(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106624
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01D 19/02 20060101AFI20240801BHJP
A01D 17/10 20060101ALI20240801BHJP
A01D 33/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A01D19/02
A01D17/10
A01D33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010989
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
【テーマコード(参考)】
2B072
【Fターム(参考)】
2B072AA03
2B072BA14
2B072CA15
2B072DA01
2B072DA05
2B072DA12
2B072EA06
(57)【要約】
【課題】 本発明者は、作業車両ユーザーのさまざまなニーズを考慮し、便利な機能がトッパー作業機またはディガーピッカー作業機のような作業車両へつぎつぎと実装される趨勢はますます加速すると考えている。しかしながら、従来の作業車両については、便利な機能を利用するときの使い勝手が必ずしもよくないことに本発明者は気付いた。
【解決手段】 前後四輪走行の車体100と、作物1000の収穫に関する作業を行う作物収穫作業ユニット900と、を備えたトッパー作業機であって、作物収穫作業ユニット900の少なくとも一部は、車体100の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されており、作物収穫作業ユニット900は、前後四輪と干渉しないトッパー作業機である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後四輪走行の車体(100)と、
作物(1000)の収穫に関する作業を行う作物収穫作業ユニット(900)と、
を備えた作業車両であって、
作物収穫作業ユニット(900)の少なくとも一部は、車体(100)の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されており、
作物収穫作業ユニット(900)は、前後四輪と干渉しないことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
作物収穫作業ユニット(900)は、作物(1000)の茎葉部分を切断する切断装置(200)と、切断装置(200)を保持する保持部材(300)と、を有し、
切断装置(200)は、水平状態で回転する二個の刃物(210)を有し、二個の刃物(210)は、平面視で回転状態の軌跡において互いに一部重なり、かつ重なり部分で互いに上下方向に段違いに構成されており、
左右方向を基準として外側の刃物(210)の回転中心は、内側の刃物(210)の回転中心と比べて前方へずれており、
切断装置(200)は、車体(100)の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている、請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
作物(1000)は、四列に植え付けられており、
水平状態で回転する二個の刃物(210)は二組設けられ、二組の刃物(210)は左右方向に並んで配置され、それぞれの組の刃物(210)の内、内側の刃物(210)同士は隣接しており、
平面視で頂部が前側になるように配置されたV字状のガイド板(400)が刃物(210)と比べて上方に設けられ、ガイド板(400)の前側の両側面は内側の二個の刃物(210)へそれぞれ向かうように配置されており、
四列に植え付けられた作物(1000)の内、内側の二列に植え付けられた作物(1000)の茎葉部分は、ガイド板(400)の前側の両側面により、それぞれの二個の刃物(210)の重なり部分へ導かれる、請求項2記載の作業車両。
【請求項4】
刃物(210)の少なくとも一方の下側には下凸状の円盤部材(500)が配置され、円盤部材(500)が作物(1000)へ当接することにより刃物(210)の上下位置は自動的に調節される、請求項3記載の作業車両。
【請求項5】
切断装置(200)は、外側の刃物(210)を回転させる、保持部材(300)と接続された外側刃物回転部材(222)と、内側の刃物(210)を回転させる、倒立U字状の接続部材(223)で外側刃物回転部材(222)と接続された内側刃物回転部材(221)と、二個の刃物(210)を回転させるための動力を発生する、内側刃物回転部材(221)へ取り付けられた動力発生部材(220)と、を有し、
動力発生部材(220)は、内側刃物回転部材(221)を基準として外側刃物回転部材(222)と反対側へ取り付けられている、請求項4記載の作業車両。
【請求項6】
刃物(210)は、刃部が先端側の刃物短辺(211)にのみ形成されている矩形形状の刃物であり、
内側の刃物(210)の刃部と外側の刃物(210)の刃部とは、二個の刃物(210)の重なり部分で両側から作物(1000)を挟み込むことにより茎葉部分を切断する、請求項5記載の作業車両。
【請求項7】
作物収穫作業ユニット(900)は、作物(1000)を収穫する収穫装置(600)と、収穫装置(600)により収穫された作物(1000)を後輪(120)の間を通って後方へ搬送する搬送装置(700)と、搬送装置(700)により搬送されてくる作物(1000)を収納する、車体(100)の後方に配置された収納装置(800)と、を有し、
収穫装置(600)は、車体(100)の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている、請求項1記載の作業車両。
【請求項8】
収穫装置(600)は、作物(1000)を掻き込む掻き込み装置(610)を有し、
搬送装置(700)は、掻き込み装置(610)により掻き込まれた作物(1000)を後方へ運ぶ第一コンベアー(710)と、第一コンベアー(710)により運ばれてくる作物(1000)を上方へくみ上げ、収納装置(800)へ収納する第二コンベアー(720)と、を有し、
掻き込み装置(610)は、第一コンベアー(710)の前部へ連結されており、
第一コンベアー(710)は、車体(100)の車体フレーム(101)または後輪駆動ケース(121)へ回動可能に連結されており、車体フレーム(101)または後輪駆動ケース(121)へ連結された上下駆動用のシリンダー(711)により上下方向に回動可能とされ、
収穫装置(600)と搬送装置(700)の動力は、後輪駆動ケース(121)から取り出され、
収納装置(800)は、リンク機構(820)により上下方向に動くことができる、請求項7記載の作業車両。
【請求項9】
掻き込み装置(610)は、第一コンベアー(710)の前部へ回動可能に連結されており、第一コンベアー(710)が回動して上昇するとき、掻き込み装置(610)は下方へ回動し、
第一コンベアー(710)は車体フレーム(101)を兼ねる後輪駆動ケース(121)へ回動可能に連結されており、回動支点の上下位置は調節可能である、請求項8記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッパー作業機またはディガーピッカー作業機のような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、走行車体の左右一側に走行車体の前端よりも前方に突出した位置から走行車体の後端側に達し、前側が下位に傾斜する野菜搬送用コンベアーを設け、走行車体の前側には、圃場で成育中あるいは圃場表面に収穫放置された野菜を適宜処理すると共に野菜搬送用コンベアーの始端側に載置供給する収穫作業者用の収穫用座席を構成し、走行車体の後側には、野菜搬送用コンベアーで搬送される収穫野菜を選別作業する選別作業部と選別後の野菜を仕分けて搭載できる選別野菜収容装置及び選別作業者用搭乗部とからなる作業用キャリヤを構成してなる野菜収穫機のような作業車両が、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、作業車両ユーザーのさまざまなニーズを考慮し、便利な機能がトッパー作業機またはディガーピッカー作業機のような作業車両へつぎつぎと実装される趨勢はますます加速すると考えている。
【0005】
しかしながら、従来の作業車両については、便利な機能を利用するときの使い勝手が必ずしもよくないことに本発明者は気付いた。
【0006】
より具体的には、たとえば、搬送コンベアーが大きくて作業車両の出力が小さいと、動力不足で作業することができず、作業部が横に装着されているので、旋回時は小回りができないことがあることに本発明者は気付いた。
【0007】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、使い勝手を向上することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、前後四輪走行の車体(100)と、
作物(1000)の収穫に関する作業を行う作物収穫作業ユニット(900)と、
を備えた作業車両であって、
作物収穫作業ユニット(900)の少なくとも一部は、車体(100)の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されており、
作物収穫作業ユニット(900)は、前後四輪と干渉しないことを特徴とする作業車両である。
【0009】
第2の本発明は、作物収穫作業ユニット(900)は、作物(1000)の茎葉部分を切断する切断装置(200)と、切断装置(200)を保持する保持部材(300)と、を有し、
切断装置(200)は、水平状態で回転する二個の刃物(210)を有し、二個の刃物(210)は、平面視で回転状態の軌跡において互いに一部重なり、かつ重なり部分で互いに上下方向に段違いに構成されており、
左右方向を基準として外側の刃物(210)の回転中心は、内側の刃物(210)の回転中心と比べて前方へずれており、
切断装置(200)は、車体(100)の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている、第1の本発明の作業車両である。
【0010】
第3の本発明は、作物(1000)は、四列に植え付けられており、
水平状態で回転する二個の刃物(210)は二組設けられ、二組の刃物(210)は左右方向に並んで配置され、それぞれの組の刃物(210)の内、内側の刃物(210)同士は隣接しており、
平面視で頂部が前側になるように配置されたV字状のガイド板(400)が刃物(210)と比べて上方に設けられ、ガイド板(400)の前側の両側面は内側の二個の刃物(210)へそれぞれ向かうように配置されており、
四列に植え付けられた作物(1000)の内、内側の二列に植え付けられた作物(1000)の茎葉部分は、ガイド板(400)の前側の両側面により、それぞれの二個の刃物(210)の重なり部分へ導かれる、第2の本発明の作業車両である。
【0011】
第4の本発明は、刃物(210)の少なくとも一方の下側には下凸状の円盤部材(500)が配置され、円盤部材(500)が作物(1000)へ当接することにより刃物(210)の上下位置は自動的に調節される、第3の本発明の作業車両である。
【0012】
第5の本発明は、切断装置(200)は、外側の刃物(210)を回転させる、保持部材(300)と接続された外側刃物回転部材(222)と、内側の刃物(210)を回転させる、倒立U字状の接続部材(223)で外側刃物回転部材(222)と接続された内側刃物回転部材(221)と、二個の刃物(210)を回転させるための動力を発生する、内側刃物回転部材(221)へ取り付けられた動力発生部材(220)と、を有し、
動力発生部材(220)は、内側刃物回転部材(221)を基準として外側刃物回転部材(222)と反対側へ取り付けられている、第4の本発明の作業車両である。
【0013】
第6の本発明は、刃物(210)は、刃部が先端側の刃物短辺(211)にのみ形成されている矩形形状の刃物であり、
内側の刃物(210)の刃部と外側の刃物(210)の刃部とは、二個の刃物(210)の重なり部分で両側から作物(1000)を挟み込むことにより茎葉部分を切断する、第5の本発明の作業車両である。
【0014】
第7の本発明は、作物収穫作業ユニット(900)は、作物(1000)を収穫する収穫装置(600)と、収穫装置(600)により収穫された作物(1000)を後輪(120)の間を通って後方へ搬送する搬送装置(700)と、搬送装置(700)により搬送されてくる作物(1000)を収納する、車体(100)の後方に配置された収納装置(800)と、を有し、
収穫装置(600)は、車体(100)の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている、第1の本発明の作業車両である。
【0015】
第8の本発明は、収穫装置(600)は、作物(1000)を掻き込む掻き込み装置(610)を有し、
搬送装置(700)は、掻き込み装置(610)により掻き込まれた作物(1000)を後方へ運ぶ第一コンベアー(710)と、第一コンベアー(710)により運ばれてくる作物(1000)を上方へくみ上げ、収納装置(800)へ収納する第二コンベアー(720)と、を有し、
掻き込み装置(610)は、第一コンベアー(710)の前部へ連結されており、
第一コンベアー(710)は、車体(100)の車体フレーム(101)または後輪駆動ケース(121)へ回動可能に連結されており、車体フレーム(101)または後輪駆動ケース(121)へ連結された上下駆動用のシリンダー(711)により上下方向に回動可能とされ、
収穫装置(600)と搬送装置(700)の動力は、後輪駆動ケース(121)から取り出され、
収納装置(800)は、リンク機構(820)により上下方向に動くことができる、第7の本発明の作業車両である。
【0016】
第9の本発明は、掻き込み装置(610)は、第一コンベアー(710)の前部へ回動可能に連結されており、第一コンベアー(710)が回動して上昇するとき、掻き込み装置(610)は下方へ回動し、
第一コンベアー(710)は車体フレーム(101)を兼ねる後輪駆動ケース(121)へ回動可能に連結されており、回動支点の上下位置は調節可能である、第8の本発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0017】
第1の本発明により、使い勝手を向上することが可能である。
【0018】
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0019】
第3の本発明により、第2の本発明の効果に加えて、利便性をさらに向上することが可能である。
【0020】
第4の本発明により、第3の本発明の効果に加えて、作業者の負担を軽減することが可能である。
【0021】
第5の本発明により、第4の本発明の効果に加えて、構成を簡素化することが可能である。
【0022】
第6の本発明により、第5の本発明の効果に加えて、構成をさらに簡素化することが可能である。
【0023】
第7の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0024】
第8の本発明により、第7の本発明の効果に加えて、利便性をさらに向上することが可能である。
【0025】
第9の本発明により、第8の本発明の効果に加えて、作業者の負担を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その一)
【
図2】本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その二)
【
図3】本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その三)
【
図4】本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その四)
【
図5】本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その五)
【
図6】本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その六)
【
図7】本発明における実施の形態のトッパー作業機の切断装置近傍の説明図(その一)
【
図8】本発明における実施の形態のトッパー作業機の切断装置近傍の説明図(その二)
【
図9】(a)本発明における実施の形態のトッパー作業機の切断装置近傍の説明図(その三)、(b)本発明における実施の形態のトッパー作業機の切断装置近傍の説明図(その四)
【
図10】本発明における実施の形態のトッパー作業機の切断装置近傍の説明図(その五)
【
図11】本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その一)
【
図12】本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その二)
【
図13】本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その三)
【
図14】本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その四)
【
図15】本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その五)
【
図16】本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その六)
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあり、透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0029】
(1)はじめに、
図1から10を主として参照しながら、本発明における実施の形態のトッパー作業機の構成および動作について具体的に説明する。
【0030】
ここに、
図1から6は本発明における実施の形態のトッパー作業機の説明図(その一から六)であり、
図7、8、9(a)および9(b)、ならびに10は本発明における実施の形態のトッパー作業機の切断装置200近傍の説明図(その一から五)である。
【0031】
本実施の形態のトッパー作業機は、本発明における作業車両の具体的な例である。
【0032】
作物1000の収穫に関する作業を行う作物収穫作業ユニット900の少なくとも一部は、前後四輪走行の車体100の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている。
【0033】
作物収穫作業ユニット900は、前後四輪と干渉しない。
【0034】
つまり、たとえば、小型電動トラクターの機体のような車体100をベースに、前輪110と後輪120との間に玉ねぎ収穫作業ユニットとしての作物収穫作業ユニット900を備えた小型電動収穫機のような構成が採用される。
【0035】
かくして、コンパクトな収穫機構成のみならず、電動作業機仕様であって出力が小さいので、動力ロスの少ない構成を実現することができる。そして、車体100の中央で下側に作業機装備が行われるレイアウトが採用されるので、それに適合した本機作業機レイアウトを実現することができる。特に、四輪構成と作業機構成の関係性が、重視される。
【0036】
旋回または搬送移動などが行われるとき、圃場表面との引っ掛かりなどが発生しないように、作物収穫作業ユニット900は上昇させられて車体100の内部へ収納されてもよい。
【0037】
作物収穫作業ユニット900は、作物1000の茎葉部分を切断する切断装置200と、切断装置200を保持する保持部材300と、を有する。
【0038】
その下端が切断装置200へ取り付けられている保持部材300の上端は、車体フレーム101などのしっかりした個所へ取り付けられており(
図4参照)、たとえば、前輪アクスル部1001へ取り付けられていてもよい(
図3参照)。
【0039】
カッターユニットとして機能する切断装置200の二個の刃物210は、平行リンクユニットを構成する保持部材300のリンク320で支持されているので、刃物210の姿勢は過度に変化しにくく圃場表面と平行になりやすい。引っ張りスプリングであるスプリング1002(
図3参照)、またはアクチュエーターシリンダーであるシリンダー310(
図4参照)などが左右のリンク320の各々へ取り付けられており、保持部材300の姿勢が急激に変化しないように保持されるので、玉ねぎのような作物1000の圧し潰しなどは発生しにくい。
【0040】
切断装置200は、水平状態で回転する二個の刃物210を有し、二個の刃物210は、平面視で回転状態の軌跡において互いに一部重なり、かつ重なり部分で互いに上下方向に段違いに構成されている。
【0041】
左右方向を基準として外側の刃物210の回転中心は、内側の刃物210の回転中心と比べて前方へずれている。
【0042】
切断装置200は、車体100の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている。
【0043】
すなわち、この態様(
図1から10参照)においては、切断装置200は上述された作物収穫作業ユニット900の少なくとも一部に含まれる。
【0044】
図3に示されているように、作物1000は、四列に植え付けられている。
【0045】
四列の植付け条の作物1000の内、隣接している内側および外側の左右二列の植付け条の作物1000の茎葉部分は、後に詳述されるように、掻き込み搬送により二個の刃物210の左右重なり部分へそれぞれ引き込まれて切断される。
【0046】
図7に示されているように、水平状態で回転する二個の刃物210は二組設けられ、二組の刃物210は左右方向に並んで配置され、それぞれの組の刃物210の内、内側の刃物210同士は隣接している。
【0047】
それぞれの組の刃物210は一体的に設けられているので、協働する二個の刃物210の姿勢追従が上下方向および左右方向における作物1000の生育状態などに応じて行われる。そして、上述された内側の刃物210同士は、平面視においてラップしていても、上下方向に段違いに構成されているので、二組の刃物ユニットの独立的なフローティング動作は互いに干渉しない。
【0048】
平面視で頂部が前側になるように配置されたV字状のガイド板400が刃物210と比べて上方に設けられ、ガイド板400の前側の両側面は内側の二個の刃物210へそれぞれ向かうように配置されている。
【0049】
四列に植え付けられた作物1000の内、内側の二列に植え付けられた作物1000の茎葉部分は、ガイド板400の前側の両側面により、それぞれの二個の刃物210の重なり部分へ導かれる。
【0050】
このような作物1000の分草および集草を行うガイド体としてのガイド板400は、上述された二組の刃物ユニットのフローティング動作と追従するように、二組の刃物ユニットの少なくとも一方により支持されている。
【0051】
刃物210の少なくとも一方の下側には下凸状の円盤部材500が配置され、円盤部材500が作物1000へ当接することにより刃物210の上下位置は自動的に調節される。
【0052】
円盤部材500は、上下方向が軸方向である、刃物210の回転軸の下端へ回転可能に遊嵌されているが、円盤部材500の上下方向の動きはストッパーなどにより抑制される。もちろん、円盤部材500は、刃物210の回転軸の下端へ固定されていてもよい。
【0053】
いわゆるピッキング作業の前に玉ねぎの茎葉部分を切断するためのトッパーユニットとして機能する切断装置200の刃物210は円盤部材500の刃物フローティング機能により玉ねぎの頭部カットを正確に行うので、刃物接触にともなう玉ねぎの玉の損傷が発生しにくい。
【0054】
つまり、たとえば、作業車両の上方から見て、前進方向に対して、ブレード状の刃物210を逆V字型に配備し、各々の刃物210の回転の重なり部を段違いにする作業機としての切断装置200を備える構成と、中央部には前進方向に対して、正V字となるガイドとしてのガイド板400を備える構成と、の組み合わせにより、各々の刃物210の回転の重なり部から、切断した作物1000の部位を排出できる機構とする。刃物210の下方に曲面を持つカップのような円盤部材500を配備し、作物1000が円盤部材500に接触する抵抗を利用して、刃物210の上下位置を微調整する。
【0055】
切断装置200は、外側の刃物210を回転させる、保持部材300と接続された外側刃物回転部材222と、内側の刃物210を回転させる、倒立U字状の接続部材223で外側刃物回転部材222と接続された内側刃物回転部材221と、二個の刃物210を回転させるための動力を発生する、内側刃物回転部材221へ取り付けられた動力発生部材220と、を有する。
【0056】
接続部材223は中空な部材であり、モーターのような動力発生部材220の駆動力を伝動するためのプーリ機構およびベベルギア機構などのような機構が接続部材223の内部へ収納されている。動力発生部材220は内側刃物回転部材221へ取り付けられているが、内側の刃物210の回転軸は、たとえば、接続部材223の水平部へ収納されたプーリ機構により外側の刃物210の回転軸と連動させられるので、外側の刃物210の回転が内側の刃物210の回転と同期するように行われる。
【0057】
動力発生部材220は、内側刃物回転部材221を基準として外側刃物回転部材222と反対側へ取り付けられている。
【0058】
二個の刃物210の重なり部分と比べて、動力発生部材220は茎葉部分の排出位置側へ後退するように設けられているので、動力発生部材220への茎葉部分の衝突にともなう抵抗力の発生が惹起されにくい。
【0059】
リンク320の支持アーム下端は、前方へずれている切断装置200の最外側カッター駆動軸部である、外側刃物回転部材222へ取り付けられているので、リンク320は茎葉部分のいわゆる集草ガイド体として機能することができるのみならず、大きなリンクアーム長は不要である。
【0060】
図9(b)に示されているように、刃物210は、刃部が先端側の刃物短辺211にのみ形成されている矩形形状の刃物である。
【0061】
刃物210の回転軸は、矩形形状の中心部を貫通しているが、矩形形状の一端部を貫通していてもよい。刃物210の回転軸が矩形形状の中心部を貫通している態様においては、望ましくは、刃部が両端部の刃物短辺211に形成されているが、刃物210の回転軸が矩形形状の一端部を貫通している態様においては、刃部が、上述された一端部とは相異なる、他端部の刃物短辺211にのみ形成されていてもよい。
【0062】
内側の刃物210の刃部と外側の刃物210の刃部とは、二個の刃物210の重なり部分で両側から作物1000を挟み込むことにより茎葉部分を切断する。
【0063】
左右方向を基準として外側の刃物210の回転中心が内側の刃物210の回転中心と比べて前方へずれていることにより、二個の刃物210の頂部が描く円軌跡の交わりにより生じる弓形の弦の向きである、二個の刃物210の重なり部分の向きは矢印Aで示されているように平面視において後ろ外側に向かって斜めになっており、切断された茎葉部分が畦溝へ排出されやすい。
【0064】
このように、二個の刃物210はいわゆる鉈刃のような矩形形状の刃物であり、内側および外側の左右二列の植付け条の玉ねぎの茎葉部分は掻き込み搬送により二個の刃物210の左右重なり部分へそれぞれ引き込まれるが、刃物210が円形形状の刃物であっても、茎葉部分がこのような掻き込み搬送により二個の刃物210の重なり部分へ引き込まれて切断される構成も考えられる。
【0065】
もちろん、刃部が、刃物短辺211ではない、刃物長辺のような部分に形成されていても、茎葉部分が掻き込み搬送により二個の刃物210の重なり部分へ引き込まれて切断される構成も考えられる。茎葉部分は、二個の刃物210の重なり部分へ引き込まれながら切断されてもよい。
【0066】
つまり、たとえば、作物1000の茎葉の不要部位の切断にともない、不要物が圃場に排出されるとき、作物1000の上に排出するのではなく畦溝へ排出することで、次工程の収穫作業を良好に行うことができる。切断装置200は作業車両の下方にあり、運転者は刃物210の切断位置を確認することができないので、円盤部材500との接触により作物1000の表面を保護しながら、刃物210の切断位置を適切に調節することができる。
【0067】
玉ねぎの玉位置を検出する玉ねぎ位置センサー(図示省略)が、切断装置200と比べて前方へ設けられていてもよい。それぞれの植付け条の玉ねぎ位置センサーの左右位置は、作付け条件などに応じて調節可能であってもよい。
【0068】
玉ねぎの玉位置の検出は、周囲の土、マルチ、または茎葉などの濃い色と比べて薄い色である、白い色の玉に対して色コントラスト差を利用することにより行われるので、センサー構成は比較的に簡易であってもよい。
【0069】
茎葉が被さった玉ねぎの玉の視認が困難である場合においては、視認可能である玉ねぎの玉に基づいて、仮想のトレースラインが算出されてもよい。自動操舵機能が走行部の操舵操置へ付与され、条合わせ作業は作物1000に対するトレースを利用して行われてもよい。
【0070】
作物色による色コントラスト差の検出が困難である場合においては、トレースがマルチ中央に設けられたマルチ中央ラインを基準として行われてもよい。作物1000がマルチ中央ラインに対してずれている場合などにおいては、マルチライン検出センサーの位置は意図的にずらされてもよい。
【0071】
上述された検出センサー群は、いわゆるバンパーマウントによりマウントされてもよいし、前輪アクスル部1001を利用することによりマウントされてもよい。
【0072】
マルチライン検出センサーは距離センサーであり、マルチラインまでの検出距離が急激に大きくなってマルチラインがかなり遠くに位置すると認識される場合などにおいては、畦終い到達の判断が行われてもよい。畦終いでの走行部停止が行われるとともに、その後のコントロールがどのように行われるべきであるのかの判断は一旦オペレーターに委ねられてもよい。
【0073】
オペレーターが主変速ペダルまたはレバーで行う前進操作は、自動的な制御動作に優先してもよい。
【0074】
玉ねぎ位置センサーおよびマルチライン検出センサーの検出範囲の形状は前後方向が長手方向である形状であり、複数個の玉ねぎの玉がまとめて検出されて方向決めが行われることにより、誤差の発生が抑制されてもよい。玉ねぎ玉位置センサーは全ての植付け条について設けられていてもよいが、玉ねぎ玉位置センサーが中央の二本の植付け条についてのみ設けられており、誤差の発生を惹起しやすい畝肩部の転げ落ちそうな玉ねぎの検出は省略されてもよい。
【0075】
(2)つぎに、
図11から16を主として参照しながら、本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の構成および動作について具体的に説明する。
【0076】
ここに、
図11から16は、本発明における実施の形態のディガーピッカー作業機の説明図(その一から六)である。
【0077】
本実施の形態のディガーピッカー作業機は、本発明における作業車両の具体的な例である。
【0078】
作物収穫作業ユニット900は、作物1000を収穫する収穫装置600と、収穫装置600により収穫された作物1000を後輪120の間を通って後方へ搬送する搬送装置700と、搬送装置700により搬送されてくる作物1000を収納する、車体100の後方に配置された収納装置800と、を有する。
【0079】
収穫装置600は、車体100の下方であって、前後四輪の間の空間に配置されている。
【0080】
すなわち、この態様(
図11から16参照)においては、収穫装置600は上述された作物収穫作業ユニット900の少なくとも一部に含まれる。たとえば、搬送装置700については、一部が前後四輪の間の空間に配置されていない。
【0081】
つまり、たとえば、小型四輪トラクターの車体100をベースに、前輪110と後輪120との間に野菜収穫装置としての収穫装置600を備え、車体100の後方部に収納装置800を備えた。収穫装置600は車体100の中央部に配備され、車体100の下方位置から地上までの高さにあり、収穫装置600の上下稼働する距離を含めた車高を確保する構成をとる。作業機としての収穫装置600は、前輪110の操舵の範囲外にあり、前輪110と後輪120との間の内側幅の範囲以下にある。収穫物搬送装置としての搬送装置700は、後輪120の間を抜け、高さ方向は作物1000が搬送装置700の上を搬送するに必要な寸法を持ち、車体100の後方部に、たとえば、座席後方部に設けられた収納部としての収納装置800の収納ケース810に作物1000が落下するように配備されている。
【0082】
かくして、四輪の作業車両の側面で、作業車両の前方より前部分から、作業車両の後方を超える部位に収穫搬送コンベアーを配備した構成ではなく、収穫装置600の収穫部が車体100の中央で下方にあり、収納装置800が車体100の中央で後方にある構成を採用することで、小型本体の車体100でもバランス良く収穫することができる。
【0083】
収穫装置600は、作物1000を掻き込む掻き込み装置610を有する。
【0084】
搬送装置700は、掻き込み装置610により掻き込まれた作物1000を後方へ運ぶ第一コンベアー710と、第一コンベアー710により運ばれてくる作物1000を上方へくみ上げ、収納装置800へ収納する第二コンベアー720と、を有する。
【0085】
掻き込み装置610は、第一コンベアー710の前部へ連結されている。
【0086】
第一コンベアー710は、車体100の車体フレーム101または後輪駆動ケース121へ回動可能に連結されており、車体フレーム101または後輪駆動ケース121へ連結された上下駆動用のシリンダー711により上下方向に回動可能とされる。
【0087】
第一コンベアー710および第二コンベアー720の内、第一コンベアー710のみが上下方向に回動し、第二コンベアー720は車体100へ固定されているので、コンベアー回動機構が複雑にならず、簡素な構成が実現される。
【0088】
第一コンベアー710の上下駆動用のシリンダー711はいわゆる後輪車高上げケースとして機能する後輪駆動ケース121の前方からマウントされ、左右方向における空きスペースが有効に利用されるので、左右幅が全体的に小さく抑えられる。第一コンベアー710の回動支持フレームは、たとえば、後輪駆動ケース121を利用することにより構成される。
【0089】
収穫装置600と搬送装置700の動力は、後輪駆動ケース121から取り出される。
【0090】
より具体的には、いわゆるハイクリアランストラクターが母体として採用され、掘り取りのためのコンベアーである第一コンベアー710、およびくみ上げのためのコンベアーである第二コンベアー720が、搬送装置伝動ギヤケース730を介して後輪駆動ケース121からの動力供給が行われる二つのコンベアーとして、設けられる。
【0091】
第二コンベアー720はトラクター運転席の背面において僅かに後方へ傾斜しながら立ち上がっており、重量が比較的に大きい部材である第二コンベアー720のいわゆるオーバーハング量が小さく抑えられるので、車体100の安定性が保証される。
【0092】
収納装置800は、リンク機構820により上下方向に動くことができる。
【0093】
第二コンベアー720の後方へ作物1000の収容体として設けられた収納装置800の後部の形状はいわゆる切り上げ形状であるので、畝越えまたは搬送車両への積み降ろしのとき、収納ケース810の引っ掛かりなどは発生しにくい。
【0094】
つまり、たとえば、前方に掻き込み装置610、中央は搬送用のローラー式コンベアーである第一コンベアー710、後方はくみ上げ式のチェーンコンベアーである第二コンベアー720を配備した収穫装置600を作業車両の下方に備える。収穫装置動力は、後方車輪である後輪120のチェーンケースである後輪駆動ケース121より取り出す。収穫装置高さに関しては、リンク機構820の左右のシリンダーであるシリンダー821の伸縮により、地上との高さを変更できる。第二コンベアー720の後方に備えた収納部である収納装置800は、フレーム822などを有するリンク機構であるリンク機構820により上下できる。
【0095】
かくして、作物1000を圃場から掘り出し、収納装置800までに搬送する収穫装置600をコンパクトに配備するための動力の取り出し、およびリンク機構820の構成を成立させる。
【0096】
図14に示されているように、掻き込み装置610は、第一コンベアー710の前部へ回動可能に連結されており、第一コンベアー710が回動して上昇するとき、掻き込み装置610は下方へ回動する。
【0097】
より具体的には、回動アーム1003を利用することにより第一コンベアー710の前側へ設けられた掻き込み装置610は、上下方向において回動可能であり、第一コンベアー710が矢印Bの向きに上昇されているとき、矢印Cの向きに相対的に下降していわゆる走行部腹下へフラットに収納される。
【0098】
第一コンベアー710は車体フレーム101を兼ねる後輪駆動ケース121へ回動可能に連結されており、回動支点の上下位置は調節可能である。
【0099】
より具体的には、第一コンベアー710の回動支点位置は後輪駆動ケース121を基準として上下方向において移動可能であり、いわゆるコンベアー作用高さの基準が畦高さに応じて変更される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明における作業車両は、使い勝手を向上することができ、トッパー作業機またはディガーピッカー作業機のような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0101】
100 車体
101 車体フレーム
110 前輪
120 後輪
121 後輪駆動ケース
200 切断装置
210 刃物
211 刃物短辺
220 動力発生部材
221 内側刃物回転部材
222 外側刃物回転部材
223 接続部材
300 保持部材
310 シリンダー
320 リンク
400 ガイド板
500 円盤部材
600 収穫装置
610 掻き込み装置
700 搬送装置
710 第一コンベアー
711 シリンダー
720 第二コンベアー
730 搬送装置伝動ギヤケース
800 収納装置
810 収納ケース
820 リンク機構
821 シリンダー
822 フレーム
900 作物収穫作業ユニット
1000 作物
1001 前輪アクスル部
1002 スプリング
1003 回動アーム
A、B、C 矢印