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特開2024-106583情報処理装置、情報処理システム、制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106583
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/14 20060101AFI20240801BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240801BHJP
   G09G 5/08 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G06F3/14 380B
G06F3/14 360
G09G5/00 510V
G09G5/08 K
G09G5/08 M
G09G5/00 510H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010922
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 圭一
【テーマコード(参考)】
5B069
5C182
【Fターム(参考)】
5B069BA04
5B069GA00
5B069KA02
5C182AA02
5C182AA03
5C182AC38
5C182BA04
5C182BA06
5C182BA65
5C182BA66
5C182BB04
5C182BB12
5C182CB41
5C182CB42
5C182CB52
5C182DA63
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】表示速度が低い表示デバイスの利用時における入力デバイスの操作性を向上させる。
【解決手段】システムデバイスは、入力デバイスから入力される操作情報に基づいて、表示速度が異なる複数の表示デバイスから表示対象とする表示デバイスである目標表示デバイスと、当該目標表示デバイスにおける座標である目標座標を特定し、前記目標座標にカーソルを表示させ、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、表示速度が所定速度を超える目標表示デバイスよりも前記カーソルを顕著に表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デバイスから入力される操作情報に基づいて、表示速度が異なる複数の表示デバイスから表示対象とする表示デバイスである目標表示デバイスと、当該目標表示デバイスにおける座標である目標座標を特定し、
前記目標座標にカーソルを表示させるシステムデバイスを備え、
前記システムデバイスは、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、表示速度が所定速度を超える目標表示デバイスよりも前記カーソルを顕著に表示させる
情報処理装置。
【請求項2】
前記システムデバイスは、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、前記目標座標を通過する軌跡を表示させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数の表示デバイスは、少なくとも1個の電気泳動方式ディスプレイと、液晶ディスプレイならびに有機発光ダイオードディスプレイのいずれか一方を含む
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記入力デバイスとして、ポインティングデバイスを有する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数の表示デバイスが備わり、
請求項1に記載の情報処理装置を備える
情報処理システム。
【請求項6】
コンピュータに
請求項1に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
入力デバイスから入力される操作情報に基づいて、表示速度が異なる複数の表示デバイスから表示対象とする表示デバイスである目標表示デバイスと、当該目標表示デバイスにおける座標である目標座標を特定し、
前記目標座標にカーソルを表示させる情報処理装置の制御方法であって、
前記情報処理装置が、
表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、表示速度が所定速度を超える目標表示デバイスよりも前記カーソルを顕著に表示させるステップを実行する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、情報処理装置、情報処理システム、制御方法およびプログラム、例えば、表示画面に対する操作入力に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phoretic Display)は、可塑性を有する柔軟な素材で構成される。EPDは、電子ペーパディスプレイ(Electric Paper Display)、電子インク(E-Ink)ディスプレイ、などとも呼ばれる。EPDは、他種の表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED:Organic Luminescence Display)など)よりも消費電力が少なく、かつ、視認性が高いという特徴を有する。EPDは、テキスト編集、プログラミングなど、高度な表示機能を要しないユーザに支持される。特許文献1には、各種の携帯型の情報処理端末、ウェアラブル型の情報処理端末、電子POP(Point of Purchase advertising)、電子棚札、電子ポスター、などの情報処理装置における表示デバイスとしてEPDを採用し、消費電力の抑制が可能となる点について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-64421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、EPDは、他種の表示デバイスよりも描画遅延が大きい。例えば、EPDのリフレッシュレートは、通例、5~10Hz程度である。これに対し、LCDやOLEDのリフレッシュレートは、60~200Hzである。5~10Hz程度のリフレッシュレートでの操作性の低下は、テキスト編集に対しては許容されるが、ポインティングデバイスを用いた操作入力(例えば、任意の図形の描画)に対しては許容されないことがある。
【0005】
その一因として、ポインティングデバイスが用いた操作入力では、操作により指示される位置は、ある基準点からの相対位置であって、直接指示される絶対位置ではないことが掲げられる。通例、ホストシステムは、ポインティングデバイスによる操作に基づいて目標座標を特定し、表示デバイス上のその目標座標にカーソルを表示させることで、その位置を案内する。ホストシステムは、その目標座標の情報を取得し、各種の処理(例えば、描画処理)に用いる。表示装置としてEPDを用いる場合、リフレッシュレートが低いので操作に応じて定まる目標座標よりもカーソルが遅延して表示されるうえ、位置が異なる複数の目標座標においてカーソルの表示が継続されることがある(残像)。そのため、有効なカーソルが見失われ、有効な目標座標を把握できないことがある。このことは、操作性の低下を招き、操作による移動速度が高い場合に著しい。
【0006】
なお、EPDに重畳したタッチセンサを用いて電子ペンを操作して指示される位置は、絶対位置に相当し、ホストシステムにおいて各種の処理に用いられる。接触から表示までの遅延が生じるが、タッチセンサに接触する電子ペンの先端がじかに視認される。この場合には、指示される位置への表示の変化が期待されるため、ポインティングデバイスを用いてカーソルの位置を指示する場合ほど操作性は顕著に低下しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記の課題を解決するためになされたものであり、本願の一態様に係る情報処理装置は、入力デバイスから入力される操作情報に基づいて、表示速度が異なる複数の表示デバイスから表示対象とする表示デバイスである目標表示デバイスと、当該目標表示デバイスにおける座標である目標座標を特定し、前記目標座標にカーソルを表示させるシステムデバイスを備え、前記システムデバイスは、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、表示速度が所定速度を超える目標表示デバイスよりも前記カーソルを顕著に表示させる。
【0008】
上記の情報処理装置において、前記システムデバイスは、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、前記目標座標を通過する軌跡を表示させてもよい。
【0009】
上記の複数の表示デバイスは、少なくとも1個の電気泳動方式ディスプレイと、液晶ディスプレイならびに有機発光ダイオードディスプレイのいずれか一方を含んでもよい。
【0010】
上記の情報処理装置において、前記入力デバイスとして、ポインティングデバイスを有してもよい。
【0011】
本願の第2態様に係る情報処理システムは、前記複数の表示デバイスが備わり、請求項1に記載の情報処理装置を備えてもよい。
【0012】
本願の第3態様に係るプログラムは、コンピュータに上記の情報処理装置として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0013】
本願の第4態様に係る制御方法は、入力デバイスから入力される操作情報に基づいて、表示速度が異なる複数の表示デバイスから表示対象とする表示デバイスである目標表示デバイスと、当該目標表示デバイスにおける座標である目標座標を特定し、前記目標座標にカーソルを表示させる情報処理装置の制御方法であって、前記情報処理装置が、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、表示速度が所定速度を超える目標表示デバイスよりも前記カーソルを顕著に表示させるステップを実行する制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本願の一実施形態によれば、表示速度が低い表示デバイスの利用時における入力デバイスの操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの概要を説明するための説明図である。
図2】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
図3】本実施形態に係る情報処理システムの概略構成例を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係る描画処理を例示するフローチャートである。
図5】本実施形態に係る仮想画面を例示する説明図である。
図6】本実施形態に係る描画モードの第1例を示す図である。
図7】本実施形態に係る描画モードの第2例を示す図である。
図8】本実施形態に係るカーソルの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本願の実施形態に係る情報処理システムS1の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システムS1の概要を説明するための説明図である。
【0017】
情報処理システムS1は、情報処理装置10、表示デバイス46および入力デバイス50を備える。情報処理装置10は、図1の例では、情報処理装置10は、ノートブック型パーソナルコンピュータ(本願では、「ノートPC(Personal Computer)」と呼ぶことがある。情報処理装置10は、表示デバイス24を備える。
【0018】
情報処理システムS1は、全体として、2個の表示デバイス24、46を備える。表示デバイス24、46は、それぞれ情報処理装置10から入力される各種の表示データに従い表示画面を表示可能とする。入力デバイス50は、操作により指示される相対位置を示す操作情報を情報処理装置10に通知する。表示デバイス46は情報処理装置10とは別個に備わり、表示デバイス24は情報処理装置10に備わる。表示デバイス24、46の種別が異なる。図1の例では、表示デバイス24は、LCD(液晶ディスプレイ:Liquid Crystal Display)である。表示デバイス46は、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phoretic Display)ディスプレイである。従って、表示デバイス24の表示速度よりも表示デバイス46の表示速度の方が低い。
【0019】
入力デバイス50は、ユーザの操作を受け付け、入力位置または表示画面上の位置を指示するためのポインティングデバイスである。入力デバイス50として、例えば、マウス、タッチパネル、ジョイスティック、などのいずれであってもよい。但し、本願に係る入力デバイス50には、表示デバイス24、46の一方またはそれぞれに重畳するタッチセンサは含まれない。かかるタッチセンサは、表示デバイス24、46の一方またはそれぞれと一体化してタッチパネルとして構成される。ユーザの指、スタイラスペン、その他の操作物と接触した位置が絶対位置として直接取得される。図1の例では、入力デバイス50は、マウスである。入力デバイス50は、指示される位置を示す操作情報を無線または有線で情報処理装置10に出力する。
【0020】
情報処理装置10は、入力デバイス50から入力される操作情報に基づいて、表示デバイス24、46のいずれか一方を表示対象とする目標表示デバイス(target display device)として選択し、選択した目標表示デバイスにおいて指示される座標を目標座標(target coordinate)として特定する。情報処理装置10は、特定した目標座標にカーソルを表示させる。カーソルは、入力デバイス50の操作に応じて指示される位置を表す標章(マーク)である。情報処理装置10は、特定した目標座標に基づいて、各種のプログラムで指示される処理を実行する。実行される処理には、例えば、描画入力(いわゆる手書き入力)、画面部品(UI(User Interface)コンポーネント、例えば、ボタン、アイコン、など)もしくは、その部位の指示などがある。
【0021】
情報処理装置10は、選択した目標表示デバイスの表示速度に基づいて描画処理の描画モード(display mode)を定める。情報処理装置10は、表示速度が低い目標表示デバイスに対し、カーソルをより顕著に表示させる。図1の例では、表示デバイス46が目標表示デバイスとして選択される。表示デバイス46の表示速度の方が、表示デバイス24の表示速度よりも低い。カーソルCsは、表示デバイス24よりも、表示デバイス46において目立つように顕著に表示される。
【0022】
表示速度の指標として、目標表示デバイスとして指示される表示デバイスの種類、例えば、LCD、EPD、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの区別、表示デバイスのリフレッシュレートなどが用いられる。
【0023】
なお、本願では、アプリケーションプログラム(「アプリケーション」または「アプリ」と呼ばれる)、デバイスドライバ、ファームウェア、OS(Operating System)など、「プログラムの実行」もしくは「プログラムを実行する」とは、情報処理装置10のプロセッサ11、または、その他のハードウェアが、そのプログラムに記述された指令で指示される処理を実行する、との意味を含む。
【0024】
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【0025】
情報処理装置10は、プロセッサ11、メインメモリ12、フラッシュメモリ13、チップセット21、表示デバイス24、ベースバンドチップ27、通信I/F(Interface)28、入出力I/F29および入力デバイス32を備える。
【0026】
プロセッサ11は、情報処理装置10全体の機能を制御する。プロセッサ11として、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)が適用される。プロセッサ11は、所定のプログラムを実行し、メインメモリ12と、その他のハードウェアと協働し、ホストシステム100(後述)の機能を奏する。
【0027】
メインメモリ12は、プロセッサ11の作業領域、即ち、実行されるプログラム、各種設定データの読み込み領域、プログラムの実行により取得した処理データの書き込み領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップを含んで構成される。実行されるプログラムには、OS、周辺機器等を制御するための各種デバイスドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリ、などのいずれか、または、いずれかの組み合わせとなりうる。
【0028】
プロセッサ11、および、メインメモリ12は、情報処理装置10の中核となるコンピュータシステム、つまり、ホストシステムをなすシステムデバイスとして機能する。情報処理装置10のコンピュータシステムは、ハードウェアとしてシステムデバイスと、OS、スケジュール・タスクなどのソフトウェアと、を含んで構成される。
【0029】
フラッシュメモリ13には、各種のプログラムとデータを記憶させておく。各種のプログラムには、例えば、ファームウェア、デバイスドライバ、サービス/ユーティリティ、アプリ、などが含まれる。これらのプログラムは、プロセッサ11により実行される。記憶されるデータには、プロセッサ11における処理対象となるデータ、処理により生成されるデータが含まれる。生成されるデータは、最終データの他、あるステップよりも後続するステップで用いられる中間データも含まれうる。
【0030】
チップセット21は、1個または複数のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力できるように接続可能とする。チップセット21は、例えば、USB、シリアルATA(Advanced Technology Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、および、LPC(Low Pin Count)などのバスコントローラのいずれか1個または組み合わせを含む。接続先となる複数のデバイスは、例えば、表示デバイス46および入力デバイス50が含まれる。
【0031】
表示デバイス24は、プロセッサ11からチップセット21を経由して入力される各種の表示データに従って表示画面を表示する。図1、2の例では、表示デバイス24は、情報処理装置10に備わる。表示画面には、入力デバイス50により指示される位置に所定の形態を表す標章が表される。
【0032】
ベースバンドチップ27は、通信I/F28を用いて通信を制御するための専用ICである。ベースバンドチップ27は、例えば、4G(第4世代無線通信システム)、5G(第5世代無線通信システム)などの公衆無線通信システム、IEEE802.11に規定された構内無線通信ネットワークなどを用いた通信を実現する。ベースバンドチップ27は、プロセッサ11からの制御に従い、通信I/F28を用いて通信ネットワークを経由して他の機器と接続し、各種のデータを送受信する。
【0033】
通信I/F28は、通信ネットワークと各種のデータを送受信可能に無線または有線で接続する。通信I/F28は、無線通信に用いられる電波を送受信するアンテナを備えてもよい。
【0034】
入出力I/F29は、他のデバイスと各種のデータを所定の入出力方式を用いて入出力可能に無線または有線で接続するインタフェースを備える。入出力I/F29は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Multimedia Interface)などの有線の入出力方式、IEEE802.15.1などの無線の入出力方式を用いることができる。
【0035】
入力デバイス32は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作で指示される操作情報をプロセッサ11にチップセット21を経由して出力する。入力デバイス32として、図1に例示されるキーボード32kとタッチパッド32tが該当する。タッチパッド32tに対する操作によっても位置が指示されてもよい。以下の説明では、位置の指示に主に入力デバイス50が用いられる場合を例にする。
【0036】
次に、本実施形態に係る情報処理システムS1の機能構成例について説明する。図3は、本実施形態に係る情報処理システムS1の概略構成例を示すブロック図である。
【0037】
情報処理装置10は、ホストシステム100、入力デバイス50および2個の表示デバイス24、46を備える。
【0038】
ホストシステム100は、位置情報取得部102、描画処理部104および描画制御部106を備える。
【0039】
位置情報取得部102は、入力デバイス50から一定時間(例えば、20~200ms)ごとに入力される操作情報で指示される相対位置に基づいて目標表示デバイスと目標座標を定める。位置情報取得部102は、定めた目標表示デバイスを示す目標表示デバイス情報を描画処理部104と描画制御部106に出力し、目標座標を示す目標座標情報を描画処理部104に出力する。
【0040】
相対位置は、仮想画面空間における基準点からの変位に相当する。基準点として、例えば、仮想画面空間の原点または直近のシャットダウン時における目標座標が適用される。仮想画面空間は、ホストシステム100に所定の仮想画面を含む空間である。仮想画面は、表示デバイス24、46それぞれの表示領域が重なり合わずに隣接して構成される表示領域群をなす。仮想画面の例については後述する。目標座標は、仮想画面空間内の一点を表す。従って、目標座標は、表示デバイス24、46いずれか1個の表示領域内、または、表示デバイス24、46いずれの表示領域外の位置を示す。位置情報取得部102は、目標座標で指示される位置を含む表示領域を有する表示デバイスを目標表示デバイスとして定めることができる。目標座標が表示デバイス24、46いずれの表示領域外の位置を示す場合には、不定(エラー)と判定することができる。
【0041】
描画処理部104は、位置情報取得部102から入力される目標座標情報ならびに目標表示デバイス情報、および、描画制御部106から入力される描画モード情報に基づいて表示デバイス24、46のいずれかに表示させる。描画処理部104は、目標表示デバイス情報で指示される目標表示デバイスと目標座標情報で指示される目標座標とを特定する。描画処理部104は、描画制御部106から入力される描画モード情報で指示される描画モードを特定する。描画処理部104は、特定した描画モードで表現されるカーソルを特定した目標表示デバイスの表示領域内の目標座標で指示される目標位置に配置して表示画面を生成する。描画処理部104は、取得した表示画面を表す表示データを目標表示デバイスに出力する。よって、描画処理部104は、目標表示デバイスの表示領域のうち、目標位置に特定された描画モードでカーソルを表示させることができる。
【0042】
描画制御部106は、位置情報取得部102からの入力に応じてカーソルの描画モードを定める。描画制御部106は、目標座標情報に示される目標表示デバイスを特定する。描画制御部106には、自システムに接続される表示デバイスごとに表示速度を示す表示速度情報を予め設定しておく。表示速度の指標として、例えば、リフレッシュレートを用いることができる。描画制御部106は、表示速度情報を参照し、特定した目標表示デバイスの表示速度を特定する。例えば、描画制御部106は、表示速度が所定の表示速度閾値を超える目標表示デバイスに対しては描画モード1を選択する。描画モード1は、通常の表示態様に相当する。描画制御部106は、表示速度が表示速度閾値以下となる目標表示デバイスに対しては描画モード2を選択する。描画モード2は、描画モード1よりも顕著にカーソルを表現する描画モードである。描画制御部106には、表示速度、もしくは、その値域ごとに描画モードを示す描画モード情報を設定しておき、特定した表示速度に対応する描画モード情報を定めてもよい。描画モード情報には、低い表示速度ほど顕著にカーソルを表現可能とする描画モードが対応付けておく。描画モードの具体例については後述する。描画制御部106は、選択した描画モードを示す描画モード情報を描画処理部104に出力する。
【0043】
描画処理部104は、その他の実行中のプログラムの指示により目標表示デバイスに表示させる背景画面にそのカーソルを配置して表示画面を合成してもよい。背景画面として、カーソルを表示して目標座標を表し、操作入力を実現する画面を適用することができる。背景画面として、例えば、目標座標の軌跡に基づく図形を生成するための手書き入力、操作情報に基づく各種の数値、文字の入力もしくは選択肢の選択のための設定画面などが適用されてもよい。
【0044】
位置情報取得部102、描画処理部104および描画制御部106の機能を指示するプログラムは、独立した1個以上のプログラムとして構成されてもよいし、アプリ、ユーティリティ、API(Application Programming Interface)関数など、いずれの種類、形式を有してもよい。このプログラムの処理は、他の実行中のプログラムの処理、例えば、常駐アプリから呼び出されてもよい。常駐アプリとは、OSと同時に起動し、実行されるアプリである。
【0045】
次に、本実施形態に係る仮想画面の例について説明する。図5は、本実施形態に係る仮想画面を例示する説明図である。図5に例示される仮想画面VSは、表示デバイス24の表示領域MT1と表示デバイス46の表示領域MT2を水平方向に隣接して含む矩形の領域である。情報処理装置10に組み込まれる表示デバイス24が主たる表示デバイスとなる。表示領域MT1、MT2は、それぞれ矩形の領域であり、水平方向の幅、垂直方向の高さは画素数で表される。仮想画面VSの原点O1は、その左上端となる。表示領域MT1、MT2の原点O1、O1は、それぞれの左上端となる。仮想画面VSと表示領域MT1は原点O1が共通である。表示領域MT1の右辺の全体が表示領域MT2の左辺の一部に接し、表示領域MT1、MT2間の境界をなす。仮想画面VSの水平方向の幅は、表示領域MT1、MT2の幅の和に相当し、仮想画面VSの垂直方向の高さは、表示領域MT2の高さと等しい。個々の表示領域はモニタ領域、仮想画面は仮想スクリーンもしくはスクリーン領域など、とも呼ばれる。
【0046】
位置情報取得部102は、ホストシステム100の起動時(即ち、ブート、リブートなど)、その他、表示デバイスの接続時もしくは動作開始時に接続される表示デバイスを認識する。位置情報取得部102には、予め設定された表示デバイスの機種ごとの表示領域の大きさ(サイズ)を示す表示デバイス情報を参照し、認識した表示デバイスごとの表示領域の大きさを特定する。位置情報取得部102は、特定した1つの表示領域の一辺と他の表示領域の一辺が接するように一定の方向に順次配置し、全ての表示領域を含む最小の長方形を仮想画面として定めることができる。仮想画面は、個々の表示領域同士が重ならないように空間的に連続した一連の領域を占める。ユーザは入力デバイス50を操作して表示領域の境界を跨ぐように目標座標を移動させることで、複数の表示デバイス間でカーソルCsを移動させることができる(図1参照)。
【0047】
目標座標は、入力デバイス50からの操作情報に基づいて原点O1を基準として仮想画面VSを占める仮想画面空間内の位置を表す。図5に例示される座標Pは、目標座標の一例である。座標Pは、表示領域MT2に属す。位置情報取得部102は、座標Pに基づいて表示領域MT2に係る表示デバイス46を目標表示デバイスとして定めることができる。位置情報取得部102は、仮想画面空間において定めた目標座標を目標表示デバイスの原点の座標を差し引き、その目標表示デバイス内の座標値に換算し、換算により得られる座標値を目標座標情報に含める。描画処理部104は、目標表示デバイスに表示させるカーソルの位置を目標座標情報で伝達された座標値を目標座標として特定することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る描画モードの具体例について説明する。図6は、本実施形態に係る描画モードの第1例を示す図である。図6は、通常の描画モード1で背景画面上を移動するカーソルが表わされる表示画面を例示する。図6の例では、カーソルは左斜め上を向く白抜きの矢印である。カーソルの移動は、表示位置の時系列により表される。時系列は、(a)、(b)、(c)の順序となり、(c)が最新の時刻における表示画面を例示する。これによりカーソルが時間経過により右上方に移動する状態が示される。
【0049】
図7は、本実施形態に係る描画モードの第2例を示す図である。図7は、描画モード2で背景画面上を移動するカーソルが表される表示画面を例示する。図7は、図6と同様のカーソルをより顕著に表現する。図7の例では、描画処理部104は、現時点で最新の目標座標にカーソルを配置するとともに、現時点までの一定期間内(例えば、0.2~0.5s)の過去の目標座標を通過する軌跡を含めて表示画面を構成する。描画処理部104は、時間的に隣接する目標座標間を通る線を軌跡として生成する。軌跡は、目標座標間の線分で構成されてもよいし、目標座標を通る所定の幾何モデルに基づく曲線(例えば、ベジェ曲線、スプライン曲線など)で構成されてもよい。図7(a)に例示されるように、表示画面の表示当初においては軌跡が表されていない。図7(b)、(c)には、それぞれカーソルが軌跡の終端に示される。
【0050】
図8は、本実施形態に係るカーソルの表示例を示す図である。図6図7は、描画処理部104により生成される表示画面を例示するのに対し、図8は、図7に例示される表示画面をEPDである表示デバイス46を用いて表示された画面を例示する。EPDは、他種の表示デバイスよりも遅延および残像が著しい。そのため、図8(b)、(c)では、過去の目標位置のそれぞれに表示されたカーソルが離散的に残るうえ、最新のカーソルが最新の目標位置に達していない。しかしながら、軌跡が表されることで、ユーザはその終端に表示されたカーソルをより容易に発見することができ、そのカーソルを最新の目標位置に最も近接した位置に配置されたカーソルとして認識することができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る描画処理の例について説明する。図4は、本実施形態に係る描画処理を例示するフローチャートである。
【0052】
(ステップS102)位置情報取得部102は、入力デバイス50から入力される操作情報に基づき表示デバイスごとの表示領域を連結してなる仮想空間上で目標座標を定める。位置情報取得部102は、定めた目標座標が配置される表示領域に係る表示デバイスを目標表示デバイスとして定め、その表示領域内の目標座標を示すカーソル位置として定める。
【0053】
(ステップS104)描画制御部106は、予め設定された表示速度情報を参照し、定めた目標表示デバイスの表示速度を定める。
【0054】
(ステップS106)描画制御部106は、定めた表示速度が所定の表示速度の閾値よりも高いか否かを判定する。高いと判定するとき(ステップS106 YES)、ステップS108の処理に進む。高くないと判定するとき(ステップS106 NO)、ステップS110の処理に進む。
【0055】
(ステップS108)描画制御部106は、カーソルの描画モードを描画モード1と定める。描画処理部104は、描画モード1で描画されたカーソルを示す表示画面を目標表示デバイスに表示させる。その後、ステップS102の処理に戻る。
【0056】
(ステップS110)描画制御部106は、カーソルの描画モードを描画モード2と定める。描画処理部104は、描画モード2で描画されたカーソルを示す表示画面を目標表示デバイスに表示させる。その後、ステップS102の処理に戻る。
【0057】
なお、上記の例では、情報処理システムS1における表示デバイスの数が2個である場合を例示したが、これには限られない。表示デバイスの数は、3個以上となってもよい。また、複数の表示デバイスは、全て情報処理装置10とは別体であってもよいし、全て情報処理装置10と一体に備わってもよい。
また、情報処理装置10は、ノートPCに限られず、デスクトップPC、タブレット端末装置、多機能携帯電話機、映像投影装置(プロジェクタ)、など他の形態を有する機器して実現されてもよい。
【0058】
上記の説明では、描画モードが2段階である場合を例示したが、これには限られない。描画モードの段階数は3段階以上であって、描画モードの段階ごとにカーソルの表示の顕著性が異なってもよい。ここで、描画モードの段階ごとに対応する表示速度もしくは表示速度の値域が高いほど、顕著にカーソルを表示する描画モードが関連付けられてもよい。カーソルの構成要素は、図形、記号および文字のいずれか、または、いずれかの組み合わせであればよい。カーソルは矢印に限られず、正方形、星型、など任意の形状を有してもよい。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10は、入力デバイスから入力される操作情報に基づいて、表示速度が異なる複数の表示デバイスから表示対象とする表示デバイスである目標表示デバイスと、当該目標表示デバイスにおける座標である目標座標を特定し、目標座標にカーソルを表示させるシステムデバイス(例えば、プロセッサ11)を備える。システムデバイスは、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、表示速度が所定速度を超える目標表示デバイスよりもカーソルを顕著に表示させる。
【0060】
複数の表示デバイスには、少なくとも1個のEPDと、LCDならびにOLEDディスプレイのいずれか一方が含まれてもよい。
【0061】
入力デバイスとして、ポインティングデバイスが適用されてもよい。
【0062】
本実施形態は、複数の表示デバイスが備わり、情報処理装置10を備える情報処理システムS1として実現されてもよい。
【0063】
本実施形態は、コンピュータに情報処理装置10として機能させるためのプログラムとして実現されてもよい。
【0064】
この構成により、複数の表示デバイスのうちの1つが操作情報に基づいて目標表示デバイスとして定まり、目標表示デバイスに特定された目標座標にカーソルが表示され、表示速度が所定速度以下となる遅い目標表示デバイスに対し、より高速な表示デバイスよりもカーソルが顕著に表示される。遅い目標表示デバイスに対してはカーソルが顕著に表示されるため、カーソルが見失われることによる操作性の低下を低減または解消することができる。
【0065】
システムデバイスは、表示速度が所定速度以下となる目標表示デバイスに対して、目標座標を通過する軌跡を表示させてもよい。
【0066】
この構成により、その時点における軌跡の末端にカーソルが表示画面に配置される。表示画面への残像もしくは遅延が著しい場合でも、過去のカーソルとの位置関係により、極力新しいカーソルが容易に識別される。そのため、カーソルが見失われることによる操作性の低下を低減または解消することができる。
【0067】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
S1…情報処理システム、10…情報処理装置、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…フラッシュメモリ、21…チップセット、24…表示デバイス、27…ベースバンドチップ、28…通信I/E、29…入出力I/F、32、50…入力デバイス、32t…タッチパッド、32k…キーボード、46…表示デバイス、100…ホストシステム、102…位置情報取得部、104…描画処理部、106…描画制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8