(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106567
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】垂直軸風車の翼構造
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010894
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】樋上 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小池 洋光
(72)【発明者】
【氏名】石川 博光
(72)【発明者】
【氏名】朴 玉丹
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】小野 猛
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB35
3H178CC12
(57)【要約】
【課題】風車自体の大型化に対応すべく翼の垂れを抑制すると共に、翼の傾き調整を可能にして、風車自体の大型化に対応した高強度と高い安定性が得られる垂直軸風車の翼構造を提供する。
【解決手段】風を受ける方向に対して垂直な軸周りに回転する回転軸2と、上記回転軸に連結されて垂直軸周りに回転する複数の翼10とを具備する垂直軸風車において、上記各翼は、上記回転軸から上下斜め方向に延びる上部斜翼11A及び下部斜翼11Bと、上記上部斜翼及び上記下部斜翼の外端間に配置される主翼10とを具備する。上記各上部斜翼は、それぞれ該上部斜翼の中間部に一端が掛着され、他端が隣接する上記上部斜翼の上記回転軸側端部に張着される補強ワイヤー7を具備し、上記補強線材の張着を、上記補強線材の長手方向に調整可能に形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受ける方向に対して垂直な軸周りに回転する回転軸と、上記回転軸に連結されて垂直軸周りに回転する複数の翼とを具備する垂直軸風車の翼構造であって、
上記各翼は、上記回転軸から上下斜め方向に延びる上部斜翼及び下部斜翼と、上記上部斜翼及び上記下部斜翼の外端間に配置される主翼とを具備し、
上記各上部斜翼は、それぞれ該上部斜翼の中間部に一端が掛着され、他端が隣接する上記上部斜翼の上記回転軸側端部に張着される補強線材を具備し、
上記補強線材の張着は、上記補強線材の長手方向に調整可能に形成されている、
ことを特徴とする垂直軸風車の翼構造。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直軸風車の翼構造であって、
上記上部斜翼の中間部に掛着される上記補強線材は、上記上部斜翼の風向き前縁側の前後に掛着され、
前側の上記補強線材は、隣接する上記上部斜翼の風向き後縁側に張着され、
後側の上記補強線材は、隣接する上記上部斜翼の風向き前縁側に張着されている、
ことを特徴とする垂直軸風車の翼構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の垂直軸風車であって、
上記補強線材は両端にループ部を有し、
一端の上記ループ部は、上記上部斜翼の上面に固着される掛止具に掛着され、
他端の上記ループ部は、二叉状部材の両腕部間に連結される掛止軸に掛着され、
上記二叉状部材は、上記上部斜翼の下面に固着されるブラケットに設けられた螺挿孔部に螺挿される調整ねじ部材に螺着されている、
ことを特徴とする垂直軸風車の翼構造。
【請求項4】
請求項3に記載の垂直軸風車の翼構造であって、
上記ブラケットは、上記翼の風向き前縁側及び風向き後縁側に延在する前縁螺挿孔部及び後縁螺挿孔部を有し、
上記前縁螺挿孔部に対して上記後縁螺挿孔部が上方に位置している、
ことを特徴とする垂直軸風車の翼構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、垂直軸風車の翼構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、風を受ける方向に対して垂直軸周りに回転する回転軸と、上記回転軸に軸受部を介して連結される発電部と、上記回転軸に連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼(以下、翼という)とを具備する垂直軸風車が知られている。
また、この種の垂直軸風車において、上記翼は、上記回転軸から離れるにつれて互いの間隔が広くなるように延びる一対の斜翼と、上記回転軸に略平行な方向に沿って延びる主翼とを有する垂直軸風車が知られている(特に、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の垂直軸風車は、その性能が風向に依存しない特性があり、かつ騒音や振動を抑制可能なため、構造がシンプルになり、低コスト化に向いているとされている。また、最近では、再生可能エネルギーの導入促進において発電コストに優れる発電用風車が期待されている。
【0004】
反面、発電用風車として発電コストを安くするために風車自体の大型化が考えられることから、風車の構造において、翼の軽量化が図れ、より高強度と高い安定性が求められている。
【0005】
特許文献1に記載の垂直軸風車においては、回転軸から上下斜め方向に延びる上部支持アーム部及び下部支持アーム部と、回転軸に略平行な方向に延びるブレード(回転翼)と、隣接する回転翼間を接続する上部テンションバー及び下部テンションバーを具備する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の垂直軸風車においては、隣接する回転翼間に上部支持テンションバーと下部支持テンションバーを接続する構造であるため、構造が複雑になると共に、上部支持テンションバーと下部支持テンションバーは風による抵抗のみを受け回転力に寄与しないため、発電効率が低下する懸念がある。また、特許文献1に記載の垂直軸風車においては、回転翼と上部支持テンションバー及び下部支持テンションバーとの接続構造については開示されておらず、翼の垂れ防止や翼の調整については言及されていない。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、風車自体の大型化に対応すべく翼の垂れを抑制すると共に、翼の傾き調整を可能にして、風車自体の大型化に対応した高強度と高い安定性が得られる垂直軸風車の翼構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、この発明は、風を受ける方向に対して垂直な軸周りに回転する回転軸と、上記回転軸に連結されて垂直軸周りに回転する複数の翼とを具備する垂直軸風車の翼構造であって、上記各翼は、上記回転軸から上下斜め方向に延びる上部斜翼及び下部斜翼と、上記上部斜翼及び上記下部斜翼の外端間に配置される主翼とを具備し、上記各上部斜翼は、それぞれ該上部斜翼の中間部に一端が掛着され、他端が隣接する上記上部斜翼の上記回転軸側端部に張着される補強線材を具備し、上記補強線材の張着は、上記補強線材の長手方向に調整可能に形成されている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成することにより、各上部斜翼の中間部に掛着される補強線材を、隣接する上部斜翼の回転軸側端部に張着することで、翼の垂れを抑制することができる。また、補強線材は、補強線材の長手方向に調整可能に張着されることで、補強線材による上部斜翼の保持を調整して翼の傾きを調整することができる。
【0011】
この発明において、上記上部斜翼の中間部に掛着される上記補強線材は、上記上部斜翼の風向き前縁側の前後に掛着され、前側の上記補強線材は、隣接する上記上部斜翼の風向き後縁側に張着され、後側の上記補強線材は、隣接する上記上部斜翼の風向き前縁側に張着されているのが好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、隣接する上部斜翼の風向きに対する前後の傾きを同時に調整することができる。
【0013】
また、この発明において、上記補強線材は両端にループ部を有し、一端の上記ループ部は、上記上部斜翼の上面に固着される掛止具に掛着され、他端の上記ループ部は、二叉状部材の両腕部間に連結される掛止軸に掛着され、上記二叉状部材は、上記上部斜翼の下面に固着されるブラケットに設けられた螺挿孔部に螺挿される調整ねじ部材に螺着されているのが好ましい(請求項3)。この場合、上記ブラケットは、上記翼の風向き前縁側及び風向き後縁側に延在する前縁螺挿孔部及び後縁螺挿孔部を有し、上記前縁螺挿孔部に対して上記後縁螺挿孔部が上方に位置しているのが好ましい(請求項4)。
【0014】
このように構成することにより、補強線材の取付を容易かつ強固にすることができると共に、補強線材の長手方向の調整を容易にすることができる。この場合、前縁螺挿孔部に対して後縁螺挿孔部が上方に位置することで、隣接する上部斜翼に張着される補強線材同士が干渉するのを防ぐことができると共に、翼の風向きに対する前後の傾きの調整を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0016】
(1)請求項1に記載の発明によれば、翼の垂れを抑制することができると共に、補強線材による上部斜翼の保持を調整して翼の傾きを調整することができる。したがって、風車自体の大型化に対応した高強度と高い安定性が得られる。
【0017】
(2)請求項2に記載の発明によれば、隣接する上部斜翼の風向きに対する前後の傾きを同時に調整することができるので、上記(1)に加えて、更に翼の傾きの調整を容易にすることができる。
【0018】
(3)請求項3,4に記載の発明によれば、上記(1),(2)に加えて、更に補強線材の取付を容易かつ強固にすることができると共に、補強線材の長手方向の調整を容易にすることができる。この場合、前縁螺挿孔部に対して後縁螺挿孔部が上方に位置することで、隣接する上部斜翼に張着される補強線材同士が干渉するのを防ぐことができると共に、翼の風向きに対する前後の傾きの調整を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る垂直軸風車の一例の使用状態を示す概略側面図である。
【
図3】上記垂直軸風車の翼固定部の一部を断面で示す側面図である。
【
図5】この発明における翼の側面図(a)及び平面図(b)である。
【
図6A】この発明における翼に固定受座を固定した状態を示す断面図である。
【
図6B】上記固定受座に翼連結ボルトを螺合して翼を連結した状態を示す断面図である。
【
図7】この発明における固定受座の一部を断面で示す平面図(a)、側面図(b)及び(a)のI-I線に沿う断面図(c)である。
【
図8】この発明における補強線材を上部斜翼の中間部に掛着した状態を示す平面図である。
【
図9】この発明における補強線材を上部斜翼の中間部に掛着した状態を示す断面図である。
【
図11】この発明における補強線材を上部斜翼の回転軸側端部に張着した状態を示す側面図である。
【
図11A】上記補強線材を上部斜翼の前縁側に張着した状態の一部を断面で示す拡大側面図である。
【
図11B】上記補強線材を上部斜翼の後縁側に張着した状態の一部を断面で示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
この発明に係る垂直軸風車1(以下に、単に風車1という)は、
図1に示すように、風を受ける方向に対して垂直、換言すると、地表に対して垂直な軸Z(以下に、垂直軸Zという)周りに回転する回転軸2と、回転軸2に軸受部3を介して連結される発電部6と、回転軸2に連結されて垂直軸Z周りに回転する複数(例えば、3枚)の風車翼10(以下に翼10という)と、風車1を支持する支持脚5とを備えている。
【0022】
翼10は、回転軸2に固定される翼取付部材20を構成する第1ブラケット21と、第1ブラケット21に固定される第2ブラケット22を介して回転軸2に固定されている。換言すると、翼10は、第1ブラケット21と第2ブラケット22とで構成される翼取付部材20を介して回転軸2に固定される。翼10は、垂直軸Zから離れるにつれて上下斜めに延びる上部斜翼11A及び下部斜翼11Bと、翼10の垂直軸Zに略平行な方向に沿って延びる主翼12と、上部斜翼11A及び下部斜翼11Bと主翼12とを湾曲状に連結する連結部材13とを有する。具体的には、翼10は、側面視で、水平軸Xに対して略対称に形成された略三角形状に形成されている。なお、ここでいう略三角形状とは、翼10の全体形状が三角形に近い形状であることをいい、三辺のいずれかが湾曲したものを含む。
【0023】
また、翼10は、第1ブラケット21と第2ブラケット22を介して回転軸2に一端が固定され、他端が主翼12に連結される水平方向に延びる固定アーム14を具備する。なお、固定アーム14は、回転軸2と主翼10とを結ぶ水平軸Xの軸周りに回転可能な可動アーム15を有し、可動アーム15に、風車1の回転時に生じる遠心力の作用によって可動アーム15を上記水平軸周りに傾斜させ、風車1の回転停止時には可動アーム15を初期状態に戻す過回転抑制用の補助翼16が設けられている。
【0024】
翼10を形成する上部斜翼11A,下部斜翼11B、主翼12と、固定アーム14と可動アーム15及び補助翼16は、同じ断面形状の中空部10a~10gを有するアルミニウム製の押出形材にて形成されており、
図5に示すように、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の断面を有し、複数のリブ10eによって中空部10a~10dが区画されている。
図5において、前縁から2番目の中空部10bの上辺及び下辺は平坦になっており、両リブ10eとで矩形状に形成されている。この中空部10bの上側と下側は肉厚に形成されており、例えば、後述する固定受座30を取り付ける箇所には、固定ねじ17が貫通する複数の取付孔10fが設けられている。この場合、取付孔10fは、中空部10bの幅方向の中間部とその両側の3箇所に設けられた3個の組が翼10の長手方向に複数列設けられている。なお、
図5においては、3つのリブ10eによって4つの中空部10a,10b,10c,10dを有する場合が示されているが、中空部の形状や数は任意である。
【0025】
翼取付部材20は、回転軸2の外周面における等分された3箇所に長手方向に沿って設けられた凹条2aに嵌合する凸条21aを有する複数(3個)の第1ブラケット21にて一部が形成されている。第1ブラケット21同士はボルト21h及びナット21iによって連結されている。なお、第1ブラケット21は、アルミニウム製押出形材にて形成されている。
【0026】
第2ブラケット22は、
図3に示すように、第1ブラケット21にボルト23及びナット23aを介して固定されている。第2ブラケット22には、幅方向の両側に鍔部を残して起立する一対の起立片の先端から互いに近接する方向に所定の角度をもって延在する翼取付片22dと、両翼取付片22dの先端同士を連結する回転軸2と略平行な固定アーム取付片22eとを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。
【0027】
固定受座30は、アルミニウム製押出形材にて形成されている。固定受座30は、
図7に示すように、翼10(固定アーム14を含む)の前縁から2番目の中空部10bの上辺及び下辺の平坦面と両側のリブ10eの上下端部に接触する上部接触部31及び下部接触部32と、上部接触部31及び下部接触部32における翼10の中空部10bに設けられる3箇所の取付孔10fに対応する3箇所に隆起するねじ受け部33と、左右両側のねじ受け部33同士を連結する一対の連結部34とを有する。この場合、ねじ受け部33は、先端が円弧状に形成されると共に、固定受座30の長手方向に沿って断面円形の貫通孔35が設けられている。また、ねじ受け部33には、上下部から貫通孔35に向かってねじ孔36が設けられている。また、固定受座30の長手方向の一方の端部におけるねじ受け部33には、翼連結ボルト24が螺合される締結用ねじ孔37が設けられている。
【0028】
上記のように形成される固定受座30を用いて第2ブラケット22に翼10(具体的には、翼10を構成する上部斜翼11A及び下部斜翼11Bと固定アーム14)が当接した状態で固定される。例えば、第2ブラケット22に翼10(固定アーム14)を固定する場合について、
図3,
図6A及び
図6Bを参照して説明する。ここでは、説明を分かりやすくするために、固定アーム14を翼10で代表して説明する。まず、固定受座30を翼10の中空部10b内に挿入して翼10の中空部10b内に固定受座30を固定する(
図6A参照)。次に、翼10の長手方向の端部を第2ブラケット22の固定アーム取付片22eの取付面に当接した状態で、固定受座30に設けられたアーム固定用ねじ孔37に翼連結ボルト24を螺合して、第2ブラケット22に翼10を固定する(
図6B参照)。
【0029】
軸受部3は、
図3に示すように、回転軸2を回転自在に支承する円錐ころ軸受にて形成されるベアリング3c,3cと、長手方向の上部及び下部にベアリング3c,3cを保持する円筒状のハウジング3dとを具備する。なお、軸受部3を介して回転軸2に連結される発電部6は、増速機6aと発電機6bとで構成されている。
【0030】
上記のように構成される軸受部3のハウジング3dの外周面には、ハウジング3dを囲むように回転軸2の長手方向に沿って3分割されたハウジング受け材40が固定される。また、ハウジング受け材40の外周面に、回転軸2の周方向に沿って支持脚受け材50が固定ボルト55及びナット55aによって固定され、支持脚受け材50に支持脚5の端面が当接された状態で固定される。
【0031】
支持脚受け材50の脚締結片54には、主ボルト締結部材61及び補助ボルト締結部材62を介して支持脚5の端部が当接した状態で固定されている。支持脚受け材50と支持脚5の固定は、支持脚5に固定ボルト65及びナット65aによって固定された主ボルト締結部材61及び補助ボルト締結部材62に設けられたボルト挿通部(図示せず)を貫通する締結ボルト69を支持脚受け材50の脚締結片54に貫通させ、ナット69aを螺合して固定する。
【0032】
上記のようにして、翼10を連結した回転軸2の軸受部3は、回転軸2の周方向の3箇所に固定された支持脚5によって保持される。なお、支持脚5は設置面4に打ち込まれた杭9に接続部材9aを介して固定されている。また、隣接する杭9同士は繋ぎ材9bによって連結されている。また、支持脚5の強度を保持するために、各支持脚5にはブレース8が連結されている。この場合、ブレース8は、隣接する支持脚5の中間部に連結される水平材8aと、一端が水平材8aの連結部の下方側近傍に連結され、他端が支持脚5の下端側に連結される斜材8bとで構成されている。
【0033】
上記のように構成される風車1において、各上部斜翼11Aは、それぞれ上部斜翼11Aの中間部に一端が掛着され、他端が隣接する上部斜翼11Aの回転軸側端部に張着される補強線材7(以下に、補強ワイヤー7という)を具備している(
図2参照)。
【0034】
補強ワイヤー7は、両端にループ部7a,7bを有している。補強ワイヤー7の一端のループ部7aは、
図8及び
図9に示すように、上部斜翼11Aの上面に固着される掛止具70に掛着されている。
【0035】
掛止具70は、上部斜翼11Aの風向き前縁側の上面に固定ボルト74及びナット74aによって固着される略矩形状の基部71と、基部71における風向きの前後側に間隔をおいて立設され、上部斜翼11Aの傾斜上方側が開口する2つのフック部72a,72bと、フック部72a,72bの開口側上部に設けられた挿通孔72cを挿通して基部71に設けられたねじ孔71aに螺合する抜け止め用ボルト73とで構成されている。
【0036】
掛止具70を固着する場合は、
図9、
図10A及び
図10Bに示すように、上部斜翼11Aの中空部10b内に上記固定受座30と同様に固定ねじ17によって固定された固定受座30Aを利用する。具体的には、基部71に設けられた挿通孔71bと、上部斜翼11Aに設けられた挿通孔11c及び固定受座30Aに設けられた貫通孔35に固定ボルト74を挿通し、固定ボルト74にナット74aを螺合して、上部斜翼11Aの風向き前縁側の上面に掛止具70を固着する。
【0037】
上記のようにして上部斜翼11Aの風向き前縁側に固着された掛止具70の風向き前側のフック部72aと風向き後側のフック部72bに補強ワイヤー7の一端のループ部7aが掛着され、抜け止め用ボルト73によってフック部72a,72bから補強ワイヤー7が外れるのを防止している。
【0038】
一方、補強ワイヤー7の他端のループ部7bは、
図11及び
図12に示すように二叉状部材75の両腕部75a間に連結される掛止軸76に掛着されている。なお、掛止軸76は、二叉状部材75の両腕部75aを貫通してナット76aが螺合されるボルトによって形成されている。
【0039】
二叉状部材75は、上部斜翼11Aの下面に固着されるブラケット77に設けられた後述する前縁螺挿孔部78a及び後縁螺挿孔部78bに螺挿される調整ねじ部材79(以下に調整ボルト79という)に螺着されている。換言すると、二叉状部材75の両腕部75aを連結する連結部75bに調整ボルト79が螺着されている。
【0040】
ブラケット77は、上部斜翼11Aの中空部10bの下方側面から上部斜翼11Aの後縁側に沿うブラケット本体77aと、ブラケット本体77aの風向き前縁側から屈曲されて延在する前縁片77bに設けられる前縁螺挿孔部78aと、ブラケット本体77aの風向き後縁側から屈曲されて延在する後縁片77cに設けられる後縁螺挿孔部78bとを有する。
【0041】
なお、前縁螺挿孔部78aに対して後縁螺挿孔部78bが上方に位置している。このように、前縁螺挿孔部78aに対して後縁螺挿孔部78bが上方に位置することで、隣接する上部斜翼11Aに張着される補強ワイヤー7同士が干渉するのを防ぐことができる。
【0042】
ブラケット77を固着する場合は、
図11に示すように、上部斜翼11Aの中空部10b内に上記固定受座30と同様に固定ねじ17によって固定された固定受座30Aを利用する。具体的には、ブラケット本体77aに設けられた挿通孔77dと、上部斜翼11Aに設けられた挿通孔11c及び固定受座30Aに設けられた2つの貫通孔35にそれぞれ固定ボルト80を挿通し、固定ボルト80にナット80aを螺合して、上部斜翼11Aの風向き前縁側の下面にブラケット77を固着する。
【0043】
前縁螺挿孔部78aは、
図11Aに示すように、前縁片77bに設けられる挿通孔77dと、前縁片77bを挟んで挿通孔77dに連通する一対の調整用ナット77e,77fとで構成されている。また、後縁螺挿孔部78bは、
図11Bに示すように、後縁片77cに設けられる挿通孔77dと、後縁片77cを挟んで挿通孔77dに連通する一対の調整用ナット77e,77fとで構成されている。
【0044】
上記のように構成される前縁螺挿孔部78a及び後縁螺挿孔部78bは、補強ワイヤー7の長手方向の調整後のロック機能を有する。すなわち、調整ボルト79によって補強ワイヤー7の長手方向の調整が行われた後、調整用ナット77e,77fを締結することで、調整ボルト79がロックされる。
【0045】
補強ワイヤー7を取り付ける場合は、まず、一端のループ部7aを上部斜翼11Aの上面に固着される掛止具70に掛着する。この際、補強ワイヤー7のループ部7a,7bを掛止具70のフック部70a,70bに引っ掛け、抜け止め用ボルト73を取り付けた状態にする。一端のループ部7aを掛止具70に掛着した後、他端のループ部7bを二叉状部材75の両腕部75a間に連結される掛止軸76に掛着する。この状態で、二叉状部材75の連結部75bに、上部斜翼11Aの下面に固着されるブラケット77に設けられた前縁螺挿孔部78a及び後縁螺挿孔部78bに螺挿される調整ボルト79を螺着して、補強ワイヤー7の長手方向の調整を行う。
【0046】
補強ワイヤー7の長さ方向の調整について、
図11A,
図11Bを参照して説明する。
上部斜翼11Aの前縁を風向きに対して上向き側に調整する場合は、前縁螺挿孔部78aに螺挿される調整ボルト79と、後縁螺挿孔部78bに螺挿される調整ボルト79を、時計方向に回して上部斜翼11Aの前縁を風向きに対して上向き側に傾斜させる。また、上部斜翼11Aの前縁を風向きに対して下向き側に調整する場合は、前縁螺挿孔部78aに螺挿される調整ボルト79と、後縁螺挿孔部78bに螺挿される調整ボルト79を、反時計方向に回して上部斜翼11Aの前縁を風向きに対して下向き側に傾斜させる。
【0047】
このようにして補強ワイヤー7を取り付けることによって、補強ワイヤー7の取付を容易かつ強固にすることができると共に、補強ワイヤー7の長手方向の調整すなわち上部斜翼11Aの前後の傾きを容易にすることができる。
【0048】
上記のように構成される実施形態によれば、各上部斜翼11Aの中間部に掛着される補強ワイヤー7を、それぞれ隣接する上部斜翼11Aの回転軸側端部に張着することで、上部斜翼11Aの保持が強固となるので、翼10の垂れを抑制することができる。また、補強ワイヤー7は、補強ワイヤー7の長手方向に調整可能に張着されることで、補強ワイヤー7による上部斜翼11Aの保持を調整して翼10の傾きを調整することができる。
【0049】
また、補強ワイヤー7を上部斜翼11Aの風向き前縁側の前後に掛着し、前側の補強ワイヤー7を、隣接する上部斜翼11Aの風向き後縁側に張着し、後側の上記補強ワイヤー7を、隣接する上部斜翼11Aの風向き前縁側に張着することで、隣接する上部斜翼11Aの風向きに対する前後の傾きを同時に調整することができる。
【0050】
また、前縁螺挿孔部78aに対して後縁螺挿孔部78bが上方に位置することで、隣接する上部斜翼11Aに張着される補強ワイヤー7同士が干渉するのを防ぐことができると共に、翼の風向きに対する前後の傾きの調整を容易にすることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、翼10が3枚である場合について説明したが、翼10の数はこれに限定されるものではなく、翼10を5枚にした場合にも、各上部斜翼11Aと隣接する上部斜翼11Aに補強ワイヤー7を取り付けることによって上記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0052】
1 風車
2 回転軸
7 補強ワイヤー(補強線材)
7a,7b ループ部
10 翼(風車翼)
11A 上部斜翼
11B 下部斜翼
12 主翼
70 掛止具
72a,72b フック部
73 抜け止め用ボルト
74 固定ボルト
74a ナット
75 二叉状部材
75a 腕部
75b 連結部
76 掛止軸
77 ブラケット
77a ブラケット本体
77b 前縁片
77b 後縁片
77d 挿通孔
77e,77f 調整用ナット
78a 前縁螺挿孔部
78b 後縁螺挿孔部
79 調整ボルト
80 固定ボルト
80a ナット