(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106570
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ポンプ装置およびポンプ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240801BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F04B49/06 311
F04B49/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010900
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸栄
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA23
3H145BA28
3H145BA30
3H145CA19
3H145DA07
3H145EA01
3H145EA16
3H145EA42
(57)【要約】
【課題】ポンプ制御に影響を与えず、無線通信を実現すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、計測部と、取得部と、判定部と、通信制御部とを含む。計測部は、ポンプの運転制御に関わるインバータおよびプロセッサに対してかかる、前記ポンプの停止条件となる負荷を計測する。取得部は、前記ポンプの運転情報を取得する。判定部は、前記負荷が第1閾値以下であるか否かを判定する。通信制御部は、前記負荷が前記第1閾値以下であると判定された場合、前記運転情報を外部に送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの運転制御に関わるインバータおよびプロセッサに対してかかる、前記ポンプの停止条件となる負荷を計測する計測部と、
前記ポンプの運転情報を取得する取得部と、
前記負荷が第1閾値以下であるか否かを判定する判定部と、
前記負荷が前記第1閾値以下であると判定された場合、前記運転情報を外部に送信する通信制御部と、
を具備するポンプ装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記負荷が前記第1閾値よりも高い場合、前記運転情報の送信を制限する、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記送信の制限中に送信されない運転情報を、前記負荷が前記第1閾値以下となった場合に外部に送信するための待機リストに追加する、請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記負荷は、前記インバータおよびプロセッサの少なくとも一方の温度である、請求項1または請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記温度が前記第1閾値よりも高い場合かつ前記ポンプが停止している場合、前記運転情報を外部に送信する、請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記運転情報は、複数のパラメータを含み、かつ各パラメータに情報の重要度が設定され、
前記通信制御部は、前記負荷が前記第1閾値よりも高い場合において、前記重要度が第2閾値以上であるパラメータに関する運転情報は、前記ポンプの運転よりも優先して外部に送信する、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項7】
ポンプの運転制御に関わるインバータおよびプロセッサに対してかかる、前記ポンプの停止条件となる負荷を計測し、
前記ポンプの運転情報を取得し、
前記負荷が第1閾値以下であるか否かを判定し、
前記負荷が前記第1閾値以下であると判定された場合、前記運転情報を外部に送信する、
ポンプ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの運転制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの運転情報を外部に無線通信するための無線通信機能を搭載したポンプ装置がある。ポンプ装置の種類によらず、運転情報を無線通信できることが望ましいが、ポンプ装置の電源容量が大きくないポンプ装置において、ポンプの制御電源と無線通信の電源とを共有した場合、無線通信が実行されることで制御電源の電圧が一時的に降下する可能性がある。そのため、ポンプ制御が不安定になりうるという問題がある。
【0003】
さらに、無線通信に使用する電力はポンプ制御に使用する電力に比べて大きく、電子部品の発熱量も大きい。よって、装置の小型化などの理由で放熱対策が不十分である場合、無線通信時の発熱により、ポンプ制御を実施するCPUにおいて温度異常と判定され、CPUの停止によりポンプが強制停止する可能性もある。よって、ポンプ制御を実施するCPUが温度異常で停止しないよう、例えばファンによりCPUを冷却する従来手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来手法では、無線通信を制限しているわけではないため、無線通信時間やデータ量などに応じて発熱量が増加すると、ポンプ制御を実施するCPUの冷却が間に合わず、温度異常によりポンプが停止する可能性がある。
【0006】
本発明は、ポンプ制御に影響を与えず、無線通信を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、計測部と、取得部と、判定部と、通信制御部とを含む。計測部は、ポンプの運転制御に関わるインバータおよびプロセッサに対してかかる、前記ポンプの停止条件となる負荷を計測する。取得部は、前記ポンプの運転情報を取得する。判定部は、前記負荷が第1閾値以下であるか否かを判定する。通信制御部は、前記負荷が第1閾値以下であると判定された場合、前記運転情報を外部に送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポンプ制御に影響を与えず、無線通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る管理システムの一例を示す図。
【
図2】本実施形態に係るポンプ装置を示すブロック図。
【
図3】本実施形態に係るポンプ装置の第1動作例を示すフローチャート。
【
図4】本実施形態に係るポンプ装置の第2動作例を示すフローチャート。
【
図5】本実施形態に係るポンプ装置の第3動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るポンプ装置およびポンプ装置の制御方法について説明する。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る管理システムを例示するブロック図である。
図1に示すように、管理システムは、管理サーバ1、複数のポンプ装置3-nおよび複数の端末5-n(nはインデックス)を含む。
図1では、nが2である場合の構成を示しているが、これに限定する必要はなく、nは1以上であれば幾つでもよい。以下、特に区別しないときは単にポンプ装置3および端末5と記載することとする。管理システムでは、ポンプ装置3に関して測定されるポンプ情報などを管理サーバ1で用いて管理するコンピュータシステムである。
【0012】
図1に示すように、管理サーバ1とポンプ装置3と端末5とは、ネットワークNWを介して、4G、5Gといった携帯通信網や、Wimaxなどの比較的遠距離の無線通信回線を介して接続される。また、ポンプ装置3と端末5とは、上述した無線通信回線に加え、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Filed Communication)、赤外線通信といった比較的近距離の無線通信手段により接続されることを想定する。なお、ポンプ装置3と端末5とは、USBやケーブルによるLAN接続といった有線通信回線を介して接続されてもよい。
【0013】
管理サーバ1は、管理装置の一例であり、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、表示機器、入力機器及び通信機器を有するコンピュータである。管理サーバ1は、複数のポンプ装置3に関する各種データを管理するためのHDD、SSD、集積回路記憶装置等の大容量記憶装置を有する。当該大容量記憶装置をデータベースと呼ぶことにする。例えば、管理サーバ1は、ポンプ装置3に関する各種データをデータベースに記憶したり、ポンプ装置3の稼働状況を管理する。なお、管理サーバ1は、オンプレミスサーバに限らず、クラウドサーバであってもよい。
【0014】
ポンプ装置3は、例えば、建物に給水する機械装置(給水装置)である。ポンプ装置3は、例えば、受水槽からの定圧給水を想定した定圧給水型給水装置であるとする。なお、水道本管に直結され、水道本管を流れる水を直接増圧し、建物に設けられた蛇口やシャワーヘッド等の供給先に給水する、いわゆる直結増圧型給水装置でもよいし、直結直圧型でもよい。
【0015】
端末5は、点検作業員等のユーザが持ち運び可能な通信端末であり、例えば、ノートPC、モバイル端末(スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット)が挙げられる。なお、端末5は、ポンプ装置3の管理専用に構成された通信デバイスであってもよい。端末5から、ポンプ装置3を制御可能としてもよく、例えば、ポンプ装置3を制御するためのアプリケーション(以下、制御アプリケーションともいう)が搭載されてもよいし、Webブラウザからポンプ装置3を制御可能としてもよい。
【0016】
次に、第1の実施形態に係るポンプ装置3について
図2のブロック図を参照して説明する。
ポンプ装置3は、制御盤50とポンプ部60とを含む。ポンプ部60は、ポンプと、ここでは図示しないがモータとを含む。以下、単にポンプとも呼ぶ。ポンプ装置3は、他に、図示しない吸込配管と吐出配管とを含んでもよい。ポンプ装置3は、ポンプ部60により、吸込配管を介して一次側にある水を取り込み、吐出配管を介して二次側へ給水する。吸込配管は、例えば、水道本管から分岐された水道分管およびポンプ部60を接続する。吐出配管は、ポンプ部60とその二次側の給水先とを接続する。ポンプ装置3は、複数台のポンプ部60を含んでいてもよい。この場合に、ポンプ装置3は、複数台のポンプ部60を交互に駆動する交互運転、複数台のポンプ部60を同時に駆動する並列運転などを行うことができる。
【0017】
図2に示すように、制御盤50は、互いにバスを介して接続された近距離通信器51と、遠距離通信器52と、入力機器53と、インバータ54と、インタフェース55と、表示機器56と、記憶装置57と、プロセッサ58とを含む。
【0018】
近距離通信器51は、Bluetooth、Wi-FiまたはNFC等の無線通信の規格を用いた近距離無線通信を行なう。近距離通信器51は、USB等の有線通信の規格を用いた近距離通信を行なってもよい。近距離通信器51は、端末5との間で、近距離通信回線を介して、ポンプ装置3の運転モードの設定および各種データの送受信などを行なう。
【0019】
遠距離通信器52は、携帯通信網、WimaxおよびWi-Fi等の無線通信の規格を用いた遠距離通信を行なう。遠距離通信器52は、管理サーバ1または端末5との間で、遠距離通信回線を介して各種データの送受信を行なう。
【0020】
近距離通信器51および遠距離通信器52による無線接続の確立については、例えば、Bluetoothであれば、一般的なペアリング接続により無線接続が確立されればよく、Wi-Fiであれば、Wi-Fiのアクセスポイントに予め設定されたSSIDおよびパスワードを入力することで、無線接続が確立されればよい。なお、一度、ポンプ装置3と端末5との無線接続が確立していれば、端末5の無線機能をオンにしてポンプ装置3と接近することで、自動的に無線接続が確立されるものとする。
【0021】
入力機器53は、ユーザの指示を電気信号に変換する。入力機器53としては、例えば、操作パネルやタッチパネル、キーボード、マウス、各種スイッチ等が用いられればよい。なお、入力機器53としては、音声入力装置が用いられてもよい。入力機器53からの電気信号はバスを介してプロセッサ58に供給される。
【0022】
インバータ54は、ポンプ部60を作動する動力を発生する。具体的には、インバータ54は、ポンプ部60(のモータ)に所定周波数の交流電力を供給する。また、インバータ54は、プロセッサ58からインバータ制御信号を受け取る。インバータ54は、インバータ制御信号に応じて動作する。例えば、インバータ54は、運転停止信号または運転開始信号に相当するインバータ制御信号に応じて運転を停止または開始する。また、インバータ54は、回転数制御信号に相当するインバータ制御信号に応じてモータの回転数を制御する。
【0023】
具体的には、インバータ54は、図示しないコンバータ回路、平滑コンデンサ及びインバータ回路を含む。コンバータ回路は、交流電源から交流電力を取り込み整流することで直流電力に変換する。平滑コンデンサは、コンバータ回路によって出力される直流電力の電圧を平滑化し、略一定電圧の直流電力を得る。そして、インバータ回路は、平滑コンデンサによって得られた直流電力を制御盤50からのインバータ制御信号(回転数制御信号に相当)に応じた所定周波数の交流電力へと変換してモータに供給する。
【0024】
インタフェース55は、例えば、ポート等の入出力インタフェースである。インタフェース55は、例えば、制御盤50とポンプ部60とを接続し、各種信号を送受信する。
【0025】
表示機器56は、各種データを表示する。表示機器56としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ等の任意のディスプレイが用いられればよい。なお、表示機器56として、プロジェクタが用いられてもよい。
【0026】
記憶装置57は、各種データを記憶するROMやRAM、HDD、SSD、集積回路記憶装置等のメモリ装置である。記憶装置57は、物理的に一つのメモリ装置により実現されてもよいし、ポンプ装置3内に物理的に分離された複数のメモリ装置により実現されてもよい。以下、記憶装置57を単にメモリと呼ぶことにする。
【0027】
プロセッサ58は、CPUやマイクロプロセッサ等の演算装置である。プロセッサ58は、ASICやFPGA等の専用の回路により構成されてもよい。プロセッサ58は、記憶装置57に保存された各種プログラムを実行することで、管理装置としての機能、例えば、取得部581と、計測部582と、判定部583と、通信制御部584と、発報部585と、運転制御部586の各機能を実現する。
【0028】
取得部581は、ポンプ部60の運転情報を取得する。運転情報は、ポンプ部60の運転に関する複数のパラメータを含む。運転情報に含まれるパラメータとしては、例えば、電源から制御盤50に供給される電圧、電流、電力、圧力センサにより計測された圧力値(揚程)、流量センサにより計測された流量、積算運転時間、運転回数、液面(電極)情報が挙げられる。液面情報は、例えば、満水、減水、渇水、異常無しといった液面の水位の情報である。なお、運転情報として、加速時間、減速時間、PI制御設定値、運転周波数、最大運転周波数、最小運転周波数といった制御設定値を含んでもよい。また、運転情報として、例えば故障が発生した日時、故障個所、原因などの故障情報を含めてもよい。
【0029】
計測部582は、ポンプの運転制御に関わるインバータ54およびプロセッサ58に対してかかる、ポンプの停止条件となる負荷を計測する。ポンプの停止条件となる負荷とは、例えば、インバータ54およびプロセッサ58の温度、インバータ54およびプロセッサ58に流れる電流である。
判定部583は、計測部582で計測された負荷が閾値以下であるか否かを判定する。
【0030】
通信制御部584は、負荷が閾値以下であると判定された場合、運転情報を外部に送信する。例えば、通信制御部584は、近距離通信器51または遠距離通信器52を用いて運転情報を管理サーバ1に送信すればよい。
発報部585は、異常が発生した場合など所定の条件に基づいて、外部にアラートを発報する。
運転制御部586は、インバータ54に対するインバータ制御信号などのポンプの運転を制御する制御信号を生成し、ポンプの運転を制御する。
【0031】
なお、制御盤50を構成する基板の枚数は任意に設計可能であり、各基板が近距離通信器51、遠距離通信器52、入力機器53、インバータ54、インタフェース55、表示機器56、記憶装置57及びプロセッサ58のうちの何れの機器を物理的に装備するのかも任意に設計可能である。また、取得部581と、計測部582と、判定部583と、通信制御部584と、発報部585と、運転制御部586とは、一のプロセッサ58が担うものとしたが、物理的に分離した複数のプロセッサが分担してもよい。
【0032】
また、本実施形態では、制御盤50において、図示しないが通信機能を実現する部品(例えば近距離通信器51、遠距離通信器52)とポンプ制御機能を実現する部品(例えば、インバータ54、プロセッサ58)とで電源を共有する場合など、通信機能とポンプ制御機能とに供給可能な電力を管理する必要がある場合を想定する。
【0033】
次に、第1の実施形態に係るポンプ装置3の第1動作例について
図3のフローチャートを参照して説明する。ここでは、ポンプが運転中である場合を想定し、端末5からの運転情報の要求をトリガとして、
図3のフローチャートに示す処理が実行されてもよいし、所定の間隔で当該フローチャートに示す処理が実行されてもよい。
【0034】
ステップSA1では、取得部581が、ポンプの運転情報を取得する。
ステップSA2では、計測部582が、ポンプの停止条件となる負荷を計測する。例えば、プロセッサ58またはインバータ54の温度を負荷とする。なお、温度に限らず、電流を負荷として計測してもよい。
【0035】
ステップSA3では、判定部583が、負荷が閾値以下であるか否かを判定する。負荷が閾値以下である場合はステップSA4に進み、負荷が閾値よりも高い場合はステップSA5に進む。
【0036】
ステップSA4では、通信制御部584が、ポンプの運転情報を外部に送信する。これにより、ポンプ制御に影響を及ぼすことなく運転情報を無線で送信でき、外部と無線通信することができる。
【0037】
ステップSA5では、通信制御部584が、負荷が閾値よりも大きいため、ポンプの運転情報の送信を制限する。「送信を制限する」とは、ここでは運転情報を外部に送信しない送信停止の状態、または特定の運転情報に限定して送信することを含む。特定の運転情報は、例えば、温度、電圧、電流、圧力値などの特定種類の運転情報を想定する。特定種類の運転情報は、予め定められていてもよいし、ユーザが選択可能としてもよい。または、判定部583により、高負荷の原因となっている部品または高負荷を生じる現象に関連する運転情報が選択されて送信されてもよい。例えば、制御盤50の異常が高負荷の原因と判定される場合は、特定の運転情報として、制御盤50内に配置されるインバータ54、プロセッサ58の温度に関する値が送信されればよい。また、渇水時において、ポンプに空気が入った空運転状態と、吐き出し管からの戻り水を吸い上げる運転状態とを繰り返す、いわゆる「鳴り水運転」の現象が発生している場合は、特定の運転情報として、電流、圧力(揚程)に関する値が送信されればよい。
【0038】
ステップSA6では、通信制御部584が、ステップSA5の処理によりポンプの運転情報の通信を制限した場合に外部へ送信されない運転情報を、待機リストに追加する。待機リストは、次の送信機会で送信するために一時的に保持される運転情報のリストである。
【0039】
ステップSA5およびステップSA6における、特定の運転情報および待機リストに追加される運転情報としては、例えば、ポンプ部60の運転に係る流量域が変化し、ポンプが高負荷となった場合、電圧、電流、電力および圧力(揚程)に関する運転情報は外部に送信される一方、運転積算時間などの他のパラメータは待機リストに追加されればよい。また、ポンプ装置3が故障のリトライ運転をする場合、リトライ運転を実行している旨を示す情報も特定の運転情報として設定されてもよい。リトライ運転は、例えば実際に故障しているのかを確認するために、何度かポンプの運転をリトライする運転方法である。例えば、圧力が低下している場合のリトライ運転が挙げられる。リトライ運転を実行している旨を示す情報は、特定の運転情報に含まれてもよい。また、ポンプ装置3が温度制限運転をしている場合は、温度制限運転中である旨の情報が特定の運転情報に含まれてもよい。すなわち、重篤度の高い情報、例えば過負荷、脱調、漏電などのポンプが正常に稼働できなくなる状況が発生した場合の各種情報といった、通常運転と異なる運転を実行している旨を示す情報は、重要度が高いため、ポンプの運転情報の送信が制限されている場合でも、最低限送信されるように設定されてもよい。
【0040】
ステップSA7では、判定部583が、負荷が閾値以下であるか否かを判定する。負荷が閾値以下である場合はステップS8に進み、負荷が閾値よりも高い場合はステップSA5に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0041】
ステップSA8では、通信制御部584が、ステップSA4の処理において送信される運転情報に加えて、待機リストにある運転情報をさらに外部に送信する。
【0042】
上述したステップSA4およびステップSA8における外部への運転情報の送信処理は、ポンプ装置3から直接管理サーバ1に運転情報が送信されてもよい。または、ポンプ装置3から端末5に運転情報を送信し、端末5から管理サーバ1へ運転情報を送信する、言い換えればポンプ装置3から端末5を経由して管理サーバ1に運転情報が送信されてもよい。
なお、ステップSA3では、判定部583が負荷が閾値以下であるか否かを判定するが、負荷が閾値以下である場合として、ポンプが停止している状態でもよい。この場合、負荷が閾値よりも高い場合は、ポンプが運転中である状態とすればよい。すなわち、判定部583は、ポンプが停止している場合に負荷が閾値以下であると判定し、通信制御部584が、運転情報を外部に送信してもよい。一方、運転情報の通信中において、判定部583がポンプの運転が開始または再開された場合に負荷が閾値よりも高くなったと判定し、ステップSA5に示すように、通信制御部584が運転情報の送信を制限してもよい。
【0043】
次に、第1動作例の具体例として、制御盤50に搭載されるプロセッサ58の温度を監視することにより、運転情報の送信制御を実行する例について説明する。
【0044】
計測部582は、制御盤50内に配置されるプロセッサ58の温度を計測するセンサから、プロセッサ58の温度情報を取得する。判定部583は、プロセッサ58の温度が閾値以下であるか否か、言い換えれば、温度が、プロセッサ58が動作保証される温度範囲における上限値以下となるか否かを判定する。
温度が閾値以下である場合、通信制御部584が、運転情報を外部に送信すればよい。一方、温度が閾値よりも高い場合、通信制御部584が運転情報の通信を制限すればよい。
制御盤50では、インバータ54、近距離通信器51、遠距離通信器52、プロセッサ58の負荷、例えば温度を監視しており、温度が閾値よりも高くなるといずれ強制停止命令が発出される。強制停止命令が発出されると、ポンプの運転が停止してしまう。そのため、温度が閾値よりも高い場合に運転情報の通信を制限することで、強制停止命令を発出させないようにし、ポンプの運転を継続させることができる。
【0045】
次に、第1の実施形態に係るポンプ装置3の第2動作例について
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
ステップSB1では、判定部583が、ステップSB2により負荷が閾値よりも高いと判定された場合において、ポンプが停止中であるか否かを判定する。ポンプが停止中とは、例えば、インバータなどのポンプの運転に関する部品が故障した、または当該部品に異常が発生したため、ポンプの運転を強制停止した状態や、メンテナンスによりポンプの運転を停止している状態を示す。ポンプが停止中である場合、ステップSA4に進み、通信制御部584が、運転情報を外部に送信する。一方、ポンプが停止中では無い、すなわちポンプが運転している場合は、ステップSA5に進む。
その後、ステップSB2では、
図3に示すステップSA7の場合と同様に判定部583が、負荷が閾値以下であるか否かを判定する。負荷が閾値以下である場合、ステップSA8に進み、負荷が閾値よりも高い場合、ステップSB1に戻り同様の処理を繰り返す。
【0047】
図4に示す第2動作例のように、既にポンプが停止している場合は、ポンプの運転制御において電力を利用する必要がないため、運転情報の無線通信制御を実行してもよい。例えば、故障またはメンテナンスによりポンプの運転が停止している状態であれば、作業員による故障の修理が完了またはメンテナンスが終了してポンプの運転が再開されるまでは、負荷の程度によらず運転情報を通信可能とすればよい。
【0048】
次に、第1の実施形態に係るポンプ装置3の第3動作例について
図5のフローチャートを参照して説明する。
図5は、
図3に示すフローチャートにおいて、一部が変更される場合である。第3動作例では、予め運転情報に重要度が付与されていることを想定する。すなわち、運転情報の複数のパラメータ(電圧、電流、電力、運転周波数など)それぞれに対して、重要度が付与される。
【0049】
ステップSC1では、判定部583が、ステップSA3により負荷が閾値よりも高いと判定された後、重要度が閾値以上であるパラメータに関する運転情報を抽出する。例えば、重要度を5段階のレベルで分け、運転情報の各パラメータに対して5段階のうちのいずれかのレベルを設定し、レベル4以上の重要度が設定されたパラメータを抽出すればよい。具体的に重要度が閾値以上である運転情報とは、例えば、異常値となっている運転情報、故障に関する運転情報が挙げられる。
ステップSC2では、通信制御部584が、抽出された運転情報を外部に送信する。このとき、通信制御とポンプの運転制御とで電源が共有されている場合など、ポンプの運転を一時的に抑制または停止させなければ電力が足りず、ステップSC2で抽出された運転情報を外部に送信できない場合は、ポンプの運転を一時的に抑制または停止させ、ポンプの運転よりも優先して当該抽出した運転情報を外部に送信してもよい。
ステップSC3では、通信制御部584が、重要度が閾値未満の運転情報を、待機リストに追加する。
【0050】
このように、ポンプ装置3が過負荷、漏電などの異常状態にある場合は、運転情報の通信を制限して運転を優先させるよりも、まずは異常状態となっていることを外部の管理サーバ1などに通知することが望ましい。ただし、負荷が閾値よりも高い場合は通信を制限していることから、このような異常に関する情報の重要度(優先度)を高くして、重要度の高い情報は、通信制限中でも通信可能とすることで、故障を未然に防ぐことができ、故障が発生した場合でも早期にメンテナンスを手配できる。
【0051】
以上に示した本実施形態によれば、ポンプの運転制御に関わるインバータおよびプロセッサに対してかかる、ポンプの停止条件となる負荷を判定し、当該負荷が閾値以下である場合に、運転情報を外部に送信する。また、当該負荷が閾値よりも高い場合には、運転情報の送信を停止または特定の運転情報のみを送信するといった、通信の制限を実施する。これにより、例えばインバータまたはプロセッサかかる負荷が閾値以上の場合にポンプが停止してしまうといった、ポンプ制御に対する影響を及ぼすことなく、無線通信を実現することができる。また、上述のように、重要度の高い情報は通信制限中でも通信可能とすることで、故障を未然に防ぐことができ、故障が発生した場合でも早期にメンテナンスを手配できる。
【0052】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えばポンプ装置に搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD、Blu-ray(登録商標)Disc等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0054】
1・・・管理サーバ、3・・・ポンプ装置、5・・・端末、50・・・制御盤、51・・・近距離通信器、52・・・遠距離通信器、53・・・入力機器、54・・・インバータ、55・・・インタフェース、56・・・表示機器、57・・・記憶装置、58・・・プロセッサ、60・・・ポンプ部、581・・・取得部、582・・・計測部、583・・・判定部、584・・・通信制御部、585・・・発報部、586・・・運転制御部。