(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106561
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】作業用車両の周囲監視装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240801BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B66F9/24 H
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010877
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】北條 努
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(72)【発明者】
【氏名】町田 朝
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮
(72)【発明者】
【氏名】矢野 政孝
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB02
3F333DB01
3F333FA11
3F333FD14
3F333FE04
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】作業用車両の機種に関わらず、カメラの取り付け位置を共通化できる作業用車両の周囲監視装置を提供する。
【解決手段】周囲監視装置は、前部に運転キャビン7を有して走行可能な車体2と、車体2における前記運転キャビン7の後方に設けられた架装物とを備える高所作業車1において、車体2の周囲の画像情報を取得する複数のカメラと、複数のカメラにより取得された車体2の周囲の画像情報を用いて、車体2の周囲の俯瞰画像を生成する画像処理部と、画像処理部により生成された俯瞰画像を表示する表示部とを備え、複数のカメラのうち車体2の周囲の左右側方の画像情報を取得するサイドカメラ73は、運転キャビン7の上部側に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に運転キャビンを有して走行可能な車体と、前記車体における前記運転キャビンの後方に設けられた架装物とを備える作業用車両において、
前記車体に設けられて前記車体の周囲の画像情報を取得する複数のカメラと、
前記複数のカメラにより取得された前記車体の周囲の画像情報を用いて、前記車体の周囲の俯瞰画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部により生成された俯瞰画像を表示する表示部とを備え、
前記複数のカメラのうち前記車体の周囲の左右側方の画像情報を取得するサイドカメラは、前記運転キャビンの上部側に配置されていることを特徴とする作業用車両の周囲監視装置。
【請求項2】
前記サイドカメラは、前記運転キャビンの上面の後端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の周囲監視装置。
【請求項3】
前記サイドカメラは、前記運転キャビンの後面の上端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の周囲監視装置。
【請求項4】
前記サイドカメラは、前記車体の周囲の左側方の画像情報を取得する左サイドカメラと、前記車体の周囲の右側方の画像情報を取得する右サイドカメラとを有していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業用車両の周囲監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の周囲を監視するための作業用車両の周囲監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両には、例えば、高所作業車、橋梁点検車、穴掘建柱車、軌陸作業車などの種々の作業用車両がある。このような作業用車両は、一般的には、前部に運転キャビンを有して道路走行可能なトラック車体をベースとして、トラック車体の後部の架装領域に作業装置や作業具などの架装物を備えて構成されている。例えば、高所作業車は、トラック車体上に旋回、起伏、伸縮作動自在に設けられたブームと、このブームの先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に搭乗した作業者が作業台上に設けられた操作装置を操作してブームを作動させることにより、作業台を任意の高所位置へ移動自在に構成されている。
【0003】
ところで近年では、このような作業用車両において、自車両の周囲を監視(確認)するための周囲監視装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この周囲監視装置は、例えば、作業用車両の前後左右の各所に設けられたカメラにより撮影された4つの画像(前方画像、左側方画像、右側方画像、後方画像)を視点変換および合成して、自車両の周囲を上方から見下ろした俯瞰画像(周囲画像)を生成し、この俯瞰画像をモニタに表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の技術では、高所作業車の前後左右に設けられたカメラのうち、左右の側方を撮影するためのカメラ(「サイドカメラ」という)がトラック車体上に架装された工具箱(架装物)の上部に取り付けられている。このように従来の技術では、左右のサイドカメラを工具箱やブームなどの架装物上に取り付けることが一般的であったが、この架装物の形態は作業用車両の機種に応じて大きく変わるため、それに応じてサイドカメラの取り付け位置がまちまちとなると、作業用車両の機種毎に、サイドカメラの取り付け部品や取り付け方法などの変更が必要となり、製造コストが増大するとともに、合成した俯瞰画図にも統一感が無くなる可能性があるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業用車両の機種に関わらず、カメラの取り付け位置を共通化できる作業用車両の周囲監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業用車両の周囲監視装置は、前部に運転キャビンを有して走行可能な車体と、前記車体における前記運転キャビンの後方に設けられた架装物とを備える作業用車両において、前記車体に設けられて前記車体の周囲の画像情報を取得する複数のカメラと、前記複数のカメラにより取得された前記車体の周囲の画像情報を用いて、前記車体の周囲の俯瞰画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部により生成された俯瞰画像を表示する表示部とを備え、前記複数のカメラのうち前記車体の周囲の左右側方の画像情報を取得するサイドカメラは、前記運転キャビンの上部側に配置され
ていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る作業用車両の周囲監視装置において、前記サイドカメラは、前記運転キャビンの上面の後端側に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る作業用車両の周囲監視装置において、前記サイドカメラは、前記運転キャビンの後面の上端側に配置されていてもよい。
【0010】
さらに、本発明に係る作業用車両の周囲監視装置において、前記サイドカメラは、前記車体の周囲の左側方の画像情報を取得する左サイドカメラと、前記車体の周囲の右側方の画像情報を取得する右サイドカメラとを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイドカメラを運転キャビンの上部側に配置することで、各カメラの取り付け位置を作業車の機種によらず統一化することができるため、カメラの取り付け部品や取り付け方法などを機種ごとに変更する必要がなくなり、作業の効率化および製造コストの低減を図ることが可能となる。また、本発明では、各カメラの取り付け位置を機種ごとに大きく変更しなくて済むことで、異なる機種の作業用車両であっても合成された俯瞰画像に差異が生じ難くなるため(機種に依存しない統一感のある俯瞰画像を生成することができるため)、使用者が違和感なく当該俯瞰画像を受け入れることができるようになり、周囲にある物体との距離や位置関係などを正確に把握することが可能となる。さらに、本発明では、サイドカメラが架装物(作業装置)側に配置されていないため、サイドカメラが作業時の振動や汚損を受け難くなり、システム全体を長期に亘り安定して運用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本実施形態の高所作業車の制御系を示すブロック図である。
【
図8】サイドカメラの配置の変更例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る周囲監視システム(周囲監視装置)を備えた作業用車両として前方格納式の高所作業車1を
図1および
図2に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0014】
高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、運転キャビン7等を支持する車台としてのシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されており、この車体フレーム上における運転キャビン7の後方に架装領域が形成されている。
【0015】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジ
ャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0016】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24の回転駆動により上下軸回りに旋回作動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための複数の工具箱26が設けられている。
【0017】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏作動させることができる。
【0018】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(
図3を参照)が設けられており、この首振りモータ34を回転駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り作動させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0019】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転駆動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮駆動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮駆動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転駆動)などの各作動操作を行うことができる。
【0020】
また、運転キャビン7の上部には、
図2に示すように、車体2に対してブーム30および作業台40が格納状態であるときに、この格納状態の作業台40に作業者が乗降する際に利用するルーフステップ9が取り付けられている。ルーフステップ9は、作業台40に乗降する際に作業者の足場(踏み面)となるステップ部9aと、このステップ部9aを支持して運転キャビン7の上部に不図示のネジ又は金具を用いて固定されるフレーム部9bとを備えている。
【0021】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、
図3に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ90と、この油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50とを備えて構成される。
【0022】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ90に入力される。コントローラ90の作動制御部91は、上部操作装置45もしくは下部操作装置27からの操作信号を受信すると、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0023】
油圧ユニット50は、作動油を貯留する油圧タンク51と、車体2に搭載されたエンジンEの動力を用いて駆動されることで作動油を吐出する油圧ポンプ52と、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。また、エンジンEの動力を変速してタイヤ車輪5に伝達するトランスミッションには、パワーテイクオフ機構PTOが組み込まれている。ここで、運転キャビン7内に配設されたPTO操作レバー55がOFF位置からON位置に操作されると、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEによる駆動先がタイヤ車輪5から油圧ポンプ52に切り換えられ、エンジンEの動力により油圧ポンプ52が駆動されるようになっている。一方、PTO操作レバー55がON位置からOFF位置に操作されると、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEによる駆動先が油圧ポンプ52からタイヤ車輪5に切り換えられ、エンジンEの動力によりタイヤ車輪5が回転駆動されるようになっている。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ90の作動制御部91からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの駆動方向及び駆動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0024】
次に、本実施形態の高所作業車1に備えられた周囲監視システムについて説明する。この周囲監視システムは、例えば、高所作業車1の停車時などにおいて、高所作業車1(自車両)の周囲の状況を画像(映像)により確認するためのシステムである。
【0025】
周囲監視システムは、
図3に示すように、自車両の周囲を撮像する撮像装置70と、画像(映像)を表示するモニタ80と、本システムを統括的に制御するコントローラ90とを主体に構成される。
【0026】
撮像装置70は、フロントカメラ71と、バックカメラ72と、左サイドカメラ73と、右サイドカメラ74とを有している。各カメラ71~74は、車体2の前後左右において支持ブラケット(図示せず)を介してそれぞれ取り付けられている。また、各カメラ71~74は、いずれも魚眼レンズや広角レンズなどの広い画角(例えば180度以上の画角)を有するレンズを備えている。
【0027】
フロントカメラ71は、
図1に示すように、車体2の前部におけるフロントグリル18内に配置されており、レンズの光軸が地面に対して斜め下方を向くように設置されている。このフロントカメラ71は、車両の周囲のうちの主に車両前方を撮像範囲(視野範囲)とし、この車両前方を動画または静止画で撮像した撮像画像(前方画像)を取得する。なお、フロントカメラ71は、車体2の前部であれば他の位置に配置してもよく、例えば、車体2の前部におけるフロントバンパーに配置してもよい。
【0028】
バックカメラ72は、
図1および
図2に示すように、車体2の後部におけるテールランプ19の上方位置に配置されており、レンズの光軸が地面に対して斜め下方を向くように設置されている。このバックカメラ72は、車両の周囲のうちの主に車両後方を撮像範囲
(視野範囲)とし、この車両後方を動画または静止画で撮像した撮像画像(後方画像)を取得する。なお、バックカメラ72は、車体2の後部であれば他の位置に配置してもよく、例えば、車体2の後部における下部操作装置27の近傍に配置してもよい。
【0029】
左サイドカメラ73は、
図1および
図2に示すように、運転キャビン7の上部側(運転キャビン7の上面の後端側の左側)に配置されており、レンズの光軸が地面に対して斜め下方を向くように設置されている。この左サイドカメラ73は、車両の周囲のうちの主に車両左側方を撮像範囲(視野範囲)とし、この車両左側方を動画または静止画で撮像した撮像画像(左側方画像)を取得する。
【0030】
右サイドカメラ74は、
図2に示すように、運転キャビン7の上部側(運転キャビン7の上面の後端側の右側)に配置されており、レンズの光軸が地面に対して斜め下方を向くように設置されている。この右サイドカメラ74は、車両の周囲のうちの主に車両右側方を撮像範囲(視野範囲)とし、この車両右側方を動画または静止画で撮像した撮像画像(右側方画像)を取得する。
【0031】
各カメラ71~74は、撮像した撮像画像(前方画像、後方画像、左側方画像、右側方画像)をコントローラ90に出力する。各カメラ71~74は、電気ケーブル等の有線接続により撮像画像をコントローラ90に出力してもよいし、無線通信により撮像画像をコントローラ90に出力してもよい。
【0032】
コントローラ90は、
図3に示すように、画像記憶部92と、画像処理部93とを有している。
【0033】
画像記憶部92は、高所作業車1を模式的に示す自車両画像PG(
図4を参照)を記憶している。この自車両画像PGは、モニタ80に後述の全体俯瞰画像PHを表示する場合に、この全体俯瞰画像PHの略中央に配置される画像である。
【0034】
画像処理部93は、
図4に示すように、各カメラ71~74で撮像された4つの撮像画像に所定の画像処理(例えば視点変換処理)を施して部分俯瞰画像PH1~PH4(前方俯瞰画像PH1、後方俯瞰画像PH2、左側方俯瞰画像PH3、右側方俯瞰画像PH4)を生成し、これらの部分俯瞰画像PH1~PH4を画像記憶部92に記憶された自車両画像PGと合成することで、擬似的に高所作業車1およびその周囲(高所作業車1の全周囲)を真上から俯瞰した状態を示す全体俯瞰画像PHを生成する。画像処理部93は、生成した全体俯瞰画像PHおよび部分俯瞰画像PH1~PH4をモニタ80に出力する。
【0035】
モニタ80は、運転キャビン7の内部に設けられており、例えばタッチパネル機能を有する液晶表示パネルなどから構成されている。モニタ80は、画像処理部93において生成された全体俯瞰画像PHを表示する。また、モニタ80は、画面上の切り替えスイッチ(図示せず)を操作することにより、全体俯瞰画像PHに替えて、指定した方位の部分俯瞰画像PH1~PH4のみを表示することもできる。それにより、作業者は、モニタ80に表示される全体俯瞰画像PH等を確認することにより、自車両の周囲にある物体(例えば、電柱、ガードレール、建物、樹木など)の存在を確認して、高所作業を開始するにあたり、車両の側方にジャッキ装置10を張り出すことができるか否かを判断したり、ブーム30を作動させて作業台40を作業対象物にアプローチ可能であるか否かを判断したりすることができる。
【0036】
なお、全体俯瞰画像PHには、所定の付加画像が付加されていてもよい。付加画像としては、許容作業範囲(車体2を転倒させることなくブーム30の先端部又は作業台40を移動させることのできる範囲)を示す画像や、ジャッキ装置10の張出範囲を示す画像、
周囲に存在する物体を強調する画像などがある。この付加画像は、全体俯瞰画像PHと重畳表示される。
【0037】
かかる構成の周囲監視システムにおいては、前述したように、フロントカメラ71およびバックカメラ72を車体2の前部および後部にそれぞれ配置するとともに、左サイドカメラ73および右サイドカメラ74を架装物上(架装領域)ではなく運転キャビン7の上部側(後端側上部)に配置することで、各カメラ71~74の取り付け位置を架装物の種類や形態、配置などの影響を受けることなく作業車(トラックマウント式作業車)の機種全般において統一化することができる。特に、シャシメーカの製造したトラック車両をベースとして、作業装置等の架装物を搭載して作業車を製造する架装メーカにとっては、作業車の機種が多いほど、サイドカメラ73,74の取り付け位置が機種ごとに大きく変わってしまう可能性があるが、サイドカメラ73,74の取り付け位置を機種全般において統一化することができれば、サイドカメラ73,74の取り付け部品や取り付け方法の共通化により製造コストを低減することができるとともに、合成後の俯瞰画像を機種の違いによらず統一感のとれた画像として生成することができるという利点がある。なお、「運転キャビン7の上部側」とは、運転キャビン7の上面(車室の上方を区画するルーフパネル)の近傍に位置する部分であり、例えば、運転キャビン7の上面(ルーフパネル)の上方側、運転キャビン7の左右の側面(車室の左右の側方を区画するサイドパネル)の上端側、運転キャビン7の後面(車室の後方を区画するバックパネル)の上端側を含む意味で用いている。
【0038】
続いて、本実施形態の意義を明確にするために、
図5~
図7を参照しつつ、本実施形態のサイドカメラ73,74の取り付け位置を、他の機種の作業車に適用した場合の適用例について説明する。ここで、
図5は後方格納型の高所作業車101の側面図であり、
図6は橋梁点検車201の側面図であり、
図7は穴掘建柱車301の側面図である。なお、各作業車101,201,301には、本実施形態の周囲監視システムと同様のシステムが備えられているものとする。
【0039】
(後方格納型の高所作業車の適用例)
高所作業車101は、
図5に示すように、車体102上に旋回作動自在に設けられた旋回台120と、旋回台120に起伏作動および伸縮作動自在に設けられたブーム130と、ブーム130の先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台140と、車体102上に設けられた工具箱126とを備えて構成されている。なお、前述の高所作業車1は、旋回台20が車体2上の後部に設けられて作業台40が運転キャビン7の上方空間に格納される前方格納型の高所作業車であったが、この高所作業車101は、旋回台120が車体102上の運転キャビン107の直後に設けられて作業台140が車体102上の後部空間に格納される後方格納型の高所作業車である。このような構成の高所作業車101では、旋回台120、ブーム130、作業台140、工具箱126などの架装物が作業装置として車体102上の架装領域に搭載されている。ここで、この高所作業車101においては、上記実施形態の高所作業車1と同様に、フロントカメラ71が車体102の前部に配置され、バックカメラ72が車体102の後部に配置され、左右のサイドカメラ73,74(
図5では左サイドカメラ73のみが図示されている)が運転キャビン107の上部側(後端側上部)に配置されている。すなわち、この後方格納型の高所作業車101においては、本実施形態の高所作業車1(前方格納型の高所作業車1)と比較して、架装物の配置や形態などが異なっているが、左右のサイドカメラ73,74を架装物の上部ではなく運転キャビン107の上部側(後端側上部)に配置することで、各カメラ71~74の取り付け位置を架装物の配置や形態などの影響を受けることなく本実施形態の高所作業車1と共通化することができる。
【0040】
(橋梁点検車の適用例)
橋梁点検車201は、
図6に示すように、車体202上に旋回作動自在に設けられた旋回台220と、旋回台220に起伏作動および伸縮作動自在に設けられたブーム230と、ブーム230の先端部に上下に揺動作動自在に設けられた屈伸ポスト231と、屈伸ポスト231の先端部に軸方向に伸縮作動自在に設けられた伸縮ポスト232と、伸縮ポスト232の先端部に設けられた作業台240とを備えて構成されている。作業台240は、作業者が床部241を歩いて対象物に近付くことのできる歩廊式プラットフォームとして構成されている。このような構成の橋梁点検車201では、旋回台220、ブーム230、屈伸ポスト231、伸縮ポスト232、作業台240などの架装物が作業装置として車体202上の架装領域に搭載されている。ここで、この橋梁点検車201においては、上記実施形態の高所作業車1と同様に、フロントカメラ71が車体202の前部に配置され、バックカメラ72が車体202の後部に配置され、左右のサイドカメラ73,74(
図6では左サイドカメラ73のみが図示されている)が運転キャビン207の上部側(後端側上部)に配置されている。すなわち、この橋梁点検車201においては、本実施形態の高所作業車1と比較して、架装物の種類や配置、形態などが異なっているが、左右のサイドカメラ73,74を架装物の上部ではなく運転キャビン207の上部側(後端側上部)に配置することで、各カメラ71~74の取り付け位置を架装物の種類や配置、形態などの影響を受けることなく本実施形態の高所作業車1と共通化することができる。
【0041】
(穴掘建柱車の適用例)
穴掘建柱車301は、
図7に示すように、車体302上に旋回作動自在に設けられた旋回台320と、旋回台320に起伏作動および伸縮作動自在に設けられたブーム330(基端ブーム330a、中間ブーム330b、先端ブーム330c)と、ブーム330に支持されて地面を掘削可能なオーガスクリュー340とを備えて構成されている。ブーム330には、基端ブーム330aと先端ブーム330cに選択的に連結可能なオーガサポート341が取り付けられている。また、基端ブーム330cの側面には、オーガスクリュー340を格納状態で保持するオーガ格納部342が配設されている。オーガスクリュー340は、オーガモータ343を駆動させることにより軸回りに回転される。ここで、オーガスクリュー340を使用する場合は、オーガサポート341を先端ブーム330cに連結させて、オーガスクリュー340をオーガ格納部342から外すことで、オーガスクリュー340を地面に対して略垂直状態(自重で垂下された状態)にする。一方、このオーガスクリュー340を使用しない場合は、ブーム330を全縮にした状態でオーガサポート341を基端ブーム330aに連結させて、オーガスクリュー340をオーガ格納部342に連結させることより、オーガスクリュー340を基端ブーム330aの側方に沿って格納した状態とする。このような構成の穴掘建柱車301では、旋回台320、ブーム330、オーガスクリュー340などの架装物が作業装置として車体302上の架装領域に搭載されている。ここで、この穴掘建柱車301においては、上記実施形態の高所作業車1と同様に、フロントカメラ71が車体302の前部に配置され、バックカメラ72が車体302の後部に配置され、左右のサイドカメラ73,74(
図7では左サイドカメラ73のみが図示されている)が運転キャビン307の上部側(後端側上部)に配置されている。すなわち、この穴掘建柱車301においては、本実施形態の高所作業車1と比較して、架装物の種類や配置、形態などが異なっているが、左右のサイドカメラ73,74を架装物の上部ではなく運転キャビン307の上部側(後端側上部)に配置することで、各カメラ71~74の取り付け位置を架装物の種類や配置、形態などの影響を受けることなく本実施形態の高所作業車1と共通化することができる。
【0042】
以上のとおり、本実施形態の周囲監視システムによれば、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7(107,207,307)の上部側(後端側上部)に配置することで、各カメラ71~74の取り付け位置を作業車の機種によらず統一化することができるため、カメラ71~74の取り付け部品や取り付け方法などを機種ごとに変更する必要がなくなり、作業の効率化および製造コストの低減を図ることが可能となる。また、本実施
形態の周囲監視システムでは、各カメラ71~74の取り付け位置を機種ごとに大きく変更しなくて済むことで、異なる機種の作業車であっても合成された俯瞰画像に差異が生じ難くなるため(機種に依存しない統一感のある俯瞰画像を生成することができるため)、使用者が違和感なく当該俯瞰画像を受け入れることができるようになり、周囲にある物体との距離や位置関係などを正確に把握することが可能となる。さらに、本実施形態の周囲監視システムでは、サイドカメラ73,74が架装物(作業装置)側に配置されていないため、サイドカメラ73,74が作業時の振動や汚損を受け難くなり、システム全体を長期に亘り安定して運用することが可能となる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0044】
上記実施形態では、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7の後端側上部(運転キャビン7の上面の後端側)に支持ブラケットを介して直接取り付けているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、運転キャビン7の上部にルーフステップ9またはルーフキャリアなどが設けられている場合には、左右のサイドカメラ73,74をルーフステップ9またはルーフキャリアの上面又は側面に支持ブラケットを介して取り付けることで、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7の後端側上部(運転キャビン7の上面の後端側)に配置してもよい。この構成によれば、ルーフステップ9またはルーフキャリアが運転キャビン7の左右(車幅方向)に跨って十分な強度で取り付けられているため、支持ブラケットを簡易な構造としても、サイドカメラ73,74を運転キャビン7の後端側上部(運転キャビン7の上面の後端側)に安定して配置することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7の上部側に配置する例として、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7の上面(ルーフパネル)の後端側に配置した場合を説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7の上面(ルーフパネル)の中央部から後端部までの間の位置に配置してもよい。また、
図8に示すように、左右のサイドカメラ73,74を運転キャビン7の後面(バックパネル)の上端側に配置してもよい(
図8では左サイドカメラ73のみが図示されている)。
【0046】
また、上記実施形態では、トラックマウント式の作業用車両として、前方格納型の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、後方格納型の高所作業車、橋梁点検車、穴掘建柱車、軌陸作業車、コンクリートポンプ車などの他の作業用車両を適用してもよい。また、上記実施形態では、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 高所作業車(作業用車両)
2 車体
5 タイヤ車輪
7 運転キャビン
20 旋回台(架装物)
26 工具箱(架装物)
30 ブーム(架装物)
40 作業台(架装物)
70 撮像装置
71 フロントカメラ
72 バックカメラ
73 左サイドカメラ
74 右サイドカメラ
80 モニタ(表示部)