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特開2024-106528不透液シートの継ぎ目検査方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106528
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】不透液シートの継ぎ目検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20240801BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01M3/26 M
E21D11/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010824
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
(72)【発明者】
【氏名】扇畑 邦史
(72)【発明者】
【氏名】細田 優介
(72)【発明者】
【氏名】新木 光昭
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴暁
(72)【発明者】
【氏名】日向 雄紀
【テーマコード(参考)】
2D155
2G067
【Fターム(参考)】
2D155HA07
2G067AA48
2G067CC04
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】不透液シートの継ぎ目検査において、継ぎ目の検査区間の長さを容易に把握できるようにして、省力化する。
【解決手段】設置対象1に互いに隣接して設置された不透液シート2の縁2eどうしの継ぎ目3における、検査しようとする線状隙間部分3Rcの長さ方向の両端を閉じ、その線状隙間部分3Rc内に検査ガスを設定圧になるまで導入した後、線状隙間部分3Rcの圧力に基づいて継ぎ目3の良否を検査する。流量計18によって、前記導入時における記検査ガスの線状隙間部分3Rcへの積算導入流量を測る。処理部30によって、線状隙間部分3Rcの幅と前記積算導入流量とに基づいて、線状隙間部分3Rcの長さを算定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象に互いに隣接して設置された不透液シートの縁どうしが重ね合わされて互いの間に線状隙間が画成されるよう溶着されて形成された継ぎ目における、前記線状隙間の検査しようとする線状隙間部分の長さ方向の両端を閉じ、前記閉じられた線状隙間部分内に検査ガスを設定圧になるまで導入した後、前記線状隙間部分の圧力に基づいて継ぎ目の良否を検査する方法において、
前記導入時における前記検査ガスの前記線状隙間部分への積算導入流量を測る工程と、
前記線状隙間部分の幅と前記積算導入流量とに基づいて前記線状隙間部分の長さを算定する工程と
を備えたことを特徴とする不透液シートの継ぎ目検査方法。
【請求項2】
前記不透液シート又は前記検査ガス又は周辺部の温度を検知する工程を更に含み、
前記幅と前記設定圧と前記積算導入流量と検知温度に基づいて前記算定を行なう請求項1に記載の継ぎ目検査方法。
【請求項3】
設置対象に互いに隣接して設置された不透液シートの縁どうしが重ね合わされて互いの間に線状隙間が画成されるよう溶着されて形成された継ぎ目の前記線状隙間における、長さ方向の両端が閉じられた線状隙間部分内に検査ガスを設定圧になるまで導入した後、前記線状隙間部分の圧力に基づいて継ぎ目の良否を検査する装置において、
前記導入時の前記検査ガスの前記線状隙間部分への積算導入流量を測る流量測定手段と、
前記線状隙間部分の幅と前記積算導入流量とに基づいて前記線状隙間部分の長さを算定する長さ算定部と
を備えたことを特徴とする不透液シートの継ぎ目検査装置。
【請求項4】
前記不透液シート又は前記検査ガス又は周辺部の温度を検知する温度計を更に含み、
前記長さ算定部が、前記幅と前記設定圧と前記積算導入流量と、前記温度計による検知温度に基づいて前記算定を行なう請求項3に記載の継ぎ目検査装置。
【請求項5】
前記流量測定手段が、質量流量計を含む請求項3に記載の継ぎ目検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不透液シートの継ぎ目の良否を検査する方法及び装置に関し、特にトンネル、産業廃棄物処分場等の大面積の土木構造物や建築構造物に設置された不透液シートに適した継ぎ目検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネル掘削面や産業廃棄物処分場などの設置対象に、防止シートや遮水シート等の不透液シートを敷き詰めるように設置して、地下水が漏れ出たり、汚水が地下に浸透したりするのを防止することは公知である(特許文献1等参照)。通常、この種の設置対象は、1枚の不透液シートの幅より 大面積であるから、設置対象上に複数の不透液シートが並べられて敷き詰められる。隣接する不透液シートの縁どうしは重ね合わされて、溶着機によって溶着されることにより継ぎ目が形成される。継ぎ目の内部には、その長手方向に沿って線状隙間が画成される(特許文献2、3等参照)。
【0003】
継ぎ目の良否を検査する際は、継ぎ目における検査する区間を選択して、その区間の線状隙間(以下「線状隙間部分」と称す)の両端をクランプ等で閉塞したうえで、線状隙間部分に設定圧の圧縮空気等の検査ガスを導入して、線状隙間部分の圧力変化を監視する。継ぎ目の溶着状態が良好であれば、線状隙間部分が加圧状態に維持される。継ぎ目の溶着状態が不良であると、その不良箇所から空気が漏れ、線状隙間部分の圧力が低下する。これによって、継ぎ目の良否を判定できる(特許文献2、3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-198585号公報
【特許文献2】特開7074918号公報
【特許文献3】特開7092739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記継ぎ目の良否検査においては、圧縮空気を導入した際の不透液シートの伸びや圧縮空気導入用の針の周辺からの漏れ等を考慮して、一定時間(例えば2分間)、設定圧に対し一定割合(例えば80%以内)の圧力が維持されるかを検査する。一方、圧力の低下度合は、検査区間の線状隙間部分の容積ひいては長さに依存する。現状では、検査報告書に、前記継ぎ目の圧力測定結果に加えて、巻き尺や目測で測った線状隙間部分の長さを記入し、更に継ぎ目を撮影した写真を付けている。しかし、巻き尺による測定は煩雑で時間がかかる。継ぎ目が直線でなく曲がっていて、巻き尺が不向きな場合もある。目視の測定が不正確であることは言うまでもない。
本発明は、かかる事情に鑑み、防止シートや遮水シート等の不透液シートの継ぎ目検査において、継ぎ目の検査区間の長さを容易に把握できるようにして、省力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明方法は、設置対象に互いに隣接して設置された不透液シートの縁どうしが重ね合わされて互いの間に線状隙間が画成されるよう溶着されて形成された継ぎ目における、前記線状隙間の検査しようとする線状隙間部分の長さ方向の両端を閉じ、前記閉じられた線状隙間部分内に検査ガスを設定圧になるまで導入した後、前記線状隙間部分の圧力に基づいて継ぎ目の良否を検査する方法において、
前記導入時における前記検査ガスの前記線状隙間部分への積算導入流量を測る工程と、
前記線状隙間部分の幅と前記積算導入流量とに基づいて前記線状隙間部分の長さを算定する工程と
を備えたことを特徴とする。
当該方法によれば、線状隙間部分すなわち検査区間の長さを巻き尺で測ったり目測で推定したりすることなく算定でき、作業者の負担が軽減される。
【0007】
好ましくは、前記不透液シート又は前記検査ガス又は周辺部の温度を検知する工程を更に含み、前記幅と前記設定圧と前記積算導入流量と検知温度に基づいて前記算定を行なう。
設定圧と積算導入流量と検知温度にボイル・シャルルの法則を適用することによって、線状隙間部分の体積(容積)が求まる。該体積と前記幅から線状隙間部分の長さが求まる。
【0008】
本発明装置は、設置対象に互いに隣接して設置された不透液シートの縁どうしが重ね合わされて互いの間に線状隙間が画成されるよう溶着されて形成された継ぎ目の前記線状隙間における、長さ方向の両端が閉じられた線状隙間部分内に検査ガスを設定圧になるまで導入した後、前記線状隙間部分の圧力に基づいて継ぎ目の良否を検査する装置において、
前記導入時の前記検査ガスの前記線状隙間部分への積算導入流量を測る流量測定手段と、
前記線状隙間部分の幅と前記積算導入流量に基づいて、前記線状隙間部分の長さを算定する長さ算定部と
を備えたことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、温度計を更に含み、前記長さ算定部が、前記幅と前記設定圧と前記積算導入流量と、前記温度計による検知温度に基づいて前記算定を行なう。前記温度計は、前記不透液シートの温度を検知してもよく、前記検査ガスの温度を検知してもよく、周辺部の温度ないしは気温を検知してもよい。
【0010】
好ましくは、前記流量測定手段が、質量流量計を含む。これによって、流量測定手段で得られた積算導入流量をそのまま又は所定の較正係数を乗じることで線状隙間部分の体積とすることができ、温度計で温度検知をしなくても、前記設定圧を計算に入れなくても、線状隙間部分の長さ算定を行なうことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不透液シートの継ぎ目検査において、継ぎ目の検査区間の長さを容易に把握でき、省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る継ぎ目検査装置を、設置対象の一例である産業廃棄物処分場に設置された不透液シートの継ぎ目を良否点検する状態で示す解説図である。
図2図2(a)は、前記継ぎ目の検査区間を検査ガス導入前の状態で示す、図1のIIa-IIa線に沿う断面図である。図2(b)は、前記継ぎ目の検査区間を検査ガス導入状態で示す断面図である。
図3図3は、前記継ぎ目検査装置の処理部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る継ぎ目検査装置を、設置対象の一例である産業廃棄物処分場に設置された不透液シートの継ぎ目を良否点検する状態で示す解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図3)>
図1に示すように、設置対象の産業廃棄物処分場1(土木構造物)には、複数枚の不透液シート2(遮水シート)が敷き詰められるように設置されている。隣接する不透液シート2の縁2eどうしが互いに上下に重ね合わされて溶着されることによって、縁2eに沿って延びる継ぎ目3が形成されている。
【0014】
図1及び図2(a)に示すように、継ぎ目3には、2列の溶着ライン3aが形成されている。これら溶着ライン3aは、図1において仮想線で示す溶着機4の2列の挟付けローラ4aによって形成されたものである。これら溶着ライン3aの間における上下の不透液シート2の縁部分によって、線状隙間3cが画成されている。線状隙間3cは、継ぎ目3に沿って線状に延びている。
【0015】
不透液シート2の継ぎ目3の一部分が検査区間3Rとして選択されて、継ぎ目検査装置10によって継ぎ目3の溶着施工の良否が検査される。
図1に示すように、継ぎ目検査装置10は、筐体11(装置本体)と、検査ガス路20と、処理部30とを備えている。検査ガス路20は、供給管21と、内部配管22と、検査ガス導入管23を含む。好ましくは、筐体11ひいては継ぎ目検査装置10は人力で容易に持ち運び可能な重量及び大きさになっている。
【0016】
供給管21には、圧縮空気ポンプ12と、開閉バルブ13と、レギュレーター14(圧力調整弁)と、流速調整弁15とが上流側から順次設けられている。上流端の圧縮空気ポンプ12は、電動式や油圧駆動式でもよく、人力で駆動される手押しポンプや足漕ぎポンプでもよい。開閉バルブ13は、手動開閉式であるが、自動開閉可能な電磁バルブであってもよい。
レギュレーター14は、圧縮空気ポンプ12からの圧縮空気(検査ガス)の二次圧を設定圧になるよう調節する。
【0017】
筐体11内に内部配管22が収容されている。内部配管22の上流端が、上流側接続ポート24を介して供給管21の下流端と連なっている。内部配管22の下流端が、下流側接続ポート25を介して検査ガス導入管23と連なっている。検査ガス導入管23は、筐体11から不透液シート2の継ぎ目3へ延びている。検査ガス導入管23の先端には、針状ノズル26が設けられている。
【0018】
筐体11内には、フィルター16と、圧力計17と、流量計18と、プリント基板40(信号処理回路モジュール)が収容されている。内部配管22の上流側からフィルター16と圧力計17と流量計18とが、この順に並んで内部配管22に介在されている。流量計18は、体積流量計によって構成されている。
【0019】
プリント基板40は、検知信号入力部41と、信号変換部42と、出力部43と、GPSモジュール44を含む。圧力計17及び流量計18からの検知信号線が、それぞれ検知信号入力部41に接続されている。さらに、検知信号入力部41には、温度計19からの検知信号線が接続されている。温度計19は、例えば熱電対によって構成されている。温度計19は、筐体11外に配置されており、例えば不透液シート2の継ぎ目検査部分の近くに設置されているが、検査ガス路20上に設置されていてもよく、筐体11に設置されていてもよい。
【0020】
信号変換部42は、検知信号入力部41に入力されたアナログの検知信号をデジタル変換する。
出力部43は、デジタル変換された検知信号を有線又は無線で出力する。
【0021】
処理部30は、パーソナルコンピューター(以下「PC」と称す)によって構成され、好ましくは携帯可能なPCによって構成されている。携帯可能なPCとしては、ノートPC、スマートフォン、タブレット等が挙げられる。より好ましくは、処理部30は、スマートフォンによって構成されている。
【0022】
図3に示すように、処理部30は、CPU31と、通信部32と、記憶部33を含む。記憶部33には、良否判定プログラム34及び長さ算定プログラム35が格納されるとともに、継ぎ目良否情報蓄積領域36が設けられている。良否判定プログラム34によって、処理部30のCPU31が継ぎ目3の良否判定処理を実行する。良否判定プログラム34を実行時のCPU31は、良否判定部31aとして機能する。
【0023】
長さ算定プログラム35によって、処理部30のCPU31が、継ぎ目3の検査区間3Rの長さを算定する処理を実行する。長さ算定プログラム35を実行時のCPU31は、長さ算定部31bとして機能する。
【0024】
算定に用いられる不変量は、記憶部33に予め記憶されている。不変量としては、検査区間3Rにおける線状隙間3c(以下「線状隙間部分3Rc」)の幅W、及びレギュレーター14の設定圧Pが挙げられる。図2(a)に示すように、ここで言う線状隙間部分3Rcの幅Wは、内部にガス圧が導入されていない扁平な状態での線状隙間部分3Rcの幅であり、線状隙間3cの幅と等しく、前記溶着機4の2列の挟付けローラ4aの間隔d4(図1)によって規定される。
なお、幅Wに代えて、後述する幅相関値(断面積S、直径D、半径r等)を記憶部33に記憶させておいてもよい。
【0025】
図3に示すように、継ぎ目良否情報蓄積領域36には、取得された継ぎ目良否情報が蓄積される。継ぎ目良否情報は、継ぎ目3の良否判定結果の他、継ぎ目3の検査区間3Rの長さ等を含む。
【0026】
継ぎ目検査装置10による継ぎ目検査は、次のようにしてなされる。
図1に示すように、継ぎ目3における検査する区間3Rを選択して、その区間3Rの長手方向の両端をクランプ5によって表裏両側から挟み付ける。これによって、線状隙間部分3Rcの長手方向の両端を閉塞する(閉じ工程)。好ましくは、継ぎ目検査装置10の筐体11を検査区間3Rの近くに設置する。
【0027】
続いて、針状ノズル26を、区間3Rにおける上側の不透液シート2に突き刺し、針状ノズル26の先端を閉塞された線状隙間部分3Rc内に臨ませる。
次いで、開閉バルブ13を開き、圧縮空気ポンプ12を作動させる。これによって、圧縮空気ポンプ12からの圧縮空気(検査ガス)が、レギュレーター14によって設定圧になるよう圧力調節されたうえで、内部配管22を経て、検査ガス導入管23から線状隙間部分3Rc内へ導入される(導入工程)。図2(b)に示すように、これによって、継ぎ目3の検査区間3Rひいては線状隙間部分3Rcの断面が、円形に変形される。
【0028】
このとき、流量計18によって、圧縮空気の瞬間流量が一定時間間隔で検知される。又は積算流量が測定される(流量測定工程)。
流量計18からの瞬間流量又は積算流量を示す検知信号は、プリント基板40の検知信号入力部41に入力され、信号変換部42によってデジタル変換されたうえで、出力部43から処理部30へ送信される。
【0029】
処理部30は、瞬間流量の検知信号を受信した場合、その検知流量を積算することによって、導入工程中の線状隙間部分3Rcへの積算導入流量を求める。この場合、流量計18及び処理部30によって、流量測定手段が構成される。
流量計18が前記導入工程中の圧縮空気の積算導入流量を測定可能な場合は、流量計18が単独で流量測定手段を構成し得る。
【0030】
圧縮空気の導入によって線状隙間部分3Rcの内圧が上昇する。該内圧がレギュレーター14の設定圧に達したら開閉バルブ13を閉じる。これによって、前記導入工程が終了する。
【0031】
次に、圧力計17によって線状隙間部分3Rcの圧力が検知される。好ましくは、導入工程の終了後、数分間、圧力検知を行なう。圧力計17による検知信号(検知圧力)は、プリント基板40の検知信号入力部41に入力され、信号変換部42によってデジタル変換されたうえで、出力部43から処理部30へ送信される。
【0032】
処理部30の良否判定部31aは、検知圧力に基づいて、継ぎ目の良否を判定する。具体的には、導入工程の終了から所定時間(例えば2分)が経過するまで、検知圧力が閾値(例えば設定圧の80%)を下回らないか否かを判定する。検査区間3Rにおける継ぎ目3の溶着状態が良好であれば、検知圧力すなわち線状隙間部分3Rcの内圧が設定圧の例えば80%以上に維持される。継ぎ目3の溶着状態が不良であると、その不良箇所から空気が漏れ、線状隙間部分3Rcの内圧が設定圧の80%を下回る。これによって、継ぎ目の良否を判定できる。
検知圧力及び判定結果は、継ぎ目良否情報の主情報として、記憶部33の検査データ蓄積領域36に蓄積される。
【0033】
さらに、温度計19によって不透液シート2の温度が検知される。好ましくは、検査区間3R又はその近傍の温度が検知される。或いは、圧縮空気(検査ガス)の温度又は周辺温度(気温)が検知されるようにしてもよい。
温度計19から検知温度Tを示す検知信号が、検知信号入力部41に入力され、信号変換部42によってデジタル変換されたうえで、出力部43から処理部30へ送信される。
【0034】
処理部30の長さ算定部31bは、設定圧Pと、積算導入流量Vと、検知温度Tと、線状隙間部分3Rcの幅Wとに基づいて、線状隙間部分3Rcの長さLを算定する。詳しくは、設定圧Pと積算導入流量Vと検知温度Tとにボイル・シャルルの法則を適用することによって、空気(検査ガス)を一定状態で線状隙間部分3Rcへ導入したと仮定したときの積算導入流量Vが求まる(式1)。前記一定状態は、例えばP=1気圧、T=20℃又は0℃の標準状態であり、式1によって求められた積算導入流量Vは、線状隙間部分3Rcの体積に相当する。
=f(P,P,T,T)・V (式1)
式1において、右辺第1項は、P,P,T,Tを変数又は定数として含むボイル・シャルルの法則に基づく関数である。
【0035】
図2(b)に示すように、ここで言う線状隙間部分3Rcの体積Vは、線状隙間部分3Rcを円形の断面にしたとき、すなわち断面積SをS=W/πとしたときの線状隙間部分3Rcの容積である。したがって、式2又は式3によって、線状隙間部分3Rcの長さLが求まる。
L=π・V/W (式2)
L=V/S (式3)
【0036】
断面積Sは、幅Wと相関する幅相関値である。つまり、直接的には幅相関値に基づいて長さLを求めることによって(式3)、実質的に幅Wに基づいて長さLを求める(式2)ことにしてもよい。断面積S以外の幅相関値としては、線状隙間部分3Rcを円形断面にしたときの直径D(=2W/π)や半径r(=W/π)が挙げられる。長さLの算出にあたって、温度Tの変化によるシート材料の伸縮を考慮した補正を行なってもよい。
【0037】
このようにして算定された線状隙間部分3Rcすなわち検査区間3Rの長さLのデータは、継ぎ目良否情報の付加情報ないしは参照情報として、前記主情報の検知圧力及び良否判定結果と共に、記憶部33のデータ蓄積領域36に蓄積される。
【0038】
更に好ましくは、継ぎ目良否情報は、検査区間3Rの位置情報、検査日時などを含む。位置情報は、GPSモジュール44によって計測されるが、処理部30の内蔵GPS機能を用いてもよい。設置対象の産業廃棄物処分場1を表したマップ上に検査区間3Rの位置を標示した画像をディスプレイ表示するようにしてもよい。この場合、マップ上の位置情報と、GPSで測定される実際の位置情報とを、少なくとも2点で予め関連付けておくことが好ましい。
【0039】
処理部30は、継ぎ目良否情報を検査報告書などの形式で出力可能である。
検査報告書には、継ぎ目の良否判定結果に加えて、検査区間3Rの長さLが表記されることによって、良否判定結果の妥当性を判断できる。
【0040】
継ぎ目検査装置10によれば、継ぎ目の良否検査と併行して、検査区間3Rの長さLを自動的に算定できるから、別途、作業者が巻き尺や目視で検査区間3Rの長さLを測定する必要が無く、省力化できる。これによって、作業者の負担を軽減できる。検査区間3Rが曲がっていたとしても、容易に長さLを算定できる。目視による計測よりも信頼性を高めることができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図4)>
図4に示すように、第2実施形態の継ぎ目検査装置10Bにおいては、流量測定手段の流量計として質量流量計18Bが用いられている。継ぎ目検査装置10Bには、温度計19(図1)が設けられていない。
【0042】
質量流量計18Bは、圧縮空気(検査ガス)の質量流量(kg/sec)を検知する。質量流量は、圧力及び温度が変化しても同じ値を示すから、実質的に標準状態等の一定状態に換算した体積流量(m/sec)と等価になる。つまりは、質量流量計18Bによる検知信号は、実質的に標準状態等の一定状態での体積流量を示す検知信号として処理部30へ出力される。
【0043】
このため、圧縮ガス(検査ガス)の導入工程によって得られた積算導入流量の計測値が、そのまま又は所定の較正係数を乗じるだけで、標準状態等の一定状態での線状隙間部分3Rcの体積Vを表し得る。したがって、設定圧Pを読み込んだり温度検知をしたりしなくても、線状隙間部分3Rcの長さLを簡単に算定することができる(式1~式3参照)。
【0044】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、不透液シートの設置対象は、産業廃棄物処分場に限らず、河川敷、貯水池、トンネルその他の土木構造物でもよく、更に土木構造物に限らず、ビル屋上などの建築構造物であってもよい。
不透液シートは、遮水シートに限らず、トンネル周面等に張設される防水シートであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば産業廃棄物処分場における遮水シートや、トンネルにおける防水シートの設置施工に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 産業廃棄物処分場(設置対象)
2 遮水シート(不透液シート)
2e 縁
3 継ぎ目
3a 2列の溶着ライン
3c 線状隙間
3R 継ぎ目3の一部分(検査区間)
3Rc 線状隙間部分
10,10B 継ぎ目検査装置
11 筐体(装置本体)
12 圧縮空気ポンプ(圧力源)
13 開閉バルブ
14 レギュレーター(圧力調整弁)
17 圧力計
18 体積流量計(流量測定手段)
18B 質量流量計(流量測定手段)
19 温度計
20 検査ガス路
23 検査ガス導入管
26 針状ノズル
30 パーソナルコンピューター(処理部)
31 CPU
31a 良否判定部
31b 長さ算定部
32 通信部
33 記憶部
34 良否判定プログラム
35 長さ算定プログラム
36 継ぎ目良否情報蓄積領域
40 プリント基板(信号処理回路モジュール)
41 検知信号入力部
42 信号変換部
43 出力部
44 GPSモジュール
図1
図2
図3
図4