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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106519
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/18 20060101AFI20240801BHJP
   F16B 37/08 20060101ALI20240801BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240801BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16B2/18 A
F16B37/08 B
B60R13/02 B
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010808
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛裕
【テーマコード(参考)】
3D023
3J022
【Fターム(参考)】
3D023BB01
3D023BB16
3D023BB21
3D023BB22
3D023BD01
3D023BD02
3D023BD04
3D023BD21
3D023BE36
3J022DA12
3J022DA14
3J022DA19
3J022EA02
3J022EB02
3J022EC04
3J022ED06
3J022FA05
3J022FB08
3J022HA05
(57)【要約】
【課題】被取付部材をガタつかせることなく被取付面に取り付けることができるクリップを提供する。
【解決手段】クリップ10は、内側に挿入路が形成された本体部11と、この本体部11に対して回転する定着部30とから構成され、挿入路にスタッドボルト3が通された状態で、定着部30が回転して押付端部36が被取付部材2に押し付けられると、本体部11が、定着部30によって被取付部材2から離れる方向に押される。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付面に固定された被取付ボルトに通されている被取付部材を、前記被取付面に留めるために前記被取付ボルトに取り付けられるクリップであって、
前記被取付ボルトに通される挿入路が形成された本体部と、
前記挿入路に配置されて前記被取付ボルトに係止される爪部と、
前記本体部に取り付けられる定着部と、を有し、
前記定着部が前記被取付部材から離れた離反姿勢、又は、前記定着部が前記被取付部材に押し付けられると共に前記本体部を前記被取付部材から離す方向に押す定着姿勢に変形する、
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記定着部のうち、前記定着姿勢において前記被取付部材に当たる押付端部が、前記本体部のうち、前記離反姿勢において前記被取付部材に当接又は近接する本体端部よりも、前記被取付部材に向けて突出している、
ことを特徴とする請求項1に記載されたクリップ。
【請求項3】
前記本体部と前記定着部とが、回転軸部を介して予め連結された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたクリップ。
【請求項4】
前記本体部と前記定着部とがレール構造を介して連結され、前記定着部が前記レール構造に沿って移動する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたクリップ。
【請求項5】
前記本体部と前記定着部とが、前記定着姿勢において篏合する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたクリップ。
【請求項6】
前記被取付ボルトの周囲に形成された規制部に接触することで、前記被取付ボルトを軸として回転することを規制する外形を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたクリップ。
【請求項7】
前記本体部が、
前記挿入路を形成した側面部と、
前記挿入路の入口側の端に形成された前記本体端部と、を有し、
前記側面部が、
前記側面部の内面に形成された前記爪部と、
前記側面部の外面に形成された回転軸部と、
前記側面部の外面において前記回転軸部の周囲に形成されたレール溝部と、
前記側面部の外面において前記回転軸部の周囲に形成された嵌合突部と、を有し、
前記定着部が、
前記回転軸部に支持されて前記側面部の外面と対峙したアーム部と、
前記アーム部に連接されて前記本体部よりも張り出したレバー部と、を有し、
前記アーム部が、
前記アーム部の縁に形成された前記押付端部と、
前記アーム部の内面に形成されていて前記レール溝部に沿うレール突部と、
前記アーム部の内面に形成されていて前記篏合突部と篏合する篏合孔部と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に従属する請求項3に記載されたクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドボルト等に取り付けられるクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のアンダーフロアにインシュレーター等が取り付けられる際や、ホイールハウス内にライナー等が取り付けられる際、スタッドボルトとナットとによる締結構造が用いられている。例えば、自動車のボディにスタッドボルトが設けられ、このスタッドボルトに、インシュレーターやライナー等の被取付部材が通された状態で、ナットによって締め付けられる。例えば、下記特許文献1に記載された発明(以下、「文献公知1発明」と記す。)では、ナットの代わりにプラスチッククリップが用いられている。
【0003】
文献公知1発明に係るクリップは、スタッドボルトが通される孔が形成された筒体を有し、この筒体の側面の一部が切り欠かれたことで、側面の一部に可撓アームが形成されている。可撓アームの内面には、スタッドボルトと螺合するネジ溝が形成されている。筒体の上端部には、揺動股片が連接され、連接部位を起点として揺動股片が揺動する。揺動股片は、二股に裂けて間に溝が形成されており、筒体が溝に挟まると、揺動股片によって可撓アームが外側から挟持される。挟持された可撓アームは、内側に向けて撓み、筒体に通されたスタッドボルトに螺合しつつ押し付けられるため、クリップがスタッドボルトに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-280909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文献公知1発明では、可撓アームの内面に形成されたネジ溝が、スタッドボルトのネジ溝のサイズに必ずしも一致するとは限らないし、スタッドボルトのネジ溝のピッチに馴染まない場合もある。この場合、クリップは、被取付部材との間に隙間が空いた状態でスタッドボルトに取り付けられるため、隙間において被取付部材がガタつくことになる。したがって、改めてクリップを締め直す必要がある場合もある。
【0006】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。本発明は、被取付部材をガタつかせることなく被取付面に留めることができるクリップの提供を目的とする。また、広義には、本発明は、有害物質の排出を抑制し、普遍的な課題である快適な環境を整備することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るクリップは、被取付面に固定された被取付ボルトに通されている被取付部材を、前記被取付面に留めるために前記被取付ボルトに取り付けられるクリップであって、前記被取付ボルトに通される挿入路が形成された本体部と、前記挿入路に配置されて前記被取付ボルトに係止される爪部と、前記本体部に取り付けられる定着部と、を有し、前記定着部が前記被取付部材から離れた離反姿勢、又は、前記定着部が前記被取付部材に押し付けられると共に前記本体部を前記被取付部材から離す方向に押す定着姿勢に変形する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るクリップは、前記定着部のうち、前記定着姿勢において前記被取付部材に当たる押付端部が、前記本体部のうち、前記離反姿勢において前記被取付部材に当接又は近接する本体端部よりも、前記被取付部材に向けて突出している、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るクリップは、前記本体部と前記定着部とが、回転軸部を介して予め連結された、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るクリップは、前記本体部と前記定着部とがレール構造を介して連結され、前記定着部が前記レール構造に沿って移動する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るクリップは、前記本体部と前記定着部とが、前記定着姿勢において篏合する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るクリップは、前記被取付ボルトの周囲に形成された規制部に接触することで、前記被取付ボルトを軸として回転することを規制する外形を有する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るクリップは、前記本体部が、前記挿入路を形成した側面部と、前記挿入路の入口側の端に形成された前記本体端部と、を有し、前記側面部が、前記側面部の内面に形成された前記爪部と、前記側面部の外面に形成された回転軸部と、前記側面部の外面において前記回転軸部の周囲に形成されたレール溝部と、前記側面部の外面において前記回転軸部の周囲に形成された嵌合突部と、を有し、前記定着部が、前記回転軸部に支持されて前記側面部の外面と対峙したアーム部と、前記アーム部に連接されて前記本体部よりも張り出したレバー部と、を有し、前記アーム部が、前記アーム部の縁に形成された前記押付端部と、前記アーム部の内面に形成されていて前記レール溝部に沿うレール突部と、前記アーム部の内面に形成されていて前記篏合突部と篏合する篏合孔部と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクリップは、被取付面に固定された被取付ボルトに通されている被取付部材を、被取付面に留めるために被取付ボルトに取り付けられるものであって、被取付ボルトに通される挿入路が形成された本体部と、挿入路に配置されて被取付ボルトに係止される爪部と、本体部に取り付けられる定着部と、を有し、定着部が被取付部材から離れた離反姿勢、又は、定着部が被取付部材に押し付けられると共に本体部を被取付部材から離す方向に押す定着姿勢に変形するものである。離反姿勢において、本体部の挿入路に被取付ボルトが通されると、爪部が被取付ボルトに係止する。爪部が被取付ボルトに係止した状態で、定着姿勢に変形すると、定着部が被取付部材に押し付けられると共に、本体部が、定着部によって被取付部材から離れる方向に押される。したがって、離反姿勢において、仮に、爪部が、被取付ボルトのネジ溝のピッチに馴染まない場合や、本体部と被取付部材との間に隙間が空いた場合であっても、定着部が被取付部材と本体部との間で両者を離す方向に押すため、爪部がネジ溝のピッチに馴染んだ状態で係止される。よって、被取付部材をガタつかせることなく被取付面に留めることができる。
【0015】
本発明に係るクリップは、定着部のうち、定着姿勢において被取付部材に当たる押付端部が、本体部のうち、離反姿勢において被取付部材に当接又は近接する本体端部よりも、被取付部材に向けて突出している。この構成により、離反姿勢では、本体端部が被取付部材に当たっていて(又は近接していて)、定着姿勢に変形すると、押付端部が被取付部材に当たる。すなわち、被取付部材に対して突出している度合い(以下、「突出量」と記す。)は、本体端部よりも押付端部の方が多いため、定着姿勢において、押付端部が被取付部材に押し付けられると、突出量の差異相当分、本体端部が被取付部材から離されると共に本体部が被取付部材から離れる方向に押される。よって被取付部材をガタつかせることなく被取付面に留めることができる。
【0016】
本発明に係るクリップは、本体部と定着部とが、回転軸部を介して予め連結されている。したがって、離反姿勢又は定着姿勢への変形が円滑となる。よって、定着部の操作性が良く、定着部の動作が安定する。
【0017】
本発明に係るクリップは、本体部と定着部とがレール構造を介して連結され、定着部がレール構造に沿って移動する。離反姿勢又は定着姿勢に変形する際、レール構造による摩擦によって、定着部が本体部に対して任意の姿勢で止まり、不本意に定着部が動くことがない。また、定着部がレール構造に沿って動作するため、操作性が良い。
【0018】
本発明に係るクリップは、本体部と定着部とが、定着姿勢において篏合する。したがって、定着姿勢が堅牢である。また、定着姿勢となったことの節度感(クリック感)を使用者に与えることができる。
【0019】
本発明に係るクリップは、被取付ボルトの周囲に形成された規制部に接触することで、被取付ボルトを軸として回転することを規制する外形を有している。すなわち、被取付ボルトを回転軸として、クリップが回転する場合があるところ、クリップが規制部に当たることで回転が規制される。よって、クリップが不本意に被取付ボルトから外れることが抑止される。
【0020】
本発明に係るクリップは、本体部が、挿入路を形成した側面部と、挿入路の入口側の端に形成された本体端部と、を有し、側面部が、側面部の内面に形成された爪部と、側面部の外面に形成された回転軸部と、側面部の外面において回転軸部の周囲に形成されたレール溝部と、側面部の外面において回転軸部の周囲に形成された嵌合突部と、を有し、定着部が、回転軸部に支持されて側面部の外面と対峙したアーム部と、アーム部に連接されて本体部よりも張り出したレバー部と、を有し、アーム部が、アーム部の縁に形成された押付端部と、アーム部の内面に形成されていてレール溝部に沿うレール突部と、アーム部の内面に形成されていて篏合突部と篏合する篏合孔部と、を有している。よって、被取付部材をガタつかせることなく被取付面に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係るクリップの離反姿勢の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るクリップの定着姿勢の斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るクリップの本体部の第一斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るクリップの本体部の第二斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るクリップの本体部の右側方図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るクリップの本体部の後面側方図である。
図7図7は、図6のVII-VII断面であって、本発明の実施形態に係るクリップの本体部の左側方断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係るクリップの定着部の斜視図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係るクリップの定着部の右側方図である。
図10図10は、図8のX-X断面であって、本発明の実施形態に係るクリップの定着部の右側方断面図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係るクリップの離反姿勢の右側方図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係るクリップの離反姿勢の後面側方図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係るクリップの離反姿勢の上方図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係るクリップの離反姿勢の下方図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係るクリップの定着姿勢の右側方図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係るクリップの定着姿勢の前面側方図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された第一説明図である。
図18図18は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された第二説明図である。
図19図19は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された第三説明図である。
図20図20は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された断面第三説明図である。
図21図21は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された第四説明図である。
図22図22は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された断面第四説明図である。
図23図23は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された第五説明図である。
図24図24は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された断面第五説明図である。
図25図25は、本発明の実施形態に係るクリップの使用手順と動作の様子が示された第六説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るクリップは、自動車等の乗り物の外装や内装において、被取付面に被取付部材を留めるために用いられるものである。例えば、被取付面であるボディやブラケットには、溶接等によって被取付ボルトとしてスタッドボルトが溶着されており、このスタッドボルトに、例えば、インシュレーター、ライナー、コンソールボックス等の被取付部材が通された状態で、本実施形態に係るクリップが取り付けられることで、被取付部材が被取付面に留められる。なお、本実施形態に係るクリップは、乗り物のあらゆる外装や内装に用いられるため、被取付面や被取付部材は限定されない。
【0023】
以下、本実施形態に係るクリップを図面に基づいて説明する。図1及び2には、本実施形態に係るクリップ10の外観が示されている。なお、以下では、クリップ10がスタッドボルトに挿入されて取り付けられる方向を下方(Down)とし、クリップ10がスタッドボルトから抜去されて取り外される方向を上方(Up)とし、その他の方向を右側方(Right Side)、左側方(Left Side)、正面側方(Front Side)及び、後面側方(Back Side)とする(図1参照)。
【0024】
図1及び2において、クリップ10は、本体部11と定着部30とで、二つの部材から構成されている。本体部11と定着部30とは、本体部11の回転軸部22を介して予め連結されており、定着部30が、本体部11に対して所定の範囲内で回転することで、クリップ10の姿勢が変化する。本体部11と定着部30とは、レール構造(レール突部39及び本体レール溝部25)を介して連結されているため、クリップ10の姿勢が変化する際、定着部30は、レール構造に沿って回転する。
【0025】
図1に示されているとおり、定着部30が上がっている状態が、離反姿勢である。離反姿勢では、定着部30が被取付部材2から離れている(図18参照)。一方で、図2に示されているとおり、定着部30が下がっている状態が、定着姿勢である。定着姿勢では、定着部30が被取付部材2に押し付けられている(図23参照)。定着姿勢において、本体部11と定着部30とは、篏合構造(篏合突部26及び篏合孔部37)を介して篏合している。
【0026】
以下、本体部11及び定着部30をそれぞれ図面に基づいて詳説する。図3ないし7には、本体部11が示されている。一方で、図8ないし10には、定着部30が示されている。
【0027】
図3ないし7に示されているとおり、本体部11は、ほぼ直方体又は立方体であり、中空である。本体部11の内側には、スタッドボルト3が通される挿入路16が、上下に渡って形成されている。挿入路16には、スタッドボルト3のネジ溝に係止される複数の爪部20が配置されている。
【0028】
詳説すれば、本体部11は、互いに対面していて本体部11の左右側面を形成した板状の右側面部12及び左側面部13と、この左右側面部12,13の下端に連結されていて本体部11の下面を形成した下面部14と、左右側面部12,13の上端に連結されていて本体部11の上面を形成した上面部15とを有している。左右側面部12,13同士の間には、挿入路16が形成され、挿入路16は、下面部14に形成されてスタッドボルト3の入口となる入口側挿入路17と、この入口側挿入路17の上方において、左右側面部12,13同士の間の空間に形成された中間挿入路18と、この中間挿入路18の上方において、上面部15の内面に連接された筒状の出口側挿入路19とから構成されている(図7参照)。
【0029】
入口側挿入路17の前後の縁には、複数の爪部20が形成され(図4参照)、この爪部20は、本体部11の内側に向けて突出している(図7参照)。中間挿入路18では、左右側面部12,13の内面に形成された爪部20が、本体部11の内側に向けて突出している。各爪部20は、上下方向において段違いに配置されている(図6及び7参照)。
【0030】
本体部11の下面部14において、入口側挿入路17の周囲には、本体端部21が形成されている(図4参照)。本体端部21は、下面部14の縁の一部が下方に隆起したものである。
【0031】
左右側面部12,13の外面には、回転軸部22、この回転軸部22の周囲に形成された回転規制部23、本体ガイド溝部24、本体レール溝部25及び篏合突部26を有している(図5参照)。各部22,23,24,25,26は何れも左右一対である。回転軸部22は、左右側面部12,13の上部寄りに在り、本体部11の外側に向けて突出している。回転規制部23は、回転軸部22よりも上方、かつ、左右側面部12,13の上端部に在り、本体部11の外側に向けて突出している。本体ガイド溝部24は、前後に伸びた直線状であり、回転軸部22よりも下方、かつ、後方寄りに在る。本体レール溝部25は、回転軸部22を中心とする円周に沿った弧状であり、回転軸部22よりも前方に在る。本体ガイド溝部24と本体レール溝部25との間には、溝がないことから、段差部27となっている。
【0032】
図8ないし10に示されているとおり、定着部30は、左右において互いに対面した板状のアーム部31と、このアーム部31が伸びた先に連接されたレバー部41とを有している。レバー部41は、押圧板部42を有している。定着部30は、左右側方から視して、アーム部31とレバー部41とが直交して直角(又はほぼ直角)となるL字状である(図9参照)。アーム部31は、一端部32(上端)に形成された軸孔部34と、アーム部31が一端部32から伸びた先である他端部33(下端)の縁に形成された角部35及び押付端部36と、軸孔部34と押付端部36との間に形成された篏合孔部37とを有し、アーム部31の内面には、アームガイド溝部38、レール突部39及びアームレール溝部40が形成されている(図10参照。各部34,35,36,37,38,39,40は何れも左右一対である。
【0033】
図9及び10に示されているとおり、角部35は、押付端部36に対して鈍角に形成されている。軸孔部34、押付端部36及び篏合孔部37は、直線上に揃っている。アームガイド溝部38は、軸孔部34を通って一端部32の外側に伸びた直線状である。レール突部39は、軸孔部34の周囲であって、一端部32から軸孔部34よりも外側に突出した位置に形成されている。アームレール溝部40は、軸孔部34を中心とする円周に沿った弧状であり、篏合孔部37に通じている。
【0034】
以上のとおり構成された本体部11及び定着部30は、次のとおり連結される。図11ないし16は、組み立てられた状態のクリップ10が示されている。
【0035】
図11に示されているとおり、定着部30は、アーム部31が下でレバー部41が上となる姿勢で、後方から本体部11に取り付けられる。アーム部31のレール突部39が、本体部11の本体ガイド溝部24に当てられて案内された状態で、定着部30が本体部11に押し付けられる。レール突部39が本体ガイド溝部24を通過して本体部11の段差部27を乗り越える際、本体部11の回転軸部22が、アーム部31のアームガイド溝部38に当てられて案内される。レール突部39が本体部11の本体レール溝部25に配置されると共に、回転軸部22が、アームガイド溝部38を通過して、アーム部31の軸孔部34に篏合する。
【0036】
定着部30が本体部11に取り付けられると、アーム部31は、本体部11の回転軸部22に支持される。図12ないし14に示されているとおり、アーム部31は、本体部11の左右側面部12,13の外面と対峙して本体部11を挟持している。定着部30が本体部11に取り付けられた直後において、クリップ10は離反姿勢である。離反姿勢では、定着部30は、回転規制部23に当たっていて、回転(図11における左回りの回転)が規制されている。
【0037】
アーム部31のレール突部39が本体部11の本体レール溝部25に沿うことでレール構造となり(図11参照)、更に、本体部11の篏合突部26がアーム部31のアームレール溝部40(図10参照)に沿うことでレール構造となるため、定着部30が回転すると、図15に示されているとおり、クリップ10は定着姿勢となる。定着姿勢では、篏合突部26と篏合孔部37とが篏合する。レバー部41は、本体部11よりも後方に張り出している。図16に示されているとおり、本体部11の本体端部21とアーム部31の押付端部36とが重なっているが、押付端部36は、本体端部21よりも下方に向けて、突出量Xの分、突出している。
【0038】
以上のとおり、クリップ10が構成されている。次に、クリップ10の使用手順と動作の様子を、本実施形態の効果と共に説明する。図17ないし24は、クリップ10の使用手順と動作の過程が示されている。
【0039】
図17に示されているとおり、被取付面1にスタッドボルト3が溶着されていて、スタッドボルト3には、被取付部材2が通されている。この状態で、離反姿勢のクリップ10が、スタッドボルト3に取り付けられる。本体部11の下面部14が被取付部材2に向けられ、挿入路16の入口側挿入路17(図4参照)が、スタッドボルト3に通される。
【0040】
図18に示されているとおり、本体部11の本体端部21が被取付部材2に当たるまで、クリップ10が押し下げられる。挿入路16には、複数の爪部20が配置されているため(図6及び7参照)、爪部20がスタッドボルト3のネジ溝に係止する。このとき、本体端部21が被取付部材2に当たった状態で、爪部20がスタッドボルト3のネジ溝に係止する。一方で、ネジ溝のピッチによっては、本体端部21が被取付部材2から僅かに離れ、本体端部21と被取付部材2との間に隙間が空いた状態で、爪部20がスタッドボルト3のネジ溝に係止する場合もある。
【0041】
図19及び20に示されているとおり、定着部30が回転し(同図において右回り)、図21及び22に示されているとおり、アーム部31の角部35が被取付部材2に当たり、更に、アーム部31の押付端部36が被取付部材2に当たり始めると、押付端部36が被取付部材2に押し付けられることで、本体部11は、アーム部31によって被取付部材2から離れる方向に押されていく。その際、角部35は押付端部36に対して鈍角であるため、アーム部31は、被取付部材2に対して滑らかに摺動する。図23及び24に示されているとおり、定着部30が更に回転し、クリップ10が定着姿勢に変形すると、押付端部36が被取付部材2に押し付けられると共に、本体部11が、アーム部31によって被取付部材2から離される(同図隙間G参照)。すなわち、アーム部31が被取付部材2と本体部11との間で両者を離す方向に押すため、爪部20がネジ溝のピッチに馴染んだ状態で係止される。よって、被取付部材2は、ガタつかずに被取付面1に留まる。
【0042】
詳説すれば、クリップ10は、離反姿勢では、本体端部21が被取付部材2に当たっていて(又は近接していて)、定着姿勢に変形すると、押付端部36が被取付部材2に当たることから、突出量(被取付部材2に対して突出している度合い)Xは、本体端部21よりも押付端部36の方が多い(図16参照)。したがって、定着姿勢において、押付端部36が被取付部材2に押し付けられると、突出量Xの差異相当分、本体端部21が被取付部材2から離されると共に本体部11が被取付部材2から離れる方向に押されることとなる。
【0043】
アーム部31には、レバー部41が連接されているため、定着部30が操作される際、レバー部41の押圧板部42が押される。よって、使用者による操作が円滑となる。定着部30が予め本体部11に取り付けられた状態であれば、クリップ10がスタッドボルト3に取り付けられた後、定着部30を回転させるだけでクリップ10が変形するため、離反姿勢又は定着姿勢への変形が円滑となる。よって、定着部30の操作性が良く、定着部30の動作が安定する。
【0044】
本体部11の外面には、本体レール溝部25が形成され(図5参照)、一方で、アーム部31の内面には、レール突部39が形成されているため(図10参照)、レール突部39が本体レール溝部25に沿うことでレール構造となる(図11参照)。更に、本体部11の外面には、篏合突部26が形成され(図5参照)、一方で、アーム部31の内面には、アームレール溝部40が形成されているため(図10参照)、篏合突部26がアームレール溝部40に沿うことでも、レール構造となる。したがって、離反姿勢又は定着姿勢に変形する際、レール構造による摩擦によって、定着部30が本体部11に対して任意の姿勢で止まり、不本意に定着部30が回転することがない。また、定着部30がレール構造に沿って動作するため、操作性が良い。
【0045】
本体部11の外面には、篏合突部26が形成され(図5参照)、アーム部31には、篏合孔部37が形成され(図10参照)、篏合突部26と篏合孔部37とで篏合構造となるため(図2参照)、定着姿勢において、篏合突部26と篏合孔部37とが篏合する。したがって、定着姿勢が堅牢である。また、定着姿勢となったことの節度感(クリック感)を使用者に与えることができる。
【0046】
スタッドボルト3はネジ溝が形成された円柱状であるため、クリップ10が、スタッドボルト3に対して回転する場合がある。しかし、クリップ10は、本体部11が直方体又は立方体であり、定着部30が、本体部11から張り出したレバー部41を有する等の外形を有しているため、図25に示されているとおり、スタッドボルト3の周囲にある規制部4に接触することで、クリップ10の回転が規制される。よって、クリップ10が不本意にスタッドボルト3から外れることが抑止される。換言すると、クリップ10がスタッドボルト3を軸として回転する場合の軌跡上に、規制部4が設けられることで、クリップ構造が実現する。なお、クリップ10が回転した場合の軌跡上にある限りにおいて、規制部4は、被取付部材2に形成される態様、被取付面1に形成される態様、被取付部材2及び被取付面1以外の部材から伸びてクリップ10の周囲に配置される態様の何れであってもよい。
【0047】
なお、本発明に係る他の実施形態では、本体部と定着部とが着脱自在であり、本体部がスタッドボルトに取り付けられた後に、定着部が本体部に取り付けられる。
他の実施形態では、定着部は、本体部に対して回転するのではなく、直線状にスライドすることで、姿勢が変化する。
他の実施形態では、定着部の押付端部と本体部の本体端部とで突出量が同じであるか、本体端部の突出量の方が多い。この場合、被取付部材のうち、押付端部が押し付けられる部位が、突出量の差異相当分、隆起している。
他の実施形態は、本体部に本体レール溝部が形成されておらず、アーム部にレール突部が形成されていないため、レール構造を有していない。
他の実施形態は、本体部に篏合突部が形成されておらず、アーム部に篏合孔部が形成されていないため、定着姿勢において本体部と定着部とが篏合しない。
他の実施形態は、規制部を有していない。
他の実施形態では、本体部の外面に軸孔部が形成され、定着部のアーム部に回転軸部が形成されている。
他の実施形態では、本体部に篏合孔部が形成され、定着部のアーム部に篏合突部が形成されている。
他の実施形態では、本体部は、円筒状又は多角柱状である。
他の実施形態は、前後側面部を有している。
他の実施形態では、定着部は、左右側方から視して、アーム部とレバー部とが交差して鋭角又は鈍角である。
他の実施形態では、定着姿勢において本体部と定着部とが篏合する限りにおいて、本体部の篏合突部の位置及びアーム部の篏合孔部の位置は、任意である。
他の実施形態は、角部がアールに面取りされた弧状である。
他の実施形態では、定着部は、レバー部を有していない。
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明の実施形態が取り付けられる乗り物は、例えば、列車、船舶、航空機等も含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 被取付面
2 被取付部材
3 スタッドボルト
4 規制部
10 クリップ
11 本体部
12 右側面部
13 左側面部
14 下面部
15 上面部
16 挿入路
17 入口側挿入路
18 中間挿入路
19 出口側挿入路
20 爪部
21 本体端部
22 回転軸部
23 回転規制部
24 本体ガイド溝部
25 本体レール溝部(レール構造)
26 篏合突部(篏合構造)
27 段差部
30 定着部
31 アーム部
32 一端部
33 他端部
34 軸孔部
35 角部
36 押付端部
37 篏合孔部(篏合構造)
38 アームガイド溝部
39 レール突部(レール構造)
40 アームレール溝部
41 レバー部
42 押圧板部
G 隙間
X 突出量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25