IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

<>
  • 特開-ロータリー式切換弁 図1
  • 特開-ロータリー式切換弁 図2
  • 特開-ロータリー式切換弁 図3
  • 特開-ロータリー式切換弁 図4
  • 特開-ロータリー式切換弁 図5
  • 特開-ロータリー式切換弁 図6
  • 特開-ロータリー式切換弁 図7
  • 特開-ロータリー式切換弁 図8
  • 特開-ロータリー式切換弁 図9
  • 特開-ロータリー式切換弁 図10
  • 特開-ロータリー式切換弁 図11
  • 特開-ロータリー式切換弁 図12
  • 特開-ロータリー式切換弁 図13
  • 特開-ロータリー式切換弁 図14
  • 特開-ロータリー式切換弁 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106541
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ロータリー式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010844
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏光
(72)【発明者】
【氏名】曽我 拓巨
(72)【発明者】
【氏名】今川 海斗
(72)【発明者】
【氏名】塚越 直斗
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067AA33
3H067BB03
3H067BB13
3H067CC47
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD45
3H067EA15
3H067EB07
3H067ED11
3H067FF11
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】本発明は、主弁の位置ずれを防止することで切換動作を安定させることができるロータリー式切換弁を得ることを目的とする。
【解決手段】ロータリー式切換弁1は、弁室11を備える弁本体10と、弁座部20と、主弁30と、副弁40と、駆動手段50と、を備える。主弁30には、低圧流路31aと、均圧孔31bと、が設けられる。弁本体10または弁座部20には、所定の切換位置にて主弁30に当接することで、回転軸53の回転方向に回転する主弁30の回転を停止させる主弁ストッパ29が設けられ、弁本体10と主弁30との間には、切換位置から反回転方向への主弁30の回転を規制する回転規制手段60が設けられる。回転規制手段60は、弁本体10および主弁30の一方に設けられて他方を保持可能な保持部62と、他方に設けられて保持部62に保持される被保持部61と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を備える弁本体と、前記弁室に開口する複数のポートを有する弁座部と、前記弁室内にて前記弁座部上を前記弁座部の上面に交差する回転軸の軸回りに回転可能に設けられる主弁と、前記主弁に対して回転可能に設けられる副弁と、前記副弁を回転駆動する駆動手段と、を備えるロータリー式切換弁であって、
前記主弁には、前記ポートに連通する弁通路と、前記弁通路と前記弁室とを連通する均圧孔と、が設けられ、
前記副弁は、前記均圧孔を開閉し、
前記弁本体または前記弁座部には、所定の切換位置にて前記主弁に当接することで、前記回転軸の軸回りにおいて回転方向に回転する前記主弁の回転を停止させる主弁ストッパが設けられ、
前記弁本体と前記主弁との間には、前記切換位置から前記回転方向の反対方向である反回転方向への前記主弁の回転を規制する回転規制手段が設けられ、
前記回転規制手段は、前記弁本体および前記主弁の一方に設けられて他方を保持可能な保持部と、前記他方に設けられて前記保持部に保持される被保持部と、を有することを特徴とするロータリー式切換弁。
【請求項2】
前記主弁は、複数の前記ポートのうちの2個を連通させる低圧流路と、前記副弁が摺接する主弁シート面と、前記副弁に当接して前記副弁との相対回転を停止させる副弁ストッパと、を有し、
前記均圧孔は前記低圧流路から前記主弁シート面に亘って形成され、
前記副弁は、前記主弁シート面に摺接する副弁シート面と、前記副弁ストッパに当接する当接部と、前記副弁シート面を切り欠いて形成される副弁流路と、を有し、
前記駆動手段によって前記副弁が回転駆動されて前記当接部が前記副弁ストッパに当接する位置にて前記副弁流路が前記均圧孔に連通するとともに、前記副弁の回転に伴って前記主弁が回転され、
前記主弁ストッパに前記主弁が当接して前記切換位置にて前記主弁の回転が停止してから、前記駆動手段によって前記副弁が前記反回転方向に駆動されることで、前記副弁流路が前記均圧孔に連通しなくなり前記副弁シート面によって前記均圧孔が閉じられることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項3】
前記回転規制手段は、前記主弁ストッパの近傍に設けられた弾性部材を有し、前記弾性部材は、弾性変形可能な弾性アーム部と、前記弾性アーム部の先端に設けられた前記保持部としての凸部と、を有し、前記被保持部は、前記主弁に設けられる凹部を有し、前記凸部が前記凹部を係止することで前記主弁の回転が規制された状態が維持されることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリー式切換弁。
【請求項4】
前記弾性部材は、板ばねで構成されることを特徴とする請求項3に記載のロータリー式切換弁。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記凸部よりも先端側に前記主弁に摺接するテーパガイド部を有し、前記凸部は、半球凸状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のロータリー式切換弁。
【請求項6】
前記回転規制手段は、前記主弁に設けられた弾性部材を有し、
前記弾性部材は、弾性変形可能な弾性アーム部と、前記弾性アーム部の先端に設けられた前記被保持部としての凸部と、を有し、
前記主弁ストッパが、前記保持部として前記凸部を係止することで前記主弁の回転が規制された状態が維持されることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリー式切換弁。
【請求項7】
前記回転規制手段の前記保持部および前記被保持部は、少なくとも一方がマグネットであり、他方がマグネットまたは磁性体で構成され、互いに磁着することで前記主弁の回転を規制することを特徴とする請求項1または2に記載のロータリー式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁室を備える弁ハウジングと、弁ハウジング内に配置される弁座部材と、弁座部材に摺接し弁座部材の上面に交差する中心軸の軸回りに回転する主弁と、主弁に収容される副弁と、副弁を回転駆動する駆動部と、を備えたロータリー式切換弁が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この種のロータリー式切換弁では、主弁に形成された弁通路が、弁座部材に形成されたポートのうち複数のポートを連通させる。主弁には、内外に連通する均圧孔が形成されており、均圧孔が閉じた状態では、主弁内外の差圧により主弁が弁座部材に押し付けられる。一方、均圧孔が開いた状態では、上記差圧がキャンセルされることで主弁が弁座部材に対して押し付けられる力が小さくなる。主弁は、均圧孔が開いた状態で副弁の回転駆動に伴って回転し、連通対象となるポートを切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-103053号公報
【特許文献2】特開2021-085514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロータリー式切換弁では、主弁と副弁とが互いに噛合う複数の凸部(本明細書では、この複数の凸部をまとめてクラッチともいう)を介して回転伝達可能となっている。クラッチは、主弁の均圧孔が開いた状態で互いに噛み合い、この状態で副弁の回転が主弁に伝達される。副弁とともに回転した主弁は、所定の切換位置でストッパに当接して停止する。その後、副弁のみが主弁に対して回転し、副弁の凸部が主弁の凸部に乗り上げて均圧孔を閉じる。しかしながら、このような構成によれば、主弁の回転抵抗が想定以上に大きくなってしまうと、所定の切換位置まで主弁を回転する前にクラッチの噛合いが外れて主弁に回転が伝達されない可能性がある。また、所定の切換位置まで正常に主弁を回転した場合でも、上述のように副弁の凸部が主弁の凸部に乗り上げた状態は、クラッチが切れた状態であり、主弁の反回転が規制されないフリーな状態のため、流体の力によって主弁が切換位置からずれてしまう可能性がある。
【0005】
特許文献2に記載のロータリー式切換弁では、主弁と副弁とが互いの係止部で係止することで副弁の回転が主弁に伝達され、均圧孔を開いた状態で回転した主弁が所定の切換位置でストッパに当接して停止した後、副弁が反回転することで均圧孔を閉じる。しかしながら、副弁の反回転に伴って主弁も一緒に反回転してしまう可能性があり、均圧孔が正常に閉じられないとともに、主弁が切換位置からずれてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、主弁の位置ずれを防止することで切換動作を安定させることができるロータリー式切換弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のロータリー式切換弁は、弁室を備える弁本体と、前記弁室に開口する複数のポートを有する弁座部と、前記弁室内にて前記弁座部上を前記弁座部の上面に交差する回転軸の軸回りに回転可能に設けられる主弁と、前記主弁に対して回転可能に設けられる副弁と、前記副弁を回転駆動する駆動手段と、を備えるロータリー式切換弁であって、前記主弁には、前記ポートに連通する弁通路と、前記弁通路と前記弁室とを連通する均圧孔と、が設けられ、前記副弁は、前記均圧孔を開閉し、前記弁本体または前記弁座部には、所定の切換位置にて前記主弁に当接することで、前記回転軸の軸回りにおいて回転方向に回転する前記主弁の回転を停止させる主弁ストッパが設けられ、前記弁本体と前記主弁との間には、前記切換位置から前記回転方向の反対方向である反回転方向への前記主弁の回転を規制する回転規制手段が設けられ、前記回転規制手段は、前記弁本体および前記主弁の一方に設けられて他方を保持可能な保持部と、前記他方に設けられて前記保持部に保持される被保持部と、を有することを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、所定の切換位置にて主弁ストッパに当接し回転方向への回転を停止した主弁は、回転規制手段によって、反回転方向への回転を規制される。このため、主弁が所定の切換位置から意図せず変位することによって生じる弁漏れ等を抑制し、ポートの切換が正常に行われる状態を良好に維持することができる。したがって、主弁の位置ずれを防止することで切換動作を安定させることができるロータリー式切換弁を得ることができる。
【0009】
また、この際、前記主弁は、複数の前記ポートのうちの2個を連通させる低圧流路と、前記副弁が摺接する主弁シート面と、前記副弁に当接して前記副弁との相対回転を停止させる副弁ストッパと、を有し、前記均圧孔は前記低圧流路から前記主弁シート面に亘って形成され、前記副弁は、前記主弁シート面に摺接する副弁シート面と、前記副弁ストッパに当接する当接部と、前記副弁シート面を切り欠いて形成される副弁流路と、を有し、前記駆動手段によって前記副弁が回転駆動されて前記当接部が前記副弁ストッパに当接する位置にて前記副弁流路が前記均圧孔に連通するとともに、前記副弁の回転に伴って前記主弁が回転され、前記主弁ストッパに前記主弁が当接して前記切換位置にて前記主弁の回転が停止してから、前記駆動手段によって前記副弁が前記反回転方向に駆動されることで、前記副弁流路が前記均圧孔に連通しなくなり前記副弁シート面によって前記均圧孔が閉じられることが好ましい。このような構成によれば、従来のロータリー式切換弁のように、主弁と副弁とをクラッチを介して接続する必要がなくなるので、意図せずクラッチの噛合いが外れて主弁が切換位置からずれてしまう可能性をなくすことができる。また、主弁が切換位置に停止した状態で副弁が反回転方向に駆動される際には、主弁の反回転方向への回転が回転規制手段によって規制されるので、副弁の反回転に伴って主弁も一緒に反回転してしまうことを抑制することができる。これにより、均圧孔を正常に閉じることができ、主弁が切換位置からずれてしまうことを抑制することができる。
【0010】
また、前記回転規制手段は、前記主弁ストッパの近傍に設けられた弾性部材を有し、前記弾性部材は、弾性変形可能な弾性アーム部と、前記弾性アーム部の先端に設けられた前記保持部としての凸部と、を有し、前記被保持部は、前記主弁に設けられる凹部を有し、前記凸部が前記凹部を係止することで前記主弁の回転が規制された状態が維持されることが好ましい。このような構成によれば、弾性アーム部の先端に設けられた凸部によって主弁に設けられた凹部を係止するというシンプルな構成により回転規制手段を構成することができる。
【0011】
また、前記弾性部材は、板ばねで構成してもよい。
【0012】
また、前記弾性部材は、前記凸部よりも先端側に前記主弁に摺接するテーパガイド部を有し、前記凸部は、半球凸状に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、凸部よりも先端側に形成されたテーパガイド部を主弁に摺接させることで、主弁を主弁ストッパに向かって案内することができる。このため、主弁を案内した状態で、凸部による凹部の係止を実現することができる。したがって、凸部による凹部の係止が確実に行えるようになり、回転規制手段による主弁の反回転方向への回転規制をより確実に行うことができる。
【0013】
また、前記回転規制手段は、前記主弁に設けられた弾性部材を有し、前記弾性部材は、弾性変形可能な弾性アーム部と、前記弾性アーム部の先端に設けられた前記被保持部としての凸部と、を有し、前記主弁ストッパが、前記保持部として前記凸部を係止することで前記主弁の回転が規制された状態が維持されてもよい。このような構成によれば、主弁ストッパが保持部としても機能することとなるため、新たに保持部を用意する必要がなく、回転規制手段の構成をシンプルにすることができる。
【0014】
また、前記回転規制手段の前記保持部および前記被保持部は、少なくとも一方がマグネットであり、他方がマグネットまたは磁性体で構成され、互いに磁着することで前記主弁の回転を規制してもよい。このような構成によれば、被保持部としての凹部や保持部としての凸部を形成することなく、回転規制手段を構成することができるので、回転規制手段の構成をシンプルにすることができる。これにより、主弁や弁本体(特に主弁ストッパの近傍部分)の成形を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主弁の位置ずれを防止することで切換動作を安定させることができるロータリー式切換弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るロータリー式切換弁の組立断面図。
図2】(A)は、弁座部材の斜視図であり、(B)は、図2(A)の要部拡大図。
図3】(A)は、主弁を斜め上から見た斜視図であり、(B)は、主弁を斜め下から見た斜視図。
図4】(A)は、副弁を斜め上から見た斜視図であり、(B)は、副弁を斜め下から見た斜視図。
図5】(A)および(B)は、弾性部材の斜視図であり、(C)は、弾性部材の凸部を図5(A)および(B)における軸方向の上側から下側方向に見た拡大図であり、(D)および(E)は、図5(C)と同方向から見た凸部のバリエーションを示す拡大図。
図6】(A)は、初期状態にある主弁および副弁を示す図であり、(B)は、副弁が副弁ストッパに当接した状態を示す図。
図7】(A)は、主弁および副弁が協働して回転する状態を示す図であり、(B)は、主弁が保持部に係止された状態を示す図。
図8】完了状態にある主弁及び副弁を示す図。
図9】ラッチ部の拡大図。
図10】本発明の一実施形態に係る冷凍サイクルシステムの概略図。
図11】(A)は、第一変形例に係る回転規制手段の平面図であり、(B)の左側は、図11(A)の要部拡大図であり、(B)の右側は、回転規制手段のバリエーションを示す図。
図12】(A)は、第二変形例に係る回転規制手段の平面図であり、(B)は、図12(A)の要部拡大図。
図13】(A)は、第二変形例に係る主弁および弁座部の斜視図であり、(B)は、図13(A)の要部拡大図。
図14】第二変形例に係る保持部の斜視図。
図15】(A)は、第三変形例に係る回転規制手段の平面図であり、(B)は、図15(A)の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1~10に基づいて説明する。なお、図において、後述する弁本体10の中心軸線方向を「軸方向L」と記し、軸方向Lの一方側を「上側L1」、他方側を「下側L2」と記す。軸方向Lに直交する方向を「径方向X」と記す。また、図5などに示すように、径方向Xのうち回転軸53に近い側を「内方X1」と記し、内方X1の反対側(回転軸53に遠い側)を「外方X2」と記す場合がある。これはあくまでも説明の便宜のためであり、必ずしもロータリー式切換弁1の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、ロータリー式切換弁1の実際の使用状態における各方向を限定するものではない。
【0018】
本発明の一実施形態に係るロータリー式切換弁1は、例えばヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムSに用いられ、冷媒の流路を切り換える。図1に示すように、ロータリー式切換弁1は、弁本体10と、弁座部20と、主弁30と、副弁40と、駆動手段50と、回転規制手段60と、を備えている。弁本体10は、上側L1に底部を有し下側L2に向かって開口する有底筒状のケース部材で構成され、内部に弁室11を備えている。弁室11は、後述するピストンリング32aより上側L1の上弁室11aと、ピストンリング32aより下側L2の下弁室11bと、を備えている。弁座部20は、弁本体10の開口に嵌合して弁本体10の下側L2部分に接合する弁座本体21と、弁座本体21下側L2の端部から径方向Xの外方X2に拡がるフランジ部22と、を備えている。弁座本体21は、略円柱状に形成され、その外周面が雄ねじとなっており、弁本体10の内周面の雌ねじと螺合し、弁本体10の下端面と、フランジ部22上面が溶接で密封固定されている。弁座本体21の中心には、軸方向Lに凹む軸支持部23が形成されており、軸支持部23には、後述する回転軸53の下側L2の端部が挿入されている。
【0019】
軸支持部23の周りには、軸方向Lに貫通する複数のポートが、回転軸53の中心軸まわりに等間隔で形成されている。すなわち、弁座部20は、弁室11に開口する複数のポートを有している。複数のポートは、図2に示すように、Dポート24、Sポート25、C切換ポート26、およびE切換ポート27で構成されている。図10に示すように、Dポート24は、冷凍サイクルシステムSにおいて、圧縮機Pの吐出側に連通している。Sポート25は、圧縮機Pの吸入側に連通している。C切換ポート26は、室外熱交換器Bに連通している。E切換ポート27は、室内熱交換器Aに連通している。弁座本体21の上側L1の面におけるDポート24の開口縁部の近傍には、図2に示すように、上側L1に突出する板ばね位置決めピン28と、主弁ストッパ29と、が形成されている。すなわち、板ばね位置決めピン28と、主弁ストッパ29と、は、弁室11内に配置されている。なお、本実施形態では、板ばね位置決めピン28と、主弁ストッパ29と、が、弁座部20に設けられている構成を例示しているが、板ばね位置決めピン28と、主弁ストッパ29と、は、弁本体10に設けられていてもよい。すなわち、板ばね位置決めピン28と、主弁ストッパ29と、は、弁本体10または弁座部20のどちらに設けられていてもよい。
【0020】
板ばね位置決めピン28は、図2(B)に示すように、後述する回転規制手段60の保持部62の第一貫通孔65に挿入されることで保持部62の弁座本体21上での位置を決めている。主弁ストッパ29は、後述する主弁30の袴部31に形成されたラッチ部34の突出端部34aが当接する部材であり、円柱状に形成されている。主弁ストッパ29は、保持部62の第二貫通孔66に挿入された状態で、保持部62を弁座本体21に固定している。
【0021】
主弁30は、弁室11内にて弁座部20上を後述する回転軸53の軸回りに回転可能に設けられた弁部材である。主弁30は、外周が円形となるように樹脂で形成されており、弁座部20側に開口する椀状の袴部31と、袴部31と同軸に設けられて上側L1に延びる円筒状のピストン部32と、袴部31とピストン部32の中心を軸方向Lに延びる軸受部33と、を備えている。袴部31には、弁通路としての低圧流路31a(図3(B)参照)と、低圧流路31aと上述した上弁室11a(弁室11)とを連通する均圧孔31b(図1図3(A)参照)と、低圧流路31aと径方向Xに並ぶ高圧流路31c(図3(B)参照)と、が形成されている。低圧流路31aは、後述する軸受孔33aの径方向Xの一方側をドーム状に穿って形成されている。低圧流路31aは、本実施形態では、上述したSポート25、C切換ポート26、およびE切換ポート27のうちの2個を覆って連通させるとともに、それらを弁室11から隔離する。
【0022】
低圧流路31aの開口縁部には、弁座本体21の上側L1の面に摺接するシールリブ35が形成されている。シールリブ35は、図3(B)に示すように、袴部31の下側L2の面に形成された一対の摺動リブ36と同一平面上に位置するように調整されており、これによって、主弁30の弁座本体21に対する傾きが抑制されている。低圧流路31aの内部には、径方向Xの外方X2の外側壁面から径方向Xの内方X1の内側壁面に亘って延びる補強部材37が設置されている。低圧流路31a内は弁室11に比べて低圧となることがあるが、補強部材37を設置することで、圧力差による低圧流路31aの変形が防止されている。均圧孔31bは、低圧流路31aと上弁室11aとを連通することで低圧流路31a内外の差圧をキャンセルする孔である。均圧孔31bは、図1に示すように、低圧流路31aの天井部から後述する主弁シート面39cに亘って袴部31を貫いて形成されている。
【0023】
高圧流路31cは、低圧流路31aと略同様の形状で、軸受孔33aの径方向Xの他方側に形成されている。高圧流路31cの外方X2側の部分には、図3(B)に示すように、袴部31の下側L2部分を略90°の範囲で切り欠いた切り欠き38が形成されている。これにより、高圧流路31cは、径方向Xにも開口して常時内外に開放され、弁室11およびDポート24、を常時連通させている。切り欠き38の周方向両端部には、互いに近づく方向に向かってそれぞれ突出する一対のラッチ部34が形成されている。ラッチ部34は、本実施形態における被保持部61であり、後述する保持部62に係止される。被保持部61は、保持部62とともに本発明の回転規制手段60を構成している。ラッチ部34の突出端部34aは、上述した主弁ストッパ29に当接するように設けられ、ラッチ部34が主弁ストッパ29に当接すると、主弁30の回転軸53回りの回転が規制されることとなる。
【0024】
なお、本実施形態では、図6(A)及び図8に示すように、一方のラッチ部34が主弁ストッパ29に当接した位置と、他方のラッチ部34が主弁ストッパ29に当接した位置とで、低圧流路31aに連通されるポートが切り換わる。具体的には、一方のラッチ部34が主弁ストッパ29に当接した図6(A)に示す状態では、Sポート25とE切換ポート27とが連通する。一方、他方のラッチ部34が主弁ストッパ29に当接した図8に示す状態では、Sポート25とC切換ポート26とが連通する。このため、本実施形態では、ラッチ部34が主弁ストッパ29に当接する位置を、主弁30における所定の切換位置と呼ぶ。切換位置は、図6(A)に示すように、一方のラッチ部34が主弁ストッパ29に当接する第一所定位置と、図8に示すように、他方のラッチ部34が主弁ストッパ29に当接する第二所定位置と、で構成される。また、各切換位置に向かって主弁30が回転軸53の軸回りに回転する方向を回転方向といい、回転方向の反対方向に向かって回転する方向を反回転方向とする。
【0025】
ラッチ部34の外面には、図3(B)に示すように、径方向Xの内方X1に凹み、軸方向Lに直交する方向の断面形状がV字状の凹部34bが形成されている。すなわち、被保持部61としてのラッチ部34は、主弁30に設けられる凹部34bを有している。凹部34bは、後述する弾性部64(弾性部材)の凸部68aによって係止されるようになっており、これによって、主弁30の回転が規制された状態が維持される。なお、凹部34bの軸方向Lに直交する方向の断面形状は、V字状に限られず、半球状や、矩形状等、様々な形状であってよい。ピストン部32は、袴部31の上側L1部分に配置されて、上側L1に開口する有底筒状に形成されている。ピストン部32の外周には、ピストンリング32aが取り付けられている。また、ピストンリング32aの内側には、金属製の板ばね材で形成されたインナーリング32bが設置されており、インナーリング32bの外側への突っ張り荷重により、ピストンリング32aが径方向Xの外側に押されている。ピストンリング32aは、図1に示すように、弁室11内で弁本体10の内壁面に摺接可能に当接しており、これによって、弁本体10の内壁面にガイドされながら主弁30が軸方向Lに移動可能になっている。
【0026】
ピストン部32の内部は、副弁40を収容する略円柱状の副弁収容室39を構成している。副弁収容室39の底壁には、上側L1に突出し、回転軸53まわりに延びる台座39aが形成され、台座39aには、上側L1に突出する略扇状の副弁支持部39bが、回転軸53の周方向に等間隔をあけて3個形成されている。副弁支持部39bの上側L1の面は、副弁40が摺接する主弁シート面39cをそれぞれ構成している。3個の主弁シート面39cのうち、1個には、上述した均圧孔31bが開口している。台座39aの内部は、軸受部33の上側L1の端部を構成しており、軸受部33の中心には、軸方向Lに貫通する軸受孔33aが形成されている。軸受孔33aには、駆動手段50の回転軸53が挿通し、これによって、主弁30は回転軸53の軸回りに回転可能となっている。すなわち、主弁30は、弁室11内にて、弁座部20上を弁座部20の上面に交差する回転軸53の軸回りに回転可能に設けられている。
【0027】
副弁収容室39の側壁には、径方向Xの内方X1に突出し、軸方向Lに延びる副弁ストッパ39dが、周方向に間隔をあけて一対形成されている。副弁ストッパ39dは、周方向の断面形状が略台形に形成されている。副弁ストッパ39dは、副弁40に当接することで主弁30と副弁40との回転軸53回りの相対回転を停止させる機能を有している。副弁40は、副弁収容室39内に配置され主弁30に対して回転可能に設けられた部材である。副弁40は、図4(A)、(B)に示すように、軸方向Lに延びる円筒状のボス部41と、ボス部41の下側L2部分外面に形成される半円盤状のフランジ42と、を備えている。ボス部41の中心には、上側L1に開口する角孔43と、角孔43に連通し、下側L2に開口する軸受孔44が形成されている。角孔43には、後述する駆動手段50のカム部54が嵌まり込み、これによって副弁40と駆動手段50とが一体となる。軸受孔44は、上述した主弁30の軸受孔33aと同軸に形成され、駆動手段50の回転軸53を挿通させる。
【0028】
ボス部41の下側L2の壁面は、主弁シート面39cに摺接する副弁シート面45を構成している。副弁シート面45は、副弁40が回転する際に上述した均圧孔31bを開閉する。ボス部41には、副弁シート面45からボス部41の外面にかけて切り欠かれた副弁流路46が、回転軸53回りに間隔をあけて一対形成されている。フランジ42は、図4(A)、(B)に示すように、一対の副弁流路46を避け、且つボス部41を軸回りに略180°覆うようにして形成されている。フランジ42の周方向両端部は、上述した主弁30の副弁ストッパ39dに当接する当接部47となっており、当接部47が副弁ストッパ39dに当接することで副弁40の主弁30に対する回転が停止することとなっている。
【0029】
駆動手段50は、副弁40を回転駆動する構成であり、図1に示すように、不図示のモータの駆動軸に固定されるウォーム歯車51と、ウォーム歯車51に噛み合うウォームホイール52と、ウォームホイール52の中心を貫いて軸方向Lに延びる回転軸53と、を有している。ウォーム歯車51は、図1における前後方向に延びる駆動軸の軸回りに回転する。ウォームホイール52は、ウォーム歯車51の回転に合わせて、回転軸53の軸回りに回転する。ウォームホイール52の下側L2の壁面中央部には、下側L2に突出するカム部54が形成されている。カム部54は、副弁40の角孔43に嵌合している。これにより、副弁40は、ウォームホイール52に対して回転軸53回りの回転を規制された状態でウォームホイール52と一体となり、軸方向Lにのみ摺動可能となっている。
【0030】
したがって、ウォーム歯車51が回転した場合、ウォームホイール52と副弁40とは、協働して回転軸53の軸回りに回転する。カム部54の周りには、ウォームホイール52の下側L2の壁面から副弁40のフランジ42の上側L1の壁面まで延びるコイルばね55が設置されている。コイルばね55は、副弁40を主弁30側に付勢している。回転軸53は、ウォームホイール52を貫き、副弁40の軸受孔44および主弁30の軸受孔33aを通って弁座部20まで延びている。回転軸53の上側L1の端部は、弁本体10の天井面に形成された軸支持部12に挿入されている。回転軸53の下側L2の端部は、上述したように、弁座部20の軸支持部23に挿入されている。
【0031】
回転規制手段60は、弁本体10と主弁30との間に設けられ、主弁30が上述した切換位置から反回転方向へ回転することを規制する構成である。回転規制手段60は、図1に示すように、被保持部61(本実施形態では、ラッチ部34)と、保持部62と、を備えている。被保持部61は、上述したように、主弁30の袴部31に形成され、凹部34bを有するラッチ部34で構成されている。保持部62は、本実施形態では、図2(B)に示すように、主弁ストッパ29の近傍に設けられた金属製の部材で構成されている。保持部62は、Dポート24の外周を覆うリング部63と、リング部63の外方X2の端部から立ち上がり回転軸53の軸回りに延びる弾性部64(弾性部材)と、を備えている。
【0032】
リング部63は、弁座本体21の上側L1の面に載置される枠状の板部材で形成されている。リング部63の内方X1側の端部には、図5(A)、(B)に示すように、板厚方向に貫通する第一貫通孔65が形成され、リング部63の外方X2の端部には、板厚方向に貫通する第二貫通孔66が形成されている。図2(A)、(B)に示すように、第一貫通孔65には、上述した板ばね位置決めピン28が挿通している。第二貫通孔66には、上述した主弁ストッパ29の主弁30が当接する部分より小径の下部(不図示)が挿通している。そして、この主弁ストッパ29の下部が第二貫通孔66に挿通することで、リング部63が弁座本体21に固定されている。具体的には、主弁ストッパ29の小径の下部を第二挿通孔66に圧入等で固定することで、主弁ストッパ29の大径の上部と主弁ストッパ29の小径の下部との段差面と、弁座本体21と、の間にリング部63が挟まれ、これによってリング部63が弁座部20に固定されている。
【0033】
なお、主弁ストッパ29の小径の下部における第二挿通孔66への固定については、圧入の他に様々な固定方法を用いてよい。例えば、主弁ストッパ29の小径の下部外周面に雄ねじを形成し、第二挿通孔66の内周面に雌ねじを形成してこれらを螺合し、ねじ込み固定してもよい。また、接着剤等を用いて主弁ストッパ29の小径の下部外周面及び第二挿通孔66の内周面を接着してもよいし、加熱手段を用いて主弁ストッパ29の小径の下部外周面及び第二挿通孔66の内周面を溶着してもよい。弾性部64は、金属製の板ばねで構成されており、リング部63から立ち上がる接続部67と、接続部67から互いに離れる方向に延びる一対の弾性アーム部68と、を備えている。接続部67は、図5(B)に示すように、略矩形状に形成されている。弾性アーム部68は、接続部67の長辺方向両端部から、接続部67の板面に対してリング部63側に傾斜して延び、径方向Xに弾性変形可能に設けられている。
【0034】
弾性アーム部68の先端部には、内方X1に突出する凸部68aが形成されている。凸部68aは、図5(C)に示すように、半球凸状に形成されている。凸部68aは、ラッチ部34の凹部34bに嵌まり込むことで、ラッチ部34を係止する。弾性アーム部において、凸部68aよりも先端側には、径方向Xの外方X2に傾斜したテーパガイド部68bが形成されている。テーパガイド部68bは、所定位置に向かって回転する主弁30のラッチ部34における突出端部34aが最初に摺接する部分であり、主弁30のラッチ部34を主弁ストッパ29に向かって案内する機能を有している。
【0035】
なお、本実施形態では、凸部68aの形状を半球凸状としたが、凸部68aの形状はこれに限られない。図5(D)および(E)は、凸部68aのバリエーションを示す拡大図である。図5(D)に示すように、弾性アーム部68の先端部を径方向Xの内方X1に鋭角に折り曲げた後、さらにその先端部を弾性アーム部68の基端部側に向かって折り曲げて平面視多角形の凸とし、この凸を凸部68aに相当する凸部68cとしてもよい。また、図5(E)に示すように、弾性アーム部68の先端部を径方向Xの内方X1に鈍角に折り曲げた後、さらにその先端部を径方向Xの外方X2に折り曲げて平面視多角形の凸とし、この凸を凸部68aに相当する凸部68dとしてもよい。なお、図5(D)および(E)の変形例でも、図5(C)のようにテーパガイド部68bがあり、前述と同様に、主弁30のラッチ部34を主弁ストッパ29に向かって案内する機能を有している。なお、本実施形態では、弾性部64は、金属製の板ばねで構成したが、弾性部64の材料は金属に限られず、例えば、ゴム、軟質プラスチックなど、様々な材料を用いてよい。また、弾性部64は、板ばね以外にコイルばね(コイルばねに凸部を設けたもの)で構成してもよい。
【0036】
次に、図6(A)~図8を用いて、ロータリー式切換弁1の動作を説明する。図6(A)~図8は、主弁30が回転軸53回りに回転する様子を示す図であり、上述した第一切換位置に主弁30が位置して均圧孔31bが閉じられた図6(A)の初期状態から、第二切換位置に主弁30が位置して均圧孔31bが閉じられた図8の完了状態まで、主弁30が回転する様子を段階的に示している。具体的には、図6(A)は、初期状態にある主弁30および副弁40を示す。図6(B)は、副弁40が副弁ストッパ39dに当接した状態を示す。図7(A)は、主弁30および副弁40が協働して回転する状態を示す。図7(B)は、主弁30が保持部62に係止された状態を示す。図8は、完了状態にある主弁30及び副弁40を示す。
【0037】
そして、図6(A)~図8の上段、中段、下段は、それぞれ同じ段階の主弁30および副弁40を示しており、上段はロータリー式切換弁1の主弁30および副弁40部分を横に切断した横断面図、中段は上段をA方向から見た場合の側面図、下段は袴部31および弁座部20の平面図を示している。なお、ロータリー式切換弁1の各構成は、既に符号を付して説明済であるため、ここでは、図が煩雑になることを防ぐため、説明に必要な符号のみ付して、その他の符号を省略する場合がある。
【0038】
図6(A)に示す初期状態では、図6(A)上段および中段に示すように、副弁40の副弁シート面45(図6(A)上段ではハッチ部分)が主弁30の主弁シート面39cに当接し、均圧孔31bを閉じている。この状態では、図6(A)下段に示すように、低圧流路31aがSポート25とE切換ポート27とを覆って連通させている。また、高圧流路31cによってC切換ポート26とDポート24とが解放され、弁室11を介して連通している。また、この状態では、図6(A)中段に示すように、副弁流路46が均圧孔31bと連通していないため、高圧の副弁収容室39および、上弁室11aに対して、低圧流路31a内は低圧となっており、差圧およびコイルばね55の付勢力によって副弁40が主弁30に押し付けられ、また、この付勢力と主弁30の上下の差圧によって、主弁30が弁座部20に押し付けられている。また、この状態では、図6(A)下段および図9に示すように、一方のラッチ部34の凹部34bに保持部62の凸部68aが嵌り、凸部68aがラッチ部34を係止している。
【0039】
その後、主弁30の位置は変わらず、副弁40のみが駆動手段50によって回転方向(この場合、回転軸53の右回り方向)に回転させられる。これにより、図6(B)中段に示すように、副弁流路46が均圧孔31bと連通し、均圧孔31bが閉じられた状態から解放される。これにより、上述した差圧がキャンセルされることで、上弁室11aと低圧流路31aとが略同圧となる。このため、上述したように副弁40を主弁30に押し付ける力および、主弁30を弁座部20に押し付ける力が緩和され、主弁30が弁座部20に対して回転する際の摩擦等の抵抗が小さくなる。副弁40は、図6(B)上段に示すように、当接部47が副弁ストッパ39dに当接するまで回転方向に回転する。そして、副弁ストッパ39dに当接することで、それ以上回転できなくなり、主弁30との相対回転が停止する。
【0040】
その後、さらに副弁40が回転方向に回転しようとすると、副弁40が回転する力が、副弁ストッパ39dを介して主弁30に伝わるため、図7(A)上段に示すように、副弁40と主弁30とが一体となり、これらが協働して回転方向に回転する。この際、図7(A)下段に示すように、保持部62の凸部68aが、一方のラッチ部34の凹部34bから抜け出すことで、凸部68aによる凹部34bの係止が解除される。そして、図7(B)に示すように、主弁30と副弁40は、主弁30における他方のラッチ部34の突出端部34aが主弁ストッパ29に当接し、主弁30の回転方向への回転が規制されるまで(すなわち、第二切換位置に到達するまで)、回転方向に回転する。
【0041】
ラッチ部34の突出端部34aが主弁ストッパ29に接近する際には、まず、突出端部34aが保持部62のテーパガイド部68bに摺接し、これによって、突出端部34aが弾性アーム部68を径方向Xの外方X2に弾性変形させながら、主弁ストッパ29に向かって案内される。一方、保持部62の凸部68aは、突出端部34aを回転方向に乗り越え、図7(B)下段に示すように、主弁30における他方のラッチ部34の凹部34bに対して、回転方向に嵌り込む。これにより、凸部68aがラッチ部34を係止する。そして、主弁30の回転が規制された状態が維持される。この状態では、図7(B)下段に示すように、低圧流路31aがSポート25とC切換ポート26とを覆って連通させている。また、高圧流路31cによってE切換ポート27とDポート24とが解放され、弁室11を介して連通している。
【0042】
その後、図8上段および中段に示すように、保持部62に係止された主弁30の位置は変わらないまま、副弁40のみが駆動手段50によって反回転方向(この場合、回転軸53の左回り方向)に回転させられる。これにより、副弁40の副弁シート面45が主弁30の主弁シート面39cに当接し、均圧孔31bが再び閉じられる。また、この状態では、図8中段に示すように、副弁流路46が均圧孔31bと連通していないため、高圧の上弁室11aに対して、低圧流路31a内は低圧となっており、差圧およびコイルばね55の付勢力によって副弁40が主弁30に押し付けられ、また、この付勢力と主弁30の上下の差圧によって、主弁30が弁座部20に押し付けられている。また、この状態では、図8下段に示すように、ラッチ部34が保持部62に係止された状態が維持されることから、主弁30は、副弁40の回転に伴って回転しないようになっている。
【0043】
このように、駆動手段50によって副弁40が回転駆動されて当接部47が副弁ストッパ39dに当接する位置にて副弁流路46が均圧孔31bに連通するとともに、副弁40の回転に伴って主弁30が回転させられる。そして、主弁ストッパ29に主弁30が当接して切換位置にて主弁30の回転が停止してから、駆動手段50によって副弁40が反回転方向に駆動されることで、副弁流路46が均圧孔31bに連通しなくなり、副弁シート面45によって均圧孔31bが閉じられる。
【0044】
次に、ロータリー式切換弁1を用いた冷凍サイクルシステムSについて説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る冷凍サイクルシステムSの概略図である。この冷凍サイクルシステムSは、空気調和機の冷凍サイクルシステムの例である。空気調和機は、圧縮機P、室外熱交換器B、膨張弁V、室内熱交換器A、実施形態のロータリー式切換弁1を有しており、これらの各要素は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムSを構成している。冷凍サイクルシステムSの流路は、主弁30を回転軸53回りに回転させることで冷房運転及び暖房運転の2通りの流路に切換えられ、冷房運転時には図10(A)の状態となり、暖房運転時には、図10(B)の状態となる。なお、この図10に示すロータリー式切換弁1は、弁座部20の下側L2から見た状態として、要部の位置関係のみを示し、主弁30の一部のハッチング部分は弁座部20と当接した部分を図示してある。
【0045】
図10(A)の冷房運転時には、ロータリー式切換弁1において主弁30の低圧流路31aによりSポート25がE切換ポート27に連通され、高圧流路31cによりDポート24がC切換ポート26に連通される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機Pで圧縮された流体としての冷媒が、ロータリー式切換弁1のDポート24に流入してC切換ポート26から室外熱交換器Bに流入し、室外熱交換器Bから流出する冷媒が、膨張弁Vに流入する。そして、膨張弁Vで冷媒が膨張され、室内熱交換器Aに供給される。室内熱交換器Aから流出する冷媒は、ロータリー式切換弁1でE切換ポート27からSポート25に流れ、Sポート25から圧縮機Pへ循環する。
【0046】
図10(B)の暖房運転時には、ロータリー式切換弁1において主弁30の低圧流路31aによりSポート25がC切換ポート26に連通され、高圧流路31cによりDポート24がE切換ポート27に連通される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機Pで圧縮された冷媒がロータリー式切換弁1のDポート24に流入してE切換ポート27から室内熱交換器Aに流入し、室内熱交換器Aから流出する冷媒が、膨張弁Vに流入する。そして、膨張弁Vで冷媒が膨張され、室外熱交換器Bに供給される。室外熱交換器Bから流出する冷媒は、ロータリー式切換弁1でC切換ポート26からSポート25に流れ、Sポート25から圧縮機Pへ循環する。
【0047】
以上、上述した実施形態によれば、所定の切換位置にて主弁ストッパ29に当接し回転方向への回転を停止した主弁30は、回転規制手段60によって、反回転方向への回転を規制される。このため、主弁30が所定の切換位置から意図せず変位することによって生じる弁漏れ等を抑制し、Dポート24、Sポート25、E切換ポート27、およびC切換ポート26の切換が正常に行われる状態を良好に維持することができる。したがって、主弁30の位置ずれを防止することで切換動作を安定させることができるロータリー式切換弁1を得ることができる。
【0048】
また、本構成によれば、従来のロータリー式切換弁のように、主弁30と副弁40とをクラッチを介して接続する必要がなくなるので、意図せずクラッチの噛合いが外れて主弁30が切換位置からずれてしまう可能性をなくすことができる。また、主弁30が切換位置に停止した状態で副弁40が反回転方向に駆動される際には、主弁30の反回転方向への回転が回転規制手段60によって規制される。すなわち、保持部62の凸部68aがラッチ部34の凹部34bを係止することで、主弁30は反回転方向への回転を規制される。このため、副弁40の反回転に伴って主弁30も一緒に反回転してしまうことを抑制することができる。これにより、均圧孔31bを正常に閉じることができ、主弁30が切換位置からずれてしまうことを抑制することができる。
【0049】
また、本構成によれば、弾性アーム部68の先端に設けられた凸部68aによって主弁30に設けられた凹部34bを係止するというシンプルな構成により回転規制手段60を構成することができる。また、本構成によれば、凸部68aよりも先端側に形成されたテーパガイド部68bを主弁30に摺接させることで、主弁30を主弁ストッパ29に向かって案内することができる。このため、主弁30を案内した状態で、凸部68aによる凹部34bの係止を実現することができる。したがって、凸部68aによる凹部34bの係止が確実に行えるようになり、回転規制手段60による主弁30の反回転方向への回転規制をより確実に行うことができる。以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0050】
図11(A)は、第一変形例に係る回転規制手段の平面図であり、図11(B)は、図11(A)の要部拡大図である。第一変形例では、回転規制手段60の構成が上述した実施形態と異なっている。具体的には、被保持部61を構成するラッチ部34には、突出端部34aから袴部31の周方向(以下周方向とする)に突出する板ばね70(主弁30に設けられた弾性部材)が設置されている。板ばね70は、板状の弾性アーム部71(弾性変形可能な弾性アーム部)と、弾性アーム部71の先端部に形成され、径方向Xの外方X2に突出する凸部72(被保持部61としての凸部)と、を有している。なお、図11(B)左側に示すように、凸部72は、半球凸状に形成してもよいし、図11(B)右側に示すように、先端部を折り曲げて平面視三角形状に形成してもよい。そして、ラッチ部34の突出端部34aと、凸部72の間には、凹部73が生じている。
【0051】
第一変形例では、主弁30が回転方向に回転して主弁ストッパ29接近する際に、板ばね70は、径方向Xの内方X1に弾性変形し、この際、凸部72が主弁ストッパ29を回転方向に乗り越える。その後、板ばね70は、弾性変形前の状態と略同じ状態に復元し、この際、主弁ストッパ29が凹部73に嵌まり込んで凹部73に引っ掛かる。すなわち、板ばね70を主弁ストッパ29に引っ掛けるようにして、主弁30の回転方向への回転が規制される。この構成では、板ばね70が、上述した被保持部61に相当する。そして、主弁ストッパ29が、保持部62に相当する。すなわち、被保持部61が主弁30側に設けられ、保持部62が弁本体10側に設けられている。
【0052】
このような構成によれば、主弁ストッパ29が保持部62としても機能することとなるため、一実施形態の様に保持部62としてリング部63等を備える金属製の部材を新たに用意する必要がなくなり、保持部62の構成をシンプルにすることができる。また、主弁ストッパ29が保持部62としても機能することで、弁本体10側の構成を変更することなく、回転規制手段60を構成することができる。また、ラッチ部34の側面に上述した実施形態のような凹部34bを形成する必要がなくなるため、ラッチ部34の構成を上述した実施形態よりもシンプルにすることができる。このように、弁本体10、ラッチ部34の構成をシンプルにし、これら弁本体10及びラッチ部34の製造コストを削減することができる。
【0053】
図12(A)は、第二変形例に係る回転規制手段60の平面図であり、図12(B)は、図12(A)の要部拡大図である。図13(A)は、第二変形例に係る主弁30および弁座部20の斜視図であり、図13(B)は、図13(A)の要部拡大図である。図14は、第二変形例に係る保持部62を構成する回転規制部80の斜視図である。第二変形例では、回転規制手段60の構成が、上述した実施形態および第一変形例と異なっている。具体的には、図12(A)、(B)に示すように、ラッチ部34には、径方向Xの外方X2に開口する第一凹部34cと、径方向Xの内方X1に開口する第二凹部34dと、が形成されている。そして、上述した実施形態や第一変形例で主弁ストッパ29が配置された位置には、図13に示すように、金属製の部材を折り曲げて形成された回転規制部80が、リベット等の固定手段81を用いて固定されている。
【0054】
回転規制部80は、上述した実施形態の保持部62に相当する。回転規制部80は、図14に示すように、径方向Xに所定幅を有する底板82と、底板82の長辺方向両端部から上側L1に立ち上がる一対の縦板83と、縦板83の外方X2側の端部に連続して袴部31の周方向(以下、周方向とする)に延びる板状の主弁ラッチ部84と、縦板83の内方X1側の端部に連続して袴部31の周方向に延びる板状の主弁ストッパ部85と、を備えている。主弁ラッチ部84は、縦板83側の縁部を起点として、径方向Xに弾性変形可能に設けられ、その先端部は、第一凹部34cに嵌るように、折り曲げられて径方向X内方に凸となっている。主弁ストッパ部85は、袴部31の周方向に延びる第一板部86と、第一板部86の先端部を折り曲げて径方向Xの内方X1に延びるようにした第二板部87と、を備えている。
【0055】
第二板部87の周方向外方を向く面は、ラッチ部34の第二凹部34dにおける径方向Xに平行な面であるストッパ面34e(図12(B)のみに図示)に当接可能な平面部87aを構成している。第一板部86の縦板83側の縁部には、当該縁部を起点として、主弁ストッパ部85が径方向Xに弾性変形しないようにするため、第一補強リブ88が設けられている。また、第一板部86と第二板部87との連続部分には、第二板部87の変形を抑制するために、第二補強リブ89が設けられている。そして、主弁ラッチ部84と主弁ストッパ部85とは、図12(B)に示すように、ラッチ部34の突出端部34aを挟むようにして径方向Xに対向している。
【0056】
この第二変形例では、主弁30が回転方向に回転して主弁ラッチ部84に接近する際に、主弁ラッチ部84の先端部は、径方向Xの外方X2に弾性変形しながら突出端部34aを回転方向に乗り越える。その後、主弁ラッチ部84の先端部は、弾性変形前の状態と略同じ状態に復元することで第一凹部34cに嵌まり込む。これにより、主弁30の回転方向への回転が規制される。このとき、主弁ラッチ部84の先端部が第一凹部34cに嵌まり込むと同時に主弁ストッパ部85の平面部87aが、第二凹部34dのストッパ面34eに当接し、主弁30が回転停止する。
【0057】
これにより、主弁30の回転が規制された状態が維持される。このように、第二変形例では、回転規制部80が、上述した主弁ストッパ29および保持部62の機能を一体に備えている。このような構成によれば、弁座部20に主弁ストッパ29を形成することや、主弁ストッパ29に保持部62を固定することが必要なくなる。このため、弁座部20の構造をシンプルにすることができる。また、回転規制部80を弁座部20に固定するというシンプルな構成で、主弁30の回転を規制することと、主弁30の回転を規制した状態を維持すること、を両立することができる。
【0058】
図15(A)は、第三変形例に係る回転規制手段60の平面図であり、図15(B)は、図15(A)の要部拡大図である。第三変形例では、回転規制手段60の構成が上述した実施形態、第一変形例、および第二変形例と異なっている。具体的には、ラッチ部34の突出端部34aにマグネットMが設けられている。そして、主弁ストッパ29がマグネットまたは磁性体で構成されている。この第三変形例では、主弁30が回転方向に回転して主弁ストッパ29に当接すると、マグネットMの磁力により突出端部34aと主弁ストッパ29とが互いに磁着し、主弁ストッパ29が突出端部34aに保持される。これにより、主弁30の回転方向への回転が規制されるとともに、主弁30の回転が規制された状態が維持される。なお、上記説明では、ラッチ部34の突出端部34aにマグネットMが設けられている例を説明したが、ラッチ部34の突出端部34aに設けるものは、マグネットMに限定されず、例えば、磁性体を設けてもよい。この場合、主弁ストッパ29はマグネットで構成される。
【0059】
このような構成によれば、ラッチ部34に凹部34bを形成することや、凹部34bに嵌まり込んでこれを係止する構成等を、改めて用意する必要がなくなり、被保持部61と保持部62の構造をよりシンプルにすることができる。これにより、主弁30や弁本体10(特に主弁ストッパ29の近傍部分)の成形を容易に行うことができる。
【0060】
なお、上述の実施形態および変形例では、主弁30と副弁40とをかみ合わせるクラッチを有さないタイプのロータリー式切換弁1について説明をしたが、これはあくまでも例示であり、従来のように、主弁30と副弁40とをかみ合わせるクラッチを有するタイプのロータリー式切換弁にも、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ロータリー式切換弁
10 弁本体
11 弁室
20 弁座部
29 主弁ストッパ
30 主弁
31a 低圧流路
31b 均圧孔
40 副弁
50 駆動手段
53 回転軸
60 回転規制手段
61 被保持部
62 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15