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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010656
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】光学多層構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240117BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240117BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B7/12
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105333
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0085413
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム チュン ホ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AG00C
4F100AH05A
4F100AH05B
4F100AK25D
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100AK52B
4F100AK53D
4F100AL01B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ86
4F100JK12D
4F100JN01
4J043PA19
4J043QB31
4J043RA05
4J043RA35
4J043SA47
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZA02
4J043ZA27
4J043ZA52
4J043ZB01
4J043ZB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱膨張-収縮挙動が緩和されるとともに耐久性および光学的特性に優れ、表面硬度が上昇した光学多層構造体、ならびに前記光学多層構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10と、前記基板のいずれか一面または両面上に形成され、ポリイミド樹脂を含む接着促進層20と、前記接着促進層上に形成され、シロキサン構造を含むポリイミド樹脂を含む飛散防止層30と、を含み、前記接着促進層と飛散防止層がイミド結合で連結されている、光学多層構造体100である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板のいずれか一面または両面上に形成され、ポリイミド樹脂を含む接着促進層と、
前記接着促進層上に形成され、下記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド樹脂を含む飛散防止層と、を含み、
前記接着促進層と飛散防止層がイミド結合で連結されている、光学多層構造体。
【化1】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【請求項2】
前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-3アルキルであり、
前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-8アリールであり、および
前記LおよびLは、それぞれ独立して、C1-5アルキレンである、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項3】
前記化学式1の構造が下記化学式2の構造である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【化2】
前記化学式2中、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【請求項4】
前記光学多層構造体は、前記飛散防止層上に形成されたハードコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項5】
前記接着促進層が基板のいずれか一面上に形成されている場合、前記光学多層構造体は、前記接着促進層が形成されていない基板の他の一面上に形成されたハードコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項6】
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を含む化合物またはアクリル系樹脂を含む、請求項4に記載の光学多層構造体。
【請求項7】
前記接着促進層に含まれるポリイミド樹脂は、芳香族ジアミンから誘導された単位を含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項8】
前記光学多層構造体は、ASTM D1003規格に準じて測定されたヘイズが1.0%以下である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項9】
前記接着促進層または飛散防止層に含まれるポリイミド樹脂は、下記化学式3で表されるジアミンから誘導された単位を含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【化3】
前記化学式3中、
11およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-20の1価の有機基であり、
11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上の結合を含むC1-20の2価の有機基であり、および
前記化学式3は、フッ素原子結合を含まない。
【請求項10】
前記R11およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-10の1価の有機基であり、および
前記L11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上の結合を含むC1-15の2価の有機基である、請求項9に記載の光学多層構造体。
【請求項11】
前記L11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上と、C1-10アルキル、C5-18シクロアルキレン、およびC6-18アリーレンからなる群から選択されるいずれか1つ以上との組み合わせである、請求項9に記載の光学多層構造体。
【請求項12】
前記接着促進層または飛散防止層に含まれるポリイミド樹脂は、フッ素系ジアミンから誘導された単位を含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項13】
前記フッ素系ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、および1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6FAPB)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項12に記載の光学多層構造体。
【請求項14】
前記基板は、超薄型強化ガラス(ultra thin glass、UTG)基板である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項15】
基板のいずれか一面または両面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して接着促進層を形成するステップと、
前記接着促進層上に下記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド前駆体組成物を塗布および硬化して飛散防止層を形成するステップと、
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の光学多層構造体の製造方法。
【化4】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【請求項16】
前記飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップをさらに含む、請求項15に記載の光学多層構造体の製造方法。
【請求項17】
前記接着促進層を基板のいずれか一面に形成する場合、
前記接着促進層が形成されていない基板の他の一面上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化してハードコーティング層を形成するステップをさらに含む、請求項15に記載の光学多層構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルム。
【請求項19】
請求項18に記載のウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学多層構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置の基板およびカバーウィンドウなどの材料として、強化ガラスを代替可能な次世代材料として注目されている。フィルムをディスプレイ装置に適用するためには、固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を与えることが必須であり、さらに、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能にするためには、機械的物性の向上が伴わなければならないため、ディスプレイ装置用ポリイミドフィルムの要求性能が益々高度化している。
【0003】
特にユーザが所望するときに曲げたり折り畳んだりできるフレキシブルディスプレイ装置は、外部衝撃または曲がったり折り畳まれたりする過程で容易に割れないように柔軟な構造に設計されることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】KR10-2020-0040137A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、熱膨張-収縮挙動が緩和されるとともに耐久性および光学的特性に優れ、表面硬度が上昇した光学多層構造体を提供する。
他の一実施形態は、前記光学多層構造体の製造方法を提供する。
また他の一実施形態は、前記光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、基板と、
前記基板のいずれか一面または両面上に形成され、ポリイミド樹脂を含む接着促進層と、
前記接着促進層上に形成され、下記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド樹脂を含む飛散防止層と、を含み、
前記接着促進層と飛散防止層がイミド結合で連結されている、光学多層構造体を提供する。
【0007】
【化1】
[化学式1]
【0008】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
【0009】
他の一実施形態は、基板のいずれか一面または両面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して接着促進層を形成するステップと、
前記接着促進層上に前記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド前駆体組成物を塗布および硬化して飛散防止層を形成するステップと、を含む、前述した一実施形態に係る光学多層構造体の製造方法を提供する。
【0010】
また他の一実施形態は、前述した一実施形態に係る光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムを提供する。
さらに他の一実施形態は、前述した一実施形態に係るウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、シロキサン構造を含むポリイミド樹脂を含む飛散防止層および接着促進層を含む光学多層構造体に関し、一実施形態に係る光学多層構造体の接着促進層と飛散防止層が化学的結合(イミド結合)により連結されているため、層間の密着性が高く、耐久性に優れる。また、一実施形態に係る光学多層構造体は、耐熱性に優れるため、カール現象が低減され、基板の反りが最小化され、表面硬度が高いため、機械的特性に優れ、ヘイズが低く透明であるため、光学的特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものであり、接着促進層20と飛散防止層30が基板10の片面に積層された構造である。
図2】一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものであり、接着促進層20と飛散防止層30が基板10の背面に積層された構造である。
図3】一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものであり、接着促進層20と飛散防止層30が基板10の両面に積層された構造である。
図4】ハードコーティング層を含む一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものであり、接着促進層20と飛散防止層30が基板10の片面に積層された構造である。
図5】ハードコーティング層を含む一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものであり、接着促進層20と飛散防止層30が基板10の背面に積層された構造である。
図6】ハードコーティング層を含む一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものであり、接着促進層20と飛散防止層30が基板10の両面に積層された構造である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載された実施の形態は種々の異なる形態に変形されてもよく、一実施形態に係る技術が以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。さらに、明細書の全体にわたって、ある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0014】
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。一例として、組成の含量が10%~80%または20%~50%に限定された場合、10%~50%または50%~80%の数値範囲も本明細書に記載されたものと解釈しなければならない。本明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0015】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「約」は、明示された値の30%、25%、20%、15%、10%、または5%以内の値とみなすことができる。
【0016】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0017】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、単独重合体および共重合体を含んでもよい。前記共重合体は、ランダム共重合体(random copolymer)、ブロック共重合体(block copolymer)、グラフト共重合体(graft copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)、グラジエント共重合体(gradient copolymer)、またはこれらを全て含んでもよい。
【0018】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0019】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリイミドフィルムは、ポリイミドを含むフィルムであってもよく、具体的に、ジアミン化合物溶液に酸無水物化合物を溶液重合してポリアミック酸を製造した後にイミド化することで製造される高耐熱性フィルムであってもよい。
【0020】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0021】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が置換基で置換されたことを意味し、例えば、前記置換基は、重水素、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-30アリール基、C7-30アリールアルキル基、C1-30アルコキシ基、C1-20ヘテロアルキル基、C3-20ヘテロアリールアルキル基、C3-30シクロアルキル基、C3-15シクロアルケニル基、C6-15シクロアルキニル基、C2-30ヘテロ環基、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0022】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」および/または「アクリル」を含む意味として用いられてもよい。
【0023】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「(メタ)アクリル系架橋重合体」は、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系化合物が互いに架橋されて形成された架橋重合体を意味し得、(メタ)アクリル系架橋重合体は、(メタ)アクリル基、例えば、(メタ)アクリレート基を含んでも含まなくてもよい。
【0024】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「フレキシブル(flexible)」という用語は、フレキシブルな構成要素が曲がったり、撓んだり、および/または折り畳まれたりできることを意味し得る。
【0025】
超薄型強化ガラス(Ultra thin glass、UTG)は、ディスプレイカバーウィンドウに用いられる強化ガラス材料部品であり、UTG上の耐飛散コーティングのためにポリイミドフィルムをコーティングする方法が知られているが、UTGとポリイミド膜との熱膨張係数(Thermal expansion coefficient)差により、乾燥ステップでフィルムにカールが発生する問題が解決されていない。一方、従来のカール現象改善用材料は、柔軟な構造を導入するなどによりカール現象を一部改善したりもしたが、柔軟な特性により表面硬度が低下するか、または層間の密着性(接着性)が低下し、コーティング後に剥離しやすいという問題がある。このような問題を解決するために接着促進剤を導入する試みがあったが、接着促進剤は、通常、リジッド性を有するため、密着性(接着性)を改善することができるが、耐飛散性を著しく低下させるという問題がある。
【0026】
そこで、一実施形態では、上記の問題を解決するために、ポリイミド前駆体分子内にStress relaxation segmentを導入することで、UTG上にコーティングした際にカール現象を最小化するとともに表面硬度の低下を最小化し、通常の接着促進剤ではなく、ポリアミック酸状態の組成物を基板上に塗布した後、上部層に耐飛散特性に優れ、かつ、基板の曲げ特性の改善が可能なポリイミド前駆体組成物を塗布した後に硬化し、層間の化学的結合が形成できるようにして耐飛散性および耐久性を向上させ、基板の反り現象を最小化した。
【0027】
一実施形態は、基板と、
前記基板のいずれか一面または両面上に形成され、ポリイミド樹脂を含む接着促進層と、
前記接着促進層上に形成され、下記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド樹脂を含む飛散防止層と、を含み、
前記接着促進層と飛散防止層がイミド結合で連結されている、光学多層構造体を提供する。
【0028】
【化2】
[化学式1]
【0029】
また、前記接着促進層および/または飛散防止層は、ポリイミド樹脂だけでなく、ポリイミド前駆体、ポリイミド、またはこれらの組み合わせを含むポリイミドフィルムを含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る前記光学多層構造体の接着促進層は、ポリイミド前駆体組成物またはポリアミック酸(Polyamic acid、PAA)組成物を塗布した後に乾燥して形成されるため、その上部に飛散防止層を形成する前にはイミド化されていないポリアミック酸の状態で存在する。一方、接着促進層の上部に飛散防止層を形成するための組成物(すなわち、ポリイミド前駆体組成物またはポリアミック酸組成物)を塗布した後に硬化してイミド化反応(imidation)が起こることで始めて接着促進層のポリアミック酸がイミド化され、接着促進層と飛散防止層との間に化学的結合(イミド結合)が形成されることになる。一実施形態に係る光学多層構造体は、接着促進層と飛散防止層との間に化学的結合(イミド結合)が形成されることで、耐久性が良好に改善される。
一実施形態において、前記イミド結合は、化学的反応により形成されるものであってもよい。
【0031】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-5アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-10アリールであり、
およびLは、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、および
xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数であってもよい。
【0032】
一実施形態において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-3アルキル、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC1-2アルキル、または非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたメチルであってもよい。また、前記RおよびRは、それぞれ独立して、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC4-8アリール、非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたC6-8アリール、または非置換もしくは1種以上のハロゲンで置換されたフェニルであってもよい。また、前記LおよびLは、それぞれ独立して、C1-5アルキレン、C2-5アルキレン、またはプロピレンであってもよい。前記1種以上のハロゲンで置換されたアルキルまたはアリールは、I、Br、Cl、および/またはFから選択される1種以上のハロゲンが1個以上置換されたものであってもよい。
【0033】
一実施形態において、前記xおよびyは、それぞれ独立して、1~100、1~50、1~30、または1~20であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、例えば、xとyの和を100とする際、xが1~99であり、yが99~1であるか、または、xが10~90であり、yが90~10であってもよい。
【0034】
一実施形態において、前記化学式1の構造は、下記化学式2のジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン(dimethylsiloxane-diphenylsiloxane、DMS-DPS)構造であってもよい。
【0035】
【化3】
[化学式2]
【0036】
一実施形態において、前記飛散防止層に含まれるポリイミド樹脂は、前記化学式1で表される構造を含むジアミンおよび/または酸無水物から誘導された単位を含んでもよく、前記化学式1の構造を含むジアミンの一例としては、下記構造を有するShin-etsu社製のX-22-1660B-3が挙げられる。
【0037】
【化4】
【0038】
この際、前記aおよびbは、それぞれ独立して、1以上の整数であるか、または1~50、1~30、または1~20であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、例えば、aとbの和を100とする際、aが1~99であり、bが99~1であるか、または、aが10~90であり、bが90~10であってもよい。
【0039】
一実施形態に係る飛散防止層に含まれるポリイミド樹脂は、前記化学式1の構造を含むことで耐熱性が向上するため、それを超薄型強化ガラスにコーティングした際に、異種層間の熱的特性差によるカール現象を最小化することができる。
【0040】
一実施形態において、前記飛散防止層は、化学式1で表される構造単位を含むポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物から形成されてもよい。また、一実施形態において、前記接着促進層は、ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物から形成されてもよい。
【0041】
前記ポリイミド前駆体組成物は、分配係数(log P)が負の溶媒および/または分配係数が正の溶媒を含んでもよい。分配係数が負の溶媒の例としては、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルプロパンアミド(DMPA)、N-エチルピロリドン(NEP)、またはメチルピロリドン(NMP)が挙げられる。また、分配係数が正の溶媒の例としては、シクロヘキサノン(CHN)、N,N-ジエチルプロパンアミド(DEPA)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、またはN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)が挙げられる。
【0042】
前記分配係数は、ACD/Labs社製のACD/Percepta platformのACD/logP moduleを用いて計算することができ、ACD/logP moduleは、分子の2D構造を用いて、QSPR(Quantitative Structure-Property Relationship)方法論ベースのアルゴリズムを用いて測定することができる。前記ACD/Labs社製のプログラムの3個のモデル(Classic、GALAS、Consensus)により前記溶媒のlog P値を測定した結果値を下記表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
一実施形態において、ポリイミド前駆体組成物に含まれる溶媒が2種以上である場合、各溶媒の質量比は特に限定されない。
一実施形態において、ポリイミド前駆体組成物に含まれる溶媒が、分配係数が負の溶媒と正の溶媒の混合溶媒である場合、前記分配係数が負の溶媒と正の溶媒の質量比は5:5~9.5:0.5であってもよい。または、前記質量比は5:5~9:1、6:4~9:1、6.5:3.5~9:1、7:3~9:1、または7.5:2.5~8.5:1.5であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物に含まれる溶媒は、少なくとも1つ、具体的には1個以上、2個以上、3個以上、または1個~3個のヒドロキシ基(-OH)を分子内に含んでもよい。または、前記溶媒は、エーテル基(-O-)およびオキソ基(=O)のいずれか1つ以上を含む溶媒であってもよい。
【0046】
一実施形態において、前記化学式1で表される構造単位は、ポリイミド前駆体(または、ポリイミド樹脂)に含まれるジアミンから誘導された単位の総重量に対して40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、50重量%~80重量%、50重量%~70重量%、55重量%~70重量%、または60重量%~70重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0047】
一実施形態において、前記化学式1で表される構造単位は、ポリイミド前駆体(または、ポリイミド樹脂)の総重量に対して30重量%以上、40重量%以上、30重量%~70重量%、30重量%~60重量%、40重量%~60重量%、35重量%~55重量%、または40重量%~50重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。または、上記の重量範囲は、前記化学式1で表される構造を含む酸無水物および/またはジアミンのポリイミド前駆体の製造のための単量体の総重量に対する重量範囲であってもよい。
【0048】
一実施形態において、前記化学式1の構造を含む単位は、前記化学式1の構造を含む酸無水物および/またはジアミンから誘導された単位であってもよい。この際、酸無水物および/またはジアミンは、分子量が3000g/mol以上、3500g/mol以上、4000g/mol以上、3000g/mol~5500g/mol、3500g/mol~5000g/mol、または4000g/mol~5500g/molであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
一実施形態において、前記接着促進層は、ポリイミド前駆体またはポリアミック酸の状態で積層され、飛散防止層の塗布後の熱硬化により飛散防止層と接着促進層がイミド結合を形成する場合であれば、一実施形態が実現しようとする光学多層構造体の効果が達成されることに限定はないため、前記接着促進層に含まれるポリイミド樹脂は、単量体組成に特に限定はない。また、飛散防止層は、化学式1で表されるシロキサン構造を含む場合であれば、一実施形態が実現しようとする光学多層構造体の効果が達成されることに限定はないため、前記飛散防止層に含まれるポリイミド樹脂は、単量体組成に特に限定はない。したがって、下記に記載された単量体の構造は1つの例示にすぎないため、下記の例示に限定してはならない。
【0050】
一実施形態に係るポリイミド樹脂は、下記化学式3で表されるジアミンから誘導された単位を含んでもよい。
【0051】
【化5】
[化学式3]
【0052】
前記化学式3中、
11およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-20の1価の有機基であり、
11は、-SO-、-O-、または-C(=O)O-であるか、またはこれらのいずれか1つ以上の結合を含むC1-20の2価の有機基であり、および
前記化学式3は、フッ素原子結合を含まない。
【0053】
一実施形態において、前記R11およびR21は、それぞれ独立して、C1-15の1価の有機基、C1-10の1価の有機基、C1-8の1価の有機基、C1-5の1価の有機基、またはC1-3の1価の有機基であってもよく、例えば、前記有機基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、オキソ(=O)、エステル、アミド、またはこれらの組み合わせから選択されてもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
一実施形態において、前記L11は、-SO-、-O-、および-C(=O)O-のいずれか1つ以上の結合を含む、C1-18の2価の有機基、C1-15の2価の有機基、C1-10の2価の有機基、またはC1-6の2価の有機基であるか、または-SO-、-O-、および-C(=O)O-のいずれか1つ以上と、C1-10アルキル、C5-18シクロアルキレン、およびC6-18アリーレンからなる群から選択されるいずれか1つ以上との組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記L11は、例えば、
【化6】
であってもよい。また、前記L11は、ヒドロキシ基、チオール基、ニトロ基、シアノ基、C1-10アルキル、C6-20アリール、またはC5-20シクロアルキルで置換されていてもよい。しかし、フッ素原子結合は含まない。
【0055】
一実施形態において、前記化学式3の構造で表されるジアミンは、例えば、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(4-aminophenoxybenzene、TPER)、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-Oxydianiline、ODA)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane、BAPP)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-Diaminodiphenyl sulfone、4,4’-DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-Diaminodiphenyl sulfone、3,3’-DDS)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(3-aminophenoxy)benzene、133APB)、または1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene、144APB)であってもよい。一実施形態において、前記ポリイミド前駆体は、化学式3の構造で表されるジアミンを1個以上または2個以上含むことに限定はない。
【0056】
一実施形態に係るポリイミド樹脂は、フッ素原子を含まない前記化学式3で表されるジアミンから誘導された単位を含むことで、それより製造されたポリイミドフィルムが、無色透明であるとともに、ガラス基板間に発生する残留応力が低く、高い密着性(接着性)と機械的物性、そして約100℃~180℃の適切なガラス転移温度を有するようにすることができる。
【0057】
一実施形態に係るポリイミド樹脂は、フッ素系ジアミンから誘導された単位を含んでもよい。前記フッ素系ジアミンは、フッ素原子を含むジアミンを意味する。前記フッ素系ジアミンの例としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]hexafluoropropane、HFBAPP)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane、BAHF)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenylether、6FODA)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル(4,4’-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)biphenyl)、または1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene、6FAPB)などが挙げられる。
【0058】
さらに、前記ポリイミド樹脂は、本明細書に開示された技術分野で通常用いられるジアミンから誘導された単位をさらに含んでもよい。例えば、前記ジアミンから誘導された単位は、芳香族ジアミンから誘導された単位を含んでもよく、前記芳香族ジアミンは、少なくとも1つの芳香族環を含むジアミンであってもよく、前記芳香族環は、単環であるか、2個以上の芳香族環が縮合した縮合環であるか、または2個以上の芳香族環が単結合、置換もしくは非置換のC1-5アルキレン基、またはOまたはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)-hexafluoropropane、6FAP)、p-フェニレンジアミン(p-Phenylenediamine、pPDA)、m-フェニレンジアミン(m-Phenylenediamine、mPDA)、p-メチレンジアニリン(p-methylenedianiline、pMDA)、またはm-メチレンジアニリン(m-methylenedianiline、mMDA)から誘導された単位をさらに含んでもよい。
【0059】
一実施形態において、前記接着促進層は、芳香族ジアミンから誘導された単位を含むポリイミド樹脂を含んでもよい。
一実施形態において、前記ポリイミド樹脂は、当該分野で通常用いられる酸無水物から誘導された単位を含んでもよい。例えば、前記酸無水物は、芳香族環を含む酸無水物、脂肪族環を含む酸無水物、テトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、前記酸無水物は、エチレングリコールビス(4-トリメリテート無水物)(Ethylene glycol bis(4-trimellitate anhydride)、TMEG-100)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-Oxydiphthalic anhydride、ODPA)、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(2,2-Bis[4-(2,3-dicarboxyphenoxy)phenyl]propane dianhydride)、4,4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(4,4’-(3,4-Dicarboxyphenoxy)diphenylsulfide dianhydride)、ピロメリット酸二無水物(Pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic dianhydride、CBDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(4,4’-(4,4’-Isopropylidenediphenoxy)bis(phthalic anhydride)、BPADA)、3,3,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2’-Bis-(3,4-dicarboxylphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(p-Phenylene bis(trimellitate anhydride)、TMHQ)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(2.2’-Bis(4-hydroxyphenyl)propanedibenzoate-3,3’,4,4’-tetracarboxylic dianhydride、ESDA)、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(Naphthalenetetracarboxylic dianhydride、NTDA)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の酸無水物であってもよい。
【0060】
例えば、前記酸無水物は、下記化学式4または化学式5で表される化合物であってもよい。
【0061】
【化7】
[化学式4]
【0062】
前記化学式4中、
は、それぞれ独立して、C3-10脂肪族環またはC4-10芳香族環であり、Yは、単結合、置換もしくは非置換のC1-20脂肪族鎖、置換もしくは非置換のC3-10脂肪族環、および/または置換もしくは非置換のC4-10芳香族環を含むリンカーであってもよい。具体的に、Yは、C1-20アルキレン、C1-10アルキレン、C1-5アルキレン、C3-10シクロアルキレン、C4-10アリーレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC3-10シクロアルキレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC4-10アリーレンを含んでもよい。
【0063】
【化8】
【0064】
前記化学式5中、
は、それぞれ独立して、C3-10脂肪族環またはC4-10芳香族環であり、Yは、単結合、置換もしくは非置換のC1-20脂肪族鎖、置換もしくは非置換のC3-10脂肪族環、および/または置換もしくは非置換のC4-10芳香族環を含むリンカーであってもよい。具体的に、Yは、C1-20アルキレン、C1-10アルキレン、C1-5アルキレン、C3-10シクロアルキレン、C4-10アリーレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC3-10シクロアルキレン、C1-20アルキレンにより連結された2個以上のC4-10アリーレンを含んでもよい。
【0065】
具体的に、前記酸無水物は、下記化学式で表される化合物群のいずれか1つ以上であってもよい。
【化9】
【0066】
一実施形態において、前記酸無水物は、ポリイミド前駆体の単量体の総モル数を基準として約30モル%~70モル%、40モル%~60モル%、45モル%~55モル%、または約50モル%で含まれてもよい。または、前記酸無水物は、ポリイミド前駆体の総重量に対して20重量%~70重量%、20重量%~60重量%、30重量%~60重量%、20重量%~50重量%、30重量%~60重量%、または40重量%~60重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0067】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物、飛散防止層、および/または接着促進層は、無機粒子を含んでもよい。一実施形態に係る無機粒子は、無機ナノ粒子であってもよく、平均直径は、例えば、5nm~50nmであってもよく、または、例えば、5nm~30nm、または5nm~20nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0068】
前記平均直径は、例えば、光学顕微鏡で粒子を観察して測定するか、SEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)、SPM(Scanning Probe Microscope)、STM(Scanning Tunneling Microscope)、AFM(Atomic Force Microscope)を用いて測定するか、または粒度分析器を用いて測定することができる。例えば、無機粒子を含む組成物にレーザ粒度分析器を用いてレーザを照射し、回折と粒度の大きさの相関関係から粒子の大きさを推論して得ることができる。例えば、D50、D10、またはD90値であってもよい。または、例えば、面積平均(Ma)、数平均(Mn)、または体積平均(Mv)値であってもよい。
【0069】
一実施形態において、前記無機粒子は、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。前記無機ナノ粒子は、有機溶媒に分散した形態で前記ポリイミド樹脂と混合されてもよく、分散性を向上させるために表面処理された物質であってもよい。例えば、一実施形態に係る無機粒子は、表面がC1-5アルコキシ基で置換されたものであってもよく、具体例として、メトキシ基またはエトキシ基で置換されたものであってもよい。一方、前記表面処理は、公知の表面処理方法を限定なく採択して行うことができるため、特に限定されない。
【0070】
一実施形態において、前記無機粒子は、化学式1で表される化合物の置換基に化学的に結合していてもよい。また、特定の理論に拘束されるものではないが、一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、前記無機粒子を含むことで、従来の飛散防止層の表面硬度の低下現象をさらに良好に改善することができる。
【0071】
一実施形態において、前記無機粒子は、ポリイミド前駆体組成物の全重量に対して1重量%~30重量%、2重量%~25重量%、5重量%~20重量%、または1重量%~25重量%で含まれてもよいが、必ずしも上記範囲に限定されるものではない。
【0072】
一実施形態において、ポリイミド前駆体組成物の固形分濃度(含量)は、ポリイミド前駆体組成物の総重量を基準として40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、または1重量%~40重量%であってもよい。具体例として、接着促進層を形成するためのポリイミド前駆体組成物の固形分濃度は、約1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、5重量%~10重量%、または約6重量%であってもよい。また、飛散防止層を形成するためのポリイミド前駆体組成物の固形分濃度は、約5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、20重量%~30重量%、または約25重量%であってもよい。ここで、固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドであってもよい。
【0073】
一実施形態において、ポリイミド前駆体および/またはポリイミドの分子量は500g/mol~200,000g/mol、または10,000g/mol~100,000g/molであってもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物は、ブルー系の顔料および染料のいずれか1つ以上をさらに含んでもよい。
前記ブルー系の顔料または染料の最大吸収波長は、黄色系の波長範囲を含む範囲であれば特に限定されないが、例えば、520nm~680nm、520nm~650nm、550nm~650nm、または550nm~620nmであってもよい。前述した範囲の最大吸収波長を有する顔料または染料を用いることで、一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物から製造されるポリイミドフィルムの青色または紫色波長の光吸収現象を効果的に相殺させ、黄色度をさらに効果的に改善することができる。さらに、ポリイミド前駆体組成物の製造に用いられる単量体の種類および組成、またはポリイミドフィルムの光学的物性に応じて無機顔料の最大吸収波長範囲を適宜選択することで、フィルムの黄色度、屈折率、厚さ方向の位相差などの光学的物性までさらに良好にすることができる。
【0075】
前記顔料としては、ブルー系の顔料または520nm~680nmの最大吸収波長を有する公知の顔料を特に限定なく用いてもよく、例えば、天然鉱物;または亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属またはその金属酸化物;を含む無機顔料であってもよい。前記顔料は、分散剤と共に顔料分散液に含まれて用いられてもよい。
【0076】
前記無機顔料の平均粒度は30nm~100nmであってもよい。または、前記平均粒度は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、50nm~100nm、または70nm~100nmであってもよい。前記無機顔料の平均粒度は、例えば、分散液中で測定されるか、またはポリイミドフィルム内で測定されてもよい。また、例えば、前記顔料の分散前の固相の平均粒度は、例えば、10nm~70nmであってもよく、例えば、30nm~70nmであってもよく、または50nm~70nmであってもよい。
【0077】
前記顔料は、分散性を向上させるために、超音波などの手段が用いられてもよく、分散剤を用いてもよい。前記分散剤は、顔料間の凝集を防止し、顔料の分散性および分散安定性の向上が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、顔料に吸着する官能基および分散媒(前記有機溶媒)に親和性が高い官能基を有してもよく、前記2種類の官能基のバランスを調節して分散剤を決めることができる。前記分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせて多様な種類が用いられてもよい。例えば、一実施形態に係る顔料分散剤は、酸性官能基を有してもよく、この場合、酸性官能基が顔料に吸着してもよい。前記酸性官能基は、例えば、カルボン酸(carboxylic acid)であってもよい。
【0078】
前記染料としては、ブルー系の染料または520nm~680nmの最大吸収波長を有する公知の染料を特に限定なく使用可能であり、例えば、酸性染料、直接染料、媒染染料などが挙げられる。または、カラーインデックス(The society of Dyers and Colourists出版)においてピグメント以外に色を有するものと分類されている化合物や、染色ノート(色染社)に記載されている公知の染料が挙げられる。または、化学構造としては、アゾ系染料、シアニン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、アントラキノン系染料、ナフトキノン系染料、キノンイミン系染料、メチン系染料、アゾメチン系染料、スクアリリウム系染料、アクリジン系染料、スチリル系染料、クマリン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、インディゴ系染料などが挙げられる。
【0079】
一実施形態において、前記顔料は、ポリイミド前駆体組成物に含まれるポリアミック酸および/またはポリイミド固形分を基準として10ppm~1,500ppmであってもよく、または、例えば、100ppm~1,500ppm、または500ppm~1,500ppmであってもよい。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドを意味し得る。
【0080】
一実施形態において、前記染料は、ポリイミド前駆体組成物に含まれるポリアミック酸および/またはポリイミド固形分を基準として10ppm~500ppmであってもよく、または、例えば、10ppm~300ppm、10ppm~200ppm、50ppm~200ppm、または80ppm~200ppmであってもよい。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドを意味し得る。
【0081】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物は、本明細書に開示された技術分野で通常用いられる添加剤をさらに含んでもよく、例えば、難燃剤、接着力向上剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、または可塑剤をさらに含んでもよい。
【0082】
一実施形態に係る光学多層構造体は、接着促進層と飛散防止層が基板の片面、背面、または両面に形成されてもよい。一実施形態に係る光学多層構造体の積層構造の例を挙げれば次のとおりである。
【0083】
(1)基板の上部に接着促進層が形成され、接着促進層の上部に飛散防止層が形成された構造を含む光学多層構造体(片面、図1);
(2)基板の下部に接着促進層が形成され、接着促進層の下部に飛散防止層が形成された構造を含む光学多層構造体(背面、図2);
(3)基板の上部に接着促進層が形成され、接着促進層の上部に飛散防止層が形成され、基板の下部に接着促進層が形成され、その下部に飛散防止層が形成された構造を含む光学多層構造体(両面、図3)。
【0084】
または、一実施形態に係る光学多層構造体は、ハードコーティング層をさらに含んでもよい。前記ハードコーティング層は、外部の物理的、化学的損傷から多層構造体を保護することができる。前記ハードコーティング層は、例えば、飛散防止層上に形成されてもよく、または、接着促進層が基板のいずれか一面に形成されている場合には、接着促進層が形成されていない基板の他の一面にハードコーティング層が形成されてもよい。一実施形態に係るハードコーティング層を含む光学多層構造体の積層構造の例を挙げれば次のとおりである。
【0085】
(4)基板の上部に接着促進層が形成され、接着促進層の上部に飛散防止層が形成され、飛散防止層の上部にハードコーティング層が形成された構造を含む光学多層構造体(片面、図4);
(5)基板の下部に接着促進層が形成され、接着促進層の下部に飛散防止層が形成され、接着促進層が形成されていない基板の上部にハードコーティング層が形成された構造を含む光学多層構造体(背面、図5);
(6)基板の上部に接着促進層が形成され、接着促進層の上部に飛散防止層が形成され、その上部にハードコーティング層が形成され、基板の下部に接着促進層が形成され、その下部に飛散防止層が形成された構造を含む光学多層構造体(両面、図6)。
【0086】
一実施形態において、基板のいずれか一面または光学多層構造体の最も下部層には、ディスプレイ表示素子が位置してもよい。
一実施形態において、前記基板は、超薄型強化ガラス(Ultra thin glass、UTG)基板であってもよい。または、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンアクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂などから製造されてもよく、これらの樹脂を単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0087】
一実施形態において、前記基板の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm~100μm、5μm~100μm、10μm~100μm、30μm~100μm、20μm~60μm、20μm~50μm、または25μm~35μmであってもよい。
【0088】
一実施形態において、前記飛散防止層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm~100μm、1μm~80μm、1μm~50μm。1μm~30μm、1μm~20μm、または3μm~15μmであってもよい。
【0089】
一実施形態において、前記接着促進層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以下、8μm以下、5μm以下、または4μm以下であってもよく、1nm以上、50nm以上、または100nm以上であってもよい。
【0090】
一実施形態において、前記基板(または、ガラス基板)の厚さが20μmを超える場合には、基板と接着促進層の厚さが下記数式1の関係を満たしてもよい。
【0091】
[数式1]
y≧0.05x-1
(x(μm):基板の厚さ;y(μm):接着促進層の厚さ)
【0092】
一実施形態に係る基板と接着促進層は、前記数式1による厚さ関係を満たす際に、耐飛散性および熱膨張-収縮挙動の緩和現象がさらに良好に実現されることができる。ただし、前記数式1は、一実施形態に係る多層光学構造体に含まれる接着促進層および基板の厚さの一態様を例示するものにすぎないため、実施形態に係る基板と接着促進層の厚さが必ずしも前記数式1に限定されるものではないと考えるべきである。
【0093】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物が硬化して形成されてもよく、例えば、ハードコーティング層形成用組成物を光硬化後に熱硬化した複合ハードコーティング層であってもよい。
【0094】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、エポキシ基を含む化合物またはアクリル系樹脂を含んでもよい。または、前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成されてもよく、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を含むシロキサン(Siloxane)系樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物が硬化する場合、優れた硬度および低い曲げ特性を有することができる。
【0095】
前記エポキシ基は、環状エポキシ基、脂肪族エポキシ基、および芳香族エポキシ基から選択されるいずれか1つ以上であってもよく、前記シロキサン樹脂は、シリコン原子と酸素原子が共有結合を形成した高分子化合物を意味し得る。
【0096】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン(Silsesquioxane)樹脂であってもよく、具体的には、シルセスキオキサン樹脂のケイ素原子にエポキシ基が直接置換されるか、または前記ケイ素原子に置換された置換基にエポキシ基が置換されたものであってもよく、より具体的には、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が置換されたシルセスキオキサン樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0097】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、重量平均分子量が1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~18,000g/mol、または2,000g/mol~15,000g/molであってもよい。重量平均分子量が前述した範囲である場合、前記ハードコーティング層形成用組成物の流動性、塗布性、硬化反応性などがさらに向上することができる。
【0098】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するシロキサン系化合物は、下記化学式6で表されるアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0099】
[化学式6]
61 Si(OR624-n
【0100】
前記化学式6中、R61は、炭素数3~6のエポキシシクロアルキル基またはオキシラニル基で置換された直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル基を含んでもよく、R62は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~7のアルキル基であり、nは、1~3の整数であってもよい。
【0101】
前記化学式6で表されるアルコキシシラン化合物は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0102】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、ハードコーティング層形成用組成物の全重量に対して20重量%~70重量%、または20重量%~50重量%で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0103】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、無機粒子を含んでもよい。前記無機粒子は、前述したポリイミド前駆体組成物に含まれ得る無機粒子と同様であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記ハードコーティング層形成用組成物は、耐スクラッチ性および/または耐摩耗性を向上させるための添加剤をさらに含むか、または耐スクラッチ性および/または耐摩耗性が実現される層を含んでもよい。
【0104】
一実施形態において、ハードコーティング層形成用組成物は、優れた流動性および塗工性を有することができ、また、ハードコーティング層形成用組成物の硬化時に均一な硬化が可能であるため、過硬化によるクラックなどの物理的欠陥を効果的に防止することができ、優れた硬度を示すことができる。
【0105】
一実施形態において、前記ハードコーティング層の厚さは1μm~100μm、1μm~80μm、1μm~50μm、1μm~30μm、1μm~20μm、または3μm~15μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
一実施形態において、前記光学多層構造体は、帯電防止層、耐指紋層、スクラッチ防止層、低屈折層、低反射層、撥水層、反射防止層、および/または衝撃吸収層などをさらに含んでもよい。
【0107】
一実施形態に係る光学多層構造体は、前記接着促進層および飛散防止層を含むことで、従来の表面硬度の低下現象を効果的に改善することができる。一実施形態に係る光学多層構造体は、表面硬度が1H以上であってもよい。または、例えば、5H以下、4H以下、3H以上、1H~4H、2H~4H、または3H~4Hであってもよい。前記表面硬度は、光学多層構造体の最外側の表面硬度であってもよく、または、光学多層構造体を構成する飛散防止層および/またはハードコーティング層の表面硬度であってもよい。一実施形態に係る前記表面硬度は、鉛筆硬度試験機を用いて、750gの重りの荷重をかけて測定することができ、具体的に、鉛筆と試験片の角度を約45゜に設置し、20mm/minの速度で10mmずつ測定することができる。この際、測定は、1つの試験片当たりに3回ずつ測定し、その平均値を表面硬度値として表すことができる。また、試験片のスクラッチが2個以上であれば不良と判定し、表面硬度値は、不良が発生する前の硬度値を意味し得る。
【0108】
一実施形態に係る光学多層構造体は、前記接着促進層および飛散防止層を含むことで、基板の反り現象が良好に改善されることができる。一実施形態において、前記光学多層構造体の両端部を定規を用いて地面から高さを測定してカール量を計算した場合(または、両側でそれぞれ測定された値の平均を計算した場合)、その値が3.0mm以下、2.0mm以下、1.7mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、0.01mm~3.0mm、0.01mm~2.0mm、0.01mm~1.0mm、0.05mm~0.8mm、0.05mm~0.6mm、0.1mm~0.6mm、0.1mm~0.5mm、0.1mm~0.4mm、0.1mm~0.3mm、または0.1mm~0.2mmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0109】
一実施形態に係る光学多層構造体は、前記接着促進層および飛散防止層を含むことで、光学多層構造体の透明性を良好に実現することができる。一実施形態において、前記光学多層構造体をASTM D1003規格に準じてヘイズ(haze)を測定した場合、その値が1.0%以下であってもよい。または、例えば、0.8%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%~1.0%、0.1%~0.8%、0.1%~0.5%、0.1%~0.3%、0.1%~0.2%、または約0.1%であってもよい。
【0110】
一実施形態に係る光学多層構造体は、前記接着促進層および飛散防止層を含むことで、層間の密着性を良好に向上させることができる。一実施形態において、クロスカット(cross cut)テストを行う場合、剥離した切片の数が30個以下、20個以下、10個以下、5個以下であるか、または1個の切片も剥がれない。
【0111】
一実施形態に係る光学多層構造体をASTM D1746に準じて400nm~700nmで全光線透過率を測定する場合、その値が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、85%~98%、90%~95%、または90%~93%であってもよい。
【0112】
一実施形態は、光学多層構造体の製造方法を提供する。
具体的に、前記製造方法は、基板のいずれか一面または両面上にポリイミド前駆体組成物を塗布および乾燥して接着促進層を形成するステップと、
前記接着促進層上に前記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド前駆体組成物を塗布および硬化して飛散防止層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0113】
この際、前記ポリイミド前駆体組成物および/または化学式1で表される構造単位を含むポリイミド前駆体組成物は、前述した一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を同様に適用することができる。
【0114】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体組成物は、溶媒中でジアミンおよび酸無水物を含む単量体を反応させてポリイミド前駆体組成物(ポリアミック酸溶液)を製造するステップを含む方法により製造されてもよい。また、前記ポリイミド前駆体組成物(ポリアミック酸溶液)を製造するステップの後に、溶媒を追加投入するステップをさらに含んでもよい。前記溶媒は、前述した一実施形態で述べた溶媒に関する内容を同様に適用することができる。
【0115】
一実施形態に係る光学多層構造体の製造方法において、前記接着促進層を形成するステップは、ポリイミド前駆体組成物(または、接着促進層形成用組成物)を塗布および乾燥して溶媒を蒸発させることで、ポリイミド前駆体またはポリアミック酸の状態で接着促進層を形成するステップである。この際、前記乾燥は、例えば、40℃~120℃、40℃~100℃、50℃~100℃、60℃~100℃、70℃~90℃、または約80℃の温度で行われてもよく、1分~30分、1分~20分、5分~30分、5分~20分、5分~15分、または約10分間行われてもよい。前記接着促進層を形成するステップは、接着促進層が、ポリイミド前駆体またはポリアミック酸がイミド化されていない状態を含むようにすることで、今後の飛散防止層の形成後に共に硬化し、接着促進層と飛散防止層が化学的結合(イミド結合)を形成するようにすることが好ましい。
【0116】
一実施形態において、前記飛散防止層を形成するステップは、化学式1で表される構造単位を含むポリイミド前駆体組成物(または、飛散防止層形成用組成物)を塗布および硬化して形成されてもよい。前記硬化は、例えば、2段階の熱処理ステップを含んでもよい。例えば、40℃~120℃、40℃~100℃、50℃~100℃、60℃~100℃、70℃~90℃、または約80℃の温度で、1分~30分、1分~20分、5分~30分、5分~20分、5分~15分、または約10分間一次熱処理した後、150℃~300℃、180℃~280℃、200℃~280℃、200℃~250℃、または約230℃の温度で、約1分~30分、1分~20分、5分~20分、または約15分間二次熱処理するステップを含んでもよい。
【0117】
一実施形態に係る光学多層構造体の製造方法は、ハードコーティング層形成用組成物を塗布、乾燥、および硬化してハードコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。例えば、飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布、乾燥、および硬化してハードコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよく(片面または両面)、または、接着促進層が基板のいずれか一面に形成される場合には、接着促進層が形成されていない基板の他の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布、乾燥、および硬化してハードコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。一実施形態において、前記乾燥は、40℃~100℃、40℃~80℃、50℃~80℃、50℃~70℃、または約60℃の温度で、30秒~10分、30秒~8分、1分~5分、または約3分間乾燥するステップであってもよい。前記硬化は、高圧メタルランプを用いて紫外線(UV)を照射した後、100℃~200℃、120℃~180℃、130℃~170℃、140℃~160、または約150℃の温度で、1分~30分、5分~20分、5分~15分、8分~12分、または約10分間硬化するステップであってもよい。
【0118】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成されてもよい。この際、前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよく、例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合を促進させることができる。
【0119】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、熱開始剤および/または光開始剤をさらに含んで形成されてもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング層に熱開始剤を用いる場合、硬化半減期を短縮させることができ、低温条件においても迅速に熱硬化を行うことができるため、高温条件下で長期間熱処理を行う場合に発生する損傷および変形を防止することができる。前記熱開始剤は、ハードコーティング層形成用組成物に熱が加えられる際に、前記エポキシシロキサン樹脂または架橋剤の架橋反応を促進することができる。前記熱開始剤としては、カチオン性熱開始剤が用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0120】
また、ハードコーティング層の形成時には前記熱開始剤を用いた熱硬化と前記光開始剤を用いた光硬化を併用することで、ハードコーティング層の硬化度、硬度、柔軟性などを向上させることができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を基材などに塗布し、紫外線を照射(光硬化)して少なくとも部分的に硬化させた後、追加的に熱を加えて(熱硬化)実質的に完全に硬化させてもよい。
【0121】
前記光硬化により前記ハードコーティング層形成用組成物が半硬化または部分硬化することができ、前記半硬化または部分硬化したハードコーティング層形成用組成物は、前記熱硬化により実質的に完全に硬化することができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化だけで硬化する際には、硬化時間が過度に長くなるか、または部分的に硬化が完全に行われないことがある。これに対し、前記光硬化に続き前記熱硬化を行う場合には、光硬化により硬化していない部分が熱硬化により実質的に完全に硬化することができ、硬化時間も減少することができる。
【0122】
また、一般的に、硬化時間の増加(例えば、露光時間の増加)により、既に適した程度に硬化した部分に過度なエネルギーが提供されることで過硬化が起こり得る。前記過硬化が行われる場合、ハードコーティング層が柔軟性を失うか、またはカール、クラックなどの機械的欠陥が発生し得る。これに対し、前記光硬化と前記熱硬化を併用する場合、前記ハードコーティング層形成用組成物を短時間で実質的に完全に硬化させることができ、ハードコーティング層の柔軟性を維持しながらも硬度をさらに向上させることができる。
【0123】
前記ハードコーティング層形成用組成物を先に光硬化し、追加的に熱硬化する方法について前述したが、光硬化および熱硬化の順が特にこれに限定されるものではない。すなわち、一部の実施形態では、前記熱硬化が先に行われた後に前記光硬化が行われてもよいことはいうまでもない。
【0124】
一実施形態において、前記熱開始剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1重量部~20重量部、または1重量部~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、例えば、前記熱開始剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01重量部~15重量部、0.1重量部~15重量部、または0.3重量部~10重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0125】
一実施形態において、前記光開始剤は、光カチオン開始剤を含んでもよい。前記光カチオン開始剤は、前記エポキシシロキサン樹脂およびエポキシ系単量体の重合を開始することができる。前記光カチオン開始剤としては、ヨードニウム塩、オニウム塩、および/または有機金属塩などを用いてもよく、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0126】
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1重量部~15重量部、または1重量部~15重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0127】
また、例えば、前記光開始剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部、0.1重量部~10重量部、または0.3重量部~5重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0128】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0129】
前記溶媒の非限定的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0130】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、無機充填剤をさらに含んでもよい。前記無機充填剤は、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0131】
前記無機充填剤は、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などが用いられてもよく、または、ハードコーティング層形成用組成物の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0132】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。前記滑剤は、巻き取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などをさらに改善させることができる。
【0133】
前記滑剤の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0134】
この他にも、前記ハードコーティング層形成用組成物は、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱的高分子化禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0135】
一実施形態において、前記塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、およびスピンコーティングなどにより行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0136】
一実施形態は、一実施形態に係る光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルム、および前記ウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【0137】
一実施形態に係る多層構造体は、カール現象が最小化されるだけでなく、表面硬度が高いため、ウィンドウカバーフィルムおよび/またはフレキシブルディスプレイパネルに効果的に適用することができる。
【0138】
前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いることができる。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0139】
以下、実施例および実験例を以下に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は一実施態様の一部を例示するものにすぎず、本明細書に記載された技術がこれに限定されるものではない。
【0140】
<製造例1>ポリイミド前駆体組成物の製造(TFMB/TMEG-100)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)267gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)39gを溶解させた。これにエチレングリコールビス(4-トリメリテート無水物)(Ethylene glycol bis(4-trimellitate anhydride)、TMEG-100)50gを同じ温度で添加し、一定時間溶解させつつ撹拌した。次に、溶液の固形分濃度が6重量%となるようにプロピレングリコールメチルエーテル(Propyleneglycol methylether、PGME)を添加し、ポリイミド前駆体組成物を製造した。この際、TFMBとTMEG-100のモル比は約1:1であり、DMPAとPGMEの質量比は約2:8である。
【0141】
<製造例2>ポリイミド前駆体組成物の製造(6FAPB/TMEG-100)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPA 230gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene、6FAPB)36.5gを溶解させた。これにTMEG-100 35gを同じ温度で添加し、一定時間溶解させつつ撹拌した。次に、溶液の固形分濃度が6重量%となるようにPGMEを添加し、ポリイミド前駆体組成物を製造した。この際、6FAPBとTMEG-100のモル比は約1:1であり、DMPAとPGMEの質量比は約2:8である。
【0142】
<製造例3>ポリイミド前駆体組成物の製造(6FODA/TMEG-100)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPAを153g満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4.4’-diaminodiphenyl ether、6FODA)41gを溶解させた。これにTMEG-100 50gを同じ温度で添加し、一定時間溶解させつつ撹拌した。次に、溶液の固形分濃度が6重量%となるようにPGMEを添加し、ポリイミド前駆体組成物を製造した。この際、6FODAとTMEG-100のモル比は約1:1であり、DMPAとPGMEの質量比は約2:8である。
【0143】
<製造例4>ポリイミド前駆体組成物の製造(6FODA/TPER/TMEG-100)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPA 238gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FODA 18.4g、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(4-aminophenoxy)benzene、TPER)16gを同じ温度で添加し、一定時間溶解させつつ撹拌した。次に、溶液の固形分濃度が6重量%となるようにPGMEを添加し、ポリイミド前駆体組成物を製造した。これにTMEG-100 45gを同じ温度で添加し、一定時間溶解させつつ撹拌した。この際、6FODA、TPER、およびTMEG-100のモル比は約0.5:0.5:1であり、DMPAとPGMEの質量比は約2:8である。
【0144】
<製造例5>ポリイミド前駆体組成物の製造(TFMB/DMS-DPS/TMEG-100)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPAおよびPGMEを8:2の質量比で混合した溶媒を248g満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB 24.5g、ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン(Dimethylsiloxane-diphenylsiloxane、DMS-DPS)オリゴマージアミン化合物(Shin-etsu社、X-22-1660B-3、分子量4,400g/mol)40.7gを入れて溶解させた。これにTMEG-100 36gを添加し、50℃で8時間、常温で24時間溶解させつつ撹拌した。次に、固形分濃度が6重量%となるようにPGMEをさらに添加し、ポリイミド前駆体組成物を製造した。この際、DMS-DPSは、単量体の全質量を基準として約40重量%であり、TFMBおよびDMS-DPSとTMEG-100のモル比は約0.99:1であり、DMPAとPGMEの質量比は約2:8である。
【0145】
<製造例6>ポリイミド前駆体組成物の製造(TFMB/DMS-DPS/TMEG-100)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPAおよびPGMEを8:2の質量比で混合した溶媒を248g満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB 24.5g、ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン(Dimethylsiloxane-diphenylsiloxane、DMS-DPS)オリゴマージアミン化合物(Shin-etsu社、X-22-1660B-3、分子量4,400g/mol)40.7gを入れて溶解させた。これにTMEG-100 36gを添加し、50℃で8時間、常温で24時間溶解させつつ撹拌した。次に、固形分濃度が25重量%となるようにDMPAおよびPGMEを8:2の質量比で混合した溶媒をさらに添加し、ポリイミド前駆体組成物を製造した。この際、DMS-DPSは、単量体の全質量を基準として約40重量%であり、TFMBおよびDMS-DPSとTMEG-100のモル比は約0.99:1である。
【0146】
<製造例7>ポリイミド前駆体組成物の製造(TFMB/DMS-DPS/TMEG-100)
前記製造例6において、DMS-DPSを単量体の全質量を基準として約45重量%で用いたことを除いては、前記製造例6と同様の方法で、固形分濃度が25重量%のポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0147】
<製造例8>ポリイミド前駆体組成物の製造(TFMB/DMS-DPS/TMEG-100)
前記製造例6において、DMS-DPSを単量体の全質量を基準として約50重量%で用いたことを除いては、前記製造例6と同様の方法で、固形分濃度が25重量%のポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0148】
<製造例9>
シランカップリング剤としてKBM-403(Shin-etsu社、3-Glycidoxypropyl trimethoxysilane)を準備した。
【0149】
<製造例10>ハードコーティング層形成用組成物の製造
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(2-(3,4-Epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane、ECTMS、TCI社)と水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して混合物を製造した後、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物にテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Tetramethylammoniumhydroxide、TMAH、Aldrich社)触媒0.1mL、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF、Aldrich社)100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレン(Methylene chloride、Aldrich社)で抽出し、抽出物をMgSOで水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシシロキサン系樹脂を得た。
【0150】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((3’,4’-Epoxycyclohexyl)methyl 3,4-epoxycyclohexanecarboxylate)10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート(Bis[(3,4-epoxycyclohexyl)methyl]adipate)5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート((4-Methylphenyl)[4-(2-methylpropyl)phenyl]iodoniumhexafluorophosphate)0.5g、メチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)54.5gを混合し、ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0151】
<実施例1~実施例10および比較例1~比較例3>
実施例1の光学多層構造体を製造するために、ガラス基板(UTG、30μm)の一面に前記製造例1で製造されたポリイミド前駆体組成物をメイヤーバー#6を用いて塗布した後、80℃で10分間乾燥し、厚さ500nmの接着促進層を形成した。次に、形成された接着促進層上に前記製造例6で製造されたポリイミド前駆体組成物をメイヤーバー#30を用いて塗布した後、窒素雰囲気で80℃で10分間乾燥した後、230℃で15分間硬化し、厚さ10μmの飛散防止層を形成した。次に、形成された飛散防止層上に前記製造例10で製造されたハードコーティング層形成用組成物をメイヤーバー#10を用いて塗布した後、60℃で3分間乾燥した。その後、高圧メタルランプを用いて1J/cmの紫外線を照射した後、150℃で10分間硬化させて厚さ10μmのハードコーティング層を形成し、実施例1の光学多層構造体を製造した。
【0152】
また、下記表2に示したガラス基板および各層のポリイミド組成物を用いて、実施例2~実施例10および比較例1~比較例3の光学多層構造体を製造した。この際、比較例1および比較例2は、接着促進層を形成するステップを省略して製造した。
【0153】
【表2】
【0154】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造された光学多層構造体を用いて下記のような方法で基板の物性を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0155】
1.耐飛散性の測定
NANOHitec社製のボールドロップ(ball drop)測定器を用いて常温で評価を行った。前記実施例および比較例で製造された光学多層構造体をサンプル支持台に置き、重量が130gであり、直径が30mmであるスチールボールを1mの高さから落下させた後、光学多層構造体の状態を下記基準に従って目視で評価した。
【0156】
◎:打痕および圧痕がない
○:打痕および圧痕がある
X:割れ(破片が飛散する)
【0157】
2.密着性テスト(Cross-cut test)
クロスカットテスト方法を用いて密着性を評価した。前記実施例および比較例で製造された光学多層構造体を1mm×1mmサイズに100個の正方形の形状に切断した後、試験片にガラステープを貼り付けた後に剥がし、剥離した切片の数を測定して接着性を評価し、(剥離した切片の数/100)で示した。
【0158】
3.折り曲げ特性テスト
折り曲げ試験機(Yuasa system、DMX-FS-A)を用いて、約1.5R~5.0Rの曲率半径(実施例1~実施例8および比較例1~比較例3は約1.5Rの曲率半径条件で試験し、実施例9および実施例10は5.0Rの曲率半径条件で試験)、30r/minの試験速度で200,000回繰り返して試験し、試験終了時に光学多層構造体の破断有無に応じて折り曲げ特性を評価した。
OK:破断しない
NG:破断する
【0159】
4.ヘイズ(Haze)の測定
ASTM D1003規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いてヘイズ(%)値を測定した。
【0160】
5.全光線透過率(Total transmittance、T.T)の測定
ASTM D1746規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて、400nm~700nmの波長領域の全体で全光線透過率(%)を測定した。
【0161】
6.表面硬度の測定
鉛筆硬度試験機(Ocean Science社、COAD.607)を用いて、750gの重りの荷重をかけて鉛筆硬度を測定した。鉛筆(三菱社)と前記実施例および比較例で製造された光学多層構造体との角度を45゜に設置し、20mm/minの速度で10mmずつ3回測定し、スクラッチが2個以上であれば不良と判定し、表面硬度は、不良が発生する前の硬度を示した。
【0162】
7.基板の反り(カール、curl)の測定
光学多層構造体の両端部が地面からカールが発生した程度(カール量)を定規を用いて測定し、カール量(mm)は、両側で測定された値の平均値で計算した。
【0163】
【表3】
【0164】
前記表3から確認できるように、実施例による光学多層構造体は、比較例に比べて、各層間の密着性に優れ、表面硬度が高く、かつ、カール現象が最小化され、優れた耐飛散性および低いヘイズを実現することを確認することができる。具体的に、実施例による光学多層構造体は、接着促進層を含まない比較例1および比較例2に比べて、耐飛散性、密着性、折り曲げ特性、表面硬度が良好に改善され、商用化されたシランカップリング剤を接着促進層に用いた比較例3に比べて、耐飛散性、折り曲げ特性、表面硬度が良好に改善された。一方、比較例1~比較例3の光学多層構造体は、シロキサン構造を含む化合物を飛散防止層に導入することでカール現象は改善されたが、ボールドロップテスト時に試験片が割れ、破片が飛散するため、耐飛散性が良好に実現されることができず、表面硬度が3B以下と低く、物理的特性に特に劣るものであった。
【0165】
以上、好ましい実施例および実験例により一実施形態を詳しく説明したが、一実施形態の範囲が特定の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求範囲により解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0166】
100:光学多層構造体
10:基板
20:接着促進層
30:飛散防止層
40:ハードコーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6