、弁室V及び通気室Rに連通することになるので、燃料タンク内の圧力がP6へと低下していく。
【0087】
その後、弁室V内の燃料液面が下降して、弁室V外の燃料液面L3と同一高さとなり(燃料液面L7参照)、燃料タンク内の圧力もP7と更に下降すると、弁座27aに貼り付いたシール弁体85が剥がれて、フロート弁80全体が下降し、
図8に示す状態に復帰する(この際の燃料タンク内の圧力は、P7よりも低いP8となる)。
【0088】
(変形例)
本発明を構成するハウジング、該ハウジング本体を構成するハウジング本体、アッパーカバー、ロアーキャップ、フロート弁支持部、周壁部、内壁部、外壁部、フロート弁等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0089】
また、上記実施形態におけるハウジング15は、ハウジング本体20と、アッパーカバー40、ロアーキャップ50とから構成されているが、ハウジングとしては、少なくとも周壁部と、仕切壁と、フロート弁支持部とを有する構造であればよい。例えば、ハウジング本体自体が、単独で有底筒状をなすような構造(ハウジング本体とロアーキャップとが一体化したような構造)としてもよい。
【0090】
また、この実施形態におけるフロート弁支持部51は、ロアーキャップ50の底部に設けられているが、例えば、フロート弁支持部としては、ロアーキャップの軸方向途中に設けてもよく、フロート弁を支持可能であればよい。
【0091】
更に、この実施形態におけるハウジング本体20の周壁部21や、アッパーカバー40の周壁部41等は、略円筒状をなしているが、例えば、楕円筒状や角筒状等であってもよい。
【0092】
また、この実施形態におけるフロート弁80は、フロート本体81や、シール部材83、中間弁体87等からなる多部品構成となっているが、フロート弁としては、例えば、上方に弾性材料からなるシール部材を装着したフロート弁等であってもよく、開口27を開閉可能であればよい。
【0093】
更に、この実施形態では、ハウジング15内に形成された一つの弁室V内に、一つのフロート弁80が収容配置された構造となっているが、例えば、一つの弁室内に複数のフロート弁を収容配置したり(満タン規制弁のほか、燃料カット弁や圧力調整弁等として機能する)、ハウジング内に複数の弁室を画成して、各弁室内にフロート弁を収容配置したりしてもよい。
【0094】
また、この実施形態における満タン規制開口70は、ハウジング15を軸方向から見たときに円弧状をなしているが、満タン規制開口としては、例えば、ハウジングを軸方向から見たときに、円形状、楕円形状、略小判形状、長孔状、矩形状、多角形状等であってもよく、軸方向に開口し、燃料タンク内と弁室内とを連通可能であればよい。
【0095】
更に、この実施形態では、満タン規制開口70は、外壁部55の下端部と内壁部54との間に設けられているが(
図7参照)、満タン規制開口は、例えば、内壁部の下端部と外壁部との間に設けられていてもよい(これについては他の実施形態で説明する)。
【0096】
また、
図5において二点鎖線で示すように、周壁部52は、内壁部54と外壁部55とを連結すると共に、満タン規制開口70を複数に区画する連結リブ79を有する構造としてもよい。
【0097】
(作用効果)
次に、上記構造からなる弁装置10の作用効果について説明する。
【0098】
すなわち、
図8に示す状態から、燃料タンク内に燃料が給油されて、その燃料液面が予め設定されたSOHに達したとき、すなわち、燃料液面L3が満タン規制開口70に達すると、満タン規制開口70が液没して、燃料タンク内と弁室Vとの間の空気流通が遮断されて、弁室V内での燃料液面が上昇する(燃料液面L4,L5参照)。
【0099】
すると、フロート弁80が上昇して、そのシール弁体85が弁座27aに当接し、開口27が閉塞されるので、開口27を通じての弁室Vと通気室Rとの空気流通が遮断されて、燃料タンク内の燃料が給油管を上昇して、給油ノズルの満タン検知センサに燃料が接触し、満タンが検知されることになり、その結果、燃料タンク内への給油が停止されて満タン規制がなされる。
【0100】
このとき、この弁装置10においいては、周壁部52の、フロート弁支持部51より上方に、軸方向に開口した満タン規制開口70が形成されているので、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0101】
また、満タン規制開口70が軸方向に開口しているので、燃料が揺動しても、揺動した燃料が周壁部52に衝突して、その勢いが弱められることになるため、満タン規制開口70から弁室V内に燃料が直接流入しにくくなる(ダイレクトに流入しにくくなる)。なお、満タン規制開口70が軸方向に開口しているので、径方向に満タン規制開口が開口した場合と比べて、燃料揺動時等に、燃料が満タン規制開口70から弁室V内に流入しにくくすることができる、とも言える。
【0102】
そのため、仕切壁23の開口27を通じて、燃料を通気室R内に流入させにくくして、燃料タンク外に漏れにくくすることができる。
【0103】
このように、本発明の弁装置10においては、満タン規制位置を上昇させながらも、燃料タンク外への更なる燃料漏れ対策を図ることができる。例えば、本出願人による特許出願である上記特許文献1(国際公開WO2022/080302A1)における満タン規制バルブよりも、効果の高い燃料漏れ対策を図ることができる。なお、満タン規制位置の上昇と、燃料タンク外への燃料漏れ規制という、相反する効果を両立することができる、とも言える。
【0104】
また、この実施形態においては、
図7に示すように、周壁部52は、内壁部54及び該内壁部54の外側に配置される外壁部55からなり、ハウジング15を径方向断面から見たときに二重壁構造となっており、内壁部54及び外壁部55の間に、満タン規制開口70が設けられている。
【0105】
上記態様によれば、二重壁構造となった内壁部54及び外壁部55の間に、満タン規制開口70が設けられているので、燃料揺動時等において、燃料が外壁部55に衝突しやすくなって、弁室V内によりダイレクトに流入しにくくすることができる。その結果、燃料タンク外への燃料漏れをより効果的に規制することができる(請求項2の効果)。
【0106】
更に、この実施形態においては、
図5に示すように、満タン規制開口70の形状については、ハウジング15を軸方向から見たときに、円弧状をなしている。
【0107】
上記態様によれば、満タン規制開口70は、ハウジング15(ここではハウジング15を構成するロアーキャップ50)を軸方向から見たときに、円弧状をなしているので、満タン規制開口70の開口面積を広く確保することができる。その結果、燃料タンク内と弁室V内との通気性を高めることができるので、燃料給油時に、燃料タンク内の空気を燃料タンクから弁室Vへスムーズに流入させることができ、燃料が給油しやすくなる。
【0108】
また、満タン規制開口70を、ハウジング15の周壁部52の周形状に沿って形成しやすくなり、装置全体をコンパクトにしやすくなる。更に、燃料給油時において、満タン規制開口70が液没する際のバラツキが少なくなり、満タン規制が確実になされる。
【0109】
また、この実施形態においては、
図1,6,7に示すように、ハウジング15は、仕切壁23を有するハウジング本体20と、該ハウジング本体20の下方に装着されるロアーキャップ50とを有しており、
図3,5に示すように、ロアーキャップ50に満タン規制開口70が設けられている。
【0110】
上記態様によれば、ロアーキャップ50に満タン規制開口70が設けられているので、ハウジング本体20はそのままにして、ロアーキャップ50だけを交換することによって、満タン規制位置を適宜変更することができる。
【0111】
すなわち、燃料タンクの形状や構造、レイアウト等によって、要求される満タン規制位置が異なることがある。この場合、満タン規制位置の位置が異なる複数のロアーキャップ50を用意しておき、ロアーキャップ50だけを交換することによって、要求に応じて満タン規制位置を柔軟に変更することができる。
【0112】
また、この場合、ハウジング本体20は交換する必要がないので、ハウジング本体20の汎用性を高めることができる。
【0113】
更に、この実施形態においては、
図7に示すように、満タン規制開口70は、外壁部55の下端部63と内壁部54との間に設けられている。
【0114】
上記態様によれば、満タン規制開口70は、外壁部55の下端部63と内壁部54との間に設けられているので、満タン規制開口70の外側に位置する外壁部55の下端部63の位置を、比較的上方に位置させやすく、その結果、満タン規制位置を、周壁部52の高い位置に設定しやすくなるため、燃料タンク内への給油量を高めることができる。
【0115】
また、この実施形態においては、
図7に示すように、外壁部55の下端部63と内壁部54との間であって、満タン規制開口70よりも上方には、段状部65を介して、満タン規制開口70及び弁室Vに連通する流路の流路幅を狭める、中間壁部66が設けられている。
【0116】
上記態様によれば、満タン規制開口70の奥側、すなわち、燃料タンク側から満タン規制開口を通過して弁室内に流入する燃料の、流入方向奥側に、段状部65を介して、流路幅を狭める中間壁部66が設けられているので、燃料揺動時等に、燃料が弁室V内により流入させにくくすることができる。
【0117】
(燃料タンク用弁装置の他の実施形態)
図12~18には、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0118】
図12及び
図13に示すように、この実施形態の燃料タンク用弁装置10A(以下、単に「弁装置10A」という)は、主として、ロアーキャップ50Aの形状・構造が、前記実施形態と異なっている。
【0119】
この実施形態でも、前記実施形態と同様に、周壁部52は、内壁部69及び外壁部71からなる二重壁構造となっている。
【0120】
また、この実施形態における外壁部71は、軸方向上方に配置された上端部62と、該上端部62の下方に連設されると共に、上端部62よりも縮径した中間部72と、その下方に連設された下端部とを有している。更に、外壁部71の下端部は、一対の円弧状壁部73,73と、一対の拡開壁部74,74とから構成されている。
【0121】
具体的には、フロート弁支持部51の外周縁部であって、径方向に対向する箇所から、円弧状をなして軸方向に延びる、一対の円弧状壁部73,73が立設している。なお、各円弧状壁部73は、外壁部71の中間部72よりも縮径している。また、フロート弁支持部51の外周縁部であって、前記一対の円弧状壁部73,73に対して直交する位置に、円弧状壁部73よりも径方向外方に拡開した、一対の拡開壁部74,74が設けられている。
【0122】
各拡開壁部74は、所定の円弧状壁部73の周方向端部、及び、該周方向端部に隣接する円弧状壁部73の周方向端部から、互いに平行に径方向外方に延出した一対の外方延出部75,75と、該一対の外方延出部75,75どうしを連結する、略円弧状をなした円弧状部76とからなる。各円弧状部76は、外壁部71を構成する中間部72の外径寸法とほぼ同様の、外径寸法にて形成されている。
【0123】
なお、
図12に示すように、拡開壁部74の上端は、円弧状壁部73の上端よりも軸方向に低い位置となっている。
【0124】
また、外壁部71を構成する中間部72の軸方向の下端部内周からは、略環状フランジ状をなした段状部77が径方向内方に向けて突出している(
図13,14参照)。そして、
図14に示すように、段状部77の、円弧状壁部73に対応する部分が、円弧状壁部73の上端部外周に連結されている。
【0125】
また、段状部77の、円弧状壁部73に連結されていない部分は、
図15に示すように、外壁部71の径方向内方に張り出す、張り出し部分77aをなしている。
【0126】
更に、段状部77の径方向所定位置からは、環状をなした環状壁部78が軸方向上方に向けて所定高さで突出しており(
図18参照)、該環状壁部78と、段状部77と、中間部72との間に、環状をなした環状溝部67が形成されている。
【0127】
また、
図18に示すように、段状部77の張り出し部分77aの内周縁部から、略円弧状に延びる内壁部69が垂下している。同
図18に示すように、内壁部69の下端部69aと、外壁部71の上端部とは、軸方向において所定長さ重なっている。ここでは、内壁部69の下端部69aと、外壁部71の下端部に設けた拡開壁部74の上端部とが、軸方向に所定長さ重なっている。
【0128】
なお、
図18に示すように、内壁部69の下端部69aの下端69bは、外壁部71の拡開壁部74の上端74aよりも、軸方向に低い位置となっている。
【0129】
そして、満タン規制開口70は、内壁部69の下端部69aと外壁部71との間に設けられている。
【0130】
この満タン規制開口70の高さ位置を説明すると、
図18に示すように、内壁部69の下端部69aの下端69bと、当該下端69bに対応する、外壁部71の拡開壁部74の所定箇所との間に、満タン規制開口70が配置されるようになっている。なお、
図18の二点鎖線で示す箇所に、満タン規制開口70が位置しており、満タン規制面や、ロックポイント、SOHを設定可能となっている。
【0131】
また、満タン規制開口70は、以下の部分に囲まれて画成されている。すなわち、
図17に示すように、ロアーキャップ50Aを
図14のE-E矢視線における断面で見たときに、外壁部71の拡開壁部74の円弧状部76及び一対の外方延出部75,75と、内壁部69の、円弧状部76や外方延出部75との対応部分とで囲まれた部分の内側に、満タン規制開口70が画成されている。
【0132】
更に、周壁部52は、内壁部69と外壁部71とを連結すると共に、満タン規制開口70を複数に区画する連結リブ79を有している。
【0133】
この実施形態における連結リブ79は、
図17に示すように、外壁部71の拡開壁部74の内周から、ロアーキャップ50Aの径方向中心に向けて突出し、内壁部69に連結するようになっており、満タン規制開口70を複数の領域に区画するように、複数個設けられている。
【0134】
この実施形態では、拡開壁部74の円弧状部76及び一対の外方延出部75,75と、内壁部69とで囲まれた部分の内側に、複数の連結リブ79が配置されており、複数の満タン規制開口70が画成されている。ここでは2個の連結リブ79によって、3個の満タン規制開口70が画成されている。
【0135】
また、各連結リブ79は、その上端部が、上記のように、外壁部71の拡開壁部74と内壁部69とを連結しているが、外壁部71の軸方向下方に向けて延びており、その下端部がフロート弁支持部51に連結されている(
図13,14参照)。
【0136】
そして、この実施形態における弁装置10Aにおいても、段落0072~0084,0099,0100で説明したのと同様に、満タン規制開口70によって満タン規制がなされる。
【0137】
また、この実施形態においては、
図18に示すように、満タン規制開口70は、内壁部69の下端部69aと外壁部71との間に設けられている。そのため、満タン規制開口70の外側に位置する外壁部71を比較的高く形成しやすくなるので、燃料揺動時等に、燃料を弁室V内により流入させにくくすることができる。
【0138】
更に、この実施形態においては、
図17に示すように、周壁部52は、内壁部69と外壁部71とを連結すると共に、満タン規制開口70を複数に区画する連結リブ79を有している。
【0139】
上記態様によれば、周壁部52は、内壁部69と外壁部71とを連結すると共に、満タン規制開口70を複数に区画する連結リブ79を有しているので、例えば、満タン規制開口70に対して、燃料が、周壁部52に沿うようにして斜め上方又は斜め下方から流入しようとしたときに、連結リブ79に衝突しやすくなるため、弁室V内にダイレクトに流入しにくくなる。
【0140】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
10,10A 燃料タンク用弁装置(弁装置)
15 ハウジング
17 付勢ばね
20 ハウジング本体
23 仕切壁
27 開口
40 アッパーカバー
50,50A ロアーキャップ
51 フロート弁支持部
52 周壁部
54 内壁部
55 外壁部
66 中間壁部
69 内壁部
70 満タン規制開口
71 外壁部
79 連結リブ
80 フロート弁
P 流路
R 通気室
V 弁室