(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106563
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】発電用風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010890
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】樋上 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小池 洋光
(72)【発明者】
【氏名】石川 博光
(72)【発明者】
【氏名】朴 玉丹
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】小野 猛
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB35
3H178CC12
(57)【要約】
【課題】風車自体の大型化に対応すべく倒れ込みモーメントを最小限に抑制して、より高強度と高い安定性が得られる発電用風車を提供する。
【解決手段】地表に対して垂直な回転軸2に固定される複数の回転翼10と、上記回転軸の下方に位置する軸受部3と、風車を支持する支持脚5とを具備する。上記回転翼は、地表に対して垂直な主翼12と、一端が上記主翼に鋭角に連結されると共に、他端が上記回転軸に翼取付部材100を介して連結される斜翼12とからなる側面視略三角形に形成される。上記支持脚は、上記軸受部のハウジング3dに固定される少なくとも三本以上の上記支持脚を有すると共に、各支持脚の一端が上記ハウジングの側面に支持脚取付部材200を介して連結される。下方に延びる上記斜翼と上記回転軸とがなす角度αが、上記支持部材と上記回転軸とがなす角度βより大きく形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表に対して垂直な回転軸を有する発電用風車であって、
上記回転軸に固定される複数の回転翼と、上記回転軸の下方に位置する軸受部と、風車を支持する支持脚とを具備し、
上記回転翼は、地表に対して垂直な主翼と、一端が上記主翼に鋭角に連結されると共に、他端が上記回転軸に翼取付部材を介して連結される斜翼とからなる側面視略三角形をなし、
上記軸受部は、上記回転軸を回転自在に支承するベアリングを上記回転軸の軸方向に沿って保持する円筒状のハウジングを有し、
上記支持脚は、上記ハウジングに固定される少なくとも三本以上の支持脚を有すると共に、各支持脚の一端が上記ハウジングの側面に支持脚取付部材を介して連結されており、
下方に延びる上記斜翼と上記回転軸とがなす角度が、上記支持脚と上記回転軸とがなす角度より大きく形成されている、
ことを特徴とする発電用風車。
【請求項2】
請求項1に記載の発電用風車であって、
上記翼取付部材と上記支持脚取付部材は、互いに近接した位置に取り付けられると共に、上記回転軸の軸方向に沿って取り付けられている、ことを特徴とする発電用風車。
【請求項3】
請求項1に記載の発電用風車であって、
上記回転軸と上記翼取付部材は、上記回転軸と上記翼取付部材のいずれか一方に設けられた上記回転軸の軸方向に沿う少なくとも3以上の凸条と、他方に設けられた凹条とが互いに嵌合されて連結され、
上記ハウジングと上記支持脚取付部材は、上記ハウジングと上記支持脚取付部材のいずれか一方に設けられた上記回転軸の軸方向に沿う少なくとも3以上の凸条と、他方に設けられた凹条とが互いに嵌合されて連結されている、
ことを特徴とする発電用風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地表に対して垂直な回転軸を有する発電用風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、風を受ける方向に対して垂直軸周りに回転する回転軸と、上記回転軸に軸受部を介して連結される発電部と、上記回転軸に連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼(以下、回転翼という)とを具備する垂直軸風車が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載の垂直軸風車は、その性能が風向に依存しない特性があり、かつ騒音や振動を抑制可能なため、低コスト化に向いているとされている。また、最近では、再生可能エネルギーの導入促進において発電コストに優れる発電用風車が期待されている。
【0004】
反面、発電用風車として発電コストを安くするために風車自体の大型化が考えられることから、風車の構造において、より高強度と高い安定性が求められている。
【0005】
特許文献1に記載の垂直軸風車においては、固定ポストを中心に回転可能な回転タワー(回転軸)は、翼形ブレード(回転翼)に連結される複数のアームを含み、回転タワー(回転軸)のほぼ中心に位置する荷重ベアリング(軸受)で支持されている。固定ポストはトラス構造の支持脚で支持される構造が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の垂直軸風車においては、支持筐体内に配置される発電機に連結される回転部(回転軸)を軸受にて軸支し、複数の回転翼の各々に連結された上部アーム部及び下部アーム部の固定部側の端部を回転部(回転軸)に固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11-502584号公報
【特許文献2】特開2020-16169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の垂直軸風車においては、回転軸と回転翼とは回転軸の軸方向に間隔をおいた複数のアームによって連結されているため、回転軸に倒れ込みのモーメントが加わり、風車の大型化を図る上で安定性に懸念がある。
【0009】
特許文献2に記載の垂直軸風車においては、回転翼を支持筐体にて支持するため、支持筐体に倒れ込みのモーメントが加わり、風車の大型化を図る上で安定性に懸念がある。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、風車自体の大型化に対応すべく倒れ込みモーメントを最小限に抑制して、より高強度と高い安定性が得られる発電用風車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、この発明は、地表に対して垂直な回転軸を有する発電用風車であって、上記回転軸に固定される複数の回転翼と、上記回転軸の下方に位置する軸受部と、風車を支持する支持脚とを具備し、上記回転翼は、地表に対して垂直な主翼と、一端が上記主翼に鋭角に連結されると共に、他端が上記回転軸に翼取付部材を介して連結される斜翼とからなる側面視略三角形をなし、上記軸受部は、上記回転軸を回転自在に支承するベアリングを上記回転軸の軸方向に沿って保持する円筒状のハウジングを有し、上記支持脚は、上記ハウジングに固定される少なくとも三本以上の支持脚を有すると共に、各支持脚の一端が上記ハウジングの側面に支持脚取付部材を介して連結されており、 下方に延びる上記斜翼と上記回転軸とがなす角度が、上記支持脚と上記回転軸とがなす角度より大きく形成されている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0012】
このように構成することにより、回転軸が短く済むため、回転軸に加わる倒れ込みのモーメントを最小限に抑制することができると共に、回転翼と支持脚との干渉を防ぐことができ、回転軸直下にスペースを開けた状態で支持脚を風車に連結することができる。
【0013】
この発明において、上記翼取付部材と上記支持脚取付部材は、互いに近接した位置に取り付けられると共に、上記回転軸の軸方向に沿って取り付けられているのが好ましい(請求項2)。
【0014】
このように構成することにより、回転軸及び支持脚に加わる倒れ込みのモーメントに対して倒れ難くすることができる。
【0015】
また、この発明において、上記回転軸と上記翼取付部材は、上記回転軸と上記翼取付部材のいずれか一方に設けられた上記回転軸の軸方向に沿う少なくとも3以上の凸条と、他方に設けられた凹条とが互いに嵌合されて連結され、上記ハウジングと上記支持脚取付部材は、上記ハウジングと上記支持脚取付部材のいずれか一方に設けられた上記回転軸の軸方向に沿う少なくとも3以上の凸条と、他方に設けられた凹条とが互いに嵌合されて連結されているのが好ましい(請求項3)。
【0016】
このように構成することにより、回転軸と翼取付部材とを容易に、かつ強固に連結することができると共に、軸受部と支持脚取付部材とを容易に、かつ強固に連結することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明によれば、回転軸に加わる倒れ込みのモーメントを最小限に抑制することができると共に、回転翼と支持脚との干渉を防ぐことができるので、風車の大型化が図れると共に、安定した風力発電が期待できる。また、回転軸直下にスペースを開けた状態で支持脚を風車に連結することで、発電装置の設置に自由度を持たせることができる。
【0018】
(2)請求項2に記載の発明によれば、回転軸及び支持脚に加わる倒れ込みのモーメントに対して倒れ難くすることができるので、上記(1)に加えて、更に高強度と高い安定性が得られる。
【0019】
(3)請求項3に記載の発明によれば、回転軸と翼取付部材とを容易に、かつ強固に連結することができると共に、軸受部と支持脚取付部材とを容易に、かつ強固に連結することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に高強度と高い安定性が得られると共に、施工性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明に係る発電用風車の一例の使用状態を示す概略側面図である。
【
図2】上記発電用風車の翼固定部の一部を断面で示す側面図である。
【
図2A】上記発電用風車の支持脚固定部の一部を断面で示す要部拡大側面図である。
【
図4】この発明における回転軸の側面図(a)、平面図(b)及び底面図(c)である。
【
図5】この発明における翼の側面図(a)及び平面図(b)である。
【
図7】この発明における翼ブラケットの一部を断面で示す平面図(a)、側面図(b)及び(a)のIII-III線に沿う断面図(c)である。
【
図8】この発明における回転軸と翼取付部材との固定状態を示す平面図である。
【
図9】上記発電用風車の支持脚固定部を示す正面図である。
【
図10】この発明における支持脚に締結部材を固定した状態を示す側面図である。
【
図11】上記発電用風車の支持脚固定部の平面図(a)及び(a)のA部拡大断面図(b)である。
【
図12】この発明におけるハウジングと回転軸の軸受部の取付部を分解して示す側面図である。
【
図13】この発明におけるハウジングとハウジング受け材の固定状態を示す平面図である。
【
図14】この発明における支持脚受け材の正面図(a)、側面図(b)、(a)のIV-IV線に沿う断面図(c)、(a)のV-V線に沿う断面図(d)及び(a)のVI-VI線に沿う断面図(e)である。
【
図15】この発明における支持脚取付部材を構成するハウジング受け材と支持脚受け材の固定状態を示す平面図である。
【
図16】この発明における支持脚の正面図(a)及び平面図(b)である。
【
図17】
図16(b)のB部矢視図(a)、
図16(a)のVII-VII線に沿う断面図(b)及び
図16(a)のVIII-VIII線に沿う断面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
この発明に係る発電用風車1(以下に、単に風車1という)は、
図1に示すように、風を受ける方向に対して垂直、換言すると、地表に対して垂直な軸Z(以下に、垂直軸Zという)周りに回転する回転軸2と、回転軸2に軸受部3を介して連結される発電部6と、回転軸2に連結されて垂直軸Z周りに回転する複数(例えば、3枚)の風車翼10(以下に翼10という)と、風車1を支持する支持脚5とを備えている。
【0023】
軸受部3は、内部に回転軸2を回転自在に支承するベアリング3cを保持する円筒状のハウジング3dを具備し、後述する支持脚取付部材200を構成するハウジング受け材40と支持脚受け材50を介して取り付けられる支持脚5によって風車1の翼10を設置面4から所定の高さに位置させるために所定の高さに設置されている。したがって、支持脚5は、ハウジング受け材40と支持脚受け材50とで構成される支持脚取付部材200を介して軸受部3のハウジング3dに固定される。なお、軸受部3の下方に突出する回転軸2に発電部6を構成する増速機6aと発電機6bが連結されている。
【0024】
翼10は、回転軸2に固定される翼取付部材100を構成する第1ブラケット21と、第1ブラケット21に固定される第2ブラケット22を介して回転軸2に固定されている。換言すると、翼10は、第1ブラケット21と第2ブラケット22とで構成される翼取付部材100を介して回転軸2に固定される。翼10は、翼10の垂直軸Zに略平行な方向に沿って延びる主翼12と、一端が主翼12に鋭角に連結されると共に、他端が回転軸2に翼取付部材100Dを介して連結される一対の斜翼11と、斜翼11と主翼12とを湾曲状に連結する連結部13とを有する。具体的には、翼10は、側面視で、水平軸Xに対して略対称に形成された略三角形状に形成されている。なお、ここでいう略三角形状とは、翼10の全体形状が三角形に近い形状であることをいい、三辺のいずれかが湾曲したものを含む。
【0025】
また、翼10は、第1ブラケット21と第2ブラケット22を介して回転軸2に一端が固定され、他端が主翼12に連結される水平方向に延びる固定アーム14を具備する。なお、固定アーム14は、回転軸2と主翼10とを結ぶ水平軸Xの軸周りに回転可能な可動アーム15を有し、可動アーム15に、風車1の回転時に生じる遠心力の作用によって可動アーム15を上記水平軸周りに傾斜させ、風車1の回転停止時には可動アーム15を初期状態に戻す過回転抑制用の補助翼16が設けられている。
【0026】
翼10を形成する斜翼11、主翼12及び連結部13と、固定アーム14と可動アーム15及び補助翼16は、同じ断面形状の中空部10a~10gを有するアルミニウム製の押出形材にて形成されており、
図5に示すように、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の断面を有し、複数のリブ10eによって中空部10a~10dが区画されている。
図5において、前縁から2番目の中空部10bの上辺及び下辺は平坦になっており、両リブ10eとで矩形状に形成されている。この中空部10bの上側と下側は肉厚に形成されており、例えば、後述する翼ブラケット30を取り付ける箇所には、固定ねじ17が貫通する複数の取付孔10fが設けられている。この場合、取付孔10fは、中空部10bの幅方向の中間部とその両側の3箇所に設けられた3個の組が翼10の長手方向に複数列設けられている。なお、
図5においては、3つのリブ10eによって4つの中空部10a,10b,10c,10dを有する場合が示されているが、中空部の形状や数は任意である。
【0027】
翼取付部材100は、回転軸2の外周面における等分された3箇所に長手方向に沿って設けられた凹条2aに嵌合する凸条21aを有する複数(3個)の第1ブラケット21にて一部が形成されている。第1ブラケット21同士はボルト21h及びナット21iによって連結されている。第1ブラケット21は、アルミニウム製押出形材にて形成されている。なお、第1ブラケット21の回転軸2側には、長手方向に沿って導電棒挿入部21gが形成されている。
【0028】
導電棒挿入部21g内にはアルミニウム製の導電棒7が挿入され、下方に位置する軸受部3のステンレス製の上側ベアリング受け3aに接触可能になっている。なお、導電棒7がアルミニウム製部材である理由は、導電棒7が接触する第1ブラケット21と異なる金属であると、異種金属の電位差によって第1ブラケット21が腐食する虞があるからである。
【0029】
回転軸2は、
図4に示すように、翼10を取り付ける小径軸部2bと、軸受部3内に収容される大径軸部2cと、小径軸部2bと大径軸部2cとの間及び大径軸部2cの下部に位置してベアリング3cによって支承される上回動軸部2d及び下回動軸部2eとを具備する。小径軸部2bの外周面の3等分された箇所には上端から下方に向かって凹条2aが設けられている。この場合、凹条2aは外周に向かって拡開する台形状に形成されている。なお、上回動軸部2dには上側ベアリング受け3aが取り付けられ、下回動軸部2eには下側ベアリング受け3bが取り付けられる。なお、上側ベアリング受け3a及び下側ベアリング受け3bはステンレス製部材にて形成されている。また、小径軸部2bの上端面にはアイボルト2hを取り付けるためのねじ孔2fが設けられている。
【0030】
第1ブラケット21は、
図8に示すように、回転軸2の外周面の1/3を包囲する円弧部21bと、円弧部21bの内周側面の中間部から突出する内方に向かって狭小する台形状の凸条21aと、円弧部21bの両端から該円弧部の仮想中心から外方に延在する当接片21cと、当接片21cの先端から当接片21cに対して直角方向に延在する取付片21dと、両取付片21dの先端側同士を連結する外側リブ21eと、外側リブ21eの取付片側と円弧部21bの外方中間部を連結する一対の内側傾斜リブ21fと、一対の内側傾斜リブ21fの円弧部側に長手方向に沿って形成される導電棒挿入部21gを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。なお、取付片21dの上端側及び下端側には、第2ブラケット22を連結する取付ボルト23が貫通する複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。このように形成された3分割の第1ブラケット21は当接片21cを当接した状態でボルト21hとナット21iによって固定されている。
【0031】
第2ブラケット22は、
図2に示すように、第1ブラケット21にボルト23及びナット23aを介して固定されている。第2ブラケット22には、幅方向の両側に鍔部を残して起立する一対の起立片の先端から互いに近接する方向に所定の角度をもって延在する翼取付片22dと、両翼取付片22dの先端同士を連結する回転軸2と略平行な固定アーム取付片22eとを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。
【0032】
翼ブラケット30は、アルミニウム製押出形材にて形成されている。翼ブラケット30は、
図7に示すように、翼10(固定アーム14を含む)の前縁から2番目の中空部10bの上辺及び下辺の平坦面と両側のリブ10eの上下端部に接触する上部接触部31及び下部接触部32と、上部接触部31及び下部接触部32における翼10の中空部10bに設けられる3箇所の取付孔10fに対応する3箇所に隆起するねじ受け部33と、左右両側のねじ受け部33同士を連結する一対の連結部34とを有する。この場合、ねじ受け部33は、先端が円弧状に形成されると共に、翼ブラケット30の長手方向に沿って断面円形の貫通孔35が設けられている。また、ねじ受け部33には、上下部から貫通孔35に向かってねじ孔36が設けられている。また、翼ブラケット30の長手方向の一方の端部におけるねじ受け部33には、翼連結ボルト24が螺合される翼固定用ねじ孔37が設けられている。
【0033】
上記のように形成される翼ブラケット30を用いて第2ブラケット22に翼10(具体的には、翼10を構成する斜翼11と固定アーム14)が当接した状態で固定される。例えば、第2ブラケット22に翼10(固定アーム14)を固定する場合について、
図3、
図6A及び
図6Bを参照して説明する。ここでは、説明を分かりやすくするために、固定アーム14を翼10で代表して説明する。まず、翼ブラケット30を翼10の中空部10b内に挿入して翼10の中空部10b内に翼ブラケット30を固定する(
図6A参照)。次に、翼10の長手方向の端部を第2ブラケット22の固定アーム取付片22eの取付面に当接した状態で、翼ブラケット30に設けられたアーム固定用ねじ孔37に翼連結ボルト24を螺合して、第2ブラケット22に翼10を固定する(
図6B参照)。
【0034】
次に、上記のように形成される第1ブラケット21、第2ブラケット22及び翼ブラケット30を用いて翼10を固定する手順の一例について説明する。
【0035】
まず、第1ブラケット21の凸条21aを回転軸2の長手方向すなわち軸方向に沿って設けられた凹条2aに嵌合して、回転軸2の外周面に第1ブラケット21を固定する。なお、第1ブラケット21の凸条21aを回転軸2の凹条2aに嵌合する場合は、第1ブラケット21の凸条21aを回転軸2の長手方向すなわち軸方向の外方側から凹条2aに摺動させて嵌合するか、あるいは、回転軸2の周方向すなわち軸方向と交差する外側から嵌合するかのいずれかの方法であってもよい。
【0036】
回転軸2の凹条2aに第1ブラケット21の凸条21aを嵌合して第1ブラケット21を固定した後、第1ブラケット21の取付片21dに第2ブラケット22の固定片22aを当接する。この状態で、第1ブラケット21に設けられた貫通孔(図示せず)と第2ブラケット22に設けられた取付孔(図示せず)を貫通する取付ボルト23にナット23aを螺合して第1ブラケット21の外周面に第2ブラケット22を固定する。
【0037】
上記のようにして第1ブラケット21の外周面の3箇所に第2ブラケット22を固定した後、第2ブラケット22に設けられた翼取付片21dに翼10の斜翼11を当接して斜翼11の中空部10b内に固定された翼ブラケット30に設けられた翼固定用ねじ孔37に翼連結ボルト24を螺合して斜翼11を固定する。この場合、下方に延びる斜翼11と回転軸2とがなす角度αが、支持脚5と回転軸2とがなす角度βより大きくなるように設定されている(
図1参照)。また、第2ブラケット22に設けられた固定アーム取付片22eに固定アーム14を当接して固定アーム14の中空部10b内に固定された翼ブラケット30に設けられた翼固定用ねじ孔37に翼連結ボルト24を螺合して固定アーム14を固定する。
【0038】
軸受部3は、
図12に示すように、回転軸(図示せず)を回転自在に支承する円錐ころ軸受にて形成されるベアリング3c,3cと、長手方向の上部及び下部にベアリング3c,3cを保持する円筒状のハウジング3dと、ハウジング3dの上部及び下部に保持されるベアリング3c,3cの外方にそれぞれオイルシール3e,ガスケット3fを介してベアリング3c,3cを保持するステンレス製の上側ベアリング受け3g,下側ベアリング受け3hを具備する。
【0039】
ハウジング3dの外周面には、周方向の3箇所にハウジング3dの長手方向に沿う凹条3daが形成されている(
図11参照)。また、ハウジング3dの上下端には周方向に適宜間隔をおいて、ねじ孔3iが設けられており、上側ベアリング受け3g及び下側ベアリング受け3hに設けられた貫通孔3jを貫通する固定ボルト(図示せず)がねじ孔3iに螺合することによってハウジング3dに上側ベアリング受け3gと下側ベアリング受け3hが固定される。
【0040】
上記のように構成される軸受部3のハウジング3dの外周面には、ハウジング3dを囲むように回転軸2の長手方向に沿って3分割された支持脚取付部材200を構成するハウジング受け材40が、ハウジング3daの凹条3daに凸条41aが嵌合した状態で連結ボルト44及びナット44aによって固定される(
図11参照)。また、ハウジング受け材40の外周面に、回転軸2の周方向に沿って支持脚取付部材200を構成する支持脚受け材50が固定ボルト55及びナット55aによって固定され、支持脚受け材50に支持脚5の端面が当接された状態で固定される。
【0041】
上記ハウジング受け材40は、
図13に示すように、ハウジング3dの外周面に接触し、内側面にハウジング3dの凹条3daに嵌合可能な凸条41aを有する円弧部41と、円弧部41の両端から回転軸2の中心の半径方向に延在する一対の当接片42と、円弧部41の中間の左右対称部位から外方に向かって延在する先端側の中空部43aの先端面に設けられるボルト締結部である複数の締結孔43とを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、複数例えば3個の締結孔43は回転軸2の長手方向に沿って適宜間隔をおいて設けられている。また、中空部43aの幅は、中空部43a内に配置される後述するナット55aが中空部43a内で回転しない幅に設定されている。
【0042】
このように形成されるハウジング受け材40は、
図13に示すように、凸条41aがハウジング3dの凹条3daに嵌合し、隣り合う当接片42が当接された状態で、当接片42に設けられた取付孔45を貫通する連結ボルト44及びナット44aによって、ハウジング受け材40同士が連結される。これにより、ハウジング3dの外周面にハウジング受け材40を強固に固定することができる。したがって、支持脚取付部材200を構成するハウジング受け材40と、翼取付部材100を構成する第1ブラケット21は、回転軸2の軸方向に沿って取り付けられる。
【0043】
上記支持脚受け材50は、
図14に示すように、ハウジング受け材40の締結部の先端面に当接する固定片51と、固定片51の長手方向の上端部に鍔部52aを残して斜め下方に延在する傾斜片53と、固定片51の長手方向の下端部に鍔部52bを残して斜め上方に延在し、傾斜片53と交差した先端側に鍔部52cを有する脚締結片54とを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。
【0044】
このように形成される支持脚受け材50は、
図2A及び
図15に示すように、固定片51の鍔部52a,52bと傾斜片53の下方側に設けられた取付孔56とハウジング受け材40の締結孔43を貫通する固定ボルト55と中空部43a内に配置されるナット55aによってハウジング受け材40の外周面に固定される。
【0045】
また、支持脚受け材50の脚締結片54には、
図9及び
図10に示すように、後述する主ボルト締結部材61及び補助ボルト締結部材62を介して支持脚5の端部が当接した状態で固定されている。支持脚受け材50と支持脚5の固定は、支持脚5に固定ボルト65及びナット65aによって固定された主ボルト締結部材61及び補助ボルト締結部材62に設けられたボルト挿通部64,67を貫通する締結ボルト69を支持脚受け材50の脚締結片54に設けられた締結孔57に貫通させ、ナット69aを螺合して固定する。
【0046】
支持脚5は、
図16及び
図17に示すように、略六角筒状のアルミニウム製押出形材にて形成され、正面側の辺に隣接する両側の辺に狭隘開口溝5aを有し、狭隘開口溝5aを有する辺以外の4辺に複数の取付孔5bが設けられている。
【0047】
主ボルト締結部材61は、支持脚5の正面側辺と狭隘開口溝5aを有する辺に当接する基部63と、基部63の正面側の中央と両側の3箇所に長手方向に沿って隆起するボルト挿通部64とを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。この主ボルト締結部材61は、支持脚5に設けられた取付孔5bと主ボルト締結部材61に設けられた取付孔63aを貫通する固定ボルト65及びナット65aによって固定されると共に、狭隘開口溝5a内に挿入され、主ボルト締結部材61に設けられた取付孔63aを貫通する固定ボルト65及びナット65aによって固定される。
【0048】
補助ボルト締結部材62は、支持脚5の裏面側に隣接する辺に当接する板状基部66と、板状基部66の中央部に長手方向に沿って隆起するボルト挿通部67とを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。この補助ボルト締結部材62は、支持脚5の内方から座金68を介して支持脚5に設けられた取付孔5bと補助ボルト締結部材62に設けられた取付孔(図示せず)を貫通するボルト65及びナット65aによって固定される(
図10参照)。
【0049】
支持脚5を支持脚受け材50に固定する場合は、支持脚5の端部を支持脚受け材50の締結片54に当接した状態で、支持脚5の正面と正面に隣接する左右側面の上部側に固定された主ボルト締結部材61に設けられた3個のボルト挿通部64と、支持脚5の裏面に隣接する左右側面の下部側に固定された一対の補助ボルト締結部材62にそれぞれに設けられたボルト挿通部67を貫通する締結ボルト69及びナット69aによって固定する。このように、支持脚受け材50に支持脚5の端部を当接した状態で、支持脚5の正面及び正面に隣接する左右側面の上部側と支持脚5の裏面に隣接する左右側面の下部側の6箇所を締結ボルト69及びナット69aによって固定することで、支持脚5と支持脚受け部材50との固定を強固にすることができる。なお、上述したように、支持脚受け材50に固定された支持脚5と回転軸2とがなす角度βは、下方に延びる斜翼11と回転軸2とがなす角度αより小さくなるように設定されている。
【0050】
上記のようにして、翼10を連結した回転軸2の軸受部3は回転軸2の周方向の3箇所に固定された支持脚5によって保持される。なお、支持脚5は設置面4に打ち込まれた杭9に接続部材9aを介して固定されている。また、隣接する杭9同士は繋ぎ材9bによって連結されている。また、支持脚5の強度を保持するために、各支持脚5にはブレース8が連結されている。この場合、ブレース8は、隣接する支持脚5の中間部に連結される水平材8aと、一端が水平材8aの連結部の下方側近傍に連結され、他端が支持脚5の下端側に連結される斜材8bとで構成されている。
【0051】
なお、上記実施形態では、翼10が3枚である場合について説明したが、翼10の数はこれに限定されるものではなく、翼10を5枚にした場合にも、翼取付部材100の第1ブラケット21と第2ブラケット22の数を変えることによって適用できる。
【0052】
また、上記実施形態では、回転軸2に凹条2aを形成し、第1ブラケット21に凸条21aを形成して、凹条2aと凸条21aとを嵌合する場合について説明したが、凹条2aと凸条21aとを逆にしてもよい。すなわち、回転軸2に回転軸2の長手方向すなわち軸方向に沿う凸条を形成し、第1ブラケット21の第1ブラケット21に凹条を形成してもよい。なお、上記説明では、凹条2aが外方に向かって拡開する台形状に形成され、凸条21aが外方に向かって狭小する台形状に形成される場合について説明したが、凹条2aと凸条21aの形状は必ずしも台形状である必要はなく、凹条2aは外方に向かって拡開し、凸条21aは外方に向かって狭小する形状、例えば凹円弧状、凸円弧状等であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、第2ブラケット22に翼10の構成部材である斜翼11と固定アーム14を固定する形態について説明したが、別の固定形態としてもよい。例えば、回転軸2の長手方向すなわち軸方向に対して異なる角度を有する2つの取付面を形成する翼取付片22dに翼10の構成部材である斜翼11のみを固定する形態としてもよい。なお、第2のブラケットに斜翼11のみを固定する場合は、第2ブラケット22の形状を、固定アーム取付片22eを除いた翼取付片22dのみの形状としてもよい。
【0054】
この実施形態において、上記ブラケットは、複数(3個)の上記第1ブラケット21を一体化したブラケットであってもよい。ブラケットが一体化された場合は、第1ブラケット21の円弧部21bによって形成された円筒部内に回転軸2を挿入して回転軸2に設けられた2aと円弧部21bに設けられた凸条21aとを嵌合して回転軸2と一体化されたブラケットとを固定することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、ハウジング3dに凹条3daを形成し、ハウジング受け材40に凸条41aを形成して、凹条3daと凸条41aとを嵌合する場合について説明したが、凹条3daと凸条41aとを逆にしてもよい。すなわち、ハウジング3dに回転軸2の長手方向すなわち軸方向に沿う凸条を形成し、ハウジング受け材40に凹条を形成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ハウジング受け材40に設けられるボルト締結部が、中空部43aの先端面に設けられる複数の締結孔43にて形成される場合について説明したが、締結孔43に代えて、中空部43aの先端面に固定ボルト55のみが挿通可能な狭隘開口溝を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、支持脚5が略六角筒状に形成される場合について説明したが、支持脚5の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、支持脚5を略四角筒状に形成してもよい。この場合は、主ボルト締結部材61を支持脚5の正面及び正面に隣接する左右側面の上部側に固定し、補助ボルト締結部材62を支持脚5の裏面に隣接する左右側面の下部側に固定して、上記と同様に、支持脚受け材50に支持脚5の端部を当接した状態で、支持脚5の正面及び正面に隣接する左右側面の上部側と支持脚5の裏面に隣接する左右側面の下部側の6箇所を締結ボルト69及びナット69aによって固定することができる。
【0058】
上記のように構成される実施形態によれば、回転軸2に加わる倒れ込みのモーメントを最小限に抑制することができると共に、回転翼10と支持脚5との干渉を防ぐことができるので、風車の大型化が図れると共に、安定した風力発電が期待できる。また、回転軸2の直下にスペースを開けた状態で支持脚5を風車1に連結することで、発電装置の設置に自由度を持たせることができる。
【0059】
また、翼取付部材100と支持脚取付部材200とを、互いに近接した位置に取り付けると共に、回転軸2の軸方向に沿って取り付けることで、回転軸2及び支持脚5に加わる倒れ込みのモーメントに対して倒れ難くすることができる。
【0060】
また、回転軸2と翼取付部材100を構成する第1ブラケット21は、回転軸2と第1ブラケット21のいずれか一方に設けられた回転軸2の軸方向に沿う少なくとも3以上の凸条と、他方に設けられた凹条とが互いに嵌合されて連結されるので、回転軸2と翼取付部材100とを容易に、かつ強固に連結することができる。また、ハウジング3dと支持脚取付部材200を構成するハウジング受け材40は、ハウジング3dとハウジング受け材40のいずれか一方に設けられた回転軸2の軸方向に沿う少なくとも3以上の凸条と、他方に設けられた凹条とが互いに嵌合されて連結されるので、軸受部3と支持脚取付部材200とを容易に、かつ強固に連結することができる。
【0061】
なお、上記実施形態は、あくまでも構造面で工夫した一つの実施形態であり、材料や接合工法等を限定したものではない。材料はアルミニウム製押出形材に限らず、鉄等でもかまわないし、ボルト締結ではなく、溶接でも構わない。これらの変更はいずれも上記と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0062】
1 風車
2 回転軸
2a 凹条
3 軸受部
3c ベアリング
3d ハウジング
3da 凹条
5 支持脚
6 発電部
10 風車翼
11 斜翼
12 主翼
100 翼取付部材
21 第1ブラケット
21a 凸条
22 第2ブラケット
200 支持脚取付部材
40 ハウジング受け材
41a 凸条
50 支持脚受け材
X 水平軸
Z 垂直軸
α 斜翼と回転軸とがなす角度
β 支持脚と回転軸とがなす角度