(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106569
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/02 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01N23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010897
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市沢 康史
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001FA01
2G001FA08
2G001FA14
2G001JA09
2G001MA05
(57)【要約】
【課題】放射線を用いた目付量測定において効果的に測定値を校正すること。
【解決手段】測定装置10は、放射線を照射して放射線の透過情報を検出する検出器20を電極シートSに走査させて電極シートSの放射線透過強度を取得するとともに、電極シートSから生成された基準サンプルPに検出器20を走査させて基準サンプルPの放射線透過強度を取得し、基準サンプルPの重量または厚さに関する基準値と基準サンプルPの放射線透過強度との相関性を用いて、電極シートSの放射線透過強度から電極シートSの重量または厚さに関する指示値を算出し、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて、指示値を校正する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の照射対象を照射して前記所定の照射対象の透過情報を検出する検出器を測定対象物に走査させて第1の透過情報を取得するとともに、前記測定対象物から生成された基準試料に前記検出器を走査させて第2の透過情報を取得する取得部と、
前記基準試料の重量または厚さに関する基準値と前記第2の透過情報との相関性を用いて、前記第1の透過情報から前記測定対象物の重量または厚さに関する値を算出する算出部と、
前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する校正部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記第1の透過情報が所定値を超過した場合に、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて特定された異常に対応するアラームを通知する通知部、
をさらに備える請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記取得部は、
前記基準値として、前記測定対象物の一部として採取された前記基準試料の重量を取得し、
前記第1の透過情報として、前記測定対象物を透過する放射線の第1の透過強度を取得し、
前記第2の透過情報として、前記基準試料を透過する前記放射線の第2の透過強度を取得し、
前記算出部は、
前記基準試料の重量から算出した前記基準試料の目付量と前記第2の透過強度との前記相関性を示す検量線を用いて、前記第1の透過強度から前記測定対象物の目付量または厚さを算出する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記取得部は、
シート状の前記測定対象物が送出される方向に対して直交する方向に前記測定対象物に沿って往復走査する前記検出器によって検出された前記第1の透過情報を取得し、
前記検出器が往復走査する際の折返し位置に設置された少なくとも1つの前記基準試料から、前記検出器によって検出された前記第2の透過情報を取得する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記取得部は、
前記折返し位置において空気に前記検出器を走査させて前記測定対象物および前記基準試料が存在しない際の第3の透過情報をさらに取得し、
前記校正部は、
前記第3の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する、
請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記校正部は、
前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて前記照射対象の照射量の低下を特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記校正部は、
前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて前記検出器の測定窓面の汚れを特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記校正部は、
前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて検出器の感度の低下を特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記校正部は、
前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて前記照射対象の発生源と検出器との同期または位置関係に関する異常を特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項10】
コンピュータが、
所定の照射対象を照射して前記所定の照射対象の透過情報を検出する検出器を測定対象物に走査させて第1の透過情報を取得するとともに、前記測定対象物から生成された基準試料に前記検出器を走査させて第2の透過情報を取得し、
前記基準試料の重量または厚さに関する基準値と前記第2の透過情報との相関性を用いて、前記第1の透過情報から前記測定対象物の重量または厚さに関する値を算出し、
前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する、
処理を実行する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池電極シート(適宜、「電極シート」)は、金属箔に活物質等の合剤を薄く塗布し、乾燥したものである。電極シート製作工程においては、正極、負極のそれぞれ別の生産ラインで製造される。例えば、正極では、アルミ箔の表面にスラリーを薄く均一に塗工し、次の工程で乾燥し、乾燥後にアルミ箔の裏面に同様の塗工が行われ、乾燥が行われる。上記の塗工工程から乾燥工程における検査には、目付量(塗工坪量)や塗工部端面(エッジ)の形状測定、乾燥表面状態の画像診断等が行われる場合がある。
【0003】
ここで、
図1を用いて、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定について説明する。
図1は、電極シートの目付量測定を説明するための図である。
図1に示す目付量測定を実行する装置では、O型フレームの上部ビームには上側測定ヘッドが、下部ビームには下側測定ヘッドがそれぞれ係留され、上下の測定ヘッドが同期してOフレーム内を左右に走査(スキャン)する。また、上記装置の測定ヘッドには、β線やX線等の放射線源と検出器とが対向して搭載されており、測定対象物である電極シートの透過減衰量を測定する。このとき、あらかじめ目付量が既知の基準サンプル(適宜、「基準試料」)を複数回測定することによって検量線を求めておき、減衰量と検量線の関係から、測定対象物の目付量や厚さを算出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、正確な測定値を取得することは難しい。例えば、β線やX線等の放射線を用いて測定対象物の目付量や厚さを測定する際には、β線の経年変化、崩壊X線源の出力安定性、ラインセンサの測定感度の温度ドリフト等の影響による変化等のために、正確に測定対象物の目付量や厚さを測定することが困難である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、効果的に測定値を校正することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の照射対象を照射して前記所定の照射対象の透過情報を検出する検出器を測定対象物に走査させて第1の透過情報を取得するとともに、前記測定対象物から生成された基準試料に前記検出器を走査させて第2の透過情報を取得する取得部と、前記基準試料の重量または厚さに関する基準値と前記第2の透過情報との相関性を用いて、前記第1の透過情報から前記測定対象物の重量または厚さに関する値を算出する算出部と、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する校正部と、を備える測定装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、コンピュータが、所定の照射対象を照射して前記所定の照射対象の透過情報を検出する検出器を測定対象物に走査させて第1の透過情報を取得するとともに、前記測定対象物から生成された基準試料に前記検出器を走査させて第2の透過情報を取得し、前記基準試料の重量または厚さに関する基準値と前記第2の透過情報との相関性を用いて、前記第1の透過情報から前記測定対象物の重量または厚さに関する値を算出し、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する、処理を実行する測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、効果的に測定値を校正することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電極シートの目付量測定を説明するための図である。
【
図2】実施形態に係る目付量測定システムの構成例および処理例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る目付量測定システムの各装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る測定装置の測定値記憶部の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る測定装置の基準値記憶部の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る測定装置の算出値記憶部の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る測定装置の校正値記憶部の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る指示値のパターンの一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る目付量測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る測定装置および測定方法を、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、実施形態に係る目付量測定システムの構成および処理、測定装置等の構成および処理、各処理の流れを順に説明し、最後に実施形態の効果を説明する。
【0013】
〔1.目付量測定システム100の構成および処理〕
図2を用いて、実施形態に係る目付量測定システム100の構成および処理を詳細に説明する。
図2は、実施形態に係る目付量測定システム100の構成例および処理例を示す図である。以下では、目付量測定システム100全体の構成例、目付量測定システム100の処理例、目付量測定システム100の効果について説明する。なお、実施形態では、オンラインで電極シートSの目付量や厚さを測定する測定装置10を一例にして説明するが、線源、光源、熱源等の発生源(ソース)が変動する装置、測定対象物を測定の空白なく測定する装置、当該装置を制御する装置等で適用可能であり、測定対象や利用分野を限定するものではない。
【0014】
(1-1.目付量測定システム100全体の構成例)
目付量測定システム100は、測定装置10、検出器20および作業員Wが使用する電子天秤30を有する。ここで、測定装置10と検出器20と電子天秤30とは、図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。
【0015】
検出器20は、X線源と測定ヘッドによって構成され、電極シートSの移動方向に直交し、かつ電極シートSに沿って、電極シートSおよび試料台Hを往復走査するように配置される。ここで、電極シートSは、生産ラインごとに連続したシートとして、一定方向に送出される。また、試料台Hは、後述する基準サンプルPを設置可能な台であって、検出器20が往復走査する際の折返し位置のうち、電子天秤30の配置位置に近いF側折返し位置に配置される。
【0016】
なお、
図2に示した目付量測定システム100には、複数台の測定装置10、複数台の検出器20、複数台の電子天秤30または複数の試料台Hが含まれてもよい。また、試料台Hは、電子天秤30の配置位置から遠いB側折返し位置に配置されてもよいし、F側折返し位置およびB側折返し位置の双方に配置されてもよい。また、
図1の例では、測定装置10がデスクトップPC(Personal Computer)によって実現される場合を示したが、サーバ装置やクラウドシステム等により実現されてもよい。
【0017】
(1-2.目付量測定システム100の処理例)
上記のような目付量測定システム100の処理例について説明する。以下では、基準値取得処理、測定値取得処理、指示値算出処理、指示値校正処理、アラーム通知処理の順に説明する。なお、下記の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0018】
(1-2-1.基準値取得処理)
作業員Wは、測定対象物である電極シートSの一部を面積既知の基準サンプルPとしてポンチ抜きし(
図2(1)参照)、電子天秤30を用いて基準サンプルPの正確な重量を測定し(
図2(2)参照)、基準サンプルPを試料台Hに設置する(
図2(3)参照)。電子天秤30は、測定した基準サンプルPの重量〔g〕を基準値として測定装置10に送信する(
図2(4)参照)。このとき、電子天秤30は、基準値として、基準サンプルPの重量を面積で除算して求めた目付量〔g/m
2〕や、目付量に電極シートSの密度〔g/m
3〕を乗算して求めた厚さ〔μm〕を測定装置10に送信してもよい。また、作業員Wは、電子天秤30を用いて測定した基準サンプルPの重量〔g〕、算出した目付量〔g/m
2〕や厚さ〔μm〕を測定装置10に入力してもよい。
【0019】
ここで、測定対象物は、電極シートS等の金属箔に限定されず、紙やプラスチックフィルム等のシート状の対象物であってもよい。
【0020】
(1-2-2.測定値取得処理)
検出器20は、移動する電極シートSを往復走査する(
図2(5)参照)。このとき、検出器20は、電極シートSのX線透過強度を測定するとともに、F側折返し位置に設置された試料台H上の基準サンプルPのX線透過強度を測定する。また、検出器20は、B側折返し位置において空気のX線透過強度を測定してもよい。そして、検出器20は、測定した電極シートS、基準サンプルPおよび空気のX線透過強度のセンサ電圧値を測定値として測定装置10に送信する(
図2(6)参照)。
【0021】
(1-2-3.指示値算出処理)
測定装置10は、基準値および測定値を用いて目付量を指示値として算出する(
図2(7)参照)。このとき、測定装置10は、基準値として、基準サンプルPの重量を面積で除算して求めた目付量〔g/m
2〕と、測定値として、電極シートS、基準サンプルPおよび空気のセンサ電圧値とを用いて、電極シートSの目付量〔g/m
2〕を測定時刻ごとに算出する。また、測定装置10は、算出した電極シートSの目付量〔g/m
2〕を電極シートSの密度〔g/m
3〕を乗算することによって厚さ〔μm〕を指示値として算出してもよい。ここで、指示値とは、基準値および測定値を用いて算出される、測定対象物の重量または厚さに関する値であって、目付量や厚さに限定されない。
【0022】
(1-2-4.指示値校正処理)
測定装置10は、基準サンプルPの測定値の時系列的変動に基づいて目付量を校正する(
図2(8)参照)。このとき、測定装置10は、基準サンプルPの測定値の時系列的変動に基づいて、X線源の線量低下、塗工液の付着や塗工材剥離ごみによる測定窓面の汚れ、検出器20の感度低下、突発的な不具合(例:X線源と検出器20の同期崩れ)等の各種の異常を特定し、特定した異常に応じて目付量変換の係数を補正することによって、目付量や厚さ等の指示値を校正する。
【0023】
(1-2-5.アラーム通知処理)
測定装置10は、測定値が所定の閾値を超過した場合には、作業員Wにアラームを通知する(
図2(9)参照)。このとき、測定装置10は、特定したX線源の線量低下、測定窓面の汚れ、検出器20の感度低下、突発的な不具合等の各種の異常ごとに設定した閾値を測定値が超過した場合、特定した異常に応じたアラーム通知を作業員Wの使用する端末装置に送信する。
【0024】
(1-3.目付量測定システム100の効果)
以下では、参考技術1および参考技術2の問題点を説明した上で、目付量測定システム100の効果について説明する。
【0025】
(1-3-1.参考技術1の概要)
特許文献1に記載される参考技術1では、測定対象物と同一の材質で厚さが異なる校正板を測定対象物の脇に配置し、参考技術1に係る測定装置は、測定対象物のX線透過強度を測定し、測定対象物を測定した測定系を用いて厚さ違いの複数サンプルである校正板のX線透過強度を測定し、校正板の測定値に基づいて、X線透過強度と校正板の厚さや目付量との関係から、測定対象物の厚さを求める。なお、参考技術1では、校正板を測定対象物の脇に配置した測定が提案されているが、厚さ測定において目付量が既知の校正板を複数用いて検量線を作成し、X線透過強度と校正板の厚さや目付量との関係を事前に求めて保持し、測定対象物の厚さや目付量を算出することは一般的である。
【0026】
(1-3-2.参考技術1の問題点)
参考技術1では、複数の校正板を用いる必要があり、複数同時に配置するか、もしくは作業員が校正板を順次入れ替えて測定しなければならない。ここで、複数同時に配置する場合では、ラインカメラのサイズが大きくなることや、X線源が広角に照射しなければならないことから、線源を離して配置する等の装置大型化の問題が生じる。一方、作業員が校正板を順次入れ替えて測定する場合では、都度手間がかかることから、短い周期での校正は実質的に行えないという問題が生じる。
【0027】
(1-3-3.参考技術2の概要)
生産現場で実施される参考技術2では、測定対象物の検定は、電極シートに限らず、紙、フィルム等いずれの場合も、面積が既知のポンチ(φ50mmが一般的)で打ち抜いて、電子天秤で重量を測定し、面積で除算して目付量〔g/m2〕を求める。また、参考技術2では、指示値として厚さを求める場合は、オフライン厚さ測定装置等で正確に打ち抜いた基準サンプルの厚さを測定し、密度〔g/m3〕を乗算して目付量〔g/m2〕から厚さ〔μm〕に換算が行われる。このとき、生産現場では、リール単位で目付量や厚さが管理されるので、作業員は、リール巻き初め(始端)の基準サンプルの重量を測定し、必要に応じてリール終端でも基準サンプルの重量を測定する。また、作業員は、数kmに及ぶ中間の基準サンプルの採取は行わず、オンライン厚さ測定装置の測定値を信用して、製品の査証とする。
【0028】
(1-3-4.参考技術2の問題点)
参考技術2では、リールごとに基準サンプルを作成し、電子天秤で重量を測定し、検定結果に基づいて検量線補正等を行う必要があるので、省力化の妨げになっているという問題点がある。
【0029】
(1-3-5.目付量測定システム100の概要)
目付量測定システム100では、作業員Wは、電極シートSのリール巻き初め(始端)をポンチを用いて複数枚の基準サンプルPを採取し、電子天秤30を用いて基準サンプルPの正確な重量を測定し、ポンチ面積で除算して目付量を求め、測定が終わった基準サンプルPを試料台Hに設置し、設置した基準サンプルPの目付量を測定装置10に入力して、目付量の算出の基準となる基準サンプルPの目付量を保持させる。
【0030】
すなわち、目付量測定システム100では、作業員Wが打ち抜いた基準サンプルPの重量を電子天秤30で測定して、検定後の基準サンプルPを廃棄することなく、測定装置10に入力できるような構成とする。さらに、目付量測定システム100では、往復走査距離を基準サンプルPの設置位置に届くまで延長して一貫して測定することで、往復走査ごとに基準サンプルPも一緒に測定できるようにする。
【0031】
また、目付量測定システム100では、測定装置10は、基準サンプルPの目付量、検出器20によって測定された電極シートSおよび基準サンプルPのセンサ電圧値を用いて電極シートSの目付量を算出し、基準サンプルPのセンサ電圧値の時系列的変動に基づいて目付量を校正し、電極シートSのセンサ電圧値が所定の閾値を超過した場合には、作業員Wにアラームを通知する。
【0032】
(1-3-6.目付量測定システム100の効果)
目付量測定システム100では、毎回測定ルーチン内に校正を介在させることができる。すなわち、目付量測定システム100では、測定モード、校正モードの遷移を伴わず、常時空白のない測定が可能となる。また、目付量測定システム100では、装置を大型化することなく、短い周期での校正を可能とする。また、目付量測定システム100では、検量線補正等の省力化の実現を可能とする。
【0033】
上述してきたように、目付量測定システム100では、効果的に測定値を校正することができる。
【0034】
〔2.目付量測定システム100の各装置の構成〕
図3を用いて、
図2に示した目付量測定システム100が有する各装置の機能構成について説明する。
図3は、実施形態に係る目付量測定システム100の各装置の構成例を示すブロック図である。以下では、実施形態に係る目付量測定システム100全体の構成例を説明した上で、実施形態に係る測定装置10、検出器20および電子天秤30の構成例について詳細に説明する。
【0035】
(2-1.目付量測定システム100全体の構成例)
図3に示すように、目付量測定システム100は、測定装置10、検出器20および電子天秤30を有する。測定装置10は、検出器20および電子天秤30と、所定の通信網によって通信可能に接続されている。
【0036】
(2-2.測定装置10の構成例)
まず、
図3を用いて、測定装置10の構成例について説明する。測定装置10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。
【0037】
(2-2-1.入力部11)
入力部11は、当該測定装置10への各種情報の入力を司る。例えば、入力部11は、マウスやキーボード等で実現され、当該測定装置10への設定情報等の入力を受け付ける。
【0038】
(2-2-2.出力部12)
出力部12は、当該測定装置10からの各種情報の出力を司る。例えば、出力部12は、ディスプレイ等で実現され、当該測定装置10に記憶された設定情報等を表示する。
【0039】
(2-2-3.通信部13)
通信部13は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部13は、ルータ等を介して、各通信装置との間でデータ通信を行う。また、通信部13は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0040】
(2-2-4.記憶部14)
記憶部14は、制御部15が動作する際に参照する各種情報や、制御部15が動作した際に取得した各種情報を記憶する。記憶部14は、測定値記憶部14a、基準値記憶部14b、算出値記憶部14cおよび校正値記憶部14dを有する。ここで、記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、
図3の例では、記憶部14は、測定装置10の内部に設置されているが、測定装置10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0041】
(2-2-4-1.測定値記憶部14a)
測定値記憶部14aは、検出器20によって測定された測定値を記憶する。ここで、
図4を用いて、測定値記憶部14aが記憶するデータの一例を説明する。
図4は、実施形態に係る測定装置10の測定値記憶部14aの一例を示す図である。
図4の例において、測定値記憶部14aは、「生産ライン」、「時間」、「センサ電圧値」といった項目を有する。
【0042】
「生産ライン」は、測定対象である測定対象物を生産する工程を識別するための識別情報を示し、例えば電極シートSの識別番号や識別記号である。「時間」は、測定値が測定された時刻を示し、例えば年月日、時分秒で表わされる。「センサ電圧値」は、測定対象物の測定値である検出強度の変換値を示し、例えばボルトVで表わされる。
【0043】
すなわち、
図4では、「L001」によって識別される生産ラインについて、測定値が{時間:「T001」,センサ電圧値:「V001」}、{時間:「T002」,センサ電圧値:「V002」}、{時間:「T003」,センサ電圧値:「V003」}、{時間:「T004」,センサ電圧値:「V004」}、{時間:「T005」,センサ電圧値:「V005」}、・・・である例を示す。
【0044】
(2-2-4-2.基準値記憶部14b)
基準値記憶部14bは、電子天秤30によって測定された基準値を記憶する。ここで、
図5を用いて、基準値記憶部14bが記憶するデータの一例を説明する。
図5は、実施形態に係る測定装置10の基準値記憶部14bの一例を示す図である。
図5の例において、基準値記憶部14bは、「生産ライン」、「基準サンプル」、「目付量(測定値)」といった項目を有する。
【0045】
「生産ライン」は、測定対象である測定対象物を生産する工程を識別するための識別情報を示し、例えば電極シートSの識別番号や識別記号である。「基準サンプル」は、測定対象物から採取された基準試料を識別するための識別情報を示し、例えば基準サンプルPの識別番号や識別記号である。「目付量(測定値)」は、基準試料ごとの重量を面積で除算することによって算出された単位面積当たりの重量を示し、例えば平方メートル毎グラムg/m2で表わされる。
【0046】
すなわち、
図5では、「L001」によって識別される生産ラインについて、基準値が{基準サンプル:「PA」,目付量(測定値):「PA-W」}、{基準サンプル:「PB」,目付量(測定値):「PB-W」}、{基準サンプル:「PC」,目付量(測定値):「PC-W」}、・・・である例を示す。
【0047】
(2-2-4-3.算出値記憶部14c)
算出値記憶部14cは、後述する制御部15の算出部15bによって算出された指示値を記憶する。ここで、
図6を用いて、算出値記憶部14cが記憶するデータの一例を説明する。
図6は、実施形態に係る測定装置10の算出値記憶部14cの一例を示す図である。
図6の例において、算出値記憶部14cは、「生産ライン」、「時間」、「目付量(算出値)」、「厚さ(算出値)」といった項目を有する。
【0048】
「生産ライン」は、測定対象である測定対象物を生産する工程を識別するための識別情報を示し、例えば電極シートSの識別番号や識別記号である。「時間」は、測定値が測定された時刻を示し、例えば年月日、時分秒で表わされる。「目付量(算出値)」は、測定対象物の測定値から算出された単位面積当たりの重量を示し、例えば平方メートル毎グラムg/m2で表わされる。「厚さ(算出値)」は、測定対象物の測定値から算出された測定対象物の厚さを示し、例えばマイクロメートルμmで表わされる。
【0049】
すなわち、
図6では、「L001」によって識別される生産ラインについて、算出された指示値が{時間:「T001」,目付量(算出値):「V-W001」,厚さ(算出値):「V-T001」}、{時間:「T002」,目付量(算出値):「V-W002」,厚さ(算出値):「V-T002」}、{{時間:「T003」,目付量(算出値):「V-W003」,厚さ(算出値):「V-T003」}、{時間:「T004」,目付量(算出値):「V-W004」,厚さ(算出値):「V-T004」}、{時間:「T005」,目付量(算出値):「V-W005」,厚さ(算出値):「V-T005」}、・・・である例を示す。
【0050】
(2-2-4-4.校正値記憶部14d)
校正値記憶部14dは、後述する制御部15の校正部15cによって校正された指示値を記憶する。ここで、
図7を用いて、校正値記憶部14dが記憶するデータの一例を説明する。
図7は、実施形態に係る測定装置10の校正値記憶部14dの一例を示す図である。
図7の例において、校正値記憶部14dは、「生産ライン」、「時間」、「目付量(校正値)」、「厚さ(校正値)」といった項目を有する。
【0051】
「生産ライン」は、測定対象である測定対象物を生産する工程を識別するための識別情報を示し、例えば電極シートSの識別番号や識別記号である。「時間」は、測定値が測定された時刻を示し、例えば年月日、時分秒で表わされる。「目付量(校正値)」は、測定対象物の算出された指示値が校正された単位面積当たりの重量を示し、例えば平方メートル毎グラムg/m2で表わされる。「厚さ(校正値)」は、測定対象物の算出された指示値が校正された測定対象物の厚さを示し、例えばマイクロメートルμmで表わされる。
【0052】
すなわち、
図7では、「L001」によって識別される生産ラインについて、算出された指示値が{時間:「T001」,目付量(校正値):「C-W001」,厚さ(校正値):「C-T001」}、{時間:「T002」,目付量(校正値):「C-W002」,厚さ(校正値):「C-T002」}、{{時間:「T003」,目付量(校正値):「C-W003」,厚さ(校正値):「C-T003」}、{時間:「T004」,目付量(校正値):「C-W004」,厚さ(校正値):「C-T004」}、{時間:「T005」,目付量(校正値):「C-W005」,厚さ(校正値):「C-T005」}、・・・である例を示す。
【0053】
(2-2-5.制御部15)
制御部15は、当該測定装置10全体の制御を司る。制御部15は、取得部15a、算出部15b、校正部15cおよび通知部15dを有する。ここで、制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0054】
(2-2-5-1.取得部15a)
取得部15aは、各種データを取得する。以下では、測定値取得処理、基準値取得処理の順に説明する。
【0055】
(測定値取得処理)
第1に、取得部15aは、測定対象物の照射対象の透過情報(第1の透過情報)を示す対象測定値、基準試料の照射対象の透過情報(第2の透過情報)を示す基準測定値、および空気の照射対象の透過情報(第3の透過情報)を示す空気測定値を取得する。例えば、取得部15aは、所定の照射対象を照射して所定の照射対象の透過情報を検出する検出器20を測定対象物である電極シートSに走査させて第1の透過情報を取得するとともに、電極シートSから生成された基準試料である基準サンプルPに検出器20を走査させて第2の透過情報を取得する。
【0056】
なお、取得部15aは、取得した対象測定値、基準測定値および空気測定値を含む測定値を測定値記憶部14aに格納する。このとき、取得部15aは、対象測定値、基準測定値および空気測定値を取得した時間を対応付けした測定値を測定値記憶部14aに格納する。また、透過情報は、照射対象の透過強度の他、照射対象の透過減衰量等であってもよい。
【0057】
取得部15aは、対象測定値として、電極シートSを透過するβ線やX線等の放射線の透過強度(第1の透過強度)を取得する。また、取得部15aは、基準測定値として、基準サンプルPを透過するβ線やX線等の放射線の透過強度(第2の透過強度)を取得する。
【0058】
取得部15aは、シート状の電極シートSが送出される方向に対して直交する方向に電極シートSに沿って往復走査する検出器20によって測定された対象測定値を取得する。また、取得部15aは、検出器20が往復走査する際の折返し位置に設置された少なくとも1つの基準サンプルPから、検出器20によって測定された基準測定値を取得する。さらに、取得部15aは、折返し位置において空気に検出器を走査させて電極シートSおよび基準サンプルPが存在しない際の空気測定値をさらに取得する。
【0059】
具体的な例について説明すると、取得部15aは、「L001」によって識別される生産ラインについて、検出器20によって測定されたX線透過強度のセンサ電圧値である測定値が{時間:「T001」,センサ電圧値:「V001」,基準測定値}、{時間:「T002」,センサ電圧値:「V002」,対象測定値}、{時間:「T003」,センサ電圧値:「V003」,対象測定値}、{時間:「T004」,センサ電圧値:「V004」,対象測定値}、{時間:「T005」,センサ電圧値:「V005」,空気測定値}、・・・を取得する。
【0060】
(基準値取得処理)
第2に、取得部15aは、基準値を取得する。例えば、取得部15aは、基準試料である基準サンプルPの重量または厚さに関する基準値を取得する。このとき、取得部15aは、基準値として、測定対象物である電極シートSの一部として採取された基準サンプルPの重量を取得する。なお、取得部15aは、取得した基準値を基準値記憶部14bに格納する。
【0061】
具体的な例について説明すると、取得部15aは、電子天秤30を用いて作業員Wによって測定された複数の基準サンプルP(PA、PB、PC)の重量として、{基準サンプル:「PA」,重量(測定値):「PA-M」}、{基準サンプル:「PB」,重量(測定値):「PB-M」}、{基準サンプル:「PC」,重量(測定値):「PC-M」}を取得する。また、取得部15aは、複数の基準サンプルP(PA、PB、PC)の重量から算出された目付量として、{基準サンプル:「PA」,目付量(測定値):「PA-W」}、{基準サンプル:「PB」,目付量(測定値):「PB-W」}、{基準サンプル:「PC」,目付量(測定値):「PC-W」}を取得する。また、取得部15aは、複数の基準サンプルP(PA、PB、PC)の重量から算出された厚さとして、{基準サンプル:「PA」,厚さ(測定値):「PA-T」}、{基準サンプル:「PB」,厚さ(測定値):「PB-T」}、{基準サンプル:「PC」,厚さ(測定値):「PC-T」}を取得する。
【0062】
(2-2-5-2.算出部15b)
算出部15bは、指示値を算出する。例えば、算出部15bは、基準試料である基準サンプルPの重量または厚さに関する基準値と基準測定値(第2の透過情報)との相関性を用いて、対象測定値(第1の透過情報)から測定対象物である電極シートSの重量または厚さに関する値である指示値を算出する。ここで、指示値とは、測定対象物である電極シートSの重量または厚さを示す数値であって、算出部15bの処理によって出力される数値である。例えば、指示値は、電極シートSの目付量や厚さであるが、特に限定されない。なお、算出部15bは、算出した指示値である算出値を算出値記憶部14cに格納する。
【0063】
算出する指示値について説明すると、算出部15bは、基準サンプルPの重量から算出した基準サンプルPの目付量と基準サンプルPを透過する放射線の透過強度(第2の透過強度)との相関性を示す検量線を用いて、電極シートSを透過する放射線の透過強度(第1の透過強度)から電極シートSの目付量または厚さを算出する。
【0064】
検量線の例について説明すると、算出部15bは、F側折返し位置に設置された基準サンプルPAの目付量「PA-W」および基準測定値「V001」、B側折返し位置の空気の目付量(0g/m2)および空気測定値「V005」より、基準サンプルPの基準測定値および空気測定値を2点用いた検量線を作成する。また、算出部15bは、F側折返し位置に設置された基準サンプルPAの目付量「PA-W」および基準測定値「V001」、B側折返し位置に設置された基準サンプルPBの目付量「PB-W」および基準測定値「V005」より、基準サンプルPAの基準測定値および基準サンプルPBの基準測定値を2点用いた検量線を作成してもよい。
【0065】
(算出値パターン)
図8を用いて、算出部15bによって算出される指示値の時系列的なパターンについて説明する。実施形態に係る指示値のパターンの一例を示す図である。
【0066】
図8の例では、検出器20の往復走査ごとのセンサ電圧値から算出される指示値の模式図を示す。ここで、
図8のグラフにおいて、横軸は時間経過、縦軸は目付量もしくは厚さを示す。
図8に示すように、検出器20が1往復走査するたびに、波形のパターンが現れる。B折返し位置では、空気を測定するので、指示値はゼロ付近を示す。一方、F折返し位置では、試料台Hと基準サンプルPを測定するので、試料台Hを測定した高い指示値(破線円の左右)と基準サンプルPを測定した指示値(破線円の中央)が現れる。
【0067】
上記の時系列的なパターンによって説明されるように、算出部15bは、1往復ごとに基準サンプルPの指示値と電極シートSの指示値を同時に算出できる。すなわち、上記の算出部15bに処理によって、電極シートSの測定モードと校正モードとを切り替える必要がない「常時測定」を実現し、検出器20の健全性のモニタリングを可能とし、定時校正を不要とする。
【0068】
(2-2-5-3.校正部15c)
校正部15cは、指示値を校正する。例えば、校正部15cは、基準測定値(第2の透過情報)の時系列的な変動に基づいて、指示値を校正する。また、校正部15cは、空気測定値(第3の透過情報)の時系列的な変動に基づいて、指示値を校正する。以下では、校正処理の重要性について説明した上で、線量低下校正処理、窓面汚れ校正処理、感度低下校正処理、突発性異常校正処理の順に説明する。なお、校正部15cは、校正した指示値である校正値を校正値記憶部14dに格納する。
【0069】
(校正処理の重要性)
上述した参考技術等に係るオンライン測定器は、定期的に測定モードから校正モードに移行して、測定対象のない場所に移動してゼロ点校正(空気校正)をしたり、基準サンプルP(既知の値を持ち、不変な基準サンプル)を測定したりする。また、上述した参考技術等に係るオンライン測定器は、上記の測定モードおよび校正モードの2つの処理を順次実行しているが、校正と校正の間、例えば1時間ごとに校正モードに移行することを想定すると、校正直後に窓面汚れ等が発生すると、59分間間違った測定値を返すことになる。ここで、上記のオンライン測定器が測定値をモニタリングしているだけであれば問題は少ないが、制御に使われる測定値であった場合は不良品を製造し続けることとなる。実施形態に係る測定装置10は、ただちに異常を自律的に検出する校正処理を実行可能であるので、制御に用いられるオンライン測定器として非常に価値が高い。
【0070】
また、上述した参考技術等に係るオンライン測定器は、校正モードに移行中は測定値を取得できないので測定の空白が生まれる。一方、実施形態に係る測定装置10は、空白時間を作らず、常に電極シートSの測定を継続して行うことができる。
【0071】
(線量低下校正処理)
校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて線量低下を特定し、指示値を校正する。例えば、校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて検出対象の発生量の低下を特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。
【0072】
ここで、校正部15cは、ソース変動(線源22の崩壊、X線変動)に起因する線源22の線量低下に関しては、半減期等を用いて統計的に正確に予測できるので、逆演算して目付量変換の係数を時系列に補正することが可能である。
【0073】
(窓面汚れ校正処理)
校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて窓面汚れを特定し、指示値を校正する。例えば、校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて検出器20の測定窓面の汚れを特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。
【0074】
ここで、校正部15cは、塗工液の付着や塗工材剥離ごみに起因する検出器20の測定窓面の汚れに関しては、一定の閾値を設定し、汚れがあり測定値が重くなった場合には、逆演算して目付量変換の係数を一時的に補正して、測定処理の継続が可能である。
【0075】
(感度低下校正処理)
校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて感度低下を特定し、指示値を校正する。例えば、校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて検出器の感度の低下を特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。
【0076】
ここで、校正部15cは、検出器20の感度低下に関しては、線量低下のように長期視点で変化するが、線量は統計的な演算により正確に求められるので、それ以上の指示値低下や、指示値の変動、S/Nの悪化等により、検出器20の劣化を特定することが出来る。
【0077】
(突発性異常校正処理)
校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて突発性異常を特定し、指示値を校正する。例えば、校正部15cは、基準測定値の時系列的な変動に基づいて線源22等の照射対象の発生源と検出器20との同期または位置関係に関する異常を特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。
【0078】
ここで、校正部15cは、同期崩れや位置崩れ等に起因する突発的な不具合に関しては、放射線源等の照射対象の発生源と測定ヘッドについて、同期する処理のタイミングや正確な位置関係が崩れることで検出器20への線量入射が減少することになるので、目付量が大きくなったように測定値が現れるが、動きや周期変動も伴うことから、窓面汚れとは異なる駆動系の不具合として特定することができる。
【0079】
(2-2-5-4.通知部15d)
通知部15dは、対象測定値(第2の透過情報)が所定値を超過した場合に、基準測定値(第2の透過情報)の時系列的な変動に基づいて特定された異常に対応するアラームを通知する。例えば、通知部15dは、校正部15cによって特定された異常として、検出対象の発生量の低下(線量低下)、検出器20の測定窓面の汚れ(窓面汚れ)、検出器20の感度の低下(感度低下)、および発生源と検出器との同期または位置関係に関する異常(突発性異常)等に対応するアラームを作業員Wの端末装置に通知する。
【0080】
具体的な例について説明すると、通知部15dは、校正部15cが線量低下の異常を特定した場合には、「X線源の線量が低下しています。X線源のメインテナンスをしてください。」等のアラームを作業員Wに通知する。また、通知部15dは、校正部15cが窓面汚れの異常を特定した場合には、「検出器の窓面が汚れています。塗工液の付着や塗工材剥離ごみがある場合には、清掃作業をしてください。」等のアラームを作業員Wに通知する。また、通知部15dは、校正部15cが感度低下の異常を特定した場合には、「検出器が劣化している可能性があります。検出器の修理または交換をしてください。」等のアラームを作業員Wに通知する。また、通知部15dは、校正部15cが突発性異常を特定した場合には、「検出器の同期崩れまたは位置崩れが発生している可能性があります。検出器またはX線源のメインテナンスをしてください。」等のアラームを作業員Wに通知する。
【0081】
(2-3.検出器20の構成例)
図3を用いて、検出器20の構成例について説明する。検出器20は、測定部21および線源22を有する。
【0082】
(2-3-1.測定部21)
測定部21は、当該検出器20の各種情報の測定を司る。例えば、測定部21は、センサ等を有する測定ヘッドで実現され、照射対象の透過強度を測定する。
【0083】
(2-3-2.線源22)
線源22は、所定の発生源(ソース)であって、測定部21が検出可能な照射対象を発生する。例えば、線源22は、放射線の発生源であって、β線やX線を発生する。また、線源22は、所定の波長の光を発生する光源であってもよいし、所定の温度の熱を発生する熱源であってもよい。
【0084】
(2-4.電子天秤30の構成例)
図3を用いて、電子天秤30の構成例について説明する。電子天秤30は、測定部21を有する。
【0085】
(2-4-1.測定部31)
測定部31は、当該電子天秤30の各種情報の測定を司る。例えば、測定部31は、計量皿や表示モニタで実現され、計量皿に置かれた基準サンプルPの重量を測定し、測定した重量を表示モニタに表示する。このとき、測定部31は、測定した基準サンプルPの重量を測定装置10に送信してもよい。
【0086】
〔3.目付量測定システム100の処理の流れ〕
図9を用いて、実施形態に係る目付量測定システム100の処理の流れについて説明する。
図9は、実施形態に係る目付量測定処理の流れを示すフローチャートである。以下では、基準値取得処理、測定値取得処理、指示値算出処理、指示値校正処理、アラーム通知処理の順に説明する。なお、下記のステップS101~S106の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101~S106の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0087】
(3-1.基準値取得処理)
第1に、測定装置10は、基準値取得処理を実行する(ステップS101)。例えば、測定装置10は、電子天秤30によって測定された基準サンプルPの重量を基準値として取得する。
【0088】
(3-2.測定値取得処理)
第2に、測定装置10は、測定値取得処理を実行する(ステップS102)。例えば、測定装置10は、検出器20によって測定された、電極シートS、基準サンプルPおよび空気のX線透過強度のセンサ電圧値を測定値として取得する。
【0089】
(3-3.指示値算出処理)
第3に、測定装置10は、指示値算出処理を実行する(ステップS103)。例えば、測定装置10は、基準サンプルPの重量を面積で除算して求めた目付量〔g/m2〕や、電極シートS、基準サンプルPおよび空気のセンサ電圧値を用いて、電極シートSの目付量〔g/m2〕や厚さ〔μm〕を測定時刻ごとに算出する。
【0090】
(3-4.指示値校正処理)
第4に、測定装置10は、指示値算出処理を実行する(ステップS104)。例えば、測定装置10は、基準サンプルPの測定値の時系列的変動に基づいて、X線源の線量低下、測定窓面の汚れ、検出器20の感度低下、突発的な不具合等の各種の異常を特定し、特定した異常に応じて目付量変換の係数を補正することによって、目付量や厚さ等の指示値を校正する。
【0091】
(3-5.指示値校正処理)
第5に、測定装置10は、閾値超過を検出した場合(ステップS105:Yes)、アラーム通知処理を実行する(ステップS106)。例えば、測定装置10は、特定したX線源の線量低下、測定窓面の汚れ、検出器20の感度低下、突発的な不具合等の各種の異常ごとに設定した閾値を測定値が超過した場合、特定した異常に応じたアラーム通知を作業員Wの使用する端末装置に送信する。
【0092】
〔4.実施形態の効果〕
最後に、実施形態の効果について説明する。以下では、実施形態に係る処理に対応する効果1~9について説明する。
【0093】
(4-1.効果1)
第1に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、β線やX線等の放射線を照射して透過強度を検出する検出器20を電極シートSに走査させて電極シートSの放射線透過強度を取得するとともに、電極シートSから生成された基準サンプルPに検出器20を走査させて基準サンプルPの放射線透過強度を取得し、基準サンプルPの重量または厚さに関する基準値と基準サンプルPの放射線透過強度との相関性を用いて、電極シートSの放射線透過強度から電極シートSの重量または厚さに関する指示値を算出し、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて、算出した指示値を校正する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、効果的に測定値を校正することができる。
【0094】
(4-2.効果2)
第2に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、基準サンプルPの放射線透過強度が所定値を超過した場合に、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて特定された異常に対応するアラームを通知する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、効果的に測定値を校正するとともに、適切に異常に対応することができる。
【0095】
(4-3.効果3)
第3に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、電極シートSの一部として採取された基準サンプルPの重量を取得し、電極シートSの放射線透過強度を取得し、基準サンプルPの放射線透過強度を取得し、基準サンプルPの重量から算出した基準サンプルPの目付量と基準サンプルPの放射線透過強度との相関性を示す検量線を用いて、電極シートSの放射線透過強度から電極シートSの目付量または厚さを算出する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、測定の空白時間が生じることなく、効果的に測定値を校正することができる。
【0096】
(4-4.効果4)
第4に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、シート状の電極シートSが送出される方向に対して直交する方向に電極シートSに沿って往復走査する検出器20によって検出された電極シートSの放射線透過強度を取得し、検出器20が往復走査する際の折返し位置に設置された少なくとも1つの基準サンプルPから、検出器20によって検出された基準サンプルPの放射線透過強度を取得する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いたシート状の測定対象の目付量測定において、効果的に測定値を校正することができる。
【0097】
(4-5.効果5)
第5に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、折返し位置において空気に検出器20を走査させて電極シートSおよび基準サンプルPが存在しない際の空気の放射線透過強度をさらに取得し、空気の放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて、指示値を校正する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、ゼロ点校正を実行しつつ、効果的に測定値を校正することができる。
【0098】
(4-6.効果6)
第6に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて放射線の照射量の低下を特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、線源低下による異常を特定し、効果的に測定値を校正することができる。
【0099】
(4-7.効果7)
第7に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて検出器20の測定窓面の汚れを特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、測定窓面汚れによる異常を特定し、効果的に測定値を校正することができる。
【0100】
(4-8.効果8)
第8に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて検出器20の感度の低下を特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、感度低下による異常を特定し、効果的に測定値を校正することができる。
【0101】
(4-9.効果9)
第9に、上述した実施形態に係る処理では、測定装置10は、基準サンプルPの放射線透過強度の時系列的な変動に基づいて放射線の放射線源と検出器20との同期または位置関係に関する異常を特定し、指示値を算出する際に用いる係数を補正することによって、指示値を校正する。このため、本処理では、β線やX線等の放射線を用いた目付量測定において、突発的な不具合を特定し、効果的に測定値を校正することができる。
【0102】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0103】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0104】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0105】
〔ハードウェア〕
次に、情報処理装置である測定装置10のハードウェア構成例を説明する。なお、その他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。
図10は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図10に示すように、測定装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、
図10に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0106】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、
図3に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0107】
プロセッサ10dは、
図3に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、
図3等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、測定装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、取得部15a、算出部15b、校正部15c、通知部15d等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、取得部15a、算出部15b、校正部15c、通知部15d等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0108】
このように、測定装置10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、測定装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、測定装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0109】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0110】
〔その他〕
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0111】
(1)所定の照射対象を照射して前記所定の照射対象の透過情報を検出する検出器を測定対象物に走査させて第1の透過情報を取得するとともに、前記測定対象物から生成された基準試料に前記検出器を走査させて第2の透過情報を取得する取得部と、前記基準試料の重量または厚さに関する基準値と前記第2の透過情報との相関性を用いて、前記第1の透過情報から前記測定対象物の重量または厚さに関する値を算出する算出部と、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する校正部と、を備える測定装置。
【0112】
(2)前記第1の透過情報が所定値を超過した場合に、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて特定された異常に対応するアラームを通知する通知部、
をさらに備える(1)に記載の測定装置。
【0113】
(3)前記取得部は、前記基準値として、前記測定対象物の一部として採取された前記基準試料の重量を取得し、前記第1の透過情報として、前記測定対象物を透過する放射線の第1の透過強度を取得し、前記第2の透過情報として、前記基準試料を透過する前記放射線の第2の透過強度を取得し、前記算出部は、前記基準試料の重量から算出した前記基準試料の目付量と前記第2の透過強度との前記相関性を示す検量線を用いて、前記第1の透過強度から前記測定対象物の目付量または厚さを算出する、(1)または(2)に記載の測定装置。
【0114】
(4)前記取得部は、シート状の前記測定対象物が送出される方向に対して直交する方向に前記測定対象物に沿って往復走査する前記検出器によって検出された前記第1の透過情報を取得し、前記検出器が往復走査する際の折返し位置に設置された少なくとも1つの前記基準試料から、前記検出器によって検出された前記第2の透過情報を取得する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の測定装置。
【0115】
(5)前記取得部は、前記折返し位置において空気に前記検出器を走査させて前記測定対象物および前記基準試料が存在しない際の第3の透過情報をさらに取得し、前記第3の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する、(4)に記載の測定装置。
【0116】
(6)前記校正部は、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて前記照射対象の照射量の低下を特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、(1)~(5)のいずれか1つに記載の測定装置。
【0117】
(7)前記校正部は、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて前記検出器の測定窓面の汚れを特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、(1)~(6)のいずれか1つに記載の測定装置。
【0118】
(8)前記校正部は、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて検出器の感度の低下を特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、(1)~(7)のいずれか1つに記載の測定装置。
【0119】
(9)前記校正部は、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて前記照射対象の発生源と検出器との同期または位置関係に関する異常を特定し、前記値を算出する際に用いる係数を補正することによって、前記値を校正する、(1)~(8)のいずれか1つに記載の測定装置。
【0120】
(10)コンピュータが、所定の照射対象を照射して前記所定の照射対象の透過情報を検出する検出器を測定対象物に走査させて第1の透過情報を取得するとともに、前記測定対象物から生成された基準試料に前記検出器を走査させて第2の透過情報を取得し、前記基準試料の重量または厚さに関する基準値と前記第2の透過情報との相関性を用いて、前記第1の透過情報から前記測定対象物の重量または厚さに関する値を算出し、前記第2の透過情報の時系列的な変動に基づいて、前記値を校正する、処理を実行する測定方法。
【符号の説明】
【0121】
10 測定装置
11 入力部
12 出力部
13 通信部
14 記憶部
14a 測定値記憶部
14b 基準値記憶部
14c 算出値記憶部
14d 校正値記憶部
15 制御部
15a 取得部
15b 算出部
15c 校正部
15d 通知部
20 検出器
21 測定部
22 線源
30 電子天秤
31 測定部
100 目付量測定システム