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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106604
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6473 20110101AFI20240801BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01R13/6473
H01R13/648
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010961
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 周平
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC23
5E021LA01
5E021LA09
(57)【要約】
【課題】特性インピーダンスを適正化する。
【解決手段】シールドコネクタAは、L字形の第1内導体15及び第2内導体25と、第1内導体15及び第2内導体25のハーネス側接続部16,26を収容するハーネス側収容部12,22と、第1内導体15及び第2内導体25の基板側接続部17,27を収容する基板側収容部13,23とを有するL字形の第1誘電体11及び第2誘電体21を包囲する外導体30と、を備え、外導体30は、基板側収容部13,23の前面13F,23Fと対向する前側対向面45と、第1誘電体11及び第2誘電体21の後面11R,21Rと対向する後側対向面46とを有し、後側対向面46のうち少なくとも基板側収容部13,23と対向する領域には、基板側収容部13,23を前方へ押圧して前側対向面45に当接させる第1突部50と第2突部55が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びて相手側内導体に接続されるハーネス側接続部と、前記ハーネス側接続部の後端部から延出して回路基板に接続される基板側接続部とを有するL字形の内導体と、
前記ハーネス側接続部を収容するハーネス側収容部と、前記基板側接続部を収容する基板側収容部とを有するL字形の誘電体と、
前記誘電体を包囲する外導体と、を備え、
前記外導体は、前記基板側収容部の前面と対向する前側対向面と、前記誘電体の後面と対向する後側対向面とを有し、
前記後側対向面のうち少なくとも前記基板側収容部と対向する領域には、前記基板側収容部を前方へ押圧して前記前側対向面に当接させる突部が形成されているシールドコネクタ。
【請求項2】
前記突部が細長く延びたリブ状をなしている請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記突部が前記基板側収容部の長さ方向に沿った向きに配置されている請求項2に記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記外導体は、
前記前側対向面を有し、後面に開口する取付口から前記誘電体の全体を収容するメイン部材と、
前記後側対向面を有し、前記メイン部材に対して前記取付口を塞ぐように組み付けられるサブ部材とを備えて構成されており、
前記メイン部材に対する前記サブ部材の組付け方向が、前記基板側収容部の長さ方向と平行である請求項3に記載のシールドコネクタ。
【請求項5】
複数の前記突部が、前記基板側収容部の長さ方向と前記ハーネス側収容部の長さ方向の両方向と交差する幅方向において、間隔を空けて並ぶように配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【請求項6】
前記突部は、前記基板側収容部の後面に当接する第1突起と、前記ハーネス側収容部の後面に当接する第2突起とを含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【請求項7】
前記第1突起と前記第2突起が、前記基板側収容部の長さ方向と交差する幅方向において、互いに異なる位置に配置されている請求項6に記載のシールドコネクタ。
【請求項8】
前記突部が、前記基板側収容部の後面から前記ハーネス側収容部の後面に亘って連続して延びた形状である請求項3に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、L字形に屈曲した接続端子をハウジングに収容したコネクタが開示されている。この種のコネクタにシールド機能を持たせる場合、L字形の接続端子をL字形の誘電体に収容し、L字形の誘電体を外導体で包囲する構造が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-107139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
L字形の誘電体を包囲するためには、外導体を少なくとも2つの部材からなる分割構造とする必要がある。分割構造の一例としては、誘電体を挿入するための挿入口が後面に開口したL字形のメイン部材と、メイン部材に対して後面の開口を閉塞するように組み付けられるサブ部材とに分割する構造が考えられる。メイン部材には、誘電体の全体が収容される。かかる構造のシールドコネクタにおいて誘電体と外導体との間に空気層が存在する場合、その空気層の位置によっては、特性インピーダンスが不適正となる虞がある。
【0005】
本開示のシールドコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、特性インピーダンスを適正化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールドコネクタは、
前後方向に延びて相手側内導体に接続されるハーネス側接続部と、前記ハーネス側接続部の後端部から延出して回路基板に接続される基板側接続部とを有するL字形の内導体と、
前記ハーネス側接続部を収容するハーネス側収容部と、前記基板側接続部を収容する基板側収容部とを有するL字形の誘電体と、
前記誘電体を包囲する外導体と、を備え、
前記外導体は、前記基板側収容部の前面と対向する前側対向面と、前記誘電体の後面と対向する後側対向面とを有し、
前記後側対向面のうち少なくとも前記基板側収容部と対向する領域には、前記基板側収容部を前方へ押圧して前記前側対向面に当接させる突部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、特性インピーダンスを適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のシールドコネクタの斜視図である。
図2図2は、外導体のメイン部材を斜め下後方から見た斜視図である。
図3図3は、外導体のサブ部材を斜め下後方から見た斜視図である。
図4図4は、サブ部材を斜め上前方から見た斜視図である。
図5図5は、第1端子ユニットと第2端子ユニットを斜め下後方から見た斜視図である。
図6図6は、シールドコネクタの側断面図である。
図7図7は、メイン部材に端子ユニットを取り付けた状態をあらわす側断面図である。
図8図8は、サブ部材の側断面図である。
図9図9は、突部の形状と配置をあらわす背面図である。
図10図10は、突部を形成した場合と形成しない場合における特性インピーダンスをあらわすグラフである。
図11図11は、実施例2の突部の形状と配置をあらわす背面図である。
図12図12は、実施例3の突部の形状と配置をあらわす背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示のシールドコネクタは、
(1)前後方向に延びて相手側内導体に接続されるハーネス側接続部と、前記ハーネス側接続部の後端部から延出して回路基板に接続される基板側接続部とを有するL字形の内導体と、前記ハーネス側接続部を収容するハーネス側収容部と、前記基板側接続部を収容する基板側収容部とを有するL字形の誘電体と、前記誘電体を包囲する外導体と、を備え、前記外導体は、前記基板側収容部の前面と対向する前側対向面と、前記誘電体の後面と対向する後側対向面とを有し、前記後側対向面のうち少なくとも前記基板側収容部と対向する領域には、前記基板側収容部を前方へ押圧して前記前側対向面に当接させる突部が形成されている。本開示の構成によれば、相手側のコネクタと嵌合する際に、誘電体の基板側収容部と外導体の前側対向面との間に隙間が形成されることが抑制されるので、基板側収容部と前側対向面との間に空気層が存在することに起因する特性インピーダンスの悪化を抑制できる。
【0010】
(2)前記突部は、細長く延びたリブ状をなしていることが好ましい。 この構成によれば、突部が小さい体積で所定の長さを有しているので、突部に対する基板側収容部の傾きを防止しつつ、突部の存在に起因するインピーダンスの悪化を抑制できる。
【0011】
(3)(2)において、前記突部は、前記基板側収容部の長さ方向に沿った向きに配置されていることが好ましい。この構成によれば、基板側収容部の傾きを抑制する効果が高い。
【0012】
(4)(3)において、前記外導体は、前記前側対向面を有し、後面に開口する取付口から前記誘電体の全体を収容するメイン部材と、前記後側対向面を有し、前記メイン部材に対して前記取付口を塞ぐように組み付けられるサブ部材とを備えて構成されており、前記メイン部材に対する前記サブ部材の組付け方向が、前記基板側収容部の長さ方向と平行であることが好ましい。この構成によれば、サブ部材をメイン部材に組み付ける過程で、突部と基板側収容部との間に生じる摩擦抵抗を低減できる。
【0013】
(5)(1)~(4)において、複数の前記突部が、前記基板側収容部の長さ方向と前記ハーネス側収容部の長さ方向の両方向と交差する幅方向において、間隔を空けて並ぶように配置されていることが好ましい。この構成によれば、誘電体が基板側収容部を支点として幅方向に傾くことを防止できる。
【0014】
(6)(1)~(4)において、前記突部は、前記基板側収容部の後面に当接する第1突起と、前記ハーネス側収容部の後面に当接する第2突起とを含むことが好ましい。この構成によれば、基板側収容部の長さ方向に間隔を空けた2ヶ所において基板側収容部を前方へ押圧することができるので、基板側収容部を、前側対向面に対して傾かせることなく当接させることができる。
【0015】
(7)(6)において、前記第1突起と前記第2突起は、前記基板側収容部の長さ方向と交差する幅方向において、互いに異なる位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1突起と第2突起の成形を、基板側収容部の長さ方向と平行に型開きされる金型だけで行うことができるので、金型構造を簡素化することができる。
【0016】
(8)(3)において、前記突部は、前記基板側収容部の後面から前記ハーネス側収容部の後面に亘って連続して延びた形状であることが好ましい。この構成によれば、広い範囲に亘って誘電体を前方へ押圧することができるので、外導体の内部における誘電体の傾きを防止することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のシールドコネクタAを、図1図10を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、図1~8におけるF方向を前方と定義する。左右の方向については、図1~5,9におけるR方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、図1~9におけるH方向を上方と定義する。
【0018】
本実施例1のシールドコネクタAは、回路基板60(図6参照)の実装面61に載置した状態で取り付けられ、ワイヤーハーネス(図示省略)の端末部に取り付けた相手側コネクタ62と嵌合する。シールドコネクタAは、左右に並ぶ一対の第1端子ユニット10と、左右に並ぶ一対の第2端子ユニット20と、1つの外導体30とを組み付けて構成されている。
【0019】
図5に示すように、第1端子ユニット10は、1つのL字形をなす第1誘電体11と、1つのL字形をなす第1内導体15とを組み付けて構成されている。第1誘電体11は、前後方向に延びるハーネス側収容部12と、ハーネス側収容部12の後端部外周面から下方へ延出した基板側収容部13とを有する単一部品である。第1誘電体11の後面11Rは、ハーネス側収容部12の後面12Rと基板側収容部13の後面13Rとによって構成されている。ハーネス側収容部12の後面12Rと基板側収容部13の後面13Rは、前後方向に対して直交する平面からなり、互いに面一状に連続している。ハーネス側収容部12の後面12Rは、円形をなす。基板側収容部13の後面13Rは、ハーネス側収容部12の後面12Rの直径よりも幅寸法の小さい長方形をなす。第1誘電体11の後面11Rには、基板側収容部13の長さ方向(上下方向)と平行なスリット状の圧入用開口部14が形成されている。
【0020】
図5,6,7に示すように、第1内導体15は、前後方向に延びて相手側内導体63に接続されるハーネス側接続部16と、ハーネス側接続部16の後端から下方へ延出して回路基板60に接続される基板側接続部17とを有する単一部品である。第1内導体15は、圧入用開口部14から第1誘電体11内に圧入されることによって、第1誘電体11に組み付けられている。ハーネス側収容部12には、ハーネス側接続部16が収容されている。基板側収容部13には、基板側接続部17が収容されている。
【0021】
第2端子ユニット20は、第1端子ユニット10と同様、1つのL字形をなす第2誘電体21と、1つのL字形をなす第2内導体25とを組み付けて構成されている。第2誘電体21の基本的な形状は、第1誘電体11と同じである。第2誘電体21のハーネス側収容部22の長さは、第1誘電体11のハーネス側収容部12よりも短い。第2誘電体21の基板側収容部23の長さは、第1誘電体11の基板側収容部13よりも短い。第2誘電体21の後面21Rは、ハーネス側収容部22の後面22Rと基板側収容部23の後面23Rとによって構成されている。第2誘電体21の後面21Rには、基板側収容部23の長さ方向(上下方向)と平行なスリット状の圧入用開口部24が形成されている。
【0022】
第2内導体25の基本的な形状は、第1内導体15と同じである。第2内導体25のハーネス側接続部26の長さは、第1内導体15のハーネス側接続部16よりも短い。第2内導体25の基板側接続部27の長さは、第1内導体15の基板側接続部27よりも短い。第2内導体25は、圧入用開口部24から第2誘電体21内に圧入されることによって、第2誘電体21に組み付けられている。ハーネス側収容部22には、ハーネス側接続部26が収容されている。基板側収容部23には、基板側接続部27が収容されている。
【0023】
図6,9に示すように、外導体30は、L字形をなす2つの第1シールド機能部31とL字形をなす2つの第2シールド機能部32を一体化させた部材である。2つの第1シールド機能部31は一対の第1端子ユニット10を個別に包囲し、2つの第2シールド機能部32は一対の第2端子ユニット20を個別に包囲している。一対の第2端子ユニット20は、一対の第1端子ユニット10の斜め下前方に配置されている。即ち、第2端子ユニット20のハーネス側収容部22は、第1端子ユニット10のハーネス側収容部12の下方(回路基板60に近い位置)に配置されている。第2端子ユニット20の基板側収容部23は、第1端子ユニット10の基板側収容部13の前方に配置されている。
【0024】
外導体30は、1つのメイン部材33と1つのサブ部材40とを組み付けて構成されている。図1,2,6に示すように、メイン部材33は、軸線を前後方向に向けた円筒形をなす4つの筒形包囲部34と、後面及び下面が開放された1つの角形包囲部35とを有する。4つの筒形包囲部34は、上下及び左右に並ぶように配置されている。角形包囲部35の内部空間は、4つの筒形包囲部34の内部空間の後端に連通している。角形包囲部35の下面には、回路基板60のアース回路(図示省略)に接続される突起状のアース用接続部36が形成されている。
【0025】
メイン部材33には、一対の第1端子ユニット10の全体と一対の第2端子ユニット20の全体とが収容されている。第1端子ユニット10と第2端子ユニット20は、角形包囲部35の後面に開口する取付口37からメイン部材33内に取り付けられている。各筒形包囲部34には、夫々、1つのハーネス側収容部12,22のうち後端部を除いた領域が収容されている。角形包囲部35には、4つの基板側収容部13,23と、4つのハーネス側収容部12,22の後端部とが収容されている。
【0026】
筒形包囲部34の前端部には、シールドコネクタAの前方から相手側コネクタ62が嵌入される。相手側コネクタ62は、相手側内導体63と相手側誘電体64とを組み付けたものである。シールドコネクタAと相手側コネクタ62が嵌合した状態では、筒形包囲部34内において、相手側内導体63が第1内導体15及び第2内導体25と接続し、相手側誘電体64が第1誘電体11及び第2誘電体21と対向する。第1誘電体11と第2誘電体21の前端面は、相手側誘電体64の前端面に当接した状態となる。
【0027】
サブ部材40は、図3,4,6,8に示すように、底壁部41と、後壁部42と、隔壁部43とを有する単一部品である。底壁部41には、前後方向及び左右方向に並ぶ4つの連通孔44が形成されている。後壁部42は、底壁部41の後端縁部から上方へ立ち上がっている。隔壁部43は、底壁部41における前側の連通孔44と後側の連通孔44との間の位置から上方へ立ち上がっている。隔壁部43の底壁部41からの高さは、後壁部42よりも低い。
【0028】
メイン部材33に対するサブ部材40の組付けは、メイン部材33に第1端子ユニット10と第2端子ユニット20を収容した後に行う。サブ部材40は、メイン部材33に対して下方から圧入することによって組み付けられる。サブ部材40をメイン部材33に組み付けることによって、外導体30の組付けが完了すると同時に、シールドコネクタAの組付けが完了する。
【0029】
シールドコネクタAが組み付けられた状態では、角形包囲部35の下面の開口が底壁部41によって覆われる。基板側収容部13の下端部は、連通孔44内に配置される。基板側接続部17の下端部は、底壁部41の下面よりも下方へ突出し、回路基板60に接続される。角形包囲部35の後面の取付口37は、後壁部42によって閉塞される。隔壁部43は、第1誘電体11の基板側収容部13と第2誘電体21の基板側収容部23との間に配置される。
【0030】
上側に位置する筒形包囲部34と、角形包囲部35と、後壁部42と、隔壁部43は、第1端子ユニット10用の第1シールド機能部31を構成する。第1シールド機能部31のうち隔壁部43の後面は、基板側収容部13の前面13Fと対向する前側対向面45として機能する。第1シールド機能部31のうち後壁部42の前面は、第1誘電体11の後面11R(ハーネス側収容部12の後面12R及び基板側収容部13の後面13R)と対向する後側対向面46として機能する。
【0031】
第1シールド機能部31の後側対向面46には、第1端子ユニット10の基板側収容部13の前面13Fを外導体30の前側対向面45に押し当てるための第1突部50が、一体に形成されている。第1突部50は、幅方向に間隔を空けた一対のメイン突起51と、幅方向に間隔を空けた一対のサブ突起52とを含む。メイン突起51とサブ突起52は、上下方向、即ちメイン部材33に対するサブ部材40の組付け方向と平行な方向に細長くリブ状に延びた形状である。
【0032】
メイン突起51は、後側対向面46のうち上下方向において前側対向面45の形成領域と同じ領域内のみに配置されている。換言すると、メイン突起51は、後側対向面46のうち基板側収容部13の後面13Rと対向する領域内のみに配置されている。サブ突起52は、後側対向面46のうち前側対向面45よりも上方の領域内のみに配置されている。換言すると、サブ突起52は、ハーネス側収容部12の後面12Rと対向する領域のみに配置されている。図9に示すように、一対のメイン突起51の幅方向の間隔は、一対のサブ突起52の幅方向の間隔よりも広く設定されている。
【0033】
図2,4,6に示すように、下側に位置する筒形包囲部34と、角形包囲部35と、隔壁部43と、底壁部41の一部は、第2端子ユニット20用の第2シールド機能部32を構成する。第2シールド機能部32のうち連通孔44の前面と筒形包囲部34の後面は、基板側収容部23の前面23Fと対向する前側対向面45として機能する。第2シールド機能部32のうち隔壁部43の前面は、第2誘電体21の後面21R(ハーネス側収容部22の後面22R及び基板側収容部23の後面23R)と対向する後側対向面46として機能する。
【0034】
図6,8に示すように、第2シールド機能部32の後側対向面46には、第2端子ユニット20の基板側収容部23の前面23Fを外導体30の前側対向面45に押し当てるための第2突部55が、一体に形成されている。第2突部55は、幅方向に間隔を空けた一対のメイン突起56と、幅方向に間隔を空けた一対のサブ突起57とを含む。メイン突起56とサブ突起57は、上下方向、即ちメイン部材33に対するサブ部材40の組付け方向と平行な方向に細長くリブ状に延びた形状である。
【0035】
メイン突起56は、後側対向面46のうち上下方向において前側対向面45の形成領域と同じ領域内のみに配置されている。換言すると、メイン突起56は、後側対向面46のうち基板側収容部23の後面23Rと対向する領域内のみに配置されている。サブ突起57は、後側対向面46のうち前側対向面45よりも上方の領域内のみに配置されている。換言すると、サブ突起57は、ハーネス側収容部22の後面22Rと対向する領域のみに配置されている。一対のメイン突起56の幅方向の間隔は、一対のサブ突起57の幅方向の間隔よりも広く設定されている。
【0036】
本実施例1のシールドコネクタAを回路基板60に実装した状態では、外導体30のアース用接続部36が回路基板60のアース回路(図示省略)に接続される。第1シールド機能部31の前端からアース用接続部36に至る導電路における最短通電経路は、上側の筒形包囲部34のうち回路基板60と対向する壁部と、隔壁部43とを通る経路である。最短通電経路である隔壁部43の前側対向面45と、第1端子ユニット10の基板側収容部13の前面13Fとの間に空気層が形成されることを防止する手段として、外導体30に第1突部50が設けられている。
【0037】
第1突部50のメイン突起51が基板側収容部13の後面13Rを前方へ押圧することによって、基板側収容部13の前面13Fが前側対向面45に接触する。また、サブ突起52がハーネス側収容部12の後面12Rを前方へ押圧することによっても、基板側収容部13の前面13Fが前側対向面45に接触する。最短通電経路である隔壁部43の前側対向面45と、第1端子ユニット10の基板側収容部13の前面13Fとの間には、空気層が形成されることが抑制されているので、第1内導体15を含む伝送路の特性インピーダンスが適正な範囲内に収まる。
【0038】
また、第2シールド機能部32の前端からアース用接続部36に至る導電路における最短通電経路は、下側の筒形包囲部34のうち回路基板60と対向する壁部と、底壁部41のうち前側の連通孔44における前側の内壁部とを通る経路である。最短通電経路である底壁部41の前側対向面45及び筒形包囲部34の後面と、第2端子ユニット20の基板側収容部23の前面23Fとの間に空気層が形成されることを防止する手段として、外導体30に第2突部55が設けられている。
【0039】
第2突部55のメイン突起56が基板側収容部23の後面23Rを前方へ押圧することによって、基板側収容部23の前面23Fが、前側対向面45と筒形包囲部34の後面とに接触する。また、サブ突起57がハーネス側収容部22の後面22Rを前方へ押圧することによっても、基板側収容部23の前面23Fが前側対向面45と筒形包囲部34の後面とに接触する。最短通電経路である隔壁部43の前側対向面45及び筒形包囲部34の後面と、第2端子ユニット20の基板側収容部23の前面23Fとの間には、空気層が形成されることが抑制されているので、第2内導体25を含む伝送路の特性インピーダンスが適正な範囲内に収まる。
【0040】
図10は、適正な特性インピーダンスXに対して、外導体30の前側対向面45と基板側収容部13,23との間に空気層が存在する場合の特性インピーダンスZと、外導体30の前側対向面45と基板側収容部13,23との間に空気層が存在しない場合の特性インピーダンスYとの違いをあらわしたグラフである。外導体30の前側対向面45と基板側収容部13,23との間に空気層が存在する場合の特性インピーダンスZが、適正な特性インピーダンスXよりも悪化(増大)している。これに対し、第1突部50と第2突部55を設けたことによって、外導体30の前側対向面45と基板側収容部13,23との間に空気層が存在しない場合の特性インピーダンスYは、適正な特性インピーダンスXに対して殆ど増大しておらず、適正な範囲内に収まっている。
【0041】
本実施例1のシールドコネクタAは、L字形の第1内導体15及び第2内導体25と、L字形の第1誘電体11及び第2誘電体21と、外導体30とを備えている。第1内導体15と第2内導体25は、前後方向に延びて相手側内導体63に接続されるハーネス側接続部16,26と、ハーネス側接続部16の後端部から延出して回路基板60に接続される基板側接続部17,27とを有する。第1誘電体11と第2誘電体21は、ハーネス側接続部16,26を収容するハーネス側収容部12と、基板側接続部17,27を収容する基板側収容部13,23とを有する。外導体30は、第1誘電体11と第2誘電体21を包囲する。
【0042】
外導体30は、基板側収容部13,23の前面13F,23Fと対向する前側対向面45と、誘電体11,21の後面11R,21Rと対向する後側対向面46とを有している。後側対向面46のうち少なくとも基板側収容部13,23と対向する領域には、基板側収容部13,23を前方へ押圧して前側対向面45に当接させる第1突部50と第2突部55が形成されている。この構成によれば、相手側コネクタ62と嵌合する際に、第1誘電体11及び第2誘電体21の基板側収容部13,23と、外導体30の前側対向面45との間に隙間が形成されることが抑制される。したがって、基板側収容部13,23と前側対向面45との間に空気層が存在することに起因する特性インピーダンスの悪化を抑制できる。
【0043】
第1突部50と第2突部55は、細長く延びたリブ状をなしており、小さい体積で所定の長さを有している。この構成によれば、第1突部50及び第2突部55に対する基板側収容部13の傾きを防止しつつ、第1突部50と第2突部55の存在に起因するインピーダンスの悪化を抑制できる。第1突部50と第2突部55は、基板側収容部13,23の長さ方向に沿った向きに配置されているので、基板側収容部13,23の傾きを抑制する効果を発揮する。
【0044】
外導体30は、メイン部材33とサブ部材40とを備えている。メイン部材33は、前側対向面45と、後面に開口する取付口37とを有している。第1誘電体11の全体と第2誘電体21の全体が、取付口37からメイン部材33内に収容されている。サブ部材40は、後側対向面46を有しており、メイン部材33に対して取付口37を塞ぐように組み付けられる。メイン部材33に対するサブ部材40の組付け方向は、基板側収容部13,23の長さ方向(第1突部50及び第2突部55の長さ方向)と平行である。この構成によれば、サブ部材40をメイン部材33に組み付ける過程で、第1突部50及び第2突部55と、基板側収容部13,23との間に生じる摩擦抵抗を低減できる。
【0045】
第1突部50は、基板側収容部13の後面13Rに当接するメイン突起51と、ハーネス側収容部12の後面12Rに当接するサブ突起52とを含んでいる。第2突部55も、基板側収容部23の後面23Rに当接するメイン突起56と、ハーネス側収容部22の後面22Rに当接するサブ突起57とを含んでいる。この構成によれば、基板側収容部13,23の長さ方向に間隔を空けた2ヶ所において基板側収容部13,23を前方へ押圧することができるので、基板側収容部13,23を、前側対向面45に対して傾かせることなく当接させることができる。
【0046】
一対のメイン突起51と一対のメイン突起56は、基板側収容部13,23の長さ方向とハーネス側収容部12,22の長さ方向の両方向と交差する幅方向において、間隔を空けて並ぶように配置されている。一対のサブ突起52と一対のサブ突起57も、幅方向に間隔を空けて配置されている。この構成によれば、第1誘電体11及び第2誘電体21が基板側収容部13,23を支点として幅方向に傾くことを防止できる。
【0047】
第1突部50を構成するメイン突起51とサブ突起52は、前記基板側収容部13の長さ方向と交差する幅方向において、互いに異なる位置に配置されている。第2突部55を構成するメイン突起56とサブ突起57も、幅方向において互いに異なる位置に配置されている。この構成によれば、メイン突起51,56とサブ突起52,57の成形を、基板側収容部13,23の長さ方向と平行に型開きされる金型だけで行うことができるので、金型構造を簡素化することができる。
【0048】
[実施例2]
本開示を具体化した実施例2のシールドコネクタBを、図11を参照して説明する。本実施例2のシールドコネクタBは、基板側収容部13,23の前面13F,23Fを外導体30の前側対向面45(図11では図示省略)に押し当てるための手段を、上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0049】
本実施例2では、第1端子ユニット10の基板側収容部13の前面13F(図11では図示省略)を外導体30の前側対向面45に押し当てるための手段として、幅方向に間隔を空けて配置した一対の突部58を設けている。各突部58は、上下方向、即ちメイン部材33に対するサブ部材40の組付け方向と平行な方向に細長くリブ状に延びた形状である。上下方向における突部58の形成範囲は、第1端子ユニット10における基板側収容部13の後面13Rと対向する位置のみである。ハーネス側収容部12の後面12Rと対向する位置に、突部58は配置されていない。
【0050】
第2端子ユニット20の基板側収容部23の前面23F(図11では図示省略)を外導体30の前側対向面45に押し当てるための手段として、幅方向に間隔を空けて配置した一対の突部(図示省略)を設けている。第2端子ユニット20用の各突部も、第1端子ユニット10用の突部58と同様、上下方向に細長くリブ状に延びた形状である。上下方向における突部の形成範囲は、第2端子ユニット20における基板側収容部23の後面23Rと対向する位置のみである。ハーネス側収容部22の後面22Rと対向する位置に、突部は配置されていない。
【0051】
[実施例3]
本開示を具体化した実施例3のシールドコネクタCを、図12を参照して説明する。本実施例3のシールドコネクタCは、基板側収容部13,23の前面13F,23F(図12では図示省略)を外導体30の前側対向面45(図12では図示省略)に押し当てるための手段を、上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0052】
本実施例3では、第1端子ユニット10の基板側収容部13の前面13F,23Fを外導体30の前側対向面45に押し当てるための手段として、幅方向に間隔を空けて配置した一対の突部59を設けている。各突部59は、上下方向、即ちメイン部材33に対するサブ部材40の組付け方向と平行な方向に細長く、且つ連続してリブ状に延びた形状である。上下方向における突部59の形成範囲は、第1端子ユニット10における基板側収容部13の後面13Rと対向する位置から、ハーネス側収容部12の後面12Rと対向する位置に亘る範囲である。
【0053】
第2端子ユニット20の基板側収容部23(図12では図示省略)の前面23Fを外導体30の前側対向面45に押し当てるための手段として、幅方向に間隔を空けて配置した一対の突部(図示省略)を設けている。第2端子ユニット20用の各突部も、第1端子ユニット10用の突部59と同様、上下方向に細長く、且つ連続してリブ状に延びた形状である。上下方向における突部の形成範囲は、第2端子ユニット20における基板側収容部23の後面23Rと対向する位置から、ハーネス側収容部12の後面12Rと対向する位置に亘る範囲である。
【0054】
このように、突部59は、基板側収容部13,23の後面13R,23Rからハーネス側収容部12,22の後面12R,22Rに亘って連続して延びた形状であるから、上下方向における広い範囲に亘って、第1誘電体11と第2誘電体21を前方へ押圧することができる。これにより、外導体30の内部における第1誘電体11と第2誘電体21の傾きを防止することができる。
【0055】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
実施例1、2において、突部の形状は、直線的に延びたI字形に限らず、円形、方形等でもよい。
実施例1、2において、突部は、基板側収容部の長さ方向に対して交差する向きや、基板側収容部の長さ方向に対して斜めの向きに配置してもよい。
実施例1、2において、メイン部品に対するサブ部品の組付け方向は、基板側収容部の長さ方向と交差する方向(前後方向又は左右方向)でもよい。
実施例1、2において、3つ以上の突部を幅方向に並べて配置してもよい。
実施例1において、1つの誘電体に当接する突部の数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。
実施例1において、第1突起を幅方向に並ばない形態で配置してもよい。
実施例1において、第2突起を幅方向に並ばない形態で配置してもよい。
実施例1において、第1突起と第2突起は、幅方向において同じ位置に配置されていてもよい。
実施例1において、第2突起を設けず、第1突起のみを設ける構成としてもよい。
【0056】
実施例2において、1つの誘電体に当接する突部の数は、1つだけでもよく、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0057】
A…シールドコネクタ
B…シールドコネクタ
C…シールドコネクタ
X…特性インピーダンス
Y…特性インピーダンス
Z…特性インピーダンス
10…第1端子ユニット
11…第1誘電体(誘電体)
11R…第1誘電体の後面
12…ハーネス側収容部
12R…ハーネス側収容部の後面
13…基板側収容部
13F…基板側収容部の前面
13R…基板側収容部の後面
14…圧入用開口部
15…第1内導体(内導体)
16…ハーネス側接続部
17…基板側接続部
20…第2端子ユニット
21…第2誘電体(誘電体)
21R…第2誘電体の後面
22…ハーネス側収容部
22R…ハーネス側収容部の後面
23…基板側収容部
23F…基板側収容部の前面
23R…基板側収容部の後面
24…圧入用開口部
25…第2内導体(内導体)
26…ハーネス側接続部
27…基板側接続部
30…外導体
31…第1シールド機能部
32…第2シールド機能部
33…メイン部材
34…筒形包囲部
35…角形包囲部
36…アース用接続部
37…取付口
40…サブ部材
41…底壁部
42…後壁部
43…隔壁部
44…連通孔
45…前側対向面
46…後側対向面
50…第1突部(突部)
51…メイン突起
52…サブ突起
55…第2突部(突部)
56…メイン突起
57…サブ突起
58…突部
59…突部
60…回路基板
61…実装面
62…相手側コネクタ
63…相手側内導体
64…相手側誘電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12