特開 2024-106551 振動発電器及びヘルムホルツ共鳴器の製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024106551

(43)【公開日】2024-08-08

(54)【発明の名称】振動発電器及びヘルムホルツ共鳴器の製造方法

(51)【国際特許分類】

   H04R 17/10 20060101AFI20240801BHJP

【ＦＩ】

H04R17/10

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023010860

(22)【出願日】2023-01-27

(71)【出願人】

【識別番号】000143949

【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所

(74)【代理人】

【識別番号】110001243

【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】石黒 巧真

(72)【発明者】

【氏名】芦澤 久幸

【テーマコード（参考）】

5D004

【Ｆターム（参考）】

5D004AA01

5D004BB00

5D004DD02

5D004DD07

(57)【要約】

【課題】ヘルムホルツ共鳴器で増幅した振動をより効率的に振動発電素子に到達させ利用する振動発電器を提供する。
【解決手段】空洞及び前記空洞に連通するネック部を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器と、前記振動部に設けられた振動発電素子とを備える振動発電器を提供する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

空洞及び前記空洞に連通するネック部を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器と、
前記振動部に設けられた振動発電素子と
を備える振動発電器。

【請求項2】

前記振動発電素子の可動子の振動方向が、前記振動部の振動方向と実質的に一致する、請求項１に記載の振動発電器。

【請求項3】

前記振動発電素子が、圧電型振動発電素子からなる、請求項１に記載の振動発電器。

【請求項4】

前記振動部は前記筐体の他の部分よりも剛性が低い、請求項１に記載の振動発電器。

【請求項5】

前記振動部は、前記筐体の他の部分よりも厚さが薄い、請求項４に記載の振動発電器。

【請求項6】

前記振動部は前記筐体の他の部分と異なる材料から形成された振動板が接合されている、請求項４に記載の振動発電器。

【請求項7】

前記接合は、接着、溶着またはねじ留めにより行われる請求項６に記載の振動発電器。

【請求項8】

空洞及び前記空洞に連通するネック部を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器の製造方法であって、
前記振動部は、振動板を筐体に接合することにより形成される方法。

【請求項9】

前記接合は、接着、溶着またはねじ留めにより行われる請求項８に記載の方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ヘルムホルツ共鳴器を用いた音振動発電に関する。

【背景技術】

【0002】

振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電素子は、センサ等の電子機器に用いられている。

【0003】

振動発電素子は、振動の大きさが大きいほど、発電量が大きくなる。そのため、音に対応する振動発電素子では、音の振動を大きくすることで、発電量を増やすことができる。

【0004】

音の振動を大きくする方法の一つに、ヘルムホルツ共鳴器が知られている。ヘルムホルツ共鳴器は、空洞と、当該空洞に連通し、一つの側面に開口部を有するネック部とを備えた箱体からなり、この箱体の空洞部に、ネック部を介して、音波を導入し、特定の周波数の振動に対して共鳴させるものである。

【0005】

ヘルムホルツ共鳴器を用いて音エネルギーを増幅する方法が特許文献１に記載されている。特許文献１では、ヘルムホルツ共鳴器の開口部に対向するように発電装置が設置され、発電装置のコイルを振動させて発電を行っている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特許第４６３３３４２号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

しかし、特許文献１では、ヘルムホルツ共鳴器の開口部に対向するように発電装置が設置されているため、ヘルムホルツ共鳴器で共鳴され増幅された音が、ヘルムホルツ共鳴器を出るまでに、またヘルムホルツ共鳴器から出てコイルに到達する前に減衰するおそれがあった。

【0008】

これらを鑑み、本発明は、ヘルムホルツ共鳴器で増幅した振動をより効率的に振動発電素子へと到達させ利用する振動発電器を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記課題を解決するために、本発明に係る一実施態様の振動発電器は、空洞及び前記空洞に連通するネック部を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器と、前記振動部に設けられた振動発電素子とを備える。

【0010】

また、本発明に係る他の実施形態では、空洞及び前記空洞に連通するネック部を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器の製造方法であって、前記振動部は、振動板を筐体に接合することにより形成される方法を提供する。

【発明の効果】

【0011】

本発明は、ヘルムホルツ共鳴器で増幅した振動をより効率的に振動発電素子へと到達させ利用する振動発電器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】（ａ）本発明の第１の実施形態に係る振動発電器の斜視図である。（ｂ）（ａ）におけるＩｂ－Ｉｂ線に沿った断面図である。（ｃ）（ａ）における矢印Ｉｃ方向から見た底面図である。

【図2】本発明の第１の実施形態における振動板の取付例を示す図である。

【図3】ヘルムホルツ共鳴器の模式図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらに限られない。

【0014】

１．振動発電器
図１（ａ）は本発明の一実施形態に係る振動発電器１００の斜視図であり、図１（ｂ）はその断面図であり、図１（ｃ）は底面図である。図１（ａ）に示されるように、振動発電器１００は、ヘルムホルツ共鳴器５０と、ヘルムホルツ共鳴器５０に設けられた振動発電素子７０とを備える。以下、振動発電器１００の各構成を順に説明する。

【0015】

なお、詳細は後述するが、本実施形態においては、ヘルムホルツ共鳴器５０と、振動発電素子７０とを一体的に構成することにより、特許文献１のように、ヘルムホルツ共鳴器により増幅された音が振動発電素子を振動させる前に減衰されてしまうことを防ぐものである。

【0016】

（ヘルムホルツ共鳴器）
ヘルムホルツ共鳴器５０は、空洞２０を有する筐体２５と、筐体２５に設けられ、空洞２０に連通するネック部３０と、筐体２５に設けられ、空洞２０の一部を画定する振動部４０とを有する。

【0017】

筐体２５は、空洞２０を画定し、後述するネック部３０および振動部４０を有する。空洞２０は、ヘルムホルツ共鳴器５０に取り込まれた音が共鳴する空間である。筐体２５は、任意の形状であってよく、例えば、円筒形状や直方体形状であってもよい。

【0018】

ネック部３０は、筐体２５の一部に設けられ、空洞２０と外部環境とを連通する。そのため、ネック部３０は、音取り込み口として、外部の音を空洞２０内に取り込むことができる。ネック部３０は、流路面積であるネック面積Ｓと、流路長さであるネック長さＬを有し、後述するようにヘルムホルツ共鳴器５０の共鳴周波数を規定する。

【0019】

ネック部３０は、筐体２５の壁面の任意の場所に設けることができる。例えば、音源方向にネック部３０の開口部３５が対向するように形成されてもよく、また雨やほこりなどの進入を防ぐように、開口部３５が下向きになるように形成してもよい。また、開口部３５に振動を伝達するカバー部材を設け、空洞２０を水やほこりなどの外的環境から保護することができる。

【0020】

振動部４０は、筐体２５の一部に設けられ、筐体２５の他の部分よりも剛性が低い部分である。そのため、振動部４０は、筐体２５の他の部分よりも可撓性が高く、音圧を受けて振動することができる。

【0021】

振動部４０は、筐体２５の一部に肉薄部を設け、筐体２５の他の部分と一体的に形成してもよい。また、振動部４０として別個の部品である振動板４５を筐体２５に接合し、空洞２０を画定してもよい。振動板４５の接合方法は、これに限定されないが、例えば、接着、溶着、およびねじ留めなどを用いることができる。図２では、振動板４５を筐体上面部２６および筐体本体部２７で挟持し、ねじ型留め具２４で固定している。

【0022】

振動部４０は任意の形状であってもよい。例えば、円盤状であってもよく、また多角形盤状であってもよい。後述するように、振動部４０には振動発電素子７０が設けられるため、振動発電素子７０を保持する形状をさらに有してもよい。

【0023】

振動部４０は、筐体２５のほかの部分と同じ材料から形成されていてもよく、また異なる材料で形成されてもよい。筐体２５と振動部４０とが同じ材料で形成される場合、材料としてポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および金属などを用いることができる。また、筐体２５と振動部４０とが異なる材料から形成される場合、上記の材料の組み合わせで作成することができる。例えば筐体２５をアクリル樹脂で形成し、ＰＥＴで形成された振動板４５を接合して、ヘルムホルツ共鳴器５０を形成してもよい。

【0024】

（振動発電素子）
振動発電素子７０は、振動部４０に設けられ、ヘルムホルツ共鳴による音波の到達で振動部４０が振動することにより、振動して発電を行う素子である。振動発電素子７０により発電された電気エネルギーは、配線（不図示）により外部に伝達され、センサ信号などに利用することができる。

【0025】

振動発電素子７０は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する素子であれば任意の素子を用いることができる。例えば、振動発電素子として、櫛歯型電極を有する静電誘導型振動発電素子を用いてもよい。また、振動発電素子７０は静電誘導型振動発電素子以外にもエレクトレット型発電素子、ピエゾ型発電素子、電磁誘導型、または磁歪型の発電素子を用いてもよい。

【0026】

また振動部４０自体が振動発電素子７０を形成してもよい。例えば、振動部４０に圧電膜を成型した圧電型振動発電素子を設けることができる。

【0027】

一方、振動発電素子７０として、櫛歯型電極を有する静電誘導型振動発電素子を用いた場合、振動発電素子７０の可動電極の振動方向は、振動部４０の振動方向と一致することが好ましい。図１に記載の本発明の一実施形態の振動部４０は両矢印Ａの方向に振動するため、振動発電素子７０の可動電極の振動方向も実質的に両矢印Ａの方向であるように設置されている。

【0028】

（共振周波数）
ヘルムホルツ共鳴器５０は、空洞と、当該空洞に連通し、一つの側面に開口部を有するネック部とを備えた箱体からなり、この箱体の空洞部の体積Ｖと、ネック部の面積Ｓおよび長さＬから下記の式１によって決定される特定の周波数の振動に対して共鳴するものである（図３）。

【0029】

【数1】

【0030】

一方、振動発電素子７０は、特定の共振周波数付近の振動を受けると、効率よく発電を行うことができる。そのため、本発明の一実施形態において、振動発電素子７０の共振周波数は、ヘルムホルツ共鳴器５０の共鳴周波数近傍に一致させることが好ましい。例えば５０Ｈｚ～２０００Ｈｚである。

【0031】

振動部４０は増幅された音圧を受けて振動する。なお振動部４０は、その弾性と、振動発電素子７０と振動部４０の質量の合計から決まる固有周波数を持つ。音圧の周波数がこの固有周波数よりも低いと振動しにくいため、ヘルムホルツ共鳴器５０と振動発電素子７０の共振周波数は、この固有周波数よりも高いことが好ましい。

【0032】

このように、振動発電器１００は、ヘルムホルツ共鳴器５０の共鳴周波数の音振動をネック部３０より空洞２０に取り込むと、共鳴により振動エネルギーが増幅され、増幅された振動を受けて振動部４０が振動する。そして、振動部４０の振動を受け、振動部４０に設けられた振動発電素子７０も振動し、振動発電素子７０内の可動電極が振動することで、発電が行われることとなる。

【0033】

以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果を奏する。

【0034】

（１）振動発電器は、空洞を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞に連通するネック部と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器と、前記振動部に設けられた振動発電素子とを備える。

【0035】

このように構成したので、ヘルムホルツ共鳴器で増幅した振動が振動発電素子を振動させる前に減衰されてしまうことを防ぎ、より効率的に振動発電素子へと到達させ利用する振動発電器を提供することができる。

【0036】

（２）前記振動発電素子の可動子の振動方向が、前記振動部の振動方向と実質的に一致する。

【0037】

このように構成したので、効率よく振動発電素子が発電を行うことができる。

【0038】

（３）前記振動発電素子は、圧電型振動発電素子からなる。

【0039】

このように構成したのでこのように構成したので、振動発電器を小型化することができる。

【0040】

（４）前記振動部は前記筐体の他の部分よりも剛性が低い。

【0041】

このように構成したので、ヘルムホルツ共鳴器の振動部は、音圧を受けて振動することができる。

【0042】

（５）前記振動部は、前記筐体の他の部分よりも厚さが薄い。

【0043】

このように構成したので、振動部は他の部分よりも剛性が低く形成することができる。

【0044】

（６）前記振動部は前記筐体の他の部分と異なる材料から形成された振動板が接合されている。

【0045】

このように構成したので、振動部は他の部分よりも剛性が低く形成することができる。

【0046】

（７）前記接合は、接着、溶着またはねじ留めにより行われる。

【0047】

このように構成したので、振動板を筐体に強固に接合することができる。

【0048】

（８）空洞を有する筐体と、前記筐体に設けられ、前記空洞に連通するネック部と、前記筐体に設けられ、前記空洞の一部を画定する振動部と、を有するヘルムホルツ共鳴器の製造方法であって、前記振動部は、振動板を筐体に接合することにより形成される。

【0049】

このように構成したので、ヘルムホルツ共鳴器を製造する際に、振動板を筐体に強固に接合する方法を提供することができる。

【0050】

（９）前記接合は、接着、溶着またはねじ留めにより行われる。

【0051】

このように構成したので、ヘルムホルツ共鳴器を製造する際に、振動板を筐体に強固に接合する方法を提供することができる。

【0052】

上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定
されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の
範囲内に含まれる。

【0053】

また、上述の各実施の形態および変形例の一つもしくは複数を、適宜組合せてもよい。

【符号の説明】

【0054】

２０ 空洞
２４ ねじ型留め具
２５ 筐体
２６ 筐体上面部
２７ 筐体本体部
３０ ネック部
３５ 開口部
４０ 振動部
４５ 振動板
５０ ヘルムホルツ共鳴器
７０ 振動発電素子
１００ 振動発電器

【図1】

【図2】

【図3】