(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106556
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】水性下塗材及び化粧仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20240801BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240801BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20240801BHJP
C09D 125/00 20060101ALI20240801BHJP
C09D 143/04 20060101ALI20240801BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240801BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240801BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/02
C09D133/06
C09D125/00
C09D143/04
C09D7/61
B05D7/00 L
B05D7/24 301F
B05D7/24 302P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010866
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五呂 遼典
(72)【発明者】
【氏名】川原 道生
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075CA32
4D075CA38
4D075DA07
4D075DB12
4D075DC02
4D075EA06
4D075EA13
4D075EA41
4D075EB14
4D075EB22
4D075EB42
4D075EC13
4D075EC54
4J038CG141
4J038CH031
4J038CH041
4J038CJ031
4J038CJ181
4J038HA166
4J038HA286
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA14
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】
本発明は、建築物壁面等の化粧仕上げに用いる下地調整塗材として優れた性能を発揮することができる水性下塗材を提供する。
【解決手段】
本発明の水性下塗材は、アクリルシリコン樹脂エマルション、及び顔料を含む水性下塗材であって、前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分中に芳香族モノマーを20重量%以上含むものであり、前記顔料として体質顔料を含み、顔料体積濃度が30~90%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルシリコン樹脂エマルション、及び顔料を含む水性下塗材であって、
前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分中に芳香族モノマーを20重量%以上含むものであり、
前記顔料として体質顔料を含み、顔料体積濃度が30~90%である
ことを特徴とする水性下塗材。
【請求項2】
前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分として、
(a)炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(b)芳香族モノマー、及び
(c)アルコキシシラン化合物、
を含むものであることを特徴とする請求項1記載の水性下塗材。
【請求項3】
前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分として、
(a1)炭素数3~5のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(a2)炭素数6以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(b)芳香族モノマー、及び
(c)アルコキシシラン化合物、
を含むものである
ことを特徴とする請求項1記載の水性下塗材。
【請求項4】
目地部を有する被塗面用であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水性下塗材。
【請求項5】
目地部を有する被塗面に対し、水性下塗材を塗付後、仕上材を塗付する化粧仕上げ方法であって、
前記水性下塗材として請求項1~3のいずれかに記載の水性下塗材を用いることを特徴とする化粧仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性下塗材及び化粧仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物壁面等では、その躯体の保護や美観性向上のために塗装による化粧仕上げが行われている。このような化粧仕上げのひとつに、水性下塗材として下地調整塗材を塗装した後、各種仕上材を塗装する方法が知られている。この際使用される下地調整塗材は、下地の不陸、クラック、巣穴等を充填補修する機能に加え、塗付け量の調整や塗装器具の選定等によって、所望の凹凸模様を付与することができる機能等を有する材料である。
【0003】
このような下地調整塗材としては、セメント系下地調整塗材、合成樹脂系下地調整塗材が挙げられる。このうち、合成樹脂系下地調整塗材は、下地への密着性が良好で、下地の変位に追従可能な性能も有することから、近年好んで使用されている。
【0004】
例えば、特開平8-134378号公報(特許文献1)には、合成樹脂エマルション、体質顔料、及び増粘剤を主要成分とし、加熱残分が50~99重量%である下地調整塗材が開示されている。また、特開2008-12373号公報(特許文献2)には、共重合体のガラス転移温度が-20℃以下である共重合体水分散液を含む下地調整材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-134378号公報
【特許文献2】特開2008-12373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の建築物壁面等においては、様々な基材があり、これら基材の表面には様々な既存塗膜(旧塗膜)が形成されている場合もあり、被塗面の形状や性状は多岐にわたる。また、建築物壁面等は、複数の板状壁材によって構成される場合があり、これら板状壁材どうし間の目地部にはシーリング材等の目地材が充填されることが多い。このような被塗面を塗装対象とする場合、目地部を含む被塗面全体の塗膜物性が良好であることが求められる。
しかしながら、上記特許文献では、このような被塗面の塗装について考慮されていない。このような被塗面に対し、上記特許文献の下地調整塗材を用いて化粧仕上げを行っても、日射、気温、降雨、湿度等の環境条件によっては、膨れ、剥れ、割れ等の不具合が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、建築物壁面等の化粧仕上げに用いる下地調整塗材として優れた性能を発揮することができる水性下塗材、及びその水性下塗材を用いた化粧仕上げ方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の樹脂エマルション、及び顔料を含む水性下塗材に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.アクリルシリコン樹脂エマルション、及び顔料を含む水性下塗材であって、
前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分中に芳香族モノマーを20重量%以上含むものであり、
前記顔料として体質顔料を含み、顔料体積濃度が30~90%である
ことを特徴とする水性下塗材。
2.前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分として、
(a)炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(b)芳香族モノマー、及び
(c)アルコキシシラン化合物、
を含むものであることを特徴とする1.記載の水性下塗材。
3.前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分として、
(a1)炭素数3~5のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(a2)炭素数6以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(b)芳香族モノマー、及び
(c)アルコキシシラン化合物、
を含むものである
ことを特徴とする1.記載の水性下塗材。
4.目地部を有する被塗面用であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の水性下塗材。
5.目地部を有する被塗面に対し、水性下塗材を塗付後、仕上材を塗付する化粧仕上げ方法であって、
前記水性下塗材として1.~3.のいずれかに記載の水性下塗材を用いることを特徴とする化粧仕上げ方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建築物壁面等の化粧仕上げに用いる下地調整塗材として優れた性能を発揮することができる水性下塗材、及びその水性下塗材を用いた化粧仕上げ方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明の水性下塗材は、アクリルシリコン樹脂エマルション、及び顔料を含み、前記アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分中に芳香族モノマーを20重量%以上含むものであり、前記顔料として体質顔料を含み、顔料体積濃度が30~90%である。このような水性下塗材は、下地調整塗材として好適であり、特に、目地部を有する被塗面の化粧仕上げに用いた場合に、膨れ、剥れ、割れ等の不具合の発生を十分に抑制することができる。このような効果は、上記構成を有する本発明水性下塗材が、塗膜の強度、伸び性、密着性等において、目地部を有する被塗面に用いる下地調整塗材に適した性能を具備することによって奏されるものである。
【0013】
本発明水性下塗材のアクリルシリコン樹脂エマルションは、結合材として作用するものである。このようなアクリルシリコン樹脂エマルションとしては、例えば、樹脂構成成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマー、及びアルコキシシラン化合物を含むものを使用することができる。樹脂構成成分中の芳香族モノマーの比率は、20重量%以上であり、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~70重量%である。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。また、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル部分に炭素数1~2のアルキル主鎖を有するもの、アルキル部分に炭素数3以上のアルキル主鎖を有するもの、アルキル部分に環状アルキル基を有するもの等が挙げられる。
【0015】
このうち、アルキル部分に炭素数1~2のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、そのアルキル部分が、直鎖状または分枝状のアルキル基(環状を除く)であって、主鎖(最も長い炭素直鎖)の炭素数が1~2であるものが使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0016】
炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下「(a)成分」ともいう)は、そのアルキル部分が、直鎖状または分枝状のアルキル基(環状を除く)であって、主鎖(最も長い炭素直鎖)の炭素数が3以上である。(a)成分は、アルキル部分に炭素数3以上のアルキル主鎖を有する。(a)成分のアルキル部分は、このようなアルキル主鎖を有する限り、種々の側鎖(例えば、アルキル主鎖よりも少ない炭素数のアルキル基等)を有するものであってもよい。(a)成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、このような条件を満たすものが使用でき、例えば、
(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、等の炭素数3~5のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1);
(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等の炭素数6以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2);等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0017】
アルキル部分に環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル等が挙げられる。
【0018】
芳香族モノマー(以下「(b)成分」ともいう)としては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、等のスチレン系モノマー、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0019】
アルコキシシラン化合物(以下「(c)成分」ともいう)としては、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等の重合性不飽和二重結合を有するアルコキシシラン化合物;
γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシメタクリロキシプロピルメチルジエトキシシシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシジル基を有するアルコキシシラン化合物;
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン、あるいは、これらのアルコキシシランのアルコキシル基のうち少なくとも一部が、ポリオキシアルキレン基含有化合物、アミノ基含有化合物、フッ素含有化合物等によって変性されたアルコキシシラン変性物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0020】
アクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分として上記以外のモノマー(その他のモノマー)を含むものであってもよい。このようなその他のモノマーとしては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレ-ト等のカルボニル基含有モノマー;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有モノマー;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー;
エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
【0021】
本発明におけるアクリルシリコン樹脂エマルションは、樹脂構成成分として、
(a)炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(b)芳香族モノマー、及び
(c)アルコキシシラン化合物、
を含むものとすることができる。このようなアクリルシリコン樹脂エマルションは、本発明の効果向上の点で好適なものであり、さらに造膜初期段階での耐水性、密着性等の点においても好適である。とりわけ、(a)成分は、伸び性、密着性等の点で有利に作用し、割れ防止、剥れ防止等に寄与するものである。(b)成分は、強度等の点で有利に作用し、膨れ防止、割れ防止等に寄与するものである。(c)成分は、強度、密着性等の点で有利に作用し、膨れ防止、剥れ防止、割れ防止等に寄与するものである。
【0022】
樹脂構成成分中の(a)成分の比率は、好ましくは20~80重量%、より好ましくは25~75重量%、さらに好ましくは30~70重量%である。樹脂構成成分中の(b)成分の比率は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25~75重量%、さらに好ましくは30~70重量%である。樹脂構成成分中の(c)成分の比率は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.01~5重量%、さらに好ましくは0.02~3重量%である。
【0023】
(a)成分としては、
(a1)炭素数3~5のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下「(a1)成分」ともいう)、
(a2)炭素数6以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下「(a2)成分」ともいう)、を含むことができる。(a)成分として、(a1)成分及び(a2)成分を含む場合、伸び性、密着性等に加え、さらに強度の点でも有利となり、膨れ防止、剥れ防止、割れ防止等の性能をよりいっそう高めることができる。特に、目地部における性能向上の点で好適である。
【0024】
樹脂構成成分中における(a1)成分と(a2)成分の重量比率は、(a1)/(a2)≧0.6を満たすことが好ましく、より好ましくは10≧(a1)/(a2)≧0.8、さらに好ましくは8.0≧(a1)/(a2)≧1.0、特に好ましくは5.0≧(a1)/(a2)≧1.2である。
【0025】
本発明におけるアクリルシリコン樹脂エマルションは、上述の樹脂構成成分を含むモノマー群を重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合、多段階乳化重合等を採用することもできる。重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0026】
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0027】
アクリルシリコン樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50~20℃以下、より好ましくは-30℃~15℃である。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。但し、本発明のガラス転移温度の算出において、(c)成分は除外する。
【0028】
アクリルシリコン樹脂エマルションの平均粒子径は、好ましくは300nm以下、より好ましくは20~250nm、さらに好ましくは50~200nmである。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0029】
本発明の水性下塗材は、顔料として体質顔料を含む。体質顔料は、例えば、下地の不陸、クラック、巣穴等を充填補修する機能、下地表面を均質化する機能、所望の塗膜表面形状を付与する機能等に寄与するものである。本発明では、このような体質顔料の配合により、下地調整塗材に適した性能を付与することができる。
【0030】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、寒水石、陶土、チャイナクレー、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、珪砂、珪石粉、石英粉、含水微粉珪酸、水酸化アルミニウム、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0031】
体質顔料の平均粒子径は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.5~80μm、さらに好ましくは1~50μmである。なお、体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0032】
体質顔料の含有量は、アクリルシリコン樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは100~2000重量部、より好ましくは250~1800重量部、さらに好ましくは400~1400重量部である。体質顔料の含有量がこのような範囲内であることにより、下地調整塗材としての性能を高めることができる。特に、体質顔料の含有量が上記下限値以上であることにより、強度が高まり、膨れ防止、割れ防止等の点で好適である。体質顔料の含有量が上記上限値以下であることにより、密着性、伸び性等が十分に確保され、剥れ防止、割れ防止等の点で好適である。
【0033】
顔料としては、体質顔料に加え、着色顔料を使用することができる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、ビスマス-マンガン複合酸化物、酸化第二鉄(弁柄)、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。着色顔料の平均粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.01~0.9μmである。なお、着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0034】
着色顔料の含有量は、アクリルシリコン樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは1~200重量部、より好ましくは2~100重量部、さらに好ましくは3~60重量部である。着色顔料の含有量がこのような範囲内であることにより、水性下塗材を所望の色彩に着色することができ、隠蔽性等を高めることができる。
【0035】
本発明の水性下塗材は、顔料体積濃度が30~90%であり、好ましくは50~88%、より好ましくは60~85%である。顔料体積濃度がこのような範囲内であることにより、下地調整塗材としての性能を付与することができ、さらに膨れ防止、剥れ防止、割れ防止等の性能を確保することができる。特に、顔料体積濃度が上記下限値以上であることにより、強度が高まり、膨れ防止、割れ防止等の点で好適である。顔料体積濃度が上記上限値以下であることにより、密着性、伸び性等が十分に確保され、剥れ防止、割れ防止等の点で好適である。なお、本発明における顔料体積濃度は、乾燥塗膜中に含まれる顔料の体積百分率であり、水性下塗材を構成する樹脂と顔料の重量部数及び比重から計算により求められる値である。なお、樹脂成分の比重は1とする。
【0036】
本発明の水性下塗材は、上述の成分の他、必要に応じて各種添加剤、例えば、防錆顔料、骨材、繊維、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤(チクソトロピック調整剤)、造膜助剤、艶消し剤、架橋剤、触媒、硬化促進剤、密着性付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤、溶剤、水等を混合することができる。本発明の水性下塗材は、上述のアクリルシリコン樹脂エマルション、顔料、及び必要に応じ各種添加剤を常法により均一に混合することによって製造することができる。
【0037】
本発明の水性下塗材は、架橋剤を含む態様とすることができる。この場合、樹脂としては、反応性官能基を有するアクリルシリコン樹脂エマルションを使用し、架橋剤としては、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤を使用すればよい。好適な反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基等の組み合わせが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0038】
本発明の水性下塗材は、媒体として水を含む(すなわち水性媒体を含む)水性の材料である。水性媒体は、水の他に、必要に応じ水溶性溶剤を含むものであってもよい。水溶性溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。
【0039】
本発明の水性下塗材は、例えば、建築物や土木構造物の壁面等の被塗面に適用することができる。このような被塗面を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、金属、木材、ガラス等、あるいは各種板状壁材等が挙げられる。このうち板状壁材としては、例えばセメント、珪酸カルシウム、石灰、石膏等のいずれかを主成分する無機質硬化体が挙げられる。このような板状壁材の具体例としては、例えば、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、硬質木片セメント板等が挙げられる。このような被塗面は、基材の表面に既存塗膜(旧塗膜)を有するものであってもよい。
【0040】
本発明における被塗面としては、目地部を含む被塗面が好適である。このような被塗面は、板状壁材が複数併設されることによって構成され、板状壁材どうしの間に目地部を有するものである。目地部には、シーリング材、乾式目地材等の目地材が充填されていることが望ましい。目地部の幅は、好ましくは3~20mm(より好ましくは5~15mm)程度である。
【0041】
本発明では特に、被塗面の目地部がシーリング材を有する場合に、有利な効果が得られる。シーリング材は、経年劣化したものでもよいし、水性下塗材の塗装前に新たに打設されたものであってもよい。
【0042】
シーリング材としては、例えば、シリコーン系シーリング材、変性シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、変性ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、SBR系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材等が挙げられる。
【0043】
シーリング材の充填方法としては、特に限定されず、例えば、ガンやへら等による公知の方法を採用することができる。また、シーリング材の充填前には、予めバックアップ材充填やプライマー塗付等の処理を行っておいてもよい。バックアップ材としては、例えば、発泡ポリエチレン系バックアップ材等を使用することができる。プライマーとしては、例えば、合成ゴム系プライマー、アクリル系プライマー、ウレタン系プライマー、エポキシ系プライマー、シリコーンレジン系プライマー、シラン系プライマー等を使用することができる。
【0044】
本発明では、上述のような被塗面に対し、水性下塗材、及び仕上材を順に塗付(塗装)することにより、化粧仕上げを行うことができる。
【0045】
本発明の水性下塗材は、被塗面に対し直接塗装することができるが、必要に応じ各種前処理を行っておくこともできる。前処理としては、例えば、劣化の著しい既存被膜の除去、高圧水洗等による汚染物質等の除去、パテ、フィラー等による補修、表面形状の復元等が挙げられる。被塗面において、新たにシーリング材を打設した場合は、シーリング材の打設後、概ね2~10日経過後に水性下塗材を塗付することが望ましい。
【0046】
水性下塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ等を使用することができる。水性下塗材の塗付け量は、被塗面の表面形状、使用する塗装器具等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.1~2kg/m2、より好ましくは0.3~1.5kg/m2である。塗装時には水を用いて水性下塗材を適宜希釈することもできる。
【0047】
塗装時における水性下塗材の固形分は、好ましくは50~90重量%、より好ましくは60~80重量%である。また、塗装時の水性下塗材の粘度は、好ましくは10~500Pa・s、より好ましくは20~400Pa・sである。塗装時の水性下塗材(希釈した場合は希釈後の水性下塗材)の固形分、粘度がこのような範囲内であることにより、本発明の効果を安定して得ることができる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による2rpmにおける粘度(2回転目の指針値)を測定することにより求められる値であり、測定温度は23℃である。
【0048】
水性下塗材の塗装、乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)の環境下で行うことができる。水性下塗材の乾燥時間は、常温で好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上である。
【0049】
本発明では、上述の水性下塗材の塗付・乾燥後に、仕上材を塗付することができる。仕上材の塗装によって、美観性を備えた化粧仕上げが得られる。仕上材は、1種または2種以上使用できる。仕上材を2種以上用いる仕様としては、例えば、シーラー、中塗材、主材等と呼ばれる材料の1種または2種以上を塗装後、塗膜最表面となる仕上材を塗装する仕様等が挙げられる。
【0050】
本発明の水性下塗材によって形成された塗膜は、多種多様な仕上材に対し優れた密着性を発揮することができる。仕上材としては、一般的に建築物等の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、その結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
【0051】
仕上材の構成成分としては、上記結合材の他に、例えば、着色顔料、体質顔料、骨材、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、カップリング剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。仕上材は、その種類に応じ、上記成分を常法により均一に混合することによって製造することができる。
【0052】
具体的に、仕上材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2021)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2021)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2021)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2021)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2021)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2022)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2021)、その他多彩模様塗料、石材調仕上塗材、砂岩調仕上塗材、クリヤー塗料等が使用できる。
【0053】
仕上材の塗装方法としては、特に限定されず、各材料に応じた塗装方法を採用することができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛等を用いることができる。仕上材の塗付け量は、その種類にもよるが、好ましくは0.2~5kg/m2、より好ましくは0.3~4kg/m2である。塗装時には、必要に応じ適宜希釈することもできる。仕上材の塗装、乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)の環境下で行うことができる。
【0054】
このような化粧仕上げ方法によって形成された塗膜は、被塗面に美観性等を付与することができ、特に、目地部を有する被塗面の化粧仕上げに用いた場合、膨れ防止性、剥れ防止性、割れ防止性等の優れた性能を発揮することができる。
【実施例0055】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、本発明は、ここでの実施例に制限されるものではない。
【0056】
(水性下塗材の製造)
表1に示す配合にて、各原料を常法により混合・攪拌することによって、各水性下塗材を製造した。原料としては下記のものを使用した。
【0057】
・樹脂1:アクリルシリコン樹脂エマルション(2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比42:54:1:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=0、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:3℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂2:アクリルシリコン樹脂エマルション(n-ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比18:26:52:1:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=0.69、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:5℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂3:アクリルシリコン樹脂エマルション(n-ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比24:22:50:1:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=1.09、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:3℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂4:アクリルシリコン樹脂エマルション(n-ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比26:20:50:1:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=1.30、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:4℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂5:アクリルシリコン樹脂エマルション(メチルメタクリレート・n-ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比12.5:34:13:36:1.5:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=2.62、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:4℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂6:アクリルシリコン樹脂エマルション(メチルメタクリレート・n-ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比8:39.5:9:40:0.5:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=4.39、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:4℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂7:アクリルシリコン樹脂エマルション(n-ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比28:18:50:1:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=1.56、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:4℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂8:アクリルシリコン樹脂エマルション(メチルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン・メタクリル酸(重量比44:42:10:1:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=0、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:5℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・樹脂9:アクリル樹脂エマルション(2-エチルヘキシルアクリレート・スチレン・メタクリル酸(重量比42:55:3)の乳化重合体、(a1)/(a2)=0、平均粒子径:150nm、固形分:50重量%、ガラス転移温度:4℃、樹脂比重:1.0、媒体:水)
・顔料1:着色顔料(酸化チタン、平均粒子径0.3μm、比重4.2)
・顔料2:体質顔料(重質炭酸カルシウム、平均粒子径8μm、比重2.7)
・分散剤:アニオン系分散剤
・造膜助剤:エステル系造膜助剤
・増粘剤:ヒドロキシエチルセルロース水溶液(固形分3重量%)
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0058】
(試験1)
100mm×300mm×6mmのスレート板に対し、水性下塗材を塗付け量1kg/m2でスプレー塗装後、10時間乾燥したものを試験体[I]とした。この試験体[I]について、水浸漬を24時間行った後、塗膜外観(膨れ、剥れ、割れ等の不具合発生の状態)を目視にて確認した。評価基準は、不具合発生が認められなかったものを「A」、不具合発生が僅かに認められたものを「B」、不具合発生が多く認められたものを「C」とした。なお、塗装、乾燥はすべて標準状態下(気温23℃、相対湿度50%)で行った。
【0059】
(試験2)
100mm×300mm×6mmのスレート板2枚を併設し、板間の連結部(幅10mm)に2液形ポリウレタン系シーリング材(JIS A5758「建築用シーリング材」のF-25LM-8020(PU-2)に該当)を充填したものを塗装対象の基材とした。
上記基材の全面に対し、水性下塗材を塗付け量1kg/m2でスプレー塗装し、24時間乾燥後、仕上材としてアクリル樹脂系水性塗料(JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」に該当。色相:淡褐色。)を塗付け量0.3kg/m2でスプレー塗装し、7日間乾燥したものを試験体[II]とした。なお、塗装、乾燥はすべて標準状態下で行った。
【0060】
上記方法で作製した試験体[II]について、塗膜外観(膨れ、剥れ、割れ等の不具合発生の状態)を目視にて確認し、次いで、JIS K5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて目地部を含む領域の密着性を評価した。評価基準は、以下の通りである。
AA:塗膜外観に異常なし。欠損部面積2%未満
A:塗膜外観に異常なし。欠損部面積2%以上10%未満
B:塗膜外観に異常なし。欠損部面積10%以上20%未満
C:塗膜外観に異常なし。欠損部面積20%以上
D:塗膜外観に異常あり。
【0061】
(試験3)
上記試験2と同様の方法で作製した試験体[II]について、水浸漬を10日間行った後、塗膜外観(膨れ、剥れ、割れ等の不具合発生の状態)を目視にて確認し、次いで、JIS K5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて目地部を含む領域の密着性を評価した。評価基準は、試験2と同様である。
【0062】
(試験4)
上記試験2と同様の方法で作製した試験体[II]について、水浸漬18時間・-20℃3時間静置・50℃3時間静置を1サイクルとする温冷繰返し試験を合計10サイクル行った後、塗膜外観(膨れ、剥れ、割れ等の不具合発生の状態)を目視にて確認し、次いで、JIS K5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて目地部を含む領域の密着性を評価した。評価基準は、試験2と同様である。
【0063】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。実施例1~9では、いずれの試験においても良好な結果が得られた。
【0064】