IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特開-可変容量型過給機 図1
  • 特開-可変容量型過給機 図2
  • 特開-可変容量型過給機 図3
  • 特開-可変容量型過給機 図4
  • 特開-可変容量型過給機 図5
  • 特開-可変容量型過給機 図6
  • 特開-可変容量型過給機 図7
  • 特開-可変容量型過給機 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106584
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240801BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20240801BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20240801BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B37/24
F01D17/16 C
F01D25/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010923
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 亮介
(72)【発明者】
【氏名】池田 健悟
【テーマコード(参考)】
3G005
3G071
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA01
3G005GA04
3G005GB24
3G005GB86
3G071AB06
3G071BA09
3G071DA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】運転中におけるガスの流量変化を抑制する可変容量型過給機を提供する。
【解決手段】可変容量型過給機は、タービン翼車を収容するタービンハウジングと、タービンハウジング内でノズル流路に配置されるノズルベーンと、当該ノズルベーンを駆動する駆動機構部と、を有する可変ノズルユニットと、可変ノズルユニットを軸線方向に付勢しフランジ45を凸条部47に押し付ける皿バネと、フランジ45と凸条部47とが係合する係合部50Aと、を備え、係合部50Aは、フランジ45に軸方向に突出するように形成された突起部57と、凸条部47に軸方向に凹むように形成され突起部57が嵌り込む凹部59と、を有し、突起部57は、突出側の先端に近いほど周方向の幅が狭くなる形状をなし、凹部59は、突起部57の形状に沿って深部に近いほど周方向の幅が狭くなる形状をなしている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車を収容するタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内で前記タービン翼車の周囲に設けられたノズル流路に配置されるノズルベーンと、当該ノズルベーンを駆動する駆動機構と、を有する可変ノズルユニットと、
前記可変ノズルユニットを前記タービン翼車の回転軸線方向に付勢し、前記可変ノズルユニットの一部位である突当て部を前記タービンハウジングの一部位である受け部に押し付ける付勢部と、
前記タービン翼車の回転周方向における前記可変ノズルユニットの変位を規制するように前記突当て部と受け部とが係合する係合部と、を備え、
前記係合部は、
前記突当て部又は前記受け部の一方に前記回転軸線方向に突出するように形成された突起部と、
前記突当て部又は前記受け部の他方に前記回転軸線方向に凹むように形成され前記突起部が嵌り込む凹部と、を有し、
前記突起部は、突出側の先端に近いほど前記回転周方向の幅が狭くなる形状をなしており、
前記凹部は、前記突起部の形状に沿って深部に近いほど前記回転周方向の幅が狭くなる形状をなしている、可変容量型過給機。
【請求項2】
前記突起部は、前記回転周方向に交差する平面をなす外側面を有し、
前記凹部は、前記外側面に平行な平面をなし前記外側面に当接する内側面を有する、請求項1に記載の可変容量型過給機。
【請求項3】
前記突当て部は、前記タービン翼車の回転軸線を円錐軸として前記受け部への突当て方向の前方にいくほど小径になる円錐面をなす突当て面を有しており、
前記受け部は、前記突当て面に対して面接触する円錐面をなす受け面を有している、請求項1に記載の可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載の可変容量型過給機が知られている。この過給機はタービンのノズル流路の開度を調整するための可変ノズルユニットを有している。可変ノズルユニットとベアリングハウジングとの間には、皿バネが設置されており、可変ノズルユニットは上記皿バネにより付勢されタービンハウジングに押し付けられて軸方向の位置決めがされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-68153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の可変ノズルユニットを備える過給機では、軸方向に直交する面内で上記可変ノズルユニットを位置決めするために、例えばベアリングハウジングには軸方向に延びるピンが圧入され、このピンが可変ノズルユニットに形成されたピン穴にすきま嵌めされる、といった構造が考えられる。しかしながら、過給機の運転中においては、皿バネの熱変形やヤング率低下に伴って皿バネ荷重が低下する。これにより、可変ノズルユニットとタービンハウジングとの摩擦力が低下し、ピンとピン穴とのガタの分だけ可変ノズルユニットの周方向変位が発生する可能性がある。そして、可変ノズルユニットの周方向変位が生じればガスの流量変化が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、運転中におけるガスの流量変化を抑制する可変容量型過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
〔1〕タービン翼車を収容するタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内で前記タービン翼車の周囲に設けられたノズル流路に配置されるノズルベーンと、当該ノズルベーンを駆動する駆動機構と、を有する可変ノズルユニットと、
前記可変ノズルユニットを前記タービン翼車の回転軸線方向に付勢し、前記可変ノズルユニットの一部位である突当て部を前記タービンハウジングの一部位である受け部に押し付ける付勢部と、
前記タービン翼車の回転周方向における前記可変ノズルユニットの変位を規制するように前記突当て部と受け部とが係合する係合部と、を備え、
前記係合部は、
前記突当て部又は前記受け部の一方に前記回転軸線方向に突出するように形成された突起部と、
前記突当て部又は前記受け部の他方に前記回転軸線方向に凹むように形成され前記突起部が嵌り込む凹部と、を有し、
前記突起部は、突出側の先端に近いほど前記回転周方向の幅が狭くなる形状をなしており、
前記凹部は、前記突起部の形状に沿って深部に近いほど前記回転周方向の幅が狭くなる形状をなしている、可変容量型過給機。
【0008】
〔2〕前記突起部は、前記回転周方向に交差する平面をなす外側面を有し、
前記凹部は、前記外側面に平行な平面をなし前記外側面に当接する内側面を有する、〔1〕に記載の可変容量型過給機。
【0009】
〔3〕前記突当て部は、前記タービン翼車の回転軸線を円錐軸として前記受け部への突当て方向の前方にいくほど小径になる円錐面をなす突当て面を有しており、
前記受け部は、前記突当て面に対して面接触する円錐面をなす受け面を有している、〔1〕又は〔2〕に記載の可変容量型過給機。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転中におけるガスの流量変化を抑制する可変容量型過給機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の可変容量型過給機を示す断面図である。
図2】可変ノズルユニット等を示す分解斜視図である。
図3】可変ノズルユニットをベアリングハウジング側から軸方向に見た平面図である。
図4】可変容量型過給機の可変ノズルユニット近傍を拡大して示す断面図である。
図5】(a)は第1実施形態の係合部が適用されるノズルリングの斜視図であり、(b)はその係合部を拡大して示す断面図であり、(c)はその係合部のVc-Vc断面図である。
図6】(a)は第2実施形態の係合部が適用されるノズルリングの斜視図であり、(b)はその係合部を拡大して示す断面図であり、(c)はその係合部を矢印VIc方向から見た図である。
図7】(a)は変形例に係る当接面を備えるノズルリングの断面図であり、(b)は、フランジ及び凸条部のうち係合部を含む部分の断面図であり、(c)は、フランジ及び凸条部のうち係合部を含まない部分の断面図である。
図8】従来の過給機において可変ノズルユニットの周方向の変位を規制する構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、可変容量型過給機1の回転軸線Hを含む断面を取った断面図である。可変容量型過給機1は、例えば、船舶や車両の内燃機関に適用されるものである。
【0013】
図1に示されるように、過給機1は、タービン2とコンプレッサ3とを備えている。タービン2は、タービンハウジング4と、タービンハウジング4に収納されたタービン翼車6と、を備えている。タービンハウジング4は、タービン翼車6の周囲において周方向に延びるスクロール流路16を有している。コンプレッサ3は、コンプレッサハウジング5と、コンプレッサハウジング5に収納されたコンプレッサ翼車7と、を備えている。コンプレッサハウジング5は、コンプレッサ翼車7の周囲において周方向に延びるスクロール流路17を有している。
【0014】
タービン翼車6は回転軸14の一端に設けられており、コンプレッサ翼車7は回転軸14の他端に設けられている。タービンハウジング4とコンプレッサハウジング5との間には、ベアリングハウジング13が設けられている。回転軸14は、軸受15を介してベアリングハウジング13に回転可能に支持されており、回転軸14、タービン翼車6及びコンプレッサ翼車7が一体の回転体として回転軸線H周りに回転する。
【0015】
タービンハウジング4には、排気ガス流入口8及び排気ガス流出口10が設けられている。内燃機関(図示せず)から排出された排気ガスが、排気ガス流入口8を通じてタービンハウジング4内に流入し、スクロール流路16を通じてタービン翼車6に流入し、タービン翼車6を回転させる。その後、排気ガスは、排気ガス流出口10を通じてタービンハウジング4外に流出する。
【0016】
コンプレッサハウジング5には、吸入口9及び吐出口11が設けられている。上記のようにタービン翼車6が回転すると、回転軸14を介してコンプレッサ翼車7が回転する。回転するコンプレッサ翼車7は、吸入口9を通じて外部の空気を吸入する。この空気が、コンプレッサ翼車7及びスクロール流路17を通過して圧縮され吐出口11から吐出される。吐出口11から吐出された圧縮空気は、前述の内燃機関に供給される。
【0017】
過給機1のタービン2について、更に説明する。以下の説明において、単に「軸方向」、「径方向」、「周方向」というときには、タービン翼車6の回転軸線方向(回転軸線H方向)、回転径方向、及び回転周方向をそれぞれ意味するものとする。また、「上流」、「下流」などと言うときには、タービン2における排気ガスの上流、下流を意味するものとする。また、回転軸線H方向において、過給機1のタービン2側(図1において左側)を単に「タービン側」と言い、コンプレッサ3側(図1において右側)を単に「コンプレッサ側」と言う場合がある。
【0018】
過給機1のタービン2には、タービン翼車6の周囲に設けられスクロール流路16とタービン翼車6とを接続するノズル流路19が設けられている。ノズル流路19には、可動の複数のノズルベーン21が設けられている。複数のノズルベーン21は、回転軸線Hを中心とする円周上に概ね等間隔に配置されている。各々のノズルベーン21は同期して回転軸線Hに平行な軸線NX周りに回動する。複数のノズルベーン21が上記のように回動することで、隣接するノズルベーン21同士の隙間が拡縮しノズル流路19の開度が調整される。
【0019】
ノズルベーン21を上記のように駆動するために、タービン2は可変ノズルユニット20を備えている。可変ノズルユニット20は、タービンハウジング4の内側に嵌め込まれている。可変ノズルユニット20は、上記の複数のノズルベーン21と、ノズルベーン21を軸方向に挟む2つのノズルリング23,27と、を有している。2つのノズルリング23,27は、軸方向に配列されており、ノズルリング23はノズルリング27よりもコンプレッサ側に配置されている。ノズルリング23,27は、それぞれ回転軸線Hを中心とするリング状を成し、タービン翼車6を周方向に囲むように配置されている。2つのノズルリング23,27で軸方向に挟まれた領域が前述のノズル流路19を構成する。ノズルリング23,27同士は複数の連結ピン29を介して軸方向に連結されており、連結ピン29の寸法が高精度に作製されることで、ノズル流路19の軸方向の寸法精度が確保されている。
【0020】
更に可変ノズルユニット20は、ノズルベーン21を駆動するための駆動機構部25を有している。駆動機構部25は、ノズルリング23とベアリングハウジング13との間のスペースに収容されており、外部のアクチュエータ(図示せず)からの駆動力をノズルベーン21に伝達する。
【0021】
図2及び図3を参照しながら可変ノズルユニット20の駆動機構部25について更に詳細に説明する。図2は、可変ノズルユニット20と後述の遮熱板41及び皿バネ43とを示す分解斜視図であり、図3は、可変ノズルユニット20をベアリングハウジング13側から軸方向に見た平面図である。ノズルリング23には軸方向に貫通する軸受孔31が設けられており、各軸受孔31には、各ノズルベーン21の回動軸21aが回転可能に挿通されている。なお、図の例では、ノズルベーン21は円周上に等間隔に配置されているが、ノズルベーン21を等間隔に配置することは必須ではない。
【0022】
駆動機構部25は、駆動リング33と、ノズルリンク板35と、駆動リンク板37と、を備えている。駆動リング33は、回転軸線Hを中心とする円周に沿って延びるリング状をなしており、ノズルリング23のコンプレッサ側の面に沿って配置されている。駆動リング33は、ノズルリング23に対して相対的に回転軸線H周りに回動可能である。駆動リング33上には、各ノズルリンク板35に係合する係合部33aが周方向に所定間隔をあけて設けられている。
【0023】
ノズルリンク板35はノズルベーン21と同数存在している。ノズルリンク板35は、ノズルベーン21の回動軸21aの端部に取付けられ、当該端部から径方向外側に向けて延びている。より具体的には、ノズルベーン21の各回動軸21aは軸受孔31に挿通されており、回動軸21aの各端部がノズルリング23からコンプレッサ側に突出している。この突出した回動軸21aの各端部に、各ノズルリンク板35の内周側の端部が取付けられている。各ノズルリンク板35の外周側の端部は、駆動リング33の係合部33aに噛合っている。
【0024】
また、駆動リング33には1つの入力側係合部33bが設けられている。入力側係合部33bは、1組の係合部33a同士の間に位置している。この入力側係合部33bには、駆動リンク板37の外周側の端部が噛合っており、駆動リンク板37の内周側の端部は、外部のアクチュエータの駆動軸39(図3)に接続されている。
【0025】
外部のアクチュエータが、駆動軸39を通じて駆動リンク板37を回転軸線Hに平行な軸線回りに回動させると、駆動リンク板37の外周側の端部が入力側係合部33bを周方向に押す。これにより駆動リング33が回転軸線H回りに回動し、駆動リング33の各係合部33aがそれぞれ各ノズルリンク板35の外周側の端部を周方向に押す。そうすると、各ノズルリンク板35がそれぞれ軸線NX周りに回動し、各ノズルリンク板35に固定された各ノズルベーン21が軸線NX周りに回動する。
【0026】
続いて、上記のような可変ノズルユニット20がタービンハウジング4内で位置決めされるための構造について説明する。図1及び図2に示されるように、タービン翼車6とベアリングハウジング13との間には、遮熱板41が設けられている。遮熱板41は、高温のタービンハウジング4側の放射熱を遮蔽して、ベアリングハウジング13の温度上昇を抑える。遮熱板41は、回転軸14を周方向に囲む円環状をなしている。遮熱板41は、ノズルリング23の中央の開口に対してベアリングハウジング13側から嵌め込まれている。
【0027】
遮熱板41とベアリングハウジング13との間には、皿バネ43が挟み込まれている。皿バネ43の中心の穴には回転軸14が挿通され、皿バネ43は回転軸線Hを円錐軸とする円錐面に沿って配置されている。軸方向における皿バネ43の一端部がベアリングハウジング13に接し他端部が遮熱板41に接しており、皿バネ43は、ベアリングハウジング13と遮熱板41との間隔を軸方向に拡げる方向の反発力を発生する。この皿バネ43によって、可変ノズルユニット20及び遮熱板41がタービンハウジング4側に向けて軸方向に付勢されている。
【0028】
図4は、図1に示される可変ノズルユニット20近傍を拡大して示す断面図である。ノズルリング23は、外周側に張出すように形成されたフランジ45を有している。これに対してタービンハウジング4には、上記フランジ45を受ける凸条部47が形成されている。凸条部47は、タービンハウジング4の内壁面から内周側に張出すとともに回転軸線Hを中心とする円周に沿ってリング状に延びている。凸条部47の内径がフランジ45の外径よりも小径に形成されており、凸条部47にはフランジ45がベアリングハウジング13側から突き当たる。
【0029】
このような構造により、可変ノズルユニット20は、皿バネ43によってタービン側に付勢される。そしてこの付勢力によって、ノズルリング23のフランジ45が凸条部47に押し付けられることで、可変ノズルユニット20が軸方向に位置決めされ固定されている。また、フランジ45と凸条部47との摩擦力により、可変ノズルユニット20は軸方向に直交する面内方向にもある程度の固定力で固定されている。但し、可変ノズルユニット20とタービンハウジング4との熱膨張差が生じたときには、フランジ45と凸条部47とが摺動することで上記の熱膨張差が吸収され得る。
【0030】
次に、可変ノズルユニット20の周方向及び径方向の位置決めについて説明する。上記のように、フランジ45と凸条部47(フランジ受部)との摩擦力により、可変ノズルユニット20は軸方向に直交する面内方向にもある程度の固定力で固定されている。ここで、従来は、可変ノズルユニット20の周方向の変位を更に規制するための構造として、例えば図8に示されるような構造が知られている。この構造では、ベアリングハウジング13からタービン側に向けて軸方向に延び出すピン101が設けられている。ピン101はベアリングハウジング13に圧入され、回転軸線Hから径方向にずれて位置している。可変ノズルユニット20のノズルリング23には、ピン101が挿入されるピン穴103が設けられている。このピン穴103に対してピン101がすきま嵌めで挿入されることで、軸方向に直交する面内方向における可変ノズルユニット20の位置決めがされている。
【0031】
しかしながら、過給機1の運転中においては、皿バネ43(付勢部)の熱変形やヤング率低下に伴って皿バネ43による皿バネ荷重が低下する。これにより、フランジ45と凸条部47との摩擦力が低下し、ピン101とピン穴103とのガタの分だけ可変ノズルユニット20の周方向変位(回転軸線H回りの回転変位)が発生し得る。可変ノズルユニット20の周方向変位が生じれば、特にノズル流路19を閉じたときにおける排気ガスの流量変化が生じてしまう。
【0032】
そこで、過給機1は、運転中における可変ノズルユニット20の周方向変位を抑制するために、フランジ45と凸条部47とが係合する係合部を備えている。下に説明する各実施形態の係合部50A,50Bは、何れも、フランジ45(突当て部)と凸条部47(受け部)との接触部に設けられる。この接触部においては、フランジ45の当接面45b(突当て面)が凸条部47のフランジ受面47b(受け面)に突当てられ当接されている。図5に示されるように、当接面45bは、フランジ45のうち軸方向に交差する面であり、フランジ受面47bは、凸条部47と平行な平面であり当接面45bに対向する面である。本実施形態では、当接面45b及びフランジ受面47bは、軸方向に直交する平面をなす。なお、図1図4においては、係合部50A,50Bの図示が省略されている。
【0033】
(第1実施形態)
上記の係合部の第1実施形態について説明する。図5(a)は第1実施形態の係合部50Aが適用されるノズルリングの斜視図であり、図5(b)はその係合部50Aを拡大して示す断面図であり、図5(c)はその係合部50AのVc-Vc断面図である。図5(a)に示されるように、係合部50Aは、ノズルリング23のフランジ45に形成された突起部57を備えている。突起部57は、フランジ45の当接面45bからタービン側に突出し、等脚台形をなす断面形状で、フランジ45の径方向幅全体に亘って径方向に延在している。突起部57のうち周方向の両端面をなす一対の外側面57aは、周方向に対して斜めに交差する平面をなしている。突起部57は、当接面45bを切削する際の削り残し部分として形成されてもよい。
【0034】
また、図5(b)及び図5(c)に示されるように、係合部50Aは、上記突起部57に対応する凹部59を備えている。凹部59は、突起部57がちょうど嵌り込むような形状でフランジ受面47bに形成されている。すなわち、凹部59は、突起部57とほぼ同じ等脚台形の断面形状でフランジ受面47bに形成されている。凹部59のうち周方向両端をなす一対の内側面59aは、上記外側面57aに平行な平面をなしている。突起部57が凹部59に嵌り込むとき、突起部57の2つの外側面57aは、それぞれ、凹部59の各内側面59aに面的に当接する。凹部59は、凸条部47の径方向幅全体に亘って径方向に延びる溝でもある。
【0035】
係合部50Aにおいて、突起部57は、突出側(タービン側)の先端に近いほど周方向の幅が狭くなる形状をなしており、凹部59は、突起部57の形状に沿って深部に近いほど周方向の幅が狭くなる形状をなしている。このような係合部50Aにおいては、皿バネ43(図4)の付勢力によってフランジ45が凸条部47に押し付けられたときに、突起部57が楔のように凹部59に入り込み、突起部57の外側面57aと凹部59の内側面59aとが面的に密着する。これにより、フランジ45が凸条部47に対し周方向にガタがない状態で固定され、ひいては、可変ノズルユニット20がタービンハウジング4に対し周方向にガタがない状態で固定される。その結果、係合部50Aを備える過給機1では、運転中における可変ノズルユニット20の周方向変位が抑えられ、ノズル流路19の排気ガスの流量変化を抑えることができる。
【0036】
なお、突起部57は、突出側(タービン側)の先端に近いほど周方向の幅が狭くなる形状であれば、等脚台形の断面をなすものには限定されない。例えば、突起部57は、一対の外側面57aのうちの一方が軸方向に平行であるような台形断面をなすものであってもよい。この場合、凹部59は、突起部57とほぼ同じ台形の断面形状で、突起部57がちょうど嵌り込むような形状に形成されればよい。また、突起部57が凹部59にちょうど嵌り込むような形状であれば、突起部57の外側面57a及び凹部59の内側面59aは、平面に限られず曲面であってもよい。また、上記のような突起部57と凹部59との位置関係を逆にして、突起部57が凸条部47のフランジ受面47bに形成され、これに対応する凹部59がフランジ45の当接面45bに形成されてもよい。
【0037】
(第2実施形態)
図6(a)は第2実施形態の係合部50Bが適用されるノズルリング23の斜視図であり、図6(b)はその係合部50Bを拡大して示す断面図であり、図6(c)はその係合部50Bを矢印VIc方向から見た図である。図6(a)に示されるように、係合部50Bは、ノズルリング23のフランジ45に設けられた突起部53を備えている。突起部53は円錐台形状をなし、フランジ45の当接面45bからタービン側に向けて軸方向に延び出すように形成されている。突起部53は、当接面45bを切削する際の削り残し部分として形成されてもよい。また、図6(b)及び図6(c)に示されるように、係合部50Bは、タービンハウジング4に設けられ突起部53が挿入される穴55を備えている。穴55は、突起部53がちょうど嵌り込むような形状でフランジ受面47bに形成されている。すなわち、穴55は、突起部53とほぼ同じ円錐台形状でフランジ受面47bに形成されている。
【0038】
係合部50Bにおいて、突起部53は、突出側(タービン側)の先端に近いほど周方向の幅が狭くなる形状をなしており、穴55は、突起部53の形状に沿って深部に近いほど周方向の幅が狭くなる形状をなしている。皿バネ43(図4)の付勢力によってフランジ45が凸条部47に押し付けられたときに、突起部53が楔のように穴55に入り込み、突起部53の外側面53aと穴55の内側面55aとが面的に密着する。これにより、フランジ45が凸条部47に対し周方向にガタがない状態で固定され、ひいては、タービンハウジング4が可変ノズルユニット20に対し周方向にガタがない状態で固定される。従って、このような係合部50Bによっても、係合部50Aと同様の作用効果が得られる。
【0039】
また、更なる作用効果として、フランジ45が凸条部47に対し径方向にもガタがない状態で固定されるので、ひいては、タービンハウジング4が可変ノズルユニット20に対し径方向にもガタがない状態で固定される。その結果、係合部50Bを備える過給機1では、運転中における可変ノズルユニット20の周方向変位及び径方向変位が抑えられ、ノズル流路19の排気ガスの流量変化を更に抑えることができる。なお、上記のような突起部53と穴55との位置関係を逆にして、突起部53が凸条部47のフランジ受面47bに形成され、これに対応する穴55がフランジ45の当接面45bに形成されてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0041】
例えば、上記各実施形態においては、1つの可変ノズルユニット20に対して係合部50A,50Bが1箇所ずつ設けられているが、1つの可変ノズルユニット20に対して係合部50A,50Bは周方向に複数箇所設けられてもよい。
【0042】
また、例えば、上記実施形態における当接面45b及びフランジ受面47bは、軸方向に直交する平面であったが、これには限定されず、当接面45b及びフランジ受面47bは、図7に示される変形例のようなものであってもよい。図7(a)は変形例に係る当接面45bを備えるノズルリング23の断面図であり、図7(b)は、当該変形例にフランジ45及び凸条部47のうち係合部50Aを含む部分の断面図であり、図7(c)は、図7(b)の断面から周方向にずれた位置で、フランジ45及び凸条部47のうち係合部50Aを含まない部分の断面図である。
【0043】
図7に示されるフランジ45の当接面45bは円錐面Kをなしている。円錐面Kは、回転軸線Hを円錐軸とするものであり、タービン側(フランジ45のフランジ受面47bへの突当て方向の前方)にいくほど小径になる円錐面である。すなわち、円錐面Kを含む仮想円錐は、ノズルリング23から見てタービン側に円錐頂点Jをもつ。一方、凸条部47のフランジ受面47bは円錐の内周面をなし、当該円錐内周面は、上記円錐面Kに沿って存在している。また、この変形例のフランジ45及び凸条部47は、第1実施形態と同様の突起部57と凹部59とを有する係合部50Aを備えている。この変形例に係る突起部57及び凹部59は、上記の円錐面Kの母線に沿って延在しており、径方向に対して傾斜している点において、第1実施形態とは異なっている。
【0044】
このようなフランジ45及び凸条部47によれば、皿バネ43(図4)の付勢力によってフランジ45が凸条部47に突当てられたときに、円錐面である当接面45bが円錐内周面であるフランジ受面47bに対してちょうど嵌り込み、フランジ受面47bが概ね全周に亘って当接面45bに対して面接触する。またこのとき、フランジ45の突起部57が凸条部47の凹部59に嵌り込む。このような構成によれば、当接面45bがフランジ受面47bに対してちょうど嵌り込むことで、フランジ45は凸条部47に対し径方向にガタがない状態で固定される。また、係合部50Aの存在によって、前述したように、フランジ45が凸条部47に対し周方向にガタがない状態で固定される。従って、可変ノズルユニット20がタービンハウジング4に対し周方向にも径方向にもガタがない状態で固定される。その結果、運転中における可変ノズルユニット20の周方向変位及び径方向変位が抑えられ、ノズル流路19の排気ガスの流量変化を更に抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 可変容量型過給機
H 回転軸線
4 タービンハウジング
6 タービン翼車
19 ノズル流路
21 ノズルベーン
20 可変ノズルユニット
25 駆動機構部
43 皿バネ(付勢部)
45 フランジ(突当て部)
45b 当接面(突当て面)
47 凸条部(受け部)
47b フランジ受面(受け面)
50A,50B 係合部
53,57 突起部
55 穴
59 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8