(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106521
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】レーザー振動計
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01H9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010815
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 佑
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮浩
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC12
2G064BD02
2G064CC08
(57)【要約】
【課題】高コスト化や構成の複雑化を避けつつ、分岐数が増えた場合の、SN比の劣化を防ぐ。
【解決手段】連続光光源、干渉部、光路長差相殺部、測定部、及び、検出部を備えて構成される。連続光光源は、連続光を生成する。光路長差相殺部は、1×M(Mは2以上の整数)の光スイッチである光路長差相殺用光スイッチ、M本の光路長差相殺用光ファイバ、及び、M個のミラーを備え、互いに長さが異なる。測定部は、1×N(NはMより大きい整数)の光スイッチである測定対象物切替用光スイッチ、N本の測定用光ファイバ、及び、N個のレンズを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続光光源、干渉部、光路長差相殺部、測定部、及び、検出部を備え、
前記連続光光源は、連続光を生成し、
前記干渉部は、
前記連続光を、参照光とプローブ光とに分岐して、前記プローブ光を、前記測定部を経て測定対象物に照射し、及び、
前記測定対象物における散乱光と、前記参照光とを合波して干渉光を生成し、
前記検出部は、前記干渉光に基づいて、前記測定対象物の振動の情報を取得し、
前記光路長差相殺部は、
1×M(Mは2以上の整数)の光スイッチである光路長差相殺用光スイッチ、M本の光路長差相殺用光ファイバ、及び、M個の光路長差相殺用ミラーを備え、
M本の光路長差相殺用光ファイバの一端が、それぞれ、光路長差相殺用光スイッチのMの第2ポートのいずれかに接続され、他端が、M個の光路長差相殺用ミラーのいずれかに光学的に接続され、
M本の前記光路長差相殺用光ファイバは、互いに長さが異なり、並びに、
前記プローブ光又は前記参照光を、前記干渉部から受け取り、第m(mは1以上M以下の整数)の前記光路長差相殺用光ファイバを経て第mの前記光路長差相殺用ミラーで反射させ、第mの前記光路長差相殺用ミラーで反射した前記プローブ光又は前記参照光を、第mの前記光路長差相殺用光ファイバを経て干渉部に送り、
前記測定部は、
1×N(NはMより大きい整数)の光スイッチである測定対象物切替用光スイッチ、N本の測定用光ファイバ、及び、N個のレンズを備え、
N本の測定用光ファイバの一端が、それぞれ、測定対象物切替用光スイッチのNの第2ポートのいずれかに接続され、他端が、N個のレンズのいずれかに光学的に接続され、
前記N本の測定用光ファイバの長さは、複数の値をとり、並びに、
前記プローブ光を第n(nは1以上N以下の整数)の前記測定用光ファイバ及び第nの前記レンズを経て測定対象物に照射し、前記測定対象物での散乱光を、第nの前記レンズ及び第nの前記測定用光ファイバを経て干渉部に送る
ことを特徴とするレーザー振動計。
【請求項2】
前記干渉部は、第1カプラ、第2カプラ、サーキュレータ、光路長調整部、及び、周波数シフタを備え、
前記第1カプラは、前記干渉部に送られた連続光を、プローブ光と参照光に分岐し、
前記サーキュレータは、前記第1カプラから受け取ったプローブ光を前記光路長差相殺部に送り、
前記サーキュレータは、前記光路長差相殺部から受け取ったプローブ光を前記測定部に送り、
前記サーキュレータは、前記測定部から受け取った散乱光を前記第2カプラに送り、
前記周波数シフタは、前記第1カプラから前記光路長調整部を経て受け取った参照光を周波数シフトして、前記第2カプラに送り、
前記第2カプラは、前記サーキュレータから受け取った散乱光と、前記周波数シフタから受け取った参照光を合波して、干渉光を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザー振動計。
【請求項3】
前記光路長調整部は、光路長調整用光ファイバを備えて構成され、
前記光路長調整用光ファイバの一端が前記第1カプラに接続され、他端が前記周波数シフタに接続される
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザー振動計。
【請求項4】
前記光路長調整部は、光路長調整用サーキュレータ、光路長調整用光ファイバ及び光路長調整用ミラーを備えて構成され、
前記光路長調整用サーキュレータの第1ポートは、前記第1カプラに接続され、
前記光路長調整用サーキュレータの第2ポートは、前記光路長調整用光ファイバの一端に接続され、
前記光路長調整用サーキュレータの第3ポートは、前記周波数シフタに接続され、
前記光路長調整用光ファイバの他端は、前記ミラーに光学的に接続され、
前記光路長調整用サーキュレータの、第j(jは1又は2)ポートに入力された光は、第j+1ポートから出力される
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザー振動計。
【請求項5】
前記光路長調整部は、偏波ビームスプリッタ、光路長調整用光ファイバ、ファラデーローテーターミラーを備えて構成され、
前記偏波ビームスプリッタの第1ポートは、前記第1カプラに接続され、
前記偏波ビームスプリッタの第2ポートは、前記光路長調整用光ファイバの一端に接続され、
前記偏波ビームスプリッタの第3ポートは、前記周波数シフタに接続され、
前記光路長調整用光ファイバの他端は、ファラデーローテーターミラーに光学的に接続され、
前記偏波ビームスプリッタの第1ポートに入力された光が、前記偏波ビームスプリッタを透過して、前記第2ポートから出力されるとき、
前記偏波ビームスプリッタの第2ポートに入力される、前記偏波ビームスプリッタの第1ポートに入力された光と偏光状態が90度回転している光が、前記偏波ビームスプリッタで反射して、前記第3ポートから出力される
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザー振動計。
【請求項6】
光路長差相殺用光スイッチの第mの第2ポートから出力され、再び、第mの第2ポートに入力されるまでの光路長がLS’mであり、
測定対象物切替用光スイッチの第nの第2ポートから出力され、再び、第nの第2ポートに入力されるまでの光路長がLSnであり、
信号光が伝播する光路の共通部分の光路長がLSであり、
参照光の光路長がLLOであるとき、
LS’1<LS’2<…<LS’Mであり、
LS1≦LS2≦…≦LSNであり、
LLO=LS+LSNであり、
LS’m=(LSN-LS1)/(M-1)×(m-1)である
ことを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載のレーザー振動計。
【請求項7】
前記干渉部は、第1カプラ、第2カプラ、第1サーキュレータ、第2サーキュレータ、光路長調整部、及び、周波数シフタを備え、
前記第1カプラは、前記干渉部に送られた連続光を、プローブ光と参照光に分岐し、
前記第1サーキュレータは、前記第1カプラから前記光路長調整部を経て受け取ったプローブ光を前記測定部に送り、
前記第1サーキュレータは、前記測定部から受け取った散乱光を前記第2カプラに送り、
前記第2サーキュレータは、前記第1カプラから受け取った参照光を前記光路長差相殺部に送り、
前記第2サーキュレータは、前記光路長差相殺部から受け取ったプローブ光を前記周波数シフタに送り、
前記周波数シフタは、前記第2サーキュレータから受け取った参照光を周波数シフトして、前記第2カプラに送り、
前記第2カプラは、前記サーキュレータから受け取った散乱光と、前記周波数シフタから受け取った参照光を合波して、干渉光を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザー振動計。
【請求項8】
前記光路長調整部は、光路長調整用光ファイバを備えて構成され、
前記光路長調整用光ファイバの一端が前記第1カプラに接続され、他端が前記第1サーキュレータに接続される
ことを特徴とする請求項7に記載のレーザー振動計。
【請求項9】
前記光路長調整部は、光路長調整用サーキュレータ、光路長調整用光ファイバ及び光路長調整用ミラーを備えて構成され、
前記光路長調整用サーキュレータの第1ポートは、前記第1カプラに接続され、
前記光路長調整用サーキュレータの第2ポートは、前記光路長調整用光ファイバの一端に接続され、
前記光路長調整用サーキュレータの第3ポートは、前記第1サーキュレータに接続され、
前記光路長調整用光ファイバの他端は、光路長調整用ミラーに光学的に接続され、
前記光路長調整用サーキュレータの、第j(jは1又は2)ポートに入力された光は、第j+1ポートから出力される
ことを特徴とする請求項7に記載のレーザー振動計。
【請求項10】
前記光路長調整部は、偏波ビームスプリッタ、光路長調整用光ファイバ、ファラデーローテーターミラーを備えて構成され、
前記偏波ビームスプリッタの第1ポートは、前記第1カプラに接続され、
前記偏波ビームスプリッタの第2ポートは、前記光路長調整用光ファイバの一端に接続され、
前記偏波ビームスプリッタの第3ポートは、前記第1サーキュレータに接続され、
前記光ファイバの他端は、ファラデーローテーターミラーに光学的に接続され、
前記偏波ビームスプリッタの第1ポートに入力された光が、前記偏波ビームスプリッタを透過して、前記第2ポートから出力されるとき、
前記偏波ビームスプリッタの第2ポートに入力される、前記偏波ビームスプリッタの第1ポートに入力された光と偏光状態が90度回転している光が、前記偏波ビームスプリッタで反射して、前記第3ポートから出力される
ことを特徴とする請求項7に記載のレーザー振動計。
【請求項11】
光路長差相殺用光スイッチの第mの第2ポートから出力され、再び、第mの第2ポートに入力されるまでの光路長がLLOmであり、
測定対象物切替用光スイッチの第nの第2ポートから出力され、再び、第nの第2ポートに入力されるまでの光路長がLSnであり、
プローブ光及び散乱光が伝播する光路の共通部分の光路長がLSであり、
参照光が伝播する光路の共通部分の光路長がLLOであるとき、
LLO1<LLO2<…<LLOMであり、
LS1≦LS2≦…≦LSNであり、
LS=LLOであり、
LLOm=LSN/(M-1)×(m-1)である
ことを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載のレーザー振動計。
【請求項12】
測定対象物切替用光スイッチのNの第2ポートのそれぞれについて、
前記干渉光の包絡線強度が最も大きくなるように、光路長差相殺用光スイッチの第2ポートが選択される
ことを特徴とする請求項2又は7に記載のレーザー振動計。
【請求項13】
前記測定対象物切替用光スイッチと、前記光路長差相殺用光スイッチは、同期して切り替えられる
ことを特徴とする請求項12に記載のレーザー振動計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザー振動計に関する。
【背景技術】
【0002】
先ず、レーザー振動計の概要を説明する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レーザー振動計では、連続光光源で生成された連続光を分波し、一方をプローブ光、他方を参照光とする。プローブ光を測定対象物に当てると、プローブ光は測定対象物で散乱して、散乱光となる。散乱光には、測定対象物の振動状態に応じてドップラー効果による周波数シフトが生じ、この周波数シフトが位相変化として現れる。従って、対象によって与えられた位相変化を測定できれば、測定対象物の振動状態を知ることができる。
【0004】
一般に、位相情報の抽出には、互いに波長の異なる、散乱光と参照光との干渉縞を光電変換器で検出するヘテロダイン検波が用いられる。
【0005】
工場などにおいて、広範囲にわたって多数の機器の振動測定を安価に行う方法として、多点型のレーザー振動計がある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示されている技術では、複数個のセンサヘッドを、複数ポートの光スイッチとそれぞれ光ファイバで接続し、時間ごとに光路を切り替えることで多点での計測を実現している。
【0006】
上述のように、レーザー振動計では、信号光と参照光との干渉を利用している。このため、コヒーレンスが低下することは、結果的に測定結果の信号雑音(SN:Signal-Noise)比が劣化することを意味する。コヒーレンスは、干渉させる2つの光の光路長が同じ時に最も高く、光路長差が大きくなるにつれて低下していく。
【0007】
一般的には、光スイッチから測定対象物までの距離が大きいため、プローブ光及び散乱光の光路長の方が、参照光の光路長よりも長くなる。従って、参照光の光路に十分な長さの光ファイバを接続しておき、光スイッチから測定対象物までの距離に応じて、プローブ光及び散乱光が伝播する光ファイバの長さを調整するのが望ましい。
【0008】
しかし、光スイッチから測定対象物までの距離は、それぞれ異なっている。従って、多点型のレーザー振動計において、各ポートに同じ長さの光ファイバを接続しておくのは取り回しの不便さがある。そのため測定対象物までの距離に応じた長さの光ファイバをそれぞれ用意することになるが、特許文献2に開示されている構成では、全ての測定対象物に対して光路長を合わせることはできない。
【0009】
測定対象物までの距離が互いに異なる複数の光路に対して、光路長を合わせる方法として、光路長差相殺用の光路を複数用意しておき、状況に応じて切り替えることで光路長差を最小にする構成がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-159560号公報
【特許文献2】特開2021-056091号公報
【特許文献2】特開平7-120304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、特許文献3には、光路長差相殺用の光路の選択に、2台の光スイッチを用いる例や、分波器及び合波器を用いる例が、開示されている。しかし、2台の光スイッチを用いる場合は、レーザードップラー振動計が高価になるという問題がある。また、分波器及び合波器を用いる場合は、分岐数が増えるにつれて光強度が低下するので、信号のSN比が劣化するという問題がある。
【0012】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、高コスト化や構成の複雑化を避けつつ、分岐数が増えた場合の、SN比の劣化を防ぐレーザー振動計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、この発明のレーザー振動計は、連続光光源、干渉部、光路長差相殺部、測定部、及び、検出部を備えて構成される。連続光光源は、連続光を生成する。干渉部は、連続光を、参照光とプローブ光とに分岐して、プローブ光を、測定部を経て測定対象物に照射し、及び、測定対象物における散乱光と、参照光とを合波して干渉光を生成する。検出部は、干渉光に基づいて、測定対象物の振動の情報を取得する。
【0014】
光路長差相殺部は、1×M(Mは2以上の整数)の光スイッチである光路長差相殺用光スイッチ、M本の光路長差相殺用光ファイバ、及び、M個の光路長差相殺用ミラーを備え、M本の光路長差相殺用光ファイバの一端が、それぞれ、光路長差相殺用光スイッチのMの第2ポートのいずれかに接続され、他端が、M個の光路長差相殺用ミラーのいずれかに光学的に接続され、M本の光路長差相殺用光ファイバは、互いに長さが異なり、及び、プローブ光又は参照光を、干渉部から受け取り、第m(mは1以上M以下の整数)の光路長差測定用光ファイバを経て第mの光路長差相殺用ミラーで反射させ、第mの光路長差相殺用ミラーで反射したプローブ光又は参照光を、第mの光路長差相殺用光ファイバを経て干渉部に送る。
【0015】
測定部は、1×N(NはMより大きい整数)の光スイッチである測定対象物切替用光スイッチ、N本の測定用光ファイバ、及び、N個のレンズを備える。N本の測定用光ファイバの一端が、それぞれ、測定対象物切替用光スイッチのNの第2ポートのいずれかに接続され、他端が、N個のレンズのいずれかに光学的に接続され、N本の測定用光ファイバの長さは、複数の値をとる。プローブ光を第n(nは1以上N以下の整数)の測定用光ファイバ及び第nのレンズを経て測定対象物に照射し、測定対象物での散乱光を、第nのレンズ及び第nの測定用光ファイバを経て干渉部に送る。
【0016】
上述のレーザー振動計の好適実施形態によれば、干渉部は、第1カプラ、第2カプラ、サーキュレータ、光路長調整部、及び、周波数シフタを備える。第1カプラは、干渉部に送られた連続光を、プローブ光と参照光に分岐する。サーキュレータは、第1カプラから受け取ったプローブ光を光路長差相殺部に送る。サーキュレータは、光路長差相殺部から受け取ったプローブ光を測定部に送り、サーキュレータは、測定部から受け取った散乱光を第2カプラに送り、周波数シフタは、第1カプラから光路長調整部を経て受け取った参照光を周波数シフトして、第2カプラに送る。第2カプラは、サーキュレータから受け取った散乱光と、周波数シフタから受け取った参照光を合波して、干渉光を生成する。
【0017】
ここで、光路長調整部は、光路長調整用光ファイバを備えて構成され、光路長調整用光ファイバの一端が第1カプラに接続され、他端が周波数シフタに接続される構成にできる。
【0018】
また、光路長調整部は、光路長調整用サーキュレータ、光路長調整用光ファイバ及び光路長調整用ミラーを備えて構成され、光路長調整用サーキュレータの第1ポートは、第1カプラに接続され、光路長調整用サーキュレータの第2ポートは、光路長調整用光ファイバの一端に接続され、光路長調整用サーキュレータの第3ポートは、周波数シフタに接続され、光路長調整用光ファイバの他端は、光路長調整用ミラーに光学的に接続され、光路長調整用サーキュレータの、第j(jは1又は2)ポートに入力された光は、第j+1ポートから出力される構成にできる。
【0019】
また、光路長調整部は、偏波ビームスプリッタ、光路長調整用光ファイバ、ファラデーローテーターミラーを備えて構成され、偏波ビームスプリッタの第1ポートは、第1カプラに接続され、偏波ビームスプリッタの第2ポートは、光路長調整用光ファイバの一端に接続され、偏波ビームスプリッタの第3ポートは、周波数シフタに接続され、光路長調整用光ファイバの他端は、ファラデーローテーターミラーに光学的に接続される構成にできる。偏波ビームスプリッタは、第1ポートに入力された光が透過して第2ポートから出力されるとき、第2ポートに入力される、第1ポートに入力された光と偏光状態が90度回転している光が、反射して、第3ポートから出力される。
【0020】
ここで、光路長差相殺用光スイッチの第mの第2ポートから出力され、再び、第mの第2ポートに入力されるまでの光路長がLS’mであり、測定対象物切替用光スイッチの第nの第2ポートから出力され、再び、第nの第2ポートに入力されるまでの光路長がLSnであり、信号光が伝播する光路の共通部分の光路長がLSであり、参照光の光路長がLLOであるとき、LS’1<LS’2<…<LS’Mであり、LS1≦LS2≦…≦LSNであり、LLO=LS+LSNであり、LS’m=(LSN-LS1)/(M-1)×(m-1)であるのがよい。
【0021】
また、上述のレーザー振動計の好適実施形態によれば、干渉部は、第1カプラ、第2カプラ、第1サーキュレータ、第2サーキュレータ、光路長調整部、及び、周波数シフタを備える。
【0022】
第1カプラは、干渉部に送られた連続光を、プローブ光と参照光に分岐し、第1サーキュレータは、第1カプラから光路長調整部を経て受け取ったプローブ光を測定部に送り、第1サーキュレータは、測定部から受け取った散乱光を第2カプラに送り、第2サーキュレータは、第1カプラから受け取った参照光を光路長差相殺部に送り、第2サーキュレータは、光路長差相殺部から受け取ったプローブ光を周波数シフタに送り、周波数シフタは、第2サーキュレータから受け取った参照光を周波数シフトして、第2カプラに送り、第2カプラは、第1サーキュレータから受け取った散乱光と、周波数シフタから受け取った参照光を合波して、干渉光を生成する。
【0023】
ここで、光路長調整部は、光路長調整用光ファイバを備えて構成され、光路長調整用光ファイバの一端が第1カプラに接続され、他端が第1サーキュレータに接続される構成にできる。
【0024】
また、光路長調整部は、光路長調整用サーキュレータ、光路長調整用光ファイバ及び光路長調整用ミラーを備えて構成され、光路長調整用サーキュレータの第1ポートは、第1カプラに接続され、光路長調整用サーキュレータの第2ポートは、光路長調整用光ファイバの一端に接続され、光路長調整用サーキュレータの第3ポートは、第1サーキュレータに接続され。光路長調整用光ファイバの他端は、光路長調整用ミラーに光学的に接続され、光路長調整用サーキュレータの、第jポートに入力された光は、第j+1ポートから出力される構成にできる。
【0025】
また、光路長調整部は、偏波ビームスプリッタ、光路長調整用光ファイバ、ファラデーローテーターミラーを備えて構成され、偏波ビームスプリッタの第1ポートは、第1カプラに接続され、偏波ビームスプリッタの第2ポートは、光路長調整用光ファイバの一端に接続され、偏波ビームスプリッタの第3ポートは、第1サーキュレータに接続され、光路長調整用光ファイバの他端は、ファラデーローテーターミラーに光学的に接続される構成にできる。
【0026】
ここで、光路長差相殺用光スイッチの第mの第2ポートから出力され、再び、第mの第2ポートに入力されるまでの光路長がLLOmであり、測定対象物切替用光スイッチの第nの第2ポートから出力され、再び、第nの第2ポートに入力されるまでの光路長がLSnであり、プローブ光及び散乱光が伝播する光路の共通部分の光路長がLSであり、参照光が伝播する光路の共通部分の光路長がLLOであるとき、LS1≦LS2≦…≦LSNであり、LS=LLOであり、LLOm=LSN/(M-1)×(m-1)であるのがよい。
【0027】
上述のレーザー振動計のさらなる好適実施形態によれば、測定用光スイッチのNの第2ポートのそれぞれについて、干渉光の包絡線強度が最も大きくなるように、光路長差相殺用光スイッチの第2ポートが選択される。また、測定用光スイッチと、光路長差相殺用光スイッチは、同期して切り替えられるのがよい。
【発明の効果】
【0028】
この発明のレーザー振動計によれば、高コスト化や構成の複雑化を避けつつ、SN比の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】第1振動計の動作を説明するための模式図である。
【
図4】他の構成例1の光路長調整部を説明するための模式図である。
【
図5】他の構成例2の光路長調整部を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。また、特許文献1~3などと共通の構成要素については、公知技術であるので説明を省略することもある。
【0031】
(第1振動計)
図1を参照して、この発明のレーザー振動計の第1実施形態(以下、第1振動計とも称する。)を説明する。
図1は、第1振動計を説明するための模式図である。
【0032】
第1振動計は、例えば、連続光光源100、干渉部200、光路長差相殺部300、測定部400、及び、検出部500を備えて構成される。
【0033】
連続光光源100は、連続光(レーザー光)を生成して、その連続光を出射する。連続光光源100から出射された連続光は、干渉部200に送られる。
【0034】
干渉部200は、第1カプラ212、第2カプラ214、サーキュレータ220、光路長調整部230、周波数シフタ240、及び、発振器250を備えて構成される。
【0035】
干渉部200に送られた連続光は、第1カプラ212で、プローブ光と参照光に分岐される。プローブ光は、サーキュレータ220に送られる。また、参照光は、光路長調整部230に送られる。
【0036】
サーキュレータ220は、第1~第4ポート220-1~4を有する4ポートのサーキュレータである。第k(kは1以上3以下の整数)ポート220-kに入力された光は、第k+1ポート220-(k+1)から出力される。
【0037】
第1カプラ212からサーキュレータ220に送られたプローブ光は、第1ポート220-1に入力され、第2ポート220-2から出力される。サーキュレータ220の第2ポート220-2から出力されたプローブ光は、光路長差相殺部300に送られる。
【0038】
光路長差相殺部300は、光路長差相殺用光スイッチ310、M(Mは2以上の整数)本の光路長差相殺用光ファイバ320、及び、M個の光路長差相殺用ミラー330を備えて構成される。M本の光路長差相殺用光ファイバ320は、互いに長さが異なっている。
【0039】
光路長差相殺用光スイッチ310は、例えば、1×Mの光スイッチであり、1の第1ポート311と、Mの第2ポート312を有する。光路長差相殺用光スイッチ310では、切り替えにより、Mの第2ポート312のいずれかが選択される。光路長差相殺用光スイッチ310は、第1ポート311に入力された光を、選択された第2ポート312から出力し、選択された第2ポート312から入力された光を、第1ポート311から出力する。M本の光路長差相殺用光ファイバ320の一端が、それぞれ、光路長差相殺用光スイッチ310のMの第2ポート312のいずれかに接続され、他端が、M個の光路長差相殺用ミラー330のいずれかに光学的に接続されている。
【0040】
光路長差相殺部300に送られたプローブ光は、光路長差相殺用光スイッチ310の第1ポート311に入力され、第m(mは1以上M以下の整数)の第2ポート312-mから出力される。第mの第2ポート312-mから出力されたプローブ光は、第mの光路長差相殺用光ファイバ320-mを伝播し、第mの光路長差相殺用ミラー330-mで反射されたのち、再び、第mの光路長差相殺用光ファイバ320-mを伝播して、光路長差相殺用光スイッチ310の第mの第2ポート312-mに入力される。光路長差相殺用光スイッチ310の第mの第2ポート312-mに入力されたプローブ光は、第1ポート311から出力され、干渉部200のサーキュレータ220に送られる。
【0041】
光路長差相殺部300からサーキュレータ220に送られたプローブ光は、第2ポート220-2に入力され、第3ポート220-3から出力される。サーキュレータ220の第3ポート220-3から出力されたプローブ光は、測定部400に送られる。
【0042】
測定部400は、測定対象物切替用光スイッチ410、N(NはMより大きい整数)本の測定用光ファイバ420、及び、N個のレンズ430を備えて構成される。N本の測定用光ファイバ420の長さは均一ではなく、複数の値をとるものとする。
【0043】
測定対象物切替用光スイッチ410は、例えば、1×Nの光スイッチであり、1の第1ポート411と、Nの第2ポート412を有する。測定対象物切替用光スイッチ410では、切り替えにより、Nの第2ポート412のいずれかが選択される。測定対象物切替用光スイッチ410は、第1ポート411に入力された光を、選択された第2ポート412から出力し、選択された第2ポート412から入力された光を、第1ポート411から出力する。N本の測定用光ファイバ420の一端が、それぞれ、測定対象物切替用光スイッチ410のNの第2ポート412のいずれかに接続され、他端が、N個のレンズ430のいずれかに光学的に接続されている。
【0044】
測定部400に送られたプローブ光は、測定対象物切替用光スイッチ410の第1ポート411に入力され、第n(nは1以上N以下の整数)の第2ポート412-nから出力される。第nの第2ポート412-nから出力されたプローブ光は、第nの測定用光ファイバ420-nを伝播し、第nのレンズ430-nを経て、第nの測定対象物900-nに照射される。
【0045】
プローブ光は、第nの測定対象物900-nで散乱したのち、散乱光として、第nのレンズ430-n、第nの測定用光ファイバ420-nを伝播して、測定対象物切替用光スイッチ410の第nの第2ポート412-nに入力される。測定対象物切替用光スイッチ410の第nの第2ポート412-nに入力された散乱光は、第1ポート411から出力され、干渉部200のサーキュレータ220に送られる。
【0046】
測定部400からサーキュレータ220に送られた散乱光は、第3ポート220-3に入力され、第4ポート220-4から出力される。サーキュレータ220の第4ポート220-4から出力された散乱光は、第2カプラ214に送られる。
【0047】
一方、参照光は、第1カプラ212から、光路長調整部230を経て、周波数シフタ240に送られる。光路長調整部230は、例えば、光路長調整用光ファイバを備えて構成される。この場合、光路長調整用光ファイバの一端が第1カプラ212に接続され、他端が周波数シフタ240に接続される。
【0048】
周波数シフタ240は、例えば、音響光学変調器(AOM:Acoustic Optic Modulator)で構成される。この場合、参照光は、周波数シフタ240において、発振器250で生成された角周波数ωの電気信号によって、音響光学変調され、角周波数ωだけ周波数シフトされる。周波数シフタで角周波数ωの周波数シフトを受けた参照光は、第2カプラ214に送られる。
【0049】
第2カプラ214は、第1の入力ポート、第2の入力ポート、及び、出力ポートを有する。第2カプラ214の第1の入力ポートには、サーキュレータ220から送られた散乱光が入力される。また、第2カプラ214の第2の入力ポートには、周波数シフタ240から送られた参照光が入力される。第2カプラ214は、第1の入力ポート及び第2の入力ポートを経て入力された、散乱光及び参照光を合波して、干渉光を生成する。干渉光は、検出部500に送られる。
【0050】
検出部500は、光検出器510、アナログ・ディジタル変換器(ADC)520及び信号処理部530を備えて構成される。光検出器510は、光信号である干渉光を電気信号である干渉信号に変換する機能を有する。光検出器510として、例えば、フォトダイオード(PD)を用いることができる。
【0051】
光検出器510で生成された干渉信号は、ADC520に送られる。ADC520は、アナログ信号である干渉信号を、ディジタル信号に変換して、信号処理部530に送る。
【0052】
信号処理部530は、ディジタル信号処理を行い、測定対象物の振動の情報を得る。ここで、測定対象物900の振動を知るためには、位相変化φ(t)が分かればよい。信号処理部530については、当業者であれば、干渉信号から位相変化φ(t)を取得する機能を実現するディジタル信号処理回路を構成することは可能である。
【0053】
(第1振動計の動作)
図2を参照して、第1振動計の動作を説明する。
図2は、第1振動計の動作を説明するための模式図であり、信号光と参照光の光路長の関係を示している。
図2では、上側に、信号光の光路長を示し、下側に、参照光の光路長を示している。ここでは、プローブ光及び散乱光を、信号光と総称する。
【0054】
信号光が伝播する光路の共通部分の光路長をLS、参照光の光路長をLLO、光路長調整用光スイッチ310の第mの第2ポート312-mから出力され、再び、第mの第2ポート312-mに入力されるまでの光路長をLS’m、測定対象物切替用光スイッチ410の第nの第2ポート412-nから出力され、再び、第nの第2ポート412-nに入力されるまでの光路長をLSnとする。ここで、LS’1<LS’2<…<LS’Mとし、LS1≦LS2≦…≦LSNとする。
【0055】
また、信号光が伝播する光路の共通部分は、例えば、第1カプラ212から光路長調整用光スイッチ310までの光路、光路長調整用光スイッチ310から測定対象物切替用光スイッチ410までの光路、測定対象物切替用光スイッチ410から第2カプラ214までの光路である。なお、第1の光路長差相殺用光ファイバ320-1を用いない構成にしてもよいし、第1の光路長差相殺用光ファイバ320-1の光路長を、信号光が伝播する光路の共通部分の光路長に含めて考えてもよい。この場合、LS’1=0と考えることができる。
【0056】
従って、光路長調整用光スイッチ310の第mの第2ポート312-mと、測定対象物切替用光スイッチ401の第nの第2ポート412-nを通るときの、第1カプラ212から第2カプラ214までの信号光の光路長は、LS+LSn+LS’mとなる。このとき、参照光と信号光の光路長差ΔLmnは、以下の式(1)で与えられる。
【0057】
ΔLmn=|LS+LSn+LS’m-LLO| (1)
ここで、LLO=LS+LSNとなるように、光路長調整部230における光路長を設定すると、上記式(1)は、以下の式(2)となる。
【0058】
ΔLmn=|LS’m-(LSN-LSn)| (2)
仮に、光路長差相殺用光ファイバ320を伝搬する光の最大の光路長(LS’M)が、測定用光ファイバ420を伝搬する光の最大の光路長(LSN)と、最小の光路長(LS1)の差と等しくなるように、すなわち、LS’M=LSN-LS1となるように設定し、さらに、以下の式(3)となるように設定すると、測定対象物切替用光スイッチ410の第2ポート412のいずれを選択しても、光路長調整用光スイッチ310の第2ポート312-mを適切に選択すれば、以下の式(4)が得られる。
【0059】
LS’m=LS’M/(M-1)×(m-1)
=(LSN-LS1)/(M-1)×(m-1) (3)
ΔLmn≦LS’M/{2(M-1)} (4)
すなわち、参照光と信号光の光路長差ΔLmnは、隣接する光路長差相殺用光ファイバ320を伝搬する光の光路長差(LS’M/(M-1))の1/2以下となる。
【0060】
以上説明したように、第1振動計によれば、測定対象物までの全ての光路に対して、測定用光ファイバの本数(N本)よりも少ない本数(M本:M<N)の光路長差相殺用光ファイバで、光路長差を相殺して小さくできる。これにより、コヒーレンスの低下を防ぎ、計測結果のSN比の劣化を抑制する効果が得られる。また、測定用光ファイバの本数と同じ本数の光路長差相殺用光ファイバを用いる場合に比べて、光ファイバの取り回しは容易である。
【0061】
さらに、光路長差相殺に用いる光スイッチが1であるため、従来技術と比べて低コスト化と装置の簡易化が可能となる。また、光路長差相殺のために光を分岐しないので、光路長差相殺用光ファイバの本数が多くなった場合であっても、光強度が低下しない。
【0062】
なお、光路長差相殺のために選択する光路長差相殺用光ファイバ320は、測定対象物切替用光スイッチ410から測定対象物までの距離に応じて前もって決めておけばよい。第1振動計のように、信号光と参照光のヘテロダイン検波により、位相変化を測定する場合は、検出部500において、干渉光の包絡線強度が最も大きくなるように、光路長差相殺用光スイッチの第2ポートを選択すればよい。
【0063】
また、測定対象物切替用光スイッチ410の切替に同期して、光路長差相殺用光スイッチ310の切替を行えば、適切に、各測定対象物900までの光路長差を相殺することができる。
【0064】
(第2振動計)
図3を参照して、この発明のレーザー振動計の第2実施形態(以下、第2振動計とも称する。)を説明する。
図3は、第2振動計を説明するための模式図である。
【0065】
第2振動計は、例えば、連続光光源100、干渉部202、光路長差相殺部300、測定部400、及び、検出部500を備えて構成される。連続光光源100、光路長差相殺部300、測定部400、及び、検出部500は、第1振動計と同様に構成されるので、重複する説明を省略する。
【0066】
干渉部202は、第1カプラ212、第2カプラ214、第1サーキュレータ222、第2サーキュレータ224、光路長調整部232、周波数シフタ240、及び、発振器250を備えて構成される。第1サーキュレータ222及び第2サーキュレータ224は、第1~第3ポートを有する3ポートのサーキュレータである。第j(jは1又は2)ポートに入力された光は、第j+1ポートから出力される。
【0067】
干渉部202に送られた連続光は、第1カプラ212で、プローブ光と参照光に分岐される。プローブ光は、光路長調整部232を経て、第1サーキュレータ222に送られる。また、参照光は、第2サーキュレータ224に送られる。
【0068】
光路長調整部232は、例えば、光ファイバを備えて構成される。この場合、光ファイバの一端が第1カプラ212に接続され、他端が第1サーキュレータ222に接続される。
【0069】
第1カプラ212から光路長調整部232を経て第1サーキュレータ222に送られたプローブ光は、第1ポート222-1に入力され、第2ポート222-2から出力される。第1サーキュレータ222の第2ポート222-2から出力されたプローブ光は、測定部400に送られる。
【0070】
測定部400に送られたプローブ光は、測定対象物900に照射されて、測定対象物900で散乱し、散乱光として、干渉部202の第1サーキュレータ222に送られる。
【0071】
測定部400から第1サーキュレータ222に送られた散乱光は、第2ポート222-2に入力され、第3ポート222-3から出力される。第1サーキュレータ222の第3ポート222-3から出力された光は、第2カプラ214に送られる。
【0072】
一方、第1カプラ212から第2サーキュレータ224に送られた参照光は、第1ポート224-1に入力され、第2ポート224-2から出力される。第2サーキュレータ224の第2ポート224-2から出力された光は、光路長差相殺部300に送られる。
【0073】
光路長差相殺部300に送られた信号光は、光路長差相殺部300を伝搬して、干渉部202の第2サーキュレータ224に送られる。
【0074】
光路長差相殺部300から第2サーキュレータ224に送られた参照光は、第2ポート224-2に入力され、第3ポート224-3から出力される。第2サーキュレータ224の第3ポート224-3から出力された参照光は、周波数シフタ240に送られる。周波数シフタ240で周波数シフトを受けた参照光は、第2カプラ214に送られる。
【0075】
第2カプラ214は、第1の入力ポート及び第2の入力ポートを経て入力された、信号光及び参照光を合波させて、干渉光を生成する。干渉光は、検出部500に送られる。
【0076】
(第2振動計の動作)
信号光が伝播する光路の共通部分の光路長をLS、参照光が伝播する光路の共通部分の光路長をLLO、光路長調整用光スイッチの第mの第2ポートから出力され、再び、第mの第2ポートに入力されるまでの光路長をLLOm、測定対象物切替用光スイッチの第nの第2ポートから出力され、再び、第nの第2ポートに入力されるまでの光路長をLSnとする。ここで、LLO1<LLO2<…<LLOMとし、LS1≦LS2≦…≦LSNとする。
【0077】
また、信号光が伝播する光路の共通部分は、第1カプラ212から測定対象物切替用光スイッチ410までの光路、及び、測定対象物切替用光スイッチ410から第2カプラ214までの光路である。また、参照光が伝播する光路の共通部分は、第1カプラ212から光路長調整用光スイッチ310までの光路、及び、光路長調整用光スイッチ310から第2カプラ214までの光路である。
【0078】
なお、第1の光路長差相殺用光ファイバ320-1を用いない構成にしてもよいし、第1の光路長差相殺用光ファイバ320-1の光路長を、参照光が伝播する光路の共通部分の光路長に含めて考えてもよい。この場合、LLO1=0と考えることができる。
【0079】
従って、測定対象物切替用光スイッチの第nの第2ポートを通るときの、第1カプラから第2カプラまでの信号光の光路長は、LS+LSnとなる。また、光路長調整用光スイッチの第mの第2ポートを通るときの、第1カプラから第2カプラまでの参照光の光路長は、LLO+LLOmとなる。
【0080】
このとき、参照光と信号光の光路長差ΔLmnは、以下の式(5)で与えられる。
【0081】
ΔLmn=|LS+LSn-LLOm-LLO| (5)
ここで、LLO=LS、及び、LLOM=LSNとし、以下の式(6)のように決めると、測定対象物切替用光スイッチの第2ポートのいずれを選択しても、光路長調整用光スイッチの第2ポートを適切に選択すれば、以下の式(7)が得られる。
【0082】
LLOm=LLOM/(M-1)×(m-1) (6)
ΔLmn≦LLOM/{2(M-1)} (7)
すなわち、参照光と信号光の光路長差ΔLmnは、隣接する光路長差相殺用光ファイバ320を伝搬する光の光路長差(LLOM/(M-1))の1/2以下となる。
【0083】
(他の構成例1)
第1振動計及び第2振動計として、光路長調整部に、光路長調整用光ファイバを用いた例を説明したが、これに限定されない。
【0084】
図4を参照して、他の構成例1の光路長調整部を説明する。
図4は、他の構成例1の光路長調整部を説明するための模式図である。ここでは、第1振動計の光路長調整部に、他の構成例1の光路長調整部を用いる例を説明する。
【0085】
他の構成例1の光路長調整部230aは、光路長調整用サーキュレータ234、光路長調整用光ファイバ236及び光路長調整用ミラー238を備えて構成される。
【0086】
光路長調整用サーキュレータ234は、3ポートのサーキュレータである。光路長調整用サーキュレータ234の第1ポート234-1は、第1カプラ212に接続され、光路長調整用サーキュレータ234の第2ポート234-2は、光路長調整用光ファイバ236の一端に接続され、光路長調整用サーキュレータ234の第3ポート234-3は、周波数シフタ240に接続される。また、光路長調整用光ファイバ236の他端は、光路長調整用ミラー238に光学的に接続される。
【0087】
第1カプラ212から光路長調整部230aの光路長調整用サーキュレータ234に送られた参照光は、第1ポート234-1に入力され、第2ポート234-2から出力される。光路長調整用サーキュレータ234の第2ポート234-2から出力される参照光は、光路長調整用光ファイバ236を伝搬し、光路長調整用ミラー238で反射する。光路長調整用ミラー238で反射した参照光は、再び、光路長調整用光ファイバ236を伝搬し、光路長調整用サーキュレータ234の第2ポート234-2に入力される。光路長調整用サーキュレータ234の第2ポート234-2に入力された光は、第3ポート234-3から出力され、周波数シフタ240に送られる。
【0088】
他の構成例1によれば、光路長調整部230aにおいて、光路長調整用光ファイバ236を往復する。このため、光路長調整部230aが備える光路長調整用光ファイバ236は、上述の第1振動計の光路長調整部における光路長調整用光ファイバの長さの半分ですむ。特に、光路長調整部230に、偏波保持ファイバなど1mあたりの単価が比較的高い光ファイバを用いる場合、光ファイバの長さを短くすることは、低コストの観点で有利である。
【0089】
ここでは、第1振動計の光路長調整部に、他の構成例1の光路長調整部を用いる例を説明したが、第2振動計の光路長調整部に、他の構成例1の光路長調整部を用いてもよい。この場合、光路長調整用サーキュレータの第1ポートは、第1カプラに接続され、光路長調整用サーキュレータの第3ポートは、第1サーキュレータの第1ポートに接続される。
【0090】
(他の構成例2)
図5を参照して、光路長調整部の他の構成例2を説明する。
図5は、光路長調整部の他の構成例2を説明するための模式図である。ここでは、第1振動計の光路長調整部に、他の構成例2を用いる例を説明する。
【0091】
他の構成例2の光路長調整部230bは、偏波ビームスプリッタ(PBS)235、光ファイバ237、ファラデーローテーターミラー(FRM)239を備えて構成される。
【0092】
PBS235は、例えば、立方体状に形成され、4つの側面に、それぞれ第1~第4ポートを有する。第1ポートと第2ポートが対向する側面に設けられ、第3ポートと第4ポートが対向する側面に設けられる。
【0093】
PBS235の第1ポートに入力された互いに直交する偏波成分は、一方(例えば、p偏光)がPBS235を透過して、第2ポートから出力され、他方(例えば、s偏光)がPBS235で反射されて、第4ポートから出力される。同様に、第2ポートに入力された互いに直交する偏波成分は、一方(例えば、p偏光)がPBS235を透過して、第1ポートから出力され、他方(例えば、s偏光)がPBS235で反射されて、第3ポートから出力される。
【0094】
PBS235の第1ポート235-1は、第1カプラ212に接続され、PBS235の第2ポート235-2は、光路長調整用光ファイバ237の一端に接続され、PBS235の第3ポート235-3は、周波数シフタ240に接続される。また、光路長調整用光ファイバ237の他端は、FRM239に光学的に接続される。
【0095】
第1カプラ212から光路長調整部230bに送られた参照光は、PBS235の第1ポート235-1に入力され、PBS235を透過して第2ポート235-2から出力される。第2ポート235-2から出力される参照光は、光路長調整用光ファイバ237を伝搬し、FRM239で反射する。FRM239は、ファラデーローテーターと、ミラーで構成される。光路長調整用光ファイバ237からFRM239に送られた光は、ファラデーローテーターで偏波状態が45度回転した後、ミラーで反射される。その後、再び、ファラデーローテーターで偏波状態が45度回転して、光路長調整用光ファイバ237に送られる。このように、FRM239で反射される光は、2回ファラデーローテーターを通過し、その都度45度回転するので、FRM239での反射の前後で、偏波状態が90度回転している。
【0096】
FRM239で反射した参照光は、再び、光路長調整用光ファイバ237を伝搬し、PBS235の第2ポート235-2に入力される。PBS235の第2ポート235-2に入力された光は、PBS235の第1ポート235-1に入力され第2ポート235-2から出力される光に対して、偏波状態が90度回転している。従って、PBS235の第2ポート235-2に入力された光は、PBS235で反射されて、第3ポート235-3から出力され、周波数シフタ240に送られる。
【0097】
他の構成例2の光路長調整部によれば、光路長調整部において、光路長調整用光ファイバを往復する。このため、光路長調整部が備える光路長調整用光ファイバは、
図1を参照して説明した第1振動計の光路長調整用ファイバの長さの半分ですむ。このため、他の構成例1の光路長調整部と同様に、低コストの観点で有利である。
【0098】
また、FRMに向かう光と、FRMから出力される光は、偏波状態が直交している。このため、往路において光ファイバ伝搬時に受けた偏波状態の変動は、偏波が直交状態にある復路においてキャンセルすることができる。したがって、比較的高価な偏波保持ファイバを使用せずに光ファイバ伝搬時の偏波状態を補償することができ、低コストの観点で他の構成例1の光路長調整部よりもさらに有利である。
【0099】
ここでは、第1振動計の光路長調整部に、他の構成例2の光路長調整部を用いる例を説明したが、第2振動計の光路長調整部に、他の構成例2を用いてもよい。この場合、偏波ビームスプリッタの第1ポートは、第1カプラに接続され、偏波ビームスプリッタの第3ポートは、第1サーキュレータの第1ポートに接続される。
【0100】
100 連続光光源
200、202 干渉部
212 第1カプラ
214 第2カプラ
220 サーキュレータ
222 第1サーキュレータ
224 第2サーキュレータ
230、230a、230b、232 光路長調整部
234 光路長調整用サーキュレータ
235 偏光ビームスプリッタ(PBS)
236、237 光路長調整用光ファイバ
238 光路長調整用ミラー
239 ファラデーローテーターミラー(FRM)
240 周波数シフタ
250 発振器
300 光路長差相殺部
310 光路長差相殺用光スイッチ
320 光路長差相殺用光ファイバ
330 光路長差相殺用ミラー
400 測定部
410 測定対象物切替用光スイッチ
420 測定用光ファイバ
430 レンズ
500 検出部
510 光検出器
520 アナログ・ディジタル変換器(ADC)
530 信号処理部