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特開2024-106574積込機械の制御装置、積込機械の制御方法および積込機械の制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106574
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】積込機械の制御装置、積込機械の制御方法および積込機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20240801BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010906
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
(72)【発明者】
【氏名】西郷 雄祐
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003AC09
2D003BA03
2D003BB04
2D003BB07
2D003DA04
2D003DB04
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】積込機械の制御装置は積込機械の自動制御中に、オペレータの操作に応じて積込機械を制御する。
【解決手段】操作信号入力部は、操作装置の操作に基づく前記複数のリンク部品それぞれの手動操作信号の入力を受け付ける。移動制御部は、複数のリンク部品それぞれの自動操作信号を生成する。出力判定部は、複数のリンク部品それぞれについて手動操作信号及び自動操作信号の何れを出力するかの判定を行う。このとき出力判定部は、複数のリンク部品の少なくとも1つについて、手動操作信号の操作量が所定の第一の閾値を超えた場合、少なくとも1つのリンク部品に係る手動操作信号を出力すると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、作業具を含む複数のリンク部品で構成され前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御装置であって、
操作装置の操作に基づく前記複数のリンク部品それぞれの手動操作信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、
前記複数のリンク部品それぞれの自動操作信号を生成する移動制御部と、
前記複数のリンク部品それぞれについて前記手動操作信号及び前記自動操作信号の何れを出力するかの判定を行う出力判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力する操作信号出力部と
を備え、
前記出力判定部は、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて、前記手動操作信号の操作量が所定の第一の閾値を超えた場合、前記少なくとも1つのリンク部品に係る前記手動操作信号を出力すると判定する
積込機械の制御装置。
【請求項2】
前記出力判定部は、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて、前記手動操作信号の操作方向と前記自動操作信号の操作方向とが互いに逆方向になった場合に、前記手動操作信号を出力すると判定する
請求項1に記載の積込機械の制御装置。
【請求項3】
前記出力判定部は、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて、前記手動操作信号の操作量が所定の第二の閾値を超えた場合、前記複数のリンク部品すべてについて前記手動操作信号を出力すると判定する
請求項2に記載の積込機械の制御装置。
【請求項4】
前記出力判定部は、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて、前記手動操作信号の操作方向と前記自動操作信号の操作方向とが同じであり、かつ前記手動操作信号の操作量が前記自動操作信号の操作量より大きくなった場合、前記少なくとも1つのリンク部品について前記手動操作信号を出力すると判定する
請求項1に記載の積込機械の制御装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、前記作業具を積込対象の上方から、上方からの平面視において前記積込対象から離れた目標位置まで自動的に移動させる自動制御を行うために前記複数のリンク部品及び前記旋回体の前記自動操作信号を生成し、
前記出力判定部は、前記自動制御において、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて前記手動操作信号の操作量が所定の第一の閾値を超えた場合、前記少なくとも1つのリンク部品に係る前記手動操作信号を出力すると判定する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の積込機械の制御装置。
【請求項6】
前記出力判定部は、前記自動制御において前記作業具が前記積込対象の上方に位置する場合に、前記手動操作信号の有無にかかわらず前記自動操作信号を出力すると判定する
請求項5に記載の積込機械の制御装置。
【請求項7】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、作業具を含む複数のリンク部品で構成され前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
操作装置の操作に基づく前記複数のリンク部品それぞれの手動操作信号の入力を受け付けるステップと、
前記複数のリンク部品それぞれの自動操作信号を生成するステップと、
前記複数のリンク部品それぞれについて前記手動操作信号及び前記自動操作信号の何れを出力するかの判定を行うステップと、
前記判定の結果に基づいて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力するステップと
を備え、
前記判定を行うステップでは、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて前記手動操作信号の操作量が所定の第一の閾値を超えた場合、前記少なくとも1つのリンク部品に係る前記手動操作信号を出力すると判定する
積込機械の制御方法。
【請求項8】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、作業具を含む複数のリンク部品で構成され前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御システムであって、
操作装置の操作に基づく前記複数のリンク部品それぞれの手動操作信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、
前記複数のリンク部品それぞれの自動操作信号を生成する移動制御部と、
前記複数のリンク部品それぞれについて前記手動操作信号及び前記自動操作信号の何れを出力するかの判定を行う出力判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力する操作信号出力部と
を備え、
前記出力判定部は、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて、前記手動操作信号の操作量が所定の第一の閾値を超えた場合、前記少なくとも1つのリンク部品に係る前記手動操作信号を出力すると判定する
積込機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積込機械の制御装置、積込機械の制御方法および積込機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積込機械の自動制御に関する技術が開示されている。特許文献1に係る自動制御は、ダンプトラックなどの積込対象に対する積込完了後に、オペレータから掘削指示を受け付け、制御装置が積込機械の旋回及び作業機の駆動を制御することで、自動掘削を行う制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-041352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動制御による制御後のバケット(作業具)の位置と、オペレータが意図するバケットの位置とは、一致しない場合もある。このような場合に、オペレータは、所望の位置にバケットを移動させるために自動制御中に積込機械を操作する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、積込機械の自動制御中に、オペレータの操作に応じて積込機械を制御する積込機械の制御装置、積込機械の制御方法および積込機械の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体を支持する支持部と、作業具を含む複数のリンク部品で構成され前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御システムであって、操作装置の操作に基づく前記複数のリンク部品それぞれの手動操作信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、前記複数のリンク部品それぞれの自動操作信号を生成する移動制御部と、前記複数のリンク部品それぞれについて前記手動操作信号及び前記自動操作信号の何れを出力するかの判定を行う出力判定部と、前記判定の結果に基づいて、前記手動操作信号又は前記自動操作信号を出力する操作信号出力部とを備え、前記出力判定部は、前記複数のリンク部品の少なくとも1つについて前記手動操作信号の操作方向と前記自動操作信号の操作方向とが互いに逆になった場合、前記複数のリンク部品すべてについて前記手動操作信号を出力すると判定する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、積込機械の制御装置は積込機械の自動制御中に、オペレータの操作に応じて積込機械を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
図2】第一実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
図3】第一実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第一実施形態に係る第一旋回における積込機械の動きの例を示す図である。
図5】第一実施形態に係る第二旋回における積込機械の動きの例を示す図である。
図6】第一実施形態に係る制御装置の動作の一部を示すフローチャートである。
図7】第一実施形態に係る制御装置の旋回制御を示すフローチャート(パート1)である。
図8】第一実施形態に係る制御装置の旋回制御を示すフローチャート(パート2)である。
図9】第一実施形態に係る制御装置の旋回制御を示すフローチャート(パート3)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第一実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0010】
《積込機械100の構成》
図1は、第一実施形態に係る積込機械100の構成を示す概略図である。
積込機械100は、施工現場にて稼働し、土砂などの施工対象を掘削し、ダンプトラックなどの積込対象Tに積み込む。積込機械100の例としては、フェイスショベル、バックホウショベル、ロープショベルなどが挙げられる。また積込機械100は電動駆動するものであってもよいし、油圧駆動するものであってもよい。第一実施形態に係る積込機械100は、フェイスショベルである。積込機械100は、走行体110、旋回体120、作業機130及び運転室140を備える。
【0011】
走行体110は、積込機械100を走行可能に支持する。走行体110は、左右に設けられた2つの無限軌道111と、各無限軌道111を駆動するための2つの走行モータ112を備える。走行体110は、支持部の一例である。
旋回体120は、走行体110に旋回中心回りに旋回可能に支持される。
作業機130は、油圧により駆動する。作業機130は、旋回体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。運転室140は、オペレータが搭乗し、積込機械100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、旋回体120の左前部に設けられる。
ここで、旋回体120のうち作業機130が取り付けられる部分を前部という。また、旋回体120について、前部を基準に、反対側の部分を後部、左側の部分を左部、右側の部分を右部という。
【0012】
《旋回体120の構成》
旋回体120は、エンジン121、油圧ポンプ122、コントロールバルブ123、旋回モータ124を備える。
エンジン121は、油圧ポンプ122を駆動する原動機である。エンジン121は、動力源の一例である。
油圧ポンプ122は、エンジン121により駆動される可変容量ポンプである。油圧ポンプ122は、コントロールバルブ123を介して各アクチュエータ(ブームシリンダ131C、スティックシリンダ132C、バケットシリンダ133C、クラムシリンダ1332C、走行モータ112、及び旋回モータ124)に作動油を供給する。
コントロールバルブ123は、油圧ポンプ122から供給される作動油の流量を制御する。
旋回モータ124は、コントロールバルブ123を介して油圧ポンプ122から供給される作動油によって駆動し、旋回体120を旋回させる。
【0013】
《作業機130の構成》
作業機130は、ブーム131、スティック132、作業具としてのクラムバケット133、ブームシリンダ131C、スティックシリンダ132C、及びバケットシリンダ133Cを備える。作業具の一例として、バケット、チルトバケット、チルトローテートバケットなどが挙げられる。
【0014】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンを介して回転可能に取り付けられる。なお、図1に示す積込機械100においては、ブーム131が旋回体120の正面中央部分に設けられるが、これに限られず、ブーム131は左右方向にオフセットして取り付けられたものであってもよい。この場合、旋回体120の旋回中心は作業機130の動作平面上に位置しない。
スティック132は、ブーム131とクラムバケット133とを連結する。スティック132の基端部は、ブーム131の先端部にスティックピンを介して回転可能に取り付けられる。
クラムバケット133は、スティック132の先端部にピンを介して回転可能に取り付けられるバックオール1331と、土砂などを掘削するための刃を有するクラムシェル1332と、バックオール1331とクラムシェル1332とを開閉するためのクラムシリンダ1332Cを有する。バックオール1331とクラムシェル1332とはピンを介して開閉可能に連結される。バックオール1331とクラムシェル1332とが閉じているとき、バックオール1331及びクラムシェル1332は、掘削した土砂を収容するための容器として機能する。他方、バックオール1331とクラムシェル1332とが開くことで、収容した土砂を排土することができる。クラムシリンダ1332Cの基端部は、バックオール1331に取り付けられる。クラムシリンダ1332Cの先端部は、クラムシェル1332に取り付けられる。クラムバケット133は、開口が旋回体120の前方を向くように取り付けられる。すなわち、掘削時に、クラムバケット133の開口と旋回体120とはほぼ同じ方向を向く。
ブーム131、スティック132およびクラムバケット133は、複数のリンク部品の一例である。
【0015】
ブームシリンダ131Cは、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ131Cの基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ131Cの先端部は、ブーム131に取り付けられる。
スティックシリンダ132Cは、スティック132を駆動するための油圧シリンダである。スティックシリンダ132Cの基端部は、ブーム131に取り付けられる。スティックシリンダ132Cの先端部は、スティック132に取り付けられる。
バケットシリンダ133Cは、クラムバケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ133Cの基端部は、ブーム131に取り付けられる。バケットシリンダ133Cの先端部は、バックオール1331に接続されるリンク部材に取り付けられる。
【0016】
《運転室140の構成》
図2は、第一実施形態に係る運転室140の内部の構成を示す図である。
運転室140内には、運転席141、操作端末142及び操作装置143が設けられる。操作端末142は、運転席141の近傍に設けられ、後述する制御装置160とのユーザインタフェースである。操作端末142は、例えばタッチパネルで構成された表示装置であり、オペレータが操作する操作部と、操作を受け付ける入力受付部があってもよい。また、表示装置には、エンジン水温計、燃料計の計測データなどが表示されている。また、操作端末142は、LCDなどの表示部を備えるものであってよい。前記タッチパネルは表示部の一例である。
【0017】
操作装置143は、オペレータの手動操作によって走行体110、旋回体120及び作業機130を駆動させるための装置である。操作装置143は、左操作レバー143LO、右操作レバー143RO、左フットペダル143LF、右フットペダル143RF、左走行レバー143LT、右走行レバー143RT、クラムオープンペダル143CO、クラムクローズペダル143CC、旋回ブレーキペダル143TB、開始スイッチ143SWを備える。
【0018】
左操作レバー143LOは、運転席141の左側に設けられる。右操作レバー143ROは、運転席141の右側に設けられる。
【0019】
左操作レバー143LOは、旋回体120の旋回転作、及び、スティック132の掘削/ダンプ動作を行うための操作機構である。具体的には、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを前方に倒すと、スティック132がダンプ動作する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを後方に倒すと、スティック132が掘削動作する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを右方向に倒すと、旋回体120が右旋回する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを左方向に倒すと、旋回体120が左旋回する。なお、他の実施形態においては、左操作レバー143LOを前後方向に倒した場合に旋回体120が右旋回又は左旋回し、左操作レバー143LOが左右方向に倒した場合にスティック132が掘削動作又はダンプ動作してもよい。
【0020】
右操作レバー143ROは、クラムバケット133の掘削/ダンプ動作、及び、ブーム131の上げ/下げ動作を行うための操作機構である。具体的には、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを前方に倒すと、ブーム131の下げ動作が実行される。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを後方に倒すと、ブーム131の上げ動作が実行される。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを右方向に倒すと、クラムバケット133のダンプ動作が行われる。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを左方向に倒すと、クラムバケット133の掘削動作が行われる。なお、他の実施形態においては、右操作レバー143ROを前後方向に倒した場合に、クラムバケット133がダンプ動作又は掘削動作し、右操作レバー143ROを左右方向に倒した場合にブーム131が上げ動作又は下げ動作してもよい。
【0021】
左フットペダル143LFは、運転席141の前方の床面の左側に配置される。右フットペダル143RFは、運転席141の前方の床面の右側に配置される。左走行レバー143LTは、左フットペダル143LFに軸支され、左走行レバー143LTの傾斜と左フットペダル143LFの押し下げが連動するように構成される。右走行レバー143RTは、右フットペダル143RFに軸支され、右走行レバー143RTの傾斜と右フットペダル143RFの押し下げが連動するように構成される。
【0022】
左フットペダル143LF及び左走行レバー143LTは、走行体110の左側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、積込機械100のオペレータが左フットペダル143LF又は左走行レバー143LTを前方に倒すと、左側履帯は前進方向に回転する。また、積込機械100のオペレータが左フットペダル143LF又は左走行レバー143LTを後方に倒すと、左側履帯は後進方向に回転する。
【0023】
右フットペダル143RF及び右走行レバー143RTは、走行体110の右側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、積込機械100のオペレータが右フットペダル143RF又は右走行レバー143RTを前方に倒すと、右側履帯は前進方向に回転する。また、積込機械100のオペレータが右フットペダル143RF又は右走行レバー143RTを後方に倒すと、右側履帯は後進方向に回転する。
【0024】
クラムオープンペダル143CO及びクラムクローズペダル143CCは、左フットペダル143LFの左側に配置される。クラムオープンペダル143COはクラムクローズペダル143CCの右隣に配置される。クラムオープンペダル143COが押し下げられると、クラムバケット133が押し下げ量に応じた速度で開く。クラムクローズペダル143CCが押し下げられると、クラムバケット133が押し下げ量に応じた速度で閉じる。
【0025】
旋回ブレーキペダル143TBは、右フットペダル143RFの右側に配置される。旋回ブレーキペダル143TBが押し下げられると、コントロールバルブ123と旋回モータ124とを結ぶ油圧回路のリリーフ圧を増大させる。具体的には、旋回ブレーキペダル143TBが押し下げられたときに、コントロールバルブ123と旋回モータ124とを結ぶ油圧回路に設けられた可変リリーフバルブのソレノイドを励磁することで、可変リリーフバルブのリリーフ圧を増大させる。これにより、旋回に係るブレーキ力を増加させることができる。
【0026】
開始スイッチ143SWは、例えば左操作レバー143LOのハンドル部分に設けられる。なお、開始スイッチ143SWは、運転席141に着座したオペレータの近傍に位置するように配置されればよい。開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160に自動制御指示信号が出力される。制御装置160は、自動制御指示信号の入力を受け付けると、自動制御を開始する。
【0027】
自動制御は、所定の動作を実現するために積込機械100が自律的に作業機130および旋回体120の駆動を制御することである。第1の実施形態における自動制御は、掘削した土砂を積み込むためにブーム131を上げながら旋回体120が積込対象Tを向くまで旋回し、積込対象Tの上方でクラムバケット133を開き、その後、次の掘削のためにブーム131を下げながら所定の方位まで旋回する一連の動作を、積込機械100が自律的に行う制御である。なお、他の実施形態に係る自動制御は、掘削した土砂を積み込む動作を行わないものであってもよい。例えば、他の実施形態に係る自動制御は、積込対象Tの上方に位置するクラムバケット133を、次の掘削のために所定の位置まで下ろす動作を自律的に行う制御であってもよい。この場合、掘削した土砂を積み込む動作はオペレータの手動操作で行ってよい。以下、開始スイッチ143SWが押下されたときに旋回体120が向く方位(初期方位)から積込対象Tを向く方位までの旋回を「第一旋回」とよび、積込対象Tを向く方位から初期方位までの旋回を「第二旋回」とよぶ。第一実施形態においては、初期方位を、第二旋回における目標方位とする。なお、他の実施形態においては、これに限られず、オペレータによって予め指定された方位を第二旋回における目標方位として設定してもよい。また、自動制御では、第一旋回および第二旋回の終了時の作業機130の姿勢が所定の目標姿勢となるように、作業機130を駆動させる。第一旋回における目標姿勢は、クラムバケット133が積込対象Tの上方に位置し、かつクラムバケット133の開口が上を向く姿勢である。第二旋回における目標姿勢は、クラムバケット133が掘削対象の近傍に位置し、かつクラムバケット133の開口が前を向く掘削準備姿勢である。なお、他の実施形態においては、第二旋回における目標姿勢は、開始スイッチ143SWが押下されたときの作業機130の姿勢(初期姿勢)であってもよいし、またはあらかじめ決められた姿勢でもよい。なお、通常、掘削対象は積込対象Tの高さより低い位置となる。そのため、積込機械100は、第一旋回および第二旋回において、積込対象Tと作業機130とが接触しないように作業機130の駆動を制御する。自動制御の詳細は後述する。
【0028】
《計測系の構成》
図1に示すように、積込機械100は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブーム角度センサ153、スティック角度センサ154、バケット角度センサ155、検出装置156を備える。
【0029】
位置方位演算器151は、旋回体120の位置及び旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器151は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器151は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器151は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。旋回体120が向く方位とは、旋回体120の正面に直交する方向であって、作業機130のブーム131からクラムバケット133へ伸びる直線の延在方向の水平成分に等しい。
【0030】
傾斜計測器152は、旋回体120の加速度及び角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)および旋回速度を検出する。傾斜計測器152は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器152は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0031】
ブーム角度センサ153は、ブーム131に取り付けられ、ブーム131の傾斜角を検出する。
スティック角度センサ154は、スティック132に取り付けられ、スティック132の傾斜角を検出する。
バケット角度センサ155は、クラムバケット133のバックオール1331に取り付けられ、クラムバケット133の傾斜角を検出する。
第一実施形態に係るブーム角度センサ153、スティック角度センサ154、及びバケット角度センサ155は、地平面に対する傾斜角を検出する。なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサは、ブーム131、スティック132及びクラムバケット133の基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、ブームシリンダ131C、スティックシリンダ132C及びバケットシリンダ133Cのシリンダ長さを計測し、シリンダ長さを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0032】
検出装置156は、積込機械100の周囲に存在する物体の三次元位置を検出する。検出装置156の例としては、ステレオカメラ、レーザスキャナ、UWB(Ultra Wide Band)測距装置などが挙げられる。検出装置156は、例えば運転室140の上部に、検出方向が前方を向くように設けられる。なお、検出装置156は、積込機械100の周囲を撮像可能であれば、どこに設けられてもよい。例えば、運転室140外の旋回体120の側壁等に設けられていてもよい。また検出方向は前方を向かなくてもよい。検出装置156は、物体の三次元位置を、検出装置156の位置を基準とした座標系で特定する。なお、他の実施形態に係る積込機械100は、複数の検出装置156を備えてもよい。
【0033】
《制御装置160の構成》
図3は、第一実施形態に係る制御装置160の構成を示す概略ブロック図である。
積込機械100は、制御装置160を備える。制御装置160は、操作端末142に実装されるものであってもよいし、操作端末142と別個に設けられ、操作端末142からの入出力を受け付けるものであってもよい。制御装置160は、操作装置143から操作信号を受信する。制御装置160は、受信した操作信号又は自動制御のために生成された操作信号をコントロールバルブ123に出力することで、作業機130、旋回体120及び走行体110を駆動させる。以下、操作装置143から受信した操作信号を手動操作信号ともよび、自動制御のために生成された操作信号を自動操作信号ともよぶ。なお、自動操作信号は、旋回体120および作業機130を駆動させる操作信号からなり、走行体110を駆動させる操作信号を含まない。
【0034】
制御装置160は、プロセッサ610、メインメモリ630、ストレージ650、インタフェース670を備えるコンピュータである。ストレージ650は、プログラムを記憶する。プロセッサ610は、プログラムをストレージ650から読み出してメインメモリ630に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0035】
ストレージ650の例としては、半導体メモリ、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等が挙げられる。ストレージ650は、制御装置160の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース670を介して制御装置160に接続される外部メディアであってもよい。メインメモリ630及びストレージ650は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0036】
プロセッサ610は、プログラムの実行により、計測データ取得部611、マップ生成部612、操作信号入力部613、作業機位置特定部614、積込対象特定部615、旋回角度特定部616、回避角度特定部617、目標姿勢決定部618、移動制御部619、クラム制御部620、出力判定部621、操作信号出力部622を備える。
【0037】
計測データ取得部611は、積込機械100の計測系による計測データを取得する。具体的には、計測データ取得部611は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブーム角度センサ153、スティック角度センサ154、バケット角度センサ155、及び検出装置156から計測データを取得する。計測データ取得部611は、傾斜計測器152が計測した旋回体120の角速度を積分することで、旋回体120の角度を算出する。
【0038】
マップ生成部612は、検出装置156から取得した計測データを用いて積込機械100の周囲を表すマップデータを生成する。マップ生成部612は、例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術によってマップデータを生成する。マップデータは、車体座標系で表される。車体座標系は、旋回体120の旋回中心を原点とし、前後方向に伸びる軸、左右方向に伸びる軸、上下方向に伸びる軸で表される直交座標系である。検出装置156は、旋回体120に固定されているため、マップ生成部612は、SLAMの計算結果を、旋回中心と検出装置156との位置関係に基づいて平行移動させることで、車体座標系のマップデータを生成することができる。マップ生成部612が生成したマップデータは、メインメモリ630に記録される。
【0039】
操作信号入力部613は、操作装置143からオペレータが手動で操作された操作信号の入力を受け付ける。操作信号は、手動で操作された操作装置143のレバー等の操作量から変換された信号である。操作信号には、ブーム131の上げ操作や下げ操作をする駆動信号、スティック132の上げ操作や下げ操作をする駆動信号、クラムバケット133のダンプ操作や掘削操作をする駆動信号、クラムバケット133の開閉操作をする駆動信号、旋回体120の旋回操作をする駆動信号、走行体110の走行操作をする駆動信号、ならびに積込機械100の自動制御指示信号が含まれる。
【0040】
作業機位置特定部614は、計測データ取得部611が取得した計測データに基づいて、旋回体120を基準とする車体座標系におけるスティック132の先端の位置P(図4)及びスティック132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さH(図4)を特定する。クラムバケット133の最下点とは、クラムバケット133の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいう。
【0041】
作業機位置特定部614は、スティック132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さH(図4)を特定する。クラムバケット133の最下点とは、クラムバケット133の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいうが、作業機位置特定部614が特定するクラムバケット133の基準点は、最下点でなくてもよい。例えば、他の実施形態に係る作業機位置特定部614は、バケットの背面等のあらかじめ決められた所定の位置を基準点として特定してもよい。
【0042】
作業機位置特定部614は、ブーム131の傾斜角と既知のブーム131の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム131の長さの垂直方向成分及び水平方向成分を求める。同様に、作業機位置特定部614は、スティック132の長さの垂直方向成分及び水平方向成分を求める。作業機位置特定部614は、積込機械100の位置から、積込機械100の方位及び姿勢から特定される方向に、ブーム131及びスティック132の長さの垂直方向成分の和及び水平方向成分の和だけ離れた位置を、スティック132の先端の位置Pとして特定する。また、作業機位置特定部614は、クラムバケット133の傾斜角と既知のクラムバケット133の形状とに基づいて、クラムバケット133の鉛直方向の最下点を特定し、スティック132の先端から最下点までの高さH及び先端から最下点までの水平距離D(図4)を特定する。
【0043】
積込対象特定部615は、操作信号入力部613に自動制御指示信号が入力された場合に、マップ生成部612が生成したマップデータに基づいて、積込点を決定する。積込点は、自動制御の第一旋回における目標位置であり、積込対象T(例えば、ダンプトラックのベッセル)より上方の位置である。具体的には、積込対象特定部615は、マップデータと既知の積込対象Tの形状とから、積込対象Tの位置及び形状を特定する。特定したデータは、積込対象Tの地面からの高さを示す高さデータを含んでもよい。例えば積込対象特定部615は、三次元パターンマッチングによって、マップデータから積込対象Tの位置及び形状を特定する。また例えば、積込対象特定部615は、マップデータではなく、検出装置156による計測データもしくは撮像データから、積込機械100の周囲に存在するダンプトラックなどの積込対象Tの位置及び形状を特定してもよい。積込対象特定部615は、特定した積込対象Tの上面の中心点とクラムバケット133の形状に基づいて積込点を決定する。
【0044】
旋回角度特定部616は、操作信号入力部613に自動制御指示信号が入力されたときに旋回体120が向く初期方位と、積込点が存在する方位との間の角度を目標旋回角度として特定する。旋回角度特定部616は、自動制御の開始時に旋回体120の旋回中心から作業機位置特定部614が特定したスティック132の先端の位置へ伸びる線分と、旋回体120の旋回中心から積込点へ伸びる線分とのなす角を、目標旋回角度として特定する。
【0045】
回避角度特定部617は、積込対象特定部615が特定した積込対象Tの位置及び形状に基づいて干渉回避角度を特定する。干渉回避角度とは、作業機130と積込対象Tとが上方からの平面視において重ならないときの旋回角度である。具体的には、回避角度特定部617は、以下の手順で干渉回避角度を特定する。
【0046】
回避角度特定部617は、積込対象特定部615が特定した積込対象Tの位置及び形状に基づいて、積込対象Tの外形のうち旋回体120の旋回方向の最も後方の点p図4)を特定する。回避角度特定部617は、自動制御の開始時の旋回体120の旋回中心からスティック132の先端の位置へ伸びる線分と、旋回体120の旋回中心から特定した積込対象Tの外形の点へ伸びる線分とのなす第一角度φ図4)を求める。回避角度特定部617は、作業機位置特定部614が特定したスティック132の先端の位置と、既知のクラムバケット133の形状とに基づいて、クラムバケット133の外形のうち旋回体120の旋回方向の最も前方の点p図4)を特定する。回避角度特定部617は、旋回体120の旋回中心からスティック132の先端の位置へ伸びる線分と、旋回体120の旋回中心から特定したクラムバケット133の外形の点pへ伸びる線分とのなす第二角度φを求める。回避角度特定部617は、第一角度φと第二角度φの差から、さらに制御余裕分の第三角度φを減算することで、第一干渉回避角度θ図4)を求める。なお、第一干渉回避角度θは、クラムバケット133の初期位置を基準とした干渉回避角度である。そのため、積込点から初期位置へクラムバケット133を移動させる第二旋回においては、制御装置160は、目標旋回角度と第一干渉回避角度θの差である第二干渉回避角度θ図5)に基づいて作業機130を制御する。なお、第二旋回において、旋回角度が第二干渉回避角度θに至るまでは、作業機130が積込対象Tの上方に位置する可能性がある。他方、第二旋回において、旋回角度が第二干渉回避角度θを超えた後、作業機130は積込対象Tの上方に位置しない。
【0047】
目標姿勢決定部618は、積込対象特定部615が決定した旋回中心から積込点までの距離及び高さに基づいて、スティック132の先端が積込点に位置するときの作業機130の姿勢を計算し、第一旋回における作業機130の目標姿勢を決定する。また、目標姿勢決定部618は、予めストレージ650などに記憶された掘削準備姿勢を読み出すことで、第二旋回における作業機130の目標姿勢を決定する。目標姿勢は、例えば車体座標系におけるブーム131の先端、スティック132の先端、及びクラムバケット133の刃先の位置によって表される。なお、作業機130の姿勢は、作業機130を構成する各部品の車体座標系における位置及び角度を含む。
【0048】
図3に示す移動制御部619は、操作信号入力部613が自動制御指示信号の入力を受け付けた場合に、クラムバケット133を積込点まで移動させる第一旋回を実現する操作信号を生成し、クラムバケット133が積込点に到達した後、クラムバケット133を次の掘削位置の近傍、またはあらかじめ決められた所定の位置まで移動させる第二旋回を実現する操作信号を生成する。このとき、移動制御部619は、干渉回避角度に基づいて、積込対象Tと作業機130とが接触しないよう旋回体120および作業機130を制御する。なお、他の実施形態に係る移動制御部619は、第一旋回を実現する操作信号を生成し、第二旋回を実現する操作信号を生成しなくてもよい。また他の実施形態に係る移動制御部619は、第一旋回を実現する操作信号を生成せず、第二旋回を実現する操作信号を生成してもよい。
【0049】
具体的には、移動制御部619は、第一旋回において、旋回体120の旋回角度が第一干渉回避角度θに到達するまでにクラムバケット133の高さが積込点の高さに至らない場合、旋回体120の旋回操作信号を生成せず、作業機130の操作信号のみを生成する。他方、移動制御部619は、旋回による旋回角度が第一干渉回避角度θに到達するまでにクラムバケット133の高さが積込点の高さに到達する場合、旋回体120の旋回操作信号及び作業機130の操作信号を生成し、旋回体120と作業機130との複合動作を実現する。クラムバケット133の高さが積込点の高さに到達した後は、移動制御部619は、作業機130を動かさずに旋回体120を旋回させる。
移動制御部619が生成する操作信号は、最大の操作量で操作装置143のレバーまたはペダルを操作したときに操作信号入力部613に入力される操作信号に係る駆動量での駆動を指示する信号である。駆動量は、例えば作動油の油量またはスプールの開度である。
なお、積込機械100が遠隔操作によって駆動する場合、移動制御部619が生成する操作信号は、最大の操作量に係る駆動量より大きい駆動量での駆動を指示する信号であってよい。これは、有人運転に係る積込機械100は、オペレータの乗り心地のために操作装置143の最大操作量が制限されるところ、遠隔操作に係る積込機械100は、オペレータの乗り心地による制限がないためである。
旋回角度が第二干渉回避角度θに到達した後、移動制御部619は、旋回体120の旋回操作信号及び作業機130の操作信号を生成し、旋回体120と作業機130との複合動作を実現する。
【0050】
クラム制御部620は、第一旋回においてスティック132の先端が積込点に到達したときに、クラムバケット133を開く操作信号を生成する。またクラム制御部620は、第二旋回において旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θを超えたときに、クラムバケット133を閉じる操作信号を生成する。なお、クラム制御部620は、スティック132の先端が積込点に到達する前であっても、上方からの平面視においてクラムバケット133と積込対象Tとが重なっているときに、クラムバケット133を開く操作信号を生成してもよい。また、第二旋回においても、積込対象Tとクラムバケット133との間に十分な隙間がある場合、クラム制御部620は、第二干渉回避角度θを超える前に、すなわち積込対象Tの上方においてクラムバケット133を閉じる操作信号を生成してもよい。クラムバケット133は、ブーム131、スティック132、クラムバケット133の移動が完了するまでに閉じられればよい。
【0051】
出力判定部621は、操作信号入力部613に入力された手動操作信号と移動制御部619が生成した自動操作信号とに基づいて、旋回体120、ブーム131、スティック132、クラムバケット133、クラムシェル1332のそれぞれ(制御対象)を、手動操作信号と自動操作信号の何れによって制御するかを判定する。出力判定部621は、制御対象ごとに自動操作フラグの値をメインメモリ630に記録し、管理する。出力判定部621は、自動操作フラグがONである制御対象を自動操作信号によって制御し、自動操作フラグがOFFである制御対象を手動操作信号によって制御すると判定する。
操作信号出力部622は、出力判定部621の判定結果に基づいて、操作信号入力部613に入力された手動操作信号、又は移動制御部619が生成した自動操作信号を出力する。
【0052】
《自動制御時の動作》
ここで、図面を参照しながら、第一実施形態に係る自動制御時の積込機械100の動きについて説明する。
図4は、第一実施形態に係る第一旋回における積込機械100の動きの例を示す図である。図5は、第一実施形態に係る第二旋回における積込機械100の動きの例を示す図である。
【0053】
自動制御が開始されると、図4に示すように制御装置160は、まず作業機130(ブーム131、スティック132、及びクラムバケット133)の駆動を開始し、クラムバケット133を上方へ移動させる。すなわち、制御装置160は第一旋回を開始させる。第一旋回に係るクラムバケット133の目標位置は、積込対象Tの上方の積込点である。遅れて、制御装置160は、旋回体120の旋回を開始させる。なお、制御装置160は、作業機130の駆動と同時に旋回体120の旋回を開始させる場合もある。制御装置160は、旋回体120の旋回角度が第一干渉回避角度θと一致するまでに、作業機130の姿勢が第一旋回に係る目標姿勢となるように、旋回開始タイミングを調整する。なお、旋回体120の旋回角度が第一干渉回避角度θと一致するまでに作業機130の姿勢が第一旋回における目標姿勢となっている場合、つまりクラムバケット133の最下点の高さが積込対象Tの上面より高い場合、旋回体120の旋回によって作業機130が積込対象Tに接触することがない。その後、クラムバケット133が積込点に到達すると、制御装置160はクラムバケット133を開き、排土を開始する。
【0054】
排土開始から一定時間が経過すると、制御装置160は図5に示すように第二旋回を開始させる。第二旋回に係るクラムバケット133の目標位置は、旋回体120が自動制御の開始時点の方向を向き、かつ作業機130が掘削準備姿勢をとるときのクラムバケット133の位置である。第二旋回に係るクラムバケット133の目標位置は、上方からの平面視において積込対象Tから離れた位置である。第二旋回に係るクラムバケット133の目標位置の高さは、積込対象Tより低くてもよいし、高くてもよい。制御装置160は、旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θを超えるまで、クラムバケット133の最下点の高さを維持する。
【0055】
旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θを超えると、制御装置160はブーム131、スティック132およびクラムバケット133をすべて駆動させる。旋回体120の旋回角度が目標旋回角度θに至ると、制御装置160は旋回体120の駆動を終了する。また作業機130の姿勢が掘削開始時の目標姿勢となると、制御装置160は作業機130の駆動を終了する。
なお、図4および図5は、掘削位置と積込対象Tとの位置関係が、旋回体120を中心として約90度である例を示すが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態においては、掘削位置と積込対象Tとの位置関係が、旋回体120を中心として約180度であるなど、他の旋回角度位置であってもよい。
【0056】
《制御装置160の動作》
図6は、第一実施形態に係る制御装置160の動作の一部を示すフローチャートである。積込機械100の制御装置160は、稼働中、一定の制御周期ごとに、図6に示す状態更新処理を行う。
【0057】
計測データ取得部611は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブーム角度センサ153、スティック角度センサ154、バケット角度センサ155、及び検出装置156から計測データを取得する(ステップSS1)。マップ生成部612は、ステップSS1で検出装置156から取得した計測データを用いて、メインメモリ630に記録されているマップデータを更新する(ステップSS2)。これにより、制御装置160は、積込機械100の近傍の状況を表すマップデータを常に最新の状態に保ち、マップデータに積込対象Tの最新の位置が表れるようにしておくことができる。
【0058】
作業機位置特定部614は、ステップSS1で取得した計測データに基づいて、旋回体120を基準とする車体座標系におけるスティック132の先端の位置P及びスティック132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さHを特定する(ステップSS3)。これにより、制御装置160は、常に現在の作業機130の姿勢を特定しておくことができる。
【0059】
図7は、第一実施形態に係る制御装置160の旋回と作業機130の駆動の複合制御を示すフローチャート(パート1)である。図8は、第一実施形態に係る制御装置160の旋回と作業機130の駆動の複合制御を示すフローチャート(パート2)である。図9は、第一実施形態に係る制御装置160の旋回と作業機130の駆動の複合制御を示すフローチャート(パート3)である。
オペレータによって開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160の操作信号入力部613は自動制御指示信号の入力を受け付ける。制御装置160は、自動制御信号をトリガとして、図7のステップS0から自動制御を開始する。
【0060】
自動積込指示信号が入力されると、制御装置160の出力判定部621は、旋回体120、ブーム131、スティック132、クラムバケット133、クラムシェル1332のそれぞれに係る自動操作フラグの値をすべてONに設定する(ステップS0)。
次に、制御装置160は、図6に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(ステップS1)。積込対象特定部615は、ステップS1で更新されたマップデータに基づいて、積込対象Tの位置及び形状を特定する(ステップS2)。積込対象特定部615は、ステップS2で特定した積込対象Tの位置とステップS1で特定したスティック132の先端からクラムバケット133の最下点までの高さHに基づいて積込点を決定する(ステップS3)。
【0061】
旋回角度特定部616は、ステップS3で決定したマップデータにおける積込点の位置に基づいて目標旋回角度θを特定する(ステップS4)。マップデータは、車体座標系で表されるため、旋回角度特定部616は、例えば旋回体120の前方に伸びる座標軸に対する積込点の位置ベクトルの角度を目標旋回角度θとして特定する。回避角度特定部617は、ステップS2で特定した積込対象Tの位置及び形状に基づいて第一干渉回避角度θおよび第二干渉回避角度θを特定する(ステップS5)。目標姿勢決定部618は、スティック132の先端が積込点に位置するときのブーム131及びスティック132の姿勢を、目標姿勢として決定する(ステップS6)。
【0062】
次に、制御装置160は、図6に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(ステップS7)。次に、移動制御部619は、ステップS7で特定された作業機130の姿勢が、ステップS6で決定した目標姿勢と近似するか否かを判定する(ステップS8)。例えば、移動制御部619は、目標姿勢におけるスティック132の先端の位置と、現在のスティック132の先端の位置との差が所定値以下である場合に、作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していると判定する。
【0063】
作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していない場合(ステップS8:NO)、移動制御部619は、ブーム131及びスティック132を目標姿勢に近づける自動操作信号を生成する(ステップS9)。このとき、移動制御部619は、ステップS7で特定されたブーム131及びスティック132の位置及び速度に基づいて、自動操作信号を生成する。
【0064】
また移動制御部619は、生成したブーム131及びスティック132の自動操作信号に基づいてブーム131及びスティック132の駆動速度の和を算出し、当該駆動速度の和と同じ速度でクラムバケット133を駆動させる自動操作信号を生成する(ステップS10)。これにより、移動制御部619は、クラムバケット133の対地角を保持する操作信号を生成することができる。
【0065】
移動制御部619は、作業機130が旋回中であるか否かを判定する(ステップS11)。移動制御部619は、例えば旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合に旋回中であると判定する。作業機130が旋回中でない場合(ステップS11:NO)、移動制御部619は、ステップS7で特定したブーム131及びスティック132の速度に基づいて作業機130が目標姿勢となるまでの完了時間を算出する(ステップS12)。また、移動制御部619は、旋回体120が旋回を開始した場合に旋回角度がステップS5で特定した第一干渉回避角度θに到達するまでの到達時間を算出する(ステップS13)。移動制御部619は、ステップS12で算出した完了時間がステップS13で算出した到達時間未満であるか否かを判定する(ステップS14)。つまり、移動制御部619は、旋回角度が第一干渉回避角度θに到達するときに作業機130が目標姿勢となるか否かを判定する。
【0066】
完了時間が到達時間以上である場合(ステップS14:NO)、すなわち旋回角度が第一干渉回避角度θに到達するまでに作業機130が目標姿勢とならない場合、移動制御部619は旋回体120の旋回操作信号を生成しない。他方、完了時間が到達時間未満である場合(ステップS14:YES)、すなわち旋回角度が第一干渉回避角度θに到達するまでに作業機130が目標姿勢となる場合、移動制御部619は旋回体120の旋回操作信号を生成する(ステップS15)。これにより、制御装置160は、作業機130が積込対象Tと接触することを防ぐことができる。
【0067】
出力判定部621は、メインメモリ630に記録されたすべての自動操作フラグの値がONであるため、いずれの制御対象も自動操作信号によって制御すると判定する。これにより、操作信号出力部622は、ステップS9、S10、S15の少なくとも何れか1つで生成された自動操作信号を、コントロールバルブ123に出力する(ステップS16)。これにより、積込機械100が駆動する。そして、制御装置160は、処理をステップS7に戻し、制御を継続する。
【0068】
他方、ステップS11にて作業機130が旋回中であると判定された場合(ステップS11:YES)、移動制御部619は、ステップS7で特定した作業機130の旋回速度に基づいて、旋回の操作信号を停止した場合に、惰性による旋回によってスティック132の先端が積込点に到達するか否かを判定する(ステップS17)。惰性による旋回ではスティック132の先端が積込点に到達しない場合(ステップS17:NO)、移動制御部619はステップS15にて旋回操作信号を生成し、操作信号出力部622はステップS16にて旋回操作信号をコントロールバルブ123に出力する。
【0069】
他方、惰性による旋回によってスティック132の先端が積込点に到達すると判定された場合(ステップS17:YES)、制御装置160は、図6に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(図8のステップS18)。なお、マップデータ及び作業機130の姿勢は積込点に到達した特に更新してもよい。移動制御部619は、ステップS18で更新された旋回体120の角度に基づいて、スティック132の先端が積込点に到達したか否かを判定する(ステップS19)。スティック132の先端が積込点に到達していない場合(ステップS19:NO)、制御装置160は処理をステップS18に戻し、積込点への到達を待機する。このとき、メインメモリ630に記録された自動操作信号の値はすべてONであるため、制御装置160は操作装置143の手動操作を受け付けない。
【0070】
スティック132の先端が積込点の近傍に到達した場合(ステップS19:YES)、クラム制御部620は、クラムバケット133の開操作信号を生成する(ステップS20)。クラム制御部620は、積込点より手前でクラムバケット133を開いてもよいし、積込点に到達した後にクラムバケット133を開いてもよい。操作信号出力部622はステップS20で生成した開操作信号をコントロールバルブ123に出力する(ステップS21)。クラム制御部620は、クラムバケット133の開操作信号を出力してから一定時間の経過を待機する(ステップS22)。この時間は、開いたクラムバケット133から土砂が一定量落ちるまでの時間である。なお、この時間は、クラムバケット133からすべての土砂が落ちるまでの時間より短くてよい。
【0071】
一定時間後、制御装置160は、第二旋回に係る制御を開始する。目標姿勢決定部618は、予め定められた作業機130の掘削開始姿勢をストレージ650から読み出すことで、作業機130の第二旋回における目標姿勢を決定する(ステップS23)。
【0072】
次に、制御装置160は、図6に示す状態更新処理により、計測データ、マップデータ及び作業機130の姿勢を最新の状態に更新する(ステップS24)。次に、移動制御部619は、排土開始時から現時点までの旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θ未満であるか否かを判定する(ステップS25)。旋回角度が第二干渉回避角度θ未満である場合(ステップS25:YES)、移動制御部619は作業機130の姿勢を維持する操作信号(中立信号)を生成する。
【0073】
ステップS25において、旋回角度が第二干渉回避角度θ以上である場合(ステップS25:NO)、移動制御部619は、ステップS24で特定された作業機130の姿勢が、ステップS23で決定した目標姿勢と近似するか否かを判定する(ステップS26)。作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していない場合(ステップS26:NO)、移動制御部619は、ブーム131、スティック132及びクラムバケット133を目標姿勢に近づける自動操作信号を生成する(ステップS27)。またクラム制御部620はクラムバケット133の閉操作信号を生成する(ステップS28)。作業機130の姿勢が目標姿勢と近似している場合(ステップS26:YES)、移動制御部619は作業機130の姿勢を維持する中立信号を生成する。
【0074】
また、移動制御部619は、ステップS24で特定した作業機130の旋回速度に基づいて、旋回の操作信号を停止した場合に、惰性による旋回によってステップS4で特定した目標旋回角度θまで旋回できるか否かを判定する(ステップS29)。惰性による旋回では目標旋回角度θまで旋回できない場合(ステップS29:NO)、移動制御部619は旋回操作信号を生成する(ステップS30)。他方、惰性による旋回では目標旋回角度θまで旋回できる場合(ステップS29:YES)、移動制御部619は旋回操作信号を生成しない。
【0075】
次に、出力判定部621は、図9に示すように制御対象(旋回体120、ブーム131、スティック132、クラムバケット133、クラムシェル1332)を1つずつ選択し(ステップS31)、選択した制御対象についてステップS31からステップS42の処理を実行する。
【0076】
出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグの値がONであるか否かを判定する(ステップS32)。自動操作フラグの値がONである場合(ステップS32:YES)、出力判定部621は、操作信号入力部613がステップS31で選択した制御対象を操作するための手動操作信号の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS33)。出力判定部621は、手動操作信号の操作量が所定の第一の閾値以上である場合に、手動操作信号の入力を受け付けたと判定する。なお、第一の閾値は、手動操作信号の操作方向が自動操作信号の操作方向に対して順方向である場合と逆方向である場合とで異なるものであってよい。例えば、操作方向が逆方向のときの第一の閾値は、操作方向が順方向のときの第一の閾値より大きいものであってよい。
【0077】
なお、旋回体120に係る手動操作信号は、左操作レバー143LOによる左右方向の操作信号である。ブーム131に係る手動操作信号は、右操作レバー143ROによる前後方向の操作信号である。スティック132に係る手動操作信号は、左操作レバー143LOによる前後方向の操作信号である。クラムバケット133の回動に係る手動操作信号は、右操作レバー143ROの左右方向の操作信号である。クラムシェル1332の開閉に係る手動操作信号は、クラムオープンペダル143CO及びクラムクローズペダル143CCの操作信号である。
【0078】
ステップS31で選択した制御対象に係る手動操作信号の入力がある場合(ステップS33:YES)、出力判定部621は、手動操作信号が、ステップS27、S28又はS30で生成された制御対象に係る自動操作信号に抵抗する操作を表すか否かを判定する(ステップS34)。具体的には、出力判定部621は、手動操作信号の操作方向が自動操作信号の操作方向と逆方向である場合、又は手動操作信号の操作がブレーキ操作である場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。例えば、出力判定部621は、自動操作信号が左回りの旋回操作を表し、手動操作信号が右回りの旋回操作を表す場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。また例えば、出力判定部621は、自動操作信号がクラムシェル1332の閉操作を表し、手動操作信号がクラムシェル1332の開操作を表す場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。また例えば、出力判定部621は、自動操作信号が左回りの旋回操作を表し、手動操作信号が旋回ブレーキペダル143TBの踏下を表す場合に、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作を表すと判定する。
【0079】
手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作でない場合(ステップS34:NO)、つまり、手動操作信号の操作方向と自動操作信号の操作方向とが同じ場合、出力判定部621は、手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満であるか否かを判定する(ステップS35)。
手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量未満である場合(ステップS35:YES)、またはステップS33で手動操作信号の入力がないと判定した場合(ステップS33:NO)、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象の制御量が目標値に到達したか否かを判定する(ステップS36)。制御対象が旋回体120である場合、出力判定部621は、旋回角度が開始角度θに到達したか否かを判定する。制御対象がブーム131、スティック132又はクラムバケット133である場合、出力判定部621は、回転角がステップS23で決定した目標姿勢に係る角度に到達したか否かを判定する。制御対象がクラムシェル1332である場合、出力判定部621は、開度がゼロに到達したか否かを判定する。
【0080】
ステップS31で選択した制御対象の制御量が目標値に到達していない場合(ステップS36:NO)、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象を自動操作信号によって制御すると判定する。すなわち、ステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグの値はONに維持される。操作信号出力部622は、ステップS27、S28又はS30で生成された自動操作信号のうちステップS31で選択した制御対象に係る自動操作信号を出力する(ステップS37)。
【0081】
他方、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作である場合(ステップS34:YES)、出力判定部621は、ステップS31で選択した制御対象が作業機130を構成する複数のリンク部品(ブーム131、スティック132及びクラムバケット133)の何れかであるか否かを判定する(ステップS38)。制御対象が作業機130を構成するリンク部品である場合(ステップS38:YES)、手動操作信号の操作量の絶対値があらかじめ設定された最大操作量を判定する所定の第二の閾値(例えば、操作量が99%)以上であるか否かを判定する(ステップS39)。
【0082】
手動操作信号の操作量の絶対値が第二の閾値以上である場合(ステップS39:YES)、つまりオペレータが操作装置143で操作した手動操作信号の操作方向と自動操作信号の操作方向とが互いに逆方向に第二の閾値以上の操作量で操作された場合、出力判定部621は、すべてのリンク部品に係る自動操作フラグをOFFに切り替え(ステップS40)、ステップS31で選択した制御対象に係る手動操作信号を出力する(ステップS42)。また、すべてのリンク部品とは、自動操作フラグがONである自動制御中のすべてのリンク部品のことである。つまり、既に自動操作フラグがOFFであるリンク部品については、出力判定部621は自動操作フラグを改めてOFFに切り替える処理を行わなくてもよい。
操作装置143が自動操作信号の操作方向と逆方向に最大操作量である第二の閾値以上で操作されたということは、作業機130が積込対象Tまたは障害物に接触しそうになり、これを回避するためにオペレータが操作装置143を操作した可能性が高い。そのため、出力判定部621は、すべてのリンク部品の自動操作を停止することで、自動操作による作業機130の下降によって接触が生じることを防ぐことができる。
【0083】
他方、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作であって操作量の絶対値が第二の閾値未満である場合(ステップS39:NO)、出力判定部621はステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグをOFFに切り替え(ステップS41)、ステップS31で選択した制御対象に係る手動操作信号を出力する(ステップS42)。
操作装置143が自動操作信号の操作方向と逆方向に操作される一方で、その操作量が第二の閾値に至らないということは、オペレータが想定するより制御対象が速く下降しているために、オペレータが下降速度を低下させるために操作装置143を操作した可能性が高い。そのため、出力判定部621は、他のリンク部品の自動操作を停止せず、対象のリンク部品についてのみ手動操作に切り替えることで、他のリンク部品に係る自動操作を妨げることなく、対象のリンク部品についてオペレータの意図に応じた駆動を実現することができる。
【0084】
また、手動操作信号が自動操作信号に抵抗する操作であって制御対象が旋回体120である場合(ステップS38:NO)、または手動操作信号が自動操作信号に抵抗しない操作であって操作量が自動操作信号の操作量未満でない場合、つまり手動操作信号の操作方向と自動操作信号の操作方向とが同じであり、手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量より大きくなった場合(ステップS35:NO)、または制御対象の制御量が目標値に到達した場合(ステップS36:YES)についても、出力判定部621はステップS31で選択した制御対象に係る自動操作フラグをOFFに切り替え(ステップS41)、ステップS31で選択した制御対象に係る手動操作信号を出力する(ステップS42)。
【0085】
ステップS31からステップS42の処理によって各制御対象について自動操作信号又は手動操作信号が出力されると、出力判定部621は、メインメモリ630に記録された自動操作フラグの値がすべてOFFであるか否かを判定する(ステップS43)。つまり、出力判定部621は、全ての制御対象が手動操作に切り替わったか否かを判定する。
少なくとも1つの自動操作フラグの値がONである場合(ステップS43:NO)、制御装置160は図8のステップS24に処理を戻し、自動制御を継続する。他方、全ての自動操作フラグの値がOFFである場合(ステップS43:YES)、制御装置160は自動制御を終了する。
【0086】
《作用・効果》
このように、第一実施形態に係る制御装置160は、複数のリンク部品の少なくとも1つについて手動操作信号の操作方向と自動操作信号の操作方向とが互いに逆方向になり、かつ手動操作信号の操作量の絶対値が最大操作量を判定する第二の閾値を超えた場合、複数のリンク部品すべてについて手動操作信号を出力する。自動操作信号の操作方向と逆向き、かつ操作量の絶対値が最大操作量を判定する第二の閾値を超える手動操作は、オペレータによる接触回避操作である可能性が高い。そのため、制御装置160は、接触回避操作以降、複数のリンク部品のすべてを手動操作に切り替えることで、自動操作による作業機130の下降によって接触が生じることを防ぐことができる。つまり、第一実施形態に係る制御装置160は、積込機械100の自動制御中に、オペレータの操作の意図に応じて積込機械100を制御することができる。
【0087】
また、第一実施形態に係る制御装置160は、複数のリンク部品の少なくとも1つについて、手動操作信号の操作量が最大操作量を判定する第二の閾値を超えずに、手動操作信号の操作方向と自動操作信号の操作方向とが互いに逆方向になったとき、かつ操作量が第一の閾値を超えた場合、当該リンク部品について手動操作信号を出力する。また、制御装置160は、手動操作信号の操作方向と自動操作信号の操作方向とが同じであり、かつ手動操作信号の操作量が自動操作信号の操作量より大きくなった場合、当該リンク部品について手動操作信号を出力する。
最大操作量に至らない程度に、自動操作信号の操作方向と逆方向に操作される手動操作は、オペレータが下降速度を低下させるためになされた操作である可能性が高い。また、自動操作信号の操作方向と同じ方向に、かつ自動操作より大きい操作量でなされる手動操作は、オペレータが下降速度を増加させるためになされた操作である可能性が高い。そのため、制御装置160は、このような操作がなされた場合、操作されたリンク部品について手動操作に切り替えることで、対象のリンク部品についてオペレータの意図に応じた駆動を実現することができる。なお、第一実施形態では、自動操作信号の操作方向と同じ方向に、かつ自動操作より大きい操作量でなされる手動操作が入力された場合に、操作されたリンク部品について手動操作に切り替えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、自動操作信号の操作方向と同じ方向に第一閾値を超える操作量でなされる手動操作が入力された場合に、当該操作量が自動操作より大きいか否かに関わらず、操作されたリンク部品について手動操作に切り替えてもよい。
【0088】
さらに、第一実施形態に係る制御装置160は、このような操作がなされたときに、操作されていない他のリンク部品について手動操作に切り替えない。これにより、制御装置160は、他のリンク部品に係る自動操作を妨げることなく、対象のリンク部品についてオペレータの意図に応じた駆動を実現することができる。例えば、作業機についてオペレータの操作があった場合にすべてのリンク部品を手動操作に切り替える場合、オペレータによる他のリンク部品についての操作が遅れると、その分時間のロスが生じ、作業効率が低下する可能性がある。これに対し、第一実施形態のように他のリンク部品について自動操作から手動操作に切り替えないことで、オペレータによる他のリンク部品についての操作が遅れたとしても、他のリンク部品については自動操作がなされるため、時間のロスが生じず、作業効率が低下しない。
【0089】
第一実施形態に係る制御装置160は、第二旋回に係る自動制御において、自動操作と手動操作の切替を行う。これは、第二旋回は、次の自動制御によって定められる掘削開始位置がオペレータの意図する位置と異なる可能性が高く、また作業機130を下降させる操作であるために障害物との接触のリスクが存在するためである。他方、他の実施形態においては、第一旋回においても、同様に自動操作信号の操作方向と逆方向に操作される手動操作が最大操作量でなされた場合に、すべてのリンク部品について動作を停止させてもよい。ただし、第一旋回においては、積込対象Tとの接触を防ぐために、制御装置160は、作業機130の駆動に加え、旋回体120の駆動も停止させるのが好ましい場合がある。このとき、制御装置160は、旋回体120の駆動が停止した後にすべてのリンク部品の駆動を停止させてもよい。
【0090】
第一実施形態に係る制御装置160は、クラムバケット133が積込対象Tの上方に位置する場合には、手動操作信号の有無にかかわらず自動操作信号を出力する。すなわち、クラムバケット133が積込対象Tの上方に位置する場合には、リンク部品を下降させる手動操作信号が入力されても自動操作信号を出力し続ける。これにより、クラムバケット133が積込対象Tの上方に位置する間に作業機130が下降してクラムバケット133と積込対象Tとが接触することを防ぐことができる。
【0091】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0092】
上述した実施形態に係る制御装置160は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置160の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置160として機能するものであってもよい。このとき、制御装置160を構成する一部のコンピュータが積込機械100の内部に搭載され、他のコンピュータが積込機械100の外部に設けられてもよい。
【0093】
上述した実施形態に係る目標姿勢は、予め設定されてメインメモリ630又はストレージ650に記録されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、操作端末142の操作によって目標姿勢を変更可能に構成してもよい。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、操作端末142にブーム131、スティック132及びクラムバケット133の位置及び角度を表す数値を入力することで目標姿勢を変更してもよい。また他の実施形態に係る積込機械100は、オペレータの操作によって作業機130を好ましい姿勢に制御した後、操作端末142を操作することで、作業機位置特定部614が作業機130の姿勢を特定し、目標姿勢を当該姿勢で上書きしてもよい。
【0094】
上述した実施形態に係る制御装置160は、検出装置156の計測データに基づくSLAMのマップデータに基づいて積込対象を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、積込対象の緯度、経度及び向く方位の入力を受け付け、位置方位演算器151の計測結果から積込対象の車体座標系における位置及び形状を計算してもよい。また、他の実施形態に係る制御装置160は、車体座標系でなく、緯度、経度及び高度で表されるグローバル座標系に基づいて積込機械100を制御してもよい。この場合、制御装置160は、目標旋回角度や旋回角度などの角度を、グローバル座標系の基準方位に対する角度として計算してもよい。
【0095】
上述した実施形態に係る制御装置160は、傾斜計測器152が計測した旋回体120の角速度を積分することで、旋回体120の角度を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、位置方位演算器151が計測する方位の差分に基づいて旋回体120の角度を算出してもよい。また他の実施形態においては、旋回モータ124に設けた回転角センサの検出値を用いて旋回体120の角度を特定してもよい。
【0096】
上述した実施形態に係る制御装置160は、旋回角度と干渉回避角度の比較に基づいて自動制御を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、クラムバケット133の位置と積込対象Tの外形のうち旋回体120の旋回方向の最も後方の点p図4)との比較に基づいて自動制御を行ってもよい。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、クラムバケット133が点pの近傍の領域に位置するように旋回開始タイミングを調整してよい。
また他の実施形態においては、制御装置160は、クラムバケット133が予め指定された軌跡を通るように、各リンク部品および旋回体120の自動制御信号を生成してもよい。軌跡は、例えば所定の曲線関数とのフィッティングによって決定されてもよいし、手動操作によるティーチングによって決定されてもよい。軌跡は、クラムバケット133の姿勢、各リンク部品および旋回体120の姿勢、または操作信号を、時系列に並べたものによって表されてよい。
【0097】
上述した実施形態に係る積込機械100は、オペレータが運転室140に搭乗して直接操作するものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、遠隔操作により動作するものであってもよい。すなわち、他の実施形態では、遠隔に設けられた操作装置143から通信によって操作信号が制御装置160に伝送されてよい。また、制御装置160は、遠隔地に設けられたコンピュータによって構成されてもよいし、積込機械100と遠隔地とのそれぞれに設けられたコンピュータに機能を分担させた制御システムで構成されてもよい。
【0098】
上述した実施形態に係る自動制御は、クラムバケット133を掘削完了時の位置から、積込点へ移動させ、さらに次の掘削を開始するための位置へ移動させるものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、クラムバケット133を、手動操作により掘削完了時の位置から積込点へ移動させて排土し、積込機械100が積込点から次の掘削を開始するための位置への移動(第二旋回)のみを自動制御するようにしてもよい。この場合、オペレータはクラムバケット133が積込点へ到達した後に、次の掘削を開始するための位置へ作業機を駆動させるための信号を、操作レバーなどに設けたスイッチ操作により制御装置160に出力するようにしてもよい。前述のスイッチからの信号により、制御装置160は、上述した実施形態に係る自動制御の場合と同様に、作業機130の姿勢が掘削開始時とは別の予め設定した目標姿勢となるように作業機130を制御する。また、他の実施形態においては、第一旋回動作を行わない状態から自動制御によって第二旋回を行うようにしてもよい。
【0099】
上述した実施形態に係る制御装置160は、スティック132の先端の位置Pに基づいて作業機130を制御するが、スティック132の先端の位置Pはスティック132の先端の中心であってもよいし、左右にずれた位置であってもよい。また、他の実施形態においては、スティック132の先端の位置Pに代えて、クラムバケット133の任意の位置に基づいて作業機130を制御してもよい。
【符号の説明】
【0100】
100…積込機械 110…走行体 111…無限軌道 112…走行モータ 120…旋回体 121…エンジン 122…油圧ポンプ 123…コントロールバルブ 124…旋回モータ 130…作業機 131…ブーム 131C…ブームシリンダ 132…スティック 132C…スティックシリンダ 133…クラムバケット 1331…バックオール 1332…クラムシェル 1332C…クラムシリンダ 133C…バケットシリンダ 140…運転室 141…運転席 142…操作端末 143…操作装置 151…位置方位演算器 152…傾斜計測器 153…ブーム角度センサ 154…スティック角度センサ 155…バケット角度センサ 156…検出装置 160…制御装置 610…プロセッサ 611…計測データ取得部 612…マップ生成部 613…操作信号入力部 614…作業機位置特定部 615…積込対象特定部 616…旋回角度特定部 617…回避角度特定部 618…目標姿勢決定部 619…移動制御部 620…クラム制御部 621…出力判定部 622…操作信号出力部 630…メインメモリ 650…ストレージ 670…インタフェース T…積込対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9