(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106578
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240801BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240801BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010912
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
(72)【発明者】
【氏名】久保井 秋音
(72)【発明者】
【氏名】藤田 義一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝基
(72)【発明者】
【氏名】小松 知滉
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】植物の生育状況と利用者の生育方針を踏まえて散布物の散布量を検討する。
【解決手段】圃場における植物の生育状態を示す評価項目に基づく生育指標値と、前記圃場の植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成する作成部と、散布量を推定する対象の圃場の推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定する第1推定部と、前記生育指標値の確率分布に基づいて、前記推定対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成する第1生成部と、早見表を前記生成された生育指標値のサンプリングデータに適用することで、第1散布量のサンプリングデータが生成されると、前記位置毎に集計した集計結果に基づいて、前記位置毎の提案散布量を複数求める提案散布量算出部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における植物の生育状態を示す評価項目に基づく生育指標値と、前記圃場から得られる取得画像データから得られた植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成する作成部と、
散布物を散布する散布量を推定する対象の圃場から得られる推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定する対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定する第1推定部と、
前記生育指標値の確率分布に基づいて、前記推定する対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成する第1生成部と、
生育指標値に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する記憶部と、
前記生成された生育指標値のサンプリングデータに前記早見表を適用することで、第1散布量のサンプリングデータを生成する第2生成部と、
前記第1散布量のサンプリングデータを前記位置毎に集計した集計結果に基づいて、前記位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求める提案散布量算出部と
を有する作物栽培管理支援システム。
【請求項2】
圃場における植物の生育状態を示す評価項目に基づく生育指標値と、前記圃場から得られる取得画像データから得られた植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成する作成部と、
散布物を散布する散布量を推定する対象の圃場から得られる推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定する対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定する第1推定部と、
生育指標値に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する記憶部と、
前記第1推定部によって推定された確率分布に対して、前記早見表を適用することで、前記早見表における生育指標値に応じた基準散布量毎に確率値を求める第3生成部と、
前記基準散布量毎の確率値に基づいて、前記位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求める提案散布量算出部と
を有する作物栽培管理支援システム。
【請求項3】
前記提案散布量算出部は、前記第1散布量のサンプリングデータの確率分布における中央値を含む範囲とは異なる範囲に基づく散布量の候補を含むように前記提案散布量を求める
請求項1に記載の作物栽培管理支援システム。
【請求項4】
前記提案散布量に基づいて、前記位置毎の前記提案散布量に応じた表示態様によって表す散布量提案画像を前記候補毎に生成する出力データ生成部と
を有する請求項1または請求項2に記載の作物栽培管理支援システム。
【請求項5】
作成部が、圃場における植物の生育指標値と、前記圃場から得られる取得画像データから得られた植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成し、
第1推定部が、散布物を散布する散布量を推定する対象の圃場から得られる推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定する対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定し、
第1生成部が、前記生育指標値の確率分布に基づいて、前記推定する対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成し、
第2生成部が、生育指標値に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する記憶部を参照し、前記生成された生育指標値のサンプリングデータに前記早見表を適用することで、第1散布量のサンプリングデータを生成し、
提案散布量算出部が、前記第1散布量のサンプリングデータを前記位置毎に集計した集計結果に基づいて、前記位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求める
作物栽培管理支援方法。
【請求項6】
作成部が、圃場における植物の生育状態を示す評価項目に基づく生育指標値と、前記圃場から得られる取得画像データから得られた植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成し、
第1推定部が、散布物を散布する散布量を推定する対象の圃場から得られる推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定する対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定し、
第3生成部が、前記第1推定部によって推定された確率分布に対して、生育指標値に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する記憶部に記憶された早見表を適用することで、前記早見表における生育指標値に応じた基準散布量毎に確率値を求め、
提案散布量算出部が、前記基準散布量毎の確率値に基づいて、前記位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求める
作物栽培管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場において生育させる植物に対して肥料を散布することが行われている。肥料を散布するにあたり、施肥量は、植物の生育状況に応じて決められることが多い。例えば、小麦の栽培管理においては、圃場において生育指標値として用いられる。小麦の茎数が少ない領域には多めに肥料を散布し、茎数が多い領域には少なめにする等の調整が行われる。
特許文献1には、利用者が圃場の位置を指定して施肥量を入力すると、生育データまたは土壌データと、施肥量の関係に応じた検量線を作成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、施肥量は利用者によって入力される。そのため、利用者は、基準となる施肥量を少なくとも1つの場所に対して自分自身で決めなければならない。このような施肥量は、生育データまたは土壌データに関する利用者の経験や知識によって異なるため、その入力された施肥量が、現在の生育状況に必ずしも適合しない場合がある。そうすると、検量線が定められたとしても、圃場全体において施肥量が必ずしも適切ではない場合が生じる。
また、施肥量は、植物に対する利用者(農業者)によっては多めにしたい、少なめにしたい等の生育方針が異なる場合がある。このような生育方針も踏まえて施肥量を検討できることが好ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、植物の生育状況と利用者の生育方針を踏まえて散布物の散布量を検討することができる作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、圃場における植物の生育状態を示す評価項目に基づく生育指標値(茎数、上位茎数、草丈、及び/又は葉色(茎数、上位茎数、草丈、又は葉色の少なくともいずれか一つ))と、前記圃場から得られる取得画像データから得られた植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成する作成部と、散布物を散布する散布量を推定する対象の圃場から得られる推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定する対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定する第1推定部と、前記生育指標値の確率分布に基づいて、前記推定する対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成する第1生成部と、生育指標値に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する記憶部と、前記生成された生育指標値のサンプリングデータに前記早見表を適用することで、第1散布量のサンプリングデータを生成する第2生成部と、前記第1散布量のサンプリングデータを前記位置毎に集計した集計結果に基づいて、前記位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求める提案散布量算出部とを有する作物栽培管理支援システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、作成部が、圃場における植物の生育指標値と、前記圃場から得られる取得画像データから得られた植生指数との関係から、前記圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成し、第1推定部が、散布物を散布する散布量を推定する対象の圃場から得られる推定対象取得画像データを、前記推定モデルに入力することにより、前記推定する対象の圃場における生育指標値の確率分布を推定し、第1生成部が、前記生育指標値の確率分布に基づいて、前記推定する対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成し、第2生成部が、生育指標値に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する記憶部を参照し、前記生成された生育指標値のサンプリングデータに前記早見表を適用することで、第1散布量のサンプリングデータを生成し、提案散布量算出部が、前記第1散布量のサンプリングデータを前記位置毎に集計した集計結果に基づいて、前記位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求める作物栽培管理支援方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、植物の生育状況と利用者の生育方針を踏まえて散布物の散布量を検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による作物栽培管理支援システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】取得画像データから算出された植生指数に基づく植生指数画像データである。
【
図4】推定モデル生成部15に入力される入力データの一例を示す図である。
【
図5】サンプリングデータ生成部20によって生成されたサンプリングデータの一例を示す図である。
【
図7A】早見表適用部40によって得られた第1施肥量のサンプリングデータの一例を示す図である。
【
図7B】早見表適用部40によって茎数のみを用いて得られた第1施肥量のサンプリングデータのいくつかの候補を与える一例を示す図である。
【
図7C】早見表適用部40によって葉色のみを用いて得られた第1施肥量のサンプリングデータのいくつかの候補を与える一例を示す図である。
【
図8】出力データ生成部70によって生成された出力画像G100の一例を示す。
【
図9】作物栽培管理支援システム1が推定モデルを生成する処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図10】作物栽培管理支援システム1が茎数を推定する処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図11】第2実施形態における作物栽培管理支援システム1Aの構成を示す概略ブロック図である。
【
図12】早見表における各項目に対して確率値が求められた早見表の一例を説明する図である。
【
図13】早見表適用部40Aによって得られた確率値について、散布量(施肥量)毎に集計した場合の一例を示す図である。
【
図14】施肥量毎に求められた確率値に基づく確率分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による作物栽培管理支援システムについて図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態による作物栽培管理支援システム1の構成を示す概略ブロック図である。
作物栽培管理支援システム1は、生育指標値確率分布推定部10、サンプリングデータ生成部20、早見表記憶部30、早見表適用部40、散布量確率分布生成部50、提案散布量算出部60、出力データ生成部70を含む。
【0011】
生育指標値確率分布推定部10は、実地調査データ取得部11、植生指数算出部12、実地調査地点データ抽出部13、フィルタ処理部14、推定モデル生成部15、フィルタ処理部16、推定部17を有する。
【0012】
実地調査データ取得部11は、圃場において生育させた植物の1m2あたりの茎数について実地調査を行うことで数えられた数と、葉色を表す値である生育指標値を含む実地調査データを取得する。圃場において生育させる植物は、例えば小麦である。
また、実地調査では、調査を担当する担当者が実際に圃場に出向き、その圃場において複数箇所の茎数をそれぞれ調査することで、異なる複数箇所においてそれぞれ、1m2あたりの茎数(生育指標値)が得られる。
葉色については、赤色光(波長650nm)と赤外光(波長940nm)の2つの光を葉に照射し、それらの透過率を基に算出される値によって表される。葉色は、植物の葉に含まれる葉緑素量(葉緑素含有量)をSPAD値として表すことができる。SPAD値は、植物の健康度合いを把握するために用いられる場合がある。SPAD値は、SPAD測定装置を用いて測定することができる。SPAD測定装置は、葉緑素計と呼ばれることもある。
【0013】
実地調査データ取得部11は、取得画像データを測定した時期に応じた時期において、調査対象である圃場にて生育させた植物の茎数、上位茎数、草丈、及び/又は葉色(茎数、上位茎数、草丈、又は葉色の少なくともいずれか一つ)を実地調査した結果である生育指標値を取得する。取得画像データは、実地調査した時期において測定された取得画像データである。
実地調査データ取得部11は、生育段階を確認したい時期の実地調査データを取得できた方が、生育指標値の推定精度を高める観点においては好ましい。取得画像データについては、その少し前または少し後の日に測定されたデータであってもよい。ここでは、取得画像データと実地調査データとの相関が取れればよく、日が異なっていても、茎数の推定において影響が生じ得るほどに、圃場内の植物の生育状態のばらつきの傾向が大きく変わることが少ないためである。
【0014】
図2は、実地調査データの一例を示す図である。
実地調査データは、識別子(Identifier:ID、以下ID)、茎数、葉色、緯度、経度が対応付けられたデータである。
IDは、圃場における位置を識別する。ここでいう位置は、圃場内が複数の領域に分割された分割領域のうち、いずれの分割領域であるかを示す。
茎数は、IDが示す位置(分割領域)における植物の茎数を示す。
葉色は、IDが示す位置(分割領域)における植物の葉色を示す。
緯度は、圃場において茎数が数えられた対象の分割領域の位置の緯度を示す。
経度は、圃場において茎数が数えられた対象の分割領域の位置の経度を示す。
この
図2では、例えば、IDが「111」の位置における茎数が567(本/m
2)であり、葉色は49.9(SPAD)であり、緯度が35.7度、経度が139.8度であることを示す。
実地調査データは、茎数y
1について、
y
1(lat’,lon’)
として表すことができ、葉色y
2について、
y
2(lat’,lon’)
として表すことができる。
【0015】
図1に戻り、植生指数算出部12は、圃場を撮影することで得られる取得画像データから植生指数を求める。
取得画像データは、圃場を上方からセンサによって測定されたデータである。例えば取得画像データは、それぞれ、上空から少なくとも圃場を含む領域を撮像した画像データである。この撮像は、例えば、人がセンサで撮像してもよいし、圃場内、あるいは圃場の近くの鉄塔などの建造物や、ドローン、飛行機、衛星に設置、あるいは搭載されたセンサによって撮像されてもよい。
ここで撮像される圃場は、実地調査データを取得する対象の圃場と同じ圃場であり、同じ植物が植生されている。
【0016】
第1取得画像データは、例えば、画素毎の輝度値をRGB値(Red、Green、Blueの値)によって表したデータや、近赤外光値(NIRの値)、Red Edge光値(RedEdgeの値)である。より具体的に、第1取得画像データは、緯度及び経度と、赤色光の輝度値、青色光の輝度値、緑色光の輝度値、近赤外光の輝度値、赤色の端であるRed Edge光の輝度値が含まれるデータである。この場合の取得画像データは、
r1(lat,lon)=[Red(lat,lon),Blue(lat,lon),Green(lat,lon)],… NIR((lat,lon))
のように表すことができる。
【0017】
また、第2取得画像データは、例えば、圃場について近赤外光(Near InfraRed:NIR)、および短波長赤外光(SWIR)を測定することで得られたデータである。より具体的に、第2取得画像データは、緯度及び経度と、近赤外光の輝度値、および短波長赤外光(SWIR)の輝度値が含まれるデータである。
第2取得画像データは、
r2(lat,lon)=[NIR(lat,lon),… SWIR(lat,lon)]
のように表すことができる。
また、第2取得画像データは、例えば、圃場について近赤外(Near InfraRed:NIR)、および赤色の端の波長帯(Red Edge)を測定することで得られたデータであってもよい。より具体的に、第2取得画像データは、緯度及び経度と、近赤外光、および赤色の端の波長帯(Red Edge)光の輝度値が含まれるデータである。
第2取得画像データは、
r2(lat,lon)=[NIR(lat,lon),… RedEdge(lat,lon)]
のように表すことができる。
【0018】
ここで、本実施形態において取得画像データについては、実地調査データと相関が取れるものであればよい。また、取得画像データが測定された日と、実地調査データを得るために実地調査が行われた日とが異なっていてもよい。ここでは、取得画像データと実地調査データとの相関が取れればよく、日が異なっていても、茎数の推定において影響が生じ得るほどに、圃場内の植物の生育状態のばらつきの傾向が大きく変わることが少ないためである。
【0019】
植生指数算出部12は、取得画像データから、植生指数を求める処理を行い、その処理結果を出力する。植生指数は、NDVI(正規化植生指数)、NDRE(正規化レッドエッジ指数)、NDWI(正規化水指数)等の種々の種類がある。植生指数算出部12は、これらの植生指数のうち少なくともいずれか1つを求めることができればよい。
NDVIは、近赤外光と赤色光の反射率の差に基づいて正規化した値である。植物は近赤外線の波長を反射するが、赤色の波長は光合成に必要なため吸収する性質がある。そのため、植物を撮像したことで得られる近赤外光と赤色光の反射率の差に基づいてNDVIを得ることで、この値が大きいほど植物の葉や茎の面積やそれらに含まれる葉緑素量が多いことがいえる。
NDREは、赤色の端(Red Edge)の波長光と近赤外光の相対的な強度の違いを強調するようにして得られる値である。NDREもNDVIと同様葉の葉緑素量と相関のある植生指数であるが、NDVIと比較して生育の後期において健康状態を示す指標として用いられたり、NDVIよりも早期に植物の生育の問題を発見するために用いられている。
NDWIは、植生に含まれる水分量について定義するNDWIと、地表面に含まれる水分量について定義するNDWIの2種類存在する。このうち、植生に含まれる水分量について定義するNDWIは、近赤外光、および短波長赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値であり、植物に含まれる水分量に関する指数である。また、植生に含まれる水分量について定義するNDWIとして、緑色光、および短波長赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値を用いる場合もある。
地表面に含まれる水分量について定義するNDWIは、赤色光、および短波長赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値であり、土壌に含まれる水分量に関する指数である。また、地表面に含まれる水分量について定義するNDWIは、緑色光、および近赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値を用いる場合もある。
【0020】
ここで、植物の生育期間における、ある時期においては、いくつかの植生指数のうちNDVIが実地調査データと特に強い相関があり、別の時期においては、NDREが実地調査データと特に強い相関があり、また、別の時期においては、NDVI及びNDREの両方と実地調査データとの間に強い相関がある、等のように、時期によって実地調査データとの相関がある植生指数が異なる場合がある。そのため、本実施形態において、植生指数算出部12は、取得画像データから異なる複数の植生指数を求めるようにしてもよい。この場合、センシングデータを加工して得られる複数種類の植生指数を用い、その時期や生育段階に応じて、異なる植生指数に対して重み付けされた値を基にした推定モデル(後述する)を生成し、この推定モデルを用いて茎数を推定するようにしてもよい。これにより、広範な生育段階であっても、その推定する対象の時期において実地調査データに対する相関関係に応じた植生指数を少なくとも1つを用いることで、精度良く茎数を推定することができる。
【0021】
例えば、植生指数算出部12は、取得画像データの緯度経度毎に、NDVIと、NDREとを算出する場合がある。
例えば、ni,j:riから算出した植生指数jについて、
n1,1:r1から算出したNDVI
n1,2:r1から算出したNDRE
などのように表し、その緯度経度毎の植生指数については、
n1,1(lat,lon),n1,2(lat,lon)
のように表すことができる。
【0022】
なお、取得画像データを得るために撮像される圃場は、実地調査データを取得する対象の圃場と同じ圃場である場合について説明したが、実地調査データと相関を求める場合には、撮像される圃場と実地調査データを取得する対象の圃場とが同じ圃場である。一方、求められた相関を利用して茎数を推定する場合、すなわち、散布物の散布量を算出する対象の圃場における茎数を推定する場合には、実地調査データを取得する対象の圃場と同じ圃場であってもよいし、異なる圃場であってもよい。異なる圃場である場合には、実地調査データが取得された圃場と同じ植物が植えられた圃場であればよい。また、異なる圃場である場合には、実地調査データが取得された圃場と同じ植物であって、実地調査データが取得された圃場の近隣の地域である場合には、茎数を推定する精度をより高められる。近隣の地域である方が、圃場が異なっていても、植物の生育状況が類似する度合いが高いといえるためである。
ここで散布物は、圃場において散布するものであればよく、例えば、肥料、薬剤などがある。
【0023】
また、取得画像データが測定される時期と、実地調査が行われる時期は、生育指標値を推定する対象の生育段階に応じた時期であった場合、生育指標値を推定する対象の時期に応じた取得画像データと実地調査データとを得て、後述する推定モデルを生成することができる。この場合、生育指標値の推定精度を高めることができる。
【0024】
ここで、
図3は、取得画像データから算出された植生指数(例えば茎数)に基づく植生指数画像データである。この植生指数画像データは、測定対象の圃場を表しており、縦方向が緯度、横方向が経度である。
この画像データは、取得画像データに基づいて植生指数が得られ、当該得られた植生指数値に応じた色によって、各位置について表された画像データである。ここでは、位置111、112、113、114は、圃場の右側に位置する畝に沿って配列され、概ね同じ色によって表されている。この色は、植生指数の値が小さいことを表している。そのため、この畝については、概ね同じ植生指数であることが把握できる。位置141、142、143、144は、位置111が属する畝の近傍の畝であるが、その色は、位置111等の色とは異なっている。そして位置141、142、143、144の植生指数は、位置111の植生指数よりも大きな値となっている。また、位置171、172、173、174は、圃場において左側に位置する畝であり、その色は、位置111等の色、及び位置141等の色とは異なっている。そして位置171、172、173、174の植生指数は、位置111、位置141等の植生指数よりも大きな値となっている。
【0025】
実地調査地点データ抽出部13は、植生指数算出部12によって得られた、圃場の位置毎の植生指数のうち、実地調査データ取得部11によって得られた実地調査データに含まれる位置(分割領域)に対応する植生指数を抽出する。例えば、実地調査地点データ抽出部13は、植生指数算出部12によって植生指数が求められた分割領域のうち、圃場のうち実地調査が行われた分割領域を切り取る。
これにより、植生指数算出部12によって得られた圃場の各位置における植生指数のうち、実地調査データが得られた位置に対応する位置における植生指数が抽出される。
【0026】
フィルタ処理部14は、実地調査地点データ抽出部13によって抽出された位置(分割領域)の植生指数について、フィルタ処理を施す。ここで、フィルタ処理をする目的としては、例えば、茎数を推定するために不要な情報を取り除くことであり、より具体的には、切り取られた分割領域のうち、植物が生えていない部分について不要であるため、植物が生えていない領域が不必要に強調されないようにする、解像度が高すぎる取得画像データの分割領域について解像度を下げるなどである。
用いられるフィルタは、予め決められたフィルタであっても良いし、メディアンフィルタ、帯域除去フィルタ等のうち少なくともいずれか一方を用いて良く、最適フィルタと推定モデルを同時に推定する畳み込みニューラルネットワークなどで適応的に決めても良い。
【0027】
例えば、メディアンフィルタを用いる場合、分割領域の中に少しだけ土が見える部分がある場合には、メディアンフィルタによって除去することができる。メディアンフィルタとしては、例えば、縦6画素、横6画素の合計36画素の画素値についての中央値を求めるフィルタ関数がある。
畳み込みニューラルネットワークを用いる場合、縦3画素、横3画素の9画素を処理する任意の係数を用いたフィルタ関数がある。
また、圃場において植物は一般に、直線状に並び、かつ、平行に隣接するように並んで植えられることから、撮像された画像では、周期的な間隔で植物が現れることになる。そのため、このような場合には、分割領域の中で不要な周期性を選択的に除去し植生指数が平均的になるようにぼかす帯域除去フィルタを用いることができる。
このようなフィルタ処理が施されることによって、緯度経度毎にni,jにフィルタkを適用することで、緯度経度毎の特徴量としてxi,j,k(lat’,lon’)が得られる。
【0028】
推定モデル生成部15は、圃場の位置毎に、生育指標値と、取得画像データの測定結果から得られた植生指数との関係から、圃場の各位置における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを、ベイズ線形回帰等を用いて作成する作成部として機能する。
図4は、推定モデル生成部15に入力される入力データの一例を示す図である。
この入力データは、ID、茎数、葉色、実地調査データが得られた位置における異なる植生指数を含むデータセットである。
実地調査データが得られた位置における異なる植生指数としては、例えば、取得画像データから得られた第1植生指数(例えばNDVI)に対して第1フィルタ(例えばメディアンフィルタ)を用いてフィルタ処理された値(x
1,
1,
1)、第1取得画像データから得られた第1植生指数(例えばNDVI)に対して第2フィルタ(例えば帯域除去フィルタ)を用いてフィルタ処理された値(x
1,
1,
2)等がある。
例えば、IDが171の位置では、茎数yが1017本であり、葉色が51.4(SPAD)であり、x
1,
1,
1が0.7であり、x
1,
1,
2が0.65である。ここでは、植生指数に対してフィルタ処理がなされることで、フィルタに設定された関数に応じた重みが乗算された後の植生指数が得られる。
【0029】
推定モデル生成部15は、フィルタ処理部14から得られる入力データを用いて、ベイズ線形回帰やベイズニューラルネットワーク等により、xi,j,kからy1の推定値であるy1^と、y2の推定値であるy2^との確率分布を推定するモデルを生成する。推定モデルとしては、p(y1^,y2^|x)として表される確率分布である。
このような入力データをXの入力として、y1とy2とを推定することができ、かつ、確率分布の形式で得られるものであれば、ベイズ線形回帰やベイズニューラルネットワーク等以外を用いて推定モデルを生成するようにしてもよい。
また、ここでは、推定モデル生成部15が、推定モデルを生成する場合について説明したが、位置毎の、生育指標値と植生指数との関係を学習することで学習モデルを生成するようにしてもよい。
【0030】
フィルタ処理部16は、植生指数算出部12から出力されるデータであって、生育指標値を推定する対象の圃場、すなわち散布物の散布量を推定する対象の圃場を測定することで得られた取得画像データに対して、フィルタ処理部14と同様のフィルタ関数を用いてフィルタ処理を施す。
ここでは、フィルタ処理部14において用いられたフィルタ関数が、フィルタ処理部16に対して受け渡されており、これによりフィルタ処理部16は、推定モデルを生成するために用いられたフィルタ関数と同様のフィルタ関数を用いて、茎数を推定するための取得画像に基づく植生指数に対してフィルタ処理を行う。
フィルタ処理部16は、このようなフィルタ処理を施すことによって、緯度経度毎にni,jにフィルタkを適用することで、緯度経度毎の特徴量としてxi,j,k(lat,lon)が得られる。
【0031】
推定部17は、推定モデル生成部15で生成された、実地調査データと、フィルタ処理部14によってフィルタ処理された後の各分割領域の植生指数との関係から、茎数の推定値である確率分布を推定する推定モデルに基づいて得た、取得画像データと、生育指標値(茎数、葉色)との圃場において対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場において植物の生育段階に応じて適切に得た茎数と植生指数値との関係を対応付けた推定対象取得画像データに応じた茎数と葉色を推定する。推定対象取得画像データは、散布量を推定する対象の圃場において測定された取得画像データである。また、推定対象取得画像データは、実地調査を行った圃場とは異なる圃場であってもよい。
推定部17は、推定モデルに推定対象取得画像データを入力することで、生育指標値の確率分布を推定する第1推定部として機能する。
推定部17は、フィルタ処理部16から得られるデータに対して、推定モデル生成部15から得られる確率分布モデルを通すことで、ある緯度経度における生育指数(ここでは茎数と葉色)の確率分布p(y1^,y2^|lat,lon)を推定する。
ここで、茎数と葉色をそれぞれ1つの値で表すのではなく、分布として扱っている。ここでは、単位面積あたりにおいても作物の生育状況のばらつきがあり、また、実地調査についても、広い圃場を高い頻度で実施することは難しいことから、これらの不確実性を考慮し、生育指標値を確率分布で表現している。
【0032】
ここで、実地調査データと取得画像データを取得して推定モデルを生成した場合、その実地調査データが得られた圃場の近傍の地域であれば、概ね生育状況が同じであるといえるため、同じ推定モデルを用いて茎数を推定することができる。すなわち、地域に応じた推定モデルを、地域毎に準備しておくことで、その地域の生育状況を踏まえて茎数を推定することができる。
【0033】
サンプリングデータ生成部20は、生育指標値の確率分布に基づいて、推定する対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成する第1生成部として機能する。
サンプリングデータ生成部20は、推定部17によって推定された確率分布を用いて、緯度経度によって示される各位置について、生育指標値の疑似データであるサンプリングデータを生成する。
図5は、サンプリングデータ生成部20によって生成されたサンプリングデータの一例を示す図である。この図においてサンプリングデータは、位置(緯度経度)毎の茎数y
1^と葉色y
2^を表すデータである。ここでは1箇所の位置(lat1,lon1)において、複数の茎数y
1^と葉色y
2^の組み合わせ又は葉色y
2^のみ茎数y
1^のみの少なくとも一方が生成されている。
サンプリングデータを生成することで、圃場の各位置において、茎数と葉色について考えられる擬似的な値を生成することができる。
【0034】
早見表記憶部30は、葉色と茎数との組み合わせ又は葉色のみ茎数のみの少なくとも一方に応じた基準散布量を表す早見表を記憶する。このような早見表のデータは、時期または地域の少なくともいずれか一方に応じて異なる早見表が予め準備される。このような早見表は、時期、地域、土壌等に応じた過去の知見に基づく生育指標値と散布物の散布量との関係に基づいて決まる。
例えば、散布物が肥料である場合であって、作物として生育される植物が小麦である場合、止葉期において茎数がどれくらいか、また、葉色がどれくらいの値である場合に、施肥量をどの程度にすればよいか、という知見に基づいて、地域毎に予め生成される。このような知見は、研究機関において化学的に分析された結果に基づいて営農支援を行う機関から提供されている場合があり、このような知見に基づいて生成された早見表をデータとして用いることができる。
【0035】
また、散布物が薬剤である場合であって、作物として生育される植物が小麦である場合、止葉期において茎数がどれくらいか、また、葉色がどれくらいの値である場合に、薬剤の散布量をどの程度にすればよいか、という知見に基づいて、地域毎に予め生成される。例えば、薬剤を散布する時期において茎数が多い場合には、生育を抑えるような薬剤を茎数に応じてどの程度散布すればよいかの知見を複数の農業者や研究機関から予め得ておき、このような知見に基づいて生成された早見表をデータとして用いることができる。
【0036】
図6は、早見表データの一例を示す図である。
早見表データは、葉色と茎数との組み合わせ又は葉色のみ茎数のみの少なくとも一方に応じた基準施肥量が定められたデータである。
図6の例では、散布対象の圃場に植えられた植物が小麦であり、止葉期(例えば5月頃)において、窒素肥料を散布する場合の基準となる施肥量が定められている。この図では、葉色が47.5(SPAD)を超えて52.5(SPAD)以下である場合であって、茎数が650(本/m
2)以下である場合には、施肥量は3.5(kg/10a)であることが示されている。また、葉色が52.5(SPAD)を超えている場合であって、茎数が650(本/m2)を超え750(本/m
2)以下である場合には、施肥量は0(kg/10a)すなわち施肥が不要であることを示す。
なお、
図6において、早見表データは、葉色と茎数との組み合わせに応じた基準施肥量が定められた場合について図示されているが、上位茎数と草丈の組み合わせ、茎数と草丈の組み合わせ等のように、茎数、上位茎数、草丈、及び/又は葉色のいずれかの項目に応じた基準施肥量が定められていてもよい。
【0037】
早見表適用部40は、生成された生育指標値のサンプリングデータに早見表を適用することで、第1施肥量のサンプリングデータを生成する第2生成部として機能する。
より具体的には、早見表適用部40は、サンプリングデータ生成部20によって生成された各サンプリングデータについて、早見表記憶部30に記憶された早見表データを参照し、サンプリングデータに含まれる茎数と葉色の値に対応する施肥量を早見表から読み出すことで、第1施肥量のサンプリングデータとして得る。ここでは、生育指標値のサンプリングデータは、圃場の1箇所において複数得られるため、その複数のそれぞれについて、早見表を参照し、それぞれの施肥量を得る。また、生育指標値のサンプリングデータは、圃場の複数の位置において得られているため、他の位置についても同様に、サンプリングデータに応じた施肥量を求めることで、第1施肥量のサンプリングデータとして得る。また、
図6に示す早見表データは、茎数と葉色の組み合わせに応じた基準施肥量が定められているため、この場合には、サンプリングデータ生成部20は、茎数と葉色についてのサンプリングデータを生成すればよく、早見表適用部40は、サンプリングデータ生成部20によって生成された茎数と葉色の値に対応する施肥量について早見表データを参照することで、得ることができる。よって、サンプリングデータ生成部20は、早見表データにおいて定められた項目に対応するサンプリングデータを生成できればよい。
【0038】
図7Aは、早見表適用部40によって得られた第1施肥量のサンプリングデータの一例を示す図である。
第1施肥量のサンプリングデータは、施肥量と位置(緯度経度)との関係を示すデータである。この図において、第1施肥量のサンプリングデータは、ある緯度経度(lat1、lon1)において3.5(kg/10a)、3.5(kg/10a)、2.0(kg/10a)のように、複数生成されている。
これにより、茎数と葉色のサンプリングデータから、第1施肥量のサンプリングデータに変換することができる。
図7Bは、早見表適用部40によって茎数のみを用いて得られた第1施肥量のサンプリングデータのいくつかの候補を与える一例を示す図である。
第1施肥量のサンプリングデータは、施肥量と位置(緯度経度)との関係を示すデータである。この図において、第1施肥量のサンプリングデータは、ある緯度経度(lat1、lon1)において標準3.5(kg/10a)、少なめ2.5(kg/10a)、多め4.5(kg/10a)のように、茎数のみで候補が複数生成されている。
これにより、茎数のみのサンプリングデータから、第1施肥量のサンプリングデータに変換することができる。
図7Cは、早見表適用部40によって葉色のみを用いて得られた第1施肥量のサンプリングデータのいくつかの候補を与える一例を示す図である。
第1施肥量のサンプリングデータは、施肥量と位置(緯度経度)との関係を示すデータである。この図において、第1施肥量のサンプリングデータは、ある緯度経度(lat1、lon1)において標準3.5(kg/10a)、少なめ2.0(kg/10a)、多め3.5(kg/10a)のように、葉色のみで候補が複数生成されている。
これにより、葉色のみのサンプリングデータから、第1施肥量のサンプリングデータに変換することができる。
【0039】
散布量確率分布生成部50は、早見表適用部40によって得られた、圃場における位置毎の散布量(例えば第1施肥量)のサンプリングデータから、位置毎の散布量の確率分布を得る。
これにより、散布対象が肥料である場合、圃場の各位置について、施肥量の取り得る値を表す確率分布が得られる。散布量確率分布生成部50は、例えば各緯度経度においてカーネル密度推定法などを用いて、散布物の散布量の確率分布を生成するようにしてもよい。
【0040】
提案散布量算出部60は、第1施肥量のサンプリングデータを位置毎に集計した集計結果に基づいて、位置毎の施肥量の候補である提案施肥量を複数求める。
この集計は、例えば、圃場における位置毎の第1施肥量の確率分布である。提案散布量算出部60は、第1施肥量のサンプリングデータの確率分布における中央値を含む範囲とは異なる範囲(例えば、上位15%値、下位15%値等)に基づく施肥量の候補を含むように提案施肥量を求める。ここでは確率分布の上位側(15%)に基づく候補を求めることで、基準とされる散布量よりも多めの散布量の場合を候補として提示することができる。また、ここでは確率分布の下位側(15%)に基づく候補を求めることで、基準とされる散布量よりも少なめの散布量の場合を候補として提示することができる。
【0041】
このように、散布量が多め、少なめの場合のように、複数の候補を提示することで、利用者は、研究機関等において分析された知見等を基に定められた散布量を基準とした複数の候補のなかから、利用者の生育方針や、別途得られたリモートセンシングでは取得できない知見などに応じて、いずれかの候補を選択することができる。また、利用者は、実際に散布物を散布する日よりもある程度前(例えば数日)の日時に推定対象取得画像データを取得して散布量の推定処理が行われた場合には、実際に散布を行う日と、推定対象取得画像データが得られた日との間に乖離がある。この場合、推定対象取得画像データが得られた日時から数日経過すると葉色がどの程度変化するか、また、茎数が増加等するか等の経験を踏まえて、複数の候補の中から施肥量を多めにする、あるいは少なめにするといった調整にも対応することができる。
【0042】
ここで、提案散布量算出部60は、散布量について複数の候補を求めることができればよいため、確率分布の中央値を含む範囲と、その範囲の上位側の範囲、下位側の範囲のそれぞれに基づくことで3つの候補を求める場合に限られるものではなく、中央値を含む範囲と、その範囲の上位側を複数に分割した各範囲を基に、複数の候補を求めるようにしてもよく、また、中央値を含む範囲と、その範囲の下位側を複数に分割した各範囲を基に、複数の候補を求めるようにしてもよい。また、候補は、複数挙げることができれば、必ずしも確率分布の中央値を含む範囲に基づく候補が含まれていなくてもよい。
【0043】
出力データ生成部70は、提案散布量に基づいて、位置毎の提案散布量に応じた表示態様によって表す散布量提案画像を候補毎に生成する。
図8は、出力データ生成部70によって生成された出力画像G100の一例を示す。この出力画像G100には、散布量の候補として第1候補G110、第2候補G120、第3候補G130が含まれている。
第1候補G110は、標準的な散布量よりも多めに散布する場合の候補である。第2候補G120は、標準的な散布量に基づく候補である。第3候補G130は、標準的な散布量よりも少なめに散布する場合の候補である。
【0044】
各候補において、散布量は、圃場の各位置において散布量に応じた色によって表されている。第1候補G110では、圃場の上部側と下部左側を除いた領域において肥料を散布することが示されているとともに、圃場の右側の領域において散布量が他の位置よりも多く散布することが示されている。具体的には、位置P1では、施肥量は0(kg/10a)であり、位置P2では、施肥量は2.5(kg/10a)であり、位置P3では、施肥量は3.5(kg/10a)である。
第3候補G130では、圃場の全体の面積の4~5割程度の領域に対して肥料を散布することが示されているが、それ以外の領域には、散布しなくてもよいことが示されており、第1候補G110、第2候補G120よりも全体の散布量としては少ない量が示されている。
【0045】
このように、散布量として多め、少なめ、標準等の候補を示すだけでなく、各候補において圃場全体のうち、いずれの位置にどの程度の肥料を散布すればよいかについても示すことができるため、施肥量を直感的に把握することができ、また、複数の候補が並んで表示されることから、各候補を比較しつつ、いずれの散布量にするかを簡単に検討することができる。
なお、単位面積あたりの作物の生育状況のばらつきが多く、かつ、実地調査点数が少ない場合には、提案の幅が広くなる場合がある。
また、この図では候補が3つ提示される場合について図示されているが、候補は2つ、4つ以上であってもよい。
【0046】
上述した実地調査データ取得部11、植生指数算出部12、実地調査地点データ抽出部13、フィルタ処理部14、推定モデル生成部15、フィルタ処理部16、推定部17、サンプリングデータ生成部20、早見表適用部40、散布量確率分布生成部50、提案散布量算出部60、出力データ生成部70は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。また、作物栽培管理支援システム1の各機能が、1台のコンピュータに搭載されることで、1つの装置として実現されてもよいし、インターネットなどのネットワークに接続されたサーバ装置に搭載されることで、例えばクラウド上において利用可能なシステムとして構成されてもよい。
また、外部から取得されたデータ、各部において算出された値、予め準備されたデータ(例えば基準データ)等については、記憶部に記憶されてもよい。この場合の記憶部や、早見表記憶部30は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。また、これら記憶部は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0047】
次に上述した実施形態における作物栽培管理支援システム1の動作について説明する。
図9は、作物栽培管理支援システム1が推定モデルを生成する処理の流れを説明するフローチャートである。
推定モデルを生成するにあたり、圃場の実地調査とセンサによる圃場の測定が行われる。実地調査データ取得部11は、実地調査された結果である茎数と葉色について実地調査データとして取得する。小麦の止葉期に窒素肥料を散布することを想定する場合、この実地調査は、止葉期において実施されることが好ましい。そして実地調査が行われた結果は、入力担当者によってキーボード、マウス、パネル等の入力装置を介して操作入力される内容に基づいて取得される(ステップS101)。
植生指数算出部12は、複数種類の取得画像データを取得し(ステップS102)、取得画像データから植生指数(例えば、NDVI)を算出する(ステップS103)。ここで、ステップS101とステップS102の順番はお互いに入れ換えても良い。
なお、これら実地調査データ、調査取得画像データについては、散布量を検討する年の前年までに行われたデータであってもよい。
【0048】
植生指数が算出されると、実地調査地点データ抽出部13は、植生指数算出部12によって算出された、圃場の各位置における植生指数のうち、実地調査が行われた各位置(分割領域)に対応する植生指数をそれぞれ抽出する(ステップS104)。実地調査地点データ抽出部13によって植生指数が抽出されると、フィルタ処理部14は、各分割領域の植生指数に対してそれぞれフィルタ処理を行う(ステップS105)。
推定モデル生成部15は、実地調査データ(茎数、葉色)と、フィルタ処理部14によってフィルタ処理された後の各分割領域の植生指数(NDVI)との関係から、茎数と葉色の推定値であるy1^,y2^の確率分布p(y1^,y2^|lat,lon)を推定する推定モデルを生成する(ステップS106)。
【0049】
次に、
図10は、作物栽培管理支援システム1が散布量を推定する処理の流れを説明するフローチャートである。
植生指数算出部12は、散布量を推定する対象の圃場を測定した取得画像データを取得し(ステップS201)、取得した取得画像データの各分割領域について植生指数(例えば、NDVI)を算出する(ステップS202)。
フィルタ処理部16は、取得画像データの各分割領域の植生指数を植生指数算出部12から取得するととともに、推定モデルを生成する際に用いられたフィルタ関数をフィルタ処理部14から取得する。そしてフィルタ処理部16は、取得した各分割領域の植生指数に対してフィルタ関数を用いたフィルタ処理を行う(ステップS203)。
推定部17は、フィルタ処理された後の植生指数に対して、推定モデル生成部15によって生成された推定モデル(確率分布モデル)を適用することで、ある緯度経度における生育指数(茎数、葉色)の確率分布を推定する(ステップS204)。生育指数の確率分布が推定されると、サンプリングデータ生成部20は、圃場全体の生育指標値の確率分布に基づいて、推定する対象の圃場の各位置についての生育指標値のサンプリングデータを生成する(ステップS205)。
【0050】
生育指標値のサンプリングデータが生成されると、早見表適用部40は、生成された生育指標値のサンプリングデータに対して早見表を適用することで、茎数および葉色の各サンプリングデータに対応する第1施肥量のサンプリングデータをそれぞれ生成する(ステップS206)。第1施肥量のサンプリングデータが生成されると、散布量確率分布生成部50は、第1施肥量のサンプリングデータから、圃場の各位置について、散布量の確率分布を生成する(ステップS207)。散布量の確率分布が生成されると、提案散布量算出部60は、散布量の確率分布に基づいて、標準的な施肥量、多め、少なめ等の施肥量の候補を複数生成する(ステップS208)。施肥量の候補が複数生成されると、出力データ生成部70は、提案散布量に基づいて、位置毎の提案散布量に応じた表示態様によって表す散布量提案画像を候補毎に生成して出力する(ステップS209)。出力先としては、例えば、散布量の推定を行う対象の圃場を管理または運営している利用者の端末装置等である。これにより、圃場の管理者等は、出力された画像に基づいて、散布量を示す複数の候補から、散布量を決めることができる。
【0051】
以上説明した実施形態においては、作物栽培管理支援システム1は、小麦を対象として散布物の散布量を推定する場合について説明したが、他の植物を対象として茎数を推定するようにしてもよい。他の植物としては、例えば、稲、大麦、ライ麦等のうちいずれであってもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、推定モデル生成部15は、緯度経度の全ての位置について確率分布を求める場合について説明したが、隣接する緯度経度において取得画像データが一定値以内の差である場合には、その隣接する緯度経度を1つのグループとしてグルーピングし、そのグループ内で1つの確率分布を生成するようにしてもよい。これにより、計算量を削減することができる。このグルーピングは、隣接する緯度経度のグルーピングに限らず、取得画像データに対して一般のベクトル量子化手法を広く使ってグルーピングを行うことができる。
【0053】
また、例えば、
図3に示すように、圃場の位置によって異なる色によって表された取得画像データである植生指数画像データが得られている場合、この植生指数画像データに存在する色に基づいてn(例えば10)段階に分ける。これにより、植生指数画像データに含まれる色を10種類にすることができる。そして、各色のそれぞれについて確率分布を求めることで、推定するモデルを10個に絞ることもできる。これにより、計算量を低減することができる。
【0054】
また、上述した実施形態においては、実地調査データと取得画像データとの関係に基づく推定モデルが生成され、その推定モデルの推定精度がある程度高まる程度まで、実地調査データと取得画像データを準備することができれば、新たに実地調査データを追加で取得しなくても、生成された推定モデルを用いて、生育指標値を推定することができる。例えば、実地調査データと取得画像データとについて数年分蓄積され、推定モデルが生成された場合には、追加で実地調査データを取得しなくても(実地調査を行わなくても)、取得画像データを追加で得ることによって、一定の精度を保って、生育指標値を推定することができる。
【0055】
以上説明した実施形態によれば、小麦栽培等の畑作において、取得画像データに基づき肥料等(肥料、薬剤等)の散布量を複数候補提案することができ、これにより、実地調査を行っていない地点が含まれる圃場であっても、圃場全体における、作物の栽培を支援するシステムを実現することができる。
また、上述した実施形態によれば、肥料や農薬の散布量を定量的な指標(例えば、早見表データ)に基づいて算出し、提案として出力することができるため、散布量がシステム利用者の知識・経験へ過度に依存することを軽減できる。これにより、取得画像データや生育指標値に関する経験や知識が浅い利用者であっても、好ましい散布量を基準とした複数の候補を提示や示唆をすることができる。利用者は、提案された候補のなかから、自身の植物に対する生育方針に応じて選択することができる。
【0056】
以上説明した実施形態において、作物栽培管理支援システム1は、サンプリングデータ生成部20がサンプリングデータを生成した上で早見表を適用する場合について説明したが、別の方法を用いるようにしてもよい。
ここでは、別に方法として第2実施形態について説明する。
図11は、第2実施形態における作物栽培管理支援システム1Aの構成を示す概略ブロック図である。作物栽培管理支援システム1Aは、
図1に示す作物栽培管理支援システム1と共通する機能については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
早見表適用部40Aは、推定部17から得られる、生育指標値の確率分布に、早見表記憶部30に記憶された早見表を適用することで、早見表において定められている、葉色と茎数との関係に応じた施肥量毎に、確率値を得る。確率値を得る方法として、例えば、(1)推定部17によって得られた確率分布を積分する方法と、(2)サンプリングデータを生成する方法がある。
【0058】
(1)積分する方法
積分する方法では、推定部17によって得られた確率分布を、葉色と茎数との関係に応じた施肥量毎に、それぞれ積分する。これにより、葉色と茎数との関係に応じた施肥量毎の確率値を得ることができる。
図12は、早見表における各項目に対して確率値が求められた早見表の一例を説明する図である。
早見表適用部40Aは、推定部17によって推定された確率分布に対して、早見表記憶部30に記憶された早見表を適用することで、早見表における生育指標値に応じた基準散布量毎に確率値を求める第3生成部として機能する。
例えば、早見表適用部40Aは、推定部17によって得られた、生育指標値の確率分布に対し、早見表記憶部30に記憶された早見表を適用することで、早見表において定められている、葉色と茎数に応じた施肥量毎に、確率値を得る。
より具体的に、早見表適用部40Aは、推定部17で得られた確率分布を650<y
1^≦750,47.5<y
2^≦52.5の範囲(符号1201)で積分することで、施肥量2.0[kg/10a]の確率値(符号1202)を0.35として求めることができる。これを早見表における葉色と茎数に応じた施肥量毎に求めることで、早見表の各項目の確率値を得ることができる。
【0059】
このようにして確率値が求められると、散布量確率分布生成部50Aは、早見表適用部40Aによって得られた確率値について、散布量(施肥量)毎に集計することで、散布量の確率分布を得ることができる。
図13は、早見表適用部40Aによって得られた確率値について、散布量(施肥量)毎に集計した場合の一例を示す図である。散布量確率分布生成部50Aは、早見表適用部40Aによって得られた確率値について、散布量(施肥量)毎に集計する。例えば、
図12において施肥量が「0」である場合の確率値を集計すると、
650<y
1^≦750,52.5<y
2^の確率値:0.025
750<y
1^≦850,47.5<y
2^≦52.5の確率値:0.0125
750<y
1^≦850,52.5<y
2^の確率値:0
850<y
1^,y
2^≦47.5の確率値:0.0125
850<y
1^,47.5<y
2^≦52.5の確率値:0
850<y
1^,52.5<y
2^の確率値:0
であり、これらの確率値を合計することで、施肥量が「0」である場合の確率値を0.05として求めることができる。
0.05=0.025+0.0125+0+0.0125+0+0
このように、散布量確率分布生成部50Aは、施肥量毎に確率値を求めることで、
図13に示すような集計データを求める。
【0060】
図14は、施肥量毎に求められた確率値に基づく確率分布を表すグラフである。
図14において、横軸は施肥量であり、縦軸は確率値である。この確率分布は、
図13に示す集計結果をグラフとして表した図である。
ここで、多め、少なめの散布量として提案する値を、より連続的に変化させる場合には、散布量確率分布生成部50Aは、上記集計結果に基づいて、より連続的な確率分布を生成するようにしてもよい。
その方法としては、例えば、提案散布量算出部60Aは、確率分布が正規分布であることを仮定して、
図14に示すグラフをフィッティングすることで、連続値となるようなグラフを生成したり、あるいは、確率分布を仮定せず、カーネル密度推定法などを用いて生成するようにしてもよい。
図15は、
図14に示すグラフをフィッティングさせて連続値となるようにして生成した確率分布のグラフである。このようにして、連続値となるようにした確率分布を得る場合には、多め、少なめ等の施肥量の候補を、連続的に変化するような値として求めることができる。
提案散布量算出部60は、散布量確率分布生成部50によって生成された基準散布量毎の確率値(確率分布)に基づいて、圃場の位置毎の散布量の候補である提案散布量を複数求めることができる。
【0061】
(2)サンプリングデータを生成する方法
早見表適用部40Aは、サンプリングデータを生成する方法に基づく場合、推定部17によって得られた確率分布から疑似データであるサンプリングデータを生成し、集計することで確率値を得ることができる。
例えば、早見表適用部40Aは、サンプリングにより疑似データを10000点作成したとき,650<y1^≦750,47.5<y2^≦52.5の範囲(符号1201)に該当するサンプリングデータが3500点あった場合、この範囲に該当するサンプリングデータの数を疑似データの数で割ることで(3500/10000=0.35)、確率値0.35を求めることができる。
【0062】
このようにして確率値が求められると、散布量確率分布生成部50Aは、早見表適用部40Aによって得られた確率値について、散布量(施肥量)毎に集計することで、散布量の確率分布を得ることができる。
【0063】
上述した実施形態における作物栽培管理支援システムにおける各部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0064】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…作物栽培管理支援システム、10…生育指標値確率分布推定部、11…実地調査データ取得部、12…植生指数算出部、13…実地調査地点データ抽出部、14…フィルタ処理部、15…推定モデル生成部、16…フィルタ処理部、17…推定部、20…サンプリングデータ生成部、30…早見表記憶部、40…早見表適用部、50…散布量確率分布生成部、60…提案散布量算出部、70…出力データ生成部