(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106555
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ヘルムホルツ共鳴器
(51)【国際特許分類】
G10K 11/02 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G10K11/02 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010864
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 巧真
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(57)【要約】
【課題】温度変化による共鳴周波数の変化を低減させるヘルムホルツ共鳴器を提供する。
【解決手段】温度変化による共鳴周波数の変化を低減させるヘルムホルツ共鳴器であって、前記ヘルムホルツ共鳴器は、開口部および空洞を有し、第1材料で形成される筐体と、前記開口部に設けられ、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2材料部と、を有し、前記第2材料部の少なくとも一部は、前記空洞に連通するネック部を画定し、前記第2材料は、前記第1材料より線膨張係数が大きいことを特徴とするヘルムホルツ共鳴器を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化による共鳴周波数の変化を低減させるヘルムホルツ共鳴器であって、
前記ヘルムホルツ共鳴器は、開口部および空洞を有し、第1材料で形成される筐体と、前記開口部に設けられ、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2材料部と、を有し、
前記第2材料部の少なくとも一部は、前記空洞に連通するネック部を画定し、
前記第2材料は、前記第1材料より線膨張係数が大きいことを特徴とする、ヘルムホルツ共鳴器。
【請求項2】
前記ネック部は、前記第2材料部内または前記第2材料部と前記筐体との間に画定される、請求項1に記載のヘルムホルツ共鳴器。
【請求項3】
前記第1材料は金属材料であり、前記第2材料は樹脂材料である、請求項1に記載のヘルムホルツ共鳴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルムホルツ共鳴器に関する。
【背景技術】
【0002】
音の振動を大きくする方法の一つに、ヘルムホルツ共鳴器(
図1参照)が知られている。ヘルムホルツ共鳴器は、空洞と、当該空洞に連通し、一つの側面に開口部を有するネック部とを備えた箱体からなり、この箱体の空洞部の体積Vと、ネック部の面積Sおよび長さLから下記の式1によって決定される特定の周波数の振動に対して共鳴するものである。
【0003】
【0004】
ヘルムホルツ共鳴器を用いて音エネルギーを増幅する方法が特許文献1に記載されている。特許文献1では、ヘルムホルツ共鳴器の開口部に対向するように発電装置が設置され、発電装置のコイルを振動させて発電を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、音速cは温度が高くなると大きくなる一方、温度が下がると小さくなるため、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数fは温度変化の影響を受けやすい。その結果、環境温度によっては、ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数が変化し、増幅対象の音を十分に増幅できない場合が生じる。
【0007】
これらを鑑み、本発明は、温度変化による共鳴周波数の変動を低減したヘルムホルツ共鳴器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る一実施態様のヘルムホルツ共鳴器は、開口部および空洞を有し、第1材料で形成される筐体と、前記開口部に設けられ、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2材料部と、を有し、前記第2材料部の少なくとも一部は、前記空洞に連通するネック部を画定し、前記第2材料は、前記第1材料より線膨張係数が大きく、温度変化による共鳴周波数の変化を低減させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、温度変化による共鳴周波数の変動を低減したヘルムホルツ共鳴器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(a)本発明の第1実施形態のヘルムホルツ共鳴器の模式図である。(b)(a)の矢印IIb方向から見た底面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態のヘルムホルツ共鳴器の底面の温度変化を表す図である。
【
図4】第2実施形態のヘルムホルツ共鳴器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらに限られない。
【0012】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「接する」とは、物理的に接触するものであるから、固定されているものも含まれる。
【0013】
1.ヘルムホルツ共鳴器
図2(a)は本発明の第1実施形態に係るヘルムホルツ共鳴器100の斜視図であり、
図2(b)は矢印IIb方向から見た底面図である。
図2(a)に示されるように、ヘルムホルツ共鳴器100は、開口部10および空洞20を有する筐体30と、開口部10に設けられた第2材料部40と、空洞20に連通するネック部50と、を有する。以下、ヘルムホルツ共鳴器100の各構成を順に説明する。
【0014】
なお、詳細は後述するが、特許文献1では、箱体にネック部が直接設けられていたのに対し、本実施形態では、ネック部50を、筐体30とは別体の第2材料部40に設けることにより、温度変化に応答して、第2材料部40のネック部50におけるネック面積Sが変化し、共鳴周波数の変動を低減する。
【0015】
筐体30は、開口部10を有し、空洞20を画定する。空洞20は、ヘルムホルツ共鳴器100に取り込まれた音が共鳴する空間である。筐体30は、任意の形状であってよく、例えば、円筒形状や直方体形状であってもよい。
【0016】
筐体30は線膨張係数の低い第1材料から形成される。例えば、鉄系材料やSUSなどの金属材料を用いることができる。
【0017】
第2材料部40は、中空円柱形状からなり、開口部10に接するように固定され、空洞20の一部とネック部50の少なくとも一部を画定する。第2材料部40は、第1材料とは異なる線膨張係数を有する第2材料から形成される。好ましくは、第2材料の線膨張係数は第1材料の線膨張係数よりも大きい。第2材料として、例えば高密度ポリエチレンなどの樹脂材料を用いることができる。
【0018】
ネック部50は、空洞20と外部環境とを連通する。そのため、ネック部50は、音取り込み口として、外部の音を空洞20内に取り込むことができる。ネック部50は、流路面積であるネック面積Sと流路長さであるネック長さLを有し、ヘルムホルツ共鳴器100の共鳴周波数を規定する。
【0019】
本発明の第1実施形態において、ネック部50は、第2材料部40内に画定されている。そのため、第2材料部40の内周部は、ネック部50を画定し、かつ第2材料部40の外周部は第1材料から形成された筐体30に固定される(
図2(b))。
【0020】
開口部10は、筐体30の壁面の任意の場所に設けることができる。例えば、音源方向にネック部50の開口55が対向するように開口部10を設けてもよく、また雨やほこりなどの進入を防ぐように、開口55が下向きになるように設けてもよい。また、開口55に音が通過するカバー部材を設け、空洞20を水やほこりなどの外的環境から保護することができる。
【0021】
(温度変化)
上述したように、温度が高くなると音速が大きくなり、温度が下がると音速が小さくなる。単一の材料で形成された通常のヘルムホルツ共鳴器200では、温度が高くなるとヘルムホルツ共鳴器全体の体積が膨張するため、それに伴いネック面積Sも大きくなる。一方、温度が低くなると収縮してヘルムホルツ共鳴器全体の体積が収縮し、ネック面積Sも小さくなる。その結果、温度が高くなると共鳴周波数をより大きくすることとなり、また、温度が下がると共鳴周波数をより小さくすることとなる。
【0022】
これに対し、本実施形態のヘルムホルツ共鳴器は、以下に説明するように、温度変化による共鳴周波数の変動を低減することができる。
【0023】
図3は、本実施形態のヘルムホルツ共鳴器100の底面図である。当該底面では、第1材料で形成された筐体30の開口部10に、第2材料部40が設置される。第2材料部40の内側にはネック部50が画定され、開口55で表される。なお、第2材料部40の外周部は、開口部10に固定されているため、熱的変化が生じても、第2材料部40と開口部10との間に隙間などが生じることはない。
【0024】
本実施形態では、第2材料の線膨張係数が第1材料の線膨張係数よりも大きいため、第1材料が形状変化しないと仮定して説明する。矢印Hで表すように温度が高くなると、第2材料部40は筐体30に固定される外周部については膨張が抑制され、一方で、内周部はネック部50のほうへ膨張することとなる。その結果、ネック部50は縮小し、そのネック面積Sは減少する。
【0025】
反対に、矢印Lで表すように温度が低くなると第2材料部40は収縮するものの、筐体30に固定されている外周部では収縮が抑制され、一方、ネック部50と接している内周部では収縮し、ネック部50が広がることとなる。その結果、ネック面積Sは増加する。
【0026】
したがって、本実施形態のヘルムホルツ共鳴器では、上記式1からも分かるように、温度が高くなるとネック面積Sを減少し、温度が低くなるとネック面積Sが増加するから、音速による共鳴周波数の変化を打ち消すように働き、その影響を低減することができる。
【0027】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のヘルムホルツ共鳴器を表す図である。
図4(a)は筐体30の開口部10がマッチ棒状に形成され、その直線部分に第2材料部40が形成されている。
図4(b)は
図4(a)の開口部10が、ネック部50を共通して、3つ形成されたものである。なお、第2材料部40のネック部50と対向していない端部は、開口部10に固定されているため、熱的変化が生じても、第2材料部40と開口部10との間に隙間などが生じることはない。
【0028】
本変形例の場合でも、第1実施形態と同様に、温度による第2材料部40の変化により、ネック面積Sは温度が高くなれば小さくなり、温度が低くなれば大きくなるから、温度による音速の共鳴周波数への影響を低減することができる。
【0029】
以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0030】
(1)ヘルムホルツ共鳴器は、温度変化による共鳴周波数の変化を低減させ、開口部および空洞を有し、第1材料で形成される筐体と、前記開口部に設けられ、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2材料部と、を有し、前記第2材料部の少なくとも一部は、前記空洞に連通するネック部を画定し、前記第2材料は、前記第1材料より線膨張係数が大きい。
【0031】
このように構成したので、温度変化による共鳴周波数の変動を低減したヘルムホルツ共鳴器を提供することができる。
【0032】
(2)前記ネック部は、前記第2材料部内または前記第2材料部と前記筐体との間に画定される。
【0033】
このように構成したので、ネック部の少なくとも一部は第2材料部と接し、かつ第2材料部の少なくとも一部は第1材料から形成された筐体と接し、温度が高くなるとネック面積を減少し、温度が低くなるとネック面積が増加するから、音速による共鳴周波数の変化を打ち消すように働き、その影響を低減することができる。
【0034】
(3)前記第1材料は金属材料であり、前記第2材料は樹脂材料である。
【0035】
このように構成したので、第2材料の線膨張係数は第1材料の線膨張係数よりも大きくなり、温度変化による共鳴周波数の変動を低減したヘルムホルツ共鳴器を提供することができる。
【0036】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定
されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の
範囲内に含まれる。
【0037】
また、上述の各実施の形態および変形例の一つもしくは複数を、適宜組合せてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 開口部
20 空洞
30 筐体
40 第2材料部
50 ネック部
55 開口
100 ヘルムホルツ共鳴器
200 ヘルムホルツ共鳴器