(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106526
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】トラバース装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/28 20060101AFI20240801BHJP
B65H 57/28 20060101ALI20240801BHJP
D01D 7/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B65H54/28
B65H57/28
D01D7/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010820
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪之
【テーマコード(参考)】
3F110
4L045
【Fターム(参考)】
3F110CA01
3F110DA01
3F110DB05
3F110DB11
4L045BA03
4L045DC11
4L045DC14
(57)【要約】
【課題】高精度なトラバース制御を行え、複数のトラバースユニットが並ぶ方向で隣り合う回転羽根同士の干渉を防止し、装置の破損を防止できるトラバース装置を提供する。
【解決手段】トラバース装置1は、駆動モータ11と、歯付き伝動ベルト12と、複数のトラバースユニット13とを備える。各トラバースユニット13は、トラバースガイド17と、互いに逆回転して糸101を綾振りする回転羽根(18、19)と、回転羽根(18、19)に駆動力を伝達する駆動力伝達軸22と、干渉回避カム21とを有する。トラバースユニット13の並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合う駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、当接せずに回転し、駆動力伝達軸22の回転速さがずれると、干渉回避カム21同士が当接して駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制し、並び方向Yで隣り合う回転羽根(18、19)同士の干渉を回避させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数の前記トラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置であって、
駆動モータと、前記駆動モータによって駆動されるとともに、複数の前記トラバースユニットに対して同期した駆動力を伝達するための歯付き伝動ベルトと、を更に備え、
複数の前記トラバースユニットのそれぞれは、
糸が往復して綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡をガイドするトラバースガイドと、
互いに逆方向に回転することで前記トラバースガイドに沿って糸を綾振りするとともに、前記トラバース軌跡の両端側で糸の受け渡しをする一対の回転羽根と、
前記歯付き伝動ベルトから伝達される駆動力によって駆動されるとともに前記回転羽根に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸と、
前記駆動力伝達軸に設けられ、複数の前記トラバースユニットが並ぶ方向である並び方向で隣り合って配置される前記回転羽根同士の干渉を回避させる干渉回避カムと、
を有し、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合うとともに互いに逆方向に回転する前記回転羽根は、同一の平面に沿って配置され、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カムは、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さが同じ状態では、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士で当接せずに前記駆動力伝達軸とともに回転し、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じると、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士が当接することで前記駆動力伝達軸同士の回転速さのずれを規制し、前記並び方向で隣り合う前記回転羽根同士の干渉を回避させるように構成されている、
ことを特徴とするトラバース装置。
【請求項2】
パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数の前記トラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置であって、
複数の前記トラバースユニットのそれぞれは、
糸が往復して綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡をガイドするトラバースガイドと、
互いに逆方向に回転することで前記トラバースガイドに沿って糸を綾振りするとともに、前記トラバース軌跡の両端側で糸の受け渡しをする一対の回転羽根と、
駆動モータと、
前記駆動モータから伝達される駆動力によって駆動されるとともに前記回転羽根に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸と、
前記駆動力伝達軸に設けられ、複数の前記トラバースユニットが並ぶ方向である並び方向で隣り合って配置される前記回転羽根同士の干渉を回避させる干渉回避カムと、
を有し、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合うとともに互いに逆方向に回転する前記回転羽根は、同一の平面に沿って配置され、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カムは、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さが同じ状態では、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士で当接せずに前記駆動力伝達軸とともに回転し、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じると、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士が当接することで前記駆動力伝達軸同士の回転速さのずれを規制し、前記並び方向で隣り合う前記回転羽根同士の干渉を回避させるように構成されており、
複数の前記トラバースユニットにそれぞれ設けられる前記駆動モータを同じ回転速さで回転させるように制御する制御部を更に備えている、
ことを特徴とするトラバース装置。
【請求項3】
前記干渉回避カムは、前記駆動力伝達軸を中心として径方向に沿って放射状に突出する複数の突起部を有し、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じると、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カムの前記突起部同士が当接することで前記駆動力伝達軸同士の回転速さのずれを規制する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラバース装置。
【請求項4】
複数の前記突起部は、前記干渉回避カムの外周に沿って設けられ、前記干渉回避カムの周方向に均等角度間隔で配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のトラバース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数のトラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数のトラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1に開示されたトラバース装置は、並んで設けられた複数のトラバースユニット(綾振装置2)を備えている。複数のトラバースユニットのそれぞれは、トラバースガイド(ガイド板9)と、一対の回転羽根(羽根7,8)とを有している。糸が綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡は、トラバースガイドによってガイドされる。そして、一対の回転羽根は、互いに逆方向に回転することでトラバースガイドに沿って糸を綾振りするとともに、トラバース軌跡の両端側で糸の受け渡しをするように構成されている。
【0003】
特許文献1のトラバース装置では、複数のトラバースユニットのそれぞれに対しては、ウォームギヤ又は歯付き伝動ベルトを用いて駆動力が伝達される。具体的には、ウォームギヤを用いた構成として、ウォーム18,20及びウォームホイール17,19からなるウォームギヤを用いて各トラバースユニットのロータ12,13を同期して回転駆動させ、ロータ12,13によって羽根7,8を回転駆動する形態が開示されている。ウォームギヤによって各トラバースユニットのロータ12,13が同期して回転駆動されるため、ロータ12,13によって駆動される各トラバースユニットの羽根7,8も同期して回転する。また、特許文献1では、歯付き伝動ベルトを用いた構成として、具体的には、歯付き伝動ベルトとして構成されたタンジエンシアルベルト45,46から、歯付きプーリとして構成されたベルトプリー43,44を介して、各トラバースユニットのロータ12,13に駆動力を伝達し、各トラバースユニットのロータ12,13を同期して回転駆動させる形態が開示されている。歯付き伝動ベルトからの駆動力によって各トラバースユニットのロータ12,13が同期して回転駆動されるため、ロータ12,13によって駆動される各トラバースユニットの羽根7,8も同期して回転する。
【0004】
特許文献1のトラバース装置では、ウォームギヤを用いた構成及び歯付き伝動ベルトを用いた構成のいずれにおいても、複数のトラバースユニットの回転羽根(羽根7,8)が同期して回転する。このため、特許文献1のトラバース装置では、複数のトラバースユニットが並ぶ並び方向において隣り合って配置される回転羽根同士が近接して配置されても互いに干渉してしまうことを防止できる。即ち、上記の並び方向で隣り合う回転羽根の回転軌跡が一部互いに重なるように近接して配置されても、上記の並び方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のトラバース装置においては、ウォームギヤを用いた構成の場合、ウォームとウォームホイールとが常に噛み合うため、複数のトラバースユニットの回転羽根が同期して回転する状態が常時維持される。このため、複数のトラバースユニットの並び方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してトラバース装置が破損してしまうことを防止することができる。しかし、ウォームギヤの構成上、ウォームとウォームホイールとの間でのガタを無くすことは困難であり、一対の回転羽根を互いに逆回転させて糸を綾振りさせるトラバース制御を高精度に行うことが難しいという問題がある。一方、特許文献1のトラバース装置における歯付き伝動ベルトを用いた構成の場合、ウォームとウォームホイールとの間のガタの問題が生じないため、高精度なトラバース制御を行うことができる。しかし、歯付き伝動ベルトを用いた構成の場合、歯付き伝動ベルトの破損が生じる虞があり、歯付き伝動ベルトの破損が生じると、複数のトラバースユニットの回転羽根の同期回転が損なわれてしまうことになる。歯付き伝動ベルトの破損により回転羽根の同期回転が損なわれると、複数のトラバースユニットの並び方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してトラバース装置が破損してしまうことになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高精度なトラバース制御を行うことができるとともに、複数のトラバースユニットが並ぶ方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してしまうことを好適に防止し、装置の破損を防止することができるトラバース装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のトラバース装置は、
パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数の前記トラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置であって、
駆動モータと、前記駆動モータによって駆動されるとともに、複数の前記トラバースユニットに対して同期した駆動力を伝達するための歯付き伝動ベルトと、を更に備え、
複数の前記トラバースユニットのそれぞれは、
糸が往復して綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡をガイドするトラバースガイドと、
互いに逆方向に回転することで前記トラバースガイドに沿って糸を綾振りするとともに、前記トラバース軌跡の両端側で糸の受け渡しをする一対の回転羽根と、
前記歯付き伝動ベルトから伝達される駆動力によって駆動されるとともに前記回転羽根に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸と、
前記駆動力伝達軸に設けられ、複数の前記トラバースユニットが並ぶ方向である並び方向で隣り合って配置される前記回転羽根同士の干渉を回避させる干渉回避カムと、
を有し、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合うとともに互いに逆方向に回転する前記回転羽根は、同一の平面に沿って配置され、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カムは、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さが同じ状態では、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士で当接せずに前記駆動力伝達軸とともに回転し、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じると、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士が当接することで前記駆動力伝達軸同士の回転速さのずれを規制し、前記並び方向で隣り合う前記回転羽根同士の干渉を回避させるように構成されている、
ことを特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載のトラバース装置によれば、歯付き伝動ベルトによって複数のトラバースユニットに対して同期した駆動力を伝達するため、複数のトラバースユニット間において駆動力を伝達するためのギヤ機構が不要となる。このため、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット間で駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがなく、一対の回転羽根を互いに逆回転させて糸を綾振りさせるトラバース制御を高精度に行うことができる。さらに、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット間で駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがないため、騒音を抑制することができる。また、上記のトラバース装置によれば、複数のトラバースユニットの並び方向で隣り合う駆動力伝達軸の回転速さが同じ通常の運転状態では、隣り合う駆動力伝達軸に設けられた干渉回避カム同士は当接せずに駆動力伝達軸が回転し、隣り合う回転羽根が同期して回転する通常の運転状態が維持される。一方、トラバース装置において、歯付き伝動ベルトの破損が生じた場合、複数のトラバースユニットの並び方向で隣り合う駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じることになる。しかし、上記のトラバース装置によると、隣り合う駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じたときは、隣り合う駆動力伝達軸に設けられた干渉回避カム同士が当接し、隣り合う駆動力伝達軸同士の回転速さのずれが規制されて、隣り合う回転羽根同士の干渉が防止される。よって、上記のトラバース装置によると、高精度なトラバース制御を行うことができるとともに騒音を抑制でき、さらに、複数のトラバースユニットが並ぶ方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してしまうことを好適に防止し、装置の破損を防止することができる。
【0010】
(2)本発明のトラバース装置は、
パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数の前記トラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置であって、
複数の前記トラバースユニットのそれぞれは、
糸が往復して綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡をガイドするトラバースガイドと、
互いに逆方向に回転することで前記トラバースガイドに沿って糸を綾振りするとともに、前記トラバース軌跡の両端側で糸の受け渡しをする一対の回転羽根と、
駆動モータと、
前記駆動モータから伝達される駆動力によって駆動されるとともに前記回転羽根に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸と、
前記駆動力伝達軸に設けられ、複数の前記トラバースユニットが並ぶ方向である並び方向で隣り合って配置される前記回転羽根同士の干渉を回避させる干渉回避カムと、
を有し、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合うとともに互いに逆方向に回転する前記回転羽根は、同一の平面に沿って配置され、
複数の前記トラバースユニットにおいて前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カムは、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さが同じ状態では、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士で当接せずに前記駆動力伝達軸とともに回転し、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じると、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カム同士が当接することで前記駆動力伝達軸同士の回転速さのずれを規制し、前記並び方向で隣り合う前記回転羽根同士の干渉を回避させるように構成されており、
複数の前記トラバースユニットにそれぞれ設けられる前記駆動モータを同じ回転速さで回転させるように制御する制御部を更に備えている、
ことを特徴とする。
【0011】
上記(2)に記載のトラバース装置によれば、各トラバースユニットに個別に設けられた駆動モータによって、駆動力伝達軸を介して各トラバースユニットの回転羽根が回転駆動される。このため、複数のトラバースユニット間において駆動力を伝達するためのギヤ機構が不要となる。これにより、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット間において駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがなく、一対の回転羽根を互いに逆回転させて糸を綾振りさせるトラバース制御を高精度に行うことができる。さらに、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット間で駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがないため、騒音を抑制することができる。そして、複数のトラバースユニットの駆動モータは、制御部の制御によって、同じ回転速さで回転するように制御されるため、複数のトラバースユニットの回転羽根が同期して回転する状態が維持される。また、上記のトラバース装置によれば、複数のトラバースユニットの並び方向で隣り合う駆動力伝達軸の回転速さが同じ通常の運転状態では、隣り合う駆動力伝達軸に設けられた干渉回避カム同士は当接せずに駆動力伝達軸が回転し、隣り合う回転羽根が同期して回転する通常の運転状態が維持される。一方、トラバース装置において、複数のトラバースユニットのいずれかにて駆動モータの故障が生じた場合、複数のトラバースユニットの並び方向で隣り合う駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じることになる。しかし、上記のトラバース装置によると、隣り合う駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じたときは、隣り合う駆動力伝達軸に設けられた干渉回避カム同士が当接し、隣り合う駆動力伝達軸同士の回転速さのずれが規制されて、隣り合う回転羽根同士の干渉が防止される。よって、上記のトラバース装置によると、高精度なトラバース制御を行うことができるとともに騒音を抑制でき、さらに、複数のトラバースユニットが並ぶ方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してしまうことを好適に防止し、装置の破損を防止することができる。
【0012】
(3)本発明のトラバース装置において、
前記干渉回避カムは、前記駆動力伝達軸を中心として径方向に沿って放射状に突出する複数の突起部を有し、
前記並び方向で隣り合う前記駆動力伝達軸の回転速さにずれが生じると、前記並び方向で隣り合う前記干渉回避カムの前記突起部同士が当接することで前記駆動力伝達軸同士の回転速さのずれを規制する、
ことを特徴とする。
【0013】
上記(3)に記載のトラバース装置によれば、駆動力伝達軸の径方向で放射状に突出する複数の突起部が干渉回避カムに設けられ、隣り合う駆動力伝達軸の回転速さのずれが生じたときには、突起部同士が当接し、隣り合う駆動力伝達軸の回転速さのずれが規制される。このため、隣り合う駆動力伝達軸の回転速さのずれを規制するための構造を駆動力伝達軸の周方向に沿ってスペース効率よく配置した干渉回避カムを構成することができる。したがって、干渉回避カムをコンパクト化し、更に構造の簡素化を図ることができる。
【0014】
(4)本発明のトラバース装置において、
複数の前記突起部は、前記干渉回避カムの外周に沿って設けられ、前記干渉回避カムの周方向に均等角度間隔で配置されている、
ことを特徴とする。
【0015】
上記(4)に記載のトラバース装置によれば、隣り合う駆動力伝達軸の回転速さのずれを規制する突起部が、干渉回避カムの周方向に均等角度間隔で配置されている。このため、隣り合う駆動力伝達軸において規制する回転速さのずれの量を正確にコントロールすることができる。
【0016】
本発明に係るトラバース装置は、上記(1)または(2)に記載された構成と、上記(3)および(4)に記載された構成との全部を備えることは必須でない。例えば、上記(1)または(2)に記載されたトラバース装置に係る発明において、上記(3)に記載された構成、または、上記(3)および(4)に記載された構成を備えていないものを、本発明のトラバース装置とすることができる。また、上記(1)または(2)の構成と上記(3)の構成とを備えたものを、本発明のトラバース装置とすることもできる。また、上記(1)または(2)の構成と上記(3)および(4)の構成とを備えたものを、本発明のトラバース装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高精度なトラバース制御を行うことができるとともに、複数のトラバースユニットが並ぶ方向で隣り合う回転羽根同士が干渉してしまうことを好適に防止し、装置の破損を防止することができるトラバース装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】トラバース装置を備える糸条巻取機の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るトラバース装置を示す斜視図である。
【
図5】トラバース装置におけるトラバースユニットの底面図である。
【
図6】
図2に示すトラバース装置のトラバースユニットにおいて駆動力を伝達する構成を模式的に示す図である。
【
図7】複数のトラバースユニットにそれぞれ設けられる一対の回転羽根の配置状態を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るトラバース装置を示す斜視図である。
【
図10】
図7に示すトラバース装置の側面図である。
【
図11】
図7に示すトラバース装置のトラバースユニットにおいて駆動力を伝達する構成を模式的に示す図である。
【
図12】
図7に示すトラバース装置の制御構成の概略を示すブロック図である。
【
図13】変形例に係るトラバース装置を示す斜視図であって、トラバース装置の一部を示す図である。
【
図14】
図13に示すトラバース装置の平面図であって、トラバース装置の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、パッケージとして巻き取られる糸を綾振りするトラバースユニットを複数備え、複数のトラバースユニットが並んで設けられたトラバース装置として、種々の用途に広く適用することができるものである。
【0020】
本発明の実施形態のトラバース装置は、紡糸機から紡出された糸を巻き取る糸条巻取機などの繊維機械に備えられる。
図1は、トラバース装置を備える糸条巻取機100の全体構成を示す斜視図である。以下の説明においては、まず、トラバース装置が備えられる繊維機械として、糸条巻取機100を例にとって説明し、次いで、本発明の第1実施形態に係るトラバース装置1(
図2を参照)および本発明の第2実施形態に係るトラバース装置2(
図8を参照)について説明する。なお、以下の説明では、糸条巻取機100と糸条巻取機100に備えられるトラバース装置(1、2)とにおける上下方向、前後方向、および左右方向の各方向については、
図1および後述の
図2~
図10にて矢印で示すように定義する。
【0021】
[糸条巻取機]
図1を参照して、トラバース装置1又はトラバース装置2が備えられる糸条巻取機100は、紡糸機(図示省略)から紡出された複数の糸101をそれぞれ複数のパッケージ102としてとして巻き取るための繊維機械として構成されている。糸条巻取機100は、基礎フレーム103、基礎フレーム103上で支持された本体フレーム104、本体フレーム104に支持される円盤状のタレット板105、タレット板105に支持される2本のボビンホルダ(106a、106b)、本体フレーム104に支持される昇降フレーム107、等を備えて構成されている。
【0022】
タレット板105は、円盤状に設けられ、本体フレーム104に対して水平軸まわりで旋回するように構成されている。2本のボビンホルダ(106a、106b)のそれぞれは、その一端部がタレット板105に支持されてタレット板105の左側で片持ち状に延びるように設けられている。なお、ボビンホルダ(106a、106b)は、タレット板105の右側に設けられた図示が省略された駆動モータによって回転駆動される。
【0023】
また、タレット板105に支持された2本のボビンホルダ(106a、106b)のそれぞれには、複数のボビン(108a、108b)がそれぞれ装着されている。すなわち、一方のボビンホルダ106aには、複数のボビン108aが装着され、他方のボビンホルダ106bには、複数のボビン108bが装着されている。複数のボビン108aは、片持ち状に延びるボビンホルダ106aの長手方向に沿って直列に並んだ状態でボビンホルダ106aに装着されている。複数のボビン108bは、片持ち状に延びるボビンホルダ106bの長手方向に沿って直列に並んだ状態でボビンホルダ106bに装着されている。
【0024】
また、タレット板105は、水平軸を中心として180°ごとに回転可能に構成されている。そして、上方の巻取位置に位置した一方のボビンホルダ106aのボビン108aに対して糸101を巻き取ることでパッケージ102が形成される。なお、
図1では、一方のボビンホルダ106aが糸101をパッケージ102として巻き取る位置である上方の巻取位置に位置し、他方のボビンホルダ106bが、下方の待機位置に位置した状態が図示されている。一方のボビンホルダ106aの複数のボビン108aに糸101が巻き取られて形成されたパッケージ102が満巻状態となると、タレット板105が180°回転し、他方のボビンホルダ106bが新たに巻取位置に位置する状態となる。そして、新たに巻取位置に位置した他方のボビンホルダ106bの複数のボビン108bに対して糸101が巻き取られ、パッケージ102が形成される。
【0025】
本体フレーム104に支持される昇降フレーム107は、本体フレーム104に対して上下方向に沿って昇降可能に設けられている。昇降フレーム107には、後述する本発明の第1又は第2実施形態のトラバース装置(1、2)が装備されている。昇降フレーム107に装備されるトラバース装置(1、2)には、パッケージ102として巻き取られる糸101を綾振りする後述のトラバースユニット(13、30)が複数備えられている。また、昇降フレーム107には、複数のコンタクトローラ109が設けられている。複数のコンタクトローラ109は、昇降フレーム107において、左右方向に沿って並んで配置され、それぞれ回転自在に支持されている。
【0026】
昇降フレーム107においては、トラバース装置(1、2)における複数のトラバースユニット(13、30)のそれぞれと、複数のコンタクトローラ109のそれぞれとが上下方向において対応して配置されている。また、昇降フレーム107のカバー107aには、糸101がそれぞれ挿入される複数のガイド溝107bが設けられている。糸101は、複数のガイド溝107bに対して上方から下方に向かってそれぞれ挿入される。複数のガイド溝107bのそれぞれに挿入された糸101は、昇降フレーム107に装備されたトラバース装置(1、2)における複数のトラバースユニット(13、30)のそれぞれによって綾振りされながら、下方に向かって送られる。そして、複数のトラバースユニット(13、30)のそれぞれによって綾振りされながら下方に送られる糸101は、コンタクトローラ109の周面の一部に接触してコンタクトローラ109の下方に配置されたボビン(108a、108b)に案内され、ボビン(108a、108b)に巻き取られてパッケージ102が形成される。このように、糸101は、昇降フレーム107に装備されたトラバース装置(1、2)におけるトラバースユニット(13、30)によって綾振りされながら下方へと送られてパッケージ102として巻き取られる。
【0027】
本発明の第1実施形態に係るトラバース装置1および本発明の第2実施形態に係るトラバース装置2は、上述した糸条巻取機100において備えられる。以下、本発明の第1および第2実施形態に係るトラバース装置(1、2)について説明する。
【0028】
[第1実施形態]
(トラバース装置の概要)
図2は、本発明の第1実施形態に係るトラバース装置1を示す斜視図である。
図3は、トラバース装置1の平面図である。
図4は、トラバース装置1の側面図である。
図1~
図4を参照して、トラバース装置1は、糸条巻取機100に備えられ、糸条巻取機100の昇降フレーム107に装備されている。トラバース装置1は、パッケージ102として巻き取られる糸101を綾振りするトラバースユニット13を複数備え、複数のトラバースユニット13が左右方向に沿って直列に並んで設けられている。また、トラバース装置1は、複数のトラバースユニット13に加え、駆動モータ11と、歯付き伝動ベルト12とを備えて構成されている。複数のトラバースユニット13、駆動モータ11、および、歯付き伝動ベルト12は、昇降フレーム107に内蔵されている。また、複数のトラバースユニット13と駆動モータ11とは、昇降フレーム107内において昇降フレーム107に支持されている。
【0029】
図2~
図4を参照して、駆動モータ11は、電動モータとして設けられ、複数のトラバースユニット13を駆動する駆動力を発生させる駆動源として構成されている。歯付き伝動ベルト12は、駆動モータ11によって駆動されるとともに、複数のトラバースユニット13に対して同期した駆動力を伝達するための動力伝達ベルトとして設けられている。歯付き伝動ベルト12は、駆動モータ11によって周回駆動される無端状の動力伝達ベルトとして設けられ、内周面および外周面の両側に歯が設けられている。なお、図面においては、歯付き伝動ベルト12に設けられた歯の図示は省略している。
【0030】
駆動モータ11には、その出力軸の端部に固定された駆動プーリ11aが設けられている。複数のトラバースユニット13のそれぞれには、従動プーリ15が設けられている。従動プーリ15は、各トラバースユニット13の上面側に配置されている。駆動プーリ11aと、複数のトラバースユニット13にそれぞれ設けられた複数の従動プーリ15とは、いずれも歯付きプーリとして設けられ、外周には歯が設けられている。なお、図面においては、駆動プーリ11aおよび従動プーリ15に設けられた歯の図示は省略している。歯付き伝動ベルト12は、駆動プーリ11aと複数の従動プーリ15とに巻き掛けられている。また、歯付き伝動ベルト12は、駆動プーリ11aおよび複数の従動プーリ15に対して、歯が噛み合う状態で巻き掛けられている。なお、歯付き伝動ベルト12は、ベルト張力が適正に保たれるようにするため、駆動プーリ11aと複数の従動プーリ15との間で中間プーリ14に巻き掛けられている。
【0031】
駆動モータ11の回転によって駆動プーリ11aが回転すると、駆動プーリ11aの回転が歯付き伝動ベルト12を介して複数の従動プーリ15へと伝達される。複数のトラバースユニット13にそれぞれ設けられる複数の従動プーリ15は、同じ径寸法で同じ歯数のプーリとして構成されており、歯付き伝動ベルト12によって駆動されることで、同じ回転速さで回転する。これにより、歯付き伝動ベルト12から複数の従動プーリ15に対して同期した駆動力が伝達される。すなわち、歯付き伝動ベルト12から複数のトラバースユニット13に対して同期した駆動力が伝達される。
【0032】
また、歯付き伝動ベルト12は、左右方向に沿って直列に並んだ複数のトラバースユニット13の上面側にそれぞれ設けられた複数の従動プーリ15に対して、前方側と後方側とで交互に巻き掛けられる位置を替えながら巻き掛けられている。すなわち、左右方向に沿って直列に並ぶ複数の従動プーリ15に対しては、歯付き伝動ベルト12の内周側と外周側とが交互に巻き掛けられている。このため、左右方向において隣り合う従動プーリ15は、互いに逆方向に回転するように構成されている。すなわち、上から見て時計回り方向に回転する従動プーリ15の隣に配置された従動プーリは、上から見て反時計回り方向に回転する。
【0033】
(トラバースユニット)
図5は、トラバース装置1における1つのトラバースユニット13の底面図である。
図6は、トラバース装置1のトラバースユニット13において駆動力を伝達する構成を模式的に示す図である。
図2~
図6を参照して、トラバース装置1においては、パッケージ102として巻き取られる糸101を綾振りするトラバースユニット13が複数備えられており、複数のトラバースユニット13は、左右方向において直列に並んで配置されている。複数のトラバースユニット13のそれぞれは、従動プーリ15と、ハウジング16と、トラバースガイド17と、一対の回転羽根(18、19)と、駆動力伝達機構20と、干渉回避カム21とを有している。
【0034】
従動プーリ15は、ハウジング16の上面側に設けられ、駆動モータ11から歯付き伝動ベルト12を介してトラバースユニット13に伝達される駆動力が入力されるプーリとして構成されている。従動プーリ15は、ハウジング16の上面側でハウジング16に対して回転自在に支持されている。ハウジング16は、駆動力伝達機構20を収納している。また、ハウジング16の下面側では、一対の回転羽根(18、19)が、ハウジング16に対して回転自在に支持されている。なお、
図6においては、トラバースユニット13について、ハウジング16の図示を省略して模式的に示している。また、
図6においては、駆動力伝達機構20における動力伝達経路の途中から断面位置が異なる状態で断面を示している。より具体的には、
図6においては、駆動力伝達機構20の動力伝達経路における従動プーリ15側の断面については前後方向に沿った断面を示しており、駆動力伝達機構20の動力伝達経路における一対の回転羽根(18、19)側の断面については左右方向に沿った断面を示している。
【0035】
図2~
図5を参照して、トラバースガイド17は、糸101が往復して綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡をガイドするガイド部材として設けられている。本実施形態では、トラバースガイド17は、ハウジング16に設けられている。糸101は、後述の一対の回転羽根(18、19)によって綾振りされる。そして、トラバースガイド17は、一対の回転羽根(18、19)によって綾振りされる糸101が往復して綾振りされる軌跡であるトラバース軌跡をガイドするように構成されている。なお、
図3、
図5、および
図6では、トラバースガイド17によってトラバース軌跡がガイドされる糸101の図示を省略している。トラバースガイド17は、ハウジング16における前方側の端部として設けられており、水平面に沿って円弧状に延びる縁部を備えて構成されている。より具体的には、トラバースガイド17は、ハウジング16の前方の端部で左右方向に沿って前方に緩やかに湾曲して突出した状態で円弧状に延びる縁部を備えて構成されている。一対の回転羽根(18、19)によって糸101が往復して綾振りされる際には、糸101は、トラバースガイド17における水平面に沿って円弧状に延びる縁部に摺接しながら往復して綾振りされる。これにより、糸101のトラバース軌跡がガイドされる。
【0036】
図7は、複数のトラバースユニット13にそれぞれ設けられる一対の回転羽根(18、19)の配置状態を示す図である。なお、
図7は、一対の回転羽根(18、19)を下方から見た状態を示しており、複数のトラバースユニット13にそれぞれ設けられる一対の回転羽根(18、19)のみを模式的に示している。
図2~
図7を参照して、一対の回転羽根(18、19)は、互いに逆回転することでトラバースガイド17に沿って糸101を綾振りするとともに、トラバース軌跡の両端側で糸101の受け渡しをするように構成されている。
【0037】
一対の回転羽根(18、19)は、各トラバースユニット13に設けられており、ハウジング16の下方において鉛直軸回りで回転自在に支持されている。そして、一対の回転羽根(18、19)は、従動プーリ15から伝達される駆動力がハウジング16内に収納された後述の駆動力伝達機構20を介して伝達されることで鉛直軸回りにおいて回転駆動され、互いに逆方向に回転するように構成されている。回転羽根18と回転羽根19とは、上下方向に並んで配置されており、本実施形態では、回転羽根18が下側に配置され、回転羽根19が上側に配置されている。回転羽根18および回転羽根19は、後述の駆動力伝達機構20によって回転駆動されて互いに逆方向に回転するように設けられている。
図5を参照して、例えば、回転羽根18が、下方から見て時計回り方向に回転する場合は、回転羽根19は、下方から見て反時計回り方向に回転するように設けられている。なお、
図5では、下方から見て時計回り方向に回転する回転羽根18の回転方向について、矢印X1で示しており、下方から見て反時計回り方向に回転する回転羽根19の回転方向について、矢印X2で示している。また、前述の通り、複数のトラバースユニット13が並ぶ左右方向において隣り合う従動プーリ15は、互いに逆方向に回転する。このため、従動プーリ15から伝達される駆動力が後述の駆動力伝達機構20を介して伝達されて回転駆動される回転羽根18および回転羽根19についても同様となる。すなわち、複数のトラバースユニット13が並ぶ方向で隣り合う回転羽根18は、互いに逆方向に回転する。そして、複数のトラバースユニット13が並ぶ方向で隣り合う回転羽根19も、互いに逆方向に回転する。
【0038】
また、回転羽根18および回転羽根19には、3枚の羽根(18a、19a)がそれぞれ設けられている。より具体的には、回転羽根18には、周方向に均等角度間隔で配置されて径方向に沿って放射状に延びる3枚の羽根18aが設けられている。回転羽根19には、周方向に均等角度間隔で配置されて径方向に沿って放射状に延びる3枚の羽根19aが設けられている。回転羽根18の3枚の羽根18aは、水平面に沿って放射状に延びるように設けられている。回転羽根19の3枚の羽根19aも、水平面に沿って放射状に延びるように設けられている。
【0039】
また、複数のトラバースユニット13においては、複数のトラバースユニット13が並ぶ方向である並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根(18、19)は、水平面と平行に広がる同一の平面に沿って配置されている。なお、各トラバースユニット13において、回転羽根18と回転羽根19とは上下に並んで配置されている。そして、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18は、互いに逆方向に回転するとともに、水平面と平行な平面に沿って並んで配置され、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19も、互いに逆方向に回転するとともに、水平面と平行な他の平面に沿って並んで配置されている。すなわち、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合うとともに互いに逆方向に回転する回転羽根18は、水平に広がる1つの同一の平面に沿って配置されている。そして、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合うとともに互いに逆方向に回転する回転羽根19も、水平に広がる他の1つの同一の平面に沿って配置されている。なお、複数のトラバースユニット13が並ぶ方向である並び方向Yは、本実施形態では左右方向と平行な方向であり、
図3および
図7において一点鎖線の両端矢印Yで示している。
【0040】
また、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う回転羽根18は、回転羽根18の回転軌跡が水平面と平行な平面上で重複するように、近接して配置されている。すなわち、回転羽根18の羽根18aが通過する領域である回転軌跡は、並び方向Yで隣り合う回転羽根18同士において重複するように設定されている。なお、並び方向Yで隣り合う回転羽根18の回転軌跡が重複するため、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18のうちの一方の回転羽根18の回転軌跡内に他方の回転羽根18が侵入することになる。そこで、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士は、互いに干渉することがない角度差が設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。同様に、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う回転羽根19は、回転羽根19の回転軌跡が水平面と平行な平面上で重複するように、近接して配置されている。すなわち、回転羽根19の羽根19aが通過する領域である回転軌跡は、並び方向Yで隣り合う回転羽根19同士において重複するように設定されている。なお、並び方向Yで隣り合う回転羽根19の回転軌跡が重複するため、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19のうちの一方の回転羽根19の回転軌跡内に他方の回転羽根19が侵入することになる。そこで、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士は、互いに干渉することがない角度差が設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。なお、回転羽根19は、前述の通り、同じトラバースユニット13の回転羽根18とは逆方向に回転し、並び方向Yで隣り合うトラバースユニット13の回転羽根19に対しても逆方向に回転する。例えば、回転羽根18が、下方から見て時計回り方向に回転し、回転羽根19が、下方から見て反時計回り方向に回転するトラバースユニット13に対して並び方向Yで隣り合うトラバースユニット13においては、回転羽根18が、下方から見て反時計回り方向に回転し、回転羽根19が、下方から見て時計回り方向に回転する。
【0041】
また、各トラバースユニット13において、鉛直軸回りで回転する回転羽根18の回転中心と、同様に鉛直軸回りで回転する回転羽根19の回転中心とは、互いに偏心して設定されている。本実施形態では、回転羽根18の回転中心と回転羽根19の回転中心とは、トラバースガイド17によって糸101がガイドされて綾振りされるトラバース軌跡に沿った左右方向において偏心して設定されている。
【0042】
トラバースガイド17によってガイドされた状態で一対の回転羽根(18、19)によって糸101がトラバース軌跡に沿って往復して綾振りされる際には、トラバース軌跡の両端側で一対の回転羽根(18、19)において糸101の受け渡しが行われる。
【0043】
回転羽根18から回転羽根19に糸101の受け渡しが行われる場合、まず、糸101は、回転羽根18の1つの羽根18aの先端側に掛けられて回転羽根18の羽根18aに保持されている状態で、トラバースガイド17によってガイドされながら、回転羽根18の回転とともに、トラバース軌跡に沿ってトラバース軌跡の一端側へと移動する。そして、回転羽根18の羽根18aとともにトラバース軌跡の一端側へ糸101が移動すると、糸101を保持していた回転羽根18の羽根18aの先端がトラバースガイド17の僅かに内側の位置に位置した状態となり、糸101が回転羽根18の羽根18aの先端から離脱する状態となる。このとき、糸101が回転羽根18の羽根18aの先端から離脱するタイミングと同時タイミングで、回転羽根18と逆方向に回転する回転羽根19の1つの羽根19aの先端側がトラバース軌跡に侵入する。そして、回転羽根18の羽根18aから離脱した糸101は、トラバース軌跡に侵入した回転羽根19の羽根19aに掛かり、回転羽根19の羽根19aに保持される。これにより、トラバース軌跡の両端側のうちの一端側において、回転羽根18から回転羽根19への糸101の受け渡しが行われる。
【0044】
糸101が回転羽根18から回転羽根19に受け渡されると、糸101は、回転羽根19の1つの羽根19aの先端側に掛けられて回転羽根19の羽根19aに保持されている状態で、トラバースガイド17によってガイドされながら、回転羽根19の回転とともに、トラバース軌跡に沿ってトラバース軌跡の他端側へと移動する。そして、回転羽根19の羽根19aとともにトラバース軌跡の他端側へ糸101が移動すると、糸101を保持していた回転羽根19の羽根19aの先端がトラバースガイド17の僅かに内側の位置に位置した状態となり、糸101が回転羽根19の羽根19aの先端から離脱する状態となる。このとき、糸101が回転羽根19の羽根19aの先端から離脱するタイミングと同時タイミングで、回転羽根19と逆方向に回転する回転羽根18の1つの羽根18aの先端側がトラバース軌跡に侵入する。そして、回転羽根19の羽根19aから離脱した糸101は、トラバース軌跡に侵入した回転羽根18の羽根18aに掛かり、回転羽根18の羽根18aに保持される。これにより、トラバース軌跡の両端側のうちの他端側において、回転羽根19から回転羽根18への糸101の受け渡しが行われる。
【0045】
上記のように、一対の回転羽根(18、19)は、互いに逆回転することでトラバースガイド17に沿って糸101を綾振りするとともに、トラバース軌跡の両端側で糸101の受け渡しをするように構成されている。
【0046】
図6を参照して、各トラバースユニット13において、駆動力伝達機構20は、歯付き伝動ベルト12から従動プーリ15へと伝達された駆動力を回転羽根(18、19)に伝達する機構として設けられている。駆動力伝達機構20においては、歯付き伝動ベルト12から伝達される駆動力によって駆動されるとともに回転羽根(18、19)に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸として、第1駆動力伝達軸22と、第2駆動力伝達軸23と、第3駆動力伝達軸24とが設けられている。
【0047】
第1駆動力伝達軸22は、鉛直方向を軸心として回転する中実状の回転軸として設けられ、上端側において従動プーリ15が固定されている。歯付き伝動ベルト12によって従動プーリ15が回転駆動されると、従動プーリ15とともに、第1駆動力伝達軸22も回転する。また、第1駆動力伝達軸22の下半側には、上下方向に並んでギヤ25とギヤ26とが設けられている。ギヤ25およびギヤ26は、いずれも、第1駆動力伝達軸22に固定されており、ギヤ25が上側に配置され、ギヤ26が下側に配置されている。ギヤ25は、回転羽根18側への駆動力を伝達するためのギヤとして設けられ、ギヤ26は、回転羽根19側への駆動力を伝達するためのギヤとして設けられている。
【0048】
第2駆動力伝達軸23は、鉛直方向を軸心として回転する中実状の回転軸として設けられ、下端側において回転羽根18が固定されている。また、第2駆動力伝達軸23の上端側には、ギヤ27が設けられている。ギヤ27は、第2駆動力伝達軸23に固定されている。そして、ギヤ27は、第1駆動力伝達軸22に設けられたギヤ25から中間ギヤ28を介して駆動力が伝達されるように構成されている。すなわち、第1駆動力伝達軸22側のギヤ25と中間ギヤ28とが噛み合い、中間ギヤ28と第2駆動力伝達軸23側のギヤ27とが噛み合っている。第1駆動力伝達軸22とともにギヤ25が回転すると、ギヤ25に噛み合う中間ギヤ28がギヤ25と逆方向に回転し、さらに、中間ギヤ28に噛み合うギヤ27が第2駆動力伝達軸23とともに中間ギヤ28と逆方向に回転する。よって、ギヤ25とギヤ27とは同方向に回転し、第1駆動力伝達軸22と第2駆動力伝達軸23とが同方向に回転する。そして、第2駆動力伝達軸23とともに回転羽根18が回転する。このため、回転羽根18は、従動プーリ15と同方向に回転する。
【0049】
第3駆動力伝達軸24は、鉛直方向を軸心として回転する円筒状の中空軸として設けられ、下端側において回転羽根19が固定されている。すなわち、円筒状の中空軸としての第3駆動力伝達軸24の下端部の外周には、回転羽根19が固定されている。また、円筒状に設けられた第3駆動力伝達軸24の内側には、第2駆動力伝達軸23が貫通した状態で配置されている。なお、回転羽根18の回転中心となる第2駆動力伝達軸23の回転中心と、回転羽根19の回転中心となる円筒状の第3駆動力伝達軸24の回転中心とは、互いに偏心して設定されている。また、第3駆動力伝達軸24の上端側には、ギヤ29が設けられている。ギヤ29は、円筒状の第3駆動力伝達軸24の上端側の外周に固定されている。そして、ギヤ29は、第1駆動力伝達軸22に設けられたギヤ26と噛み合い、ギヤ26から駆動力が伝達されるように構成されている。第1駆動力伝達軸22とともにギヤ26が回転すると、ギヤ26に噛み合うギヤ29が第3駆動力伝達軸24とともにギヤ26と逆方向に回転する。よって、第1駆動力伝達軸22と第3駆動力伝達軸24とが逆方向に回転する。そして、第3駆動力伝達軸24とともに回転羽根19が回転する。このため、回転羽根19は、従動プーリ15と逆方向に回転する。
【0050】
上記のように、駆動力伝達機構20においては、歯付き伝動ベルト12から伝達される駆動力によって駆動されるとともに回転羽根(18、19)に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸として、第1駆動力伝達軸22と、第2駆動力伝達軸23と、第3駆動力伝達軸24とが設けられている。そして、歯付き伝動ベルト12によって回転駆動される従動プーリ15とともに回転する第1駆動力伝達軸22に対して、回転羽根18とともに回転する第2駆動力伝達軸23が同方向に回転し、回転羽根19とともに回転する第3駆動力伝達軸24が逆方向に回転する。このため、回転羽根18と回転羽根19とは、互いに逆方向に回転するように構成されている。なお、駆動力伝達機構20においては、互いに逆方向に回転する回転羽根18と回転羽根19とが、同じ回転速さで互いに逆方向に回転するように、ギヤ25およびギヤ27の歯数と、ギヤ26およびギヤ29の歯数とが設定されている。
【0051】
図2~
図6を参照して、干渉回避カム21は、各トラバースユニット13において設けられ、複数のトラバースユニット13が並ぶ並び方向Yで隣り合って配置される回転羽根(18、19)同士の干渉を回避させるための部材として設けられている。即ち、干渉回避21は、並び方向Yにおいて隣り合って配置される回転羽根18同士の干渉を回避させるとともに、並び方向Yにおいて隣り合って配置される回転羽根19同士の干渉を回避させるための部材として設けられている。
【0052】
干渉回避カム21は、円盤状に設けられ、歯付き伝動ベルト12から伝達される駆動力によって駆動されるとともに回転羽根(18、19)に駆動力を伝達するための駆動力伝達軸に設けられている。本実施形態では、干渉回避カム21は、駆動力伝達軸としての第1駆動力伝達軸22に設けられている。干渉回避カム21は、従動プーリ15の下端側とハウジング16の上面側との間に配置された状態で、第1駆動力伝達軸22に固定されている。また、円盤状の干渉回避カム21の径方向の中心位置と、第1駆動力伝達軸22の回転中心位置とが一致した状態で、干渉回避カム21が第1駆動力伝達軸22に固定されている。本実施形態では、干渉回避カム21は、従動プーリ15に固定された第1駆動力伝達軸22に設けられているため、従動プーリ15とともに回転する。そして、並び方向Yにおいて隣り合う従動プーリ15が互いに逆方向に回転するように、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21も互いに逆方向に回転する。
【0053】
なお、干渉回避カム21は、第1駆動力伝達軸22ではなく、第2駆動力伝達軸23または第3駆動力伝達軸24に設けられてもよい。干渉回避カム21が第2駆動力伝達軸23に設けられる場合は、例えば、第2駆動力伝達軸23は、回転羽根18を貫通して回転羽根18の下方に突出するように設けられる。そして、干渉回避カム21は、第2駆動力伝達軸23の下端部に取り付けられる。また、干渉回避カム21が第3駆動力伝達軸24に設けられる場合は、例えば、干渉回避カム21は、第1駆動力伝達軸22の下端部と回転羽根19の上面との間において第3駆動力伝達軸24に取り付けられる。
【0054】
また、複数のトラバースユニット13においては、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21は、水平面と平行に広がる同一の平面に沿って配置されている。また、干渉回避カム21は、第1駆動力伝達軸22を中心として径方向に沿って放射状に突出する複数の突起部21aを有している。複数の突起部21aは、干渉回避カム21の外周に沿って設けられており、周方向に均等角度間隔で配置されている。
【0055】
また、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、突起部21aの回転軌跡が水平面と平行な平面上で一部重複するように、近接して配置されている。すなわち、干渉回避カム21の突起部21aが通過する領域である突起部21aの回転軌跡は、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21同士において一部重複するように設定されている。なお、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21の突起部21aの回転軌跡が重複するため、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21のうちの一方の干渉回避カム21の突起部21aの回転軌跡内に他方の干渉回避カム21の突起部21aが侵入することになる。そこで、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21同士は、突起部21aが互いに干渉することがない角度差が設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。
【0056】
上記のように、干渉回避カム21は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21同士が互いに干渉することがない角度差に設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。このため、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21同士で当接せずに第1駆動力伝達軸22とともに回転するように構成されている。すなわち、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合っていて互いに逆方向に回転する第1駆動力伝達軸22の回転速さ(回転速度の大きさ)が同じ状態では、並び方向Yで隣り合っていて互いに逆方向に回転する干渉回避カム21同士で当接することなく、第1駆動力伝達軸22とともに回転するように構成されている。
【0057】
また、干渉回避カム21は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21の突起部21aの回転軌跡が一部重複するように構成されている。このため、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じると、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21の突起部21a同士が当接することで第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制するように構成されている。そして、干渉回避カム21は、突起部21a同士が当接して第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制することで、並び方向Yで隣り合う回転羽根(18、19)同士の干渉を回避させるように構成されている。すなわち、干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じると、突起部21a同士が当接することで第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制し、並び方向Yで隣り合う回転羽根18同士の干渉を回避させるとともに、並び方向Yで隣り合う回転羽根19同士の干渉を回避させるように構成されている。
【0058】
上記のように、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21同士が当接することがない。このため、トラバース装置1の通常の運転状態では、干渉回避カム21同士が当接することはない。しかし、歯付き伝動ベルト12が破損した場合は、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じることになる。この場合は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21同士が当接し、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれが規制される。このため、第1駆動力伝達軸22から第2駆動力伝達軸23を介して駆動力が伝達される回転羽根18についても、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士の回転速さのずれが規制される。同様に、第1駆動力伝達軸22から第3駆動力伝達軸24を介して駆動力が伝達される回転羽根19についても、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士の回転速さのずれが規制される。このため、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士の干渉が回避されるとともに、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士の干渉も回避される。
【0059】
(作用効果)
上述のトラバース装置1によれば、歯付き伝動ベルト12によって複数のトラバースユニット13に対して同期した駆動力を伝達するため、複数のトラバースユニット13間において駆動力を伝達するためのギヤ機構が不要となる。このため、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット13間で駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがなく、一対の回転羽根(18、19)を互いに逆回転させて糸101を綾振りさせるトラバース制御を高精度に行うことができる。さらに、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット13間で駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがないため、騒音を抑制することができる。また、上述のトラバース装置1によれば、複数のトラバースユニット13の並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ通常の運転状態では、隣り合う第1駆動力伝達軸22に設けられた干渉回避カム21同士は当接せずに第1駆動力伝達軸22が回転し、隣り合う回転羽根(18、19)が同期して回転する通常の運転状態が維持される。一方、トラバース装置1において、歯付き伝動ベルト12の破損が生じた場合、複数のトラバースユニット13の並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じることになる。しかし、上述のトラバース装置1によると、隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じたときは、隣り合う第1駆動力伝達軸22に設けられた干渉回避カム21同士が当接し、隣り合う第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれが規制されて、隣り合う回転羽根(18、19)同士の干渉が防止される。よって、上述のトラバース装置1によると、高精度なトラバース制御を行うことができるとともに騒音を抑制でき、さらに、複数のトラバースユニット13が並ぶ方向で隣り合う回転羽根(18、19)同士が干渉してしまうことを好適に防止し、トラバース装置1の破損を防止することができる。
【0060】
また、上述のトラバース装置1によれば、第1駆動力伝達軸22の径方向で放射状に突出する複数の突起部21aが干渉回避カム21に設けられ、隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さのずれが生じたときには、突起部21a同士が当接し、隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さのずれが規制される。このため、隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さのずれを規制するための構造を第1駆動力伝達軸22の周方向に沿ってスペース効率よく配置した干渉回避カム21を構成することができる。したがって、干渉回避カム21をコンパクト化し、更に構造の簡素化を図ることができる。
【0061】
また、上記のトラバース装置1によれば、隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さのずれを規制する突起部21aが、干渉回避カム21の周方向に均等角度間隔で配置されている。このため、隣り合う第1駆動力伝達軸22において規制する回転速さのずれの量を正確にコントロールすることができる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係るトラバース装置2を示す斜視図である。
図9は、トラバース装置2の平面図である。
図10は、トラバース装置2の側面図である。
図11は、トラバース装置2のトラバースユニット30において駆動力を伝達する構成を模式的に示す図である。
図12は、トラバース装置2の制御構成の概略を示すブロック図である。なお、第2実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、重複する説明を省略する。
【0063】
図1、
図8~
図12を参照して、トラバース装置2は、糸条巻取機100に備えられ、糸条巻取機100の昇降フレーム107に装備されている。トラバース装置2は、パッケージ102として巻き取られる糸101を綾振りするトラバースユニット30を複数備え、複数のトラバースユニット30が左右方向に沿って直列に並んで設けられている。また、トラバース装置2は、複数のトラバースユニット30に加え、複数のトラバースユニット30のそれぞれに設けられる駆動モータ31を制御する制御部32を備えて構成されている。
【0064】
第2実施形態のトラバース装置2は、第1実施形態のトラバース装置1とは異なり、各トラバースユニット30の回転羽根(18、19)が、各トラバースユニット30に設けられた駆動モータ31によって駆動されるように構成されている。すなわち、トラバース装置2においては、駆動源としての1つの駆動モータ11と駆動モータ11からの駆動力を伝達する歯付き伝動ベルト12とは設けられておらず、各トラバースユニット30に備えられた駆動モータ31によって発生する駆動力によって回転羽根(18、19)が回転駆動されるように構成されている。
【0065】
図8~
図11を参照して、トラバース装置2における複数のトラバースユニット30のそれぞれは、駆動モータ31と、ハウジング16と、ハウジング16に設けられたトラバースガイド17と、一対の回転羽根(18、19)と、駆動力伝達機構20と、干渉回避カム21と、を備えて構成されている。トラバースユニット30におけるハウジング16、トラバースガイド17、一対の回転羽根(18、19)、駆動力伝達機構20、および干渉回避カム21は、第1実施形態のトラバースユニット13におけるハウジング16、トラバースガイド17、一対の回転羽根(18、19)、駆動力伝達機構20、および干渉回避カム21と同様に構成される。しかし、第2実施形態のトラバースユニット30は、第1実施形態のトラバースユニット13に対して、従動プーリ15が設けられておらず、駆動モータ31が設けられている点において異なっている。
【0066】
図8~
図11を参照して、駆動モータ31は、電動モータとして設けられ、各トラバースユニット30に設けられている。駆動モータ31は、例えば、同期モータとして構成されている。駆動モータ31は、各トラバースユニット30において一対の回転羽根(18、19)を互いに逆方向に回転させるための駆動力を発生させる駆動源として構成されている。駆動モータ31は、ハウジング16の上方に配置され、鉛直軸回りの回転駆動力を発生させるように配置されている。
【0067】
また、
図11を参照して、駆動モータ31の出力軸(図示省略)は、駆動力伝達機構20における第1駆動力伝達軸22に連結され、駆動モータ31の回転が第1駆動力伝達軸22に直接に入力されるように構成されている。すなわち、駆動モータ31の出力軸の下端部と第1駆動力伝達軸22の上端部とが互いに結合され、駆動モータ31の回転とともに第1駆動力伝達軸22が回転するように構成されている。なお、駆動モータ31の出力軸と第1駆動力伝達軸22とは、直接に連結される形態に限らず、駆動モータ31の出力軸に設けられたギヤと第1駆動力伝達軸22に設けられたギヤとの噛み合いを介して駆動力を伝達するように構成されていてもよい。
【0068】
駆動モータ31が回転すると、駆動モータ31によって駆動される第1駆動力伝達軸22が回転する。そして、第1駆動力伝達軸22が回転すると、ギヤ25、中間ギヤ28、およびギヤ27の噛み合いを介して、第1駆動力伝達軸22からの駆動力が第2駆動力伝達軸23に伝達され、第2駆動力伝達軸23が第1駆動力伝達軸22と同方向に回転する。そして、第2駆動力伝達軸23とともに回転羽根18が第1駆動力伝達軸22と同方向に回転する。さらに、第1駆動力伝達軸22が回転する際には、ギヤ26とギヤ27との噛み合いを介して、第1駆動力伝達軸22からの駆動力が第3駆動力伝達軸24に伝達され、第3駆動力伝達軸24が第1駆動力伝達軸22と逆方向に回転する。そして、第3駆動力伝達軸24とともに回転羽根19が第1駆動力伝達軸22と逆方向に回転する。よって、駆動モータ31が回転すると、駆動モータ31によって駆動される第1駆動力伝達軸22に対して、回転羽根18は同方向に回転し、回転羽根19は逆方向に回転する。このため、回転羽根18と回転羽根19とは、互いに逆方向に回転するように構成されている。
【0069】
また、
図8~
図12を参照して、複数のトラバースユニット30のそれぞれに設けられる駆動モータ31は、制御部32によって回転が制御されるように構成されている。すなわち、トラバース装置2には、制御部32が設けられ、複数のトラバースユニット30に設けられる複数の駆動モータ31は、いずれも、制御部32によって回転が制御されるように構成されている。なお、制御部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読みだしてRAMに展開し、展開したプログラムと協働して各駆動モータ31の動作を集中制御する。
【0070】
制御部32は、複数のトラバースユニット30にそれぞれ設けられる駆動モータ31を同じ回転速さで回転させるように制御するよう構成されている。さらに、制御部32は、並び方向Yにおいて隣り合う駆動モータ31を互いに逆方向に回転させるように制御するよう構成されている。すなわち、並び方向Yにおいて隣り合うトラバースユニット30の駆動モータ31は、制御部32の制御に基づいて、互いに逆方向に同じ回転速さで回転するように構成されている。このため、例えば、複数のトラバースユニット30のうちのいずれかのトラバースユニット30の駆動モータ31が上からみて時計回り方向に回転する場合は、その駆動モータ31に対して並び方向Yにおいて隣り合う駆動モータ31は、上から見て反時計回り方向に回転する。そして、並び方向Yにおいて互いに隣り合うとともに上から見て時計回り方向に回転する駆動モータ31と上から見て反時計回り方向に回転する駆動モータ31とは、互いに同じ回転速さで回転する。
【0071】
トラバース装置2においては、並び方向Yにおいて隣り合う駆動モータ31が互いに逆方向に同じ回転速さで回転するため、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22も、第1実施形態と同様に、互いに逆方向に同じ回転速さで回転する。そして、第1駆動力伝達軸22に設けられる干渉回避カム21に関しても、第1実施形態と同様に回転する。すなわち、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22が逆方向に同じ回転速さで回転するため、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21も、互いに逆方向に同じ回転速さで回転する。このため、例えば、複数のトラバースユニット30のうちのいずれかのトラバースユニット30の干渉回避カム21が上からみて時計回り方向に回転する場合は、その干渉回避カム21に対して並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21は、上から見て反時計回り方向に回転する。そして、並び方向Yにおいて互いに隣り合うとともに上から見て時計回り方向に回転する干渉回避カム21と上から見て反時計回り方向に回転する干渉回避カム21とは、互いに同じ回転速さで回転する。なお、
図9においては、上から見て時計回り方向に回転する干渉回避カム21の回転方向について、矢印R1で示しており、上から見て反時計回り方向に回転する干渉回避カム21の回転方向について、矢印R2で示している。
【0072】
また、複数のトラバースユニット30にそれぞれ設けられる干渉回避カム21は、第1実施形態における複数のトラバースユニット13にそれぞれ設けられる干渉回避カム21と同じ構成に構成されている。すなわち、トラバースユニット30の干渉回避カム21は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21同士が互いに干渉することがない角度差に設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。このため、複数のトラバースユニット30において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21同士で当接せずに第1駆動力伝達軸22とともに回転するように構成されている。また、トラバースユニット30の干渉回避カム21は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21の突起部21aの回転軌跡が一部重複するように構成されている。このため、複数のトラバースユニット30において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21は、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じると、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21の突起部21a同士が当接することで第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制するように構成されている。そして、干渉回避カム21は、突起部21a同士が当接して第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制することで、並び方向Yで隣り合う回転羽根(18、19)同士の干渉を回避させるように構成されている。
【0073】
上記のように、トラバース装置2においては、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム21同士が当接することがない。このため、トラバース装置2の通常の運転状態では、干渉回避カム21同士が当接することはない。しかし、複数のトラバースユニット30のいずれかにおいて駆動モータ31が故障した場合は、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じることになる。この場合は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム21同士が当接し、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれが規制される。このため、第1駆動力伝達軸22から第2駆動力伝達軸23を介して駆動力が伝達される回転羽根18についても、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士の回転速さのずれが規制される。同様に、第1駆動力伝達軸22から第3駆動力伝達軸24を介して駆動力が伝達される回転羽根19についても、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士の回転速さのずれが規制される。このため、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士の干渉が回避されるとともに、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士の干渉も回避される。
【0074】
なお、トラバース装置2においては、各トラバースユニット30において干渉回避カム21が第1駆動力伝達軸22に設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよい。トラバースユニット30の干渉回避カム21は、第1駆動力伝達軸22ではなく、第2駆動力伝達軸23または第3駆動力伝達軸24に設けられてもよい。干渉回避カム21が第2駆動力伝達軸23に設けられる場合は、例えば、第2駆動力伝達軸23は、回転羽根18を貫通して回転羽根18の下方に突出するように設けられる。そして、干渉回避カム21は、第2駆動力伝達軸23の下端部に取り付けられる。また、干渉回避カム21が第3駆動力伝達軸24に設けられる場合は、例えば、干渉回避カム21は、第1駆動力伝達軸22の下端部と回転羽根19の上面との間において第3駆動力伝達軸24に取り付けられる。
【0075】
上述のトラバース装置2によれば、各トラバースユニット30に個別に設けられた駆動モータ31によって、第1~第3駆動力伝達軸(22、23、24)を介して各トラバースユニット30の回転羽根(18、19)が回転駆動される。このため、複数のトラバースユニット30間において駆動力を伝達するためのギヤ機構が不要となる。これにより、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット30間において駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがなく、一対の回転羽根(18、19)を互いに逆回転させて糸101を綾振りさせるトラバース制御を高精度に行うことができる。さらに、ウォームギヤを用いて複数のトラバースユニット30間で駆動力を伝達する構成のようなガタの問題が生じることがないため、騒音を抑制することができる。そして、複数のトラバースユニット30の駆動モータ31は、制御部32の制御によって、同じ回転速さで回転するように制御されるため、複数のトラバースユニット30の回転羽根(18、19)が同期して回転する状態が維持される。また、上述のトラバース装置2によれば、複数のトラバースユニット30の並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ通常の運転状態では、隣り合う第1駆動力伝達軸22に設けられた干渉回避カム21同士は当接せずに第1駆動力伝達軸22が回転し、隣り合う回転羽根(18、19)が同期して回転する通常の運転状態が維持される。一方、トラバース装置2において、複数のトラバースユニット30のいずれかにて駆動モータ31の故障が生じた場合、複数のトラバースユニット30の並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じることになる。しかし、上述のトラバース装置2によると、隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じたときは、隣り合う第1駆動力伝達軸22に設けられた干渉回避カム21同士が当接し、隣り合う第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれが規制されて、隣り合う回転羽根(18、19)同士の干渉が防止される。よって、上述のトラバース装置2によると、高精度なトラバース制御を行うことができるとともに騒音を抑制でき、さらに、複数のトラバースユニット30が並ぶ方向で隣り合う回転羽根(18、19)同士が干渉してしまうことを好適に防止し、トラバース装置2の破損を防止することができる。
【0076】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0077】
(1)前述の実施形態では、トラバース装置(1、2)が、紡糸機から紡出された糸を巻き取る糸条巻取機100において装備される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。トラバース装置(1、2)は、糸をパッケージとして巻き取る機構を備えた繊維機械であれば適用することができるため、糸条巻取機100以外の繊維機械においてトラバース装置(1、2)が装備されてもよい。例えば、トラバース装置(1、2)が、仮撚加工機において装備される形態が実施されてもよい。
【0078】
(2)前述の実施形態では、干渉回避カム21が円盤状に設けられ、円盤状の干渉回避カム21の外周において径方向に沿って放射状に突出する複数の突起部21aが設けられた干渉回避カム21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。干渉回避カムの形状については、前述の実施形態で例示した形状に限らず、変更してもよい。例えば、径方向に沿って放射状に延びる複数の羽根が設けられた形状の干渉回避カムの形態が実施されてもよい。
【0079】
(3)また、干渉回避カムの形状については、複数のトラバースユニットのそれぞれにおいて同じ形状でなくてもよい。例えば、
図13および
図14に示すように、並び方向Yにおいて隣り合うトラバースユニットにおいて、交互に異なる形状の干渉回避カムが設けられた形態が実施されてもよい。
【0080】
図13は、変形例に係るトラバース装置1Aを示す斜視図であって、トラバース装置1Aの一部を示す図である。
図14は、トラバース装置1Aの平面図であって、トラバース装置1Aの一部を示す図である。
図13および
図14に示す変形例に係るトラバース装置1Aは、第1実施形態のトラバース装置1と同様に構成されるが、並び方向Yにおいて隣り合うトラバースユニット13において、交互に異なる形状の干渉回避カム(33、34)が設けられている点において、第1実施形態のトラバース装置1とは異なっている。なお、変形例に係るトラバース装置1Aの説明においては、第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、重複する説明を省略し、第1実施形態とは異なる干渉回避カム(33、34)の形態についてのみ説明する。
【0081】
図13及び
図14を参照して、トラバース装置1Aにおいては、並び方向Yにおいて隣り合うトラバースユニット13において、交互に異なる形状の干渉回避カム(33、34)が設けられている。トラバース装置1Aにおいては、干渉回避カム33が設けられたトラバースユニット13と、干渉回避カム33とは形状が異なる干渉回避カム34が設けられたトラバースユニット13とが、並び方向Yにおいて交互に並んでいる。すなわち、トラバース装置1Aにおいては、互いに形状の異なる干渉回避カム33と干渉回避カム34とが並び方向Yにおいて交互に並んで配置されている。
【0082】
干渉回避カム33は、円盤状に設けられ、円盤状の干渉回避カム33の外周において径方向に沿って放射状に突出する複数の突起部33aが干渉回避カム33の周方向に均等角度間隔で配置されている。干渉回避カム33の外周において周方向に均等角度間隔で配置されて径方向に突出する突起部33aの間には、U字状に湾曲して凹む溝が設けられている。すなわち、干渉回避カム33の外周で周方向に隣り合う突起部33a同士の間には、U字状に湾曲して凹む溝が設けられている。
【0083】
干渉回避カム33が設けられたトラバースユニット13に並び方向Yで隣り合うトラバースユニット13には、干渉回避カム33とは形状が異なる干渉回避カム34が設けられている。干渉回避カム34は、円盤状に設けられ、円盤状の干渉回避カム34の上面における外周の縁部分の近傍の領域には、干渉回避カム34の周方向に沿って上方に短く円柱状に突出する複数の凸部34aが設けられている。円盤状の干渉回避カム34の上面における外周の縁部分の近傍で上方に円柱状に突出する複数の凸部34aは、干渉回避カム34の上面において周方向に均等角度間隔で配置されている。
【0084】
並び方向Yにおいて隣り合うトラバースユニット13においては、干渉回避カム33と干渉回避カム34とが隣り合って配置されている。そして、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とは、干渉回避カム33の突起部33aの回転軌跡と干渉回避カム34の凸部34aの回転軌跡とが水平面と平行な平面上で一部重複するように、近接して配置されている。すなわち、干渉回避カム33の突起部33aが通過する領域である突起部33aの回転軌跡と、干渉回避カム33と並び方向Yで隣り合う干渉回避カム34の凸部34aが通過する領域である凸部34aの回転軌跡とが、一部重複するように設定されている。なお、干渉回避カム33の突起部33aの回転軌跡と、並び方向Yで干渉回避カム33と隣り合う干渉回避カム34の凸部34aの回転軌跡とが重複するため、干渉回避カム33の突起部33aの回転軌跡内に干渉回避カム34の凸部34aが侵入することになる。そこで、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とは、突起部33aと凸部34aとが互いに干渉することがない角度差が設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。なお、干渉回避カム33の突起部33aの回転軌跡内に干渉回避カム34の凸部34aが侵入するときには、凸部34aは、突起部33aと干渉することなく、干渉回避カム33の周方向に並ぶ突起部33aの間のU字状の溝に入り込む。
【0085】
上記のように、干渉回避カム(33、34)は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とが互いに干渉することがない角度差に設定された状態で互いに逆方向に回転するように構成されている。このため、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とは、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とが当接せずに第1駆動力伝達軸22とともに回転するように構成されている。すなわち、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とは、並び方向Yで隣り合っていて互いに逆方向に回転する第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合っていて互いに逆方向に回転する干渉回避カム33と干渉回避カム34とで当接することなく、第1駆動力伝達軸22とともに回転するように構成されている。
【0086】
また、干渉回避カム(33、34)は、干渉回避カム33の突起部33aの回転軌跡と、並び方向Yにおいて干渉回避カム33と隣り合う干渉回避カム34の凸部34aの回転軌跡とが一部重複するように構成されている。このため、複数のトラバースユニット13において並び方向Yで隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とは、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じると、干渉回避カム33の突起部33aと並び方向Yで干渉回避カム33に隣り合う干渉回避カム34の凸部34aとが当接することで、第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制するように構成されている。そして、干渉回避カム(33、34)は、干渉回避カム33の突起部33aと干渉回避カム34の凸部34aとが当接して第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制することで、並び方向Yで隣り合う回転羽根(18、19)同士の干渉を回避させるように構成されている。すなわち、干渉回避カム(33、34)は、並び方向Yで隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じると、干渉回避カム33の突起部33aと干渉回避カム34の凸部34aとが当接することで第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれを規制し、並び方向Yで隣り合う回転羽根18同士の干渉を回避させるとともに、並び方向Yで隣り合う回転羽根19同士の干渉を回避させるように構成されている。
【0087】
上記のように、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さが同じ状態では、並び方向Yで隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とが当接することがない。このため、トラバース装置1Aの通常の運転状態では、干渉回避カム33と干渉回避カム34とが当接することはない。しかし、歯付き伝動ベルト12が破損した場合は、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22の回転速さにずれが生じることになる。この場合は、並び方向Yにおいて隣り合う干渉回避カム33と干渉回避カム34とが当接し、並び方向Yにおいて隣り合う第1駆動力伝達軸22同士の回転速さのずれが規制される。このため、第1駆動力伝達軸22から第2駆動力伝達軸23を介して駆動力が伝達される回転羽根18についても、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士の回転速さのずれが規制される。同様に、第1駆動力伝達軸22から第3駆動力伝達軸24を介して駆動力が伝達される回転羽根19についても、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士の回転速さのずれが規制される。このため、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根18同士の干渉が回避されるとともに、並び方向Yにおいて隣り合う回転羽根19同士の干渉も回避される。
【0088】
(4)前述の実施形態では、径方向に沿って放射状に延びる羽根(18a、19a)が3枚設けられた回転羽根(18、19)の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。回転羽根において径方向に沿って放射状に延びる羽根の数は3枚に限られず、例えば、回転羽根における羽根の数が2枚或いは4枚である回転羽根の形態が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1、2 トラバース装置
11 駆動モータ
12 歯付き伝動ベルト
13、30 トラバースユニット
17 トラバースガイド
18、19 回転羽根
22 第1駆動力伝達軸(駆動力伝達軸)
23 第2駆動力伝達軸(駆動力伝達軸)
24 第3駆動力伝達軸(駆動力伝達軸)
31 駆動モータ
32 制御部
101 糸