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特開2024-106622弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106622
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240801BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240801BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010987
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦明
(72)【発明者】
【氏名】岸本 亮三
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇作
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 眞司
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA21
5J097AA28
5J097BB02
5J097BB11
5J097BB15
5J097EE08
5J097EE09
5J097EE10
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097GG04
5J097GG07
5J097HA03
5J097KK05
5J097KK07
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】共振周波数のばらつきを抑えることが可能な弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】弾性波デバイス100は、支持基板10と、支持基板10上に設けられた圧電層20と、支持基板10と圧電層20との間に設けられた酸化シリコン膜14と、酸化シリコン膜14と圧電層20との間に設けられ、酸化シリコン膜14より窒素濃度が高い酸窒化シリコン膜16と、圧電層20上に設けられ、各々複数の電極指38を有し、一方の櫛型電極36の複数の電極指38の平均ピッチは圧電層20の上面と酸化シリコン膜14の下面との間隔の1/2以上である一対の櫛型電極36とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた圧電層と、
前記支持基板と前記圧電層との間に設けられた酸化シリコン膜と、
前記酸化シリコン膜と前記圧電層との間に設けられ、前記酸化シリコン膜より窒素濃度が高い酸窒化シリコン膜と、
前記圧電層上に設けられ、各々複数の電極指を有し、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチは前記圧電層の上面と前記酸化シリコン膜の下面との間隔の1/2以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
前記酸化シリコン膜は、他の元素が添加されていない、または、フッ素、ボロン、塩素、窒素、リン、および硫黄のうち少なくとも1つの元素が添加されている、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチは、前記圧電層の厚さ以上である、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記支持基板と前記酸化シリコン膜との間に設けられ、前記酸化シリコン膜より弾性波の音速が速い絶縁層を備える、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記酸窒化シリコン膜の厚さは、前記一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチの0.4倍以下である、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記酸窒化シリコン膜の厚さは、前記一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチの0.01倍以上である、請求項5に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記酸窒化シリコン膜は、酸素原子と窒素原子の合計を100原子%とした場合における窒素原子の割合が50原子%以上100原子%未満である、請求項6に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記支持基板と前記酸化シリコン膜との間に設けられた酸化アルミニウム膜を備える、請求項7に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記圧電層は、タンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である、請求項8に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
請求項1または2に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項11】
請求項10に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス、フィルタ、およびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの通信機器に用いられる弾性波デバイスとして弾性表面波共振器が知られている。周波数温度特性の向上と損失の抑制のため、支持基板と圧電層との間に酸化シリコン膜からなる温度補償層を設け、一対の櫛型電極のうちの一方の櫛型電極の電極指の平均ピッチを温度補償層と圧電層の合計厚さの1/2以上とすることが知られている(例えば、特許文献1)。また、支持基板と圧電層の間に、圧電層より音速の遅い層を設けることや、圧電層より音速の速い層と遅い層とを積層させることが知られている(例えば、特許文献2~4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-201345号公報
【特許文献2】米国特許第10020796号明細書
【特許文献3】特開2015-115870号公報
【特許文献4】国際公開第2013/047433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の櫛型電極のうちの一方の櫛型電極の電極指の平均ピッチが圧電層の上面と酸化シリコン膜の下面との間隔の1/2以上である場合、圧電層の厚さのばらつきによる共振周波数のばらつきが大きくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、共振周波数のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた圧電層と、前記支持基板と前記圧電層との間に設けられた酸化シリコン膜と、前記酸化シリコン膜と前記圧電層との間に設けられ、前記酸化シリコン膜より窒素濃度が高い酸窒化シリコン膜と、前記圧電層上に設けられ、各々複数の電極指を有し、一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチは前記圧電層の上面と前記酸化シリコン膜の下面との間隔の1/2以上である一対の櫛型電極と、を備える弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記酸化シリコン膜は、他の元素が添加されていない、または、フッ素、ボロン、塩素、窒素、リン、および硫黄のうち少なくとも1つの元素が添加されている構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチは、前記圧電層の厚さ以上である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記支持基板と前記酸化シリコン膜との間に設けられ、前記酸化シリコン膜より弾性波の音速が速い絶縁層を備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記酸窒化シリコン膜の厚さは、前記一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチの0.4倍以下である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記酸窒化シリコン膜の厚さは、前記一方の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチの0.01倍以上である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記酸窒化シリコン膜は、酸素原子と窒素原子の合計を100原子%とした場合における窒素原子の割合が50原子%以上100原子%未満である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記支持基板と前記酸化シリコン膜との間に設けられた酸化アルミニウム膜を備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記圧電層は、タンタル酸リチウム層またはニオブ酸リチウム層である構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記に記載の弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0016】
本発明は、上記に記載のフィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、共振周波数のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)から図2(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図3図3は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図4図4(a)は、実施例1および比較例に係る弾性波デバイスの共振周波数のばらつきを評価したシミュレーション1の結果を示す図、図4(b)は、図4(a)における酸窒化シリコン膜の厚さが0~0.1λの範囲を拡大した図である
図5図5(a)は、実施例1および比較例に係る弾性波デバイスの共振周波数の温度特性を評価したシミュレーション2の結果を示す図、図5(b)は、図5(a)における酸窒化シリコン膜の厚さが0~0.1λの範囲を拡大した図である。
図6図6は、実施例1に係る弾性波デバイスの共振周波数のばらつきを評価したシミュレーション3の結果を示す図である。
図7図7は、実施例1に係る弾性波デバイスの共振周波数の温度変化を評価したシミュレーション4の結果を示す図である。
図8図8は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図9図9は、実施例2に係るフィルタの回路図である。
図10図10は、実施例3に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0020】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。図1(a)では、図の明瞭化のために、IDT(Interdigital Transducer)32および反射器34にハッチングを付している。また、電極指38の配列方向をX方向、電極指38の延伸方向をY方向、支持基板10の厚さ方向をZ方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、圧電層20の結晶方位のX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向とは必ずしも対応しない。
【0021】
図1(a)および図1(b)に示すように、実施例1に係る弾性波デバイス100は、支持基板10上に絶縁層12が設けられている。絶縁層12上に酸化シリコン膜14が設けられている。酸化シリコン膜14上に酸窒化シリコン膜16が設けられている。酸窒化シリコン膜16上に接合層18を介して圧電層20が設けられている。圧電層20、接合層18、酸窒化シリコン膜16、酸化シリコン膜14、および絶縁層12の厚さをそれぞれT1、T2、T3、T4、およびT5とする。
【0022】
圧電層20上に弾性波共振器30が設けられている。弾性波共振器30は、IDT32と反射器34とを有する。反射器34はIDT32のX方向の両側に設けられている。IDT32および反射器34は、圧電層20上に金属膜22により形成される。
【0023】
IDT32は一対の櫛型電極36を備える。櫛型電極36は、複数の電極指38と、複数の電極指38が接続されたバスバー40と、を備える。一対の櫛型電極36の電極指38が交差する領域が交差領域42である。一対の櫛型電極36は、交差領域42の少なくとも一部において電極指38がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域42において複数の電極指38が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極36の電極指38の2本分のピッチがほぼ弾性波の波長となる。言い換えると、一対の櫛型電極36のうちの一方の櫛型電極36の電極指38のピッチDがほぼ弾性波の波長λとなる。反射器34はIDT32の電極指38が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより、弾性波はIDT32の交差領域42内に閉じ込められる。
【0024】
圧電層20は、例えば単結晶タンタル酸リチウム(LiTaO)層または単結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO)層であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である。
【0025】
支持基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、シリコン基板、水晶基板、石英基板、またはアルミナ基板である。サファイア基板は単結晶Al基板であり、スピネル基板は単結晶または多結晶MgAl基板であり、シリコン基板は単結晶Si基板である。水晶基板は単結晶SiO基板であり、石英基板は多結晶SiO基板であり、アルミナ基板は多結晶Al基板である。支持基板10のX方向の線膨張係数は圧電層20のX方向の線膨張係数より小さくてもよい。
【0026】
酸化シリコン膜14は、酸素(O)およびシリコン(Si)以外の他の元素が意図的には添加されていない場合でもよいし、他の元素、例えばフッ素(F)、ボロン(B)、塩素(Cl)、窒素(N)、リン(P)、および硫黄(S)のうち少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。酸化シリコン膜14は、圧電層20の弾性定数の温度係数の符号と反対の符号の弾性定数の温度係数を有する温度補償層として機能する。例えば、圧電層20の弾性定数の温度係数は負であり、酸化シリコン膜14の弾性定数の温度係数は正である。酸化シリコン膜14を伝搬する弾性波の音速は圧電層20を伝搬する弾性波の音速より遅い。例えば、酸化シリコン膜14を伝搬するバルク波の音速は圧電層20を伝搬するバルク波の音速より遅い。なお、リーキーSAW(SH波)の音速(位相速度)の大小は、バルク波の音速の大小と同じである。
【0027】
酸化シリコン膜14が酸素およびシリコン以外の他の元素が意図的には添加されていない場合、酸化シリコン膜14は酸素およびシリコンが99原子%以上を占めて構成される。酸化シリコン膜14がフッ素、ボロン、塩素、窒素、リン、および硫黄のうち少なくとも1種の元素が添加されている場合、酸化シリコン膜14はフッ素、ボロン、塩素、窒素、リン、および硫黄を1原子%より多く10原子%より少なく含み、酸素およびシリコンが90原子%以上を占めて構成される。酸化シリコンに添加される元素は、例えばSi-O結合におけるOと置換してSi-R(Rは添加元素)結合となってもよいし、Si-O結合におけるOとは置換しない場合でもよい。
【0028】
酸窒化シリコン膜16は、窒化シリコンと酸化シリコンの混合材料からなり、酸素、窒素、およびシリコン以外の他の元素が意図的には添加されていない。酸窒化シリコン膜16の窒素濃度は、酸化シリコン膜14の窒素濃度より高い。酸窒化シリコン膜16を伝搬する弾性波の音速は酸化シリコン膜14を伝搬する弾性波の音速より速い。例えば、酸窒化シリコン膜16を伝搬するバルク波の音速は酸化シリコン膜14を伝搬するバルク波の音速より速い。酸窒化シリコン膜16は酸素、窒素、およびシリコンが99原子%以上を占めて構成される。
【0029】
絶縁層12は、圧電層20および酸化シリコン膜14よりも伝搬する弾性波の音速が速い層である。例えば、絶縁層12を伝搬するバルク波の音速は、圧電層20および酸化シリコン膜14を伝搬するバルク波の音速より速い。絶縁層12は、例えば多結晶または非晶質の絶縁層であり、例えば酸化アルミニウム層、シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化シリコン層、または炭化シリコン層である。絶縁層12として材料の異なる複数の層が設けられていてもよい。
【0030】
接合層18は、酸窒化シリコン膜16と圧電層20を接合するための層である。例えば、接合層18は酸化シリコン膜14よりも伝搬する弾性波の音速が速い層である。接合層18は、例えば多結晶または非晶質であり、例えば酸化アルミニウム層、シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化シリコン層、または炭化シリコン層である。接合層18の厚さT2は、圧電層20、酸窒化シリコン膜16、および酸化シリコン膜14の機能を損なわないようにする観点から、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。接合層18としての機能を損なわないようにする観点から、厚さT2は、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましい。
【0031】
金属膜22は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはモリブデン(Mo)を主成分とする膜である。電極指38と圧電層20との間にチタン(Ti)膜またはクロム(Cr)膜などの密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指38より薄い。電極指38を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜または温度補償膜として機能してもよい。
【0032】
上記の特許文献1(特開2019-201345号公報)に記載されているように、IDT32の電極指38が励振した弾性表面波は、圧電層20の表面から2.0λ以内を伝搬する。酸化シリコン膜14が温度補償の機能を発揮するためには、弾性表面波(主モードの弾性波)のエネルギーが酸化シリコン膜14内にある程度存在することが求められる。したがって、弾性表面波のエネルギーを圧電層20から酸化シリコン膜14までの間に閉じ込める観点から、圧電層20の上面と酸化シリコン膜14の下面との間隔(T1+T2+T3+T4)は、一方の櫛型電極36の電極指38の平均ピッチDの2.0倍(2.0λ)以下が好ましく、1.5倍(1.5λ)以下がより好ましい。電極指38の平均ピッチDは、IDT32のX方向の長さを電極指38の対数(電極指38の本数の1/2)で除することで算出してもよい。
【0033】
弾性表面波のエネルギーを酸化シリコン膜14に存在させる観点から、圧電層20の厚さT1は、電極指38の平均ピッチDの1.0倍(λ)以下が好ましく、0.8倍(0.8λ)以下がより好ましい。圧電層20が薄すぎると、弾性波が励振されなくなる。よって、圧電層20の厚さT1は、電極指38の平均ピッチDの0.1倍(0.1λ)以上が好ましい。
【0034】
酸化シリコン膜14の厚さT4は、温度補償の観点から、電極指38の平均ピッチDの0.2倍(0.2λ)以上が好ましく、0.4倍(0.4λ)以上がより好ましい。酸化シリコン膜14が厚すぎると、損失が大きくなる。よって、酸化シリコン膜14の厚さT4は、電極指38の平均ピッチDの1.0倍(λ)以下が好ましく、0.8倍(0.8λ)以下がより好ましい。
【0035】
IDT32は、弾性表面波を励振するときにバルク波などの不要波も励振する。バルク波などの不要波は、圧電層20の上面から10λ以上の深さまで存在する。不要波が下方に伝搬すると、弾性波のエネルギーが漏洩し、損失が大きくなる。一方、支持基板10までの界面でバルク波が反射してIDT32に戻るとスプリアスの原因となる。
【0036】
絶縁層12を伝搬するバルク波の音速は、酸化シリコン膜14を伝搬するバルク波の音速より速い。これにより、圧電層20から酸化シリコン膜14の間に弾性波が閉じ込められ易くなる。絶縁層12を伝搬するバルク波の音速は、酸化シリコン膜14を伝搬するバルク波の音速の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.3倍以上が更に好ましい。絶縁層12を伝搬するバルク波の音速が速すぎると、絶縁層12と酸化シリコン膜14との界面でバルク波が反射され易くなってスプリアスが大きくなる恐れがある。したがって、絶縁層12を伝搬するバルク波の音速は、酸化シリコン膜14を伝搬するバルク波の音速の2.0倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましい。絶縁層12の厚さT5は、例えば電極指38の平均ピッチDの1.0倍(λ)以上でもよく、2.0倍(2.0λ)以上でもよい。
【0037】
[製造方法]
図2(a)から図2(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、上面が平坦な支持基板10を準備する。支持基板10の上面の算術平均粗さRaは例えば1nm以下である。支持基板10上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、または蒸着法などを用いて絶縁層12を成膜する。絶縁層12上に例えばCVD法、スパッタリング法、または蒸着法などを用いて酸化シリコン膜14を成膜する。例えば、酸化シリコン膜14をCVD法により成膜する場合、テトラエトキシシランガスまたはシランガスを用いてもよい。例えば、テトラエトキシシランガスまたはシランガスと六フッ化エタン(C)ガスとを用いてフッ素が添加された酸化シリコン膜14を形成してもよい。六フッ化エタンガスの代わりにフッ素ガスまたは八フッ化プロパン(C)ガスを用いてもよい。
【0038】
図2(b)に示すように、酸化シリコン膜14上に例えばCVD法、スパッタリング法、または蒸着法などを用いて酸窒化シリコン膜16を成膜する。例えば、酸窒化シリコン膜16をCVD法によって成膜する場合、テトラエトキシシランガスまたはシランガスと、窒素ガスと、酸素ガスと、を用いてもよい。酸窒化シリコンの酸素原子と窒素原子の割合を変える場合、すなわち、SiOxNyのxとyの割合を変える場合は、酸素ガスと窒素ガスの流量比を変えることで行ってもよい。
【0039】
図2(c)に示すように、酸窒化シリコン膜16上に接合層18を介して圧電基板24を接合する。接合層18を介さずに酸窒化シリコン膜16と圧電基板24を直接接合してもよい。接合には例えば表面活性化法を用いる。
【0040】
図2(d)に示すように、圧電基板24の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨し、薄層化して圧電層20とする。
【0041】
図2(e)に示すように、圧電層20上に、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、金属膜22からなる弾性波共振器30を形成する。これにより、実施例1に係る弾性波デバイス100が得られる。
【0042】
[比較例]
図3は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。図3に示すように、比較例に係る弾性波デバイス500では、酸化シリコン膜14と接合層18との間に酸窒化シリコン膜16が設けられていない。酸窒化シリコン膜16が設けられていないため、弾性表面波のエネルギーを圧電層20から酸化シリコン膜14までの間に閉じ込める観点から、圧電層20の上面と酸化シリコン膜14の下面との間隔(T1+T2+T4)は電極指38の平均ピッチDの2.0倍(2.0λ)以下となっている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0043】
比較例は、実施例1と同様な方法により製造される。このため、図2(d)のように、圧電基板24をCMPなどにより研磨して薄層化することで圧電層20を形成する。このときに、CMPなどによる研磨量のばらつきにより圧電層20の厚さにばらつきが生じることがある。なお、圧電層20の厚さのばらつきは実施例1においても生じる。
【0044】
酸化シリコン膜14は、伝搬する弾性波の音速が圧電層20よりも遅い。弾性表面波のエネルギーが酸化シリコン膜14に存在するよう、圧電層20の上面と酸化シリコン膜14の下面との間隔(T1+T2+T4)が電極指38の平均ピッチDの2.0倍(2.0λ)以下となっている場合では、圧電層20の厚さがばらつくと、共振周波数のばらつきが大きくなってしまう。
【0045】
[シミュレーション1]
実施例1および比較例に係る弾性波デバイスに対し、酸窒化シリコン膜16の厚さによって、圧電層20の厚さのばらつきによる共振周波数のばらつきがどのように変わるかを評価するシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
共通の条件
弾性波の波長λ:2.0μm
支持基板10:サファイア基板
絶縁層12:厚さが2.0λの酸化アルミニウム層
酸化シリコン膜14:厚さが0.2λのフッ素添加の酸化シリコン膜
接合層18:なし
圧電層20:厚さが0.3λのタンタル酸リチウム層
IDT32および反射器34:厚さが0.1λのアルミニウム膜
実施例1の条件
酸窒化シリコン膜16:厚さを0.01λ~1λの範囲で変化させ、酸素原子(О)と窒素原子(N)の合計に対する窒素原子(N)の割合(N/(N+O))を0.7とした酸窒化シリコン膜
【0046】
図4(a)は、実施例1および比較例に係る弾性波デバイスの共振周波数のばらつきを評価したシミュレーション1の結果を示す図、図4(b)は、図4(a)における酸窒化シリコン膜の厚さが0~0.1λの範囲を拡大した図である。図4(a)および図4(b)において、縦軸は圧電層20の厚さがばらついたときの共振周波数のばらつきを示し、横軸は酸窒化シリコン膜16の厚さを示している。共振周波数のばらつきは以下の式1を用いて算出した。すなわち、圧電層20の厚さが0.3λのときを基準の厚さ(基準厚)とし、圧電層20が基準厚の0.9倍の厚さのときの共振周波数(基準厚×0.9)と基準厚の1.1倍の厚さのときの共振周波数(基準厚×1.1)との差分の絶対値を基準厚のときの共振周波数(基準厚)で割ることで共振周波数のばらつきを算出した。
共振周波数のばらつき=|共振周波数(基準厚×0.9)-共振周波数(基準厚×1.1)|/共振周波数(基準厚)・・・(式1)
【0047】
図4(a)および図4(b)に示すように、比較例では、共振周波数のばらつきが10000ppm以上となる結果であった。これは、圧電層20の上面と酸化シリコン膜14の下面との間隔が2.0λ以下となって弾性表面波が酸化シリコン膜14を伝搬する場合、圧電層20と酸化シリコン膜14は弾性波の音速の差が大きいことから、圧電層20の厚さがばらつくと共振周波数のばらつきが大きくなったと考えられる。一方、実施例1では、酸窒化シリコン膜16を適切な厚さにすることで、圧電層20の厚さがばらついた場合でも、共振周波数のばらつきが抑えられる結果であった。例えば、酸窒化シリコン膜16の厚さを0.01λ~0.4λにすることで、比較例に比べて、圧電層20の厚さがばらついても共振周波数のばらつきを抑えられる結果であった。酸窒化シリコン膜16の厚さを0.04λとすることで、共振周波数のばらつきをほぼゼロに抑えられる結果であった。これは、酸化シリコン膜14は圧電層20より弾性波の音速が遅いが、圧電層20と酸化シリコン膜14の間に酸化シリコン膜14より弾性波の音速が速い酸窒化シリコン膜16が設けられることで、圧電層20の厚さがばらついた場合でも共振周波数のばらつきが抑えられたものと考えられる。
【0048】
[シミュレーション2]
実施例1および比較例に係る弾性波デバイスに対し、酸窒化シリコン膜16の厚さによって、共振周波数の温度特性がどのように変わるかを評価するシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
共通の条件
弾性波の波長λ:2.0μm
支持基板10:サファイア基板
絶縁層12:厚さが2.0λの酸化アルミニウム層
酸化シリコン膜14:厚さが0.2λのフッ素添加の酸化シリコン膜
接合層18:なし
圧電層20:厚さが0.3λのタンタル酸リチウム層
IDT32および反射器34:厚さが0.1λのアルミニウム膜
実施例1の条件
酸窒化シリコン膜16:厚さを0.01λ~1λの範囲で変化させ、酸素原子(О)と窒素原子(N)の合計に対する窒素原子(N)の割合(N/(N+O))を0.7とした酸窒化シリコン膜
【0049】
図5(a)は、実施例1および比較例に係る弾性波デバイスの共振周波数の温度特性を評価したシミュレーション2の結果を示す図、図5(b)は、図5(a)における酸窒化シリコン膜の厚さが0~0.1λの範囲を拡大した図である。図5(a)および図5(b)において、縦軸は共振周波数の温度係数(TCF:Temperature Coefficient of Frequency)を示し、横軸は酸窒化シリコン膜16の厚さを示している。共振周波数の温度係数(TCF)は以下の式2を用いて算出した。すなわち、温度が85℃のときの共振周波数と温度が-35℃のときの共振周波数との差分の絶対値を温度が25℃のときの共振周波数で割ることで温度係数(TCF)を算出した。
温度係数(TCF)=|共振周波数(85℃)-共振周波数(-35℃)|/共振周波数(25℃)・・・(式2)
【0050】
図5(a)および図5(b)に示すように、実施例1では、酸窒化シリコン膜16を適切な厚さにすることで、共振周波数の温度変化が抑えられる結果であった。例えば、酸窒化シリコン膜16の厚さを0.02λ~0.08λにすることで、比較例に比べて、共振周波数の温度変化を抑えられる結果であった。
【0051】
[シミュレーション3]
実施例1に係る弾性波デバイスに対し、酸窒化シリコン膜16の組成によって、圧電層20の厚さのばらつきによる共振周波数のばらつきがどのように変わるかを評価するシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
共通の条件
弾性波の波長λ:2.0μm
支持基板10:サファイア基板
絶縁層12:厚さが2.0λの酸化アルミニウム層
酸化シリコン膜14:厚さが0.2λのフッ素添加の酸化シリコン膜
接合層18:なし
圧電層20:厚さ0.3λのタンタル酸リチウム層
IDT32および反射器34:厚さが0.1λのアルミニウム膜
実施例1の条件
酸窒化シリコン膜16:厚さが0.05λで、酸素原子(О)と窒素原子(N)の合計に対する窒素原子(N)の割合(N/(N+O))を0.04~1.0の範囲で変化させた酸窒化シリコン膜
【0052】
図6は、実施例1に係る弾性波デバイスの共振周波数のばらつきを評価したシミュレーション3の結果を示す図である。図6において、縦軸は圧電層20の厚さがばらついたときの共振周波数のばらつきを示し、横軸は酸窒化シリコン膜16の酸素原子(О)と窒素原子(N)の合計に対する窒素原子(N)の割合(N/(N+O))を示している。共振周波数のばらつきは上述した式1を用いて算出した。
【0053】
図6に示すように、酸素原子と窒素原子の合計に対する窒素原子の割合(N/(N+O))が0.7付近のときに共振周波数のばらつきが小さくなる結果であった。共振周波数のばらつきを抑える観点から、酸素原子と窒素原子の合計に対する窒素原子の割合(N/(N+O))は0.5以上1.0未満の場合が好ましい結果であった。
【0054】
[シミュレーション4]
実施例1に係る弾性波デバイスに対し、酸窒化シリコン膜16の組成によって、共振周波数の温度特性がどのように変わるかを評価するシミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法を用いて行った。シミュレーション条件は以下である。
共通の条件
弾性波の波長λ:2.0μm
支持基板10:サファイア基板
絶縁層12:厚さが2.0λの酸化アルミニウム層
酸化シリコン膜14:厚さが0.2λのフッ素添加の酸化シリコン膜
接合層18:なし
圧電層20:厚さが0.3λのタンタル酸リチウム層
IDT32および反射器34:厚さが0.1λのアルミニウム膜
実施例1の条件
酸窒化シリコン膜16:厚さが0.05λで、酸素原子(О)と窒素原子(N)の合計に対する窒素原子(N)の割合(N/(N+O))を0.04~1.0の範囲で変化させた酸窒化シリコン膜
【0055】
図7は、実施例1に係る弾性波デバイスの共振周波数の温度変化を評価したシミュレーション4の結果を示す図である。図7において、縦軸は共振周波数の温度係数(TCF)を示し、横軸は酸窒化シリコン膜16の酸素原子(О)と窒素原子(N)の合計に対する窒素原子(N)の割合(N/(N+O))を示している。共振周波数の温度係数(TCF)は上述した式2を用いて算出した。
【0056】
図7に示すように、酸素原子と窒素原子の合計に対する窒素原子の割合(N/(N+O))が小さくなるほど共振周波数の温度変化は小さくなる結果であった。共振周波数の温度変化を抑える観点から、酸素原子と窒素原子の合計に対する窒素原子の割合(N/(N+O))は1.0未満が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい結果であった。
【0057】
実施例1によれば、図1(b)のように、支持基板10と圧電層20の間に酸化シリコン膜14が設けられている。圧電層20上に設けられた一方の櫛型電極36の電極指38の平均ピッチDは、圧電層20の上面と酸化シリコン膜14の下面との間隔の1/2以上となっている。これにより、弾性表面波のエネルギーを酸化シリコン膜14内に存在させることができ、共振周波数の温度特性を向上させることができる。また、酸化シリコン膜14と圧電層20との間に、窒素濃度が酸化シリコン膜14より高い酸窒化シリコン膜16が設けられている。酸化シリコン膜14は圧電層20より弾性波の音速が遅いが、酸化シリコン膜14と圧電層20の間に酸化シリコン膜14より弾性波の音速が速い酸窒化シリコン膜16が設けられることで、圧電層20の厚さがばらついた場合でも共振周波数のばらつきを抑えることができる。酸化シリコン膜14は、他の元素が添加されていない、または、フッ素、ボロン、塩素、窒素、リン、および硫黄のうち少なくとも1つの元素が添加されていてもよい。
【0058】
また、実施例1では、一方の櫛型電極36の電極指38の平均ピッチDは、圧電層20の厚さ以上である。これにより、弾性表面波のエネルギーは酸化シリコン膜14内に存在し易くなり、共振周波数の温度特性を向上させることができる。一方、弾性表面波のエネルギーが酸化シリコン膜14内に存在し易くなるため、酸窒化シリコン膜16が設けられていない比較例では、圧電層20の厚さのばらつきによる共振周波数のばらつきが大きくなるが、実施例1では酸窒化シリコン膜16が設けられているため共振周波数のばらつきを抑制することができる。
【0059】
また、実施例1では、支持基板10と酸化シリコン膜14との間に、酸化シリコン膜14より弾性波の音速が速い例えば酸化アルミニウム膜である絶縁層12が設けられている。これにより、弾性波が酸化シリコン膜14と絶縁層12との界面で反射され易くなる。このため、損失の低下を抑制することができる。
【0060】
また、実施例1において、図4(a)および図4(b)のように、酸窒化シリコン膜16の厚さT3は、一方の櫛型電極36の電極指38の平均ピッチDの0.4倍(0.4λ)以下が好ましい。これにより、酸窒化シリコン膜16が設けられていない場合に比べて、圧電層20の厚さのばらつきによる共振周波数のばらつきを抑制することができる。共振周波数のばらつきを抑制する観点から、酸窒化シリコン膜16の厚さT3は、平均ピッチDの0.1倍(0.1λ)以下が好ましく、0.08倍(0.08λ)以下がより好ましく、0.06倍(0.06λ)以下が更に好ましい。酸窒化シリコン膜16の厚さT3は、平均ピッチDの0.01倍(0.01λ)以上が好ましく、0.02倍(0.02λ)以上がより好まく、0.03倍(0.03λ)以上が更に好ましい。酸化シリコン膜14の厚さT4に対する酸窒化シリコン膜16の厚さT3の比(T3/T4)は、0.05以上0.5以下が好ましく、0.1以上0.4以下がより好ましく、0.15以上0.3以下が更に好ましい。
【0061】
また、図5(a)および図5(b)のように、共振周波数の温度特性を改善する観点からは、酸窒化シリコン膜16の厚さT3は、平均ピッチDの0.09倍(0.09λ)以下が好ましく、0.08倍(0.08λ)以下がより好ましく、0.07倍(0.07λ)以下がより好ましい。酸窒化シリコン膜16の厚さT3は、平均ピッチDの0.02倍(0.02λ)以上が好ましく、0.03倍(0.03λ)以上がより好ましい。
【0062】
また、実施例1において、図6のように、酸窒化シリコン膜16は酸素原子と窒素原子の合計を100原子%とした場合における窒素原子の割合が50原子%以上100原子%未満である場合が好ましい。これにより、圧電層20の厚さのばらつきによる共振周波数のばらつきを抑制することができる。共振周波数のばらつきを抑制する観点から、酸窒化シリコン膜16は、酸素原子と窒素原子の合計を100原子%とした場合における窒素原子の割合が55原子%以上95原子%以下の場合が好ましく、60原子%以上90原子%以下の場合がより好ましく、65原子%以上80原子%以下の場合が更に好ましい。また、図7のように、共振周波数の温度特性を改善する観点からは、酸窒化シリコン膜16は酸素原子と窒素原子の合計を100原子%とした場合における窒素原子の割合が100原子%未満の場合が好ましく、95原子%未満の場合がより好ましく、90原子%未満の場合が更に好ましい。
【0063】
[変形例]
図8は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。図8に示すように、実施例1の変形例に係る弾性波デバイス110では、複数の酸化シリコン膜14a、14b、14cと複数の酸窒化シリコン膜16a、16b、16cとが交互に積層されている。複数の酸化シリコン膜14a、14b、14cと複数の酸窒化シリコン膜16a、16b、16cのうち最も圧電層20に近い最上層は酸窒化シリコン膜16aとなっている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0064】
実施例1では、酸化シリコン膜14と酸窒化シリコン膜16がそれぞれ1層設けられている場合を例に示したが、実施例1の変形例のように、複数の酸化シリコン膜14a、14b、14cと複数の酸窒化シリコン膜16a、16b、16cとが交互に積層されている場合でもよい。この場合、複数の酸窒化シリコン膜16a、16b、16cは、組成比がそれぞれ同じ酸窒化シリコン膜であってもよいし、組成比が互いに異なる酸窒化シリコン膜であってもよい。また、複数の酸窒化シリコン膜16a、16b、16cは、膜厚がそれぞれ同じであってもよいし、異なる場合であってもよい。なお、図8では、複数の酸化シリコン膜14a、14b、14cと複数の酸窒化シリコン膜16a、16b、16cとが交互に積層される場合を例に示したが、1層の酸化シリコン膜の上下に酸窒化シリコン膜が設けられる場合や、1層の酸窒化シリコン膜の上下に酸化シリコン膜が設けられる場合でもよい。
【実施例0065】
図9は、実施例2に係るフィルタの回路図である。図9に示すように、実施例2に係るフィルタ200は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1~S4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1~P4が並列に接続されている。直列共振器S1~S4および並列共振器P1~P4の少なくとも1つに実施例1およびその変形例に係る弾性波デバイスを用いることができる。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に示したが、多重モード型フィルタ等、その他の場合でもよい。
【実施例0066】
図10は、実施例3に係るデュプレクサの回路図である。図10に示すように、実施例3に係るデュプレクサ300は、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ50が接続され、共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ52が接続されている。送信フィルタ50は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ52は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ50および受信フィルタ52の少なくとも一方を実施例2に係るフィルタ200とすることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したが、トリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0067】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…支持基板、12…絶縁層、14、14a、14b、14c…酸化シリコン膜、16、16a、16b、16c…酸窒化シリコン膜、18…接合層、20…圧電層、22…金属膜、24…圧電基板、30…弾性波共振器、32…IDT、34…反射器、36…櫛型電極、38…電極指、40…バスバー、50…送信フィルタ、52…受信フィルタ、100、110、500…弾性波デバイス、200…フィルタ、300…デュプレクサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10