(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106531
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】運動測定装置、装着状態判別方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240801BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A61B5/11 200
A63B71/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010829
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紀井 建彦
(72)【発明者】
【氏名】植松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】真行寺 竜二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏之
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB31
4C038VB35
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置の装着状態を判別する。
【解決手段】運動測定装置10は、第1電極164aと、自装置がユーザの腰部に正しく装着された場合に第1電極164aよりもユーザの腰部に近接する位置に配される第2電極164bと、を備える。また、運動測定装置10は、第1電極164a及び第2電極164bによって検出された各静電容量の値に基づいて、自装置の装着状態を判別する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置であって、
第1電極と、
自装置が前記ユーザの身体に正しく装着された場合に前記第1電極よりも前記ユーザの身体に近接する位置に配される第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極によって検出された各静電容量の値に基づいて、自装置の装着状態を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする運動測定装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記第2電極によって検出された静電容量の値が前記第1電極によって検出された静電容量の値以上である場合、自装置の装着状態が正常であると判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動測定装置。
【請求項3】
自装置の筐体は、自装置が前記ユーザの身体に正しく装着された場合に当該ユーザの身体と接する側となる第1の面と、当該第1の面とは反対側の面である第2の面と、を備え、
前記第1電極は、前記筐体内部の前記第2の面の近傍に配され、
前記第2電極は、前記筐体内部の前記第1の面の近傍に配され、
前記判別手段は、
前記第2電極によって検出された静電容量の値が前記第1電極によって検出された静電容量の値以上である場合、自装置の装着状態が正常であると判別し、
前記第1電極によって検出された静電容量の値が前記第2電極によって検出された静電容量の値よりも大きい場合、自装置の装着状態が表裏逆向きの状態であると判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動測定装置。
【請求項4】
前記判別手段は、前記第2電極によって検出された静電容量の値が前記第1電極によって検出された静電容量の値以上であり、且つ、前記第1電極によって検出された静電容量の値が所定の閾値よりも大きい場合、自装置上に物体が被さっている状態であると判別する、
ことを特徴とする請求項3に記載の運動測定装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極によって検出される各静電容量の値を零点調整するキャリブレーション手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動測定装置。
【請求項6】
前記判別手段によって判別された前記自装置の装着状態を報知する報知手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動測定装置。
【請求項7】
前記筐体を前記第1の面から平面視した場合、前記第1電極及び前記第2電極は重なっていない、
ことを特徴とする請求項3に記載の運動測定装置。
【請求項8】
前記第1電極は、外部装置と通信するためのアンテナである、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動測定装置。
【請求項9】
ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置であって、第1電極と、自装置が前記ユーザの身体に正しく装着された場合に前記第1電極よりも前記ユーザの身体に近接する位置に配される第2電極と、を備えた運動測定装置の装着状態判別方法であって、
前記第1電極及び前記第2電極によって検出された各静電容量の値に基づいて、自装置の装着状態を判別する判別工程を含む、
ことを特徴とする装着状態判別方法。
【請求項10】
ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置であって、第1電極と、自装置が前記ユーザの身体に正しく装着された場合に前記第1電極よりも前記ユーザの身体に近接する位置に配される第2電極と、を備えた運動測定装置のコンピュータを、
前記第1電極及び前記第2電極によって検出された各静電容量の値に基づいて、自装置の装着状態を判別する判別手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動測定装置、装着状態判別方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、慣性計測ユニットを内蔵し、ユーザの走行における動きを捉えて、速度、位置、姿勢角等を計算し、さらに、ユーザの運動を解析し、運動解析情報を生成する運動解析装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている運動解析装置は、ユーザの胴体部分に装着された状態で使用される。しかし、上記運動解析装置は、自装置がユーザの胴体部分に正しく装着されているか否かを判別できないため、装着状態によってはユーザの運動を正確に解析することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置の装着状態を判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る運動測定装置は、
ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置であって、
第1電極と、
自装置が前記ユーザの身体に正しく装着された場合に前記第1電極よりも前記ユーザの身体に近接する位置に配される第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極によって検出された各静電容量の値に基づいて、自装置の装着状態を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの身体に装着された状態で用いられる運動測定装置の装着状態を判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態の運動解析システムを示すブロック図である。
【
図3】運動測定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)は運動測定装置を示す側面図であり、(b)は運動測定装置を示す正面図である。
【
図5】端末装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】装着状態判別処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】運動測定装置がユーザの腰部に正しく装着された状態を示す図である。
【
図8】運動測定装置がユーザの腰部に表裏逆向きで装着された状態を示す図である。
【
図9】運動測定装置がユーザの腰部に正しく装着されているものの、飲み物等が入ったポーチが運動測定装置に被さっている状態を示す図である。
【
図10】運動測定装置の装着状態と第1電極及び第2電極により検出された各静電容量との対応関係を示す図である。
【
図11】(a)は運動測定装置を手の平に載せた状態を示す図であり、(b)は運動測定装置を手指で握った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0010】
≪運動解析システム≫
まず、
図1を参照して、本実施の形態の運動解析システム1を説明する。
図1は、本実施の形態の運動解析システム1を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、運動解析システム1は、運動測定装置10と、端末装置20と、を備えて構成される。
【0012】
運動測定装置10は、ランニング時にユーザの身体(例えば、腰部)に装着された状態で用いられるウェアラブル端末である。運動測定装置10は、ユーザの運動データ(加速度データ、角速度データ等)を採取し、当該運動データから導出されるランニングフォームに関する指標(以下、ランニング指標と称す)等を記録する装置である。
【0013】
図2は、運動測定装置10の装着例を示す図である。
図2に示すように、運動測定装置10は、装置本体10aに対してクリップ10bが設けられている。運動測定装置10は、このクリップ10bによって、ユーザのランニングパンツPを挟むことによって、ユーザの腰部に固定されるようになっている。なお、運動測定装置10は、クリップ10bの代わりにベルト(図示省略)を設け、当該ベルトによって、ユーザの腰部に固定されるようにしてもよい。
【0014】
端末装置20は、運動測定装置10から取得したユーザのランニング指標等を表示する装置である。端末装置20としては、例えば、スマートフォンや、スマートウォッチ、スマートグラス、タブレットPC等が挙げられる。以下では、端末装置20がスマートフォンであるものとして説明を行う。
【0015】
≪運動測定装置≫
次に、
図3を参照して、運動測定装置10の機能構成を説明する。
図3は、運動測定装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図3に示すように、運動測定装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、記憶部13と、表示部14と、操作部15と、センサ部16と、音出力部17と、通信部18と、を備えて構成される。運動測定装置10の各部は、バス19を介して接続されている。
【0017】
CPU(判別手段、キャリブレーション手段、報知手段)11は、運動測定装置10の各部を制御する。CPU11は、記憶部13に記憶されているシステムプログラム及びアプリケーションプログラムのうち、指定されたプログラムを読み出してRAM12に展開し、当該プログラムとの協働で各種処理を実行する。
【0018】
RAM12は、揮発性のメモリであり、各種のデータやプログラムを一時的に格納するワークエリアを形成する。
【0019】
記憶部13は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等により構成される。記憶部13には、CPU11で実行されるシステムプログラムやアプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ等が記憶されている。また、記憶部13には、ランニング時に採取された運動データ及び当該運動データから導出されたランニング指標が記憶されるようになっている。
【0020】
表示部14は、複数のLEDランプにより構成され、電源のON/OFFの状態、データの取得状態(例えば、データを取得中であるか否か)、データの送信状態(例えば、データを送信中であるか否か)や、GPS受信機163のON/OFF状態等を表示可能な表示部である。
【0021】
操作部15は、電源のON/OFFを切り替える電源ボタン(図示省略)、データ取得の開始/終了を指示する開始/終了ボタン(図示省略)等を備えており、この操作部15からの指示に基づいて、CPU11は各部を制御するようになっている。
【0022】
センサ部16は、加速度センサ161、角速度センサ162、GPS受信機163、静電容量センサ164などを備え、測定結果をCPU11に出力する。なお、センサ部16は、
図3に示されていないセンサを更に有していてもよい。
【0023】
加速度センサ161は、互いに直交する3軸方向の加速度を検出する。そして、加速度センサ161は、検出された各軸の加速度に対応する加速度データをCPU11に出力する。
【0024】
角速度センサ162は、互いに直交する3軸方向の角速度を検出する。そして、角速度センサ162は、検出された各軸を中心とする角速度に対応する角速度データをCPU11に出力する。
【0025】
GPS受信機163は、運動測定装置10の位置情報を取得し、当該位置情報をCPU11に出力する。
【0026】
静電容量センサ164は、運動測定装置10に近接する対象との間の静電容量を検出するための第1電極164a及び第2電極164b、並びに、センサドライバ(図示省略)等を備える。静電容量センサ164は、上記のセンサドライバによって、運動測定装置10に近接する対象と第1電極164aとの間で検出された静電容量の測定データをCPU11に出力するとともに、運動測定装置10に近接する対象と第2電極164bとの間で検出された静電容量の測定データをCPU11に出力する。
【0027】
音出力部(報知手段)17は、DAコンバーター、アンプ、スピーカー等により構成される。音出力部17は、音出力時に音データをアナログ音声データに変換してスピーカーから出力する。
【0028】
通信部18は、ランニング時の運動データ及び/又は当該運動データから導出されたランニング指標を、CPU11による制御に基づいて端末装置20に送信する。通信部18は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの無線規格を採用した通信部や、USB端子などの有線式の通信部である。
【0029】
次に、
図4を参照して、静電容量センサ164を構成する第1電極164a及び第2電極164bの運動測定装置10における配置について説明する。
図4(a)は、運動測定装置10を示す側面図である。
図4(b)は、運動測定装置10を示す正面図である。
【0030】
図4(a)に示すように、運動測定装置10は、装置本体(筐体)10aと、クリップ10bと、を備えて構成される。装置本体10aには、上述したCPU11、RAM12、記憶部13、センサ部16、音出力部17、通信部18等が内蔵されている。静電容量センサ164については、装置本体10aの内部であって、クリップ10bと対向する面(第2の面)の近傍に第1電極164aが配設されている。一方、第2電極164bは、装置本体10aの内部であって、当該装置本体10aの底面(運動測定装置10が正しく装着された場合にユーザの腰部と接する面(第1の面))の近傍に配設されている。つまり、第2電極164bは、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着された場合に第1電極164aよりもユーザの腰部に近い位置に配されることとなる。ここで装置本体10aのある面とユーザの身体の一部である腰部と接するとは、ユーザが身に付けている服を介して接していることを含む。なお、第1電極164aは、装置本体(筐体)10aの内部であって、クリップ10bと対抗する面に出来るだけ近い位置に配置されるのが好ましい。また、第2電極164bは、装置本体(筐体)10aの内部であって、当該装置本体10aの底面に出来るだけ近い位置に配置されるのが好ましい。つまり、装置本体10aの内部において、第1電極164aと第2電極164bとの間の距離は出来るだけ離れていることが好ましい。これにより、装着状態の検出精度を高めることができる。例えば、
図4(a)において、第1電極164aと第2電極164bとの間には、CPU11やRAM12等が実装された基板(図示省略)が配置されている。なお、当該基板は、装置本体(筐体)10aの厚さ方向において、第1電極164aと第2電極164bとの間の略中央付近に配置されることが好ましい。このようにすることで、基板上にある電池やシールド板金等の金属を含む部品から、それぞれの電極との距離を出来るだけ取ることによって検出精度を高めることができる。
【0031】
また、第1電極164aは、
図4(b)に示すように、平面視において矩形枠状に形成されている。一方、第2電極164bは、平面視において、第1電極164aを形成する枠内に収まる程度の大きさの矩形状に形成されており、第1電極164aと重ならない位置に配設されている。なお、第1電極164aは、例えば、外部装置(測位衛星、時計等の外部機器)と通信するための、GPS受信機163や通信部18(例えば、Bluetooth(登録商標))のアンテナ(図示省略)と兼用としてもよい。かかる場合、上記アンテナの性能の低下を抑制するため、第1電極164aとセンサドライバとの間にフィルタ等を設けることが好ましい。また、互いに周波数が異なる電波を送受信する2つのアンテナを搭載する場合には、第2電極164bについても当該アンテナと兼用としてもよい。なお、第1電極164a及び第2電極164bの形状は
図4に示すものに限定されない。例えば、第1電極164aはリング形状でもよく、第2電極164bは円形状でもよい。つまり、平面視において、第1電極164aと第2電極164bとが重ならなければ、第1電極164a及び第2電極164bは、それぞれ任意の形状を有していてもよい。
【0032】
≪端末装置≫
次に、
図5を参照して、端末装置20の機能構成を説明する。
図5は、端末装置20の機能構成を示すブロック図である。
【0033】
端末装置20は、CPU21と、RAM22と、記憶部23と、表示部24と、操作部25と、通信部26と、を備えて構成される。端末装置20の各部は、バス27を介して接続されている。
【0034】
CPU21は、端末装置20の各部を制御する。CPU21は、記憶部23に記憶されているシステムプログラム及びアプリケーションプログラムのうち、指定されたプログラムを読み出してRAM22に展開し、当該プログラムとの協働で各種処理を実行する。
【0035】
RAM22は、揮発性のメモリであり、各種のデータやプログラムを一時的に格納するワークエリアを形成する。
【0036】
記憶部23は、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM、HDD(Hard Disk Drive)などにより構成される。記憶部23には、CPU21で実行されるシステムプログラムやアプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ等が記憶されている。
【0037】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、CPU21から指示された表示情報に従い各種表示を行う。
【0038】
操作部25は、端末装置20の本体部に設けられる各種の操作ボタン(図示省略)や、表示部24上に設けられるタッチセンサ(図示省略)等を有して構成され、ユーザの入力操作を受け付けて、その操作情報をCPU21に出力する。
【0039】
通信部26は、運動データ及び/又はランニング指標を運動測定装置10から受信する。通信部26は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの無線規格を採用した通信部や、USB端子などの有線式の通信部である。
【0040】
≪運動測定装置の動作≫
次に、運動測定装置10の動作について説明する。
図6は、装着状態判別処理の制御手順を示すフローチャートである。装着状態判別処理は、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着されたか否かを判別するための処理である。具体的には、この装着状態判別処理によって、
図7~
図9に示す3つの装着状態が判別可能となっている。なお、装着状態判別処理は、例えば、後述のキャリブレーション処理(ステップS1)の実行を指示するユーザ操作が操作部15を介してなされたことを契機として開始されるものとする。
【0041】
図7は、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着された状態を示す図である。
図7に示すように、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着された状態のとき、装置本体10aがユーザのランニングパンツPの内側(腰部が存在する側)に位置する。一方、クリップ10bがユーザのランニングパンツPの外側(腰部が存在しない側)に位置する。したがって、かかる状態のとき、装置本体10aに内蔵された第2電極164bがユーザの腰部に近接するため、第2電極164bにより検出される静電容量の値が増加するようになっている。
【0042】
図8は、運動測定装置10がユーザの腰部に表裏逆向きで装着された状態を示す図である。
図8に示すように、運動測定装置10がユーザの腰部に表裏逆向きで装着された状態のとき、クリップ10bがユーザのランニングパンツPの内側に位置する。一方、装置本体10aがユーザのランニングパンツPの外側に位置する。したがって、かかる状態のとき、装置本体10aに内蔵された第1電極164aがユーザの腰部に近接するため、第1電極164aにより検出される静電容量の値が増加するようになっている。
【0043】
図9は、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着されているものの、飲み物D等が入ったポーチ(携帯品)POが運動測定装置10に被さっている状態を示す図である。
図9に示すように、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着されているものの、飲み物D等が入ったポーチPOが運動測定装置10に被さっている状態のとき、装置本体10aがユーザのランニングパンツPの内側に位置する。一方、クリップ10bがユーザのランニングパンツPの外側に位置する。また、クリップ10bの外側にポーチPOが位置する。したがって、かかる状態のとき、装置本体10aに内蔵された第2電極164bがユーザの腰部に近接するため、第2電極164bにより検出される静電容量の値が増加するようになっている。また、装置本体10aに内蔵された第1電極164aにポーチPOが近接するため、第1電極164aにより検出される静電容量の値が増加するようになっている。
【0044】
図6の装着状態判別処理の制御手順の説明に戻り、当該装着状態判別処理が開始されると、運動測定装置10のCPU11は、キャリブレーション処理を実行する(ステップS1)。キャリブレーション処理とは、当該処理が実行された際に第1電極164a及び第2電極164bで検出される各静電容量の値がゼロ(零)となるように調整することをいう。
【0045】
次いで、CPU11は、第1電極164a及び第2電極164bで検出される各静電容量のうち少なくともいずれか一方の静電容量の値が負の値をとるか否かを判定する(ステップS2)。
【0046】
ステップS2において、第1電極164a及び第2電極164bで検出される各静電容量のうち少なくともいずれか一方の静電容量の値が負の値をとると判定された場合(ステップS2;YES)、CPU11は、処理をステップS1に戻し、それ以降の処理を繰り返し行う。
【0047】
例えば、
図11(a)に示すように、ユーザが手の平に運動測定装置10を載せた状態(装置本体10aの底面が手の平と接した状態)でキャリブレーション処理(ステップS1)が実行された場合、第2電極164bは、ユーザの手の平との間に静電容量を持つこととなる。このため、かかる状態でキャリブレーション処理が実行された後、運動測定装置10をランニングパンツPに装着すべく手の平から持ち上げると、第2電極164bで検出される静電容量は負の値をとることとなる。そこで、この装着状態判別処理では、上記のようなケースを考慮して、第1電極164a及び第2電極164bで検出される各静電容量のうち少なくともいずれか一方の静電容量の値が負の値をとると判定された場合(ステップS2;YES)、処理をステップS1に戻し、再度、キャリブレーション処理が実行されるようになっている。
【0048】
また、ステップS2において、第1電極164a及び第2電極164bで検出される各静電容量の値がいずれも負の値をとらないと判定された場合(ステップS2;NO)、CPU11は、センサドライバによって、第1電極164a及び第2電極164bの各静電容量を検出させる(ステップS3)。
【0049】
次いで、CPU11は、第1電極164aで検出される静電容量の値が第2電極164bで検出される静電容量の値よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。
【0050】
ステップS4において、第1電極164aで検出される静電容量の値が第2電極164bで検出される静電容量の値よりも大きくないと判定された場合(ステップS4;NO)、CPU11は、続けて、第1電極164aで検出される静電容量の値が所定の閾値(例えば、180pF)よりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。
【0051】
ステップS5において、第1電極164aで検出される静電容量の値が所定の閾値よりも大きくないと判定された場合(ステップS5;NO)、つまり、
図10に示すように、第2電極164bで検出される静電容量の値が第1電極164bで検出される静電容量の値以上であり、且つ、第1電極164aで検出される静電容量の値が所定の閾値以下である場合、CPU11は、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着された状態(正常;
図7参照)であると判別する(ステップS6)。
【0052】
次いで、CPU11は、ユーザによる終了操作(例えば、開始/終了ボタン(操作部15)の押下操作)がなされたか否かを判定する(ステップS10)。
【0053】
ステップS10において、ユーザによる終了操作がなされたと判定された場合(ステップS10;YES)、CPU11は、装着状態判別処理を終了する。
【0054】
また、ステップS10において、ユーザによる終了操作がなされていないと判定された場合(ステップS10;NO)、CPU11は、処理をステップS3に戻し、それ以降の処理を繰り返し行う。
【0055】
また、ステップS5において、第1電極164aで検出される静電容量の値が所定の閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS5;YES)、つまり、
図10に示すように、第2電極164bで検出される静電容量の値が第1電極164bで検出される静電容量の値以上であり、且つ、第1電極164aで検出される静電容量の値が所定の閾値よりも大きい場合、CPU11は、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着されているものの、飲み物D等が入ったポーチPOが運動測定装置10に被さっている状態(ポーチ検出;
図9参照)であると判別する(ステップS7)。続けて、CPU11は、音出力部17により判別結果を報知する(ステップS9)。具体的には、かかる場合、音出力部17により飲み物D等が入ったポーチPOが運動測定装置10に被さっている状態にあることを知らせるブザー音やメッセージ等を出力する。そして、CPU11は、処理をステップS10に進める。
【0056】
また、ステップS4において、第1電極164aで検出される静電容量の値が第2電極164bで検出される静電容量の値よりも大きいと判定された場合(ステップS4;YES(
図10参照))、CPU11は、運動測定装置10がユーザの腰部に表裏逆向きで装着された状態(表裏逆;
図8参照)であると判別する(ステップS8)。続けて、CPU11は、音出力部17により判別結果を報知する(ステップS9)。具体的には、かかる場合、音出力部17により運動測定装置10がユーザの腰部に表裏逆向きで装着された状態にあることを知らせるブザー音やメッセージ等を出力する。そして、CPU11は、処理をステップS10に進める。
【0057】
以上のように、本実施形態の運動測定装置10は、第1電極164aと、自装置がユーザの腰部に正しく装着された場合に第1電極164aよりもユーザの腰部に近接する位置に配される第2電極164bと、を備える。また、運動測定装置10は、第1電極164a及び第2電極164bによって検出された各静電容量の値に基づいて、自装置の装着状態を判別する。
【0058】
したがって、運動測定装置10によれば、第1電極164a及び第2電極164bによって検出された各静電容量の値の関係から自装置の装着状態を適切に判別できる。
これにより、運動測定装置10は、ユーザが運動測定装置10を正しく装着したかどうかを判別することができるので、誤装着による不正確なランニング指標が導出されてしまうことを抑制できる。
【0059】
また、運動測定装置10は、第2電極164bによって検出された静電容量の値が第1電極164aによって検出された静電容量の値以上である場合、自装置の装着状態が正常であると判別する。
したがって、運動測定装置10によれば、ユーザが運動測定装置10を正しく装着したかどうかを判別することができるので、誤装着による不正確なランニング指標が導出されてしまうことを抑制できる。
【0060】
また、運動測定装置10の装置本体(筐体)10aは、自装置がユーザの身体に正しく装着された場合に当該ユーザの腰部と接する側となる第1の面(底面)と、当該第1の面とは反対側の面である第2の面と、を備え、第1電極164aは、装置本体10aの内部の第2の面の近傍に配され、第2電極164bは、装置本体10aの内部の第1の面(底面)の近傍に配されている。また、運動測定装置10は、第2電極164bによって検出された静電容量の値が第1電極164aによって検出された静電容量の値以上である場合、自装置の装着状態が正常であると判別し、第1電極164aによって検出された静電容量の値が第2電極164bによって検出された静電容量の値よりも大きい場合、自装置の装着状態が表裏逆向きの状態であると判別する。
したがって、運動測定装置10によれば、自装置の装着状態が正常である場合と、表裏逆向きの状態である場合と、を判別できるので、ユーザが運動測定装置10を正しく装着したかどうかを判別することができる。
【0061】
また、運動測定装置10は、第2電極164bによって検出された静電容量の値が第1電極164aによって検出された静電容量の値以上であり、且つ、第1電極164aによって検出された静電容量の値が所定の閾値よりも大きい場合、自装置上に物体(例えば、ユーザの携帯品である飲み物D等が入ったポーチPO)が被さっている状態であると判別する。
したがって、運動測定装置10によれば、ユーザの携帯品が自装置上に物体(例えば、ユーザの携帯品である飲み物D等が入ったポーチPO)が被さっている状態を判別することによって、例えば、GPS受信機163や通信部18のアンテナの性能が低下するおそれのある状態を判別することができる。
【0062】
また、運動測定装置10は、第1電極164a及び第2電極164bによって検出される各静電容量の値を零点調整することができるので、上述の装着状態判別処理(
図6参照)を実行した際に、当該零点調整を行うことによって、自装置の装着状態をより適切に判別できるようになる。
【0063】
また、運動測定装置10は、音出力部17によって、判別された自装置の装着状態を報知する。
したがって、運動測定装置10によれば、運動測定装置10がユーザの腰部に表裏逆向きで装着された状態(表裏逆;
図8参照)であると判別された場合や、運動測定装置10がユーザの腰部に正しく装着されているものの、飲み物D等が入ったポーチPOが運動測定装置10に被さっている状態(ポーチ検出;
図9参照)であると判別された場合に、これらの状態を、音出力部17によって報知することで、不正確なランニング指標が導出されてしまうといった問題や、GPS受信機163や通信部18のアンテナの性能が低下するといった問題を未然に防ぐことができる。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、ランニングを開始する際に、
図11(a)に示すように、ユーザは手の平に運動測定装置10を載せた状態で、GPS受信機163によりランニング開始地点の位置を取得する。しかし、
図11(b)に示すように、運動測定装置10が手指で握られた状態であると、GPS受信機163のアンテナ性能が低下し、ランニング開始地点の位置の取得に時間がかかってしまう。そこで、GPS受信機163によりランニング開始地点の位置を取得する際に、運動測定装置10が手指で握られた状態であるか否かを判別し、運動測定装置10が手指で握られた状態であると判別された場合、当該判別結果を、例えば、音出力部17により報知するようにしてもよい。これにより、ランニング開始地点の位置の取得を円滑に行うことができるようになる。
【0065】
また、上記実施形態では、運動測定装置10が装着されているランニングパンツPが汗や雨で濡れることにより、GPS受信機163等のアンテナインピーダンスが変化してアンテナ性能が低下してしまう場合がある。ここで、ランニングパンツPが汗や雨で濡れていく状況にあっては、第1電極164aと第2電極164bの両方の静電容量が徐々に増加する。そこで、第1電極164aと第2電極164bの両方の静電容量が或る一定の期間に亘って徐々に増加した場合、ランニングパンツPが汗や雨で濡れていると判別し、当該判別の結果に応じて、例えば、マッチング回路等を調整することによりGPS受信機163等のアンテナ性能を最適な状態に保つようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、第1電極164aと第2電極164bを装置本体10aに内蔵しているが、第1電極164aをクリップ10bに内蔵し、第2電極164bを装置本体10aに内蔵するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、音出力部17によって装着状態を報知しているが、端末装置20に装着状態を示す情報を送信し、例えば、端末装置20の表示部24に当該情報を表示させるようにしてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲をその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0069】
1 運動解析システム
10 運動測定装置
10a 装置本体
10b クリップ
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
14 表示部
15 操作部
16 センサ部
161 加速度センサ
162 角速度センサ
163 GPS受信機
164 静電容量センサ
164a 第1電極
164b 第2電極
17 音出力部
18 通信部
20 端末装置
21 CPU
22 RAM
23 記憶部
24 表示部
25 操作部
26 通信部
D 飲み物
P ランニングパンツ
PO ポーチ