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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106605
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】上半身衣類
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/06 20060101AFI20240801BHJP
   A41C 3/00 20060101ALI20240801BHJP
   A41C 3/08 20060101ALI20240801BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20240801BHJP
【FI】
A41B9/06 D
A41C3/00 Z
A41C3/08
A41D1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010962
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】399094486
【氏名又は名称】株式会社エレーヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 愛
(72)【発明者】
【氏名】佐上 昌代
【テーマコード(参考)】
3B030
3B128
3B131
【Fターム(参考)】
3B030AA02
3B030AB01
3B128FB03
3B128FB04
3B128FB06
3B128FC00
3B128FC04
3B131AA14
3B131AA22
3B131AB01
3B131BA05
3B131BA13
3B131BA21
3B131BA22
3B131BB27
3B131BB28
3B131CA01
3B131CA04
3B131CA08
3B131CA14
3B131DA01
(57)【要約】
【課題】外見上の乳房のふくらみを抑えつつ、締め付けを低減し、快適に着用できる上半身衣類を提供すること。
【解決手段】前身頃部と、前記前身頃部の脇側両端部のそれぞれに接続する後身頃部と、前記前身頃部および前記後身頃部の下端に、前記前身頃部および前記後身頃部の全幅にわたって設けられた環状のアンダー部と、を備える上半身衣類である。前記前身頃部は、胸部に配置された非伸縮性の胸部部材を備える。前記胸部部材の下端は、前記胸部部材の全幅にわたって前記アンダー部に接続する。前記後身頃部は、前記アンダー部、ならびに、前記前身頃部の脇側端部および肩側端部に接続する背面本体と、少なくとも一部が前記背面本体に重なる位置に配置され、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する背面サポート部材と、を備える。前記背面サポート部材の身巾方向の端部は、前記後身頃部と前記前身頃部の接続部、および/または、前記胸部部材の脇側端部に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃部と、
前記前身頃部の脇側両端部のそれぞれに接続する後身頃部と、
前記前身頃部および前記後身頃部の下端に、前記前身頃部および前記後身頃部の全幅にわたって設けられた環状のアンダー部と、
を備え、
前記前身頃部は、胸部に配置された非伸縮性の胸部部材を備え、
前記胸部部材の下端は、前記胸部部材の全幅にわたって前記アンダー部に接続し、
前記後身頃部は、
前記アンダー部、ならびに、前記前身頃部の脇側端部および肩側端部に接続する背面本体と、
前記背面本体に重なる位置に配置され、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する背面サポート部材と、を備え、
前記背面サポート部材の身巾方向の端部は、前記後身頃部と前記前身頃部の接続部、および/または、前記胸部部材の脇側端部に接続されている、
上半身衣類。
【請求項2】
前記背面本体は伸縮性を有する部材で構成され、
前記背面サポート部材は、前記背面本体の着用者の肌側とは反対側である衣服側に配置され、
前記背面サポート部材の上縁部は前記背面本体に接合されている、
請求項1に記載の上半身衣類。
【請求項3】
前記背面サポート部材の下端縁は、身巾方向の中央部において前記アンダー部に接続する領域を有し、身巾方向の両端部において前記アンダー部から離れた領域を有する、
請求項1または請求項2に記載の上半身衣類。
【請求項4】
さらに、前記前身頃部の肩部からバストトップより下方の位置までを覆う胸部サポート部材を備え、
前記胸部サポート部材は、身巾方向よりも身丈方向に高い伸縮性を有する部材で構成され、
前記胸部サポート部材は、前記前身頃部の襟ぐりおよび脇ぐりにおいて前身頃部本体と固定され、
前記胸部サポート部材の下端は、前記前身頃部本体から遊離している、
請求項1または請求項2に記載の上半身衣類。
【請求項5】
前記胸部部材は、非伸縮性の素材を含む積層生地で構成される複数の構成片が身巾方向に並んで接続されてなり、
隣り合う前記構成片が接合する部分である接合部は、互いに重なることなく配置されている、
請求項1または請求項2に記載の上半身衣類。
【請求項6】
ハーフトップまたはタンクトップである、
請求項1または請求項2に記載の上半身衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上半身衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
男性的な身体の志向者に対応するため、またその他の目的で、乳房のふくらみを押さえ、胸部を平らに見せる上半身衣類が知られている。例えば特許文献1には、前身頃の胸部にクッション部、前身頃の胸部よりも下方にパッドを備える体形補正用衣類が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ランニングシャツの形態である下着本体の胸部に、胸部から背部を周回する環状の構成片を設けることが開示されている。構成片は、胸部構成片および背面部構成片から構成される。胸部構成片および背面部構成片はいずれも帯状で、端部同士が縫着されている。
【0004】
特許文献3には、サポート部材と、サポート部材の肌側に重ねられた乳房押さえ部とを備えるブラジャーが開示されている。乳房押さえ部は乳房を押しつぶすための構成である。乳房押さえ部は、左右の乳房それぞれを覆う一対の覆い部と、一対の覆い部の間に位置するとともに上方に向かうに従って左右の幅が広くなる逆三角形状の間部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6652768号公報
【特許文献2】特許第4381215号公報
【特許文献3】特許第6570889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外見上の乳房のふくらみを抑えつつ、締め付けを低減し、快適に着用できる上半身衣類を提供することを本発明の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは前記課題について検討を進め、次の構成を備える上半身衣類によれば、外見上の乳房のふくらみを抑えつつ、締め付けを低減し、快適に着用できる上半身衣類を提供できることを見出した。本発明は、次の構成を有する。
【0008】
本開示にかかる上半身衣類は、前身頃部と、前記前身頃部の脇側両端部のそれぞれに接続する後身頃部と、前記前身頃部および前記後身頃部の下端に、前記前身頃部および前記後身頃部の全幅にわたって設けられた環状のアンダー部と、を備える。前記前身頃部は、胸部に配置された非伸縮性の胸部部材を備える。前記胸部部材の下端は、前記胸部部材の全幅にわたって前記アンダー部に接続する。前記後身頃部は、前記アンダー部、ならびに、前記前身頃部の脇側端部および肩側端部に接続する背面本体と、前記背面本体に重なる位置に配置され、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する背面サポート部材と、を備える。前記背面サポート部材の身巾方向の端部は、前記後身頃部と前記前身頃部の接続部、および/または、前記胸部部材の脇側端部に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかる上半身衣類によれば、外見上の乳房のふくらみを抑えつつ、締め付けを低減し、快適に着用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示にかかるハーフトップの前身頃部の衣服側を示す模式図である。
図2】本開示にかかるハーフトップの前身頃部の肌側を示す模式図である。
図3】本開示にかかるハーフトップの前本体を構成する構成片を示す模式図である。
図4】本開示にかかるハーフトップの胸部部材を構成する構成片を示す模式図である。
図5】本開示にかかるハーフトップの後身頃部の衣服側を示す模式図である。
図6】本開示にかかるハーフトップの後身頃部の肌側を示す模式図である。
図7図1のA-Aで切断した状態を一部省略し、模式的に示す断面模式図である。
図8】本開示にかかるハーフトップの着用状態の一例を示す模式図である。
図9】本開示にかかるタンクトップの前身頃部の衣服側を示す模式図である。
図10】本開示にかかるタンクトップから外装部を取り除き、展開した状態(衣服側)を示す模式図である。
図11図10のXI-XIで切断した状態を模式的に示す断面模式図である。
図12】本開示にかかるタンクトップから外装部を取り除き、展開した状態(肌側)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の概要]
まず、実施形態の概要を列挙して説明する。
本開示にかかる上半身衣類は、前身頃部と、前記前身頃部の脇側両端部のそれぞれに接続する後身頃部と、前記前身頃部および前記後身頃部の下端に、前記前身頃部および前記後身頃部の全幅にわたって設けられた環状のアンダー部と、を備える。前記前身頃部は、胸部に配置された非伸縮性の胸部部材を備える。前記胸部部材の下端は、前記胸部部材の全幅にわたって前記アンダー部に接続する。前記後身頃部は、前記アンダー部、ならびに、前記前身頃部の脇側端部および肩側端部に接続する背面本体と、前記背面本体に重なる位置に配置され、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する背面サポート部材と、を備える。前記背面サポート部材の身巾方向の端部は、前記後身頃部と前記前身頃部の接続部、および/または、前記胸部部材の脇側端部に接続されている。
【0012】
以下の説明において「上」「下」とは、上半身衣類の着用状態(立位)において、相対的に頭に近い側を「上」、足に近い側を「下」と称する。また、以下の説明において、「肌側」「衣服側」とは、上半身衣類の着用状態(立位)において、上半身衣類における着用者の身体に近い側を「肌側」、着用者の身体から離れる側を「衣服側」と称する。
【0013】
従来、乳房のふくらみを押さえ、胸部を平らに見せることを目的とする上半身衣類が知られている。しかしながら、この種の上半身衣類は乳房を胸郭に押し付けるように押しつぶし、押さえる構成であるものが多く、締め付け感が強いために長時間着用しづらい、夏に着用するには暑すぎる等の実情があった。すなわち、この種の上半身衣類は、着用時の快適性において改善の余地があった。
【0014】
発明者らは、外見上の乳房のふくらみを抑えつつ、締め付けを低減し、快適に着用できる上半身衣類について検討を行った。そして、乳房を押さえつけるだけではなく、乳房を脇ないし背中側に流すようにするとの着想の下、検討を進めた。そして、上半身衣類において、前身頃部および後身頃部の下端に前身頃部および後身頃部の全幅にわたって設けられた環状のアンダー部を備えるとともに、前身頃部の胸部に胸部部材を備え、胸部部材の下端はその全幅にわたってアンダー部に接続する構成とした。さらに、後身頃部は、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する背面サポート部材を備え、背面サポート部材の身巾方向の端部は、前記後身頃部と前記前身頃部の接続部、および/または、前記胸部部材の脇側端部に接続されている構成とした。
【0015】
これらの構成によれば、胸部部材によって乳房を押さえるとともに、背面サポート部材によって乳房を自然に脇や背中側に流すことができる。このため、過度の締め付けをすることなく、乳房のふくらみを自然に逃がし、外見上、乳房のふくらみが抑制される。また、厚く、緊縛力の強い素材を用いることなく上半身衣類を構成できる。これらから、暑さや苦しさを低減し、快適に着用できる上半身衣類を提供できる。
【0016】
本開示にかかる上半身衣類において、前記背面本体は伸縮性を有する部材で構成されてよい。前記背面サポート部材は、前記背面本体の着用者の肌側とは反対側である衣服側に配置されてよい。前記背面サポート部材の上縁部は前記背面本体に接合されてよい。背面本体が伸縮性を有する部材で構成され、背面サポート部材の上縁が背面本体に接合されている場合、乳房を脇や背中側に逃がす効果をより確実にできる。
【0017】
本開示にかかる上半身衣類において、前記背面サポート部材の下端縁は、身巾方向の中央部において前記アンダー部に接続する領域を有し、身巾方向の両端部において前記アンダー部から離れた領域を有するものとできる。背面サポート部材の下端縁の一部、とりわけ両端部にアンダー部から離れた領域を設けることによって、着脱の際に伸びやすくなり、着脱が容易になるとともに、着用時の快適性も向上する。
【0018】
本開示にかかる上半身衣類は、さらに、前記前身頃部の肩部から、バストトップよりも下方の位置までを覆う胸部サポート部材を備えてよい。前記胸部サポート部材は、身巾方向よりも身丈方向に高い伸縮性を有する部材で構成されてよい。前記胸部サポート部材は、前記前身頃部の襟ぐりおよび脇ぐりにおいて前身頃部本体と固定されるとともに、前記胸部サポート部材の下端は、前記前身頃部本体から遊離しているものとできる。胸部サポート部材をさらに備えることによって、乳房のふくらみをより自然に抑え、全体的にふくらみが抑制されたより自然な外見が得られる。
【0019】
前記胸部部材は、非伸縮性の素材を含む積層生地で構成される複数の構成片が身巾方向に並んで接続されたものとできる。隣り合う前記構成片が接合する部分である接合部は、互いに重なることなく配置されるものとできる。この構成とすることによって、乳房を上下方向に逃がすように押さえ、前述の背面サポート部材との組み合わせによって、乳房のふくらみを自然に抑制する効果がより確実になる。
【0020】
本開示にかかる上半身衣類は、ハーフトップ、またはタンクトップであってよい。ハーフトップである場合、アンダーウェアとして着用し、その上から外衣を着用することで、乳房のふくらみが抑えられた自然な外見が得られる。タンクトップである場合、アンダーウェアとして着用できるほか、それ自体をアウターウェアとして着用できる。
【0021】
[実施形態の具体例]
次に、本開示にかかる上半身衣類の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本開示にかかる上半身衣類の実施の一例であるハーフトップ1の前身頃部の衣服側を示す模式図である。一部、後身頃部の肌側が現われている。図2図1に示すハーフトップ1の前身頃部の肌側を示す模式図である。一部、後身頃部の衣服側が現われている。図8は、ハーフトップ1の着用状態の一例を示す模式図である。
【0023】
図1図8を参照して、ハーフトップ1は、前身頃部10と、後身頃部50と、アンダー部70と、を備える。前身頃部10の左右の脇側端部10Sのそれぞれに、後身頃部50が接続する。アンダー部70は、前身頃部10の下端および後身頃部50の下端に、前身頃部10および後身頃部50の全幅にわたって設けられている。アンダー部70は、着用者の胴回りを周回する環状に構成されている。アンダー部70は着用者のバストの下部、具体的にはバージスラインの最下部の下方に位置するよう構成されている。
【0024】
(前身頃部)
図1図2を参照して、前身頃部10は、身巾方向において、一方の脇部から他方の脇部にわたって延在する。前身頃部10は、身丈方向において、着用者の肩からバスト下部まで延在する。前身頃部10は、前身頃部本体としての前本体11と、前本体11の肌側に取り付けられた胸部部材20と、前本体11の衣服側に取り付けられた胸部サポート部材12と、を備える。前本体11は、例えばパワーネット等の伸縮性を有する素材で構成できる。前本体11は複数の構成片が接合されて構成される。なお、前本体は、胸部部材と組み合わされて、肩部および/または脇部など、上半身衣類の前面、すなわち前身頃側の構造を構成するための部材である。前本体は左右一対の肩部を含む。前本体は、胸部部材の一部または全部と重畳されてよい。
【0025】
ハーフトップ1の前本体11について説明する。
図3はハーフトップ1の前本体11を構成する構成片11a~11eを分離して示す模式図である。構成片11b~11eは、前中心を軸として左右対称に構成されており、対応する構成片に同じ符号を付して示している。図3を参照して、構成片11aは前本体11の上部である。構成片11aは左右一対の肩部を含み、また、襟ぐり10A、脇ぐり10Cの一部を構成する。構成片11aの下縁は左右一対の弧状に形成されている。構成片11b、11c、11dは前本体11の胸部である。構成片11b、11cの身丈方向における中央部は、身丈方向における端部よりも幅広に形成されている。すなわち、構成片11b、11cは、身丈方向における中央部の幅が、身丈方向における端部の幅よりも大きい。構成片11dは、前身頃部10における脇ぐり10Cの一部を構成する。構成片11eは前本体11の脇部である。構成片11eは、前身頃部10における脇ぐり10Cの一部および脇側端部10Sを構成する。構成片11b、11c、11dを接合(縫合)すると、ゆるやかに膨出する形状を有する曲面が形成される。構成片11b、11c、11dは、胸部部材20を構成する構成片20b、20c、20d(図4)にそれぞれ対応する形状である。すなわち、構成片11b、11c、11dは、構成片20b、20c、20dのそれぞれと、同一または相似の形状である。構成片11b、11c、11dは、胸部部材20の表皮材となる。
【0026】
構成片11a~11eは同一の素材であってもよく、異なる素材が組み合わされてもよい。例えば、伸縮性の異なる素材を組み合わせてもよい。構成片11a~11eは、伸縮性の素材で構成されることが好ましい。伸縮性の素材としては、特に制限されないが、例えばパワーネット、1WAYトリコット、2WAYトリコット、ベア天竺、ベアスムース等であってよい。
【0027】
胸部サポート部材12について説明する。
図1図8を参照して、胸部サポート部材12は、前身頃部10の衣服側に配置される。胸部サポート部材12は、身巾方向において、前身頃部10の一方の脇側端部10Sから他方の脇側端部10Sにわたって延在する。胸部サポート部材12は、身丈方向において、前身頃部10の肩端部10Bから、アンダー部70の上端70Aよりも高い位置まで延在する。胸部サポート部材12は、身丈方向において、前身頃部10の肩端部10Bからバストトップbtよりも下方の位置まで延在する。胸部サポート部材12は、前本体11の衣服側に、前本体11を覆うように、前本体11に重ねて配置される。前本体11と胸部サポート部材12とは、襟ぐり10A、脇ぐり10Cおよび脇側端部10Sにおいて、互いに接合されている。襟ぐり10A、脇ぐり10Cは前本体11および胸部サポート部材12の生地を重ね、パイピングによって補強され、縫着されている。胸部サポート部材12の下端12Bはいわゆるフラシになっており、前本体11から遊離している(図7参照)。胸部サポート部材12の下端12Bは、下端12Bに沿って幅10mm~25mm程度の伸縮性部材である平ゴム18が取り付けられている。平ゴム18は、胸部サポート部材12を構成する生地が袋状に形成された部分に封入されてもよいし、胸部サポート部材を構成する生地に直接縫合されてもよい。胸部サポート部材12の下端12Bに平ゴムを備えることによって、ずり上がりを防止し、乳房をサポートしつつ押さえられる。
【0028】
胸部サポート部材12は、伸縮性の素材で構成される。特に、身巾方向よりも身丈方向に高い伸縮性を有する部材で構成されることが好ましい。伸縮性の素材としては、特に制限されないが例えばパワーネット、1WAYトリコット、2WAYトリコット、ストレッチレース、ベア天竺、ベアスムース等であってよい。
【0029】
胸部部材20について説明する。
図2を参照して、胸部部材20は、前身頃部10における肌側に配置される。胸部部材20は、着用者の胸部に相当する部分に配置されている。胸部部材20の上端20Aは、前中心から脇側端部にかけてゆるやかな弧状に形成されている。胸部部材20の下端20Bは、胸部部材20の身巾方向の全幅にわたってアンダー部70に接続している。すなわち、胸部部材20はカップくりを有さない。胸部部材20の下端20Bは身巾方向に直線的に形成されている。胸部部材20の脇側端部20Sは、前身頃部10の脇側端部10Sよりも前中心寄りに位置する。例えば、胸部部材20の脇側端部20Sは、前身頃部10の脇側端部10Sよりも30mm~80mm程度、前中心に近い位置とされる。胸部部材20は、実質的に非伸縮性である。ここで、非伸縮性であるとは、明らかな伸縮性を有さないことを意味し、縫製や生地の性質に由来するわずかな伸縮性を有する場合も、非伸縮性であるという。
【0030】
図4は胸部部材20を構成する構成片20b~20dを分離して示す模式図である。構成片20b~20dは、前中心を軸として左右対称に構成されており、対応する構成片に同じ符号を付して示している。図2図4を参照して、胸部部材20は、構成片20b、20c、20dが身巾方向に並んで接続されてなる。隣り合う構成片同士の接合部は、互いに重なることなく配置されている。すなわち、構成片20bと構成片20bとの接合部である接合部22、構成片20bと構成片20cとの接合部である接合部23、構成片20cと構成片20dとの接合部である接合部24は、いずれも身丈方向に延在し、互いに重なることがない。接合部22は、前中心に沿って延在する。
【0031】
構成片20b、20cは、身丈方向における中央部が端部に対して幅広に形成されている。すなわち、構成片20b、20cは、身丈方向における中央部の幅が、身丈方向における端部の幅よりも大きい。このため、構成片20b、20c、20dを接合(縫合)すると、ゆるやかに膨出する形状を有する曲面が形成される。すなわち、胸部部材20は左右一対のゆるやかな膨出部を含む曲面形状である。この形状によって、着用時に乳房を過度に押さえつけることなく、乳房を逃がすように保持できる。構成片20dは、脇ぐり20Cが形成されている。脇ぐり20Cは、前身頃部10における脇ぐり10Cの一部を構成する。
【0032】
構成片20b、20c、20dは、非伸縮性の素材を含む積層生地で構成されることが好ましい。すなわち、胸部部材20は実質的に伸縮性を有さないことが好ましい。積層生地の構成は特に制限されないが、例えば、マーキゼットや不織布等である非伸縮性の素材を1または複数含んで構成される。一例として、マーキゼット、不織布および天竺を積層した3層からなるものとできる。接合部22、23、24には、接合部22、23、24に沿うテープ材が重ねられている。胸部部材20の周縁は前本体11に接合(縫合)されている。すなわち、胸部部材20の上端20A、下端20B、脇ぐり20C、脇側端部20Sは、前本体11に接合されている。
【0033】
(後身頃部)
図5はハーフトップ1の後身頃部の衣服側を示す模式図である。一部、前身頃部10の脇ぐり10Cが現われている。図6図5に示すハーフトップ1の後身頃部の肌側を示す模式図である。一部、前身頃部10の脇ぐり10Cが現われている。
【0034】
図5図6を参照して、後身頃部50は、身巾方向において、一方の脇側端部50Sから他方の脇側端部50Sにわたって延在する。後身頃部50は、身丈方向において、着用者の肩部から肩甲骨の下方まで延在する。後身頃部50の下端50Bは、アンダー部70に接続している。後身頃部50は、背面本体51と、背面本体51の衣服側に取り付けられた背面サポート部材52と、を備える。背面本体は、上半身衣類の後身頃側の構造を構成するための部材である。
【0035】
背面本体51について説明する。
背面本体51は、例えばパワーネット等の伸縮性を有する素材で構成できる。背面本体51は、肩端部51Bにおいて前身頃部10の肩端部10B(図1)に接続する。また、背面本体51は、脇側端部50Sにおいて前身頃部10の脇側端部10S(図1)に接続する。背面本体51は継ぎ目のない単一の構成片で構成される。また、背面本体51は複数の構成片が組み合わされて構成されてもよい。背面本体51は、左右一対の肩部を含み、襟ぐり50A、脇ぐり50Cを構成する。
【0036】
背面サポート部材52について説明する。
図5図8を参照して、背面サポート部材52は、後身頃部50の衣服側に配置される。背面サポート部材52は、身巾方向において、後身頃部50の一方の脇側端部50Sから他方の脇側端部50Sにわたって延在する。背面サポート部材52は、身丈方向において、後身頃部50の脇ぐり50Cの下部から、後身頃部50の下端50Bないし下端50B近傍まで延在する。背面サポート部材52は、後身頃部50の脇ぐり50Cの下方に、身巾方向に延在する帯状の部材である。背面サポート部材52は、背面本体51の衣服側に、背面本体51を覆うように、背面本体51に重ねて配置される。背面本体51と背面サポート部材52とは、脇側端部50Sにおいて接合されている。また、背面サポート部材52の上縁部52Aは、背面本体51に接合(縫合)されている。
【0037】
背面サポート部材52は、身巾方向の中央部においてアンダー部70に接続する。すなわち、背面サポート部材52の中央領域52cの下端52cbは、アンダー部70に接続する。一方、背面サポート部材52は、身巾方向の端部においてアンダー部70から離れている。背面サポート部材52の端部領域52sの下端52sbは、アンダー部70から離れ、アンダー部70の上方に位置する。すなわち、背面サポート部材52の端部領域52sにおける身丈方向の幅は、中央領域52cにおける身丈方向の幅よりも小さい。端部領域52sの下端部は、背面本体51に接合(縫合)されている。
【0038】
すなわち後身頃部50は、両脇部の下部に、背面本体51と背面サポート部材52が重畳されていない、非重畳領域50pを有する。非重畳領域50pを有することによって、ハーフトップ1を着脱する際に伸びを許容し、着脱が容易になるとともに、着用時の快適性も向上する。
【0039】
背面サポート部材52は、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する素材で構成される。背面サポート部材52は、例えば、パワーネット、1WAYトリコット、2WAYトリコット等を、身丈方向よりも身巾方向に高い伸縮性を有する向きに配置することによって構成される。
【0040】
(アンダー部)
アンダー部70は、前身頃部10および後身頃部50の下端の全幅にわたって取り付けられた環状の部材である。アンダー部70は伸縮性の素材で構成される。アンダー部70は例えば幅が10mm~25mm程度の広幅ゴム材で構成される。当然ながら、表皮材等をさらに有してもよい。
【0041】
図7は、ハーフトップ1を図1のA-Aで切断した状態を示す断面模式図である。図7では一部を切断、省略し、主要な構成のみを模式的に示している。また、主要な構成を示すため、各部材の縮尺を変更して示している。図7を参照して、前身頃部10および後身頃部50の下部に、アンダー部70が接続される。前身頃部10は、前本体11の肌側に胸部部材20が、前本体11の衣服側に胸部サポート部材12が、それぞれ重ねられている。胸部サポート部材12の下端12Bは、前本体11から遊離している。胸部サポート部材12の下端には平ゴム18が取り付けられている。後身頃部50は、背面本体51の衣服側に背面サポート部材52が重ねられている。
【0042】
図8は、ハーフトップ1の着用状態の一例を示す模式図である。ハーフトップ1は、胸部部材20で着用者の乳房を覆う。また、身丈方向の伸縮性が高い胸部サポート部材12によって、乳房のふくらみを抑える。また、身巾方向の伸縮性が高い背面サポート部材52によって、乳房を脇側や背面に逃がすように押さえ、平らな外見の胸部が作り出される。
【0043】
(実施の形態2)
図9は本開示にかかる上半身衣類の実施の一例であるタンクトップ101の前身頃部の衣服側を示す模式図である。一部、後身頃部150の肌側が現われている。破線にて内部構造の一部を示している。図10は、タンクトップ101から外装部を取り除き、展開した状態(衣服側)を示す模式図である。図11は、図10のXI-XIで切断した状態を模式的に示す断面模式図である。図12はタンクトップ101から外装部を取り除き、展開した状態(肌側)を示す模式図である。以下の説明では、ハーフトップ1と共通する構成については説明を省略し、ハーフトップ1と異なる構成について主に説明する。
【0044】
図9を参照して、タンクトップ101は、前身頃部110、後身頃部150、アンダー部170を備える。タンクトップ101は、衣服側の前身頃側の最表面に前外装部141を備える。タンクトップ101は、衣服側の後身頃側の最表面に後外装部181を備える。前外装部141および後外装部181は、脇側端部141Sにおいて互いに縫合されている。前外装部141は、襟ぐり110Aおよび脇ぐり110Cにおいて、前本体111に接合されている。後外装部181は、襟ぐり150Aおよび脇ぐり150Cにおいて、背面本体151(図10)に接合されている。前外装部141および後外装部181の素材および形状は特に制限されず、用途やデザインに応じて幅広く変更されうる。たとえば、前外装部141および後外装部181は複数の生地が重ねられていても良く、切り換えを有してもよい。
【0045】
図10図12を参照して、前身頃部110は、前本体111と、前本体111に取り付けられた胸部部材120と、を備える。胸部部材120の下端120Bは、全幅がアンダー部170に接続する。胸部部材120の脇側端部120Sは、前身頃部110の脇側端部110Sと接続する。前本体111は、左右一対の肩部を含む構成片111aを含む。胸部部材120は、衣服側の表面に、非伸縮性素材であるマーキゼットからなる表皮材112がボンディングされている。胸部部材120は非伸縮性の素材を含む積層生地で構成され、この表面に非伸縮性素材の表皮材112がさらに重ねられている。表皮材112の上端112Aは、胸部部材120の上端120Aと合わせて、構成片111aと縫合される。図10図11を参照して、表皮材112と胸部部材120とは、上端112A(120A)、下端112B(120B)および脇側端部110Sにおいて互いに縫着され、それ以外の箇所はボンディングによって接合されている。タンクトップ101は胸部サポート部材を備えないが、胸部部材120の表皮材112を非伸縮性素材で構成することによって、胸部のふくらみを自然に抑えることができる。
【0046】
図10図12を参照して、後身頃部150は、背面本体151と、背面本体151の衣服側に取り付けられた背面サポート部材152と、を備える。背面サポート部材152は、身巾方向において、後身頃部150の一方の脇側端部150Sから他方の脇側端部150Sにわたって延在する。背面サポート部材152の脇側端部152Sは、胸部部材120の脇側端部120Sに接続されている。背面サポート部材152の上縁部152Aは、背面本体151に縫合されている。背面サポート部材152の中央領域152cの下端152cbは、アンダー部170に接続する。背面サポート部材152の端部領域152sの下端152sbは、アンダー部170から離れ、アンダー部170の上方に位置する。すなわち、背面サポート部材152の端部領域152sにおける身丈方向の幅は、中央領域152cにおける身丈方向の幅よりも小さい。
【0047】
(変形例)
本開示にかかる上半身衣類は、上述の実施の形態に限らず様々に変形できる。例えば、胸部サポート部材の上縁や脇側の形状や配置は、サイズや用途に応じて異なるラインとなるようにできる。襟ぐりや脇ぐりの形状は様々に変更可能である。肩部は例えばストラップ等で構成してもよい。用途やデザインに応じて、例えば表皮材などをさらに有してもよい。袖部をさらに備えるものとしてもよい。
【0048】
本開示にかかる上半身衣類は、ハーフトップやタンクトップに限定されず、例えばTシャツやカットソー等のアウターウェア、水着等のスポーツウェア等であってもよい。本開示にかかる上半身衣類は、FTM(Female to Male)の性的志向者に対応するほか、乳房のふくらみを抑える様々な衣料として適用される。
【0049】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 ハーフトップ、10、101 前身頃部、11、110 前本体、11a、11b、11c、11d、11e、20b、20c、20d 構成片、12 胸部サポート部材、18 平ゴム、20、120 胸部部材、22、23、24 接合部、50、150 後身頃部、51、151 背面本体、52、152 背面サポート部材、70、170 アンダー部、101 タンクトップ、141 前身頃外装部、181 後身頃外装部。
図1
図2
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図10
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図12