IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-部品実装機 図1
  • 特開-部品実装機 図2
  • 特開-部品実装機 図3
  • 特開-部品実装機 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106575
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240801BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H05K13/04 Q
H05K13/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010908
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 健人
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353BB01
5E353BC10
5E353EE89
5E353GG01
5E353GG30
5E353JJ21
5E353JJ28
5E353JJ48
5E353QQ01
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】部品の位置がずれることを抑制しつつ、部品実装機の生産効率を向上させ得る技術を提供する。
【解決手段】部品実装機は、基板の裏面を下方から支持する実装支持面を有する支持台と、基板を搬送する搬送支持面を有する一対のコンベアと、移動機構と、吸着状態と、吸着解除状態と、に切り替え可能な吸着装置と、を備える。移動機構は、部品が基板の表面に実装されている間、一対のコンベアの搬送支持面を支持台の実装支持面の下方に維持し、部品が基板の表面に実装された後、一対のコンベアの搬送支持面を支持台の実装支持面の上方に維持する。制御装置は、部品が基板の表面に実装されている間、吸着装置を吸着状態に維持し、部品が基板の表面に実装された後、移動機構によって支持台の実装支持面と一対のコンベアの搬送支持面とが同一の高さとなる前に、吸着装置を吸着状態から吸着解除状態に切り替える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板の表面に実装する部品実装機であって、
前記部品が前記基板の前記表面に少なくとも実装されている間、前記基板の裏面を下方から支持する実装支持面を有する支持台と、
前記部品が前記表面に実装された前記基板の前記裏面の幅方向の端部を下方から支持して前記基板を搬送する搬送支持面を有する一対のコンベアと、
前記支持台を下方に移動させる第1の機構と、前記一対のコンベアを上方に移動させる第2の機構と、の少なくとも一方の機構を備える移動機構と、
前記実装支持面から延びる空気流路と接続されており、前記実装支持面に前記基板の前記裏面を吸着する吸着状態と、前記吸着状態を解除する吸着解除状態と、に切り替え可能な吸着装置と、
前記吸着装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記移動機構は、
前記部品が前記基板の前記表面に実装されている間、前記一対のコンベアの前記搬送支持面を前記支持台の前記実装支持面の下方に維持し、
前記部品が前記基板の前記表面に実装された後、前記一対のコンベアの前記搬送支持面を前記支持台の前記実装支持面の上方に維持し、
前記制御装置は、
前記部品が前記基板の前記表面に実装されている間、前記吸着装置を前記吸着状態に維持し、
前記部品が前記基板の前記表面に実装された後、前記移動機構によって前記支持台の前記実装支持面と前記一対のコンベアの前記搬送支持面とが同一の高さとなる前に、前記吸着装置を前記吸着状態から前記吸着解除状態に切り替える、
部品実装機。
【請求項2】
前記吸着装置は、前記空気流路を介して、前記実装支持面と前記基板の前記裏面との間に空気を供給する空気供給装置を備え、
前記制御装置は、前記実装支持面と前記搬送支持面とが同一の高さとなる前に、前記空気供給装置による前記空気の供給を開始する、
請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記吸着装置を前記吸着状態から前記吸着解除状態に切り替えた後、所定時間が経過するまで、前記吸着装置を前記吸着解除状態に維持する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記基板は、ウェハである、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、部品実装機に関する。特に、基板の裏面を支持台の上面に吸着させた状態で、部品を基板の表面に実装する部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の部品実装機は、部品実装中に基板の位置がずれることを防止するために、部品が基板の表面に実装されている間、基板の裏面を基板載置部に吸着する。部品が基板の表面に実装されると、基板の裏面に向かって窒素を吐出し、基板を基板載置部から浮かせた状態とし、基板載置部に対する基板の位置を調整する。基板の位置が調整されると、窒素の吐出を停止し、昇降機構によって基板を上昇させて基板を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-85881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような部品実装機では、少なくとも部品を基板の表面に実装している間は、基板の裏面を基板載置部に強固に吸着することが求められる。一方で、部品が基板の表面に実装された後は、基板の吸着を停止するとともに、部品が実装された基板を迅速に搬送することが求められる。例えば、部品が基板の表面に実装された後、基板の裏面が基板載置部に吸着されている状態で基板の搬送が開始されてしまうと、基板が変形し、表面に実装された部品の位置がずれてしまうおそれがある。一方、部品が基板の表面に実装された後、基板搬送を開始するまでの時間を長くすると、部品実装機の生産効率が低下する。本明細書では、基板の搬送が開始される際に、部品の位置がずれることを抑制しつつ、部品実装から基板搬送開始までの時間を短くすることで部品実装機の生産効率を向上させ得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、部品を基板の表面に実装する部品実装機に関する技術を開示する。部品実装機は、前記部品が前記基板の前記表面に少なくとも実装されている間、前記基板の裏面を下方から支持する実装支持面を有する支持台と、前記部品が前記表面に実装された前記基板の前記裏面の幅方向の端部を下方から支持して前記基板を搬送する搬送支持面を有する一対のコンベアと、前記支持台を下方に移動させる第1の機構と、前記一対のコンベアを上方に移動させる第2の機構と、の少なくとも一方の機構を備える移動機構と、前記実装支持面から延びる空気流路と接続されており、前記実装支持面に前記基板の前記裏面を吸着する吸着状態と、前記吸着状態を解除する吸着解除状態と、に切り替え可能な吸着装置と、前記吸着装置を制御する制御装置と、を備える。前記移動機構は、前記部品が前記基板の前記表面に実装されている間、前記一対のコンベアの前記搬送支持面を前記支持台の前記実装支持面の下方に維持し、前記部品が前記基板の前記表面に実装された後、前記一対のコンベアの前記搬送支持面を前記支持台の前記実装支持面の上方に維持する。前記制御装置は、前記部品が前記基板の前記表面に実装されている間、前記吸着装置を前記吸着状態に維持し、前記部品が前記基板の前記表面に実装された後、前記移動機構によって前記支持台の前記実装支持面と前記一対のコンベアの前記搬送支持面とが同一の高さとなる前に、前記吸着装置を前記吸着状態から前記吸着解除状態に切り替える。
【0006】
上記の部品実装機では、部品が基板の表面に少なくとも実装されている間、基板の裏面が支持台の実装支持面に強固に吸着される。さらに、部品が基板の表面に実装された後、支持台の実装支持面と一対のコンベアの搬送支持面とが同一の高さとなる前に、基板の裏面の実装支持面への吸着が解除される。このため、基板が実装支持面から搬送支持面に乗り換えるときに、基板の裏面が実装支持面に吸着されないようにすることができる。その結果、搬送支持面に支持された基板の変形が抑制される。このため、本明細書が開示する部品実装機によれば、移動機構による支持台及び/又は一対のコンベアの移動速度を大きくすることができる。これにより、部品が基板の表面に実装された後、一対のコンベアによる基板の搬送を開始するまでの時間を短縮することができる。部品実装機は、基板の搬送が開始される際に、部品の位置がずれることを抑制しつつ、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】部品実装期間中における実施例の部品実装機の側面図。
図2】部品実装が完了した後における実施例の部品実装機の側面図。
図3図2のIII-III線における断面図。
図4】圧力供給装置の制御を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
本明細書に開示する部品実装機では、吸着装置は、前記空気流路を介して、前記実装支持面と前記基板の前記裏面との間に空気を供給する空気供給装置を備えてもよい。その場合、前記制御装置は、前記実装支持面と前記搬送支持面とが同一の高さとなる前に、前記空気供給装置による前記空気の供給を開始してもよい。
【0010】
このような構成によると、実装支持面と搬送支持面とが同一の高さとなる前に、実装支持面と基板の裏面との間に空気が供給される。このため、基板が搬送支持面に乗り換えるタイミングにおいて、空気によって基板が実装支持面から押し上げられる。これにより、基板が搬送支持面に乗り換える際の基板の変形をより確実に抑制することができる。その結果、移動機構の移動速度をさらに大きくすることができる。
【0011】
本明細書に開示する部品実装機では、前記制御装置は、前記吸着装置を前記吸着状態から前記吸着解除状態に切り替えた後、所定時間が経過するまで、前記吸着装置を前記吸着解除状態に維持してもよい。
【0012】
このような構成によると、基板が実装支持面から搬送支持面に確実に乗り換えるまで、基板の裏面の実装支持面への吸着が解除された状態を維持することができる。
【0013】
ウェハは、比較的に厚みが薄いため、特に変形しやすい。このため、本明細書に開示する技術は、基板としてウェハを採用するに部品実装機に対して、特に有益である。
【0014】
(実施例)
図面を参照して本実施例の部品実装機について説明する。まず、図1図3を参照して、本実施例の部品実装機10の構成について説明する。部品実装機10は、フィーダ(図示省略)によって供給位置に供給された電子部品20を、ウェハ22の表面24に対して実装し、実装が完了したウェハ22を搬送する装置である。図1は、部品実装機10が、電子部品20をウェハ22の表面24に対して実装している様子を示す。すなわち、図1は、部品実装期間中の部品実装機10の側面図を示す。図2は、電子部品20が実装されたウェハ22を搬送する様子を示す。すなわち、図2は、部品搬送期間中の部品実装機10の側面図を示す。図3は、図2の線III-IIIに沿った断面図であり、部品実装機10の平面図を示す。なお、以下では、電子部品20を、「部品20」と簡単に記載する。
【0015】
部品実装機10は、ヘッド移動装置2、装着ヘッド4と、支持台30と、一対のコンベア40F、40Rと、昇降装置50と、圧力供給装置60と、制御装置70と、を備える。
【0016】
装着ヘッド4は、一又は複数の吸着ノズル6を着脱可能に保持する。吸着ノズル6は、部品20を吸着する。ヘッド移動装置2は、フィーダ及びウェハ22に対して、装着ヘッド4を水平方向に移動させる。これにより、フィーダから、吸着ノズル6によって部品20が取り上げられ、ウェハ22の予め定められた位置に部品20が装着される。
【0017】
ウェハ22は、回路基板であり、典型的にはシリコンで構成される。ウェハ22は、例えば、1mm程度の厚みを有する。
【0018】
支持台30の上部には、平坦な実装支持面34が設けられている。部品20をウェハ22の表面24に対して実装している間、支持台30の実装支持面34は、ウェハ22の裏面26と当接する。これにより、部品20をウェハ22の表面24に対して実装している間、ウェハ22の裏面26は、支持台30の実装支持面34によって支持される。支持台30の内部には、複数の空気流路32が形成されている。複数の空気流路32のそれぞれは、支持台30の内部を+Z方向(すなわち、図1の紙面上方向)に沿って、実装支持面34に向かって延びている。複数の空気流路32の上端は、実装支持面34で開放される。複数の空気流路32は、エアホース36を介して、圧力供給装置60に接続される。
【0019】
圧力供給装置60は、分岐バルブ62と、負圧バルブ64と、正圧バルブ66と、負圧側配管68と、正圧側配管69と、負圧ポンプ80と、正圧ポンプ90と、を備える。圧力供給装置60は、支持台30の空気流路32内に負圧または正圧を供給する装置である。
【0020】
圧力供給装置60は、制御装置70によって制御される。制御装置70は、CPUを備えるコンピューターである。制御装置70は、圧力供給装置60を、図1に示される「吸着状態」と、図2に示される「吸着解除状態」と、に切り替える。
【0021】
図1に示されるように、吸着状態では、制御装置70は、分岐バルブ62によって空気流路32と負圧バルブ64とを連通させ、さらに、負圧バルブ64を開いた状態で負圧ポンプ80をオンする。これにより、負圧ポンプ80によって空気流路32内の空気A1が排出される。その結果、空気流路32内に負圧が発生し、ウェハ22の裏面26が支持台30の実装支持面34に吸着される。本実施例における圧力供給装置60の「吸着状態」は、制御装置70が負圧バルブ64を開いた状態で負圧ポンプ80をオンすることによって、空気流路32内に負圧が発生し、ウェハ22の裏面26が支持台30の実装支持面34に吸着可能な状態となることを意味する。すなわち、「吸着状態」は、ウェハ22の裏面26が支持台30の実装支持面34に実際に吸着していることを要件としない。
【0022】
部品実装機10は、圧力供給装置60を吸着状態に維持した状態で、装着ヘッド4および吸着ノズル6によって部品20をウェハ22の表面24に実装する。これにより、部品20がウェハ22の表面24に実装されている間、ウェハ22の位置がずれることを防止することができる。
【0023】
図2に示されるように、吸着解除状態では、制御装置70は、負圧ポンプ80をオフするとともに、分岐バルブ62によって空気流路32と正圧バルブ66とを連通させる。なお、本実施例における圧力供給装置60の「吸着解除状態」は、制御装置70が負圧バルブ64を閉じた状態で負圧ポンプ80をオフすることによって、空気流路32内の負圧が解消され、ウェハ22の裏面26が支持台30の実装支持面34に吸着されない状態となることを意味する。すなわち、「吸着解除状態」は、ウェハ22の裏面26が支持台30の実装支持面34に実際に吸着されていないこと(例えば、両者が離間して当接していないこと)を要件としない。
【0024】
さらに、制御装置70は、正圧バルブ66を開いた状態で正圧ポンプ90をオンすることができる。これにより、正圧ポンプ90によって空気流路32内に空気A2が流入する。すなわち、正圧ポンプ90は、空気流路32内に正圧を供給する。その結果、空気流路32内が正圧となり、空気A2が、空気流路32を通過して、支持台30の実装支持面34から、実装支持面34と裏面26との間の空間S1に供給される。空間S1に供給された空気A2は、ウェハ22の裏面26を押し上げる。これにより、ウェハ22の裏面26は、支持台30の実装支持面34から離間する。
【0025】
図1図3に示されるように、一対のコンベア40F、40Rは、支持台30のY方向(すなわち、図1の紙面左右方向)の両側に位置する。すなわち、一対のコンベア40F、40Rは、支持台30に対して支持台30の幅方向の両側から隣接する。一対のコンベア40F、40Rは、いわゆるベルトコンベアであり、一対のベルト42F、42Rと、一対のローラ43F、43Rと、を備える。特に図3に示されるように、一対のコンベア40F、40Rは、ウェハ22のY方向の両端を下方から支持して、搬送方向D1にウェハ22を搬送する。
【0026】
昇降装置50は、支持台30および一対のコンベア40F、40Rの下方に位置する。昇降装置50は、台座52と、支持台昇降部54と、を備える。台座52は、支持台昇降部54を昇降可能に支持する。支持台昇降部54は、支持台30を上下方向に移動させる。
【0027】
部品20がウェハ22の表面24に実装される前、昇降装置50は、支持台昇降部54によって支持台30を上昇させる。昇降装置50は、図1に示されるように、部品実装期間中において、支持台30を一対のコンベア40F、40Rよりも上方に維持する。これにより、支持台30の実装支持面34が、ウェハ22の裏面26と当接する。先に述べたように、部品実装期間中において、支持台30の空気流路32内には負圧が発生している。このため、部品実装期間中、ウェハ22の裏面26が支持台30の実装支持面34に吸着される。
【0028】
部品20がウェハ22の表面24に実装された後、昇降装置50は、支持台昇降部54によって支持台30を下降させる。昇降装置50は、図2に示されるように、部品搬送期間中において、一対のコンベア40F、40Rを支持台30よりも上方に維持する。これにより、一対のコンベア40F、40Rの搬送支持面44F、44Rが、ウェハ22の裏面26と当接する。図3に示されるように、一対のコンベア40F、40Rは、部品20が実装されたウェハ22を搬送方向D1に搬送する。
【0029】
部品20がウェハ22の表面24に実装された後、部品20が実装されたウェハ22を搬送する前に、ウェハ22は、支持台30の実装支持面34から、一対のコンベア40F、40Rの搬送支持面44F、44Rに乗り移る。図2に特に示されるように、部品搬送期間中、ウェハ22の前後方向の両端部が、一対のコンベア40F、40Rの搬送支持面44F、44Rによって支持される。このため、特に、ウェハ22の中央部は、下方に変位しやすい。
【0030】
仮に、ウェハ22が支持台30の実装支持面34から一対のコンベア40F、40Rの搬送支持面44F、44Rに乗り移るタイミングで、ウェハ22の裏面26が実装支持面34に吸着されていると、ウェハ22の裏面26は、下方に移動する支持台30によってさらに下方に引っ張られる。また、本実施例の部品実装機10は、ウェハ22に部品20を実装する。例えば、厚みが大きい他の回路基板の形状剛性に比べると、ウェハ22の形状剛性は低い。このため、実装支持面34から一対のコンベア40F、40Rの搬送支持面44F、44Rに乗り移るタイミングでは、特にウェハ22の中央部は、下方に変形しやすい。
【0031】
部品20が実装されたウェハ22の中央部が下方に変位すると、中央部の吸着が解除され、ウェハ22の中央部の変形が復元する際に、実装された部品20の位置がずれてしまうことがある。このため、従来技術では、実装された部品20の位置ずれの発生を抑制するため、支持台30を下降させる速度が比較的低く設定され、基板搬送を開始するまでの時間が長くなっていた。その結果、従来技術では、部品実装機10の生産効率が低下していた。
【0032】
図4を参照して、本実施例の制御装置70が実行する圧力供給装置60の制御について説明する。図4(A)は、支持台30の実装支持面34の高さHIと、一対のコンベア40F、40Rの搬送支持面44F、44Rの高さHCと、の位置関係の経時的な変化を示す。図4(B)は、負圧バルブ64の開閉のタイミングを示す。図4(C)は、負圧ポンプ80のオンオフのタイミングを示す。図4(D)は、正圧バルブ66の開閉のタイミングを示す。図4(E)は、正圧ポンプ90のオンオフのタイミングを示す。
【0033】
本実施例の部品実装機10は、部品実装期間IP1にわたって部品20をウェハ22の表面24に実装し、部品搬送期間CP1にわたって部品20が実装されたウェハ22を搬送する。部品実装期間IP1の長さは、ウェハ22の表面24に実装される部品20の数、装着ヘッド4の移動速度等に応じて、予め設定されている。同様に部品搬送期間CP1の長さも、一対のコンベア40F、40Rのローラ43F、43Rの回転速度、新たなウェハ22の供給位置と支持台30との間の距離等に応じてあらかじめ設定されている。
【0034】
図4(A)に示されるように、部品実装期間IP1にわたって、実装支持面34の高さHIは、搬送支持面44F、44Rの高さHCよりも上方に維持される(図1参照)。図4(B)、図4(C)に示されるように、制御装置70は、部品実装期間IP1にわたって、負圧バルブ64を開き続け、負圧ポンプ80をオンに維持する。さらに、図4(D)、図4(E)に示されるように、制御装置70は、部品実装期間IP1にわたって、正圧バルブ66を閉じ続け、正圧ポンプ90をオフに維持する。すなわち、制御装置70は、部品実装期間IP1にわたって、圧力供給装置60を吸着状態に維持する。
【0035】
部品実装期間IP1が終了すると、タイミングT1において、昇降装置50が、実装支持面34の下降を開始する。これにより、図4(A)に示されるように、実装支持面34の高さHIが徐々に低下する。本実施例では、一対のコンベア40F、40Rは上昇しないため、搬送支持面44F、44Rの高さHCは、一定に維持される。
【0036】
タイミングT2において、実装支持面34の高さHIが搬送支持面44F、44Rの高さHCまで下降する。すなわち、実装支持面34の高さHIが搬送支持面44F、44Rの高さHCと同一となる。タイミングT2において、ウェハ22が、実装支持面34から搬送支持面44F、44Rに乗り移る。
【0037】
図4(B)、図4(C)に示されるように、制御装置70は、タイミングT1において、負圧バルブ64を閉じるとともに、負圧ポンプ80をオフする。すなわち、制御装置70は、実装支持面34の高さHIが搬送支持面44F、44Rの高さHCと同一となるタイミングT2の前のタイミングT1で、圧力供給装置60を吸着状態から吸着解除状態に切り替える。制御装置70は、昇降装置50が実装支持面34の下降を開始するタイミングT1をトリガとして圧力供給装置60を吸着状態から吸着解除状態に切り替える。このため、制御装置70は、比較的に容易な制御構成によって、タイミングT2の前のタイミングT1で、確実に圧力供給装置60を切り替えることができる。さらに、図4(D)、図4(E)に示されるように、タイミングT1において、制御装置70は、正圧バルブ66を開くとともに、正圧ポンプ90をオンする。その結果、空気流路32内に正圧が供給される。これにより、図2に示されるように、外部の空気A2が空気流路32内を通過して、空間S1に供給される。空気A2は、ウェハ22の中央部を上方に押し上げる。これにより、ウェハ22の中央部の変形が抑制される。
【0038】
その後、タイミングT3で実装支持面34が所定の高さまで下降すると、図4(A)に示されるように、部品搬送期間CP1にわたって、実装支持面34の高さHIは、搬送支持面44F、44Rの高さHCよりも下方に維持される(図2参照)。図4(D)、図4(E)に示されるように、制御装置70は、タイミングT3において、正圧バルブ66を閉じるとともに、正圧ポンプ90をオフして、正圧の供給を停止する。ウェハ22が搬送される部品搬送期間CP1においては、実装支持面34とウェハ22の裏面26との間の空間S1に空気A2を供給する必要がない。制御装置70がタイミングT3において正圧の供給を停止することによって、不要な空気A2が空間S1に供給されることを防止することができる。
【0039】
部品20が実装されたウェハ22が搬送され、部品搬送期間CP1が終了すると、タイミングT4において、昇降装置50は、実装支持面34の上昇を開始する。これにより、図4(A)に示されるように、実装支持面34の高さHIが徐々に上昇する。制御装置70は、タイミングT4において、負圧バルブ64を開くとともに負圧ポンプ80をオンする。すなわち、制御装置70は、タイミングT4において、圧力供給装置60を吸着解除状態から吸着状態に切り替える。そして、部品実装機10は、タイミングT5から開始される部品実装期間IP2において、新たなウェハ22に対して、部品20を実装する。
【0040】
制御装置70は、昇降装置50が実装支持面34の下降を開始するタイミングT1から、部品搬送期間CP1が終了するタイミングT4までの間、吸着解除状態を維持する。先に述べたように、制御装置70は、タイミングT1において、吸着状態から吸着解除状態に切り替える。別言すれば、制御装置70は、ウェハ22が、実装支持面34から搬送支持面44F、44Rに乗り移ったことを示す情報を受信したことに応じて、吸着状態から吸着解除状態に切り替えない。このため、タイミングT2では、ウェハ22が、実装支持面34から搬送支持面44F、44Rに実際に乗り移ってない可能性がある。本実施例の部品実装機10の制御装置70は、実装支持面34の高さHIが搬送支持面44F、44Rの高さHCと同一となるタイミングT2の前に、吸着状態から吸着解除状態に切り替える。このため、部品実装機10は、タイミングT2において、確実に吸着状態から吸着解除状態に切り替えることができる。さらに、制御装置70は、タイミングT2の後、部品搬送期間CP1が終了するタイミングT4まで、負圧バルブ64を閉じ続け、負圧ポンプ80をオフに維持する。このため、ウェハ22が、実装支持面34から搬送支持面44F、44Rに確実に乗り移るまで、吸着解除状態を維持することができる。
【0041】
このように、本実施例の部品実装機10は、実装支持面34の高さHIと搬送支持面44F、44Rの高さHCとが同一の高さとなる前のタイミングT1において、圧力供給装置60を吸着状態から吸着解除状態に切り替える。これにより、ウェハ22の中央部の変形が抑制されるため、昇降装置50の支持台30を下降させる速度を従来技術に比べて増加させることができる。その結果、部品実装機10は、部品実装から基板搬送開始までの時間を短くすることができる。これにより、部品実装機10は、生産効率を向上させることができる。
【0042】
(対応関係)ウェハ22が、「基板」の一例である。圧力供給装置60が、「吸着装置」の一例である。昇降装置50が、「移動機構」の一例であり、支持台昇降部54が、「第1の機構」の一例である。正圧ポンプ90が、「空気供給装置」の一例である。
【0043】
実施例で説明した部品実装機10に関する留意点を述べる。圧力供給装置60は、正圧ポンプ90を備えなくてもよい。その場合、制御装置70は、図4のタイミングT1において、正圧バルブ66を開いて空気流路32を外部に開放することによって、圧力供給装置60を吸着状態から吸着解除状態に切り替えてもよい。
【0044】
上述した部品実装機10では、昇降装置50は、支持台30を昇降させる。変形例では、昇降装置50は、支持台30を固定するとともに一対のコンベア40F、40Rを昇降させてもよい。本変形例では、一対のコンベア40F、40Rを昇降させる機構が、「第2の機構」の一例である。また、さらなる変形例では、支持台30と一対のコンベア40F、40Rとの双方を昇降させてもよい。
【0045】
上述した部品実装機10は、タイミングT1で圧力供給装置60を吸着状態から吸着解除状態に切り替えた後、部品搬送期間CP1にわたって吸着解除状態を維持する。変形例では、タイミングT1からタイミングT2になる前までの間で圧力供給装置60を吸着状態から吸着解除状態に切り替え、さらに、同時に正圧ポンプ90をオンして正圧を供給してもよい。また、さらなる変形例では、例えば、部品搬送期間CP1が終了するタイミングT4まで正圧の供給を維持してもよい。
【0046】
上述した実施例では、ウェハ22に部品20を実装する。変形例では、ウェハ22に代えて、回路基板に対して部品20を実装してもよい。
【0047】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。なお、本明細書では、請求項3において「請求項1に記載の部品実装機」を「請求項1または2に記載の部品実装機」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0048】
2 :ヘッド移動装置
4 :装着ヘッド
6 :吸着ノズル
10 :部品実装機
20 :電子部品
22 :ウェハ
24 :表面
26 :裏面
30 :支持台
32 :空気流路
34 :実装支持面
36 :エアホース
40F,40R :コンベア
42F,42R :ベルト
43F,43R :ローラ
44F,44R :搬送支持面
50 :昇降装置
52 :台座
54 :支持台昇降部
60 :圧力供給装置
62 :分岐バルブ
64 :負圧バルブ
66 :正圧バルブ
68 :負圧側配管
69 :正圧側配管
70 :制御装置
80 :負圧ポンプ
90 :正圧ポンプ
CP1 :部品搬送期間
IP1、IP2 :部品実装期間
S1 :空間
図1
図2
図3
図4