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特開2024-106560ベントの移動方法、ベント工法及びベント用台車
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106560
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ベントの移動方法、ベント工法及びベント用台車
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010876
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】592242822
【氏名又は名称】三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久米 優
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059CC01
2D059DD03
2D059DD09
(57)【要約】
【課題】ベントを容易に移動させることができるベントの移動方法を提供することを課題とする。
【解決手段】橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベント1の移動方法であって、設置されたベント1に当該ベント1とは別体の台車(ベント用台車40)を取り付ける台車取付工程と、ベント用台車40に設けられた昇降部70を用いて設置面Gからベント1を上昇させる持ち上げ工程と、ベント1を上昇させた状態でベント用台車40を移動させる移動工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントの移動方法であって、
設置されたベントに当該ベントとは別体の台車を取り付ける台車取付工程と、
前記台車に設けられた昇降部を用いて設置面から前記ベントを上昇させる持ち上げ工程と、
前記ベントを上昇させた状態で前記台車を移動させる移動工程と、を含むことを特徴とするベントの移動方法。
【請求項2】
台車取付工程では、
前記ベントに対して両側側方に突出するように架設され、前記ベントの移動方向に対して少なくとも前後一対設けられるシャーシ体を設けるシャーシ体設置工程と、
各前記シャーシ体の両端側の下部にそれぞれ車輪体を設ける車輪体設置工程と、
各前記シャーシ体と前記ベントの基礎部とを連結するように前記昇降部を設置する昇降部設置工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のベントの移動方法。
【請求項3】
台車取付工程では、
前記ベントに対して両側側方に突出するように架設され、前記ベントの移動方向に対して少なくとも前後一対設けられるシャーシ体を設けるシャーシ体設置工程と、
各前記シャーシ体の両端側の下部に、走行面の不陸を吸収する第一不陸吸収部を設置する第一不陸吸収部設置工程と、
各前記第一不陸吸収部の下部にそれぞれ車輪体を設ける車輪体設置工程と、
各前記シャーシ体と前記ベントの基礎部とを連結するように前記昇降部を設置する昇降部設置工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のベントの移動方法。
【請求項4】
前記昇降部は、
前記シャーシ体に設置されるジャッキと、
前記ベントの基礎部に設けられる反力受けプレートと、
前記ジャッキと前記反力受けプレートとを連結するテンションバーと、を備えていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のベントの移動方法。
【請求項5】
前記車輪体は、
複数のタイヤと、
前記移動方向に対して平行に各前記タイヤを支持するタイヤ支持部と、
走行面の不陸を吸収する第二不陸吸収部と、を備えていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のベントの移動方法。
【請求項6】
前記第一不陸吸収部は、
前記車輪体の上部に設けられる下部材と、
前記シャーシ体の下部に設けられる上部材と、
前記下部材と前記上部材とを回動自在に支持し、軸方向が移動方向に対して直交する移動直交方向と平行となるピン支持部と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載のベントの移動方法。
【請求項7】
橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントを用いるベント工法であって、
ベントの設置予定位置以外の場所であり、かつ、交通規制がかからない組立ヤードでベントを組み立てるベント組立工程と、
組み立てられたベントを請求項1に記載のベントの移動方法により、前記組立ヤードから前記設置予定位置まで移動させるベント搬入工程と、を含むことを特徴とするベント工法。
【請求項8】
橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントを用いるベント工法であって、
請求項1に記載のベントの移動方法により、ベントの設置位置から交通規制がかからない解体ヤードまで既設ベントを移動させるベント搬出工程と、
前記解体ヤードで既設ベントを解体するベント解体工程と、を含むことを特徴とするベント工法。
【請求項9】
橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントを移動させるベント用台車であって、
前記ベントの両側側方に突出するように架設されるシャーシ体と、
前記シャーシ体の両端側の下部に設けられた車輪体と、
前記シャーシ体と前記ベントの基礎部とを連結するとともに、前記シャーシ体に対して前記ベントを昇降させる昇降部と、を備えることを特徴とするベント用台車。
【請求項10】
前記シャーシ体と前記車輪体との間に走行面の不陸を吸収する第一不陸吸収部を備えることを特徴とする請求項9に記載のベント用台車。
【請求項11】
前記車輪体は、走行面の不陸を吸収する第二不陸吸収部を備えることを特徴とする請求項9に記載のベント用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントの移動方法、ベント工法及びベント用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、橋梁の架設工事の際に、橋桁等を仮受けさせるベントに関する技術が開示されている。当該ベントは、設置面に形成される基礎部と、複数本の柱とで構成されている。ベント工法においては、ベント組立工程と、橋桁架設工程と、橋桁連結工程と、ベント解体工程とを行う。つまり、ベント組立工程では、ベントの設置予定位置に移動式クレーンを用いてベントを組み立て、橋桁が連結された後は、再度移動式クレーンを用いてベントの設置位置でベントを解体するというものである。橋梁の架設においては、工期の短縮及び交通規制の短縮のため、大型移動式クレーンを用いて一括架設、一括解体することが主流になっている。
【0003】
一方、多軸式自走台車と、当該多軸式自走台車の上に設置されたベントとを備えた自走式ベントを用いてベント工法を行うことが知られている。自走式ベントを用いることで、多軸式自走台車によって橋軸方向にベントを移動させながら作業を行うことができる。つまり、一旦組み立てたベントを解体せずに、次の設置予定位置に移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-105692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、大規模交差点や高速道路上の橋梁架設を行う場合、大型移動式クレーンの設置ができない場合がある。このような場合は、交通規制を長くするか、橋梁の設計変更を行わなければならないという問題がある。
一方、自走式ベントを用いる場合、多軸式自走台車の準備、運行が困難になり、工期が長期化するおそれがある。また、多軸式自走台車とベントが一体化された状態での強度が求められるため、構造計算等が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ベントを容易に移動させることができるベントの移動方法及びベント用台車を提供することを課題とする。
また、本発明は、交通規制を短くすることができるとともに、ベントに起因して橋梁の設計が制限されるのを防ぐベント工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントの移動方法であって、設置されたベントに当該ベントとは別体の台車を取り付ける台車取付工程と、前記台車に設けられた昇降部を用いて設置面から前記ベントを上昇させる持ち上げ工程と、前記ベントを上昇させた状態で前記台車を移動させる移動工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ベントとは別体の台車を取り付け、ベントを上昇させた状態で移動させる。これにより、ベントを容易に移動させることができる。また、ベントと台車とが別体になっているため、準備も移動も容易であるとともに、橋梁やベントの構造計算も従来と同じように行うことができる。
【0009】
また、台車取付工程では、前記ベントに対して両側側方に突出するように架設され、前記ベントの移動方向に対して少なくとも前後一対設けられるシャーシ体を設けるシャーシ体設置工程と、各前記シャーシ体の両端側の下部にそれぞれ車輪体を設ける車輪体設置工程と、各前記シャーシ体と前記ベントの基礎部とを連結するように前記昇降部を設置する昇降部設置工程と、を含むことが好ましい。
【0010】
本発明によれば、台車を容易に形成することができる。
また、台車取付工程では、前記ベントに対して両側側方に突出するように架設され、前記ベントの移動方向に対して少なくとも前後一対設けられるシャーシ体を設けるシャーシ体設置工程と、各前記シャーシ体の両端側の下部に、走行面の不陸を吸収する第一不陸吸収部を設置する第一不陸吸収部設置工程と、各前記第一不陸吸収部の下部にそれぞれ車輪体を設ける車輪体設置工程と、各前記シャーシ体と前記ベントの基礎部とを連結するように前記昇降部を設置する昇降部設置工程と、を含むことが好ましい。
【0011】
本発明によれば、台車を容易に形成することができる。また、第一不陸吸収部を備えているため、走行面の不陸に起因するベントの傾倒を防ぐことができる。
また、前記昇降部は、前記シャーシ体に設置されるジャッキと、前記ベントの基礎部に設けられる反力受けプレートと、前記ジャッキと前記反力受けプレートとを連結するテンションバーと、を備えていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、昇降部を容易に形成することができる。
また、前記車輪体は、複数のタイヤと、前記移動方向に対して平行に各前記タイヤを支持するタイヤ支持部と、走行面の不陸を吸収する第二不陸吸収部と、を備えていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、車輪体を容易に形成することができる。また、タイヤ支持部によってタイヤの本数を適宜増減させることができる。また、第二不陸吸収部を備えているため、走行面の不陸に起因するベントの傾倒を防ぐことができる。
また、前記第一不陸吸収部は、前記車輪体の上部に設けられる下部材と、前記シャーシ体の下部に設けられる上部材と、前記下部材と前記上部材とを回動自在に支持し、軸方向が移動方向に対して直交する移動直交方向と平行となるピン支持部と、を備えていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、第一不陸吸収部を容易に構成することができる。
また、本発明は、橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントを用いるベント工法であって、ベントの設置予定位置以外の場所であり、かつ、交通規制がかからない組立ヤードでベントを組み立てるベント組立工程と、組み立てられたベントを請求項1に記載のベントの移動方法により、前記組立ヤードから前記設置予定位置まで移動させるベント搬入工程と、を含むこと特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ベントとは別体の台車を取り付け、ベントを上昇させた状態で移動させる。これにより、ベントを容易に移動させることができる。また、ベントと台車とが別体になっているため、準備も移動も容易であるとともに、橋梁やベントの構造計算も従来と同じにすることができる。
【0016】
また、ベントの設置予定位置ではなく、組立ヤードでベントを組み立てるとともに、ベントを組み立てた状態で容易に移動させることができるため、交通規制を短くすることができる。また、組立ヤードで大型移動式クレーンも用いることができるため、ベントに起因する橋梁設計の制限を受けない。
【0017】
また、本発明は、橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントを用いるベント工法であって、請求項1に記載のベントの移動方法により、ベントの設置位置から交通規制がかからない解体ヤードまで既設ベントを移動させるベント搬出工程と、前記解体ヤードで既設ベントを解体するベント解体工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ベントとは別体の台車を取り付け、ベントを上昇させた状態で移動させる。これにより、ベントを容易に移動させることができる。また、ベントと台車とが別体になっているため、準備も移動も容易であるとともに、橋梁やベントの構造計算も従来と同じにすることができる。
【0019】
また、ベント解体工程を、ベントの設置予定位置ではなく、解体ヤードまで移動させてから行うため、交通規制を短くすることができる。また、解体ヤードで大型移動式クレーンも用いることができるため、ベントに起因して橋梁の設計が制限されるのを防ぐことができる。
【0020】
また、本発明は、橋梁の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベントを移動させるベント用台車であって、前記ベントの両側側方に突出するように架設されるシャーシ体と、前記シャーシ体の両端側の下部に設けられた車輪体と、前記シャーシ体と前記ベントの基礎部とを連結するとともに、前記シャーシ体に対して前記ベントを昇降させる昇降部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、ベントとは別体の台車を取り付け、ベントを上昇させた状態で移動させる。これにより、ベントを容易に移動させることができる。
また、前記シャーシ体と前記車輪体との間に走行面の不陸を吸収する第一不陸吸収部を備えることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、走行面の不陸に起因するベントの傾倒を防ぐことができる。
また、前記車輪体は、走行面の不陸を吸収する第二不陸吸収部を備えることが好ましい。
本発明によれば、走行面の不陸に起因するベントの傾倒を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のベントの移動方法及びベント用台車によれば、ベントを容易に移動させることができる。
また、本発明のベント工法によれば、交通規制を短くすることができるとともに、ベントに起因して橋梁の設計が制限されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係るベントの側面図である。
図2】第一実施形態に係るベントの正面図である。
図3図1のIII-III矢視図である。
図4】第一実施形態に係るベント台車の正面図である。
図5】第一実施形態に係るベント台車の側面図である。
図6】第一実施形態に係るベント台車の拡大正面図である。
図7図6のVII-VII矢視図である。
図8図6のVIII-VIII矢視図である。
図9】第一不陸吸収部の側面図である。
図10】第一不陸吸収部の正面図である。
図11図10のXI-XI矢視図である。
図12】第一不陸吸収部の拡大側面図(作用図)である。
図13】本発明の第一実施形態に係るベント工法のベント組立工程を示す平面図である。
図14】第一実施形態に係るベント工法のシャーシ体設置工程において保持部材を設置した状態を示す斜視図である。
図15】第一実施形態に係るベント工法のシャーシ体設置工程において内側のシャーシ部材を設置した状態を示す斜視図である。
図16】第一実施形態に係るベント工法のシャーシ体設置工程において外側のシャーシ部材を設置した状態を示す斜視図である。
図17】第一実施形態に係るベント工法のシャーシ体設置工程において上サンドルを設置した状態を示す斜視図である。
図18】第一実施形態に係るベント工法のシャーシ体設置工程において下サンドルを設置した状態を示す斜視図である。
図19】第一実施形態に係るベント工法の第一不陸吸収部設置工程及び車輪体設置工程を示す斜視図である。
図20】第一実施形態に係るベント工法の昇降部設置工程を示す斜視図である。
図21】第一実施形態に係るベント工法の持ち上げ工程を示す斜視図である。
図22】第一実施形態に係るベント工法の移動工程(搬入工程)を示す平面図である。
図23】第一実施形態に係るベント工法の移動工程(搬出工程)を示す平面図である。
図24】本発明の第二実施形態に係るベント用台車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係るベントの移動方法、ベント工法及びベント用台車について図面を参照して説明する。説明における「上下」、「左右」、「前後」は図1及び図2に示す矢印に従う。これらの方向は説明の便宜上用いるものであって、本発明を限定するものではない。また、左右方向は「橋軸方向」、前後方向は「橋軸直角方向」とも言う。
【0026】
<ベントの構成>
まずは、図1~3に示すように、本実施形態で用いるベント1について説明する。ベント1は、橋梁の架設工事の際に、架設される部材(本実施形態では橋桁F)を仮受けさせる構造物である。ベント1は、現場で組み立てられ、所定の作業が終了したら解体される。ベント1は、本実施形態では4本の柱からなる折り畳み式のユニット構造になっているが、あくまで例示であって柱の本数や組立方法は限定されるものではなく、面材ベントなどの他の構造のベントであってもよい。
【0027】
ベント1は、基礎部2と、柱部3と、頂部4と、を備えている。基礎部2は、土台となる部位であって、設置面(地面)Gに設けられている。基礎部2は、複数の基礎部材11と、複数の基礎部材12とを備え、格子状に組み付けられている。基礎部材11,12は、例えば、H型鋼を用いることができる。基礎部材11と基礎部材12とは締結手段等で一体的に締結されている。設置面Gと基礎部材11との間に敷板J,Jを設けてもよい。
【0028】
柱部3は、本実施形態では4本の柱13(適宜13A,13B,13C,13Dと付して区別する)で主に構成されている。各柱13は、基礎部材11,12同士が交差する部位にそれぞれ立設されている。各柱13は、四角柱になっており概ね同形状になっている。図1に示すように、柱部3には、高さ方向に所定の間隔で補強部14が設けられている。補強部14は、高さ方向に離間して配置された横材15,15と、横材15,15を斜めに連結する斜材16,16とを備えている。また、図2に示すように、柱部3には、高さ方向に所定の間隔をあけて横架材17及び筋交い材18が設けられている。柱部3の下端は、基礎部2と連結プレートPL等を介して接合されている。柱部3の上端は頂部4と連結プレートPL等を介して接合されている。
【0029】
頂部4は、複数の頂部部材19と、複数の頂部部材20とを備え、格子状に組み付けられている。頂部部材19,20は、例えば、H型鋼を用いることができる。頂部部材19と頂部部材20とは締結手段等で一体的に締結されている。
頂部4の上には、複数の高さ調整部21が設けられている。高さ調整部21は、例えば、サンドルを高さ方向に複数段積み上げて構成されており、橋桁Fを支持する部位である。
【0030】
<ベント用台車>
次に、本実施形態で用いるベント用台車について説明する。図4及び図5に示すように、ベント用台車40は、ベント1とは別体であって、ベント1を持ち上げて移動(搬送)する装置である。ベント用台車40は、必要に応じて既設のベント1に取り付けられ、作業が終了したら現場で解体される。
【0031】
ベント用台車40は、シャーシ部50と、車輪部60と、昇降部70と、第一不陸吸収部80とを備えている。シャーシ部50は、ベント用台車40の基体となる部位である。シャーシ部50は、図5に示すように、前後方向(移動方向)に対して前後に間をあけて設けられた第一シャーシ体51と、第二シャーシ体52とを備えている。図4に示すように、第一シャーシ体51は、柱13A,13Cに跨って水平方向に延設されており、両側端はベント1から側方に突出している。より詳しくは、第一シャーシ体51の長さ(左右方向の長さ)は、基礎部2の長さ(左右方向の長さ)よりも長くなっている。
【0032】
図5に示すように、第一シャーシ体51は、柱13A,13Cの前側に設置されたシャーシ部材53及び後側に設置されたシャーシ部材53で構成されている。シャーシ部材53の高さ寸法は、数十センチから1m程度になっている。前後に設置されたシャーシ部材53,53で、柱13A,13Cを挟むようにして設置されている。シャーシ部材53,53は、例えば、H型鋼を用いることができる。シャーシ部材53,53は、各柱13に取り付けられた保持部材56(図4参照)で支持されている。第一シャーシ体51と柱13A,13Cとは接合されておらず、第一シャーシ体51及び柱13A,13Cは高さ方向に相対的に移動可能になっている。
【0033】
図5に示すように、第二シャーシ体52は、柱13B,13Dの前側に設置されたシャーシ部材54及び後側に設置されたシャーシ部材54で構成されている。シャーシ部材54の高さ寸法は、数十センチから1m程度になっている。前後に設置されたシャーシ部材54,54で、柱13B,13Dを挟むようにして設置されている。シャーシ部材54,54は、例えば、H型鋼を用いることができる。シャーシ部材54,54は、各柱13に取り付けられた保持部材56(図14参照)で支持されている。第二シャーシ体52と柱13B,13Dとは接合されておらず、第二シャーシ体52及び柱13B,13Dは高さ方向に相対的に移動可能になっている。
【0034】
車輪部60は、シャーシ部50の下に設けられ、タイヤTの回転によって走行可能となる部位である。車輪部60は、第一車輪体61と、第二車輪体62と、第三車輪体63と、第四車輪体64とを備えている。
【0035】
図4に示すように、第一車輪体61及び第三車輪体63は、第一シャーシ体51の両端の下に設置されている。また、図19に示すように、第二車輪体62及び第四車輪体64は、第二シャーシ体52の両端の下に設置されている。より詳しくは、第一車輪体61は柱13Aに対応する位置に設置され、第二車輪体62は柱13Bに対応する位置に設置され、第三車輪体63Cは柱13Cに対応する位置に設置され、第四車輪体64は柱13Dに対応する位置に設置されている。第一車輪体61~第四車輪体64は、構造自体は同一であるため、第一車輪体61を例示して詳細に説明する。
【0036】
図5及び図6に示すように、第一車輪体61は、タイヤ支持部69と、3つのタイヤ部65とで構成されている。タイヤ支持部69は、水平にかつ前後方向に延設されている。タイヤ支持部69は、タイヤ部65を支持可能であればどのような部材で構成してもよいが、本実施形態では2本の鋼材(例えば、H型鋼)で構成している。
【0037】
タイヤ部65は、本実施形態では一のタイヤ支持部69に対して3つ設けられているが、タイヤ部65の個数はベント1の大きさや現場の状況に応じて適宜設定すればよい。また、タイヤ部65の個数に応じてタイヤ支持部69の長さを適宜変更することができる。
【0038】
図6に示すように、タイヤ部65は、一対のタイヤT,Tと、車軸66と、車軸受け部材67と、ピン支持部68とを備えている。車軸66は、両端に設けられたタイヤT,Tを回転可能に支持する部材である。車軸受け部材67は、ピン支持部68を介して車軸66に接続されている。ピン支持部68の軸方向は、前後方向と平行になっている。車軸受け部材67とタイヤ支持部69とは締結手段等を介して締結されている。車軸66は、ピン支持部68を中心に車軸受け部材67に対して回動可能になっている。これにより、ベント用台車40が移動する際に走行面の不陸を吸収することができ、ベント1の左右方向の傾倒を防ぐことができる。なお、請求項の「第二不陸吸収部」は、車軸66と、車軸受け部材67と、ピン支持部68とで構成されてる。第二不陸吸収部は、例えば、サスペンション、ショックアブソーバー等衝撃や傾きを吸収可能な部材を含んで構成することもできる。
【0039】
昇降部70は、図6及び図7に示すように、シャーシ部50に対してベント1を昇降させる部位である。昇降部70は、第一シャーシ体51に3体設置され、第二シャーシ体52にも3体設置されている。昇降部70は、ジャッキ71と、反力受けプレート72と、テンションバー73とを備えている。ジャッキ71は、例えば、油圧ジャッキ等の各種ジャッキを用いることができる。図8に示すように、反力受けプレート72は、基礎部2の隣り合う基礎部材11,11の上フランジの裏面同士を跨いで配置されている。テンションバー73は、ジャッキ71と反力受けプレート72とを連結する金属製の棒状部材である。
【0040】
ジャッキ71は、図7に示すように、第一シャーシ体51のシャーシ部材53,53の上面に跨って架設された上サンドル74,74の上に設置されている。また、図6に示すように、シャーシ部材53,53の下面には下サンドル75が架設されている。テンションバー73は、上サンドル74,74の間及び下サンドル75,75の間に挿通されている。これにより、テンションバー73(ベント1)が左右方向に揺動するのを抑制することができる。なお、図8を参照するように、基礎部材11,11の上面を跨ぐように、一対の補助サンドルを三組設け、当該補助サンドル同士の間にテンションバー73を挿通させてもよい。
【0041】
第一不陸吸収部80は、走行面の不陸を吸収することで、ベント1の傾倒を防ぐことができる部位である。第一不陸吸収部80は、図5及び図6に示すように、第一シャーシ体51の両端、及び、第二シャーシ体52の両端にそれぞれ設置されている。つまり、第一不陸吸収部は、第一車輪体61~第四車輪体64ごとに設置されている。各第一不陸吸収部80は同じ形態であるため、第一車輪体61に設けられる第一不陸吸収部80について説明する。
【0042】
第一不陸吸収部(ボルスタ)80は、走行面の不陸を吸収する部位である。第一不陸吸収部80は、図10及び図11に示すように、下部材81と、上部材82と、ピン支持部83とを備えている。下部材81は、第一車輪体61のタイヤ支持部69の上に締結手段等で締結されている。下部材81は、底板部81aと、底板部81aの左右両側から立ち上がる側板部81b,81bとを備えている。下部材81は、前後方向及び上方に開放する箱状体である。
【0043】
上部材82は、断面T字状を呈し、上板部82aと、垂直板部82bとを備えている。上部材82は、図9に示すように、第一シャーシ体51のシャーシ部材53,53の下面に締結手段等で締結されている。換言すると、上板部82aの前端及び後端でシャーシ部材53,53をそれぞれ支持している。図10に示すように、上部材82は、下部材81の内部に回動自在に収容されている。上板部82aは、水平方向と平行に配置された板状部材である。垂直板部82bは、上板部82aに対して垂直であり、前後方向と平行に配設されている。
【0044】
ピン支持部83の軸部83aは、左右方向と平行に延設されており、側板部81b,81b及び垂直板部82bにそれぞれ設けられた挿通孔を介して挿通されている。これにより、図12に示すように、走行面に不陸があった場合に、下部材81は、ピン支持部83を中心に上部材82に対して回動する。換言すると、第一不陸吸収部80は、シーソーのように回動することで、第一車輪体61の傾きが、ベント1側に伝達しないようになっている。なお、第一不陸吸収部は、例えば、サスペンション、ショックアブソーバー等衝撃や傾きを吸収可能な部材を含んで構成することもできる。
【0045】
<ベント工法>
次に、本実施形態に係るベント工法について説明する。本実施形態に係るベント工法は、ベント組立工程と、ベント搬入工程と、高さ調整工程と、橋桁設置工程と、橋桁連結工程と、ベント搬出工程と、を行う。
【0046】
ベント組立工程は、図13に示すように、ベント1を組み立てる工程である。ここでは、離間して設置され車道S,Sの間に構築された橋脚Z,Zの間に、ベント1の設置予定位置Uを設定する。ベント1の組立は、設置予定位置U及び車道Sとは別の場所となる組立・解体ヤードYで行う。組立・解体ヤードYは、交通制限がかかっておらず、かつ、大型移動式クレーンの高さ制限も受けない平地である。組立・解体ヤードYは、設置予定位置Uに対して真正面かつ直線上の位置にあることが好ましい。なお、組立・解体ヤードYから設置予定位置Uまでの間に適宜敷板を設けて走行路が平坦となるようにすることが好ましい。
【0047】
ベント搬入工程は、組み立てられたベント1にベント用台車40を取り付けた後、ベント1を組立・解体ヤードYから設置予定位置Uまで移動させる工程である。ベント搬入工程では、台車取付工程と、持ち上げ工程と、移動工程と、設置工程と、を行う。なお、本発明の「ベントの移動方法」は、前記した工程のうち、台車取付工程と、持ち上げ工程と、移動工程を少なくとも含むものである。
【0048】
台車取付工程は、シャーシ体設置工程と、第一不陸吸収部設置工程と、車輪体設置工程と、昇降部設置工程と、を行う。これらの工程も組立・解体ヤードYで作業を行う。
シャーシ体設置工程では、まず、図14に示すように、柱13A,13B,13C,13Dの各側面に水平方向と平行に、かつ、前後方向と平行に保持部材56を設置する。各保持部材56は、断面L字状を呈し、同じ高さ位置に設置され各柱13に対して両側側方に張り出している。
【0049】
次に、シャーシ体設置工程では、図15に示すように、対向する保持部材56,56を跨ぐようにシャーシ部材53を設置する。シャーシ部材53は、柱13A,13Cの内側に隣接するように設置する。また、対向する保持部材56,56を跨ぐようにシャーシ部材54を設置する。シャーシ部材54は、柱13B,13Dの内側に隣接するように設置する。
【0050】
次に、シャーシ体設置工程では、図16に示すように、対向する保持部材56,56を跨ぐようにシャーシ部材53を設置する。シャーシ部材53は、柱13A,13Cの外側に隣接するように設置する。また、対向する保持部材56,56を跨ぐようにシャーシ部材54を設置する。シャーシ部材54は、柱13B,13Dの外側に隣接するように設置する。シャーシ部材53,53は、柱13A,13Cを挟んで互いに対向して平行となり、側方に突出している。また、シャーシ部材54,54は、柱13B,13Dを挟んで互いに平行となり、側方に突出している。各シャーシ部材53,54は、隣接する柱13に締結されることなく、保持部材56よりも上において、高さ方向に相対的に移動可能になっている。
【0051】
次に、図17に示すように、締結手段等を介してシャーシ部材53,53の上面を跨ぐように上サンドル74,74を設置する。上サンドル74,74は、第一シャーシ体51の上に3組設置する。また、締結手段等を介してシャーシ部材54,54の上面を跨ぐように上サンドル74,74を設置する。上サンドル74,74は、第二シャーシ体52の上に3組設置する。
【0052】
次に、図18に示すように、締結手段等を介してシャーシ部材54,54の下面を跨ぐように下サンドル75,75を設置する。下サンドル75,75は、第一シャーシ体51の下に上サンドル74,74と対応するように3組設置する。また、締結手段等を介してシャーシ部材54,54の下面を跨ぐように下サンドル75,75を設置する。下サンドル75,75は、第二シャーシ体52の下に上サンドル74,74と対応するように3組設置する。上サンドル74と下サンドル75でシャーシ部材53,53同士を接合することで第一シャーシ体51を一体化することができる。同様に、上サンドル74と下サンドル75でシャーシ部材54,54同士を接合することで第二シャーシ体52を一体化することができる。
【0053】
次に、図19に示すように、第一不陸吸収部80を設置する第一不陸吸収部設置工程及び各車輪体を設置する車輪体設置工程を行う。本工程では、各車輪体(第一車輪体61~第四車輪体64)の上に予め第一不陸吸収部80を設置しておく。その後、第一シャーシ体51の両端の下部及び第二シャーシ体52の両端の下部に、第一不陸吸収部80が設置された各車輪体(第一車輪体61~第四車輪体64)を設置する。例えば、図19に示す第三車輪体63において、第一不陸吸収部80の上部材82の両端に、シャーシ部材53,53を設置する。
【0054】
次に、昇降部設置工程では、図20に示すように、昇降部70を設置する工程である。昇降部設置工程では、6組の上サンドル74,74の上に各ジャッキ71を設置しつつ、テンションバー73を介して反力受けプレート72(図6参照)を基礎部材11に設置する。以上により、ベント1に対するベント用台車40の取り付けが完了する。
【0055】
次に、持ち上げ工程では、図21に示すように、昇降部70を稼働させて組立・解体ヤードYからベント1を数センチ~十センチ程度持ち上げる。
次に、移動工程では、図22に示すように、ベント用台車40を用いてベント1を移動させる。設置予定位置Uを挟んでベント1の反対側の車道Sに牽引装置Kを設置する。また、牽引装置Kとベント用台車40とを複数本のワイヤW,Wで連結する。そして、牽引装置KでワイヤW,Wを介してベント用台車40を引っ張り、設置予定位置Uまで走行させる。
【0056】
次に、設置工程では、図23に示すように、設置予定位置Uにおいて昇降部70を稼働させてベント1を下降させ、設置面Gにベント1を設置する。この際、ベント1に対してベント用台車40は取り付けたままとしておく。
次に、高さ調整工程では、図1及び図2に示すように、頂部4の上に高さ調整部21を設置して橋桁Fに対して高さを調整する。
【0057】
次に、橋桁設置工程では、図1及び図2に示すように、高さ調整部21を介してベント1の上に橋桁Fを仮置きする。
次に、橋桁連結工程では、隣り合う橋桁F,F同士を連結する。橋桁Fが連結されたらベント1は不要になるため、搬出作業に入る。
【0058】
次に、ベント搬出工程では、図23に示すように、準備工程と、持ち上げ工程と、移動工程と、解体工程と、を行う。
準備工程では、高さ調整部21を撤去するとともに、車道Sを挟んで設置予定位置Uとは反対側の位置(ここでは組立・解体ヤードY)に牽引装置Kを設置する。持ち上げ工程及び移動工程は、搬入工程と概ね同じである。ベント1が組立・解体ヤードYに到達したら、ベント1を組立・解体ヤードYに設置する。
【0059】
最後に、解体工程では、図23に示すように、組立・解体ヤードYにおいてベント用台車40及びベント1を解体する。解体工程では、必要に応じて大型移動式クレーンを用いてもよい。以上により本実施形態のベント工法が終了する。
【0060】
<従来の課題>
従来、ベント工法を行う際、大型移動式クレーンが車道Sを走行しながらベント1の組立、解体を行っていた。したがって、ベント1を組み立てている時間及び解体している時間も車道Sの交通を規制しなければならない。また、大型移動式クレーンが高さ制限によって制限を受ける場合、交通規制を長くしたり、橋梁の設計変更をしたりして対応せざるをえなかった。また、大規模交差点や高速道路上の橋梁架設を行う場合など、条件が厳しい現場ではこれらの課題は顕著になっていた。
【0061】
また、多軸式自走台車とベントが一体化された自走式ベントを用いる場合、多軸式自走台車の準備、運行が困難になり、工期が長期化するおそれがあった。また、多軸式自走台車とベントが一体化された状態での強度が求められるため、構造計算が複雑になるという問題があった。
【0062】
<効果>
これに対し、本実施形態に係るベントの移動方法によれば、ベント1とは別体のベント用台車40をベント1が組み立てられた後に取り付け、ベント1を上昇させた状態で移動させる。これにより、ベント1を容易に移動させることができる。また、ベント1とベント用台車40とは別体であるため、準備も移動も容易であるとともに、橋梁やベント1の構造計算等は従来と同じように対応することができる。
【0063】
また、本実施形態に係るベントの移動方法によれば、ベント用台車40は、シャーシ体(第一シャーシ体51及び第二シャーシ体52)と、車輪体(第一車輪体61~第四車輪体64)と、昇降部70と、第一不陸吸収部80とを備えているため、ベント用台車40を容易に形成することができる。また、ベント1が昇降する際に、第一シャーシ体51のシャーシ部材53,53及び第二シャーシ体52のシャーシ部材54,54が各柱13を挟んでガイドする。これにより、ベント1の昇降作業を安定して行うことができる。また、第一不陸吸収部80を備えているため、走行面の不陸に起因するベント1の傾倒(進行方向に対する前後の傾倒)を防ぐことができる。
【0064】
また、図6に示すように、タイヤ部65は、車軸66がピン支持部68を中心に車軸受け部材67に対して回動するため、走行面の不陸に起因するベント1の傾倒(進行方向に対する左右の傾倒)をより防ぐことができる。換言すると、車軸66、車軸受け部材67及びピン支持部68で構成された第二不陸吸収部を備えることで、進行方向に対する左右の傾倒を防ぐことができる。つまり、本実施形態では、第一不陸吸収部80及び第二不陸吸収部を備えているため、走行面の不陸に起因するベント1の傾倒を相乗的に防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態に係るベントの移動方法によれば、昇降部70は、シャーシ体(第一シャーシ体51及び第二シャーシ体52)に設置されるジャッキ71と、ベント1の基礎部2に設けられる反力受けプレート72と、ジャッキ71と反力受けプレート72とを連結するテンションバー73と、を備えているため、昇降部70を容易に形成することができる。また、昇降部70を各シャーシ体に3個ずつ設けているため、ベント1の昇降作業を安定して行うことができる。
【0066】
また、本実施形態に係るベントの移動方法によれば、車輪体(第一車輪体61~第四車輪体64)は、複数のタイヤTと、移動方向に対して平行に各タイヤTを支持するタイヤ支持部69と、を備えているため、車輪体を容易に形成することができる。また、タイヤ支持部69の長さを変更することにより、タイヤTの本数を適宜増減することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るベントの移動方法によれば、第一不陸吸収部80は、下部材81と、シャーシ体(第一シャーシ体51及び第二シャーシ体52)の下部に設けられる上部材82と、下部材81と上部材82とを回動自在に支持し、軸方向が移動方向に対して直交する移動直交方向と平行となるピン支持部83と、を備えている。これにより、第一不陸吸収部80を容易に構成することができる。
【0068】
また、本実施形態のベント工法によれば、ベント1の設置予定位置U以外の場所であり、交通規制がかからず、かつ、大型移動式クレーンの高さ制限のない組立・解体ヤードYでベント1を組み立てる。その後、設置予定位置Uに立設された状態のベント1を搬入する。これにより、ベント1を組み立てている間は交通規制を設けなくてよいため、交規規制を短くすることができる。また、組立・解体ヤードYで大型移動式クレーンも用いることができるため、ベントに起因して橋梁の設計が制限されるのを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施形態のベント工法によれば、立設された状態のベント1を搬出した後、ベント1の設置予定位置U以外の場所であり、交通規制がかからず、かつ、大型移動式クレーンの高さ制限のない組立・解体ヤードYでベント1を解体する。これにより、ベント1を解体している間は交通規制を設けなくてよいため、交規規制を短くすることができる。
【0070】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。図24に示すように、第二実施形態では、ベント用台車40Aの形態が第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一不陸吸収部80が省略されるとともに、車輪体90,90が走行方向に対して左右一対である点で第一実施形態と相違する。
【0071】
車輪体90は、タイヤ支持部69Aと、複数のタイヤ部65とで構成されている。タイヤ部65は、本実施形態では6個設けられているが、個数を制限するものではない。タイヤ支持部69Aの上面には、第一シャーシ体51及び第二シャーシ体52の下面が締結手段等を介して設置されている。
【0072】
第二実施形態のように、第一不陸吸収部80を省略して第一シャーシ体51及び第二シャーシ体52の下面に直接車輪体90(タイヤ支持部69)を設けてもよい。これにより、ベント用台車40Aの構造を簡素化することができる。第二実施形態は、例えば、ベント1の高さが低い場合に適用することができる。
【0073】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更することができる。例えば、本実施形態では、組立ヤードと解体ヤードは同じ場所(組立・解体ヤードY)としたが、別の場所としてもよい。また、例えば、ベントの前後方向(橋軸直角方向)に柱が6本ある場合、シャーシ体は3組、車輪体及び第一不陸吸収部は6個ずつ設けてもよい。つまり、シャーシ体、車輪体及び第一不陸吸収部は、ベントの構造や大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0074】
また、搬入工程及び搬出工程では、牽引装置Kを用いたが、例えば、装置等を用いてベント1を後方から押して移動させてもよい。また、ベント用台車40に回転駆動源を設け、自走させてもよい。また、本実施形態では、ベント1を橋軸直角方向に移動させたが、橋軸方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ベント
2 基礎部
3 柱部
4 頂部
13 柱
40 ベント用台車(台車)
50 シャーシ部
51 第一シャーシ体(シャーシ体)
52 第二シャーシ体(シャーシ体)
53 シャーシ部材
54 シャーシ部材
60 車輪部
61 第一車輪体
62 第二車輪体
63 第三車輪体
64 第四車輪体
65 タイヤ部
69 タイヤ支持部
70 昇降部
71 ジャッキ
72 反力受けプレート
73 テンションバー
80 第一不陸吸収部
81 下部材
82 上部材
83 ピン支持部
F 橋桁
G 設置面
T タイヤ
Y 組立・解体ヤード(組立ヤード、解体ヤード)
Z 橋脚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24