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特開2024-106617センタリング装置、センタリング方法および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106617
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】センタリング装置、センタリング方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20240801BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240801BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010982
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】南 翔耀
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE09
5F043EE35
5F043EE36
5F043EE40
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA32
5F131BA33
5F131CA37
5F131DA02
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131EA06
5F131EA14
5F131EA15
5F131EA22
5F131EA24
5F131EB01
5F131FA13
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA35
5F131GA14
5F131GA19
5F131KA13
5F131KA14
5F131KA15
5F131KA72
5F131KB12
5F131KB32
5F157AA12
5F157AA14
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB47
5F157AB64
5F157AB90
5F157CF32
(57)【要約】
【課題】優れた設計自由度を有するセンタリング技術、ならびに当該センタリング技術を用いた基板処理装置を提供する。
【解決手段】この発明は、基板支持部の上面で基板を、水平面内で、第1基準位置に位置する第1当接部材、第2基準位置に位置する第2当接部材および第3基準位置に位置する第3当接部材により取り囲む。そして、これら3つの当接部材の微小移動の繰り返しにより、基板支持部の中心からの距離を同一に保ちながら基板に徐々に近接する。そして、これら3つの当接部材で基板を挟み込んで、基板の中心を基板支持部の中心に一致させる。このような一連のセンタリングに先立って、偏心方向が仮想線と平行となるように基板姿勢が調整されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が前記基板支持部の中心に一致するように前記基板支持部上での前記基板の位置決めを行うセンタリング装置であって、
水平面内において、前記基板支持部の中心から前記基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置から、前記基板支持部の中心に向う第1水平方向に移動自在な第1当接部材と、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側で前記基板支持部の中心から前記第1水平方向に延びる仮想線から外れるとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第2基準位置から、前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第2水平方向に移動自在な第2当接部材と、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側かつ前記仮想線に対して前記第2当接部材の反対側で前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第3基準位置から、前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第3水平方向に移動自在な第3当接部材と、
前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材を、それぞれ前記第1水平方向、前記第2水平方向および前記第3水平方向に移動させる移動機構と、
前記基板が載置された前記基板支持部を回転させる回転駆動部と、
前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材が前記基板の端面から離間した状態で前記基板支持部に載置された前記基板の周縁部を計測する計測部と、
前記移動機構および前記回転駆動部を制御することで前記位置決めを実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記計測部により計測された前記基板の周縁部に関する周縁情報に基づき前記基板の中心が前記基板支持部の中心から偏心している偏心方向を求める偏心情報取得部と、
前記基板支持部を回転させることで、前記偏心方向が前記仮想線と平行になるように前記基板の姿勢を調整する基板姿勢調整部と、
前記偏心方向が前記仮想線と平行になった状態で、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動を、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板への当接が全て完了するまで繰り返す移動制御部と、
を有することを特徴とするセンタリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンタリング装置であって、
前記移動機構は、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材を移動させるために、少なくとも1つ以上のモータを有し、
前記移動制御部は、前記モータにおける負荷トルク変動に基づいて前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の全てが前記基板に当接したことを確認したタイミングで、前記微小移動の繰り返しを停止する、センタリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンタリング装置であって、
前記基板支持部は、周縁部に切欠部が設けられた前記基板を支持可能に構成され、
前記偏心情報取得部は、前記周縁情報に基づき前記偏心方向に対する前記切欠部の相対位置に関する切欠位置情報を取得し、
前記基板姿勢調整部は、前記切欠位置情報に基づいて、前記切欠部が前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の全ての移動経路から外れるように、前記基板の姿勢を調整する、センタリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のセンタリング装置であって、
前記基板姿勢調整部は、前記偏心方向が前記第1当接部材の反対側を向いた第1姿勢と、前記偏心方向が前記第1当接部材を向いた第2姿勢と、の間で選択的に切り替える、センタリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のセンタリング装置であって、
前記基板姿勢調整部は、
前記切欠位置情報に基づき、前記基板の姿勢が前記第1姿勢および前記第2姿勢のうちの一方に設定したときに前記切欠部が前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材のいずれかの移動経路上に位置するか否かを判定し、
前記切欠部が前記移動経路上に位置しないときには前記基板の姿勢を一方に調整し、位置するときには前記基板の姿勢を他方に調整する、センタリング装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のセンタリング装置であって、
前記制御部は、
前記計測部により計測された前記基板の周縁部に関する周縁情報に基づき前記基板の中心が前記基板支持部の中心から偏心している偏心方向を求め、前記基板支持部を回転させることで、前記偏心方向が前記仮想線と平行になるように前記基板の姿勢を調整し、前記偏心方向が前記仮想線と平行になった状態で、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動を、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板への当接が全て完了するまで繰り返す精密位置決めモードと、
前記基板支持部の上面上に前記基板が載置された後に前記基板の姿勢調整を行うことなく、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動を、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板への当接が全て完了するまで繰り返す高速位置決めモードとを実行可能に構成され、
前記高速位置決めモードと、前記精密位置決めモードとを選択的に切り替える、センタリング装置。
【請求項7】
基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が前記基板支持部の中心に一致するように前記基板支持部上での前記基板の位置決めを行うセンタリング方法であって、
(a)水平面内において、前記基板支持部の中心から前記基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置に第1当接部材を位置させ、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側で前記第1基準位置から前記基板支持部の中心を通過して延びる仮想線から外れるとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第2基準位置に第2当接部材を位置させ、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側かつ前記仮想線に対して前記第2当接部材の反対側で前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第3基準位置に第3当接部材を位置させた状態で、前記基板を前記基板支持部の上面に載置する工程と、
(b)前記基板支持部の上面上で前記基板を水平移動自在に載置したまま、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1基準位置から前記基板支持部の中心に向う第1水平方向に前記第1当接部材を移動させ、第2基準位置から前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第2水平方向に前記第2当接部材を第2移動量だけ移動させ、第3基準位置から前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第3水平方向に前記第3当接部材を第3移動量だけ移動させる、微小移動を繰り返す工程と、
(c)前記微小移動の繰り返し中に、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材で前記基板を挟み込んだことを確認すると、前記微小移動を停止する工程と、
(d)前記工程(a)ないし前記工程(c)を実行する前に、前記基板支持部の上面に載置された前記基板の姿勢を調整する工程と、を備え、
前記工程(d)が、
(d-1)前記基板支持部の上面に載置された前記基板の周縁部を計測する工程と、
(d-2)前記基板の周縁部に関する周縁情報に基づき前記基板の中心が前記基板支持部の中心から偏心している偏心方向を求める工程と、
(d-3)前記基板支持部を回転させることで、前記偏心方向が前記基板支持部の中心を通過して延びる仮想線と平行になるように前記基板の姿勢を調整する工程と、
を含むことを特徴とする、センタリング方法。
【請求項8】
請求項7に記載のセンタリング方法であって、
前記工程(d-1)は、周縁部に切欠部が設けられた前記基板を前記基板支持部で支持する工程を含み、
前記工程(d-2)は、前記周縁情報に基づき前記偏心方向に対する前記切欠部の相対位置に関する切欠位置情報を取得する工程を含み、
前記工程(d-3)は、前記切欠位置情報に基づいて、前記切欠部が前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の全ての移動経路から外れるように、前記基板の姿勢を調整する工程を含む、
センタリング方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のセンタリング方法であって、
前記基板支持部の上面上に前記基板が載置された後に前記基板の姿勢調整を行うことなく、前記工程(a)ないし前記工程(c)を実行することで、前記位置決めを行う高速位置決めモードと、
前記工程(a)ないし前記工程(d)を実行することで、前記位置決めを行う精密位置決めモードと、
が選択的に実行可能となっている、センタリング方法。
【請求項10】
水平姿勢の基板を支持する上面を有する基板支持部と、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のセンタリング装置と、
前記センタリング装置により位置決めされた前記基板と前記基板支持部との間を排気して前記基板を前記基板支持部に吸着保持させる吸引部と、
前記基板を吸着保持する前記基板支持部を、前記基板支持部の中心周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板支持部と一体的に前記基板支持部の中心周りに回転される前記基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給機構と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板支持部の上面に載置された円板状の基板の中心を基板支持部の中心に一致させるセンタリング技術および当該技術を利用して基板を処理する基板処理装置に関するものである。当該処理には、ベベルエッチング処理が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板の周縁部に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、基板がスピンチャック(本発明の「基板支持部」の一例に相当)により下方から支持されながら吸着保持される。このとき、スピンチャックの中心と、基板の中心とがずれていると、処理品質の低下を招いてしまう。そこで、上記装置に対し、センタリング装置を装備させることが望まれる。
【0003】
センタリング装置は、スピンチャックに対する基板の偏心量を減少させる、いわゆるセンタリング処理を実行するものである。センタリング装置としては、例えば特許文献2に記載されているように、スピンチャックの中心軸からそれと直交する方向に放射状に延びる各々の軸線上でそれぞれ移動体を往復移動させるものを採用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-146507号公報
【特許文献2】特開平10-209249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記センタリング装置では、少なくとも3つ以上移動体をそれぞれ軸線上で往復移動させる必要があるため、装置サイズの大型化が問題となっていた。そこで、本願発明者は、最小限の移動体で、しかも装置サイズの小型化を図るべく、後で説明する図3で示すように、3つの当接部材を有するセンタリング装置を開発した。3つの当接部材とは
【0006】
(1)水平面内において、基板支持部の中心から基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた、第1基準位置から基板支持部の中心に向う第1水平方向に移動自在な第1当接部材と
【0007】
(2)水平面内において、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側で基板支持部の中心から第1水平方向に延びる仮想線から外れるとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた、第2基準位置から基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第2水平方向に移動自在な第2当接部材と
【0008】
(3)水平面内において、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側かつ仮想線に対して第2当接部材の反対側で基板支持部の中心から基準距離だけ離れた、第3基準位置から基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第3水平方向に移動自在な第3当接部材と、
である。そして、このセンタリング装置では、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動を繰り返し、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材で基板を挟み込むことで、センタリング処理が完了する。
【0009】
しかしながら、当接部材により移動される基板の移動には、第1水平方向(後で説明するX方向)の移動成分と、第1水平方向と直交する水平方向(後で説明するY方向)の移動成分とが含まれている。特に、基板の偏心方向がスピンチャックの中心から第1水平方向に延びる仮想線(後で説明する図3図5図6図8中の符号VL)から外れるにしたがって、後者の移動成分が大きくなる。そのため、この点を考慮して第2当接部材および第3当接部材の配置を設定するという制約や第2当接部材および第3当接部材を移動させるために比較的高出力の移動機構を用いるという制約などが発生している。その結果、センタリング装置の設計自由度が大きく制限されるという問題が新たに生じている。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、優れた設計自由度を有するセンタリング技術、ならびに当該センタリング技術を用いた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の第1態様は、基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板支持部上での基板の位置決めを行うセンタリング装置であって、水平面内において、基板支持部の中心から基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置から、基板支持部の中心に向う第1水平方向に移動自在な第1当接部材と、水平面内において、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側で基板支持部の中心から第1水平方向に延びる仮想線から外れるとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第2基準位置から、基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第2水平方向に移動自在な第2当接部材と、水平面内において、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側かつ仮想線に対して第2当接部材の反対側で基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第3基準位置から、基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第3水平方向に移動自在な第3当接部材と、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材を、それぞれ第1水平方向、第2水平方向および第3水平方向に移動させる移動機構と、基板が載置された基板支持部を回転させる回転駆動部と、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材が基板の端面から離間した状態で基板支持部に載置された基板の周縁部を計測する計測部と、移動機構および回転駆動部を制御することで位置決めを実行する制御部と、を備え、制御部は、計測部により計測された基板の周縁部に関する周縁情報に基づき基板の中心が基板支持部の中心から偏心している偏心方向を求める偏心情報取得部と、基板支持部を回転させることで、偏心方向が仮想線と平行になるように基板の姿勢を調整する基板姿勢調整部と、偏心方向が仮想線と平行になった状態で、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動を、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板への当接が全て完了するまで繰り返す移動制御部と、を有することを特徴としている。
【0012】
また、この発明の第2態様は、基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板支持部上での基板の位置決めを行うセンタリング方法であって、(a)水平面内において、基板支持部の中心から基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置に第1当接部材を位置させ、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側で第1基準位置から基板支持部の中心を通過して延びる仮想線から外れるとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第2基準位置に第2当接部材を位置させ、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側かつ仮想線に対して第2当接部材の反対側で基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第3基準位置に第3当接部材を位置させた状態で、基板を基板支持部の上面に載置する工程と、(b)基板支持部の上面上で基板を水平移動自在に載置したまま、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、第1基準位置から基板支持部の中心に向う第1水平方向に第1当接部材を移動させ、第2基準位置から基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第2水平方向に第2当接部材を第2移動量だけ移動させ、第3基準位置から基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第3水平方向に第3当接部材を第3移動量だけ移動させる、微小移動を繰り返す工程と、(c)微小移動の繰り返し中に、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材で基板を挟み込んだことを確認すると、微小移動を停止する工程と、(d)工程(a)ないし工程(c)を実行する前に、基板支持部の上面に載置された基板の姿勢を調整する工程と、を備え、工程(d)が、(d-1)基板支持部の上面に載置された基板の周縁部を計測する工程と、(d-2)基板の周縁部に関する周縁情報に基づき基板の中心が基板支持部の中心から偏心している偏心方向を求める工程と、(d-3)基板支持部を回転させることで、偏心方向が基板支持部の中心を通過して延びる仮想線と平行になるように基板の姿勢を調整する工程と、を含むことを特徴としている。
【0013】
さらに、この発明の第3態様は、基板処理装置であって、水平姿勢の基板を支持する上面を有する基板支持部と、上記センタリング装置と、センタリング装置により位置決めされた基板と基板支持部との間を排気して基板を基板支持部に吸着保持させる吸引部と、基板を吸着保持する基板支持部を、基板支持部の中心周りに回転させる回転駆動部と、基板支持部と一体的に基板支持部の中心周りに回転される基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給機構と、を備えることを特徴としている。
【0014】
このように構成された発明では、水平面内で、基板が第1基準位置に位置する第1当接部材、第2基準位置に位置する第2当接部材および第3基準位置に位置する第3当接部材により取り囲まれる。これら3つの当接部材は、微小移動の繰り返しにより、基板支持部の中心からの距離を同一に保ちながら基板に徐々に近接する。本発明では、当接部材の移動開始に先立って、偏心方向が仮想線と平行となるように基板姿勢が調整される。つまり、水平面内での基板の偏心は仮想線と平行な成分(後で説明するX方向成分に相当)のみとなり、偏心方向に直交する水平成分(後で説明するY方向成分に相当)はほぼゼロになる。このため、近接移動中に当接部材が順次基板に当接し、基板を仮想線に沿って押動する。つまり、押動力の全部が基板を偏心方向と反対側に移動させるために使用され、小さな力で基板の位置決めを行うことが可能となる。しかも、位置決め動作中において基板が偏心方向に直交する水平方向に移動することがないため、当該水平方向における第2当接部材および第3当接部材の離間間隔を縮めることが可能となる。その結果、移動機構の構成や第2当接部材および第3当接部材の配置などに関する制約が少なくなっている。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明によれば、優れた設計自由度で基板のセンタリング処理を行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】基板処理装置の第1実施形態の構成を概略的に示す図である。
図3】基板処理装置の基板保持部およびセンタリング機構の構成を示す斜視図である。
図4】センタリング機構で採用可能な当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
図5】センタリング機構の動作を模式的に示す図である。
図6】微小移動前後の当接部材とスピンベースの中心との位置関係を模式的に示す図である。
図7】第1実施形態におけるベース中心から当接面までの距離の変化に対する負荷トルクの変動を示すグラフである。
図8図2に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明にかかるセンタリング装置の第3実施形態で採用された当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
図10】基板の姿勢調整により、当接部材とノッチとの位置関係が変化する様子を模式的に示した図である。
図11】本発明に係るセンタリング装置の第4実施形態の動作を示すフローチャートである。
図12】本発明に係るセンタリング装置の第5実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Sを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニットにおいて、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0018】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0019】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Sに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0020】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0021】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Sを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111はランダムにアクセスして基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1の一つが本発明に係る基板処理装置10に相当している。
【0022】
図2は基板処理装置の第1実施形態の構成を概略的に示す図である。図3は基板処理装置の基板保持部およびセンタリング機構の構成を示す斜視図である。図4はセンタリング機構で採用可能な当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。図5はセンタリング機構の動作を模式的に示す図である。図6は微小移動前後の当接部材とスピンベースの中心との位置関係を模式的に示す図である。基板処理装置10は、ベベルエッチング処理を本発明の「処理」の一例として実行する装置であり、処理チャンバ内で基板Sの上面の周縁部に処理液を供給する。この目的のために、基板処理装置10は、基板保持部2、本発明に係るセンタリング装置の主要構成であるセンタリング機構3、処理液供給機構4を備えている。これらの動作は装置全体を制御する制御部9により制御される。
【0023】
基板保持部2は、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンベース21を備えている。スピンベース21は、その下面中央部から下向きに延びる回転支軸22により、上面211が水平となるように支持されている。回転支軸22は回転駆動部23により回転自在に支持されている。回転駆動部23は回転モータ231を内蔵しており、制御部9からの制御指令に応じて回転モータ231が回転する。この回転駆動力を受けて、スピンベース21がスピンベース21の中心21Cを通過して鉛直方向に延びる鉛直軸AX(1点鎖線)回りに回転する。図2においては上下方向が鉛直方向である。また、図2の紙面に対して垂直な面が水平面である。なお、図2以降の図面における方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。
【0024】
スピンベース21の上面211は基板Sを支持可能な広さを有しており、スピンベース21の上面211への基板Sの載置が可能となっている。この上面211には、図示を省略するが、複数の吸着孔や吸着溝などが設けられている。これら吸着孔などは、吸引配管241を介して吸引ポンプ24と接続されている。この吸引ポンプ24は、本発明の「吸引部」の一例として機能するものである。この吸引ポンプ24が制御部9からの制御指令に応じて作動すると、吸引ポンプ24からスピンベース21に吸引力が与えられる。その結果、スピンベース21の上面211と基板Sの下面との間から空気が排気され、基板Sがスピンベース21に吸着保持される。このように吸着保持された基板Sは、スピンベース21の回転と一緒に鉛直軸AXまわりに回転される。したがって、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cと一致していない、つまり基板Sが偏心している場合、ベベルエッチング処理の品質低下を招く。
【0025】
そこで、本実施形態では、センタリング機構3が設けられており、制御部9と協働することで本発明に係る「センタリング装置」として機能する。センタリング機構3は、スピンベース21に吸着保持された基板Sの周縁部を計測する計測部37を有している。この計測部37は、図3に示すように、スピンベース21に吸着保持された基板Sの周縁部に位置して基板Sの周縁部に関する周縁情報を取得可能となっている。また、スピンベース21の径方向D4において、計測部37は基板Sの周縁部から離間した退避位置に移動可能となっている。計測部37としては、例えば特開2021-54562号公報に記載されたエッジ検出センサを用いることができる。より具体的には、計測部37は、基板Sがスピンベース21の回転と一緒に鉛直軸AXまわりに少なくとも1回転する間に、スピンベース21の径方向における基板Sのエッジ位置を検出して、当該エッジ位置を示すエッジ検出信号を周縁情報として制御部9に出力する。したがって、当該エッジ検出信号を解析することで基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cから偏心している偏心方向(後で説明する図8の符号D5)、偏心量および偏心方向に対するノッチNTの相対位置を求めることが可能となっている。なお、エッジ検出センサ以外に、基板Sの周縁部を撮像する撮像部を計測部37として用いてもよい。この場合、基板Sがスピンベース21の回転と一緒に鉛直軸AXまわりに少なくとも1回転する間に撮像部が撮像した連続画像が周縁情報に相当する。このようにエッジ検出信号や周縁部の連続画像などに基づく偏心方向、偏心量およびノッチ位置を導出する方法は周知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0026】
こうして取得した偏心方向に対応した角度だけ、スピンベース21は基板Sを吸着保持したまま回転する。これによって、偏心方向が後述する仮想線と一致するように基板Sの姿勢が調整される。それに続いて、吸引ポンプ24による吸引が停止される、つまりスピンベース21の上面211上で基板Sが水平移動可能となる。この状態でセンタリング処理が実行される。このセンタリング処理により上記偏心が解消され、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cと一致する。なお、上記姿勢調整を含めたセンタリング機構3の詳しい構成および動作については、後で説明する。
【0027】
センタリング処理を受けた基板Sに対してベベルエッチング処理を施すために、処理液供給機構4が設けられている。処理液供給機構4は、処理液ノズル41と、処理液ノズル41を移動させるノズル移動部42と、処理液ノズル41に処理液を供給する処理液供給部43とを有している。ノズル移動部42は、処理液ノズル41を図2中の実線で示すように基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、同図の点線で示すように基板Sの周縁部上方の処理位置との間を移動させる。
【0028】
処理液ノズル41は処理液供給部43に接続されている。そして、処理位置に位置決めされた処理液ノズル41に対して処理液供給部43から適宜の処理液が送給されると、処理液ノズル41から回転している基板Sの周縁部に処理液が吐出される。これにより、基板Sの周縁部全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0029】
なお、図2への図示を省略しているが、スプラッシュガード部が基板保持部2を側方から取り囲むように設けられている。スプラッシュガード部は、ベベルエッチング処理中に、基板Sから振り切られた処理液の液滴を捕集し、同液滴が装置周辺に飛散するのを効果的に防止する。
【0030】
次に、図2ないし図6を参照しつつセンタリング機構3の構成について説明する。センタリング機構3は、スピンベース21の上面211に載置された基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致するように基板Sをスピンベース21の上面211上で水平移動させて位置決めする機能を有している。センタリング機構3は、図3に示すように、X方向において、スピンベース21の中心21Cに対してX2方向(同図の右手方向)側に配置された当接部材31と、X1方向(同図の左手方向)側に配置された当接部材32、33とを有している。また、センタリング機構3は、当接部材31~33を水平方向に移動させるための移動機構34を有している。
【0031】
移動機構34は、当接部材31を移動させるためのシングル移動部35と、当接部材32、33を一括して移動させるためのマルチ移動部36と、を有している。スピンベース21の中心21Cに対し、シングル移動部35がX2方向側に配置される一方、マルチ移動部36がX1方向側に配置されている。
【0032】
シングル移動部35は、固定ベース351と、回転モータ352と、動力伝達部353と、スライダー354とを有している。固定ベース351に対して回転モータ352が取り付けられるとともに、固定ベース351上に動力伝達部353およびスライダー354がこの順序で積層されている。回転モータ352は、当接部材31をX方向に移動させるための駆動源である。制御部9からの制御指令に応じて回転モータ352が作動すると、回転軸(図示省略)が回転する。この回転軸は固定ベース351の上部から動力伝達部353に延びており、回転モータ352で発生した回転駆動力が動力伝達部353に伝達される。動力伝達部353は、例えばラックアンドピニオン構造などにより、回転駆動力に応じた回転運動をX方向の直線運動に変換し、スライダー354に伝達する。これにより、スライダー354は回転量に応じた距離だけX方向に往復移動する。その結果、スライダー354の上部に取り付けられた当接部材31がスライダー354の移動に伴ってX方向に移動される。
【0033】
マルチ移動部36は、スライダー364の構造が一部相違している点を除き、基本的にシングル移動部35と同様に構成されている。すなわち、マルチ移動部36は、固定ベース361に取り付けられた回転モータ362で発生した回転駆動力を動力伝達部363によってスライダー364に与え、スライダー364をX方向に移動させる。スライダー364の上部は、X2方向に延びる2本のアーム364a、364bがY方向に互いに離間しており、鉛直上方からの平面視で略C字形状を呈している。そして、アーム364a、364bのX2方向側の端部に対し、当接部材32、33がそれぞれ取り付けられている。したがって、制御部9からの制御指令に応じて回転モータ362が作動すると、シングル移動部35と同様に回転モータ362の回転量に応じた距離だけスライダー364がX方向に往復移動する。その結果、スライダー364に取り付けられた当接部材32、33がスライダー364の移動に伴ってX方向に移動される。
【0034】
当接部材31~33は、それぞれ基板Sの端面Seに当接可能な当接面311~331を有している。そして、これらの当接面311~331を基板Sの端面Seに向けた姿勢で、当接部材31~33は、XY平面(水平面)内において基板保持部2を囲むように配置されている。当接面311~331は平面形状を有しており、それらの面法線は鉛直軸AXを向いている。例えば図4の(a)欄に示すように、当接面321では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する直線領域322が当接可能領域として機能しており、その長さLは、ノッチNTにより基板Sの円周が切り取られる弧の長さLnよりも長くなっている。したがって、センタリング時には、当接部材32が基板Sの端面Seに向かって移動されると、直線領域322において基板Sの端面Seと1点または2点で当接する。つまり、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、直線領域322上の2つの当接点CP1、CP2が基板Sの端面Seと当接する。一方、それ以外においては、直線領域322上の1つの当接点が基板Sの端面Seと当接する。このことは、当接面311、331についても同様である。なお、当接部材31~33を上記のように構成した理由については、後で図4を参照しつつ詳述する。
【0035】
シングル移動部35によって当接部材31がX1方向に移動されると、当接部材31の当接面311がスピンベース21の中心21Cに向って進み、基板Sの端面Seに当接する。このように本実施形態では、基板Sに当接するための当接部材31の移動方向D1はX1方向であり、これが本発明の「第1水平方向」に相当している。そして、当接後において当接部材31がさらにD1方向に移動することで、基板SをX1方向に押圧しながらスピンベース21の上面211でX1方向に水平移動させる。このように本実施形態では、発明内容の理解を助けるために、図3図5および図6においてスピンベース21の中心21CからX1方向に延設させた仮想線VLが追加記載されている。これが本発明の「仮想線」に相当している。以下、仮想線VLを適宜利用しながら、センタリング機構3の構成説明を続ける。
【0036】
マルチ移動部36による当接部材32、33の移動態様は、当接部材31のそれと一部相違している。というのも、水平面内において、当接部材32、33は仮想線VLに対して線対称に配置されており、その配置状態のままX方向に移動されるからである。より詳しくは、当接部材32は、図5の(a)欄に示すように、仮想線VLからY2方向側に所定距離W(ただし、基板Sの半径rsよりも短い)だけ外れて配置されている。一方、当接部材33は、仮想線VLに対して当接部材32の反対側、つまりY1方向側に当接部材32と同じ距離Wだけ外れて配置されている。したがって、マルチ移動部36によって当接部材32、33がX2方向に移動されると、当接部材32の当接面321が仮想線VLよりもY2方向側の基板端面に当接するとともに、当接部材33の当接面331が仮想線VLよりもY1方向側の基板端面に当接する。このように、本実施形態では、基板Sに当接するための当接部材32の移動方向D2はX2方向であり、これが本発明の「第2水平方向」に相当している。また、基板Sに当接するための当接部材33の移動方向D3もX2方向であり、これが本発明の「第3水平方向」に相当している。したがって、スピンベース21の中心21Cから各当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接面311、321、331を移動させるためには、単位時間当たりの移動量を当接部材31と当接部材32、33とで相違させる必要がある。その点について図5および図6を参照しつつ詳述するとともに、上記移動態様を利用したセンタリング処理について説明する。
【0037】
スピンベース21の上面211に基板Sを載置するためには、少なくとも基板Sの外径公差の最大値を考慮して当接面311、321、331が基準位置に位置決めされるのが望ましい。例えば直径300mmの基板Sでは、外径公差が0.2mmである。したがって、当接面311、321、331がスピンベース21の中心21Cから150.1mmあるいはそれ以上の距離だけ離れている必要がある。この距離を本実施形態では「基準距離r0」と称し、図5の(a)欄に示すように、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径が基準距離r0の円(1点鎖線)を基準円とする。
【0038】
次に、当該基準円に当接面311、321、331が位置するように当接部材31~33を位置決めした後で、当接面311、321、331を基板Sに向けて移動させる場合について検討する。この場合、基準円に当接面311を位置させるための当接部材31の位置が本発明の「第1基準位置」に相当し、基準円に当接面321を位置させるための当接部材32の位置が本発明の「第2基準位置」に相当し、基準円に当接面331を位置させるための当接部材33の位置が本発明の「第3基準位置」に相当する。
【0039】
ここで、当接部材31~33がそれぞれ第1基準位置、第2基準位置および第3基準位置に位置した状態から当接部材31を基板Sに向けて第1移動量Δd1だけD1方向(X1方向)に微小移動された場合について検討する。これに対応して当接部材32、33を同じ距離だけD2方向(X2方向)に微小移動させると、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離は不揃いとなる。したがって、単位時間当たりの移動量を統一したまま当接部材31~33の微小移動を繰り返すと、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致することはない。
【0040】
これに対して、図5の(b)欄および図6に示すように、当接部材31を第1移動量Δd1だけD1方向に微小移動させるのに対応して、当接部材32を第2移動量Δd2だけD2方向に微小移動させ、当接部材33を第3移動量Δd3(=Δd2)だけD3方向に微小移動させることで、スピンベース21の中心21Cから各当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接面311、321、331を移動させることができる。
【0041】
図6は、微小移動前後の当接部材32とスピンベース21の中心21Cとの位置関係を模式的に示す図である。図6は、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との位置関係、およびスピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との位置関係を示す。図6は、当接部材32を第2移動量Δd2だけD2方向に微小移動させる前の当接部材32を実線で示し、微小移動させた後の当接部材32を二点鎖線で示す。図6は、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との接点324と、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との接点325を示す。
【0042】
図6に示すように、接点324と、接点325とは、当接部材32上での位置が異なる。一方、スピンベース21の中心21Cと接点324とを結ぶ直線と、スピンベース21の中心21Cと接点325とを結ぶ直線とは重なる。さらに、スピンベース21の中心21Cと接点324とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度と、スピンベース21の中心21Cと接点325とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度とは、同じである。
【0043】
このため、当接部材32を微小移動させる距離Δd2(本発明の「第2移動量」に相当)および当接部材33を微小移動させる距離Δd3(本発明の「第3移動量」に相当)を以下のように、
Δd2=Δd3=(r1-r2)/cosθ=Δd1/cosθ
r1=r0
r2=r1-Δd1
ただし、
r1:微小移動前の中心21Cから当接面321までの距離、
θ:スピンベース21の中心21Cと接点324及び接点325とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度、
r2:微小移動後の中心21Cから当接面321までの距離、
W:仮想線VLから当接部材32の離間距離、
設定することができる。この場合、微小移動後においても、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離は一致している。このような微小移動を繰り返すことで、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接部材31~33が基板Sに近づいていく。すると、例えば図5に示すような偏心が生じている場合、上記微小移動の繰り返し中に、最初に当接部材31が基板Sに当接し、基板SをD1方向に移動させる(図5の(c)欄参照)。それに続いて、当接部材32が当接部材31で押動されている基板Sに当接して水平移動させる。そして、図5の(d)欄に示すように、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離が基板Sの半径となると、最後の当接部材33も基板Sに当接する。こうして当接部材31~33により基板Sが挟み込まれて基板Sの移動が停止されるとともに、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致する。このようにして、基板Sのセンタリング処理を実行可能となっている。
【0044】
上記したセンタリング機構3を有する本実施形態では、制御部9が基板処理装置10の装置各部を制御して上記センタリング処理およびそれに続くベベルエッチング処理を実行する。この制御部9には、CPU(=CentralProcessingUnit)やRAM(=RandomAccessMemory)等を有するコンピューターにより構成される演算処理部91と、ハードディスクドライブなどの記憶部92と、モータ制御部93とが設けられている。
【0045】
演算処理部91は、予め記憶部92に記憶されているセンタリングプログラムやベベルエッチングプログラムを適宜読み出し、RAM(図示省略)に展開し、図5に示すセンタリング処理およびベベルエッチング処理を行う。特に、センタリング処理を行う際に、演算処理部91は第1移動量Δd1ないし第3移動量Δd3を算出するとともにこれらの移動量Δd1~Δd3に基づきモータ制御部93を介して移動機構34の回転モータ352、362を制御する。また、演算処理部91は、回転モータ352に与えられるモータ電流値からシングル移動部35での負荷トルクを算出するとともに、回転モータ362に与えられるモータ電流値からマルチ移動部36での負荷トルクを算出する。ここで、微小移動を繰り返している間にスピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離(ベース中心から当接面までの距離)が変化するのに伴って、負荷トルクは例えば図7に示すように変動する。同図に示すように、上記距離が基板Sの半径rsと一致する、つまり当接部材31~33が基板Sを挟み込んだ時点で、シングル移動部35およびマルチ移動部36において、ほぼ同時に負荷トルクが急激に増大する。そこで、演算処理部91は、負荷トルクがしきい値を超えた時点でセンタリング処理が完了したとして判断し、当接部材31~33の移動を停止させる。なお、本実施形態では、全モータ352、362について負荷トルクの変動を監視しているが、一方のモータのみを監視することで当接部材31~33の移動停止タイミングを特定してもよい。また、負荷トルクをモータ電流値以外に基づいて算出してもよいことは言うまでもない。これらの点は、当接部材31~33をそれぞれ専用のモータで移動させる場合も同様である。さらに、単一のモータにより当接部材31~33を移動させる場合には、当該モータの負荷トルクやモータ電流値に基づいて算出してもよい。
【0046】
図5および図6に示すセンタリング動作を良好に行うためには、当接部材31~33の進行方向(X方向)とそれに直交する水平方向(Y方向)における基板Sの位置精度を高める必要がある。特に、Y方向における基板Sの位置精度を高めるために、Y方向における当接部材32、33の間隔を広げるというアプローチが考えられる。しかしながら、このアプローチでは、装置サイズの増大は避けられず、その他の装置との干渉が問題となってしまう。また、当接部材32、33を移動させるための駆動源として、高出力な回転モータ362を用いる必要がある。その結果、センタリング機構3の設計自由度が大きく制限されるという問題が新たに生じる。
【0047】
そこで、本実施形態では、図5に示す当接部材31~33の基板Sへの移動前に、偏心方向の取得と基板Sの姿勢調整とを行っている。これらの偏心方向取得および基板姿勢調整を含めたセンタリング処理は、センタリングプログラムにしたがって演算処理部91が装置各部を制御することで実行される。そして、当該センタリング処理後に、ベベルエッチング処理が実行される。このように、本実施形態では、図8に示すように、演算処理部91は、偏心方向を含む偏心情報を取得する偏心情報取得部、基板Sの姿勢調整を行う基板姿勢調整部と、当接部材31~33の基板Sへの当接が全て完了するまで上記微小移動を繰り返して位置決めする移動制御部として機能する。以下、図8を参照しつつ第1実施形態に係るセンタリング装置を装備する基板処理装置10の動作について説明する。
【0048】
図8図2に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。基板処理装置10では、演算処理部91は、ベベルエッチング処理(ステップS2)前に、装置各部を制御してセンタリング処理(ステップS1)を実行する。より具体的には、以下のステップS11~S17が実行される。
【0049】
演算処理部91は、モータ制御部93により当接部材31~33および計測部37をスピンベース21から径方向に離れた位置に移動させる。これにより、スピンベース21の上方に基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が進入するのに十分な搬送空間が形成されるとともに、基板搬送ロボット111により搬送される基板Sが当接部材31~33および計測部37と干渉するのを防止することができる。
【0050】
このように搬送空間の形成完了と基板Sとの干渉防止とを確認すると、演算処理部91は、基板搬送ロボット111に基板Sのローディングリスエストを行い、未処理の基板Sが基板処理装置10に搬入されてスピンベース21の上面に載置されるのを待つ。そして、スピンベース21上に基板Sが載置される(ステップS11)。この時点では、吸引ポンプ24は停止しており、スピンベース21の上面上で基板Sは水平移動可能となっている。
【0051】
基板Sのローディングが完了すると、基板搬送ロボット111が基板処理装置10から退避する。それに続いて、演算処理部91は、吸引ポンプ24の作動によりスピンベース21上で基板Sを吸着保持する。また、演算処理部91は計測部37を退避位置から径方向D4に沿って基板Sの周縁部まで移動させる。その後で、演算処理部91は、モータ制御部93を介してスピンベース21を鉛直軸AXまわりに少なくとも1回転させる。これによって、基板Sはスピンベース21と一緒に回転した後で回転停止する。この回転中に計測部37から出力されるエッジ検出信号を周縁情報として演算処理部91は受け取り、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cから偏心している偏心方向D5、偏心量およびノッチNT(図3参照)の相対位置を導出する(ステップS12)。ここで、ノッチNTの相対位置とは、偏心方向D5に対するノッチNTの相対的な位置を意味している。なお、第1実施形態および後で説明する第2実施形態および第3実施形態では、ノッチNTの相対位置に関する情報(本発明の「切欠位置情報」の一例に相当)を使用しない。したがって、これらの実施形態では、切欠位置情報の取得は必須ではない。
【0052】
次に、演算処理部91は、仮想線VLに対する偏心方向D5の傾き角αを導出する(ステップS13)。それに続いて、モータ制御部93がスピンベース21を鉛直軸AXまわりに角度(-α)だけ回転させる(ステップS14)。これによって、基板Sの偏心方向D5が仮想線VLと平行で、かつX1方向を向くとともに、仮想線VLに重なる。つまり、水平面内での基板Sの偏心はX方向成分のみとなり、Y方向成分はほぼゼロとなる。このような基板姿勢に調整した後で、演算処理部91は、図5に示すように、当接部材31~33をそれぞれ第1基準位置、第2基準位置および第3基準位置に位置した状態から基板Sに向けて微小移動させる。この微小移動を繰り繰り返すことで、基板SはステップS12で導出された偏心量だけX2方向に移動される。その結果、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致する(ステップS15)。
【0053】
このステップS15を1回だけ実行し、センタリング処理を完了してもよいが、第1実施形態では、より高精度な位置決めを目指すため、ステップS12と同様にして、基板Sの偏心方向などを再取得する(ステップS16)。そして、再取得した偏心量が予め設定された許容値を超えているとき(ステップS17で「NO」)、演算処理部91はステップS13に戻ってステップS13~S17を繰り返す。
【0054】
一方、ステップS17で「YES」、つまり再取得した偏心量が予め設定された許容値以下であるときには、演算処理部91は、モータ制御部93により当接部材31~33および計測部37をスピンベース21から径方向に離れた位置に移動させた後で、ベベルエッチング処理(ステップS2)に移行する。
【0055】
ベベルエッチング処理では、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致する状態で、演算処理部91は、モータ制御部93により基板Sを鉛直軸AXまわりに回転させる。そして、例えば1800回転/分で基板Sを回転させながら、演算処理部91は、処理液供給部43を制御して処理液ノズル41に処理液を供給する。これによって、処理液ノズル41から回転している基板Sの周縁部に処理液が吐出される。その結果、基板Sの周縁部全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0056】
そして、演算処理部91は、基板Sのベベルエッチング処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液供給部43に供給停止指令を与え、処理液の吐出を停止する。また、演算処理部91は、スピンベース21の回転を停止させる。これによって、ベベルエッチング処理が完了し、演算処理部91は基板Sのローディング処理とは逆の手順で基板Sを基板処理装置10からアンローディングする。
【0057】
以上のように、第1実施形態によれば、基板Sのセンタリング動作(ステップS15)に先立って、偏心方向D5が仮想線VLと平行となるように基板姿勢を調整している。このため、水平面内での基板Sの偏心は、仮想線VLと平行なX方向成分のみとなり、偏心方向D5に直交するY方向成分はほぼゼロとなる。したがって、基板Sのセンタリング動作(ステップS15)において基板Sに当接した当接部材31~33は基板Sを仮想線VLに沿って押動する。つまり、押動力の全部が基板Sを偏心方向D5と反対側に移動させるために使用される。したがって、小さな力で基板Sの位置決めを行うことが可能となる。移動機構34の動力源である回転モータ352、362を小型化することができる。
【0058】
また、センタリング動作中において基板Sが偏心方向D5に直交するY方向に移動させて偏心補正する必要がなくなっている。このことは、当接部材32、33によるY方向での基板Sの移動が不要であることを意味しており、当該Y方向における第2当接部材32および第3当接部材33の離間間隔を縮めることが可能となる。そのため、当該センタリング機構3を装備する基板処理装置10の小型化を図ることができる。このように、本実施形態によれば、移動機構34や当接部材の配置などに関する制約が少なくなっており、高い自由度でセンタリング装置を設計することができる。
【0059】
また、当接部材32、33によるY方向の補正が不要となることにより、次のような利点もある。すなわち、当接部材31~33は基板Sと当接した後、当接状態を維持したまま基板Sを押動する。したがって、当接部材31~33と基板Sとの間で滑りは発生せず、当接部材31~33の摩耗を抑制することができる。その結果、当接部材31~33の長寿命化により、当接部材31~33の交換頻度を低減させることができ、オペレータの負担およびランニングコストを低減させることができる。
【0060】
また、負荷トルク変動に基づいてセンタリング処理の完了を確認するとともに、直ちに当接部材31~33の移動を停止させている。このため、基板Sにダメージを与えることなく、センタリング処理を適切なタイミングで終了させることができる。
【0061】
さらに、図4の(a)欄に示すように、当接部材31~33が、XY平面と交差して形成される直線領域312、322、332を有しているため、別の作用効果も得られる。この点については、図4を参照しつつ説明する。
【0062】
基板Sの端面Seを水平方向から押して移動させるために、例えば図4の(b)欄に示すように半円盤形状に仕上げられた先端部(第2実施形態)や先鋭形状に仕上げられた先端部を有する当接部材、あるいはローラ形状の当接部材を用いてもよい。これらの当接部材を用いる場合にも、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0063】
しかしながら、例えば図4の(b)欄に示す第2実施形態では、当接部材39の先端部393が半円盤形状を有している。この当接部材39では、基板Sの端面Seと対向する当接面391は基板Sに向かって凸形状に仕上げられている。したがって、当接面391では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する曲線領域392は、当接部材39側に曲率中心が位置する曲線形状となる。そのため、ノッチNTが当接面391と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、先端部393の一部がノッチNTに入り込んだ状態で曲線領域392上の2つの当接点CP1、CP2で当接する。その結果、センタリング時において、当接面391が基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心量Lbだけ基板S側に進んだ位置P1まで移動する。その結果、当接部材39の押し当て位置が正確なセンタリング処理を行うための位置からずれる。例えば図3に示すセンタリング機構3において、当接部材31~33の全てを当接部材39に置き換え、センタリング処理を行うと、次の実験結果が得られた。ここでは、スピンベース21に載置された基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sを鉛直軸AXまわりに適当な回転角(例えば32゜、180゜、328゜)だけ回転させ、ノッチNTを当接面391に対向させた状態でセンタリング処理を行うと、押し当て位置のズレ量、つまり偏心量は最大240μmにも達した。
【0064】
これに対し、第1実施形態では、当接部材31~33の当接面311~331は平面形状を有している。このため、図4の(a)欄に示すように、当接面311~331において基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する領域、つまり当接可能領域はそれぞれ直線形状である。しかも、これらの直線領域312、321、332はいずれも弧の長さLnよりも長い。したがって、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、直線領域322上の2つの当接点CP1、CP2がノッチNTのショルダ部位で係止され、当接部材32の一部がノッチNTに入り込むことを効果的に阻止することができる。また、当接面321は基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心量Laだけ基板S側に進んだ位置P2まで移動するものの、偏心量Laは第2実施形態における偏心量Lbよりも大幅に低減される。
【0065】
上記センタリング機構3および制御部9の組み合わせが本発明にかかるセンタリング装置の第1実施形態に相当するが、センタリング機構3における当接面311、321、331の構成はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、XY平面と交差する当接可能領域が曲線となるように、当接面311、321、331を仕上げてもよい(第3実施形態)。
【0066】
図9は本発明にかかるセンタリング装置の第3実施形態で採用された当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、当接面311、321、331が基板Sの端面Seに沿って湾曲形状を有していることであり、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
図9の(a)欄に示すように、当接面321では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する曲線領域323が当接可能領域として機能する。すなわち、曲線領域323の曲率中心が基板S側に位置するとともに曲線領域323の曲率半径が基板Sの半径よりも大きくなるように、当接面321は仕上げられている。したがって、センタリング時には、当接部材32が基板Sの端面Seに向かって移動されると、曲線領域323において基板Sの端面Seと1点または2点で当接する。つまり、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、曲線領域323上の2つの当接点CP1、CP2がノッチNTのショルダ部位で係止され、当接部材32の一部がノッチNTに入り込むのを効果的に阻止することができる。また、当接面321は基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心量Lcだけ基板S側に進んだ位置P3まで移動するものの、偏心量Lcは第1実施形態における偏心量Laよりも低減される。この点については、当接部材31の当接面311および当接部材33の当接面331についても同様である。
【0068】
ここで、上記曲率半径を多段階に変更しながら基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sに設けられたノッチNT(角度1.119゜)による偏心量を求めると、次のような結果が得られた。つまり、曲率半径が基板Sの半径に近づくにしたがって、偏心量Lは小さくなる。そして、曲率半径が基板Sの半径と一致する場合には、理論的にはノッチNTの影響を受けない。ただし、基板Sの公差を考慮すると、曲率半径を基板Sの半径と一致させることは実際に使用できない。したがって、第3実施形態では、曲線領域323の曲率半径が基板Sの半径よりも大きくなるように、当接面311、321、331が仕上げられている。
【0069】
上記第1実施形態ないし第3実施形態では、本発明の「切欠部」の一例に相当するノッチNTに対して当接部材31~33がステップS15のセンタリング動作中に当接することがある。しかしながら、次のように構成することでノッチNTの影響を排除することでき、センタリング精度をさらに高めることができる(第4実施形態)。以下、図10および図11を参照しつつ本発明に係るセンタリング装置の第4実施形態について説明する。
【0070】
図10は基板の姿勢調整により、当接部材とノッチとの位置関係が変化する様子を模式的に示した図である。例えばスピンベース21上に基板Sが載置されたとき(ステップS11)、例えば同図の(a)欄に示すように基板SのノッチNTが偏心方向D5の反対に位置していたケースについて考えてみる。第1実施形態では、偏心方向D5が仮想線VLと平行で、X1方向に向いた状態となるように、基板Sの姿勢が調整される(第1姿勢調整)。すると、同図の(b)欄に示すように、この第1姿勢調整後においては基板SのノッチNTは第1当接部材31の移動経路PT1上に位置する。したがって、センタリング動作中に、第1当接部材31がノッチNTに当接してしまう。
【0071】
ここで、第1実施形態ないし第3実施形態と同様の作用効果を得るためには、偏心方向D5が仮想線VLと平行で、X2方向に向いた状態となるように、基板Sの姿勢を調整してもよい(第2姿勢調整)。しかも、同図の(c)欄に示すように、この第2姿勢調整後においては基板SのノッチNTは当接部材31~33の移動経路PT1~PT3上のいずれにも位置しない。したがって、センタリング動作中に、当接部材31~33はいずれもノッチNTに当接せず、ノッチNTの影響を排除することができる。
【0072】
そこで、第4実施形態では、演算処理部91は、図11に示すように、装置各部を制御することで、センタリング処理の精度をさらに高めている。
【0073】
図11は本発明に係るセンタリング装置の第4実施形態の動作を示すフローチャートである。この第4実施形態が第1実施形態と大きく相違している点は、基板Sのセンタリング(ステップS15)を行う前に、以下の2つを実行している点である。つまり、相違点は、偏心方向に対するノッチNTの相対位置に関する切欠位置情報を取得する点と、当該切欠位置情報に基づいて、ノッチNTが当接部材31~33の全ての移動経路PT1~PT3から外れるように、基板Sを第1姿勢と第2姿勢との間で切り替えている点とである。その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明する。
【0074】
演算処理部91は、基板Sをスピンベース21上に載置させた(ステップS11)後で、偏心方向D5、偏心量およびノッチNTの切欠位置情報を導出する(ステップS12)。これらの情報のうちノッチNTの切欠位置情報が重要となっている。つまり、演算処理部91は、切欠位置情報を用いることで、仮想線VLに対する偏心方向D5の傾き角αだけ反対に回転させたときにノッチNTが移動経路PT1~PT3に位置するか否かを検証する(ステップS18、S19)。すなわち、仮に基板Sを第1姿勢に切り替えたときにノッチNTが移動経路PT1~PT3のいずれにも位置せず、当接部材との干渉が発生しないと判断すると、演算処理部91は、第1実施形態のステップS14と同様に、基板Sを(-α)だけ回転させて第1姿勢に調整する(ステップS141)。逆に、基板Sを第1姿勢に切り替えたときにノッチNTが移動経路PT1~PT3のいずれかに位置して当接部材との干渉が発生すると判断すると、演算処理部91は、基板Sを(180-α)だけ回転させて第2姿勢に調整する(ステップS142)。
【0075】
このように第4実施形態では、演算処理部91が、偏心方向D5が第1当接部材31の反対側、つまりX1方向側を向いた第1姿勢と、偏心方向D5が第1当接部材31、つまりX2方向側を向いた第2姿勢と、の間で選択的に切り替える、基板姿勢調整部として機能する。これにより、基板Sは、ノッチNTが移動経路PT1~PT3のいずれにも位置しない姿勢に調整される。
【0076】
この基板姿勢調整後に、演算処理部91は、第1実施形態と同様に、ベベルエッチング処理(ステップS2)を実行し、基板Sを基板処理装置10からアンローディングする。
【0077】
以上のように、第4実施形態によれば、第1実施形態ないし第3実施形態と同様に作用効果が得られるのみならず、ノッチNTの影響を排除することができる。そのため、センタリング精度をさらに高めることができる。
【0078】
上記第1実施形態ないし第4実施形態では、図5で示した基板Sのセンタリングを実行する前に基板Sの姿勢調整を行うことで高精度なセンタリング処理が可能となっている。すなわち、第1実施形態ないし第4実施形態に係るセンタリング装置および方法は、本発明の「精密位置決めモード」の一例を実行可能となっている。ここで、基板Sの姿勢調整を省略すると、その分だけ基板Sの位置決めを高速で行うことができる、つまり本発明の「高速位置決めモード」の一例を実行可能である。そこで、図2および図3に示す構成を有する基板処理装置10が精密位置決めモードまたは高速位置決めモードを選択実行した後で、ベベルエッチング処理を実行するように構成してもよい(第5実施形態)。
【0079】
図12は本発明に係るセンタリング装置の第5実施形態の動作を示すフローチャートである。この第5実施形態では、演算処理部91は、オペレータからの指令または予め設定されたレシピにしたがって、精密位置決めモードまたは高速位置決めモードを選択する(ステップS3)。そして、次のステップS4では、演算処理部91は、選択されたモードに応じて上記第1実施形態ないし第4実施形態の精密位置決めモード(ステップS1A)または高速位置決めモード(=ステップS11とステップSS15とをこの順序で実行するステップS1B)を選択実行する。その後で、ベベルエッチング処理(ステップS2)が実行される。
【0080】
このように2種類の位置決めモードを有し、選択的に実行するように構成することで、基板処理(=センタリング処理+ベベルエッチング処理)を高い汎用性で実行することができる。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、負荷トルク変動に基づき当接部材31~33による基板Sの挟み込み、つまりセンタリング処理の完了を検出しているが、その他の方法により上記検出を行ってもよい。例えば、シングル移動部35やマルチ移動部36にロードセルや歪ゲージなどのセンサを設け、当接部材31~33で基板Sを挟み込んだときに応力または歪みをセンサが検出して検出信号を出力するように構成してもよい。この場合、制御部9がセンサからの検出信号に基づいて当接部材31~33による基板Sの挟込を確認する。
【0082】
また、上記実施形態では、マルチ移動部36により2つの当接部材32、33をそれぞれD2方向(X2方向)およびD3方向(X2方向)に移動させているが、マルチ移動部36に代え、シングル移動部35と同様に構成された当接部材32用シングル移動部および当接部材33用シングル移動部を設けてもよい。
【0083】
また、このように当接部材32用シングル移動部および当接部材33用シングル移動部を設けた場合、D2方向およびD3方向の両方をX2方向に統一する必然性はなく、D2方向およびD3方向の少なくとも一方をX2方向から変更してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ベベルエッチング処理を行う基板処理装置10に装備されたセンタリング装置に対して本発明を適用しているが、本発明に係るセンタリング装置は、円板状の基板を回転させながら処理する基板処理装置に装備されるセンタリング技術全般に適用することができる。また、本発明に係るセンタリング装置を単独で用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明は、基板支持部の上面に載置された円板状の基板の中心を基板支持部の中心に一致させるセンタリング技術および当該技術を利用して基板を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
3…センタリング機構
4…処理液供給機構
9…制御部
10…基板処理装置
21…スピンベース(基板支持部)
21C…(スピンベース)の中心
23…回転駆動部
24…吸引ポンプ(吸引部)
31…第1当接部材
32…第2当接部材
33…第3当接部材
34…移動機構
37…計測部
91…演算処理部(偏心情報取得部、基板姿勢調整部、移動制御部)
211…(スピンベースの)上面
231,352,362…回転モータ
D1…移動方向(第1水平方向)
D2…移動方向(第2水平方向)
D3…移動方向(第3水平方向)
D5…偏心方向
S…基板
SC…(基板の)中心
VL…仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12