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特開2024-106597車両部品の締結構造、及びスポイラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106597
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】車両部品の締結構造、及びスポイラー
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20240801BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B62D37/02 D
F16B5/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010949
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕隆
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GA06
3J001JC03
3J001JD03
3J001JD09
3J001KA12
3J001KA21
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】車体に取り付けられる車両部品において、強固な締結を実現しつつ、締結部からの応力を低減させる技術を提供すること。
【解決手段】締結部材2により車両部品Pを車体Bに締結するための車両部品Pの締結構造1であって、前記締結部材2を取り付け可能な取付部1111と、前記取付部1111に交差する方向に延びる側壁112と、を有する台座部11を備え、前記側壁112は、前記取付部1111に取り付けられる前記締結部材2の外縁から等距離になるように設けられた、車両部品Pの締結構造1を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、
前記締結部材を取り付け可能な取付部と、
前記取付部に交差する方向に延びる側壁と、を有する台座部を備え、
前記側壁は、前記取付部に取り付けられる前記締結部材の外縁から等距離になるように設けられた、車両部品の締結構造。
【請求項2】
前記締結部材は、
前記取付部に裏面側から取り付けられるベース部材と、
前記取付部に表面側から取り付けられるカバー部材と、を有し、
前記側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の外縁から等距離になるように設けられた、請求項1に記載の車両部品の締結構造。
【請求項3】
前記台座部には、前記締結部材を挿入する開口部が形成され、
前記側壁には、前記締結部材の挿入方向に沿う側面である第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側面である第2の側壁とを含み、
前記第1の側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材に当接して前記台座部に対する前記締結部材の回転を抑止し、
前記第2の側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の外縁から等距離になるように設けられた、請求項2に記載の車両部品の締結構造。
【請求項4】
前記締結部材を備え、
前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の前記第2の側壁側及び前記取付部側の角は、R加工が施されている、請求項3に記載の車両部品の締結構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両部品の締結構造を有する、スポイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、車両部品の締結構造に関する。より詳しくは、車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造、及び該締結構造を備えたスポイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、様々な目的で様々なパーツが取り付けられている。例えば、衝撃時に搭乗者の身を守るためのエアバック、衝撃エネルギーを吸収するためのEA材、走行時の空気の流れを調整し、走行時の操縦性や快適性を高めるためのスポイラー等、用途も機能も様々なパーツ(車両部品)が多数取り付けられる。
【0003】
車体に車両部品を取り付ける場合、衝撃時はもちろんのこと、走行時や洗車時等の負荷にも耐えられるような構造であることが求められ、車両部品を車体に締結するための締結構造が非常に重要である。
【0004】
例えば、特許文献1には、エアバッグ本体がフロントピラーパネルとルーフサイドパネルとにわたって取り付けられ、テザーの一部分が、第1台座と、フロントピラートリムの後壁との間に位置し、エアバッグ本体が車室内側に膨張展開するに伴って、テザーが車室内に飛び出してエアバッグ本体を支持し、第1台座がフロントピラートリムの後壁側まで延長され、テザーをガイドするガイドリブが、延長台座の座面部に立設されていることにより、車両のエアバッグ装置のフロントピラートリムに割れ等が生じることを防止でき、製作コストを低減でき、フロントピラートリムの外観品質を向上させることができる技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、部材にEA材を取り付けた構造において、該部材に台座部が設けられ、該EA材が該台座部に取り付けられることにより、該EA材と部材との間に間隙を形成することで、EA材がトリム等の部材に対ししっかりと、しかも部材に反りが生じてもEA材に剥離や割れが生じることがなく、耐久性に向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-177147号公報
【特許文献2】特開2006-21614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、車体に車両部品を取り付ける際の締結構造については、様々な開発が進められているが、更なる技術開発が望まれているのが実情である。例えば、車両部品への負荷に対応するために、締結部を強固にすると、締結の弛みを防止することはできるが、車両部品への負荷に起因して車両部品に亀裂が生じたり、車両部品が破壊されたりする問題があった。
【0008】
そこで、本技術では、車体に取り付けられる車両部品において、強固な締結を実現しつつ、締結部に発生する応力を低減させる技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術では、まず、締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、
前記締結部材を取り付け可能な取付部と、
前記取付部に交差する方向に延びる側壁と、を有する台座部を備え、
前記側壁は、前記取付部に取り付けられる前記締結部材の外縁から等距離になるように設けられた、車両部品の締結構造を提供する。
本技術に係る締結構造に取り付け可能な前記締結部材としては、
前記取付部に裏面側から取り付けられるベース部材と、
前記取付部に表面側から取り付けられるカバー部材と、を有する締結部材を採用することができ、この場合、前記側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の外縁から等距離になるように設けることができる。
本技術に係る締結構造の前記台座部には、前記締結部材を挿入する開口部を形成することができ、この場合、
前記側壁には、前記締結部材の挿入方向に沿う側面である第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側面である第2の側壁とを含み、
前記第1の側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材に当接して前記台座部に対する前記締結部材の回転を抑止し、
前記第2の側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の外縁から等距離になるように設けることができる。
本技術に係る締結構造には、前記締結部材を備えていてもよく、
前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の前記第2の側壁側及び前記取付部側の角は、R加工を施すことができる。
【0010】
本技術は、次に、本技術に係る締結構造を備えたスポイラーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術に係る締結構造1を備えた車両部品Pの一例を模式的に示す模式的斜視図である。
図2図1の破線円部分を拡大した図であり、本技術に係る締結構造1の一例を模式的に示す模式的拡大斜視図である。
図3図1に示す締結構造1の車体Bへの取り付け方法の一例を模式的に示す模式的斜視図である。
図4】締結構造1の台座部11を、裏側から視た模式図である。
図5】Iは、図4の一点鎖線部分の拡大図であり、IIは、それぞれX-X線端面図、Y-Y線端面図、Z-Z線端面図である。
図6】Iは、図2に示す締結構造1に締結部材2を取り付けた一例を示す模式的斜視図であり、IIは、締結部材2を取り付けた台座部11を裏側から視た模式図である。
図7図7のIは、図5のIIのX-X線端面図と同一であり、図7のIIは、図5のIIとは異なる実施形態を示すX-X線端面図である。
図8図7に示す締結部材2とは異なる実施形態に係る締結部材2を、台座部11へ取り付けた状態のX-X線端面図である。
図9】Iは、従来の締結構造100の台座部1011を裏側から視た模式図の拡大図であり、IIは、それぞれx-x線端面図、y-y線端面図、z-z線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
1.締結構造1
図1は、本技術に係る締結構造1の実施形態を備えた車両部品Pの一例を模式的に示す模式的斜視図である。図2は、図1の破線円部分を拡大した図であり、本技術に係る締結構造1の一例を模式的に示す模式的斜視図である。車両部品Pは、例えば、図3に示すように、締結構造1によって車体Bに締結される。締結構造1では、図示しないが、例えば、各種ネジやボルト等の締結部材2により車両部品Pが車体Bへ締結される。
【0014】
なお、各図では、車両部品Pの一例として、テールゲートスポイラーSを例示したが、これに限定されない。本技術に係る締結構造1は、車体Bに取り付けられる車両部品Pであれば、あらゆる種類の車両部品Pに用いることができる。
【0015】
車両としては、例えば、自動車、自動二輪車、電車、モノレール、リニアモーターカー、ディーゼル機関車等が挙げられ、自動車に特に好適に用いることができる。車両部品Pとしては、例えば、各種スポイラー、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー等の自動車外装部品に好適に用いることができる。
【0016】
特に本技術においては、車体Bの外側に取り付けられる車両部品Pの締結に際しても、後述するように、強固な締結を実現しつつ、車両部品Pへの負荷に起因して締結部に発生する応力を低減させることができるため、車両部品Pの破損等を防止することができる。そのため、本技術に係る締結構造1は、スポイラー等に特に好適に用いることができる。以下、本技術に係る締結構造1の詳細を説明する。
【0017】
(1)台座部11
本技術に係る締結構造1は、台座部11を有する。台座部11は、締結部材2を取り付け可能な取付部1111と、取付部1111に交差する方向に延びる側壁112と、を有する。図示しないが各種ネジやボルト等の締結部材2(図6参照)を、後述する開口部111を通して取付部1111に取り付けることで、車両部品Pが車体Bへ締結される。
【0018】
台座部11の形態は、締結部材2を取り付け可能な取付部1111と、取付部1111に交差する方向に延びる側壁112とを有し、車体Bへの締結を行うことができれば、特に限定されず、用いる車両部品P、車体B、締結部材2等の形態等に応じて、自由に設計することができる。例えば、直方体、立方体等の多角方体、断面が多角(三角、四角或いはそれ以上)の多角筒体、円筒体、或いはこれらを1種又は2種以上組み合わせた形態などが挙げられる。
【0019】
図4は、本技術に係る締結構造1の台座部11を、裏側から視た模式的斜視図である。破線は、取付部1111に取り付けられる締結部材2の外縁を表している。本技術では、台座部11を構成する側壁112が、取付部1111に取り付けられる締結部材2の外縁から等距離になるように設けられていることを特徴とする。
【0020】
図5のIは、図4の一点鎖線部分の拡大図であり、図5のIIは、それぞれX-X線端面図、Y-Y線端面図、Z-Z線端面図である。図9のIは、従来の締結構造の台座部1011を裏側から視た模式的斜視図の拡大図であり、図9のIIは、それぞれx-x線端面図、y-y線端面図、z-z線端面図である。図9のIIに示すように、従来の締結構造における台座部1011の側壁1112と、締結部材20の外縁との距離dは、x-x線端面、y-y線端面、z-z線端のそれぞれの箇所で異なっている。このような締結部材20の外縁から側壁1112までの距離dが一定でない従来の締結構造では、車両部品Pに負荷が加わった際に、車体Bとの締結部に発生する応力が、側壁1112に均等に伝わらないため、側壁1112における負荷が大きい部分に、亀裂が生じたり、破壊されたりする問題があった。
【0021】
一方、本技術に係る締結構造1は、台座部11の側壁112と、締結部材2の外縁との距離Dは、図5のIIに示すように、X-X線端面、Y-Y線端面、Z-Z線端のすべての箇所で等距離である。このように、本技術では、台座部11の側壁112を、締結部材2の外縁から等距離になるように設けることで、車両部品Pに負荷が加わった際に、車体Bとの締結部(本実施形態では、台座部11における取付部1111と側壁112との接続部分)に発生する応力が、側壁112全体に均等に伝わるため、側壁112の一部に亀裂や破損が生じることを軽減することができる。
【0022】
また、側壁112(112a,112b(図6参照))の厚みTも、一定であることが好ましい。側壁112(112a,112b(図6参照))の厚みTを一定にすることで、車両部品Pに負荷が加わった際に、車体Bとの締結部(本実施形態では、台座部11における取付部1111と側壁112との接続部分)に発生する応力が、側壁112全体に均等に伝わるため、側壁112の一部に亀裂や破損が生じることを軽減することができる。
【0023】
図6のIは、図2に示す締結構造1に締結部材2を取り付けた一例を示す模式的斜視図であり、図6のIIは、締結部材2を取り付けた台座部11を裏側から視た模式図である。本技術に係る締結構造1では、締結部材2は必須ではなく、車両部品Pの車体Bへ締結に用いることができる一般的な締結部材を自由に選択して用いることができる。本技術では特に、後述するような、取付部1111に裏面側から取り付けられるベース部材21と、取付部1111に表面側から取り付けられるカバー部材22と、を有する締結部材2を好適に用いることができる。
【0024】
ベース部材21と、カバー部材22と、を有する締結部材2を用いる場合、台座部11の側壁112は、図6のIIに示すように、取付部1111に取り付けられるベース部材21の外縁から等距離になるように設けることが好ましい。
【0025】
また、台座部11には、締結部材2を挿入する開口部111を形成することができる。開口部111の形態も、締結部材2を挿入することができれば特に限定されず、用いる締結部材2の形態に応じて、自由に設計することができる。
【0026】
開口部111から締結部材2を挿入する場合、締結部材2の挿入方向に沿う側面である第1の側壁112aは、取付部1111に取り付けられる締結部材2のベース部材21に当接して台座部11に対する締結部材2の回転を抑止するように構成されていることが好ましい。具体的には、例えば、図6のIIに例示するように、ベース部材21の幅と、対向する第1の側壁112a同士の距離とを等距離にし、ベース部材21と第1の側壁112aの当接する部分を、直線的に形成することで、ベース部材21の回転を抑止することができる。
【0027】
そして、開口部111に対向する側の側面である第2の側壁112bは、取付部1111に取り付けられる締結部材2のベース部材21の外縁から等距離になるように設けることが好ましい。このように、台座部11に対する締結部材2の回転を抑止することで、強固な締結を実現しつつ、第2の側壁112bを締結部材2のベース部材21の外縁から等距離になるように設けることで、車両部品Pに負荷が加わった際に、車体Bとの締結部に発生する応力が、側壁112に均等に伝わるため、側壁112の一部に亀裂や破損が生じることを軽減することができる。
【0028】
本技術に係る締結構造1は、車両部品Pのあらゆる箇所に用いることができるが、応力が発生する方向が予め解っている場合には、台座部11の第2の側壁112bが、応力が発生する方向(応力方向)に設けられていることが好ましい。即ち、台座部11の側壁112において、車両部品Pに負荷が加わった際に、応力が発生する方向の側壁112が、締結部材2の外縁から等距離になるように設けられていることが好ましい。具体的には、例えば、図1のように、本技術に係る締結構造1をテールゲートスポイラーSに用いる場合、中央部に設けられる締結構造1は、締結部材2の挿入方向が車両の前後方向となる向きで設けられており、台座部11の第2の側壁112bが、車両の後方に設けられていることが好ましい。これにより、本技術に係る締結構造1を好適に用いることができる。
【0029】
なお、図1における各締結構造1の位置と締結部材2の挿入方向は一例であり、用いる車両部品P、車体B、締結部材2等の形態等に応じて、自由に設計することができる。
【0030】
図7のIは図5のIIのX-X線端面図と同一であり、図7のIIは図5のIIとは異なる実施形態を示すX-X線端面図である。本技術に係る締結構造1では、図7のIIに示すように、台座部11において、取付部1111と側壁112との境界に、R加工が施されていることが好ましい。車両部品Pに負荷が加わった際は、取付部1111と側壁112との境界が亀裂や破損の起点となってしまう可能性があるが、この境界部分にR加工を施すことで、締結部に発生する応力が境界部分に集中することなくRに沿って分散するため、取付部1111と側壁112との境界における亀裂や破損を軽減することができる。
【0031】
(2)締結部材2
本技術に係る締結構造1では、締結部材2は必須ではなく、車両部品Pの車体Bへ締結に用いることができる一般的な締結部材を自由に選択して用いることができるが、以下、本技術に好適に用いることができる締結部材2について説明する。
【0032】
本技術に好適に用いることができる締結部材2としては、例えば、図6のIに示すように、取付部1111に裏面側から取り付けられるベース部材21と、取付部1111に表面側から取り付けられるカバー部材22と、を有する締結部材2が挙げられる。ベース部材21とカバー部材22の形態も、本技術に係る締結構造1に締結することができれば、特に限定されず、用いる車両部品Pや車体Bの形態等に応じて、自由に設計することができる。
【0033】
ベース部材21は、台座部11における締結部材2の挿入方向に沿う側面である第1の側壁112aに当接するように形成されていることが好ましい。ベース部材21が第1の側壁112aに当接することで、台座部11への締結部材2の取り付け時にガイドの役割を果たして作業性を向上させることに加え、取り付け後に台座部11に対する締結部材2の回転を抑止することができ、その結果、強固な締結を実現することができる。
【0034】
また、図8は、図7に示す締結部材2とは異なる実施形態に係る締結部材2を取り付けた状態のX-X線端面図である。本技術に用いる締結部材2は、台座部11に取り付けた場合に台座部11と接する角に、R加工が施されていることが好ましい。特に、図8に示すように、ベース部材21において、第2の側壁112b側及び取付部1111側の角(図8中矢印で示す角)は、R加工が施されていることが好ましい。車両部品Pに負荷が加わり台座部11が撓む際に、締結部材2の角によって台座部11に発生する応力が集中し、台座部11に亀裂や破損が生じる場合があるが、締結部材2の角にR加工を施すことで、台座部11がRにそって撓むことができるため、台座部11の亀裂や破損を軽減することができる。
【0035】
以上説明した本技術に係る締結構造1は、強固な締結を実現しつつ、締結部からの応力を低減させることができるため、走行時はもちろんのこと、洗車時等の負荷にも耐えられる。また、本技術に係る締結構造1の締結は非常に強固であるため、車両部品Pに一般的に必要とされる締結構造の数よりも、少ない数で強固な締結を実現し得る。その結果、締結構造1に必要なコストの削減に寄与し、締結作業における工程数の削減及び作業効率を向上させ、車両部品Pの重量低減化も実現可能である。
【0036】
なお、以上説明した実施形態では、台座部11に開口部111を設け、開口部111から締結部材2を挿入する例を示したが、これに限定されない。例えば、締結部材2が、ベース部材21とカバー部材22との間で分離可能である場合、開口部111を設けなくてもよい。この場合、締結部材2のうち、ベース部材21を含む表面側部材と、カバー部材22を含む裏面側部材とが、取付部1111に設けられた貫通孔等を介して組み付けられることで、締結部材2が取付部1111に取り付けることもできる。開口部111が設けられている場合、締結時において、この開口部111によってベース部材21とカバー部材22との間の一部に空間が発生するが、台座部11に開口部111を設けないことで、台座部11を強固にすることができると共に、締結時にベース部材21とカバー部材22との間に空間が発生しないため、より強固な締結を実現し得る。
【0037】
2.スポイラーS
本技術に係るスポイラーSは、前述した本技術に係る締結構造1を有する。本技術に係るスポイラーSには、例えば、前述した図1に示すように、複数の締結構造1を備えていてもよいが、例えば図示しないが、一つのスポイラーSに、一つの締結構造1を備えていてもよい。スポイラーSに、本技術に係る締結構造1を複数備える場合、その数も図1に示す5つに限らず、用いるスポイラーSや車体Bの形態等に応じて、2以上の任意の数の締結構造1を備えることができる。
【0038】
スポイラーSに、本技術に係る締結構造1を複数備える場合、それぞれの締結構造1は、前述した範囲内で個々に設計変更が可能である。即ち、本技術に係るスポイラーSには、異なる形態の締結構造1を複数備えることも可能である。
【0039】
本技術に係るスポイラーSの種類は特に限定されない。例えば、フロントバンパースポイラー、フロントアンダースポイラー、ハーフスポイラー、サイドスポイラー、テールゲートスポイラー、リアバンパースポイラー、トランクスポイラー、ルーフスポイラー等が挙げられる。
【0040】
なお、本技術は、以下のように構成することも可能である。
[1]
締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、
前記締結部材を取り付け可能な取付部と、
前記取付部に交差する方向に延びる側壁と、を有する台座部を備え、
前記側壁は、前記取付部に取り付けられる前記締結部材の外縁から等距離になるように設けられた、車両部品の締結構造。
[2]
前記車両部品に負荷が加わった際に、応力が発生する応力方向の前記側壁が、前記取付部に取り付けられる前記締結部材の外縁から等距離になるように設けられた、[1]に記載の車両部品の締結構造。
[3]
前記締結部材は、
前記取付部に裏面側から取り付けられるベース部材と、
前記取付部に表面側から取り付けられるカバー部材と、を有し、
前記側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の外縁から等距離になるように設けられた、[1]又は[2]に記載の車両部品の締結構造。
[4]
前記台座部には、前記締結部材を挿入する開口部が形成され、
前記側壁には、前記締結部材の挿入方向に沿う側面である第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側面である第2の側壁とを含み、
前記第1の側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材に当接して前記台座部に対する前記締結部材の回転を抑止し、
前記第2の側壁は、前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の外縁から等距離になるように設けられた、[3]に記載の車両部品の締結構造。
[5]
前記車両部材は、前記車体の幅方向に延びており、
前記車両部材において前記車幅方向の中央部に設けられる前記台座部では、前記締結部材の挿入方向が前記車体の前後方向となり、前記第2の側壁が、前記車体の後方に設けられた、[4]に記載の車両部品の締結構造。
[6]
前記締結部材を備え、
前記取付部に取り付けられる前記ベース部材の前記第2の側壁側及び前記取付部側の角は、R加工が施されている、[4]又は[5]に記載の車両部品の締結構造。
[7]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の車両部品の締結構造を有する、スポイラー。
[8]
[1]から[6]のいずれか一項に記載の車両部品の締結構造、又は、[7]に記載のスポイラーを有する、車両。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本技術は、自動車、自動二輪車、電車、モノレール、リニアモーターカー、ディーゼル機関車等の車両に限らず、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、航空機等の乗物、農業機械、建設機械等の各種機械の締結構造にも用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 締結構造
11 台座部
111 開口部
112 側壁
112a 第1の側壁
112b 第2の側壁
2 締結部材
21 ベース部材
22 カバー部材
1111 取付部
P 車両部品
B 車体
S スポイラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9