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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106530
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】鋼矢板の矯正装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/10 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B21D3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010826
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】松浦 潔
(72)【発明者】
【氏名】梶 國男
(72)【発明者】
【氏名】西尾 慧太
(57)【要約】
【課題】 底受け金型の鋼矢板収納凹部を設けることなく、矯正部における鋼矢板の幅方向の位置決めを行うことができる、鋼矢板の矯正装置を提供する。
【解決手段】 矯正部に鋼矢板100のウェブ部の底面を受ける平坦な受け面部32を有する底受け台31を設置し、この受け面部32の左右に、受け面部32上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部33を設けることにより、受け面部32上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部の外側面を、フランジ部の変形度合いに応じて、押込み部33によって外側から内側に向かって押し込む押込み量を変化させることにより、ウェブ部の幅中心を底受け台31の幅中心に位置決めすることができるようにした。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ部と、前記ウェブ部の幅方向両端から立ち上がる二つのフランジ部と、前記二つのフランジ部の先端にそれぞれ設けられた継手部とを有する鋼矢板の長手方向に沿った搬送経路中に、鋼矢板の変形箇所を正規形状に矯正する矯正部を有する鋼矢板の矯正装置において、前記矯正部に前記ウェブ部の底面を受ける底受け台を備え、前記底受け台を、平坦な受け面部と、この受け面部の左右両端に位置し、受け面部上に搬送されてきた鋼矢板のフランジ部の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部と、によって構成したことを特徴とする鋼矢板の矯正装置
【請求項2】
前記矯正部が、鋼矢板の搬送方向の上流側から下流側に向かって複数設置されている請求項1記載の鋼矢板の矯正装置。
【請求項3】
前記押込み部が、鋼矢板の長手方向に対して平行な回動軸により回動自在に、前記受け面部に設けられた回転アームと、この回転アームの外側面を外側から押して回転アームを開閉させる押込みアクチュエータとからなる請求項1又は2記載の鋼矢板の矯正装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として土木用途に用いられるU型鋼矢板の反りや曲がり等の歪みを矯正する鋼矢板の矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建築工事に際し、掘削土留め、止水壁などの目的で用いられる鋼矢板100は、図22に示すように、ウェブ部102と、このウェブ部102の両端から立ち上がる一対のフランジ部103とによって断面溝型に形成されており、フランジ部103の先端にフック状の継手部104が形成されている。鋼矢板100は、交互に向きを反転させて複数の鋼矢板100を互いに継手部104を係合させることにより幅方向に連結することができるようになっている。また、図22に例示する鋼矢板100は、フランジ部103の上端寄りに、内側に向かって緩やかに屈曲する屈曲部105を有する。
【0003】
この種の鋼矢板100では、土中への打ち込みや引き抜く際の衝撃等に起因して、ウェブ部102に対しフランジ部103が開く方向へ変形(以下、開き変形という)したり、ウェブ部102に対しフランジ部103が閉じる方向へ変形(以下、閉じ変形という)したりすることがある。また、鋼矢板100にかかる土圧や水圧等に起因して隣接する鋼矢板100を幅方向に離間する力が作用したり、継手部104に土等が入り込んだりすることにより、継手部104が開き方向に変形(以下、継ぎ手変形という)することがあった。
【0004】
そして、このように一度使用して変形してしまった鋼矢板100は、矯正装置を用いて正規の形状に矯正したうえで再利用に供している。この従来の矯正装置としては、特許文献1(特開2007-296549号公報)、特許文献2(特開2018-30158号公報)、あるいは特許文献3(特開2018-131329号公報)に開示されたものがある。
【0005】
これら従来の矯正装置は、鋼矢板100の長手方向に沿った搬送経路中に、ウェブ部102とフランジ部103に押圧及び引っ張りを与えて鋼矢板100の変形箇所を正規形状に矯正する矯正部を備えている。
【0006】
矯正部には、図23に示すように、搬送されてきた鋼矢板100のウェブ部102の底面と、ウェブ部102の両端に位置するフランジ部103の立ち上がり部分とを収容する、鋼矢板収納凹部201aを有する底受け金型201を設置し、搬送されてきた鋼矢板100を、底受け金型201の鋼矢板収納凹部201aに嵌め入れることにより、矯正部における鋼矢板100の幅方向位置の位置決めを行っている。
【0007】
この矯正部における鋼矢板100の幅方向位置を位置決めする位置決め機構としての底受け金型201の鋼矢板収納凹部201aは、鋼矢板100のウェブ部102の底面を受ける受け面201aaと、この受け面201aaの幅方向両端から一体に立ち上がる立上り壁201abとによって形成されている。
【0008】
矯正部に搬送されてきた鋼矢板100は、底受け金型201の鋼矢板収納凹部201a上において下降し、ウェブ部102の底面と、このウェブ部102の両端のフランジ部103の立ち上がり部分が、底受け金型201の鋼矢板収納凹部201aに嵌まり、幅方向にずれがある状態で矯正部に鋼矢板100が搬送されてきても、鋼矢板収納凹部201aの立上り壁201abによって、鋼矢板100のウェブ部102の幅方向の中心が、底受け金型201の幅方向の中心に一致するように位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-296549号公報
【特許文献2】特開2018-30158号公報
【特許文献3】特開2018-131329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、鋼矢板100の変形具合いによっては、底受け金型201の鋼矢板収納凹部201aに、鋼矢板100のウェブ部102とその両端の立ち上がり部分が嵌まらず、鋼矢板100が鋼矢板収納凹部201aの立上り壁201abに乗り上げ、鋼矢板100の幅方向の中心を、底受け金型201の幅方向の中心に一致させることができないことがあった。
【0011】
矯正部に供給される鋼矢板100の幅方向の中心と、底受け金型201の幅方向の中心とが一致しない状態で矯正作業を行うと、鋼矢板100の変形箇所を正規形状に矯正することができない。
【0012】
また、底受け金型201の鋼矢板収納凹部201aを構成する立ち上がり壁201abに、鋼矢板100が乗り上げた状態で矯正作業を行うと、底受け金型201の左右の立ち上がり壁201abに、矯正押し型の負荷がかかり立ち上がり壁201abが破損するという懸念もある。
【0013】
そこで、本発明は、底受け金型の表面に、鋼矢板収納凹部を設けることなく、矯正部における鋼矢板の幅方向の位置決めを行うことができる、鋼矢板の矯正装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、ウェブ部と、前記ウェブ部の幅方向両端から立ち上がる二つのフランジ部と、前記二つのフランジ部の先端にそれぞれ設けられた継手部とを有する鋼矢板の長手方向に沿った搬送経路中に、鋼矢板のウェブ部とフランジ部に押圧及び引っ張りを与えて鋼矢板の変形箇所を正規形状に矯正する矯正部を有する鋼矢板の矯正装置において、前記矯正部に前記ウェブ部の底面を受ける底受け台を備え、前記底受け台を、平坦な受け面部と、この受け面部の左右両端に位置し、受け面部上に搬送されてきた鋼矢板のフランジ部の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部と、によって構成したことを特徴とする。
【0015】
前記矯正部は、鋼矢板の搬送方向の上流側から下流側に向かって複数設置してもよい。
【0016】
さらに、前記押込み部は、鋼矢板の長手方向に対して平行な回動軸により回動自在に、前記受け面部に設けられた回転アームと、この回転アームの外側面を外側から押して回転アームを開閉させる押込みアクチュエータとによって構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る鋼矢板の矯正装置によれば、矯正部の底受け台を、平坦な受け面部と、この受け面部の左右両端に位置し、受け面部上に搬送されてきた鋼矢板のフランジ部の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部とによって構成しているので、鋼矢板が幅方向へのずれがある状態で矯正部に搬送されてきた場合でも、ウェブ部の下面が平坦な受け面部に載置され、受け面部上に搬送されてきた鋼矢板のフランジ部の外側面を、フランジ部の変形度合いに応じて、押込み部によって外側から内側に向かって押し込む押込み量を変化させることにより、ウェブ部の幅中心を底受け台の幅中心に位置決め、即ち、鋼矢板を矯正部の中心に合わせてセンタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の全体構成を示す正面図である。
図2】鋼矢板の矯正装置に用いられる搬送装置の構成を示す正面図である。
図3図2の搬送装置の拡大側面図である。
図4図2の搬送装置に鋼矢板の変形度合いを測定する計測部を備えた正面図である。
図5図4の拡大側面図である。
図6図1のA―A線の拡大断面図である。
図7図1のB―B線の拡大断面図である。
図8】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図9】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図10】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図11】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図12】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図13】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図14】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図15】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の下流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図16】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の下流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図17】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の下流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図18】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の下流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図19】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図20】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図21】本発明に係る鋼矢板の矯正装置の上流側矯正部の動作例を示す部分側面図である。
図22】鋼矢板の側面図である。
図23】従来の鋼矢板の矯正装置における鋼矢板の位置決め機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る鋼矢板の矯正装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る鋼矢板100の矯正装置1の全体構成を示す側面図である。本実施形態に係る鋼矢板100の矯正装置1は、図1に示すように、鋼矢板100を長手方向に搬送する二つの搬送装置2a,2bの間に、ウェブ部102とフランジ部103に押圧及び引っ張りを与えることにより、鋼矢板100の変形箇所を正規形状に矯正する矯正部を備えており、この矯正部は、鋼矢板100の搬送方向の上流側から下流側に向かって、上流側矯正部3aと下流側矯正部3bに分かれている。
【0020】
搬送装置2a,2bと、上流側矯正部3aと、下流側矯正部3bは、図示しない制御演算部により動作制御されており、後述する鋼矢板100の搬送や矯正動作については、制御演算部に格納された動作プログラムにしたがって行われる。
【0021】
搬送装置2a,2bは、上流側矯正部3aと下流側矯正部3bを挟んで、上流側と下流側にそれぞれ設けられている。上流側と下流側の搬送装置2a,2bは、共通した構成を有し、鋼矢板100をその長手方向に沿って水平に搬送する。
【0022】
図2図3に示すように搬送装置2a,2bは、設置ベース4とローラユニット5とで構成されている。設置ベース4は、ローラユニット5の上下位置を変更可能に支持し、搬送面を上下させることができる。図2及び図3には、二点鎖線で、ローラユニット5を上昇させた位置を示している。
【0023】
設置ベース4は、ローラユニット5の支持機構として、油圧シリンダ6と、油圧シリンダ6により回動可能に取り付けられたリンク7とを備える。リンク7は、ローラユニット5の両端に設けられ、油圧シリンダ6の伸縮により、ローラユニット5が上下方向に平行移動し、ウェブ部102が載置される搬送面の高さが変位する。
【0024】
ローラユニット5は、図3に示すように、搬送フレーム9に複数の搬送ローラ10が設けられており、搬送ローラ10が駆動することによって、その上に配置された鋼矢板100を搬送する。搬送ローラ10は、鋼矢板100のウェブ部102の底面を支持する主ローラ10aと、ウェブ部102の外側に位置し、フランジ部103の下端部分を両側から支持するガイドローラ10bとが一つの回動軸10cに設けられており、鋼矢板100の幅方向の位置ずれを防止する。
【0025】
搬送ローラ10を駆動させる駆動手段としては、モータ11が設けられている。モータ11とすべての搬送ローラ10は、チェーン12で連結されており、モータ11の回転が搬送ローラ10に伝達されて、すべての搬送ローラ10が同じ動作をする。
【0026】
上流側の搬送装置2aには、図4及び図5に示すように、上流側矯正部3aに搬入される鋼矢板100との距離を測定し、鋼矢板100のフランジ部103の屈曲角を把握することにより、当該鋼矢板100に対し、矯正が必要な変形箇所と、当該変形が閉じ変形であるのか開き変形であるのかを判断する計測部19が設けられている。計測部19は、搬送装置2aの長手方向の上方に沿ってセンサーフレーム19aを設置し、センサーフレーム19aに、ウェブ部102及びフランジ部103との距離を測定するセンサ19bを長手方向に移動可能に設けることにより、上流側の搬送装置2aに載置された鋼矢板100の長手方向の全長に亘る鋼矢板100の変形度合いを測定している。センサ19bとしては、例えば、光センサなどの各種センサを用いることができる。
【0027】
センサ19bによって鋼矢板100のウェブ部102及びフランジ部103との距離を計測することにより、鋼矢板100の長手方向の全長に亘る鋼矢板100の変形度合いを把握することができ、当該鋼矢板100に対し、矯正が必要な変形箇所と、当該変形が閉じ変形であるのか開き変形であるのかを判断する。
【0028】
上流側の搬送装置2aと下流側の搬送装置2bとの間には、二つの矯正部、即ち、上流側矯正部3aと下流側矯正部3bとが設けられ、図6は、上流側矯正部3aを示す図1におけるA-A線の拡大断面図、図7は、下流側矯正部3bを示す図1におけるB-B線の拡大断面図である。
【0029】
上流側矯正部3aと下流側矯正部3bは、上流側の搬送装置2aと下流側の搬送装置2bとの間に設置されたフレーム14に支持されている。
【0030】
フレーム14は、上流側矯正部3aと下流側矯正部3bの前後左右に設けられた4つの支柱14aと、当該支柱14aの上端に設けられる天井部14bとを有し、搬送方向両側に設けられる搬送装置2a,2bにより搬送される鋼矢板100が4つの支柱14a間を通過可能に構成されている。前記支柱14aの下端には、天井部14bと平行に支持床14cが設置されている。
【0031】
上流側矯正部3aは、図6に示すように、フレーム14の天井部14bから吊り下げられた垂直押圧部20と、前記支持床14c上に設けられた、鋼矢板100を載置する底受け台31とを備えている。
【0032】
垂直押圧部20は、フレーム14の天井部14bに、昇降ガイドロッド22と油圧シリンダ23によって、垂直方向に昇降可能に設置されている。
【0033】
垂直押圧部20には、鋼矢板100のウェブ部102の上面を押圧する垂直押圧型24と、垂直押圧型24に対して左右側に回動可能に設けられた、鋼矢板100のフランジ部103を広げるための水平押圧部25とを備える。
【0034】
垂直押圧型24は、鋼矢板100のウェブ部102の幅寸法に合わせて構成されている。水平押圧部25は、垂直押圧型24に対して回動軸26を支点にして回動し、油圧シリンダ27によって垂直押圧型24から水平押圧部25の下端が拡張するように動作する。
【0035】
水平押圧部25の下端は、通常時は垂直押圧型24内に収納された状態であり、油圧シリンダ27によってフランジ部103に向かって幅方向に広げられる。水平押圧部25の下端が広がることにより、フランジ部103を内側から押圧し、フランジ部103のウェブ部102に対する屈曲角を大きくする方向に鋼矢板100を矯正することができる。なお、フランジ部103を広げる動作においては、ウェブ部102には上側に浮き上がる力が加わるため、垂直押圧型24で底受け台31に押しつけた状態を維持している。
【0036】
水平押圧部25の下端の左右側面には、フランジ部103の内側面を矯正するフランジ矯正型28が設けられ、フランジ矯正型28の上端にフランジ部103の先端の継手部104の変形を矯正する継手矯正上型29を設置している。
【0037】
上流側矯正部3aには、鋼矢板100を載置する底受け台31が設置されている。底受け台31は、鋼矢板100のウェブ部102の底面を受ける、上面が平坦な受け面部32と、この受け面部32の左右両端に位置し、受け面部32上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部103の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部33とによって構成されている。
【0038】
押込み部33は、受け面部32に、鋼矢板100の長手方向に対して平行な回動軸34により回動自在に設けられる回転アーム35と、この回転アーム35の外側面を外側から押して回転アーム35を開閉させる押込みアクチュエータ36とを備えている。
【0039】
回動軸34には、回転量を検出するロータリーエンコーダが組み込まれ、回動軸34の回転量から回転アーム35の押込み量を検出している。
【0040】
押込みアクチュエータ36は、昇降アクチュエータ37によってフレーム14の支柱14aに対して昇降自在に設置されている。
【0041】
鋼矢板100のフランジ部103の外側面に対面する回転アーム35には、フランジ部103の外側面を矯正する側面矯正型35aと、鋼矢板100の継手部104を矯正する継手矯正下型35bとを設置している。側面矯正型35aは、上端が継手部104の下方に位置している。
【0042】
底受け台31の受け面部32は、平坦であるから、鋼矢板100が幅方向へのずれがある状態で搬送されてきた場合でも、ウェブ部102の下面が平坦な受け面部32に載置され、受け面部32上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部103の外側面を、フランジ部103の変形度合いに応じて、押込み部33によって外側から内側に向かって押し込む押込み量を変化させることにより、ウェブ部102の幅中心を底受け台31の幅中心に位置決め、即ち、鋼矢板100を上流側矯正部3aの中心に合わせてセンタリングすることができる。
【0043】
このように、上流側矯正部3aでは、平坦な受け面部32を有する底受け台31と、受け面部32の左右両端に設けられ、受け面部32上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部103の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部33とによって、鋼矢板100の幅中心を底受け台31の幅中心に位置決めすることができる。
【0044】
次に、下流側矯正部3bについて説明する。
【0045】
下流側矯正部3bは、図7に示すように、フレーム14の天井部14bから吊り下げられた垂直押圧部40と、前記支持床14c上に設けられた、鋼矢板100を載置する底受け台51とを備えている。
【0046】
垂直押圧部40は、フレーム14の天井部14bに、昇降ガイドロッド42と油圧シリンダ43によって、垂直方向に昇降可能に設置されている。
【0047】
垂直押圧部40には、鋼矢板100のウェブ部102の上面を押圧する垂直押圧型44と、垂直押圧型44に対して左右側に回動可能に設けられた、鋼矢板100のフランジ部103を広げるための水平押圧部45とを備える。
【0048】
垂直押圧型44は、鋼矢板100のウェブ部102の幅寸法に合わせて構成され、水平押圧部45は、垂直押圧型44に対して回動軸46を支点にして回動して、水平押圧部45の下端を、通常時は収納された状態で、油圧シリンダ47によってウェブ部102の幅方向に広げられるようになっている。水平押圧部45が広がることにより、フランジ部103を内側から押圧し、フランジ部103とウェブ部102の屈曲角を大きくする方向に鋼矢板100を矯正することができる。
【0049】
なお、フランジ部103を広げる動作においては、ウェブ部102には上側に浮き上がる力が加わるため、垂直押圧型44で底受け台51に押しつけた状態を維持している。
【0050】
水平押圧部45の下端の左右側面には、フランジ部103の内側面を矯正するフランジ矯正型48が設けられ、フランジ矯正型48の上端にフランジ部103の先端の継手部104の変形を矯正する継手矯正上型49を設置している。
【0051】
鋼矢板100を載置する底受け台51は、鋼矢板100のウェブ部102の底面を受ける、上面が平坦な受け面部51aと、この受け面部51aの左右両端に位置し、受け面部51aに搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部103の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部52とからなる。
【0052】
押込み部52は、受け面部51aに、鋼矢板100の長手方向に対して平行な回動軸53により回動自在に設けられる回転アーム54と、回転アーム54を下面から押して回転アーム54を開閉させる押込みアクチュエータ55とを備えている。押込みアクチュエータ55は、支持床14cに設置されている。
【0053】
回動軸53には、回転量を検出するロータリーエンコーダが組み込まれ、回動軸53の回転量から回転アーム54の押込み量を検出している。
【0054】
鋼矢板100のフランジ部103の外側面に対面する回転アーム54には、フランジ部103の外側面を矯正する側面矯正型54aと、鋼矢板100の継手部104の下面を矯正する継手矯正下型54bとを設置している。側面矯正型54aは、上端が、継手部104の下方で、且つ、フランジ部103の上端寄りに設けた屈曲部105の上方を押し当てられる位置に設けられている。
【0055】
底受け台51の受け面部51aは、平坦であるから、鋼矢板100が幅方向へのずれがある状態で搬送されてきた場合でも、ウェブ部102の下面が平坦な受け面部51aに載置され、受け面部51a上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部103の外側面を、フランジ部103の変形度合いに応じて、押込み部52によって外側から内側に向かって押し込む押込み量を変化させることにより、ウェブ部102の幅中心を底受け台51の幅中心に位置決め、即ち、鋼矢板100を下流側矯正部3bの中心に合わせてセンタリングすることができる。
【0056】
このように、下流側矯正部3bでは、平坦な受け面部51aを有する底受け台51と、受け面部51aの左右両端に設けられ、受け面部51a上に搬送されてきた鋼矢板100のフランジ部103の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部52とによって、鋼矢板100の幅中心を底受け台51の幅中心に位置決めすることができる。
【0057】
次に、本実施形態に係る上流側矯正部3aと下流側矯正部3bの動作について説明する。図8図14は、上流側矯正部3aの動作を示し、図15図18が下流側矯正部3bの動作を示している。
【0058】
変形した鋼矢板100は、上流側の搬送装置2aに載置され、上流側矯正部3aと下流側矯正部3bの方向に搬送される。上述のように鋼矢板100の変形は、開き変形、閉じ変形、継手変形があり、本実施形態に係る矯正装置はいずれの変形の矯正も可能である。
【0059】
搬送装置2aによる鋼矢板100の搬送時においては、ローラユニット5は、上側に位置する搬送位置であり、鋼矢板100が上流側矯正部3aの底受け台31、下流側矯正部3bの底受け台51から離間した状態となっている。
【0060】
矯正を必要とする鋼矢板100の変形箇所が上流側矯正部3a、下流側矯正部3bまで到達すると、ローラユニット5が下降し、鋼矢板100のウェブ部102の下面が、底受け台31の受け面部32、底受け台51の受け面部51a上に載置される(図8図15)。
【0061】
この後、図9に示すように、底受け台31の平坦な受け面部32上で、鋼矢板100のフランジ部103の変形度合いに応じて左右のフランジ部103を、底受け台31に設けた左右の押込み部33を矢印の方向に動作させて、ウェブ部102の幅方向の中心が、上流側矯正部3aの幅方向の中心に一致するように、上流側矯正部3aにおける鋼矢板100の幅方向位置を位置決め、即ち、センタリングする。
【0062】
底受け台51に搬送されくる鋼矢板100は、上流側矯正部3aにおいて変形が粗方矯正されているため、図15に示すように、底受け台51の受け面部51a上において、押込み部52を動作させなくてもセンタリングされていることが多い。
【0063】
次に、図10に示すように、垂直押圧部20を下降させながら、油圧シリンダ27によって水平押圧部25の下端を拡げて、フランジ部103の閉じ変形を矯正しつつ、図11に示すように、垂直押圧部20をさらに下降させて、垂直押圧型24をウェブ部102に押し当てて、ウェブ部102の変形を矯正すると共に、ウェブ部102を垂直押圧型24によって固定する。
【0064】
上流側矯正部3aにおいてフランジ部103の開き矯正が必要な場合は、図12に示すように、底受け台31の左右の押込み部33を開いた状態で、油圧シリンダ27によって水平押圧部25の下端を拡げて、フランジ部103を開き矯正する。
【0065】
反対に、上流側矯正部3aにおいてフランジ部103の閉じ矯正が必要な場合は、図12に示すように、フランジ部103を一旦開いた後に、油圧シリンダ27によって水平押圧部25の下端を、フランジ部103を正規形状に矯正可能な所定位置に位置させた状態で、図13に示すように、底受け台31の左右の押込み部33を内向きに動作させて、フランジ部103の閉じ矯正を行う。
【0066】
さらに、フランジ部103の継手部104が上方に開いている場合には、継手矯正上型29によって押し下げ矯正する。
【0067】
また、フランジ部103の継手部104が外側に広がっている場合には、図14に示すように、継手矯正下型35bを外側から継手部104に押し当てて矯正する。
【0068】
以上のようにして、上流側矯正部3aにおける鋼矢板100の矯正が終了すると、図15に示すように、油圧シリンダ27によって水平押圧部25の下端を狭めた後に、垂直押圧部20を上昇させて、鋼矢板100の拘束を開放する。
【0069】
次に、下流側矯正部3bには、図15に示すように、上流側矯正部3aによって粗方矯正された鋼矢板100が搬送され、その後、図16に示すように、垂直押圧部40を下降させて、底受け台51の受け面部51a上に、ウェブ部102を垂直押圧型44によって押さえる。
【0070】
この後、図17に示すように、底受け台51の押込みアクチュエータ55を押し上げて、回転アーム54を内向きに押し込むと共に、油圧シリンダ47によって垂直押圧型44から水平押圧部45の下端が拡張するように動作させることによって、フランジ部103を矯正する。
【0071】
そして、鋼矢板100の矯正が終了すると、図18に示すように、底受け台51の押込みアクチュエータ55を押し下げて、回転アーム54を外向きに開くと共に、油圧シリンダ47を縮め、垂直押圧型44から水平押圧部45の下端が閉じるように動作させた後、垂直押圧部40を上昇させて鋼矢板100の拘束を開放する。
【0072】
フランジ部103の開き変形、折れ変形、屈曲部105の成形について矯正を行う際は、押込み部52の側面矯正型54aを押し当てる位置がフランジ部103の上端側であるほどフランジ部103全体に亘って矯正の応力を効果的に発生させやすく、一方でフランジ部103の上端に位置する継手部104を側面矯正型54aで直接的に押してフランジ部103を矯正しようとすると継手部104の形状が先行して潰れて変形することがある。
【0073】
このことからフランジ部103の矯正で側面矯正型54aを押し当てる位置としてはフランジ部103のできるだけ上端寄りで且つ継手部104より下方の位置が好ましい。
【0074】
本実施例の押込み部52の回転アーム54を回動自在に支持する回動軸53は、受け面部51aに載置された鋼矢板100のフランジ部103の基端部(ウェブ部102の両端部)の近傍に位置し、フランジ部103が基端部から開き変形している状態から正規形状まで矯正されるフランジ部103の軌跡と近似の軌跡を描いて回転アーム54を回動させることができる。これにより開き変形したフランジ部103の矯正始めから回転アーム54に設置された側面矯正型54aをフランジ部103の上端寄りの継手部104の下方の位置に押し当てることができ、より効果的な矯正動作ができる。
【0075】
次に、上流側矯正部3aを使用し、フランジ部103に局所的な変形、例えば、ディンプル曲り(図20のA部分)がある場合の矯正方法について説明する。
【0076】
まず、図19に示すように、昇降アクチュエータ37によって押込みアクチュエータ36を上昇させた後、回転アーム35を開く方向に回転させる。
【0077】
この後、図20に示すように、押込みアクチュエータ36の伸縮ロッドの先端が、フランジ部103のディンプル曲りAの高さになるように、昇降アクチュエータ37によって押込みアクチュエータ36を下降させる。
【0078】
そして、フランジ部103の内面にフランジ矯正型28を押し当てた状態で、図21に示すように、押込みアクチュエータ36の伸縮ロッドを伸ばして、ディンプル曲りAを外側から押し込むことによってディンプル曲りAを矯正することができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態にかかる鋼矢板の矯正装置によれば、矯正部の底受け台を、平坦な受け面部と、この受け面部の左右両端に位置し、受け面部上に搬送されてきた鋼矢板のフランジ部の外側面を、外側から内側に向かって押し込む押込み部とによって構成しているので、鋼矢板が幅方向へのずれがある状態で矯正部に搬送されてきた場合でも、ウェブ部の下面が平坦な受け面部に載置され、受け面部上に搬送されてきた鋼矢板のフランジ部の外側面を、フランジ部の変形度合いに応じて、押込み部によって外側から内側に向かって押し込む押込み量を変化させることにより、ウェブ部の幅中心を底受け台の幅中心に位置決め、即ち、鋼矢板を矯正部の中心に合わせてセンタリングすることができる。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である
【符号の説明】
【0081】
1 :矯正装置
2a、2b :搬送装置
3a :上流側矯正部
3b :下流側矯正部
20 :垂直押圧部
24 :垂直押圧型
25 :水平押圧部
31 :底受け台
32 :受け面部
33 :押込み部
34 :回動軸
35 :回転アーム
36 :押込みアクチュエータ
37 :昇降アクチュエータ
40 :垂直押圧部
44 :垂直押圧型
45 :水平押圧部
46 :回動軸
51 :底受け台
51a :受け面部
52 :押込み部
53 :回動軸
54 :回転アーム
100 :鋼矢板
102 :ウェブ部
103 :フランジ部
104 :継手部
図1
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