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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106545
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】物品管理具
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240801BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G06K19/077 220
G06K19/077 252
G06K19/07 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010851
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】512026422
【氏名又は名称】セコム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 寿哉
(72)【発明者】
【氏名】島田 和也
(57)【要約】
【課題】管理対象の物品の保管前、保管中、取り出し後のすべての状態を示す信号を個々に出力できる。
【解決手段】物品管理具3は、本体部11と結束部12を有し、管理対象の鍵2と予め1対1で対応付けされる。本体部11には、第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20のパターンが形成され、鍵2を結束部12に取り付けた状態で結束部12の先端を固定するためのロック部13が設けられる。結束部12は、基端側が本体部11に対して分離可能である。鍵2の保管前の状態では、第2の回路19と第3の回路20からショートの状態信号の出力を可能とし、鍵2の保管中の状態では、全ての回路18,19,20からショートの状態信号の出力を可能とし、鍵2が取り外された状態では、第3の回路20のみからショートの状態信号の出力を可能とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と結束部を有し、管理対象の物品と予め対応付けられる物品管理具であって、
前記本体部には、前記結束部の基端が予め固定設置されており、該結束部の自由端側を本体部に固定するためのロック部が設けられ、
前記本体部及び前記結束部に形成され、前記ロック部に前記結束部がロックされると閉回路を形成し、前記ロック部に前記結束部がロックされないと開回路となる配線が第1のRFICチップに接続されている第1の回路と、
前記本体部に形成され、前記結束部が引き剥がされると切断される配線が第2のRFICチップに接続されている第2の回路と、
前記本体部に形成され、前記結束部が引き剥がされても切断されない配線が第3のRFICチップに接続されている第3の回路と、
を具備する物品管理具。
【請求項2】
前記第1のRFICチップ、第2のRFICチップ及び第3のRFICチップは、接続されている回路が閉回路を形成されていると、外部のRFリーダからの信号に応答して、信号を返信することを特徴とする請求項1に記載の物品管理具。
【請求項3】
前記本体部は板形状であり、前記第1の回路、前記第2の回路及び第3の回路は印刷により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の物品管理具。
【請求項4】
前記結束部は、前記本体部に埋設配置されており、前記ロック部により前記本体部にロックされた状態にて前記結束部を引き剥がすと、第1の回路が切断されるとともに、第2の回路も切断されることを特徴とする請求項3に記載の物品管理具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鍵などの物品を厳格管理する際に使用する物品管理具に関し、特に管理状態をRFリーダにて読み出して物品の管理状態を外部機器(PC)等にて管理できる物品管理具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、警備会社では、緊急事態発生時に、警備員が警備対象の住宅に入る必要がある。このため、警備会社は住宅の鍵を預かることが通例となっている。この預かった鍵を保管ボックスに保管し、その保管状態を管理するために物品管理具が使用される。物品管理具は、管理対象の鍵と保管ボックスとを結束し、鍵の使用時に物品管理具による結束を切って、鍵を保管ボックスから取り出し鍵を使用可能な状態とする。
【0003】
この際、物品管理具により保管ボックスに鍵が結束された状態は、鍵が使用されていないことを示し、物品管理具が切られて保管ボックスと鍵が結束されていない状態は、鍵が使用された状態を示す。そして、物品管理具は、結束された状態から一度切られると、元に戻せない構造とされており、鍵の使用後には新しい物品管理具にて保管ボックスに結束させることになる。ここで、物品管理具と鍵とは、予め対応つけているので、使用済の物品管理具を点検することにより鍵の使用を確認できる。また、新たに鍵を保管ボックスに結束する際は、使用する物品管理具と鍵とを対応つけて管理する。この対応つけて管理するのは、コンピュータを用いて行っておき、鍵の識別コードと物品管理具の識別コードにて対応付けすることになる。物品管理具の使用順を決めておくなどにより、時系列に管理状況を行うことができる。これにより、顧客から預かっている大切な鍵使用の厳格な管理が可能となる。
【0004】
従来の物品管理具としては、例えば下記特許文献1に開示されるように、結束バンドとRFIDタグを一体化し、結束バンドが切断されるとRFIDタグから開封状態を出力する結束バンド付きICタグが知られている。この結束バンド付きICタグでは、結束バンド内に配置された回路がICチップに接続されており、結束バンドが切断により回路が切断されることにより、開封状態を検出する。ICチップは、RFリーダとアンテナを介して例えばPCなどの外部機器と無線通信することにより、物品管理具の状態を管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-112132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、警備会社は多数の鍵を保管ボックスにて保管管理しなければならない。このため、多数の物品管理具を用いて、鍵ごとに管理している。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の物品管理具では、物品の結束が解除されたか否かを検出することにより、物品管理具の使用前の状態と使用後の状態を管理することができる。しかし、物品管理具を物品と結束前と結束中である物品の管理前の状態と管理中の状態との区別ができない。例えば、物品管理具を用いて保管ボックスに多数の鍵を結束して管理している場合、結束前の物品管理具と結束中の物品管理具が保管ボックス内又は周辺に混在すると、RFリーダは、鍵を結束していない結束前の物品管理具からの信号と鍵を結束している使用中の物品管理具からの信号の両方の信号を区別できずに受信することになる。このため、結束前の物品管理具の保管に注意を払う必要があり、誤って結束前の物品管理具を保管ボックスの近辺に置いてしまうと、結束されている鍵を管理する上で、外部機器での物品管理具及び鍵の存在管理が煩雑となるという課題があった。
【0008】
更に、例えばPCなどの外部機器で物品管理する際には、結束解除後の物品管理具の存在まで把握しておきたいという要望がある。しかし、従来の物品管理具では、結束前、結束中、物品取り出し後のすべての状態をRF信号として出力できるものがなかった。このため、管理状態の信号のみでは、物品管理具の三状態(結束前、結束中、物品取り出し後の状態)を把握できず、全ての物品管理具の直前の履歴情報と、受信した物品管理具の状態情報を突合しなければ開封後の物品管理具を把握できなかった。
【0009】
また、従来、物品管理具に対し、二次元のバーコード等を印字しておき、物品管理具の結束が解除されると二次元バーコードが読取不能化することにより、物品の結束を解除するとともに状態を管理するものがある。この物品管理具による管理は、物品の新規保管や物品の使用時に、その都度、使用者が目視により物品管理具と物品の存在確認、二次元バーコードをバーコードリーダにて1物品(一物品管理具)毎に読み取り、結束及び存在を管理している。このため、使用者は、保管や使用の際における確認・管理作業に時間がかかってしまうという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、管理対象の物品の保管前、保管中、取り出し後のすべての状態を示す信号を個々に出力できる物品管理具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明に係る物品管理具は、本体部と結束部を有し、管理対象の物品と予め対応付けられる物品管理具であって、前記本体部には、前記結束部の基端が予め固定設置されており、該結束部の自由端側を本体部に固定するためのロック部が設けられ、前記本体部及び前記結束部に形成され、前記ロック部に前記結束部がロックされると閉回路を形成し、前記ロック部に前記結束部がロックされないと開回路となる配線が第1のRFICチップに接続されている第1の回路と、前記本体部に形成され、前記結束部が引き剥がされると切断される配線が第2のRFICチップに接続されている第2の回路と、前記本体部に形成され、前記結束部が引き剥がされても切断されない配線が第3のRFICチップに接続されている第3の回路と、を具備する物品管理具を提供する。
【0012】
更に、前記第1のRFICチップ、第2のRFICチップ及び第3のRFICチップは、接続されている回路が閉回路を形成されていると、外部のRFリーダからの信号に応答して、信号を返信することを特徴とする。
【0013】
更に、前記本体部は板形状であり、前記第1の回路、前記第2の回路及び第3の回路は印刷により形成されていることを特徴とする。更に、前記結束部は、前記本体部に埋設配置されており、前記ロック部により本体部にロックされた状態にて前記結束部を引き剥がすと、第1の回路が切断されるとともに、第2の回路も切断されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、管理対象の物品の保管前、保管中、物品取り出し後のすべての状態を示す信号を個々に出力可能な構成なので、RFリーダの送信信号に対して物品管理具から受信した信号により管理対象の物品の状態を容易に確認・管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明に係る物品管理具の正面図、(b)同物品管理具の背面図である。
図2】本発明に係る物品管理具を用いた物品管理システムにおける管理対象の鍵の保管前の状態を示す図である。
図3】(a),(b)本発明に係る物品管理具を用いた物品管理システムにおける管理対象の鍵の保管中の状態を示す図である。
図4】(a),(b)本発明に係る物品管理具を用いた物品管理システムにおける管理対象の鍵を取り出し後の状態を示す図である。
図5】物品管理具のロック状態を示す部分拡大断面図である。
図6】本発明に係る物品管理具を用いた物品管理システムの処理手順を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る物品管理具を用いた物品管理システムにより管理される鍵管理データの履歴情報の一部を示す図である。
図8】(a)本発明に係る物品管理具の他の構成例を示す斜視図であって、ロック前の状態を示す図、(b)ロック後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る物品管理具は、管理対象の物品の保管前の状態、保管中の状態、物品取り出し後の状態をそれぞれ独立した3回路にて検出し、RFリーダからの送信信号(RF信号)に対し、物品の管理状態を状態信号(ショート状態)として送信し、例えばPCやモバイル端末などの外部機器で管理する際に使用されるものである。以下、管理対象の物品として鍵を例にとって説明する。
【0018】
図2に示すように、物品管理システム1は、管理対象の鍵2の状態(保管前、保管中、物品取り出し後の状態)を管理するもので、物品管理具3、RFリーダ4、外部機器5を備えて概略構成される。
【0019】
管理対象の鍵2は、図3(a),(b)に示すように、鍵2ごとに、鍵2を特定する識別コード(例えばバーコード、QRコード(登録商標)、製造番号、通し番号など)が付与されたプレート6と一緒にリング7に取り付けられている。
【0020】
プレート6の識別コードは、予め読み取られ、そのプレート6と一緒にリング7に取り付けられた鍵2と、その鍵2に使用される物品管理具3の識別コードとを1対1で対応付けられている。この対応付けされた情報は、物品管理データ(鍵管理データ)として外部機器5で管理される。
【0021】
なお、図示の例では、鍵2と、識別コードが付与されたプレート6とを一緒にリング7に取り付けているが、この構成に限定されるものではない。例えば鍵2のみをリング7を介して物品管理具3に取り付ける構成、鍵2を直接物品管理具3に取り付ける構成であってもよい。この場合、鍵2に刻印される製造番号を、鍵2を特定する識別コードとして予め読み取り、読み取った識別コードを、その鍵2に使用される物品管理具3と1対1で対応付けされ、鍵管理データ(物品管理データ)として外部機器5で管理することができる。
【0022】
物品管理具3は、例えば絶縁性の樹脂などで構成され、図1図4に示すように、例えば板状の本体部11と、管理対象の鍵2とプレート6を取り付けたリング7が着脱される所定長さの結束部12を有する。
【0023】
図1図4に示すように、本体部11には、例えば円形穴からなるロック部13が形成されている。ロック部13には、図3(b)に示すように、結束部12に管理対象の鍵2とプレート6を取り付けたリング7を挿通し、さらに保管ボックス(キーボックス)のL字状の固定具14の取付穴14aに挿通した状態で、結束部12の先端側(自由端側)に設けられる例えば円形状のフック部12aが圧入される。これにより、図5に示すように、結束部12のフック部12aがロック部13に固定され、管理対象の鍵2を取り付けた物品管理具3が保管ボックスに保管された状態となる。このとき、後述する第1の回路18は、フック部12aに形成されるパターン18bとロック部13に形成されるパターン18bとが導通して閉回路を形成する。また、図5に示すように、フック部12aには、抜け止め部18cが突出形成される。抜け止め部18cは、フック部12aをロック部13に固定した後、フック部12aをロック部13から引き抜こうとしたときに、本体部11の裏側に当接してフック部12aがロック部13から抜けるのを防いでいる。
【0024】
なお、保管ボックスは、所定間隔で複数の取付穴14aが形成されたL字状の固定具14を複数段備えており、管理対象の鍵2とプレート6を取り付けたリング7が挿通された物品管理具3を一つずつ取付穴14aに取り付けることにより複数の鍵2を一括管理するものである。
【0025】
図1(a)に示すように、本体部11には、本体部11に埋設配置された結束部12の基端側の延長線上の上端部が下向きコ字状に欠切され、結束部12を本体部11から分離する際の取手15が形成されている。
【0026】
図1(b)に示すように、本体部11の背面側における結束部12の基端側(本体部11との境目部分)と取手15との間(図1(a)の点線で示す部分)は、結束部12の延長部12bを形成している。結束部12の延長部12bの両側には、薄肉部による2本の長溝16が平行に形成されている。これにより、取手15を持ち、図1(a)の点線に沿って取手15を結束部12の基端側に向かって引っ張ると、取手15と結束部12の基端側との間の延長部12bが2本の長溝16に沿って引き裂かれ、結束部12を本体部11から容易に分離することができる。
【0027】
このように、結束部12は、取手15を持って結束部12の基端側に向かって引っ張った際に、取手15と結束部12の基端側との間の延長部12bが2本の長溝16に沿って引き裂かれ、基端側が本体部11に対して分離可能に設けられている。
【0028】
結束部12の延長部12bは、後述する第1の回路18に設けられる第1のRFICチップ18a、後述する第2の回路19に設けられる第2のRFICチップ19aそれぞれに近接した位置で本体部11から分離可能となっている。これにより、RFリーダ4からの送信信号に対し、パターン18b,19bの一部が切除された第1の回路18の第1のRFICチップ18aと第2の回路19の第2のRFICチップ19aが応答するのを防ぐことができる。なお、取手15を結束部12の基端側に向かって引っ張ったときに、第1の回路18の第1のRFICチップ18aと第2の回路19の第2のRFICチップ19aを含めてパターン18b,19bの一部が切除される構成とすれば、RFリーダ4からの送信信号に対する応答を確実に防ぐことができる。
【0029】
本体部11の表面には、アンテナフィルム17が貼付されている。このアンテナフィルム17上には、RF回路として、第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20による独立した3つの回路が形成されている。
【0030】
第1の回路18は、本体部11及び結束部12に形成され、ロック部13に結束部12がロックされると閉回路を形成し、ロック部13に結束部12がロックされないと開回路となる配線が第1のRFICチップ18aに接続されている構成である。さらに説明すると、第1の回路18は、第1のRFICチップ18aが接続された状態で結束部12の先端のフック部12aと本体部11のロック部13との間に形成されるアンテナフィルム17上のパターン18bからなる。第1の回路18は、結束部12のフック部12aがロック部13に固定されて閉回路を形成しているときに、第1のRFICチップ18aが外部のRFリーダ4からの送信信号に応答して信号を返信する。第1の回路18は、本体部11から結束部12が分離されたときに、本体部11のアンテナフィルム17上に第1のRFICチップ18aを残した状態でパターンの一部が切除されて開回路を形成する。
【0031】
第2の回路19は、本体部11に形成され、結束部12が引き剥がされると切断される配線が第2のRFICチップ19aに接続されている構成である。さらに説明すると、第2の回路19は、第2のRFICチップ19aが接続された状態で本体部11に形成される独立した閉回路によるアンテナフィルム17上のパターン19bからなる。第2の回路19は、閉回路を形成しているときに、外部のRFリーダ4からの送信信号に応答して信号を返信する。第2の回路19は、本体部11から結束部12が分離されたときに、本体部11のアンテナフィルム17上に第2のRFICチップ19aを残した状態でパターンの一部が切除されて開回路を形成する。
【0032】
第3の回路20は、本体部11に形成され、結束部12が引き剥がされても切断されない配線が第3のRFICチップ20aに接続されている構成である。さらに説明すると、第3の回路20は、第3のRFICチップ20aが接続された状態で本体部11に形成される独立した閉回路によるアンテナフィルム17上のパターン20bからなる。第3の回路20は、閉回路を形成しているときに、外部のRFリーダ4からの送信信号に応答して信号を返信する。
【0033】
上記構成により、管理対象の鍵2がプレート6と一緒にリング7を介して結束部12に取り付けられる保管前の状態のときは、RFリーダ4からの送信信号に対し、第2のRFICチップ19aが接続された第2の回路19と、第3のRFICチップ20aが接続された第3の回路20からショートの状態信号の出力が可能となる。
【0034】
また、管理対象の鍵2がプレート6と一緒にリング7を介して結束部12に取り付けられた保管中の状態のときは、RFリーダ4からの送信信号に対し、第1のRFICチップ18aが接続された第1の回路18、第2のRFICチップ19aが接続された第2の回路19、第3のRFICチップ20aが接続された第3の回路20の全ての回路からショートの状態信号の出力が可能となる。
【0035】
さらに、結束部12が本体部11から分離され、管理対象の鍵2とプレート6が取り付けられたリング7が結束部12から取り外された状態のときは、RFリーダ4からの送信信号に対し、第3のRFICチップ20aが接続された第3の回路20のみからショートの状態信号の出力が可能となる。
【0036】
次に、上記のように構成される物品管理具3を用いて管理対象の鍵2を管理する場合の動作について図2図4を参照しながら説明する。
【0037】
[保管前]
図2は物品管理具3を用いた物品管理システム1における管理対象の鍵2の保管前の状態を示す図である。
【0038】
管理対象の鍵2を保管する前において、物品管理具3の第1の回路18は、結束部12のフック部12aが本体部11のロック部13に固定されずに開いているので、第1のRFICチップ18aが接続されたパターンがオープン状態となっている。また、物品管理具3の第2の回路19は、独立した閉回路を形成しており、第2のRFICチップ19aが接続されたパターンがショート状態となっている。さらに、物品管理具3の第3の回路20は、第2の回路19と同様に、独立した閉回路を形成しており、第3のRFICチップ20aが接続されたパターンがショート状態となっている。
【0039】
この状態で、外部機器5は、RFリーダ4の送信信号に対する物品管理具3からの状態信号を受信する。これにより、物品管理具3の第1の回路18がオープン状態を示し、第2の回路19と第3の回路20の2つの回路からショート状態の状態信号を受信するので、管理対象の鍵2が保管前であることを認識する。
【0040】
[保管中]
図3(a),(b)は物品管理具3を用いた物品管理システム1における管理対象の鍵2の保管中の状態を示す図である。
【0041】
保管ボックスに鍵2を保管する際は、物品管理具3の結束部12を鍵2の穴、プレート6の穴、保管ボックスの固定具14の取付穴14aにそれぞれ挿通し、ロック部13にフック部12aを挿入して固定する。これにより、物品管理具3の第1の回路18のパターンがループ状に繋がり、第1のRFICチップ18aが接続された第1の回路18がショート状態となる。
【0042】
なお、物品管理具3の第2の回路19と第3の回路20は、上述した保管前と同様に、ショート状態を維持している。
【0043】
この状態で、外部機器5は、RFリーダ4の送信信号に対する物品管理具3からの状態信号を受信する。これにより、物品管理具3の第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20の全ての回路(3つの回路)からショート状態の状態信号を受信するので、管理対象の鍵2が保管中であることを認識する。
【0044】
[鍵取り出し後]
図4(a),(b)は物品管理具3を用いた物品管理システム1における管理対象の鍵2の取り出し後の状態を示す図である。
【0045】
保管ボックスから鍵2を取り出す際は、物品管理具3の取手15を結束部12の基端側に引っ張ると、取手15と結束部12の基端側との間の延長部12bが2本の長溝16に沿って引き裂かれ、物品管理具3が破断する。これにより、保管ボックスの固定具14の取付穴14aと物品管理具1の結束が外れ、利用者は物品管理具1から鍵5とプレート6が取り付けられたリング7を抜き取り、鍵2を取り出すことができる。このとき、第1の回路18は、本体部11のアンテナフィルム17上に第1のRFICチップ18aを残した状態でパターンの一部が切除される。同様に、第2の回路19は、本体部11のアンテナフィルム17上に第2のRFICチップ19aを残した状態でパターンの一部が切除される。
【0046】
この状態で、外部機器5は、RFリーダ4の送信信号に対する物品管理具3からの状態信号を受信する。これにより、物品管理具3の第1の回路18と第2の回路19がオープン状態を示し、第3の回路20の1つの回路のみからショート状態の状態信号を受信するので、鍵2が取り出し後の状態であることを認識する。
【0047】
このように、本実施の形態では、RFリーダ4が送信信号に対して物品管理具3の3つの回路(第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20)から受信したショート状態の状態信号に基づいて鍵2の3つの状態(保管前、保管中、鍵取り出し後の状態)を認識することができる。
【0048】
次に、管理対象の鍵2を管理する際の外部機器5の処理について図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
外部機器5の処理にあたっては、物品管理具3を用いて保管ボックスに保管された管理対象の全ての鍵2に対し、RFリーダ4による状態信号の読み取りを開始する(ST1)。外部機器5は、RFリーダ4による管理対象の全ての鍵2の状態信号の読み取りが完了すると(ST2-Yes)、RFリーダ4で読み取った管理対象の鍵2の状態信号を鍵管理データと突き合わせる突合処理を実行する(ST3)。そして、外部機器5は、突合処理を実行した結果を、例えば図7に示す表示形式で表示画面上に表示処理する(ST4)。その後、突合処理を実行した担当者とは別の担当者が突合処理の結果の修正確認を行い(ST5)、突合処理の結果に修正が有る場合には修正処理を施し、外部機器5の鍵管理データを更新する。そして、突合処理の結果の修正確認が完了すると、外部機器5による処理を終了する。
【0050】
次に、外部機器5によって管理される鍵管理データの具体例について図7を参照しながら説明する。図7は2022年8月22日8時30分に保管ボックスを点検した後の鍵管理データの履歴情報の一部を示している。鍵管理データは、物品管理具3による鍵2の管理状態を示すデータであり、図7に示すように、物品管理具3からの状態信号に基づいて物品管理具3の識別コード、鍵2の識別コード、鍵2の管理状態、最終確認日時、確認担当者を紐付けたものである。
【0051】
図7の鍵管理データによれば、2022年8月22日8時30分に識別コード:[000001]の物品管理具3にて識別コード:[0002]の鍵2が封緘され、識別コード:[00088]の物品管理具3にて識別コード:[0101]の鍵2が封緘され、識別コード:[050024]の物品管理具3にて識別コード:[0526]の鍵2が封緘されたことを確認担当者aが確認したことが判る。また、その後、2022年8月22日11時5分に識別コード:[000001」の物品管理具3を開封して識別コード:[0002]の鍵2を使用し、使用後の16:10に識別コード:[000200]の新規の物品管理具3を用い、この物品管理具3にて16:37に識別コード:[0002]の鍵2を封緘し、その他の識別コード:[000088]の物品管理具3と識別コード:[050024]の物品管理具3の状態には変化がなかったことを確認担当者bが確認したことが判る。
【0052】
ところで、上述した実施の形態では、本体部11の形状として長方形の板状のものを図示して説明したが、この形状に限定されるものではない。円筒状や角筒状などの他の形状で本体部11を形成することもできる。
【0053】
また、本体部11の3つの回路(第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20)と結束部12(フック部12a、延長部12b)の第1の回路18のパターン18bは、印刷、成形回路部品(MID:Molded Interconnect Device)、電極フィルムのインサート成形などの工法により形成することができる。
【0054】
図8(a),(b)は物品管理具の他の構成例を示している。なお、図8(a),(b)において、図1の物品管理具3と同等に機能する構成要素には同一番号を付して説明する。
【0055】
図8(a),(b)に示す物品管理具21は、図1の物品管理具3と同様に、本体部11と結束部12で構成される。本体部11は、有底円筒状で形成され、一方の面側に開口穴からなるロック部13を有する。本体部11の一方の面側の外周の一部には、本体部11の長手方向と直交する方向に突出して取手15が設けられる。取手15から本体部11の他方の面側寄りの位置には、結束部12をロック部13に固定した際に、後述する爪部を係止するための係止穴16が形成される。本体部11における取手15の基端部の両側には、本体部11の長手方向に沿って所定長さの2本の長溝17が平行に形成されている。取手15を持ち、図8(b)の点線で示すように、本体部11の他方の面側に向かって長手方向に引っ張ると、本体部11の一部が2本の長溝17に沿って長手方向の中途位置まで引き裂かれる。
【0056】
結束部12は、一端が本体部11の他方の面側に固定され、他端(自由端)側に円板状の蓋部22が取り付けられ、さらに他端側の先端にロート状のフック部12aが設けられる。フック部12aの外周の一部には、フック部12aを本体部11のロック部13に圧入して蓋部22が本体部11のロック部13を塞いだ際に本体部11の係止穴16に係止する爪部23が設けられる。
【0057】
本体部11の表面の不図示のアンテナフィルム上には、第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20による独立した3つの回路がMIDにより形成される。
【0058】
第1の回路18は、第1のRFICチップ18aが接続された状態で結束部12の先端のフック部12aと本体部11のロック部13との間に形成されるアンテナフィルム上のパターン18bからなる。第1の回路18は、結束部12のフック部12aがロック部13に固定されて閉回路を形成しているときに、第1のRFICチップ18aが外部のRFリーダ4からの送信信号に応答して信号を返信する。第1の回路18は、取手15を引っ張ることで本体部11の一部が引き裂かれたときに、第1のRFICチップ18aを含むパターン18bの一部が切断される。
【0059】
第2の回路19は、第2のRFICチップ19aが接続された状態で本体部11に形成される独立した閉回路によるアンテナフィルム上のパターン19bからなる。第2の回路19は、閉回路を形成しているときに、外部のRFリーダ4からの送信信号に応答して信号を返信する。第2の回路は、取手15を引っ張ることで本体部11の一部が引き裂かれたときに、第2のRFICチップ19aを含むパターン19bの一部が切断される。
【0060】
第3の回路20は、第3のRFICチップ20aが接続された状態で本体部11に形成される独立した閉回路によるアンテナフィルム上のパターン20bからなる。第3の回路20は、閉回路を形成しているときに、外部のRFリーダ4からの送信信号に応答して信号を返信する。
【0061】
このように、図8(a),(b)に示す物品管理具21を用いた場合でも、図1の物品管理具3を用いた場合と同様に、RFリーダ4が送信信号に対して物品管理具21の3つの回路(第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20)から受信したショート状態の状態信号に基づいて鍵2の3つの状態(保管前、保管中、鍵取り出し後の状態)を認識することができる。
【0062】
ところで、上述した実施の形態では、管理対象の物品として鍵2を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば鍵2としてのカードキーを管理対象の物品としてもよい。その他、在庫及び保管状況を管理したい電化製品や重要書類、設備等を管理対象の物品とすることもできる。
【0063】
このように、本実施の形態では、第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20からなる3つのRF回路を物品管理具3に内蔵した構成により、管理対象の物品(鍵2)の保管前・保管中・物品取り出し後の3つの状態を示す信号を個々に出力可能とし、RFリーダ4の送信信号に対して物品管理具から受信した信号により管理対象の物品の状態を外部機器5を用いて容易に確認・管理が行え、物品の状態確認作業の短縮を図ることができる。
【0064】
しかも、物品管理具3の本体部11に対し、3つのRF回路(第1の回路18、第2の回路19、第3の回路20)が独立して設けられるので、物品管理具3の製造が容易になる。
【0065】
さらに、外部機器5では、直前の物品の管理状態を確認しなくとも、今回RFリーダ4が受信した物品管理具3の状態信号(ショートまたはオープンの状態信号)から物品取り出し後の物品管理具3の存在も含めて管理状態を把握でき、物品取り出し後の物品管理具3を含めた在庫管理が可能となる。
【0066】
そして、本実施の形態は、管理対象の物品として上述した鍵2以外にも在庫及び保管状況を管理したい電化製品や重要書類、設備等に使用することができ、さまざまな用途への展開が期待できる。
【0067】
以上、本発明に係る物品管理具の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 物品管理システム
2 鍵(管理対象の物品)
3 物品管理具
4 RFリーダ
5 外部機器
6 プレート
7 リング
11 本体部
12 結束部
12a フック部
12b 延長部
13 ロック部
14 固定具
14a 取付穴
15 取手
16 長溝
17 アンテナフィルム
18 第1の回路
18a 第1のRFICチップ
18b パターン
18c 抜け止め部
19 第2の回路
19a 第2のRFICチップ
19b パターン
20 第3の回路
20a 第3のRFICチップ
20b パターン
21 物品管理具
22 蓋部
23 爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8