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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106603
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】手持ち式電動バキューム
(51)【国際特許分類】
   A47L 5/24 20060101AFI20240801BHJP
   E01H 1/08 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A47L5/24 A
E01H1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010960
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅木 智久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢司
【テーマコード(参考)】
2D026
【Fターム(参考)】
2D026AC01
(57)【要約】
【課題】送風機やケーシング、バッテリなどのハンドル周りの配置構成を最適化することで、構造の複雑化・大型化を抑えつつ、操作性や作業性を向上させることができる手持ち式電動バキュームを提供する。
【解決手段】パイプ10の基端側に設けられた屈曲部10Tの基端側に当該屈曲部10Tに沿って前傾して送風機20が配置されている。また、ハンドル30においてバッテリ50を搭載した送風機20との対向部(縦辺部30C)が送風機20と反対側に傾斜(後傾)しており、送風機20の基端側に形成されているハンドル30の空間30Sの上側(把持部分側)の距離が下側の距離より大きくなっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸い込み作業を行う手持ち式電動バキュームであって、
先端側に吸い込み口を有し、基端側に排出口を有するパイプと、
前記パイプの外側に設けられ、電動モータによって駆動される送風機と、
前記パイプの外側に設けられ、前記送風機による圧力風を前記吸い込み口寄りの前記パイプの周囲から前記パイプ内に送り込んで、前記排出口に向けて噴出させる圧力流路と、
前記パイプの外側であって前記パイプの前記排出口寄りに設けられる手持ち用のハンドルと、
前記電動モータに給電するバッテリと、を備え、
前記パイプは、前記先端側から前記基端側まで軸線に沿って延びており、前記基端側に、前記軸線に対して傾斜する屈曲部を有しており、
前記送風機は、前記屈曲部の基端側に前記屈曲部に沿って前傾して配置されており、
前記ハンドルは、前記送風機の基端側に空間を形成するように、前記送風機の下側と上側の間に配置されており、
前記ハンドルにおいて前記空間を介した前記送風機との対向部の基端側に前記バッテリが取り付けられており、
前記ハンドルの前記対向部および当該対向部に取り付けられた前記バッテリは、前記軸線に対して前記送風機とは反対側に傾斜しており、前記ハンドルの前記空間の上側の距離が下側の距離より大きくされていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項2】
請求項1に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記ハンドルは、前記送風機の下側から基端側へ延びる下辺部と、前記送風機の上側から基端側へ延びる上辺部と、前記下辺部の基端部から前記上辺部の基端部まで延びて前記送風機との前記対向部を構成する縦辺部と、を有し、前記下辺部、前記上辺部、および前記縦辺部によって前記送風機の基端側に前記空間を形成していることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項3】
請求項1に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記ハンドルの上部と前記圧力流路は連続して形成されていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項4】
請求項3に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記ハンドルの上部と前記圧力流路は前記軸線に沿って一直線状に連続して形成されていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項5】
請求項4に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記ハンドルの上部に上に凸となる湾曲部が設けられ、前記ハンドルの上部における前記湾曲部の先端側と前記圧力流路が前記軸線に沿って一直線状に連続して形成されていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項6】
請求項1に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記バッテリは、前記ハンドルの前記対向部に、前記軸線に対して前記送風機とは反対側に傾斜した方向で上側から下側へスライドして取り付けられていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項7】
請求項1に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記ハンドルの下部に、前記送風機の制御基板が収容されていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項8】
請求項1に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記ハンドルの上部に、前記送風機の前記電動モータの回転速度を調整する操作部材が設けられていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項9】
請求項1に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記圧力流路と前記パイプを接続する接続壁に、前記圧力流路の一部を手持ち用のサブハンドルとして使用可能とするための貫通穴が設けられていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【請求項10】
請求項9に記載の手持ち式電動バキュームにおいて、
前記圧力流路は、前記送風機の上側から前記パイプの前記吸い込み口寄りまで、前記基端側から前記先端側に行くに従って前記パイプに近づくように前記軸線に対して傾斜して延びており、
前記圧力流路の下側と前記パイプの上側を接続する前記接続壁に前記貫通穴が設けられていることを特徴とする手持ち式電動バキューム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵や回収物などの吸い込み作業を行う手持ち式電動バキュームに関する。
【背景技術】
【0002】
落ち葉などの塵や回収物などを吸い込んで収集する作業(以下、吸い込み作業)に用いられるバキュームの従来技術として、例えば下記特許文献1に記載のものが既知である。下記特許文献1に記載の従来のバキュームは、吸い込み作業を行う手持ち式の電動バキュームであって、一端側に吸い込み口を有し他端側に排出口を有するパイプと、パイプの外側に設けられ、電動モータによって駆動される送風機と、パイプの外側であってパイプの長手方向排出口寄りに設けられる手持ち用のハンドルと、パイプの長手方向吸い込み口寄りに設けられ、送風機による圧力風をパイプの周囲からパイプ内に送り込んで、排出口に向けて噴出させるエジェクタ部とを備える。また、パイプの外側には、排出口寄りに電動モータに給電するバッテリが取り付けられており、バッテリの重心位置と送風機の重心位置の間に、ハンドルが位置する。
【0003】
上記手持ち式電動バキュームでは、エジェクタ部から噴出される圧力風は、パイプの内面に沿ってパイプ内部を通過し、排出口に向けて噴出される。この圧力風により、パイプの内側の圧力が低下することになり、パイプ内には、吸い込み口から排出口に向けた吸引流(負圧)が発生する。これによって、パイプの一端側に設けた吸い込み口から塵などをパイプ内に吸い込んで、吸い込んだ塵などの被吸引物をパイプの他端側に設けた排出口を通じて、排出口に取り付けられる袋等の収集体内に収集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-114780号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0282339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の従来の手持ち式電動バキュームは、重量物である送風機やボリュート形状を有する送風機のファンケーシング(以下、単にケーシングと呼ぶ)が、手持ち用のハンドルから離れたパイプの外周に沿って配置されている。このため、従来のバキュームは、作業中の作業者への負荷が大きくなる、操作性が低下する等の問題があった。
【0006】
そこで、重量物である送風機やケーシングを手持ち用のハンドルの近くに配置することが考えられる(例えば特許文献2を参照)。しかし、送風機やケーシング、バッテリなどの主要部品を複数、ハンドルの近くに集中的に配置すると、ハンドルの把持部分(作業者が握って操作する部分)の周辺空間が狭くなるため、操作性や作業性が低下する可能性があった。また、ハンドルの把持部分の周辺空間を確保するために、構造が複雑化したり大型化したりする可能性があった(例えば特許文献2を参照)。特に、ハンドルの把持部分の周辺空間を広く確保しようとした結果、送風機やバッテリなどの重量部品をハンドルから離間して配置すると、操作時のバランスが取りづらくなる問題も生じていた。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、送風機やケーシング、バッテリなどのハンドル周りの配置構成を最適化することで、構造の複雑化・大型化を抑えつつ、操作性や作業性を向上させることができる手持ち式電動バキュームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る手持ち式電動バキュームは、吸い込み作業を行う手持ち式電動バキュームであって、先端側に吸い込み口を有し、基端側に排出口を有するパイプと、前記パイプの外側に設けられ、電動モータによって駆動される送風機と、前記パイプの外側に設けられ、前記送風機による圧力風を前記吸い込み口寄りの前記パイプの周囲から前記パイプ内に送り込んで、前記排出口に向けて噴出させる圧力流路と、前記パイプの外側であって前記パイプの前記排出口寄りに設けられる手持ち用のハンドルと、前記電動モータに給電するバッテリと、を備え、前記パイプは、前記先端側から前記基端側まで軸線に沿って延びており、前記基端側に、前記軸線に対して傾斜する屈曲部を有しており、前記送風機は、前記屈曲部の基端側に前記屈曲部に沿って前傾して配置されており、前記ハンドルは、前記送風機の基端側に空間を形成するように、前記送風機の下側と上側の間に配置されており、前記ハンドルにおいて前記空間を介した前記送風機との対向部の基端側に前記バッテリが取り付けられており、前記ハンドルの前記対向部および当該対向部に取り付けられた前記バッテリは、前記軸線に対して前記送風機とは反対側に傾斜しており、前記ハンドルの前記空間の上側の距離が下側の距離より大きくされていることを特徴とする。
【0009】
好ましい態様では、前記ハンドルは、前記送風機の下側から基端側へ延びる下辺部と、前記送風機の上側から基端側へ延びる上辺部と、前記下辺部の基端部から前記上辺部の基端部まで延びて前記送風機との前記対向部を構成する縦辺部と、を有し、前記下辺部、前記上辺部、および前記縦辺部によって前記送風機の基端側に前記空間を形成している。
【0010】
別の好ましい態様では、前記ハンドルの上部と前記圧力流路は連続して形成されている。
【0011】
別の好ましい態様では、前記ハンドルの上部と前記圧力流路は前記軸線に沿って一直線状に連続して形成されている。
【0012】
別の好ましい態様では、前記ハンドルの上部に上に凸となる湾曲部が設けられ、前記ハンドルの上部における前記湾曲部の先端側と前記圧力流路が前記軸線に沿って一直線状に連続して形成されている。
【0013】
別の好ましい態様では、前記バッテリは、前記ハンドルの前記対向部に、前記軸線に対して前記送風機とは反対側に傾斜した方向で上側から下側へスライドして取り付けられている。
【0014】
別の好ましい態様では、前記ハンドルの下部に、前記送風機の制御基板が収容されている。
【0015】
別の好ましい態様では、前記ハンドルの上部に、前記送風機の前記電動モータの回転速度を調整する操作部材が設けられている。
【0016】
別の好ましい態様では、前記圧力流路と前記パイプを接続する接続壁に、前記圧力流路の一部を手持ち用のサブハンドルとして使用可能とするための貫通穴が設けられている。
【0017】
別の好ましい態様では、前記圧力流路は、前記送風機の上側から前記パイプの前記吸い込み口寄りまで、前記基端側から前記先端側に行くに従って前記パイプに近づくように前記軸線に対して傾斜して延びており、前記圧力流路の下側と前記パイプの上側を接続する前記接続壁に前記貫通穴が設けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パイプの基端側に設けられた屈曲部の基端側に当該屈曲部に沿って前傾して送風機が配置されている。また、ハンドルにおいてバッテリを搭載した送風機との対向部(縦辺部)が送風機と反対側に傾斜(後傾)しており、送風機の基端側に形成されているハンドルの空間の上側(把持部分側)の距離が下側の距離より大きくなっている。これにより、重量物である送風機やケーシング、バッテリなどをハンドルの近くに配置した場合でも、構造を複雑化したり大型化したりすること無く、ハンドルの把持部分を確保できるため、構造の複雑化・大型化を抑えつつ、操作性や作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの斜め前から見た外観斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの斜め後ろから見た外観斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの側面図。
図4】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの上面図。
図5】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの下面図。
図6】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの縦断面図(吸い込み状態:バキュームモード)。
図7】本発明の実施形態に係る手持ち式電動バキュームの縦断面図(吹き出し状態:ブロワモード)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0021】
図1図7に示すように、本実施形態の手持ち式電動バキューム(以下、単にバキュームと記載する場合がある)1は、吸い込み作業を行うハンドヘルド作業機であり、塵や回収物を吸引するパイプ10と、送風機20と、ハンドル30と、ノズル部40と、を備えている。
【0022】
パイプ10は、一端側(先端側)に吸い込み口10Aを有し、他端側(基端側)に排出口10Bを有しており、吸い込み口10Aからパイプ10内に吸い込んだ被吸引物を排出口10Bから排出する。吸い込み作業時には、排出口10Bに図示省略した収集袋等が装着され、被吸引物を回収する。
【0023】
パイプ10は、全長に亘って、吸い込み口10Aの口径と同じかまたはそれ以上の内径を有している(図6図7参照)。これにより、吸い込み口10Aからパイプ10内に吸い込まれた全ての被吸引物は、大きな抵抗を受けることなく、円滑に排出口10Bまで送られる。
【0024】
本実施形態では、パイプ10は、基端側に屈曲部10Tを有している。すなわち、パイプ10は、吸い込み口10Aが設けられた先端側から基端側までパイプ10の中心軸P(軸線)に沿って延びており、その基端側に、パイプ10の中心軸Pに対して傾斜(前傾)する屈曲部10Tを有してパイプ全体としてL字型となっており、その屈曲部10Tの他端開口(ここでは下端開口)は、排出口10Bとなっている。先端側の吸い込み口10Aは前方に向かって開放し、基端側の排出口10Bは下方に向かって開放している。また、本実施形態では、パイプ10(の屈曲部10T)の基端側に、屈曲部10Tに沿ってパイプ10の中心軸Pに対して傾斜(前傾)する平面10Vが設けられており、この平面10Vは、後述する送風機20の設置面となっている。
【0025】
送風機20は、パイプ10の外側に設けられている。より具体的には、送風機20は、パイプ10の基端側に形成された屈曲部10Tの基端側(の設置面10V)に屈曲部10Tに沿って前傾して近接配置されている。図6図7を参照し、送風機20は、内蔵された電動モータ21によって駆動される遠心送風機であり、電動モータ21の駆動軸とファン22の回転軸が同軸であって、パイプ10の中心軸Pに対して若干傾斜する方向に配備されている。ボリュート形状を有する送風機20のケーシング23は、パイプ10の設置面10Vに沿って配置されており、ファン22の回転で吸い込み部24から吸い込まれた風がケーシング23内を通って、パイプ10の外側に配置される圧力流路25内に圧縮空気として送られる。なお、圧縮空気を送ることができれば、図示の遠心送風機に替えてコンプレッサー等を採用してもよい。
【0026】
圧力流路25は、パイプ10の外側に設けられている。より具体的には、圧力流路25は、パイプ10の上側に配置されている。圧力流路25は、送風機20による圧力風をパイプ10の周囲からパイプ10内に送り込んで、排出口10Bに向けて噴出させるべく、パイプ10の吸い込み口10A寄りに設けられたノズル部40に送り込む。本実施形態では、圧力流路25は、ケーシング23(送風機20)の上側からパイプ10の吸い込み口10A寄りまで、前方(基端側から先端側)に行くに従ってパイプ10に近づくように中心軸Pに対して傾斜(前傾)して略直線状に延びている。
【0027】
手持ち用のハンドル30は、パイプ10の外側であって、パイプ10の長手方向排出口10B寄りに設けられる。本実施形態では、ハンドル30は、横倒しU字形を有しており、ケーシング23(送風機20)の上側、換言すると、圧力流路25の基端側とケーシング23(送風機20)の下側の間に配置されている。この形状により、ハンドル30は、送風機20(の吸い込み部24)の基端側に所定の大きさの空間30Sを形成している。
【0028】
より具体的には、ハンドル30は、ケーシング23(送風機20)の下側から基端側へ延びる下辺部30Aと、ケーシング23(送風機20)の上側から基端側へ延びる上辺部30Bと、下辺部30Aの基端部から上辺部30Bの基端部まで延びてそれらを接続する縦辺部30Cと、を有しており、下辺部30A、上辺部30B、および縦辺部30Cによって画成される(囲われる)空間30Sが送風機20(の吸い込み部24)の基端側に形成されている。ハンドル30の基端側に設けられた縦辺部30Cは、空間30Sを介して、送風機20と概略対向して配置されている(対向部)。
【0029】
図6図7を参照し、ハンドル30の下辺部30Aは、送風機20の制御基板(駆動回路とも呼ぶ)51の収容部となっている。換言すると、ハンドル30の下辺部30Aに、送風機20の制御基板51が収容されている。
【0030】
ハンドル30の上辺部30Bは、主に作業者が把持する把持部32となっている。把持部32の外側(上側)には、送風機20を駆動するための電動モータ21のオンオフを切り替えるスイッチ31が設けられている。把持部32の内側(下側)には、送風機20の電動モータ21の回転速度を調整する操作部材としての操作レバー33が設けられている。本実施形態において、ハンドル30の上辺部30Bは、長手方向中央付近に上に凸となる湾曲部30Tが設けられた山型状を有している。この湾曲部30T付近の上下に、前記スイッチ31および操作レバー33が設けられている。
【0031】
本実施形態では、ハンドル30の上辺部30Bは、パイプ10の上側に設けられた圧力流路25と、パイプ10の中心軸Pに沿って略一直線状に連続して形成されている。より具体的には、ハンドル30の上辺部30Bにおける湾曲部30Tの先端側(前傾部分)と圧力流路25が、パイプ10の中心軸Pに沿って一直線状に連続して形成されている。ハンドル30の上辺部30Bにおける湾曲部30Tの基端側(後傾部分)には、前記スイッチ31および操作レバー33が設けられている。なお、ハンドル30の上辺部30Bにおける湾曲部30Tの基端側(後傾部分)は、湾曲部30Tの先端側(前傾部分)に比べて若干細く形成されている。これは、先端側の内部には圧力流路25を形成するのに対し、基端側には圧力流路25は形成されていないためであるが、前方へ送る空気量が十分に確保できる場合は先端側を基端側と略同じ太さとしてもよい。このようにすれば、全体の大型化を回避でき、外観上のまとまりも一層向上する。
【0032】
ハンドル30の縦辺部30Cには、電動モータ21に給電するバッテリ50が取り付けられている。本実施形態では、ハンドル30の縦辺部30Cの基端側が、バッテリ50の収容部になっている。本実施形態において、ハンドル30の縦辺部30Cは、送風機20(や屈曲部10T)と概略対向して配置されるとともに、パイプ10の中心軸Pに対して送風機20(や屈曲部10T)とは反対側に傾斜(後傾)している。バッテリ50は、ハンドル30の縦辺部30Cの基端側(収容部)に、パイプ10の中心軸Pに対して傾斜した方向で上側から下側へスライドして取り付けられ、パイプ10の中心軸Pに対して送風機20(や屈曲部10T)とは反対側に傾斜(後傾)している。
【0033】
前記のように、ハンドル30の縦辺部30Cおよび縦辺部30Cに取り付けられたバッテリ50は、パイプ10の中心軸Pに対して送風機20(や屈曲部10T)とは反対側に傾斜(後傾)している。したがって、ハンドル30の空間30Sにおいて上側(上辺部30Bまたは把持部32側)の距離が下側(下辺部30A側)の距離より大きくなっている。これにより、送風機20やケーシング23、バッテリ50などの主要部品を複数ハンドル30の近くに集中的に配置した場合でも、構造を複雑化したり大型化したりすること無く、ハンドル30の把持部分およびその周辺空間を確保できる。また、把持部分を中心に重量部品が前後それぞれに略同距離で配置されているため、作業時の姿勢変化が多いときでも、バランスが常に保たれる。
【0034】
また、本実施形態では、パイプ10と当該パイプ10の外側に設けられている圧力流路25との間にこれらを接続する接続壁26が設けられている。より具体的には、接続壁26は、パイプ10の上側と圧力流路25の下側を接続するように、パイプ10の中心軸Pに沿って配設されている。この接続壁26(のハンドル30に近い部分)には、矩形状の貫通穴27が形成されている。この貫通穴27により、圧力流路25における貫通穴27の上側の部分が手持ち用のサブハンドルとして使用可能となっている。
【0035】
ノズル部40は、パイプ10の長手方向吸い込み口10A寄りに設けられ、送風機20による圧力風をパイプ10の周囲からパイプ10内に送り込んで、排出口10Bに向けて噴出させるものである。ノズル部40から噴出される圧力風は、パイプ10の内面に沿って、排出口10Bに向けて噴出される。この圧力風により、その内側の圧力が低下することになり、パイプ10内には、吸い込み口10Aから排出口10Bに向けた吸引流が発生する。
【0036】
ノズル部40は、パイプ10の外側に突出して設けられる環状流路41を備えている。環状流路41は、パイプ10の中心軸P周りに環状に設けられており、環状流路41には、圧力流路25を介して送風機20による圧力風が導入される。圧力流路25は、環状流路41の上側に接続されている。
【0037】
環状流路41は、パイプ10の中心軸P周り全周でパイプ10内部に連通する開口部で構成される噴出口42を有している。そして、この噴出口42から圧力風がパイプ10の内面に沿って噴出される(図6)。噴出口42からパイプ10へ噴出する際、圧力風は周方向の成分を含んでいてもよい。これによってパイプ10の内壁に沿った旋回流が加わり、パイプ10の内壁付近の吸引力をより高めることができる。
【0038】
本実施形態では、ノズル部40は、パイプ10における環状流路41の内側に挿入された内部パイプ14を有している。また、ノズル部40は、パイプ10における環状流路41の先端側(つまり、パイプ10の先端部)であって、内部パイプ14の先端部周りに(円環状に)配置された折り返し部15を有している。折り返し部15は、内部パイプ14の先端部の外側から内側かつ基端側に向かって折り返されるように、パイプ10の中心軸P周りに円環状に形成されている。本実施形態において、折り返し部15は、基本的に、(角部のない)連続する湾曲面で構成されている。折り返し部15の内側(内周面)は、パイプ10の吸い込み口10Aとなっており、折り返し部15と内部パイプ14(の先端部)の間に形成される隙間は、前記環状流路41のパイプ10内部に連通(開口)する噴出口42となっている。これによると、ノズル部40の環状流路41からは、内部パイプ14の外側に向けて圧力風が送風され、内部パイプ14の外側に送られた圧力風は、折り返し部15と内部パイプ14の間を通って内部パイプ14の先端部周りで基端側に向けて折り返されて噴出口42から、内部パイプ14の内側(内周面)に沿って、基端側の排出口10Bに向けて噴出される。
【0039】
このように構成されるバキューム1は、パイプ10内に一端側の吸い込み口10Aから他端側の排出口10Bに至る吸引流を形成する。また、パイプ10内には縮径部が無いので、パイプ10は、大きな被吸引物を通すのに十分な大きさの内径を長手方向に沿って維持している。
【0040】
これにより、バキューム1は、吸い込み口10Aからパイプ10内に吸い込んだ被吸引物を効率よく排出口10Bに導くことができ、吸い込み口10Aから大きな被吸引物を吸い込んだ場合にも、詰まり等を生じることなく円滑に排出口10Bに導いて収集することができる。
【0041】
また、本実施形態のバキューム1は、前述したノズル部40に簡単な切り替え機構を付加することで、吸い込み作業(バキュームモードとも呼ぶ)と吹き出し作業(ブロワモードとも呼ぶ)の切り替えを可能にしている。
【0042】
切り替え機構としては、内部パイプ14が、環状流路41に対してスライド自在に配置されている。また、パイプ10における環状流路41の基端側であって、内部パイプ14の基端部周りに(円環状に)配置された折り返し部16を有している。折り返し部16は、内部パイプ14の基端部の外側から内側かつ先端側に向かって折り返されるように、パイプ10の中心軸P周りに円環状に形成されている。本実施形態において、折り返し部16は、基本的に、(角部のない)連続する湾曲面で構成されている。折り返し部16の内側(内周面)は、パイプ10の内壁に滑らかに連なるように形成されている。この内部パイプ14のスライドに応じて内部パイプ14の両端部が当該内部パイプ14の両端部に対面するように配置されている折り返し部15、16(ノズル部40(の環状流路41)の両端部に設けられた折り返し部15、16)に接離することによって、ノズル部40に送り込まれた圧力風を排出口10B側に噴出させるか吸い込み口10A側に噴出させるかを切り替えるようになっている。
【0043】
本実施形態では、ノズル部40(の環状流路41)の基端部に設けられた折り返し部16が、パイプ10の中心軸P周りに回転自在に配置されている。換言すると、折り返し部16は、パイプ10内にパイプ10の中心軸P周りに回転自在に収容されている。折り返し部16の先端部の内周部に螺旋溝が形成され、内部パイプ14の基端部の外周部に前記螺旋溝に嵌る突起が形成されている。この折り返し部16の螺旋溝と内部パイプ14の突起によって、折り返し部16の回転に応じて内部パイプ14を環状流路41に対してスライドさせるカム機構が構成されている。折り返し部16の外周には、当該折り返し部16をパイプ10に対して回転させるべく、パイプ10に形成された周方向に延びる開口部10Wから突出する操作突起16Tが形成されている(特に図2図3参照)。
【0044】
なお、内部パイプ14を環状流路41に対してスライドさせるスライド構成は、図示の例に限られない。
【0045】
内部パイプ14が基端側にスライドにすると、内部パイプ14の基端部が折り返し部16に密着(気密的に接触)し、環状流路41の基端側は閉塞され、内部パイプ14の先端部が折り返し部15から離間し、前述したように、折り返し部15と内部パイプ14(の先端部)の間に形成される隙間は、前記環状流路41のパイプ10内部に連通(開口)する噴出口42となる。この噴出口42から圧力風がパイプ10の内面に沿って噴出される(図6)。
【0046】
一方、内部パイプ14が先端側にスライドにすると、内部パイプ14の先端部が折り返し部15に密着(気密的に接触)し、環状流路41の先端側は閉塞され、内部パイプ14の基端部が折り返し部16から離間し、後述するように、折り返し部16と内部パイプ14(の基端部)の間に形成される隙間は、前記環状流路41のパイプ10内部に連通(開口)する噴出口43となる。この噴出口43から圧力風が先端側(吸い込み口10A側)に向けて噴出されることになる(図7)。
【0047】
図6は、既に説明した吸い込み作業を行う際の切り替え状態を示している。この状態では、内部パイプ14は、基端側にスライドして、内部パイプ14の基端部が環状流路41における基端側に設けられた折り返し部16に当接し、内部パイプ14の先端部が環状流路41における先端側に設けられた折り返し部15から離間している。これにより、環状流路41の基端側が閉塞されることになり、環状流路41から内部パイプ14の外側に送られ、環状流路41における先端側に設けられた折り返し部15と内部パイプ14の間を通って内部パイプ14の先端部周りで基端側に向けて折り返されて噴出口42からパイプ10内に入る圧力風は、内部パイプ14の内周に沿って排出口10Bに向けて噴出される。この状態では、環状流路41における先端側に設けられた折り返し部15、すなわち、パイプ10の先端が吸い込み口10Aになり、パイプ10内には、パイプ10の先端部から基端部へ向かう吸引流が形成される。
【0048】
これに対して、図7は、吹き出し作業を行う際の切り替え状態を示している。この状態では、内部パイプ14は、先端側にスライドして、内部パイプ14の先端部が環状流路41における先端側に設けられた折り返し部15に当接し、内部パイプ14の基端部が環状流路41における基端側に設けられた折り返し部16から離間している。これにより、環状流路41の先端側が閉塞されることになり、環状流路41から内部パイプ14の外側に送られ、環状流路41における基端側に設けられた折り返し部16と内部パイプ14の間を通って内部パイプ14の基端部周りで先端側に向けて折り返されて噴出口43からパイプ10内に入る圧力風は、内部パイプ14の内周に沿って先端側(吸い込み口10A側)に向けて噴出される。この状態では、環状流路41における先端側に設けられた折り返し部15、すなわち、パイプ10の先端側が吹き出し口になり、パイプ10内には、パイプ10の基端側から先端側に向けた吐出流が形成される。
【0049】
このように、本実施形態に係るバキューム1は、簡単な切り替え機構を付加することで、バキュームとブロワの兼用作業機になる。言い換えると、簡易な切り替え操作だけで、バキュームとブロワの切り替えが可能になる。本実施形態に係るバキューム1は、例えば、広範囲の落ち葉清掃などでは、ブロワに切り替えて、周囲に広がっている落ち葉をある程度地上で集めた状態にし、その後バキュームに切り替えて、集めた落ち葉などを吸い込むことができるので、単一の機材を用いて効率的な収集作業が可能になる。
【0050】
以上で説明したように、本実施形態に係るバキューム1は、吸い込み作業を行う手持ち式電動バキュームであって、先端側(一端側)に吸い込み口10Aを有し、基端側(他端側)に排出口10Bを有するパイプ10と、前記パイプ10の外側に設けられ、電動モータ21によって駆動される送風機20と、前記パイプ10の外側に(前記送風機20から前記吸い込み口10A寄りまで)設けられ、前記送風機20による圧力風を前記吸い込み口10A寄りの前記パイプ10の周囲から前記パイプ10内に送り込んで、前記排出口10Bに向けて噴出させる圧力流路25と、前記パイプ10の外側であって前記パイプ10の前記排出口10B寄りに設けられる手持ち用のハンドル30と、前記電動モータ21に給電するバッテリ50と、を備え、前記パイプ10は、前記先端側から前記基端側まで軸線(中心軸P)に沿って(軸線方向に)延びており、前記基端側に、前記軸線(中心軸P)に対して傾斜(前傾)する(他端開口が前記排出口10Bとされる)屈曲部10Tを有しており、前記送風機20は、前記屈曲部10Tの基端側(の設置面10V)に前記屈曲部10Tに沿って前傾して配置されており、前記ハンドル30は、前記送風機20の基端側に空間30Sを形成するように、前記送風機20の下側と上側の間に配置されており、前記ハンドル30において前記空間30Sを介した前記送風機20との対向部(縦辺部30C)の基端側に(前記対向部に沿って)前記バッテリ50が取り付けられており、前記ハンドル30の前記対向部および当該対向部に取り付けられた前記バッテリ50は、前記軸線(中心軸P)に対して前記送風機20(前記屈曲部10T)とは反対側に傾斜(後傾)しており、前記ハンドル30の前記空間30Sの上側(上辺部30B側)の距離が下側(下辺部30A側)の距離より大きくされている。
【0051】
前記ハンドル30は、前記送風機20の下側から基端側へ延びる下辺部30Aと、前記送風機20の上側から基端側へ延びる上辺部30Bと、前記下辺部30Aの基端部から前記上辺部30Bの基端部まで延びて前記送風機20との前記対向部を構成する縦辺部30Cと、を有し、前記下辺部30A、前記上辺部30B、および前記縦辺部30Cによって前記送風機20の基端側に前記空間30Sを形成している。
【0052】
前記ハンドル30の上部(前記上辺部30B)と前記圧力流路25は連続して形成されている。
【0053】
前記ハンドル30の上部(前記上辺部30B)と前記圧力流路25は前記軸線(中心軸P)に沿って一直線状に連続して形成されている。
【0054】
前記ハンドル30の上部(前記上辺部30Bの中央部)に上に凸となる湾曲部30Tが設けられ、前記ハンドル30の上部(前記上辺部30B)における前記湾曲部30Tの先端側と前記圧力流路25が前記軸線(中心軸P)に沿って一直線状に連続して形成されている。
【0055】
前記バッテリ50は、前記ハンドル30の前記対向部(前記縦辺部30C)に、前記軸線(中心軸P)に対して前記送風機20(前記屈曲部10T)とは反対側に傾斜した方向で上側から下側へスライドして取り付けられている。
【0056】
前記ハンドル30の下部(前記下辺部30A)に、前記送風機20の制御基板(駆動回路)51が収容されている。
【0057】
前記ハンドル30の上部(前記上辺部30B)に、前記送風機20の前記電動モータ21の回転速度を調整する操作部材(操作レバー33)が設けられている。
【0058】
前記圧力流路25と前記パイプ10を接続する接続壁26に、前記圧力流路25の一部(貫通穴27の上部)を手持ち用のサブハンドルとして使用可能とするための貫通穴27が設けられている。
【0059】
前記圧力流路25は、前記送風機20の上側から前記パイプ10の前記吸い込み口10A寄り(の上側)まで、前記基端側から前記先端側に行くに従って前記パイプ10に近づくように前記軸線(中心軸P)に対して傾斜(前傾)して延びており、前記圧力流路25の下側と前記パイプ10の上側を接続する前記接続壁26に前記貫通穴27が設けられている。
【0060】
本実施形態によれば、パイプ10の基端側に設けられた屈曲部10Tの基端側に当該屈曲部10Tに沿って前傾して送風機20が配置されている。また、ハンドル30においてバッテリ50を搭載した送風機20との対向部(縦辺部30C)が送風機20と反対側に傾斜(後傾)しており、送風機20の基端側に形成されているハンドル30の空間30Sの上側(把持部分側)の距離が下側の距離より大きくなっている。これにより、重量物である送風機20やケーシング23、バッテリ50などをハンドル30の近くに配置した場合でも、構造を複雑化したり大型化したりすること無く、ハンドル30の把持部分を確保できるため、構造の複雑化・大型化を抑えつつ、操作性や作業性を向上させることができる。
【0061】
また、送風機20による圧力風をノズル部40に送り込む圧力流路25とハンドル30の上部(上辺部30B)は連続して形成されている。これにより、全体構成を簡素化したり、部品点数を減らしたりすることができる。
【0062】
また、圧力流路25とパイプ10を接続する接続壁26に貫通穴27が形成され、圧力流路25の一部(貫通穴27の上部)を手持ち用のサブハンドルとして使用可能となっている。これにより、作業中に作業者への負荷を更に減らしたり、操作性を更に向上させたりすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1:バキューム(手持ち式電動バキューム)
10:パイプ
10A:吸い込み口
10B:排出口
10T:屈曲部
14:内部パイプ
15:折り返し部
16:折り返し部
20:送風機
21:電動モータ
22:ファン
23:ケーシング
24:吸い込み部
25:圧力流路
26:接続壁
27:貫通穴
30:ハンドル
30A:下辺部(ハンドルの下部)
30B:上辺部(ハンドルの上部)
30C:縦辺部(対向部)
30S:空間
30T:湾曲部
31:スイッチ
32:把持部
33:操作レバー(操作部材)
40:ノズル部
41:環状流路
42:噴出口(吸い込み状態)
43:噴出口(吹き出し状態)
50:バッテリ
51:制御基板(駆動回路)
P:中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7