(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106629
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】パネル
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G10K11/16 130
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010998
(22)【出願日】2023-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】517400269
【氏名又は名称】株式会社コア
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒倉 昌和
(72)【発明者】
【氏名】俣野 祐美
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】青木 巧貴
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA02
5D061AA16
5D061AA23
5D061BB02
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】生産性に優れた調音パネルを提供する。
【解決手段】平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部Hが形成された板層10aと、板層10aの一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材13とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層と、
上記板層の一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材とを備えていることを特徴とする調音パネル。
【請求項2】
請求項1に記載された調音パネルにおいて、
上記板層と上記複数の第1棒材との間には、該板層を覆うように通気性を有し、上記複数の開口部を遮蔽するシート材が設けられていることを特徴とする調音パネル。
【請求項3】
請求項2に記載された調音パネルにおいて、
上記シート材は、不織布又は織布により形成されていることを特徴とする調音パネル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載された調音パネルにおいて、
上記板層は、木質材料により、平面視で矩形状に設けられ、
上記複数の開口部は、上記板層の1辺に対して、15°~75°で交差するように設けられていることを特徴とする調音パネル。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1つに記載された調音パネルにおいて、
上記複数の開口部は、複数の貫通孔によりそれぞれ形成されていることを特徴とする調音パネル。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1つに記載された調音パネルにおいて、
上記複数の開口部は、複数の切り欠きによりそれぞれ形成されていることを特徴とする調音パネル。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1つに記載された調音パネルにおいて、
上記各第1棒材は、上記板層側が開口するようにU字状の横断面を有し、光源が内部に設けられていることを特徴とする調音パネル。
【請求項8】
請求項7に記載された調音パネルにおいて、
上記各第1棒材は、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により形成されていることを特徴とする調音パネル。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1つに記載された調音パネルにおいて、
上記板層は、平面視で矩形状に設けられ、
上記板層の対向する両端部には、互いに平行に延びるように一対の第2棒材が設けられ、
上記複数の第1棒材は、上記一対の第2棒材上に設けられていることを特徴とする調音パネル。
【請求項10】
請求項9に記載された調音パネルにおいて、
上記板層は、板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により形成され、
上記複数の第1棒材及び上記一対の第2棒材の少なくとも一部は、上記くり抜き加工又は上記打ち抜き加工の破材の切削加工により形成されていることを特徴とする調音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築空間において、良好な音環境を形成するために、音響吸音材や音響拡散材等を用いて、室内音響を調整することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1枠材内に複数の第1棒材が互いに平行に固定された第1格子枠と、第2枠材内に複数の第2棒材が互いに平行に固定されて第1格子枠に積層された第2格子枠とを備え、第1枠材と第2枠材との重なり合う位置を変えることにより、吸音率及び乱反射率を調整することが可能な調音パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示された調音パネルでは、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが格子枠の層数だけ必要になり、生産性に劣るので、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性に優れた調音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る調音パネルは、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層と、上記板層の一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層の一方の表面側において、複数の第1棒材を互いに平行に配置させるだけで2層の格子構造を有する調音パネルが構成され、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが不要であるので、生産性に優れた調音パネルを提供することができる。
【0009】
上記板層と上記複数の第1棒材との間には、該板層を覆うように通気性を有し、上記複数の開口部を遮蔽するシート材が設けられていてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、板層と複数の第1棒材との間には、板層を覆うように通気性を有し、板層に形成された複数の開口部を遮蔽するシート材が設けられているので、板層の一方の表面側から複数の開口部が見え難くなり、吸音性能や拡散性能を損なうことなく、調音パネルの見映えを向上させることができる。
【0011】
上記シート材は、不織布又は織布により形成されていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、シート材が不織布又は織布により形成されているので、板層の一方の表面にシート状の不織布又は織布を貼付することにより、調音パネルにおいて、シート材の透音性及び遮蔽性を確保することができる。
【0013】
上記板層は、木質材料により、平面視で矩形状に設けられ、上記複数の開口部は、上記板層の1辺に対して、15°~75°で交差するように設けられていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、平面視で矩形状の木質材料からなる板層に形成された複数の開口部が板層の1辺に対して15°~75°で交差するように設けられているので、板層の1辺に沿って複数の第1棒材を配置させることにより、複数の開口部を複数の第1棒材に対しても15°~75°で交差させることができる。
【0015】
上記複数の開口部は、複数の貫通孔によりそれぞれ形成されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、複数の開口部が複数の貫通孔によりそれぞれ形成されているので、例えば、NC(Numerical Control)ルーター加工機やレーザー加工機等でくり抜き加工を行って、板材に複数の貫通孔を形成することにより、複数の開口部が形成された板層を準備することができる。
【0017】
上記複数の開口部は、複数の切り欠きによりそれぞれ形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、複数の開口部は、複数の切り欠きによりそれぞれ形成されているので、例えば、回転鋸等で切断加工を行って、板材に複数の切り欠きを形成することにより、複数の開口部が形成された板層を準備することができる。
【0019】
上記各第1棒材は、上記板層側が開口するようにU字状の横断面を有し、光源が内部に設けられていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、板層側が開口するようにU字状の横断面を有する各第1棒材に光源が内蔵されているので、光源からの光やその反射光等が板層の一方の表面側から視認され、調音パネルの演出性を向上させることができる。
【0021】
上記各第1棒材は、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により形成されていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により各第1棒材が形成されているので、各第1棒材の強度を確保して各第1棒材の軽量化を図ることができる。
【0023】
上記板層は、平面視で矩形状に設けられ、上記板層の対向する両端部には、互いに平行に延びるように一対の第2棒材が設けられ、上記複数の第1棒材は、上記一対の第2棒材上に設けられていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、平面視で矩形状の板層の対向する両端部に互いに平行に延びるように一対の第2棒材が設けられ、それらの一対の第2棒材上に複数の第1棒材が設けられているので、板層の(一方の表面における対向する)両端部に一対の第2棒材を設けた場合には、板層と複数の第1棒材とを離間させた状態で2層の格子構造を構成することができ、板層の対向する両端部(の一対の側面)に一対の第2棒材を設けた場合には、板層と複数の第1棒材とを接近させた状態で2層の格子構造を構成することができる。
【0025】
上記板層は、板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により形成され、上記複数の第1棒材及び上記一対の第2棒材の少なくとも一部は、上記くり抜き加工又は上記打ち抜き加工の破材の切削加工により形成されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、複数の第1棒材及び上記一対の第2棒材の少なくとも一部が、板層となる板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により生じた破材の切削加工により形成されているので、板層となる板材を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層と、その板層の一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材とを備えているので、生産性に優れた調音パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る調音パネルの平面図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿った調音パネルの断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る調音パネルを構成する木質板層の平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る調音パネルを構成する木質板層の変形例の平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る調音パネルにおいて、具体的に行った実験例1~3における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る調音パネルの平面図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線に沿った調音パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0030】
《第1の実施形態》
図1~
図5は、本発明に係る調音パネルの第1の実施形態を示している。ここで、
図1は、本実施形態の調音パネル20aの平面図である。また、
図2は、
図1中のII-II線に沿った調音パネル20aの断面図である。また、
図3は、調音パネル20aを構成する木質板層10aの平面図である。また、
図4は、調音パネル20aを構成する木質板層10aの変形例としての木質板層10bの平面図である。
【0031】
調音パネル20aは、
図1及び
図2に示すように、板状の板層として設けられた木質板層10aと、木質板層10a上に設けられたシート材11と、シート材11上に設けられた一対の第2棒材12と、一対の第2棒材12上に設けられた複数の第1棒材13とを備えている。
【0032】
木質板層10aは、例えば、MDF、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質材料により、厚さ12mm程度×幅400mm程度×長さ900mm程度の平面視で矩形状に設けられている。また、木質板層10aには、
図1~
図3に示すように、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部として複数の貫通孔Hが設けられている。ここで、複数の貫通孔Hは、例えば、30mm程度の間隔で30mm程度の幅に形成され、
図1及び
図3に示すように、木質板層10aの1辺(短辺)に対して、15°~75°程度の角度θで交差するように設けられている。なお、木質板層10aは、例えば、建築物内の壁にねじ止め等により固定されている。
【0033】
なお、本実施形態では、複数の貫通孔Hが設けられた木質板層10aを例示したが、木質板層10aの代わりに、
図4に示すように、複数の切り欠きCが設けられた木質板層10bを用いてもよい。具体的に、木質板層10aと同様に、例えば、MDF、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質材料により形成された木質板層10bには、
図4に示すように、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部として複数の切り欠きCが設けられている。ここで、複数の貫通孔Hは、NCルーター加工機やレーザー加工機等でくり抜き加工、又はトムソン刃等による打ち抜き加工により安価に生産性良く形成され、複数の切り欠きCは、回転鋸等で切断加工により安価に生産性良く形成される。そして、くり抜き加工や切断加工により発生した木質板材(例えば、インシュレーションボード等)の破材は、木質板材を製造する際の原料に再利用されてもよい。また、木質板材等の板材の打ち抜き加工やくり抜き加工により生じた破材を切削加工し、第1棒材13や第2棒材12としてもよい。これにより、厚い板材を使用した場合であっても、その破材を有効に活用することができる。
【0034】
また、本実施形態では、板層として木質板層10a及び10bを例示したが、板層は、プラスチック製板、無機フィラーが添加された樹脂板等の樹脂製の板材、ロックウール繊維板、石膏ボード等の無機板材、アルミニウム製板材等により形成されていてもよい。ここで、木質板材、無機フィラーが添加された樹脂板、ロックウール繊維板等の柔らかい材料であれば、打ち抜き加工やくり抜き加工を容易に行うことができ、プラスチック製板、石膏ボード、アルミニウム製板材等の硬い材料であれば、型での成型や鋳造等で製造することができるので、抜いた破材を発生させなくすることができる。
【0035】
シート材11は、
図2に示すように、木質板層10aと複数の第1棒材13との間において、木質板層10aの一方の表面を覆うように設けられ、木質板層10aの一方の表面に貼り付けられている。ここで、シート材11は、例えば、厚さ200μm~2mm程度の不織布又は織布により形成され、透音性を有している。また、シート材11は、少なくとも表面が黒色等の暗色に形成され、木質板層10aに形成された複数の貫通孔Hを遮蔽するように設けられている。
【0036】
一対の第2棒材12は、
図1及び
図2に示すように、木質板層10aの一方の表面における対向する両端部(一対の長辺に沿う端部)に互いに平行に延びるように設けられている。ここで、各第2棒材12は、例えば、アルミニウム材により形成され、
図2に示すように、第1棒材13側が開口するようにC字状の横断面を有し、光源L用の配線が内部に組み込まれている。なお、一対の第2棒材12は、木質板層10aの一方の表面の対向する両端部にねじ止め等により固定されている。
【0037】
複数の第1棒材13は、例えば、幅30mm程度×厚さ30mm程度の大きさにそれぞれ形成され、
図1及び
図2に示すように、木質板層10aの一方の表面側(
図2中の上側)に、例えば、90mm程度の間隔で互いに平行に配置するように設けられている。また、各第1棒材13は、木質板層10a側が開口するようにU字状の横断面を有し、LED(light emitting diode)ランプ等の光源L(
図2参照)が内部に設けられている。ここで、各第1棒材13は、例えば、木目調の樹脂製の化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により形成されている。また、各第1棒材13の両端部は、
図1及び
図2に示すように、一対の第2棒材12上に設けられている。なお、各第1棒材13の両端部は、例えば、一対の第2棒材12にスライド移動可能に且つその長さ方向の任意の位置に固定可能にそれぞれ設けられた一対の取付具にねじ止め等により固定されている。
【0038】
上記構成の調音パネル20aは、例えば、建築物内の壁に取り付けて、表面側(室内側)の複数の第1棒材13による格子構造と、裏面側(壁側)の複数の貫通孔Hによる格子構造との重なりにより、室内音響を調整するように構成されている。
【0039】
次に、本実施形態の調音パネル20aについて、具体的に行った実験について説明する。ここで、
図5は、本実施形態の調音パネル20aにおいて、具体的に行った実験例1~3における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。なお、
図5のグラフでは、実線の線aが実験例1における結果を示し、破線の線bが実験例2における結果を示し、1点鎖線の線cが実験例3における結果を示している。
【0040】
まず、実験例1では、本実施形態の調音パネル20aに相当する試験体を残響室にセットして、吸音率を測定した。具体的には、厚さ12mm×幅400mm×長さ900mmのMDFに30mmの間隔で30mmの幅の複数の貫通孔(H)が短辺に対して30°で交差するように形成された木質板層10a(
図3参照)を準備し、その木質板層10a上に厚さ1.5mmの織布からなるシート材11を配置し、そのシート材11上に、木目調の樹脂製の化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材からなる幅30mm×厚さ30mmの第1棒材13を90mmの間隔で8本配置した第1棒材/シート材/木質板層の3層の試験体を用いた。
【0041】
また、実験例2では、本実施形態の調音パネル20aを構成する木質板層10a及びシート材11だけに相当する試験体をセットして、吸音率を測定した。具体的には、上記実験例1の木質板層10a上に厚さ1.5mmの織布からなるシート材11を配置したシート材/木質板層の2層の試験体を用いた。
【0042】
また、実験例3では、本実施形態の調音パネル20aを構成する複数の第1棒材13だけに相当する試験体をセットして、吸音率を測定した。具体的には、上記実験例1の第1棒材13を90mmの間隔で8本配置した第1棒材だけの1層の試験体を用いた。
【0043】
吸音率は、JIS A 1409に準拠して、残響室内に試験体を設置しない状態(1)及び実験例1~3の試験体のセットを水平に設置した状態(2)の2つの状態における残響時間をそれぞれ測定して、それらの残響時間の差から残響室法吸音率を算出したものである。
【0044】
実験結果としては、
図5のグラフに示すように、実験例2のシート材/木質板層の2層の試験体(線b)では、周波数500Hzから3150Hzにかけて吸音率が上昇し、実験例3の第1棒材だけの1層の試験体(線c)では、周波数1000Hz付近及び2000Hz付近にピーク及びディップを示し、実験例1の第1棒材/シート材/木質板層の3層の試験体(線a)では、実験例2及び3を重ね合わせたような吸音特性を有し、吸音率が向上することが分かった。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の調音パネル20aによれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の貫通孔Hが形成された木質板層10aの一方の表面側において、複数の第1棒材13を互いに平行に配置させるだけで2層の格子構造を有する調音パネル20aが構成され、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが不要であるので、生産性に優れた調音パネル20aを提供することができる。
【0046】
また、本実施形態の調音パネル20aによれば、木質板層10aと複数の第1棒材13との間には、木質板層10aを覆うように通気性を有し、木質板層10aに形成された複数の貫通孔Hを遮蔽するシート材11が設けられているので、木質板層10aの一方の表面側から複数の貫通孔Hが見え難くなり、吸音性能や拡散性能を損なうことなく、調音パネル20aの見映えを向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態の調音パネル20aによれば、木質板層10a側が開口するようにU字状の横断面を有する各第1棒材13に光源Lが内蔵されているので、光源Lからの光やその反射光等が木質板層10aの一方の表面側から視認され、調音パネル20aの演出性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の調音パネル20aによれば、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により各第1棒材13が形成されているので、各第1棒材13の強度を確保して各第1棒材13の軽量化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態の調音パネル20aによれば、平面視で矩形状の木質板層10aの一方の表面における対向する両端部に互いに平行に延びるように一対の第2棒材12が設けられているので、木質板層10aと複数の第1棒材13とを離間させた状態で2層の格子構造を構成することができる。
【0050】
また、本実施形態の調音パネル20aによれば、複数の第1棒材13及び一対の第2棒材12の少なくとも一部が、木質板層10aとなる木質板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により生じた破材の切削加工により形成されている場合には、木質板材を有効に活用することができる。
【0051】
《第2の実施形態》
図6及び
図7は、本発明に係る調音パネルの第2の実施形態を示している。ここで、
図6は、本実施形態の調音パネル20bの平面図である。また、
図7は、
図6中のVII-VII線に沿った調音パネル20bの断面図である。なお、以下の各実施形態において、
図1~
図5と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0052】
上記第1の実施形態では、複数の貫通孔Hが相対的に狭い間隔で配置され、複数の第1棒材13が相対的に広い間隔で配置された調音パネル20aを例示したが、本実施形態では、複数の貫通孔Hが相対的に広い間隔で配置され、複数の第1棒材13が相対的に狭い間隔で配置された調音パネル20bを例示する。
【0053】
調音パネル20bは、
図6及び
図7に示すように、板状の板層として設けられた木質板層10cと、木質板層10c上に設けられたシート材11と、木質板層10cの対向する一対の側面に設けられた一対の第2棒材12と、一対の第2棒材12上に設けられた複数の第1棒材13とを備えている。なお、
図7の断面図では、第2棒材12と第1棒材13との間に空間が形成されているが、木質板層10c上に設けられたシート材11が厚さ200μm~2mm程度で薄いため、実際の第2棒材12及び第1棒材13は、互いに接触している。
【0054】
木質板層10cは、例えば、MDF、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質材料により、厚さ12mm程度×幅400mm程度×長さ900mm程度の平面視で矩形状に設けられている。また、木質板層10cには、
図6に示すように、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部として複数の貫通孔Hが設けられている。ここで、複数の貫通孔Hは、例えば、90mm程度の間隔で30mm程度の幅に形成され、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、木質板層10cの1辺(短辺)に対して、15°~75°の角度θで交差するように設けられている。
【0055】
なお、本実施形態では、複数の開口部として複数の貫通孔Hが設けられた木質板層10cを例示したが、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、複数の開口部として複数の切り欠きCが設けられていてもよい。また、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、複数の貫通孔Hを形成するために、木質板材等の板材の打ち抜き加工やくり抜き加工により生じた破材を切削加工し、第1棒材13や第2棒材12としてもよい。これにより、厚い板材を使用した場合であっても、その破材を有効に活用することができる。また、本実施形態では、板層として木質板層10cを例示したが、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、板層は、プラスチック製板、無機フィラーが添加された樹脂板等の樹脂製の板材、ロックウール繊維板、石膏ボード等の無機板材、アルミニウム製板材等により形成されていてもよい。ここで、木質板材、無機フィラーが添加された樹脂板、ロックウール繊維板等の柔らかい材料であれば、打ち抜き加工やくり抜き加工を容易に行うことができ、プラスチック製板、石膏ボード、アルミニウム製板材等の硬い材料であれば、型での成型や鋳造等で製造することができるので、抜いた破材を発生させなくすることができる。
【0056】
シート材11は、
図7に示すように、木質板層10cと複数の第1棒材13との間において、木質板層10cの一方の表面を覆うように設けられ、木質板層10cの一方の表面に貼り付けられている。
【0057】
一対の第2棒材12は、
図6及び
図7に示すように、木質板層10cの対向する両端部の一対の側面(長辺に沿う側面)に互いに平行に延びるように設けられている。ここで、各第2棒材12は、例えば、アルミニウム材により形成され、
図7に示すように、第1棒材13側が開口するようにC字状の横断面を有し、光源L用の配線が内部に組み込まれている。なお、一対の第2棒材12は、例えば、建築物内の壁にねじ止め等により固定されている。また、一対の第2棒材12は、
図6に示すように、鉛直に設けられているだけでなく、水平に設けられていてもよい。
【0058】
複数の第1棒材13は、例えば、幅30mm程度×厚さ30mm程度の大きさにそれぞれ形成され、
図6及び
図7に示すように、木質板層10cの一方の表面側(
図7中の上側)に、例えば、30mm程度の間隔で互いに平行に配置するように設けられている。
【0059】
上記構成の調音パネル20bは、例えば、建築物内の壁に取り付けて、表面側(室内側)の複数の第1棒材13による格子構造と、裏面側(壁側)の複数の貫通孔Hによる格子構造との重なりにより、室内音響を調整するように構成されている。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の調音パネル20bによれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の貫通孔Hが形成された木質板層10cの一方の表面側において、複数の第1棒材13を互いに平行に配置させるだけで2層の格子構造を有する調音パネル20bが構成され、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが不要であるので、生産性に優れた調音パネル20bを提供することができる。
【0061】
また、本実施形態の調音パネル20bによれば、木質板層10cと複数の第1棒材13との間には、木質板層10cを覆うように通気性を有し、木質板層10cに形成された複数の貫通孔Hを遮蔽するシート材11が設けられているので、木質板層10cの一方の表面側から複数の貫通孔Hが見え難くなり、吸音性能や拡散性能を損なうことなく、調音パネル20bの見映えを向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態の調音パネル20bによれば、木質板層10c側が開口するようにU字状の横断面を有する各第1棒材13に光源Lが内蔵されているので、光源Lからの光やその反射光等が木質板層10cの一方の表面側から視認され、調音パネル20bの演出性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態の調音パネル20bによれば、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により各第1棒材13が形成されているので、各第1棒材13の強度を確保して各第1棒材13の軽量化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態の調音パネル20bによれば、平面視で矩形状の木質板層10cの対向する両端部の一対の側面(長辺に沿う側面)に互いに平行に延びるように一対の第2棒材12が設けられているので、木質板層10cと複数の第1棒材13とを接近させた状態で2層の格子構造を構成することができる。
【0065】
また、本実施形態の調音パネル20bによれば、複数の第1棒材13及び一対の第2棒材12の少なくとも一部が、木質板層10cとなる木質板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により生じた破材の切削加工により形成されている場合には、木質板材を有効に活用することができる。
【0066】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、複数の第1棒材13及び木質板層10a(10b、10c)による2層の格子構造を有する調音パネル20a(20b)を例示したが、本発明は、例えば、木質板層10a(10b、10c)による格子構造を複数層にして、3層以上の格子構造を有する調音パネル等にも適用することができる。なお、木質板層10a(10b、10c)による格子構造を複数層にする場合、各木質板層に形成する複数の開口部を同じ形状に形成して開口部の厚さを大きくしても、異なる形状に形成して格子構造を複雑にしてもよい。
【0067】
また、上記各実施形態では、木質板層10a(10b、10c)の一方の表面側に複数の第1棒材13が設けられた調音パネル20a(20b)を例示したが、複数の第1棒材13は、木質板層10a(10b、10c)の一方の表面側及び他方の表面側の双方の表面側に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、生産性に優れた調音パネルを提供することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0069】
C 切り欠き(開口部)
H 貫通孔(開口部)
L 光源
10a,10b,10c 木質板層
11 シート材
12 第2棒材
13 第1棒材
20a,20b 調音パネル
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルに関し、特に、室内音響を調整するためのパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築空間において、良好な音環境を形成するために、音響吸音材や音響拡散材等を用いて、室内音響を調整することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1枠材内に複数の第1棒材が互いに平行に固定された第1格子枠と、第2枠材内に複数の第2棒材が互いに平行に固定されて第1格子枠に積層された第2格子枠とを備え、第1枠材と第2枠材との重なり合う位置を変えることにより、吸音率及び乱反射率を調整することが可能なパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示されたパネルでは、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが格子枠の層数だけ必要になり、生産性に劣るので、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性に優れた室内音響を調整するためのパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るパネルは、室内音響を調整するためのパネルであって、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層と、上記板層の一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材とを備え、上記各開口部は、上記複数の第1棒材の少なくとも1つと交差するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層の一方の表面側において、複数の第1棒材を互いに平行に配置させ、各開口部が複数の第1棒材の少なくとも1つと交差させるだけで2層の格子構造を有するパネルが構成され、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが不要であるので、生産性に優れた室内音響を調整するためのパネルを提供することができる。
【0009】
上記板層と上記複数の第1棒材との間には、該板層を覆うように通気性を有し、上記複数の開口部を遮蔽するシート材が設けられていてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、板層と複数の第1棒材との間には、板層を覆うように通気性を有し、板層に形成された複数の開口部を遮蔽するシート材が設けられているので、板層の一方の表面側から複数の開口部が見え難くなり、吸音性能や拡散性能を損なうことなく、パネルの見映えを向上させることができる。
【0011】
上記シート材は、不織布又は織布により形成されていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、シート材が不織布又は織布により形成されているので、板層の一方の表面にシート状の不織布又は織布を貼付することにより、パネルにおいて、シート材の透音性及び遮蔽性を確保することができる。
【0013】
上記板層は、木質材料により、平面視で矩形状に設けられ、上記複数の開口部は、上記板層の1辺に対して、15°~75°で交差するように設けられていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、平面視で矩形状の木質材料からなる板層に形成された複数の開口部が板層の1辺に対して15°~75°で交差するように設けられているので、板層の1辺に沿って複数の第1棒材を配置させることにより、複数の開口部を複数の第1棒材に対しても15°~75°で交差させることができる。
【0015】
上記複数の開口部は、複数の貫通孔によりそれぞれ形成されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、複数の開口部が複数の貫通孔によりそれぞれ形成されているので、例えば、NC(Numerical Control)ルーター加工機やレーザー加工機等でくり抜き加工を行って、板材に複数の貫通孔を形成することにより、複数の開口部が形成された板層を準備することができる。
【0017】
上記複数の開口部は、複数の切り欠きによりそれぞれ形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、複数の開口部は、複数の切り欠きによりそれぞれ形成されているので、例えば、回転鋸等で切断加工を行って、板材に複数の切り欠きを形成することにより、複数の開口部が形成された板層を準備することができる。
【0019】
上記各第1棒材は、上記板層側が開口するようにU字状の横断面を有し、光源が内部に設けられていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、板層側が開口するようにU字状の横断面を有する各第1棒材に光源が内蔵されているので、光源からの光やその反射光等が板層の一方の表面側から視認され、パネルの演出性を向上させることができる。
【0021】
上記各第1棒材は、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により形成されていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により各第1棒材が形成されているので、各第1棒材の強度を確保して各第1棒材の軽量化を図ることができる。
【0023】
上記板層は、平面視で矩形状に設けられ、上記板層の対向する両端部には、互いに平行に延びるように一対の第2棒材が設けられ、上記複数の第1棒材は、上記一対の第2棒材上に設けられていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、平面視で矩形状の板層の対向する両端部に互いに平行に延びるように一対の第2棒材が設けられ、それらの一対の第2棒材上に複数の第1棒材が設けられているので、板層の(一方の表面における対向する)両端部に一対の第2棒材を設けた場合には、板層と複数の第1棒材とを離間させた状態で2層の格子構造を構成することができ、板層の対向する両端部(の一対の側面)に一対の第2棒材を設けた場合には、板層と複数の第1棒材とを接近させた状態で2層の格子構造を構成することができる。
【0025】
上記板層は、板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により形成され、上記複数の第1棒材及び上記一対の第2棒材の少なくとも一部は、上記くり抜き加工又は上記打ち抜き加工の破材の切削加工により形成されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、複数の第1棒材及び上記一対の第2棒材の少なくとも一部が、板層となる板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により生じた破材の切削加工により形成されているので、板層となる板材を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層と、その板層の一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材とを備えているので、生産性に優れた室内音響を調整するためのパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係
るパネルの平面図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿っ
たパネルの断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係
るパネルを構成する木質板層の平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係
るパネルを構成する木質板層の変形例の平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係
るパネルにおいて、具体的に行った実験例1~3における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係
るパネルの平面図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線に沿っ
たパネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0030】
《第1の実施形態》
図1~
図5は、本発明に係
るパネルの第1の実施形態を示している。ここで、
図1は、本実施形態
のパネル20aの平面図である。また、
図2は、
図1中のII-II線に沿っ
たパネル20aの断面図である。また、
図3は
、パネル20aを構成する木質板層10aの平面図である。また、
図4は
、パネル20aを構成する木質板層10aの変形例としての木質板層10bの平面図である。
【0031】
パネル20aは、
図1及び
図2に示すように、板状の板層として設けられた木質板層10aと、木質板層10a上に設けられたシート材11と、シート材11上に設けられた一対の第2棒材12と、一対の第2棒材12上に設けられた複数の第1棒材13とを備えている。
【0032】
木質板層10aは、例えば、MDF、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質材料により、厚さ12mm程度×幅400mm程度×長さ900mm程度の平面視で矩形状に設けられている。また、木質板層10aには、
図1~
図3に示すように、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部として複数の貫通孔Hが設けられている。ここで、複数の貫通孔Hは、例えば、30mm程度の間隔で30mm程度の幅に形成され、
図1及び
図3に示すように、木質板層10aの1辺(短辺)に対して、15°~75°程度の角度θで交差するように設けられている。なお、木質板層10aは、例えば、建築物内の壁にねじ止め等により固定されている。
【0033】
なお、本実施形態では、複数の貫通孔Hが設けられた木質板層10aを例示したが、木質板層10aの代わりに、
図4に示すように、複数の切り欠きCが設けられた木質板層10bを用いてもよい。具体的に、木質板層10aと同様に、例えば、MDF、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質材料により形成された木質板層10bには、
図4に示すように、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部として複数の切り欠きCが設けられている。ここで、複数の貫通孔Hは、NCルーター加工機やレーザー加工機等でくり抜き加工、又はトムソン刃等による打ち抜き加工により安価に生産性良く形成され、複数の切り欠きCは、回転鋸等で切断加工により安価に生産性良く形成される。そして、くり抜き加工や切断加工により発生した木質板材(例えば、インシュレーションボード等)の破材は、木質板材を製造する際の原料に再利用されてもよい。また、木質板材等の板材の打ち抜き加工やくり抜き加工により生じた破材を切削加工し、第1棒材13や第2棒材12としてもよい。これにより、厚い板材を使用した場合であっても、その破材を有効に活用することができる。
【0034】
また、本実施形態では、板層として木質板層10a及び10bを例示したが、板層は、プラスチック製板、無機フィラーが添加された樹脂板等の樹脂製の板材、ロックウール繊維板、石膏ボード等の無機板材、アルミニウム製板材等により形成されていてもよい。ここで、木質板材、無機フィラーが添加された樹脂板、ロックウール繊維板等の柔らかい材料であれば、打ち抜き加工やくり抜き加工を容易に行うことができ、プラスチック製板、石膏ボード、アルミニウム製板材等の硬い材料であれば、型での成型や鋳造等で製造することができるので、抜いた破材を発生させなくすることができる。
【0035】
シート材11は、
図2に示すように、木質板層10aと複数の第1棒材13との間において、木質板層10aの一方の表面を覆うように設けられ、木質板層10aの一方の表面に貼り付けられている。ここで、シート材11は、例えば、厚さ200μm~2mm程度の不織布又は織布により形成され、透音性を有している。また、シート材11は、少なくとも表面が黒色等の暗色に形成され、木質板層10aに形成された複数の貫通孔Hを遮蔽するように設けられている。
【0036】
一対の第2棒材12は、
図1及び
図2に示すように、木質板層10aの一方の表面における対向する両端部(一対の長辺に沿う端部)に互いに平行に延びるように設けられている。ここで、各第2棒材12は、例えば、アルミニウム材により形成され、
図2に示すように、第1棒材13側が開口するようにC字状の横断面を有し、光源L用の配線が内部に組み込まれている。なお、一対の第2棒材12は、木質板層10aの一方の表面の対向する両端部にねじ止め等により固定されている。
【0037】
複数の第1棒材13は、例えば、幅30mm程度×厚さ30mm程度の大きさにそれぞれ形成され、
図1及び
図2に示すように、木質板層10aの一方の表面側(
図2中の上側)に、例えば、90mm程度の間隔で互いに平行に配置するように設けられている。また、各第1棒材13は、木質板層10a側が開口するようにU字状の横断面を有し、LED(light emitting diode)ランプ等の光源L(
図2参照)が内部に設けられている。ここで、各第1棒材13は、例えば、木目調の樹脂製の化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により形成されている。また、各第1棒材13の両端部は、
図1及び
図2に示すように、一対の第2棒材12上に設けられている。なお、各第1棒材13の両端部は、例えば、一対の第2棒材12にスライド移動可能に且つその長さ方向の任意の位置に固定可能にそれぞれ設けられた一対の取付具にねじ止め等により固定されている。
【0038】
上記構成のパネル20aは、例えば、建築物内の壁に取り付けて、表面側(室内側)の複数の第1棒材13による格子構造と、裏面側(壁側)の複数の貫通孔Hによる格子構造との重なりにより、室内音響を調整するように構成されている。
【0039】
次に、本実施形態
のパネル20aについて、具体的に行った実験について説明する。ここで、
図5は、本実施形態
のパネル20aにおいて、具体的に行った実験例1~3における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。なお、
図5のグラフでは、実線の線aが実験例1における結果を示し、破線の線bが実験例2における結果を示し、1点鎖線の線cが実験例3における結果を示している。
【0040】
まず、実験例1では、本実施形態
のパネル20aに相当する試験体を残響室にセットして、吸音率を測定した。具体的には、厚さ12mm×幅400mm×長さ900mmのMDFに30mmの間隔で30mmの幅の複数の貫通孔(H)が短辺に対して30°で交差するように形成された木質板層10a(
図3参照)を準備し、その木質板層10a上に厚さ1.5mmの織布からなるシート材11を配置し、そのシート材11上に、木目調の樹脂製の化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材からなる幅30mm×厚さ30mmの第1棒材13を90mmの間隔で8本配置した第1棒材/シート材/木質板層の3層の試験体を用いた。
【0041】
また、実験例2では、本実施形態のパネル20aを構成する木質板層10a及びシート材11だけに相当する試験体をセットして、吸音率を測定した。具体的には、上記実験例1の木質板層10a上に厚さ1.5mmの織布からなるシート材11を配置したシート材/木質板層の2層の試験体を用いた。
【0042】
また、実験例3では、本実施形態のパネル20aを構成する複数の第1棒材13だけに相当する試験体をセットして、吸音率を測定した。具体的には、上記実験例1の第1棒材13を90mmの間隔で8本配置した第1棒材だけの1層の試験体を用いた。
【0043】
吸音率は、JIS A 1409に準拠して、残響室内に試験体を設置しない状態(1)及び実験例1~3の試験体のセットを水平に設置した状態(2)の2つの状態における残響時間をそれぞれ測定して、それらの残響時間の差から残響室法吸音率を算出したものである。
【0044】
実験結果としては、
図5のグラフに示すように、実験例2のシート材/木質板層の2層の試験体(線b)では、周波数500Hzから3150Hzにかけて吸音率が上昇し、実験例3の第1棒材だけの1層の試験体(線c)では、周波数1000Hz付近及び2000Hz付近にピーク及びディップを示し、実験例1の第1棒材/シート材/木質板層の3層の試験体(線a)では、実験例2及び3を重ね合わせたような吸音特性を有し、吸音率が向上することが分かった。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のパネル20aによれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の貫通孔Hが形成された木質板層10aの一方の表面側において、複数の第1棒材13を互いに平行に配置させるだけで2層の格子構造を有するパネル20aが構成され、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが不要であるので、生産性に優れた室内音響を調整するためのパネル20aを提供することができる。
【0046】
また、本実施形態のパネル20aによれば、木質板層10aと複数の第1棒材13との間には、木質板層10aを覆うように通気性を有し、木質板層10aに形成された複数の貫通孔Hを遮蔽するシート材11が設けられているので、木質板層10aの一方の表面側から複数の貫通孔Hが見え難くなり、吸音性能や拡散性能を損なうことなく、パネル20aの見映えを向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態のパネル20aによれば、木質板層10a側が開口するようにU字状の横断面を有する各第1棒材13に光源Lが内蔵されているので、光源Lからの光やその反射光等が木質板層10aの一方の表面側から視認され、パネル20aの演出性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態のパネル20aによれば、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により各第1棒材13が形成されているので、各第1棒材13の強度を確保して各第1棒材13の軽量化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態のパネル20aによれば、平面視で矩形状の木質板層10aの一方の表面における対向する両端部に互いに平行に延びるように一対の第2棒材12が設けられているので、木質板層10aと複数の第1棒材13とを離間させた状態で2層の格子構造を構成することができる。
【0050】
また、本実施形態のパネル20aによれば、複数の第1棒材13及び一対の第2棒材12の少なくとも一部が、木質板層10aとなる木質板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により生じた破材の切削加工により形成されている場合には、木質板材を有効に活用することができる。
【0051】
《第2の実施形態》
図6及び
図7は、本発明に係
るパネルの第2の実施形態を示している。ここで、
図6は、本実施形態
のパネル20bの平面図である。また、
図7は、
図6中のVII-VII線に沿っ
たパネル20bの断面図である。なお、以下の各実施形態において、
図1~
図5と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0052】
上記第1の実施形態では、複数の貫通孔Hが相対的に狭い間隔で配置され、複数の第1棒材13が相対的に広い間隔で配置されたパネル20aを例示したが、本実施形態では、複数の貫通孔Hが相対的に広い間隔で配置され、複数の第1棒材13が相対的に狭い間隔で配置されたパネル20bを例示する。
【0053】
パネル20bは、
図6及び
図7に示すように、板状の板層として設けられた木質板層10cと、木質板層10c上に設けられたシート材11と、木質板層10cの対向する一対の側面に設けられた一対の第2棒材12と、一対の第2棒材12上に設けられた複数の第1棒材13とを備えている。なお、
図7の断面図では、第2棒材12と第1棒材13との間に空間が形成されているが、木質板層10c上に設けられたシート材11が厚さ200μm~2mm程度で薄いため、実際の第2棒材12及び第1棒材13は、互いに接触している。
【0054】
木質板層10cは、例えば、MDF、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質材料により、厚さ12mm程度×幅400mm程度×長さ900mm程度の平面視で矩形状に設けられている。また、木質板層10cには、
図6に示すように、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部として複数の貫通孔Hが設けられている。ここで、複数の貫通孔Hは、例えば、90mm程度の間隔で30mm程度の幅に形成され、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、木質板層10cの1辺(短辺)に対して、15°~75°の角度θで交差するように設けられている。
【0055】
なお、本実施形態では、複数の開口部として複数の貫通孔Hが設けられた木質板層10cを例示したが、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、複数の開口部として複数の切り欠きCが設けられていてもよい。また、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、複数の貫通孔Hを形成するために、木質板材等の板材の打ち抜き加工やくり抜き加工により生じた破材を切削加工し、第1棒材13や第2棒材12としてもよい。これにより、厚い板材を使用した場合であっても、その破材を有効に活用することができる。また、本実施形態では、板層として木質板層10cを例示したが、上記第1の実施形態の木質板層10aと同様に、板層は、プラスチック製板、無機フィラーが添加された樹脂板等の樹脂製の板材、ロックウール繊維板、石膏ボード等の無機板材、アルミニウム製板材等により形成されていてもよい。ここで、木質板材、無機フィラーが添加された樹脂板、ロックウール繊維板等の柔らかい材料であれば、打ち抜き加工やくり抜き加工を容易に行うことができ、プラスチック製板、石膏ボード、アルミニウム製板材等の硬い材料であれば、型での成型や鋳造等で製造することができるので、抜いた破材を発生させなくすることができる。
【0056】
シート材11は、
図7に示すように、木質板層10cと複数の第1棒材13との間において、木質板層10cの一方の表面を覆うように設けられ、木質板層10cの一方の表面に貼り付けられている。
【0057】
一対の第2棒材12は、
図6及び
図7に示すように、木質板層10cの対向する両端部の一対の側面(長辺に沿う側面)に互いに平行に延びるように設けられている。ここで、各第2棒材12は、例えば、アルミニウム材により形成され、
図7に示すように、第1棒材13側が開口するようにC字状の横断面を有し、光源L用の配線が内部に組み込まれている。なお、一対の第2棒材12は、例えば、建築物内の壁にねじ止め等により固定されている。また、一対の第2棒材12は、
図6に示すように、鉛直に設けられているだけでなく、水平に設けられていてもよい。
【0058】
複数の第1棒材13は、例えば、幅30mm程度×厚さ30mm程度の大きさにそれぞれ形成され、
図6及び
図7に示すように、木質板層10cの一方の表面側(
図7中の上側)に、例えば、30mm程度の間隔で互いに平行に配置するように設けられている。
【0059】
上記構成のパネル20bは、例えば、建築物内の壁に取り付けて、表面側(室内側)の複数の第1棒材13による格子構造と、裏面側(壁側)の複数の貫通孔Hによる格子構造との重なりにより、室内音響を調整するように構成されている。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のパネル20bによれば、平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の貫通孔Hが形成された木質板層10cの一方の表面側において、複数の第1棒材13を互いに平行に配置させるだけで2層の格子構造を有するパネル20bが構成され、枠材に複数の棒材を固定する枠組みが不要であるので、生産性に優れた室内音響を調整するためのパネル20bを提供することができる。
【0061】
また、本実施形態のパネル20bによれば、木質板層10cと複数の第1棒材13との間には、木質板層10cを覆うように通気性を有し、木質板層10cに形成された複数の貫通孔Hを遮蔽するシート材11が設けられているので、木質板層10cの一方の表面側から複数の貫通孔Hが見え難くなり、吸音性能や拡散性能を損なうことなく、パネル20bの見映えを向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態のパネル20bによれば、木質板層10c側が開口するようにU字状の横断面を有する各第1棒材13に光源Lが内蔵されているので、光源Lからの光やその反射光等が木質板層10cの一方の表面側から視認され、パネル20bの演出性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態のパネル20bによれば、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により各第1棒材13が形成されているので、各第1棒材13の強度を確保して各第1棒材13の軽量化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態のパネル20bによれば、平面視で矩形状の木質板層10cの対向する両端部の一対の側面(長辺に沿う側面)に互いに平行に延びるように一対の第2棒材12が設けられているので、木質板層10cと複数の第1棒材13とを接近させた状態で2層の格子構造を構成することができる。
【0065】
また、本実施形態のパネル20bによれば、複数の第1棒材13及び一対の第2棒材12の少なくとも一部が、木質板層10cとなる木質板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により生じた破材の切削加工により形成されている場合には、木質板材を有効に活用することができる。
【0066】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、複数の第1棒材13及び木質板層10a(10b、10c)による2層の格子構造を有するパネル20a(20b)を例示したが、本発明は、例えば、木質板層10a(10b、10c)による格子構造を複数層にして、3層以上の格子構造を有するパネル等にも適用することができる。なお、木質板層10a(10b、10c)による格子構造を複数層にする場合、各木質板層に形成する複数の開口部を同じ形状に形成して開口部の厚さを大きくしても、異なる形状に形成して格子構造を複雑にしてもよい。
【0067】
また、上記各実施形態では、木質板層10a(10b、10c)の一方の表面側に複数の第1棒材13が設けられたパネル20a(20b)を例示したが、複数の第1棒材13は、木質板層10a(10b、10c)の一方の表面側及び他方の表面側の双方の表面側に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、生産性に優れた室内音響を調整するためのパネルを提供することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0069】
C 切り欠き(開口部)
H 貫通孔(開口部)
L 光源
10a,10b,10c 木質板層
11 シート材
12 第2棒材
13 第1棒材
20a,20b パネル
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内音響を調整するためのパネルであって、
平面視で互いに平行に延び、各々厚さ方向に貫通する複数の開口部が形成された板層と、
上記板層の一方の表面側に互いに平行に配置するように設けられた複数の第1棒材とを備え、
上記各開口部は、上記複数の第1棒材の少なくとも1つと交差するように形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項2】
請求項1に記載されたパネルにおいて、
上記板層と上記複数の第1棒材との間には、該板層を覆うように通気性を有し、上記複数の開口部を遮蔽するシート材が設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項3】
請求項2に記載されたパネルにおいて、
上記シート材は、不織布又は織布により形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載されたパネルにおいて、
上記板層は、木質材料により、平面視で矩形状に設けられ、
上記複数の開口部は、上記板層の1辺に対して、15°~75°で交差するように設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1つに記載されたパネルにおいて、
上記複数の開口部は、複数の貫通孔によりそれぞれ形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1つに記載されたパネルにおいて、
上記複数の開口部は、複数の切り欠きによりそれぞれ形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1つに記載されたパネルにおいて、
上記各第1棒材は、上記板層側が開口するようにU字状の横断面を有し、光源が内部に設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項8】
請求項7に記載されたパネルにおいて、
上記各第1棒材は、化粧シートが外表面に貼付されたアルミニウム材により形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1つに記載されたパネルにおいて、
上記板層は、平面視で矩形状に設けられ、
上記板層の対向する両端部には、互いに平行に延びるように一対の第2棒材が設けられ、
上記複数の第1棒材は、上記一対の第2棒材上に設けられていることを特徴とするパネル。
【請求項10】
請求項9に記載されたパネルにおいて、
上記板層は、板材のくり抜き加工又は打ち抜き加工により形成され、
上記複数の第1棒材及び上記一対の第2棒材の少なくとも一部は、上記くり抜き加工又は上記打ち抜き加工の破材の切削加工により形成されていることを特徴とするパネル。